光合成の質問2006年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:極相林を形成するようなブナなどの陰樹の光補償点は何ルクスくらいなのでしょうか?(2006.12.20)

A:一月ほど前に、光補償点に関する質問がありましたので、そちらをご覧になって頂ければと思います。そこで答えられていない点については、再度ご質問頂ければ回答できると思います。(2006.12.20)


Q:クロロフィルにおける電荷分離と反応中心について教えてください。クロロフィル自体が反応中心な訳ではないのですか?「電荷分離」が起きた後、どのように「水が分解してO2が生じる」というとこるまでいくのでしょうか?過程を教えていただけませんか?(2006.12.18)

A:クロロフィル自体が反応中心です。というか、たくさんあるクロロフィルのうち、特別な配置にあるクロロフィルが反応中心として働きます。電荷分離というのは、もともと電荷を持たないある物質Aから別の物質Bに電子が移動することによって、Aがプラスの電荷を持ち、Bがマイナスの電荷を持つようになることを言います。光化学系Iの場合は、Aに相当する反応中心もクロロフィルですし、Bに相当する最初の電子受容体も別のクロロフィルです。
 光化学系IIで電荷分離が起こると、反応中心のクロロフィルはプラスの電荷を持ちますが、この状態は極めて他の物質を酸化する(他の物質から電子を引き抜く)力が強く、水を酸化することができます。水を酸化することによって反応中心は元の状態に戻り、水は酸化されて酸素になります。細かいことを言えば、反応中心と水の間には、いくつかの酸化還元する成分がありますが、そこまで詳しい解説が必要な場合は、光合成の教科書などを参照された方がよいかと思います。(2006.12.19)


Q:はじめまして,こんにちは。植物(個体)のエネルギー収支と物質収支を,仮想日光によるふく射と,受光体(葉の形状・配置)のエネルギー(熱も含む?)伝達の関係から調査することを検討しています。いろいろ調べてはいるのですが,バイオの分野は素人です。このような調査は,すでに実施されているのかどうかご教授くだされば幸いです。(2006.12.18)

A:光合成量の見積の研究は昔からいろいろとやられています。例えば、一日の光の強さをサインの二乗で近似して光合成量を積分してみたり、葉の形や向きの影響を実測値に基づいたモデル計算により求めてみたり、といった研究はずいぶんなされています。分野としては植物生態学、という分野になります。確か、2年ほど前に日本生態学会が「生態学入門」という教科書を編集していたと思います。また、共立出版から「生態学シリーズ」というのも出ているようです。これらを勉強してみてはいかがでしょうか。(2006.12.18)


Q:突然の質問失礼いたします。突然植物の光合成で1分子のNADを還元するのに必要な光はどのくらいかと、質問されました。どう答えてよいのか迷っています。1光子あたりでは理解していただけないと思い色々調べましたが良いものがありません。自分で調べろといわれるかもしれませんがお手すきのときに大雑把で結構ですのでお答えください。(2006.12.14)

A:「1光子あたりでは理解していただけない」とのことですが、質問が1分子あたりになっている以上、しょうがありませんね。ただ、光量子束密度は、いわば光子の単位なので、それで感覚をつかめばよいのではないでしょうか。最初に断っておきますと、光合成の場合は、NADではなく、NADPが還元されます。さて、NADPは2電子還元なので、1分子の還元に電子が2個流れる必要があり、水から電子が来るためには光化学系Iと2が両方必要ですから、4光子が必要、ということになります。従って1モルあたり、4モルの光子が必要です。太陽の光は、真夏の直射日光で、1平方メートルあたり約500秒で1モルの光子が降り注ぎます。NADPを1モル還元するには、1平方メートルに降り注ぐ真夏の直射日光が2000秒(つまり30分強)分必要だ、ということで、イメージがつかめませんかねえ。(2006.12.14)


Q:キャベツの緑色の葉と内側の白い葉のクロロフィルa,b量を測定したのですが、キャベツの白い葉ではクロロフィルbの値は測定できず、クロロフィルaの値も非常に微量でした。この結果から白い葉はクロロフィル含量が非常に少ないことは分かるのですが、なぜ内側の葉にはクロロフィルが存在しないのか分かりません。クロロフィルaは光が当たると合成されるものなのでしょうか?また、果実が緑色から黄色へ徐々に熟していく過程では、クロロフィルa,bはどのように変化するのですか?自分で書籍などで調べてみたのですがよく分かりませんでした。どうかよろしくお願いします。(2006.12.13)

A:この場合の「なぜ」というのは「どのような得があって」という生態学的な理由ではなくて、「どのようなメカニズムで」という生理学的な理由を聞いているのでしょうね。そうであれば、一般に被子植物のクロロフィル合成系は光によって活性化されますので、それが理由と言ってよいかと思います。クロロフィルbは。クロロフィルaがまず作られたあと、それが酸化することにより作られます。果実の成熟の場合は、一般にクロロフィル分解酵素の活性が上がってクロロフィル量が減っていくと言われています。確か、クロロフィル分解の最初のステップを触媒するクロロフィラーゼの発現が上がる、といった論文があったように思います。(2006.12.13)


Q:前の方も質問されてたかも知れませんが、クロロレスピレーションというものに関して教えてください。これは原核生物では1つの膜(PQ)を共有し光合成と呼吸をし、真核生物では葉緑体で行うと知りました。これもPQを仲立ちとしていて、ミトコンドリアと葉緑体の相互作用が関係しているとのことです。このクロロレスピレーションはあまり役立たないというか、光合成の電子伝達速度に比べて非常に遅く、夜だけ?起こるとのこと(これは、多分、昼は光合成で電子伝達は支配されてるためとおもうのですが)ですが何のためにやるのでしょうか?
 また、この呼吸はPQ(プラストキノン)が夜間、何かによって還元され、酸素によって再酸化されると聞きましたが、酸化剤は酸素、還元剤は植物でいろいろということでしょうか? それから酸素によって再酸化されるはずなのに、光合成のPSIの構成物であるチトクロムなどが、仮に鉄不足などで減少した場合、PQが過剰に還元されQA(PSIIの第一電子受容体)へ電子が逆輸送されることがあると聞いたのですが。前述しましたようにPQの再酸化は酸化剤(酸素)によるので、チトクロムなどのPSIIの下流側は関係ないと思うのですが。・・ここのところがクリアになれません。すいませんが、是非、教えて下さい。(2006.12.13)

