Dual PAMによるクロロフィル蛍光測定

2017.8.17最終更新

Dual PAM

以下のプロトコールは、Walz社のDual PAMを用いて、クロロフィル蛍光と、P700による吸収変化もしくはNADPHの蛍光の変化を同時に測定するためのプロトコールです。クロロフィル蛍光測定の一般論については、光合成とクロロフィル蛍光をご覧ください。また、微小吸収変化測定によるP700測定については、微小な吸収変化の測定をご覧ください。


Dual PAMの特徴

いわゆるOld PAMの出現により、蛍光測定の非専門家にもクロロフィル蛍光測定が手軽にできるようになり、P700の吸収変化に関しても、オプションのユニットをつけることにより、測定が可能になっていました。このOld PAMでは、光ファイバーを光路に用いていましたが、これをキセノンPAMのように光ガイドとしてPerspex製のロッドを変えて感度を上げて本体を小型化し、さらにP700との同時測定を可能にしたのがDual PAMです。また、オプションとして、NADPHの蛍光測定ユニットを利用可能なので、クロロフィル蛍光とNADPH蛍光の同時測定も可能です。ただし、P700とNADPHの同時測定はできません。葉のクロロフィル蛍光測定だけであれば、他のPAM2500等でも十分可能ですが、WalzのシリーズでP700の測定をするためには、現時点ではDual PAMが必要です。測定対象については、クロロフィル蛍光とP700の測定の場合は生葉によるin vivo測定が可能ですが、NADPH測定は、単細胞生物やチラコイド膜の懸濁液によるin vitro測定が基本となります。逆に懸濁液の測定を前提とした場合、蛍光測定は希薄試料で可能ですが、P700測定についてはそれほど感度が高くありません。希薄試料の場合は、ジョリオ型分光器を使用した方が良いでしょう。

P700の吸収変化測定について

光化学系Ⅰの反応中心クロロフィルであるP700は、電荷分離により酸化されP700+となります。この酸化型のP700は安定であり、かつ酸化の際に特有の吸収変化を示すため、励起光照射により酸化されるP700量を、その吸収変化から見積もることが可能です。酸化の際には、435 nm付近と700 nm付近に吸収減少を示し、800 nm以上の領域に幅広い吸収増大を示します。このうち、435 nmの吸収変化は、他の様々な色素の変化含む可能性があることから、一般的には700 nm付近での吸収変化もしくは820 nm付近の吸収変化が測定に用いられます。P700の酸化還元差分子吸光係数は700 nm付近の方が大きいので吸収変化を見やすいのですが、吸収の絶対値が低く、励起光との重なりを完全に無視できる820 nm付近の変化も、特にin vivo測定ではよく使われます。

NADPHの蛍光測定について

NADPHは340 nm付近の光(UV-A)を吸収して、465 nm付近に蛍光を放出しますが、酸化型のNADP+は蛍光を放出しません。従って、葉緑体のストロマやシアノバクテリア細胞のレドックス状態を、NADPHの蛍光変化をモニターすることにより非破壊的に測定することが可能です。365 nmで励起した場合、クロロフィル蛍光に比べて2000倍弱い、UV-Aを吸収する物質は数多く存在する、セルロースやフラビンなども同様の蛍光を放出する、放出された蛍光は光合成色素によって再吸収されやすい、などの理由により、NADPHのin vivo蛍光測定は必ずしも簡単ではありません。その測定においては、以下のような点に注意する必要があります。

  1. バッファーには蛍光を出すものがあるので、低蛍光のものを選択する。
  2. 藻類やシアノバクテリアの培養液を測定する場合には、一度遠心して新しい培地に懸濁する。(細胞が培地に蛍光性物質を放出するため)
  3. 藻類やシアノバクテリアの細胞測定においては、対数増殖期の若い細胞を使う。(古い細胞は蛍光性物質を多く含むため)
  4. 培養液に細かい粒子などが混在している場合は、ナイロンメッシュなどで除く。(スターラーをつけた時に測定を妨害するため)
  5. 暗条件での測定には弱い測定光を用いる一方、励起光照射時の測定には強い測定光を用いる。(測定光強度を励起光照射時に切り替えることが望ましい)

測定は、基本的に懸濁液を対象にして行う必要があります。クロロフィル蛍光測定においては、葉をそのまま測定対象をすることが可能ですが、NADPHの蛍光の場合は、葉緑体もしくは藻類の培養液を用いて測定を行う必要があります。

蛍光とP700の同時測定に用いるユニットとその接続

赤外光付きの測定ヘッド (DUAL-E)