A:まず、おそらくクロロレスピレーションという言葉は、葉緑体呼吸と訳されていますので、原核生物では使わないと思います。シアノバクテリアなどに見られるものは、普通の呼吸であり、これが、光合成と一部の電子伝達鎖を共有していると考えます。いずれにせよ、電子の流入経路は、NADH脱水素酵素複合体(NDH)が主で、もしかしたら、フェレドキシンからプラストキノンへの経路もあるかも知れません。電子はプラストキノンからは、シアノバクテリアでは、チトクロームb/f複合体とチトクロームcを通って末端酸化酵素に抜け、葉緑体ではおそらくシアン耐性経路のAOXに抜けて、酸素で酸化されると考えられます。酸素で酸化されると言っても酸素との直接の反応ではなく、末端酸化酵素もしくはAOXによる酵素的な酸化ですから、当然、途中のチトクロームなどが阻害されれば、プラストキノンプールは還元されます。還元剤となるのは、通常はNAD(P)H(とフェレドキシン)だと思います。何のため、ということについては、シアノバクテリアにおいては暗所での呼吸のためであり、暗所でのエネルギー生産には呼吸が必要です。葉緑体では今ひとつはっきりしませんが、光化学系Iの周りのサイクリック電子伝達系路と成分がかなり重なっており、こちらと一緒に考える必要があるのかも知れません。(2006.12.13)


Q:薄層クロマトグラフィーで植物の色素同定の実験をやったのですが、観察されたRf値と見本として載せられていたRf値が一致しないのは、どういてですか?分子の極性から、考えるらしいのですが・・・。また、問題の物質が何であるか確実に同定するためにはどのような実験を行えばよいのでしょうか?(2006.12.4)
 Rf値がカロチン>クロロフィルa>クロロフィルbの順になるのは、なぜですか?フィコビリンもクロロフィルもそれ自体は疎水性の程度に大きな差はないのに、藻体からクロロフィルだけがジエチルエーテルで抽出されるのはなぜですか?(2006.12.4)

A:これらの質問に関しては、FAQのうち、「光合成に関する中学生・高校生向けの実験について」に答えが出ていますので、そちらをご覧下さい。(2006.12.4)


Q:TLCで芳香族化合物(スチルベン、桂皮酸メチル、桂皮アルコール)を分離した時には、展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル=7/1で使用したのですが、茶葉の分離のときには、展開溶媒をヘキサン/アセトン=7/3で使用しました。どうしてこの展開溶媒でないとダメなんでしょうか? また、他にはどんな展開溶媒で分離できますか?(2006.11.30)

A:光合成とは何の関係もないような・・・。
 そもそも「この展開溶媒でないとダメ」と判断した理由は何でしょうか。通常、展開溶媒はある一定の範囲内なら、「ダメ」ということはないと思うのですが。また、「他には」という意味がよくわかりません。展開溶媒というのは、むしろやってみて良いものを使うのが普通です。例えば、ヘキサン/アセトン=8/2にしても、おそらく分離はできると思いますが、そういう意味ではないのでしょうか。(2006.11.30)


Q:お忙しいところ失礼します。大気条件(二酸化炭素濃度350ppm)、気温25℃における、代表的な作物(ダイズ、トウモロコシなど)の光合成速度の具体的な値を教えていただけませんでしょうか。(2006.11.29)

A:トウモロコシはC4なので作物の中でも光合成速度が高い方ですが、二酸化炭素の吸収にして30 μmol/m2/sぐらいでしょうか。ダイズだとC3でイネよりは低くなり、トウモロコシの2/3から1/2ぐらいでしょうか。最近この手の質問が多いのですが、どうも生き物というものをわかっていないで質問されている場合もあるようです。植物の光合成速度というのは車のエンジンの出力とは違います。具体的な値を何に使うのかわかりませんが、環境条件によっていくらでも変わってしまうことを理解して下さい。(2006.11.29)


Q:当社はインターロッキングブロックなどコンクリート製舗装材を扱っているメーカーです。そのなかで、駐車場の緑化を行うブロックがありますが、ブロックとブロックの隙間(5cm程度)にノシバ・高麗芝(張り芝)・洋芝(播種)を生育させます。その際に 、日中車の駐車している下になる部分が生育不良(枯れてしまう)現象が目立ちます。
原因は光不足および水分不足が考えられるのですが・・・。芝の場合の光飽和点と光補償点(できればlxで)を教えていただけないでしょうか?また、光補償点以下の環境下にある植物は枯れると考えていいのでしょうか?芝の代りに日陰に強いタマリュウを植栽するケースがあります タマリュウの光補償点も教えてください。よろしくお願いします。(2006.11.28)

A:別に、僕のところにも、光補償点と光飽和点のデータベースがあるわけではないので、何々の種の光補償点を教えて下さい、といわれてもぱっと出るわけではありません。また、それらの数値は、植物によっても異なりますが、その栽培環境によっても変動します。単なる興味で質問する場合には良いのですが、お仕事に使うのでしたら、きちんとご自分のお使いになる植物種で、実際の環境で測定するべきかと思います。
 一般論としては、光補償点は5-50 μmol m-2 s-1ぐらいになることが多いかと思います(lxでとのお話ですが、植物にlxを使うことのばかばかしさについては光の単位をお読み下さい)。芝は陽生植物、タマリュウは陰生植物でしょうから、それぞれ5と50ぐらいと考えておけば、だいたいのイメージはつかめると思います。ただし、光補償点といっても、単にある時点で呼吸と光合成が釣り合うという意味での光補償点と、夜の影響を考慮した光補償点があります。後者の方が大きな値になりますし、実際にそれ以下では枯れる、ということになると、後者の光補償点が重要になります。また当然後者に関しては、夜の長さによっても違ってくることになります。光飽和点に関しては、高校の教科書などには、ある点に決まるような書き方がしてありますが、そもそも光合成の光依存曲線は飽和カーブを描くので、かなり概念的なものです。本当は、理論上飽和していると考えられる光合成速度の95%を与える光の明るさ、といった形にしないと定義できませんし、その定義を95%にするか、99%にするかで光飽和点は変わってきます。100%にすれば、理論上は光飽和点は無限大になります。一般的には陰生植物で数百μmol m-2 s-1以下、陽生植物で、1000 μmol m-2 s-1ぐらいでしょうか。(2006.11.28)


Q:βカロテンは可視光が吸収されるとどうなるのですか。(2006.11.25)

A:励起状態になります。
 これだけだとあまりにも素っ気ないので、質問されていない部分について少し解説しますと、昔はその励起エネルギーをクロロフィルに渡すことによりアンテナとして働くと考えられていましたが、実際には、β-カロテンの場合、エネルギーの移動効率はさほど高くないようです。(2006.11.25)


Q:連続の質問で、お手数おかけ致します。大気中のCO2増加量に比べO2減少量は、大気中の量が元々多いので観測が困難なようですが、最近の森林の減少とか物を燃やす事の増加による酸化によって、O2は減っていると思います。パーセンテージから言えば元々少ないCO2増加のほうが深刻な問題だけれど。
 有効なO2供給は、光合成だけだと思うのですが、例えば植物が光合成で酸素を全く出さないと仮定して、現在地上にいる動物の呼吸でO2の消費のみが続いた場合,大気中のO2はどのようなペースで減るのでしょうか?現在21%の大気中の酸素が、1パーセントとか5パーセントとか減少するのに要する時間のオーダーを教えてください。これもかなりアバウトでも結構です。宜しくお願い致します。(2006.11.23)

A:確認ですが、呼吸をするのは動物だけではありません。細菌も、植物自体も呼吸をします。おおざっぱな見積としては、数千年で地球上の酸素が全くなくなってしまいます。ですから1%減少するのには数十年でしょう。(2006.11.23)


Q:初めまして、環境問題関係のブログを書いています。以前の質問で、理想的な状態では葉の面積1㎡くらいで、人間一人分の呼吸をまかなえると言うことでしたが、植物が土地に密生していた場合について、教えてください。人間のCO2排出量を1日150gとして、雑草(たんぽぽやクローバーのような広葉植物)と芝生のような針葉の場合、それぞれ生息面積何平方メートルくらいで、人間一人の呼吸によるCO2排出を吸収出来ますか?アバウトでいいので教えてください。お手数おかけいたします。(2006.11.21)

A:FAQを見て頂くとわかりますが、その後計算し直したら、必要な葉の面積は2メートル四方(4 m2)ぐらいになるようです。ただ、呼吸による二酸化炭素排出が1日150gというのは少なすぎませんか?1kgという数字を見たことがあり、それを元に計算した記憶があります。。
 いずれにせよ、アバウトでよければ、葉面積=生育面積で近似するのが一番です。植物体が何重にも茂っているとしても、結局吸収できる光の量はその土地の面積で決まるわけですから。ということは、上記の計算なら最適条件で2メートル四方ということですね。葉が広いか細いかは本質的ではありません。C3、C4といった光合成のタイプの方が重要です。また、当然夜には光合成をしないし、朝晩は光が弱まります。それがどの程度寄与するかはその地方によって違うでしょうから、自分で適当な気象条件を考えて補正係数をかけることになります。(2006.11.21)

Q:素早い対応有難うございます。雑草に比べ芝生は、CO2吸収が3分の1くらいしかないと本で読んだことが有りますが、それは、芝生の性質ですか?それとも芝生は(刈ったりして)地面が見えるから、葉を敷き詰めた状態にならないからですか?
 関連ですが、ブナのような広葉樹のほうが、杉のような針葉樹よりもCO2吸収能力は高いと言いますが、これも同様の理由ですか?それぞれの大木1本で人間何人分のCO2を吸収するか教えてください。緯度とか大木の枝の張り方にもよるでしょうが、本当にアバウトでいいので教えてください。(2006.11.23)

A:「雑草」という種類の植物が存在するわけではありません。様々な植物を何も考えずに一括りにして「雑草」と呼んでいるような本があったら、眉につばを付けた方がよいですね。いわゆる芝草自体にはC4植物も多く、植物の種としてはむしろ光合成は高い方だと思います。ただ、おっしゃるように、刈り込み方などの栽培の条件によって全体の光合成が低下することは考えられます。しかし、それなら 5 cm まで刈り込むか、10 cm まで刈り込むか、といったことによって非常に大きく違うでしょうから、なぜ1/3などという細かい数字が出るのかはわかりませんね。
 一方で、針葉樹と広葉樹ではかなり光合成の速度が異なります。これに関しては、実際に葉の構造の違いが関与しています。その意味では、木は草に比べるとそもそも光合成能力が低くなります。植物種による違いはだいたい数倍程度です。環境条件によっても、光合成速度は数倍は異なると思いますので、環境条件がわからない状況での見積は、桁が違わなければよい方だと思います。
 いずれにせよ、「アバウト」でよければ、上に書いたように「葉面積=生育面積」で見積もればよいと思います。例えば、広葉樹は草の半分の光合成をすると仮定して、針葉樹は広葉樹のさらに半分の光合成をする、と仮定すれば、2メートル四方に葉を広げている針葉樹4本が最適条件で一人の人間の呼吸を支えることになります。あとは、どの程度の夜昼にするのか、木の大きさをどのように設定するのか、という前提条件の問題となります。(2006.11.23)

Q:夜中に質問したら、数時間後の日の出と共にご返事戴きびっくりしております。本日は勤労感謝の日で休日ですので、ご返事はいくら早くとも明日かと思っておりました。流石、光合成研究所だけあって、日が照るとお仕事なさるのですね(笑)。本当に感激いたしました。毎回素早い対応感謝致します。
 4つ目の質問お手数おかけします。現在地球上の植物は減っていますが、(海中の藻類もかなり減っているのでしょうか?)CO2濃度の上昇により、植物1本あたりの光合成は盛んになっているのですか?それとも酸性雨などの影響で植物は弱って光合成も弱まっているのですか?化石燃料の使用がなければ、地上の呼吸量と光合成量はまだ釣り合うことが可能ですか?それとも緑を増やさないと、呼吸過多でCO2が増えるのですか?
 人間1人のCO2排出量ですが、高木義之氏は、1日150gと述べています。(著書「新地球村宣言」p57)
 樹木の光合成ですが、枝を広げた面積が、2メートル四方でも、樹木の場合は、高さがありますので、密生していない場合、太陽が斜めから当たれば受光面積がかなり大きく、光合成もずっと増えると考えてもよろしいですか?密生しているところである程度高さが揃っている所では、水平面積で考えてよろしいと思いますが、いかがでしょうか?(2006.11.23)

A:二酸化炭素が上昇した状態で、植物の光合成がどうなるかに関しては、地球温暖化も絡んで様々な研究がなされています。必ずしも、一致した結果が出ているわけではないのですが、一般論としては、必ずしも光合成活性の上昇につながらないようです。「二酸化炭素が上昇した分、光合成が盛んになって二酸化炭素を吸収して、濃度は適当なところで落ち着くのではないか」という甘い予測は、どうも裏切られるようです。さらに言えば、地球温暖化と二酸化炭素濃度増大の因果関係についても、全ての人が認めているわけではありません。実は、地球温暖化が先で、結果として二酸化炭素濃度が上昇している、と言っている人もいます。このあたりは、今後も研究が必要でしょう。
 定量的な数値というのは、いろいろな人が確かめもせずに孫引きしたりしますので、注意が必要です。食い違いがある時は、全く別の数値から計算してみるのが一番です。例えば、手元の本によると呼気の酸素濃度は約16%とあります。大気中の酸素濃度は21%ですから、吸って吐くたびに5%酸素が減ることになります。逆に言えば、おおざっぱに言って約5%の二酸化炭素を吐き出すことになります。これは、別の文献で「呼気の二酸化炭素濃度は3%から6%くらい」となっているので、まあ正しいでしょう。一方で、大人は安静時に1分間に15回呼吸して8リットルの空気を呼吸するとあります。これは、別のところで1回の換気量が0.35−0.5リットルというのとだいたい符合するのでまあ大丈夫そうです。従って、8リットル/分×5%として、1分あたりに吐き出す二酸化炭素の量は0.4リットルになります。24時間あたりにすると、0.4×60×24=576リットルになります。二酸化炭素1モル(22.4リットル)の重さは44グラムですから、576/22.4×44=1131グラムとなります。とするとやはり150グラムというのはちょっと無理ではないでしょうか。世の中には非専門家の書いたうさんくさい情報があふれているので、なるべく自分で確認することが必要です。(僕も含めてですよ。僕自身は光合成が専門なので、人間の呼吸に関しては専門家ではありません。)
 最後に、太陽が斜めからあたる際の話ですが、1本だけ背の高い木が立っている場合には、確かに枝を広げている面積よりも受光面積の方が大きくなります。しかし、その場合には、いわば隣の陰になる面積を「借りて」いるようなものなので、広い面積について概算するような場合には意味がありません。また、いずれにせよ、もともと数倍の誤差を含む話ですから、角度を考えて補正するような問題でもないように思います。(2006.11.23)