内部には以下の光源が入っています。

  1. P700測定光(NIR)LEDs:830 nmと875 nm
  2. P700励起光LED:730 nm
  3. 赤色励起光Chip on Board LED array: 635 nm x 24個
    1. Continuous actinic
    2. Saturating single turnover
    3. Multiple turnover

接続は以下のように行います。まず、NIRケーブルを本体のEmitterに接続します。もう一本のLED arrayのケーブルはLED Array E(Dでも同じ)に接続します。光ガイドとして使うロッドはPerspex製のもので構いません。葉の測定の場合などで、励起光を葉の表側からのみ励起光を当てる方が適切な場合(LED arrayを切りたい場合)は、LED Arrayの接続に専用のDual TWアダプターを用います。これは、730 nmのP700の励起光が、NIRケーブルではなくLED arreyのケーブルを使っているので、単純にLED arrayケーブルを外してしまうと、730 nm励起光が使えなくなってしまうためです。

クロロフィル蛍光測定標準ユニット(DUAL-DR/DB)

内部には以下の光源とディテクターが入っています。

  1. 測定光LED:460 nm(DBの場合)、620 nm(DRの場合:シアノバクテリアの場合はこちらを使う)
  2. 青色励起光LEDs:460 nm x 3個
  3. 赤色励起光Chip on Board LED array: 635 nm x 24個
    1. Continuous actinic
    2. Saturating single turnover
    3. Multiple turnover
  4. フォトダイオード(Detector):P700測定の830/870 nmの透過光と、クロロフィル蛍光の両方を感知する。ロングパスフィルターのRG9によって、赤もしくは青の励起光からフォトダイオードを保護している。

接続は以下のように行います。3本のケーブルがあり、1本を本体のFluoMLに、1本をDetectorに、もう1本をLED Array D(Eでも同じ)に接続します。光ガイドとして使うロッドはPerspex製のもので構いません。クロロフィル蛍光用の測定光とDetectorがともにこのユニットに内蔵されているため、このユニットだけで、クロロフィル蛍光測定が可能です。試料の反対側(180°の方向)にDUAL-Eをおくことにより、透過光の変化としてP700の吸収変化を測定することができます。

ユニットの配置

P700 determination by Dual PAM

P700の測定を葉で行う場合は、一般に葉は水平に保たれるのが自然であることを考えると、上下から光を当てる形にする場合が多いでしょう。実際には、右の写真のように、クロロフィル蛍光測定標準ユニット(DUAL-DR/DB)を上側に設置して、赤外光付きの測定ヘッド (DUAL-E)を下側に設置するのが一般的です。これは、葉の表側を上にして測定した場合に、励起光が上から(向軸側から)あたるほうが葉にとって自然と考えられるからです。この場合、赤外光は葉の下から(背軸側から)あたることになりますが、これは純粋に測定のための光であって、波長も近赤外の領域で透過率が高いので、特に問題ないと考えられます。2つのユニットは、必要に応じて横に配置することもできます。イネ科の植物のように葉が縦になっている植物の場合は、そのほうが自然な場合もあるかもしれません。また、横に配置した場合は、下に示すNADPH蛍光測定の際の配置のように、中央にキュベットを置いて、懸濁試料や溶液試料を測定することもできます。その場合、専用のキュベットホルダーがあったほうが安心ではあると思いますが、原理的にはキュベットやユニットがきちんと再現性良く固定されるようになっていれば、専用のものでなくても測定は可能でしょう。


蛍光とNADPHの同時測定に用いるユニットとその接続

NADPH/9-AA Emitter Unit (DUAL-ENADPH)

内部には以下の光源が入っています。

  1. NADPH蛍光測定光(UV-A):365 nm(400 nm以下を通すショートパスフィルターと組み合わせてある)
  2. クロロフィル蛍光測定光(red):620 nm(645 nm以下を通すショートパスフィルターと組み合わせてある)
  3. 赤色励起光Chip on Board LED array: 635 nm x 24個(600 nm以上を通すロングパスフィルターと組み合わせてある)
    1. Continuous actinic: maximum 2000 μmol m-2 s-1
    2. Saturating single turnover: maixmam 200,000 μmol m-2 s-1, 5-50 μs
    3. Multiple turnover: maximum 20,000 μmol m-2 s-1, 1-1000 ms

接続は以下のように行います。ケーブルは3本出ているので、1本を本体のFluoMLに、1本をEmitterに、1本をLED Array E(Dでも同じ)に接続します。光ガイドとして使うロッドはUV-Aが通りやすいクォーツ製のものである必要があります。