Q:キクの苗(10cm)の二酸化炭素の吸収量はどのくらいですか?(2006.11.20)

A:キクできちんと光合成を測った例は知りませんが、まあ普通の草本と考えて良いと思います。10 cmというのは苗の高さでしょうかね。光合成は葉っぱでするものなので、それに関する情報がないと難しいのですが、まあ、合わせて10 cm四方分ぐらいの葉っぱがついているとすれば、最適条件で、1時間に20-30 mg程度の二酸化炭素を吸収するぐらいでしょうか。(2006.11.20)


Q:針葉樹(今回はスギ)の光合成速度の測定の方法をお聞きしたいです。広葉の場合、光合成測定装置(Li-6400)でチャンバーにはさめば面積あたりの光合成速度を測定できますが、スギのような立体的な針葉の場合はどうすればよいのでしょうか?
面積あたりの光合成速度を出している論文や、ドライウェイトあたりの光合成速度を出しているものもありましたが、具体的な手法については書いていなかったので、よい方法がありましたらよろしくお願いします。(2006.11.13)

A:予備審査などでばたばたしていてお返事が遅くなりました。おそらく、これは、光合成測定というよりは、研究手法全般に言えることだと思いますが、実験の目的が何か、ということが大事かと思います。
 測定した絶対値だけではあまりものが言えませんから、実際には、そのスギの中で何かの処理をした前後(もしくは異なる状態の間)の変化を見るか、他の植物と比較するか、そのようなことが目的なのではないかと想像します。前者の場合であれば、自分で何かの基準を決めさえすれば良いことになります。オーブンで何時間か数十度に熱して乾燥させたあとのドライウェイトを見ても良いでしょうし、クロロフィル量でも良いでしょう。デジカメで写真を撮って画像処理により面積を出してもよいかも知れません。一方で、後者の場合は、比較する他の植物でどのように測定していたかが重要になります。比較の対象についても自分で実験するのであれば、自分で基準を決められますが、他の人の論文と比較するのであれば、その論文で使っている基準を使わざるを得ません。また、比較の対象が、比較的似た構造をしているのであれば、葉面積などを比べるのでよいかも知れませんが、広葉樹と比べる場合には、むしろクロロフィル量やドライウェイトを比較しないと難しいかも知れません。
 また、実験が経時変化の観察を要求するのかどうかも大きな要因でしょう。光合成の測定自体は、非破壊的な測定なので、経時変化を見ていくことができますが、当然、乾燥させたり、クロロフィルを抽出したりしたら、そこでその植物体の測定はできなくなります。経時変化を測定したあと、最後にクロロフィルを抽出する、という方法もなくはないでしょうけれども、時間がたつ内にクロロフィル量が変化している可能性を排除できません。葉面積の測定は、非破壊的ですし、時間によっても、あまり変わらないでしょうから、経時変化を見たい場合には、そのような方法を取ることになるかと思います。(2006.11.15)


Q:学生実験で薄層クロマトグラフィーの実験を行いました。学校の実験テキストに載っている、Rf値で展開溶媒液ヘキサン:アセトン3:2の標準はルテイン0.55 ビオラキサンチン0.42となっています。実験でも、このような色の感じになっています。教科書の間違いではなさそうです。ほかの文献を見ると、Rf値がもっとこの2つは高いのですが、学校の教科書の意味はそういうことなのでしょうか?(2006.11.7)

A:どうも日本語の意味がよくわからないのですが・・・。「このような色の感じ」というのは何でしょうか?「教科書」というのは「実験テキスト」と同じものなのでしょうか、違うのでしょうか?「意味はそういうこと」というところの「そういう」というのはどういうことでしょうか?そのあたりを明確にして再度ご質問頂ければと思います。(2006.11.7)

Q:わかりにくくてすみません。実験テキストに、標品のTLC(展開溶媒へキサン:アセトン=3:2)のRf値が載っています。そこには、ルテイン0.55 ビオラキサンチン0.42 とクロロフィルよりRf値が低く載っています。しかし、他の文献には、ルテインやビオラキサンチンのRf値は同じ展開溶媒でも、0.6−0.7と記載されていますが、どちらかが間違っているというようには思えないのですが、なぜこのような違いがあるのでしょうか?と質問させていただきたかったのです。申し訳ありません。(2006.11.8)

A:なるほど。今度はわかりました。TLCのRf値というのは、展開溶媒によって異なるのはもちろん、温度、薄層の種類、展開を密閉容器で行なっているかどうか、といった条件によっても、変わってきてしまうのです。ですから、実際の値は、かなり幅を持ちます。おそらく、実験のテキストは、実際にそのシステムでやってみた結果の値が書いてあるので、実験結果と合うけれども、他の文献の場合は、薄層の担体の種類などが違うなどの理由によって、異なるのだと思います。絶対値は大きく変わりますが、相対的なバンドのパターンは、より再現性があると思います。それでも、展開溶媒が変われば変わってきますけれども。(2006.11.8)


Q:高等学校の生物の教科書において,水の分解は光を必要としない反応であると記述されていますが,光エネルギーによって分解されるともあります。高校生にも分かりやすく説明できるよう説明していただけないでしょうか。(2006.11.2)

A:僕も、高校の教科書を書いていますが、普通は「水の分解は光を必要としない反応である」とは記述しないと思います。水の分解は、酸素の発生を伴いますから、どのような条件で水が分解するかは、酸素発生を測定すればわかります。例えば、チラコイド膜を葉緑体から取りだして、酸素発生を測定すると、基本的に光を当てている間だけ酸素が出ます。
 そのような記述のある教科書の出版社名を教えて頂ければ実際の記述を調べてお答えするようにしますが・・・。(2006.11.2)