NADPH/9-AA Photomultiplier Detector Unit (DUAL-DNADPH)

以下のディテクターと電源から構成されています。

  1. 光電子増倍管:青色光に感度の高い(Hamamatsu H6779)に420-580nmの光を通すフィルター(BG39+KV418+DT Cyan)を組み合わせたもの。赤色光に感度が低いことにより、クロロフィル蛍光との同時測定に有利になります。
  2. 電源ユニット(PM-101/N):調節つまみで光電子増倍管の感度を調節可能です。Coarse 1, Fine 0と1とした時のシグナルの相対値は 2,0=12; 3,0=57; 3,1=63; 3,2=69; 3,3=75; 3,4=80; 3,5=87; 3,6=93; 3,7=99; 3,8=105; 3,9=111; 3,10=117; 3,12=124; 4,0=123; 5,0=168; 6,0=202; 6,11=227です。実際には、シグナルが3.5-4.5 Vになるように感度を調節します。シアノバクテリアの細胞の測定ではCoarse 3, Fine 3で測定可能です。シグナルが5 Vを超すと測定が不可能になります。

接続は以下のように行います。ケーブルの1本を本体のDetector 2に、電源ケーブルを電源ユニットへ接続し、電源ユニットの電源コードをコンセントに接続します。光ガイドとして使うロッドはPerspex製のもので構いません。

クロロフィル蛍光測定に使用するユニット (DUAL-DPD)

ディテクターにフィルターRG665をつけて使用します。葉のP700測定とは異なり、溶液のNADPH測定は赤色光の妨害を受けづらいので、715 nm以上を通すRG9を使う必要がありません(葉では赤色光は再吸収されるのでP700測定は強い赤色光により妨害される)。この効果に加えて受光面積が広いこともあり、DUAL-DPDは標準のDUAL-DRユニットと比較して8倍の感度をもちます。

ケーブルは本体のDetector1に接続します。光ガイドとして使うロッドはPerspex製のもので構いません。

クロロフィル蛍光測定標準ユニット(DUAL-DR/DB)

P700との同時測定に用いるものと同じです。ただし、装備されているフォトダイオード(Detector)は、NADPH蛍光との同時測定には用いない。このユニットは、NADPH蛍光測定においては励起光源としてのみ用い、測定は感度の良いDUAL-DPDを用います。

3本のケーブルがあり、1本を本体のLED Array D(Eでも同じ)に接続し、残り(FluoMLとDetector)は接続しません。DUAL-ENADPHと反対方向(180°の方向)におくことにより、励起光をキュベットの両側から照射し、励起をより均一にします。従って無くても測定は可能です。光ガイドとして使うロッドはPerspex製のもので構いません。

ユニットの配置

NADPH determination by Dual PAM

NADPH蛍光の測定は原則的に懸濁試料もしくは溶液試料で行いますから、試料はセルに入れて横から光を当てる形になります。実際には、右の写真のように、上記のユニットを4方向に配置して測定するのが一般的です。この場合、下部にスターラーをつけて、試料を攪拌できるようにしてあります。ここで重要なのは、励起光のユニットとディテクターのユニットが90度の角度になるように配置することです。ディテクターはフィルターで励起光から保護されていますが、完全ということはありません。少しでも励起光の影響を小さくするためには、励起光が試料を透過してそのまま直進する180度の方向にはディテクターをおかないようにします。


本体の立ち上げ

  1. 電源ユニットからのコードをChargeに接続する。
  2. 本体スイッチ(正面パネル右下側のPower)を上に押すとオンになる。
  3. Powerスイッチの上のOnスイッチは、本体電源ではなく、スターラーの電源。これを入れれば、スターラーをスイッチの横のコネクタに接続し、つまみで速度を調節できる。シアノでは、暗順応時にスターラーを用いるが、測定中はノイズが入る可能性を考慮してオフにしている。光ガイドはスターラーの底よりも2 mm上に位置しているので、スターラー本体に起因するノイズは大きくないはず。ただし、小さな粒子などが入っていると、スターラーをオンにした時のノイズが大きくなる可能性がある。
  4. USBコネクタにパソコンを接続する。
  5. NADPH測定の場合は、NADPH測定Detector Unit (DUAL-DNADPH)の電源部のスイッチを入れる。ユニットの緑色のボタンは測定直前に入れ、測定後に赤いボタンで切る方が望ましい。
  6. 測定時には、暗幕で覆うなどして、余計な光が光路に入らないように注意を払う。

測定手順

初期条件の設定

  1. プログラム(現時点においてDual PAM v. 1.19)を立ち上げる(初期状態ではSettingタブの中のModeタブが開いている)。プログラムの中で、わからないアイコンがある場合には、マウスオーバーするとごく簡単な説明が現れる。そこで、F1キーを押すと、より詳細な説明を見ることができる。
  2. 右上のDetector Typeパネルで、P700測定の場合は、Detector 1としてDB(もしくはDR)を、Detector 2としてN.C.を選択する。NADPH測定の場合は、Detector 1としてDPDを、Detector 2としてDNADPHを選択する。ここを適切に選択しておかないと、左のModeパネルにP700測定もしくはNADPH測定の選択肢が現れない。
  3. 左上のMeasure Modeパネルで、適切な測定モードを選択する。たとえば、クロロフィル蛍光とP700の同時測定の場合は、Dual ChannelのFluo+P700を選択する。クロロフィル蛍光とNADPH蛍光の同時測定の場合は、Dual ChannelのFluo+NADPH-Fluoを選択する。
  4. 左中央のAnalysis Modeパネルで、SP-Analysisを選択する。
  5. 中央のFluoパネルおよびP700パネル(もしくはNADPHパネル)で、Gainとして1: Lowを、Dampingとして1 ms: Highを選択する。ただし、速いキネティクスを追う必要がある場合にはDampingとして1μs: Lowを選択する。その下にあるZero Offsetボタンは、試料を入れずに測定光をつけたときのバックグラウンドシグナルを除去するためのものですが、葉の測定などの場合はまず使用する必要がないでしょう。希薄溶液を高感度で測定するときには必要な場合があるようです。

陸上植物の蛍光とP700の同時測定の場合の詳細設定の例

  1. Measuring Lightパネル Fluo Meas. Light: Int 2 (26 Value, 5μE)、P700 Meas. Light: 5
  2. Actinic Lightパネル Act. Red Light: Int 8 (35 Value, 209μE)、Far Red Light: Int 10 (128 Value), UseパネルのFar Redにチェックを入れる。
  3. Sat. Pulseパネル P.+F. SP: Intensity 20 (203 Value, 40,000μE)、Width 800 ms
  4. Aquisitionパネル 1024000 points、Rate: 5μs

P700測定の場合は、Measuring Lightパネルの下のバランス・ボタン(天秤のアイコン)でバランスをとる必要があるが、下の手順でScriptを用いる場合には、Scriptの最初に書き込んでおけば、測定時に自動的にバランスが取れる。

シアノバクテリアのクロロフィルとNADPH蛍光の同時測定の前準備

  1. 下のタブからSlow kineticsを選択し、NADPH蛍光の測定光をonにする。
  2. 上のNADPH/9-AA Photomultiplier Detector Unit (DUAL-DNADPH)のところで説明したように、電源ユニットのCorseとFineのつまみで、光電子増倍管にかける電圧を調節し、NADPH蛍光の出力が0.35-0.45 Vになるようにする。

手動の測定手順

下のタブからSlow kineticsを選択し、測定光や励起光などをボタンによってオンオフすることにより、さまざまな測定が可能。基本的にはWater PAMやPAM2500などのソフトとアイコンなどは共通なので、かなり直感的に操作が可能だと思われる。ただし、蛍光とP700あるいはNADPHの同時測定の場合、当然のことながら測定光が2種類あることに注意する。

スクリプトによる測定手順

  1. Settingタブの右下のScriptパネルのLoadを押して、必要なスクリプトファイル(拡張子.prg)を読み込む。スクリプトは任意の行をダブルクリックすることにより修正可能。必要に応じて修正後、リターンアイコンでSettingタブに戻る。
  2. 右下のScriptパネルのRunを押して、測定を開始する。
  3. 測定結果を、タブを切り替えて確認する。
    1. Slow kineticsタブ:スクリプトの測定結果の全体を示す。右のAverage pointを増やすことによりノイズを低減できるが、その際には時間分解能が犠牲になることに注意する。Slow kineticsでは最大サンプリング速度は1 ms/pointであるので、256 pointの平均をとっても1秒間に4点の時間分解能は確保でき、通常の目的では十分である。
    2. SP kineticsタブ:飽和パルス照射時の早い変化を表示する。パルスを複数回照射している場合は、右上の名前の部分をクリックすることにより特定の飽和パルスを選択する。この場合、セーブアイコンを押しても、表示される1つのキネティクスしかセーブされない。
    3. SP Analysisタブ:パラメータの変化を表示する。
    4. Reportタブ:パラメータの値などを表示する。
  4. 測定結果は、セーブアイコンでセーブすることが可能。また、エクスポートアイコンで、テキストファイルに書き込むことも可能。ただし、例えば、Slow kineticsをセーブしても、SP kineticsはセーブされないので、データは個々にセーブする必要がある。セーブされたデータは、デフォールトでは例えば /Dual PAM/Slow kinetics/ フォルダにセーブされる。