Q:さっそくの御返信ありがとうございました。教科書と出版社は高等学校 生物II 第一学習社 記載はP.88 4〜5行です。合わせて,ATPについても光を必要としないでよろしいのでしょうか。また,水の分解は結局光エネルギーによるものといっていいのですか。「記述しないと思う」の正確な解釈ができません。よろしくお願いします。(2006.11.8)

A:「記述しないと思います」というのは、僕にはそのような記述をするとは考えられない、という意味です。ただ、実際に該当箇所を読むと、そのように書いてありますね。しかも、おっしゃるように、その前のページには、「光のエネルギーによって分解される」と書いてありますね。
 生物の反応というのは、大抵ドミノ倒しのようなものですから、あることを「必要とする」かどうかは、定義によるかとは思います。例えば、極端な場合、アンテナのクロロフィルが光を吸収して励起状態になるには、光が必要だが、そのエネルギーが反応中心クロロフィルに渡って光化学反応が起こるのは、エネルギーさえ渡ればよいので、光は必要ない、という言い方だってできます。逆に、炭酸固定には、光のエネルギーを使って合成されるATPが必要だから、炭酸固定には光が必要である、という議論も可能です。その意味では、「水の分解は光を必要としない反応である」という記述を間違えと決めつけるわけにはいきません。ただ、前のページの記述とは整合しないように思います。
 僕は、「光のエネルギーを必要とする反応」を、「光に代えて別の物質などを加えることによっては起こすことができない反応」と定義してはどうかと思います。その場合、炭酸固定は、ATPとNADPHを加えて、酸化還元状態をチオレドキシンなどによって調節すれば反応が進みますから、光を必要としない反応になります。ATP合成は、チラコイド膜の内外にプロトン勾配を作れば進みますから、やはり光を必要としない反応です。一方で、水の分解は、光化学系に物質を加えることによっては起こせませんから、光のエネルギーが必要な反応です。このあたりが妥当ではないかと思います。(2006.11.8)


Q:はじめまして 最近カラムクロマトグラフィーによる色素の分離という実験を行ったのですが、黄色色素を単離させる際はヘキサンを吸着剤として使用したのですがクロロフィルなどの緑色色素を単離させる際はヘキサンとアセトンの混合物を使用しました。この違いは何によるものなのでしょうか?溶解度や吸着度の違いのせいでしょうか?教えてくださいお願いします。(2006.10.30)

A:黄色の色素のカロテノイドと、緑色の色素のクロロフィルを比べると、カロテノイドの方がより油に親和性が高く水に溶けにくい(これを疎水性が強い、といいます)という違いがあります。カラムクロマトグラフィーは、物質が溶媒に溶けて移動して、結果として分離するわけですから、ごく一般的に言うと対象とする物質が溶媒に溶けやすい方が分離が良くなります。ヘキサンとアセトンを比べると、ヘキサンの方が疎水性が強いので、より疎水性の強いカロテノイドの分離にはヘキサンを単独で使い、クロロフィルにはアセトンとの混合物を使った、ということではないかと想像します。(2006.10.31)


Q:種子にはデンプンと共にアミラーゼも含まれていますよね。よくわからないですが、私はそのアミラーゼでデンプンを分解するときにエネルギーみたいなものが生じて、植物は成長すると考えました。ということは、種子が発根する前とした後ではアミラーゼの働きの度合い(どれくらい働くかみたいな感じです)に変化は出るのでしょうか。また、この変化が出ないとしたら、他に何か変化する物質はありますか?わかりにくいでしょうか。すいません。(2006.10.26)

A:おっしゃるように、種子が発芽する際にはアミラーゼの働き(活性といいます)は急に高くなります。発芽してすぐには光合成できませんから、貯めていたデンプンを分解して、呼吸によってエネルギーを得ます。ですから、アミラーゼだけではなく、呼吸に関わる酵素などにも働きに変化が出るでしょう。種子というのは、いわば休眠状態ですから、そこから発芽によって活動を始める時には、アミラーゼはもちろん、おそらく非常の多くの酵素などが活発に働き始めると思います。(2006.10.27)


Q:二酸化炭素の添加量を変えてオオカナダモを育てる実験をしているのですが、多く加えたものほど育ちが悪く、あるものは枯れてしまいました。調べたところ、オオカナダモが二酸化炭素を添加して育てることに向いていないということは分かったのですが、なぜ枯れてしまうのかが分かりません。難しくなってもかまいませんので詳しく答えてください。お願いします。(2006.10.25)

A:どうやって二酸化炭素を加えたかにもよりますが。もし、重曹の形で加えたのでしたら、過去の質問に水草の培養とpHについての質問とそれに対する答えが参考になると思います。もし該当しないようでしたら、もう少し、どのような実験条件にしたのかを説明して頂けると答えられるかと思います。(2006.10.25)


Q:はじめまして。早速質問なのですが、以前、公共草地(牧場)を調査させてもらった時に牧草の7割〜8割はイネ科の植物で残りはマメ科の植物でした。私は牧草はすべてイネ科の植物だと思っていたのでそのことを牧場の管理の人に聞いてみたらイネ科のみだと酸素量が少なく窒素(?)が多くなってしまう、その調節のためにマメ科の植物を入れているとのことでした。イネ科も光合成するのに酸素量は少なくなってしまうのですか?(2006.10.23)

A:これは、「何の」酸素量が少なくなるのかによります。管理の人はそれを言っていましたか?光合成で作る酸素は、大気中に放出されます。しかし、牧草地でしたら、風もありますから、空気はどんどん入れ替わり、大気中の酸素濃度が高くなるようなことはないでしょう。あと、考えられるのは、土壌と、植物体自体です。しかし、どちらに関しても、マメ科とイネ科で、酸素濃度が違う理由は思いつきません。一方で、窒素に関しては、マメ科の多くの植物で窒素固定を行ないますから、マメ科を入れた方が、長期的には土壌や植物体の窒素含有量は上がると思います。ただ、これは、「イネ科のみだと窒素が多くなる、という話とは合いませんね。いずれにしても、光合成とは直接の関係はなく、窒素固定の関係だと思うのですが・・・。もう少し正確な情報が得られればきちんとお答えできるかも知れません。(2006.10.23)


Q:いきなりこんなこと聞いて申し訳ありませんが教えてください。海洋性珪藻でのカーボニックアンヒドラーゼ(Ptca1)の活性部位と反応機構を教えてください。(2006.10.21)

A:カーボニックアンヒドラーゼ(炭酸脱水酵素)は二酸化炭素と重炭酸イオンの間の反応を触媒します。活性部位に亜鉛が存在し、これが水分子とついで二酸化炭素を配位して反応が進みます。
 もし、一般論ではなく、海洋性ケイ藻でのPtca1に特別な機構を知りたいと言うことであれば、そちらの大学の松田さんが専門家ですので、そちらにお聞き下さい。また、松田さんへ提出するレポートか何かを書くためなのであれば、「質問のコツ」にありますように、ここはレポートの代作箱ではありませんので・・・。