P700測定の覚書

バランスとキャリブレーション

バランスは、820 nmの測定光と870 nmの測定光の出力の差を0にする作業で、これにより、その差だけを増幅することが可能になるため、ダイナミックレンジを損することなく微小なシグナルを増幅できる。バランスの操作をすると、次に870 nmのLEDの出力を一定の割合変化させるキャリブレーションが行われる。これによって、Ioに対するΔIの大きさ(ΔI/Io)の絶対値がわかるので、これを基準にP700の吸収変化の大きさを求めることができる。この部分の換算手続きについては、微小な吸収変化の測定を参照のこと。測定中は、縦軸の単位は電圧になっており、ディテクターの出力(I)が直接表示されている。バランスをとると、キャリブレーションが行われ、縦軸のΔI/Ioへの換算が可能になる。結果の解析画面では、縦軸はΔI/Ioとなっているはず。

NADPH測定の覚書

葉緑体懸濁液の測定

暗順応時のレドックス状態:暗順応をした試料のシグナルレベルは、励起光を切ったのちに安定したシグナルレベルよりもかなり高い。これは、暗順応時にも、NADPHがかなり還元されていることを示している。

蛍光の立ち上がり:励起光照射時の蛍光の立ち上がりには10 ms程度のラグフェーズが見られる。40μ秒のシングルターンオーバーフラッシュによる蛍光の立ち上がりを見ても、同様の10 msのラグが見られ、その後10 msと60 msの増大成分が等量見られるが、2つの成分の速度が何を示すのかは不明。シングルターンオーバーフラッシュによる変化量は、定常光による最大変化量の1/6程度を占める。

クロレラの懸濁液の測定

暗順応時のレドックス状態:葉緑体の場合と同様に、暗順応をした試料のシグナルレベルは、励起光を切ったのち(約10秒後)に一番低下したシグナルレベルよりもかなり高い。これは、暗順応時にも、NADPHがかなり還元されていることを示している。暗順応が短いと、NADPHの還元率は小さくなる。

蛍光の時間変化の解釈:励起光照射後300 ms以内にNADPの初期の還元が終了する。その後、NADPHの一過的な再酸化が見られるが、これは酸素除去によって見られなくなるので、酸素が電子受容体になっている可能性が強い。一時的な再酸化ののち、NADPは再び還元されて励起光照射後約20秒後にピークに達する。

シアノバクテリアの懸濁液の測定

細胞外物質の影響:シアノバクテリアは多量のフラビン化合物と考えられる蛍光性物質を細胞外に分泌し、しかもこの蛍光は励起光によって変化するので、培養液をそのまま測定することは推奨できない。

励起光照射後のピーク:励起光を切って25秒後にNADPHの一過的な還元が見られるが、その原因は不明である。

暗順応時のレドックス状態:測定は、光馴化した試料(光照射と暗順応を繰り返した試料)で行うのが良い。暗順応条件下では、葉緑体やクロレラと同様にNADPの還元が見られる。

NADPの完全酸化と完全還元:暗所で飽和パルスを照射すると、NADPHシグナルは上昇して200 ms後に一定値を取る。このレベルはNADPHの完全還元状態を反映すると考えられる。その後、10秒ほどで最初のレベルよりもさらに低い値まで一過的な蛍光減少(再酸化)が見られ、この最低値を完全酸化状態と考えることができる。励起光照射後に飽和パルスを照射しても同様の変化がみられるが、元のレベルがより酸化的であれば、オーバーシュートの幅は小さくなる。

励起光の影響:励起光照射により、すぐにNADPはほぼ完全に還元され、10から30秒ぐらいの間に部分的な再酸化が見られて一定値に落ち着く。

標準蛍光試料(Blue F Standard)

極めて安定な蛍光物質であるLumogen F Violetは365 nmの励起により青い蛍光を出すので、NADPH蛍光の標準として用いることができる。生物試料による変化が、本当に生物的なものなのかどうかは、標準資料ではその変化が見られないことにより確認することができる。