Q:蛍光スペクトルの測定を行ったんですがStern-Volmerで計算した消光速度定数と文献値で計算した拡散速度定数の関係がどうしてもわからないんです。教えてください・・。(2006.10.20)

A:これはどちらかというと物理学の領域なので、僕の専門ではありませんし、どうも質問は、いろいろ前提が抜けているような気がします。スペクトルの測定と言うことですが、Stern-Volmerというのは、蛍光収率に関する式ですよね?スペクトルの測定でどのように収率に関係するのかがわかりません。また、「文献値で計算した拡散速度定数」というのも、おそらく実験をした人にはわかるのかも知れませんが、具体性を欠いていて何のことを指しているのかがわかりません。きちんと実験の条件を書いて、何を求めているのかを明確にしないと、質問自体が理解できないので、再度、具体的な点を質問して頂けますでしょうか。そうすれば、場合によってはお答えできるかも知れません。(2006.10.20)


Q:度々ホームページで拝見する「光合成活性」と言う言葉の意味がよく分からないのですが具体的に何を指す言葉なのか教えてください。(2006.10.19)

A:高校生であれば、酵素の「量」と「反応速度」というのはわかりますよね。量は、「何分子」や「何グラム」といった単位で示される、もの自体の量です。一方で、酵素が触媒する反応の速度は量だけでは決まりません。温度や基質の量によって変化します。反応速度は、通常、時間あたりで進む反応量(基質の分解量または産物の生成量)で示されるので、単位は、量を時間で割ったものになります。時間で割ってあるところが、運動の速度(単位は距離を時間で割ったもの)と同じなので、反応速度と呼ばれます。そして、酵素の反応速度のこと、もしくは、文脈によっては、酵素の量あたりの最大反応速度のことを、酵素の活性と呼びます。
 光合成でも、全く同じです。光合成は、水と二酸化炭素を基質として、酸素と糖を作る反応です。反応を触媒するのは、みな、やはり酵素の一種ですが、一つの酵素による反応ではなく、極めて多くの反応から成り立った複雑なものです。ですから、そのうちの一部の酵素の量をはかることはできますが、全体として光合成の量、というものは存在しません。ですから、必要な時は、クロロフィルの量か葉の面積を基準にします。では、反応速度の方はどうかというと、基質が減る速度などを調べることはできます。つまり、二酸化炭素が減る速度や、酸素が発生する速度などを測定すれば、光合成速度を求めることはできます。光合成速度は、具体的には「単位時間あたり、単位葉面積あたりの二酸化炭素吸収」で表されます。単位葉面積あたりの代わりに、クロロフィルの量あたりにする場合もありますし、二酸化炭素の吸収の代わりに、酸素の発生を使う場合もあります。
 最後に問題の光合成活性ですが、これも、酵素の時と同じで、光合成速度そのものを指す場合もありますし、最大反応速度を指す場合もあります。「光合成活性は、暗いところでは見かけ上、呼吸のためにマイナスの値を取る」という文の場合は、明らかに光合成速度そのものを示していますし、「イネはC3植物の中では光合成活性が高い」という文の場合は、最大光合成速度を意味しているでしょう。ですから、厳密な解釈を必要とする時は、光合成速度と言った方がよいと思います。しかし、漠然と、光合成の能力という意味のことを言いたい時には、光合成活性という言葉が使われます。(2006.10.19)


Q:クロロフィルa、bの溶液をそれぞれ調製し、その濃度を求めるため、それぞれの吸収極大におけるモル吸光係数を調べました。aのほうはみつけることが出来ましたが(663nmにおいて4.1×10の4乗)、bのほうを見つけることが出来ません。どのような本を探せば見つけられるのでしょうか。もしくは、その値を知っていたら教えてください。お願いします。(2006.10.18)

A:色素のモル吸光係数は、溶媒によって異なります。ですから、吸光係数が報告された元の論文を見て、その中で探した方が良いと思います。大学生なら図書館で雑誌を調べることはできますよね?
 R. J. Porra et al, (1989) Biochimica et Biophysica Acta 975: 384-394
これを見てください。(2006.10.18)


Q:TLC分析について質問です。スポットの位置は、官能基のちがいによってどのように違うのですか?たとえば、アセチルサリチル酸、フェノール、バニリンは、ベンゼン環についている官能基が異なります。TLC分析を行う前に、どの化合物のスポットが上になるか予想することはできますか?(2006.10.16)

A:同じような質問が過去に寄せられていますから、その質問と答えを読んで考えてもらうと多分答えがわかると思いますよ。(2006.10.16)


Q:光合成の全反応式を教えて下さい。(2006.10.15)

A:「全反応式」というのが何を指すのかがわかりませんが・・・。
よく、「一般式」と呼ばれるのは
 2AH2 + CO2 → CH2O + H2O + 2A
というのですね。ここではAに何が来ても構いません(高等植物の場合はA=O)。また、普通に光合成の反応は、と聞かれたら
 水+二酸化炭素+光→有機物(糖)+酸素
と答えるでしょうか。(2006.10.16)


Q:はじめまして。いろいろ勉強させてもらっています。ありがとうございます。今日、小学校の先生によるインゲン豆の葉から簡単にデンプンを取り出す実験を参観しました。海藻で同じ事ができるかと疑問に思い、身近な海藻である褐藻類のワカメを実験資料にしようと考え、少し調べてみたところ、褐藻類は光合成産物をデンプンとして貯蔵しないことを知りました。デンプンでなく、ラミナランという多糖類で貯蔵するとのこと。デンプンはヨウ素デンプン反応ですぐにわかりますが、ラミナランが存在することをどうやって調べたら良いのでしょうか?もし、高校でできる実験方法がありましたらお教えください。それから、ワカメなどの海藻の光合成色素の抽出方法は陸上の植物と同じように行えばよいでしょうか。回答よろしくお願いいたします。(2006.10.14)

A:僕自身、褐藻は扱ったことがないので、はっきりとは言えませんが、同化物質を定量したりするのは難しそうですね。ラミナランの他にも、アルギン酸、フコイダンといった多糖を多く含んでいて、ねばねばして扱いづらいですし。少なくとも僕にはお手上げです。
 光合成色素の抽出は、乾燥ワカメを細かくしたものに有機溶媒を加えたほうがむしろよいかも知れません。生ワカメを使った方が、色素の分解は少ないかも知れませんが水分(とねばねば)が邪魔をする可能性がありますし。ヒジキは難しいという話です。(2006.10.15)


Q:海水中で珪酸がなぜ重要なのですか?(2006.10.13)

A:「質問のコツ」は読みましたか?そもそも何でケイ酸が重要だと思ったのでしょう?また、「重要」というのは価値判断の伴う言葉ですが、誰にとって重要なのでしょう?そのあたりをきちんと説明して頂くとお答えできると思います。(2006.10.13)


Q:光合成のホームページを見ていて思ったのですが、光条件が植物の生活型分布を制限していないのだろうかと思いました。一般には、降水量と温度条件が決定要因と言われ、蒸発散力からの検討や温領指数も使われますよね。これらは確かに植物の分布をよく説明していると思うのですが、白夜になるような高緯度地方や雪に完全に覆われる多雪地帯では、かなりの期間にわたり、補償点以下の光しか得られないと思います。いかに冬季の代謝が低く抑えられているとはいえ、収支で言えばマイナスとなるでしょうから、これを上回る光合成が一年を通じて行える地域にのみしか樹林帯は成立しないと思うのです。また、緯度が低くなるにつれて、年間の受光量は多くなるでしょうから、これば分布に影響を及ぼさないかと思います。C4植物などは光の強い地域に良く適応していると思いますが、その分布と受光量の関係を示した物は残念ながら見ていません。ご指導いただければ幸いです。(2006.10.10)

A:もちろん光の環境は植物の生活に極めて大きな影響を与えます。ただ、考えなくてはいけないのは、降水量や温度といった環境要因は局所的な環境条件にあまりよらないのに対して、光条件は、たまたま南側に大きな木が生えていた、などといったことによって大きく影響を受ける点です。もちろん、直射日光が遮られるような条件では温度も低下するはずですが、光の強さの方が圧倒的に大きく変化します。また、植物が上に生長していけば、それだけで下の方の葉が受ける光は弱くなります。つまり、光の影響の場合は、気候帯などといったマクロな気象条件の影響よりも局所的なミクロの環境の影響が大きいために、マクロな影響が見えづらくなるのです。極地などではそれでも光の影響を無視できませんが、その場合は、温度などの条件も非常に特殊になりますから、結局、全体としては植生を温度や降水量によって説明することができてしまうことになります。(2006.10.11)


Q:光合成の際に必要となる水は,根の位置を起点とするとかなりの高さまで持ち上げられます.この吸引力の説明に毛管現象,根圧,蒸散力などがあげられているのですが,葉で作られるブドウ糖による濃度勾配は寄与しないのでしょうか?葉からの蒸散で水が失われれば,上部の方で濃度が濃くなるのですから,水を引き上げるのに寄与していると思うのですが,裏付けるような記載を見ていません.
 また,確かめるために以下の実験を考えています.ストローにティシュペーパーをつめて,ストローの両端に出したものを作り,上部を葉,下部を根に見立てる.ストローは茎となります.水道水と砂糖水の溶液を用意して,それぞれに人工植物を入れて,蒸発量を比較しようと思っています.仮説が正しければ,砂糖水溶液の方が早くなくなるはずですよね.もっとも,根から吸収する水分は砂糖水ではないので,実験自体に問題があるかもしれないと思っています.お考えなどいただければ幸いに存じます.(2006.10.9)

A:植物には、水分を移動する系が2つあります。道管と師管です。蒸散による水の吸い上げは道管を通して起こります。一方で、光合成産物は師管を通して運ばれます。師管の流れができる原因としては、おっしゃるような光合成産物の浸透圧の差があります。ただ、この場合、光合成産物を師管に輸送するためにエネルギーを必要とします。また、浸透圧の差が必要ですから、上と下が両方砂糖水では流れが起こりません。
 一方、道管には光合成産物は流れないので、こちらは原動力としては蒸散による引っ張りが主であり、その際に水の柱がとぎれないように毛管現象が働きます。根圧も寄与しますが、これはさほど大きくはありません。(2006.10.9)


Q:水と二酸化炭素からブドウ糖が形成されるところまではいろんな書物に出ていますが、糖になる酸素は、二酸化炭素起源でしょうか、水起源でしょうか?大学で習ったような記憶があるのですが、定かでありません。分子構造を見ると二酸化炭素は酸素と炭素が2本づつの足(O=C=O)で結びついており、水は酸素と水素が一本ずつ(H−O−H)なので、水から引っぺがす方がエネルギーは少ないのではと、推測しているのですが、確信が持てないでいます。 実は高校で光合成を習った際に、自作の分子模型では二酸化炭素の酸素と炭素を一本ずつでつなげていたので、どうしても、二酸化炭素と水から、ブドウ糖が出来ないで途方に暮れた記憶があります。なので、分子模型での組み替えも併せて示そうと思っているので、お教えいただければ幸いです。(2006.10.9)

A:高校の生物の教科書にもありますように、光合成の時に発生する酸素は水由来です。水分子中の酸素は、完全に酸素分子になってしまい、光合成の産物としては残りません。従って、糖の中の酸素は、二酸化炭素由来だということになります。
 結合を切るエネルギーは、結合が二重結合か、一重結合かには、必ずしもよりません。分子模型となると、なかなか言葉では説明しづらいですが・・・。二酸化炭素の固定は、リブロース-1,5-二リン酸(RuBP)という炭素を5つ持った物質に二酸化炭素(当然炭素が1つ)が結合して、3-ホスホグリセリン酸(PGA、炭素を3つ含む)という物質が2分子になります。二酸化炭素は、RuBPのいわば間に入り込んで分子を2つに切ることになります。この際に、二重結合、一重結合などは組み変わってしまいますので、あまり意味がありません。(2006.10.9)


Q:太陽の光でなく、蛍光灯の光などでも光合成するのでしょうか。(2006.10.7)

A:上に書いてありますが、「よくある質問のページ」をご覧になってから質問して頂けると繰り返しが避けられます。(2006.10.8)


Q:大学の生物実験で、藻類(海苔・ワカメ)を水に浸して細胞を観察するという実験を行いました。その結果細胞が大きくなっていきました。これは細胞のどのようなはたらきによるものでしょうか。光合成のはたらきによるものならば、光合成が起こり何がどのように変化したのでしょうか?回答をおねがいします。(2006.10.4)

A:光を当てたら細胞が大きくなった、というののなら、「光合成かも」と思うのも納得できますが、水に浸したのですよね。何で、光合成だと思ったのでしょうか?これは、学習の知識としては高校の生物で習うはずですが・・・。ヒントは海苔もワカメも海産の藻類だ、というところです。(2006.10.5)


Q:クロロフィルとカロチノイドの単離の仕組みについて、また、吸収帯の違いについて教えてください。(2006.9.29)

A:「について」何を教えて欲しいのでしょうか。「質問のコツ」は読みましたか?(2006.9.29)


Q:光合成反応でアスコルビン酸が電子伝達系にてuncouplerとして働くと聞いたのですが、どのような形で光合成を阻害するのでしょうか?(2006.9.29)

A:申し訳ありません。アスコルビン酸がuncouplerとして働くという話は全く聞いたことがありません。出典がわかれば調べてみることはできますが・・・。(2006.9.29)


Q:このサイトのおかげで大いに助かっています。本当にありがとうございます。質問なのですが、ビニルハウス内での栽培は数多く見られますが、光合成の観点から考えますと光強度が下がってしまう気がするのですが、実際ビニルハウス内での光強度の遮蔽率はどのくらいのものなのでしょうか?またそれを減らす方法はありますか?(2006.9.27)

A:ビニールで光が弱くなるのは、別に光合成の観点とは無関係だと思いますが・・・。これは、素材によりますから、一概には言えません。植物の種類によっては、わざと光の強さを落とすこともあるようです。また、素材自体もさることながら、汚れの付着や素材の劣化は非常に大きな要因になります。光強度の低下を減らすのには、汚れが付いたらこまめに落とすのがよいかも知れません。(2006.9.27)


Q:度々お世話になります。一般的に光合成速度というものは呼吸も含めた二酸化炭素吸収量を表すのでしょうか??また単位で/hrと良く使われているのですがどんな単位を表しているのでしょうか??サツマイモのようなシンクリミットがないようなものは窒素肥料や二酸化炭素を与え続けて光合成させても効果が出るのでしょうか??また、稲はサツマイモと比べてどうですか??簡単な質問ばかりをしてすいません。(2006.9.26)

A:光合成速度に関しては、呼吸を計算に入れるかどうか二種類の表記があります。光合成での出入りだけを考えた二酸化炭素の吸収速度は、総光合成速度、呼吸で失われる分を差し引いたものを純光合成速度と分けて表記します。どちらの場合もあり得るので、どちらなのか書いていないとわかりませんね。ただ、一般には光が充分にあたっていると呼吸速度は光合成速度の1割にも満たないので、それほど大きな差があるわけではありません。/hr というのは、単に1時間(hour)あたりということです。
 後半の質問は日本語としてよく意味がわからないのですが・・・。シンクリミットの場合、炭素が過剰になるので、窒素肥料を与えることは光合成に対してプラスに働くはずです。また、シンクリミットになっていない場合でも、一般的には、施肥の効果は出ます。二酸化炭素を通常条件よりも高くした時の効果は、シンクリミットでないもので出やすい、ということです。イネとサツマイモは何を比べるのでしょう?(2006.9.26)


Q:1。植物の葉中の硝酸態窒素濃度が高まると、植物体内のデンプンが糖に分解されて、窒素分と糖がアミノ酸に合成される。
2.植物体の硝酸態窒素濃度とオーキシンの濃度に相関がある。
との研究報告がありました。
 実際に植物を栽培する現場では、植物の茎の硝酸態窒素濃度を上げないようにすることでタンパク質合成を抑え、植物体が軟弱化しないように肥培管理します。硝酸態窒素濃度が上昇してしまった場合は、糖、アミノ酸、水溶性のカルシウムを水で希釈して植物体に噴霧し葉面から吸収させることで強制的に光合成過程を発現させ、硝酸態窒素濃度を下降させて生育の適正化を図ります。この場合、葉面に噴霧する成分としては、特に何が効果をより発揮できるのでしょうか。体験的には、ブドウ糖を散布したときが植物体の生育が適正になったと感じました。よろしくお願いします。(2006.9.23)

A:窒素の過剰というのは、あくまで相対的なものですから、光合成による炭素の固定との関係で考えなくてはいけない、というのはその通りだと思います。ただ、「糖、アミノ酸、水溶性のカルシウムを与える」というのは、僕には全く意味不明です。おそらく経験的に有効なのだと思いますが、どうも光合成の促進にはつながる理由が考えつきません。糖を与えるのは、炭素と窒素のバランス(C/Nバランス)を改善しようという意図かと思いますが、一般的には光合成遺伝子の発現をむしろ抑制します。アミノ酸は、炭素と窒素を両方含むので、C/Nバランスの改善につながる理由がわかりません。何か別の特別な働きがあるのでしょうか。カルシウムは光合成にとって重要な元素ですが、これも一般論としては足りなくて光合成の律速になるケースというのはあまり考えられません。これは、カリウムの間違いということはありませんよね。カリウムならまだわかるのですが。どうも僕にはお手上げです。光合成は光による反応ですから、一般論として一番有効なのは十分な光を当てることです。また、窒素は、自然界では決して過剰になる元素ではありません。ということは、栽培の現場では、施肥をしたところ、思ったより曇り続きでC/Nバランスが悪くなってしまった、というケースがほとんどではないでしょうか。とすると、光が弱くて光合成が抑えられているのを何か物質を与えることによって解消する、というのは極めて難しいように思います。(2006.9.24)

Q:先日は、説明不十分な質問にもかかわらず、丁寧なご回答を頂きありがとうございました。私は、花きの施設園芸の植物体と土壌の分析をしています。施設園芸では、自然界でありえない濃度の無機成分を化学肥料で施用ています。その結果、曇天が続く時期には、晴天時に比較して植物体内の無機成分濃度が高くなります。そのような状態のとき、植物の生命活動は地上部分はもちろんのこと、地下部分でも緩慢になっていると思うのですが、先生はどのように推測されるでしょうか。お聞かせください。(2006.9.28)

A:地下部の生命活動といっても色々あるでしょうけれども、代謝として重要なのは呼吸でしょうか。呼吸の速度は植物がどれだけエネルギーを必要としているかによって左右されますが、どれだけエネルギーを必要としているかは、どれだけ生育しているか、に依存し、どれだけ生育しているかは、どれだけ光合成をしているかに依存します。従って、光が弱くて生育速度が遅くなっている状況では、呼吸などの速度も低下しているのではないかと推測します。おそらく呼吸以外の生命活動も同様ではないでしょうか。(2006.9.28)


Q:初めまして。CAM植物はC3植物に比べ優れた点はあるのでしょうか?よろしくお願いします。(2006.9.23)

A:乾燥地では、昼間に気孔を開くと体の中の水分が気孔を通してどんどん失われてしまいます。一方で、気孔を閉じればそれは防げますが、今度は光合成に必要な二酸化炭素を取り込めなくなってしまいます。これと、CAM植物の性質を考え合わせれば優れた点はわかりますよね。CAM植物は、乾燥地によく見られます。(2006.9.23)


Q:人間の場合、でんぷんは酵素によって分解されて、吸収されますよね。植物の場合はどうなんですか?植物も何らかの酵素がでて、分解されるのでしょうか?分かりません。教えてください。(2006.9.22)

A:はい。その通りです。植物の場合でも、デンプンは酵素によって分解されて使われます。人間の場合は、唾液にアミラーゼと呼ばれる酵素があって、デンプンを消化しますが、例えば植物の種子が芽を出す時なども、種子に貯めたデンプンを分解して使うためにアミラーゼが働きます。(2006.9.23)

Q:本当にいつもありがとうございます。すごくすごく助かっています。植物が発芽するときにアミラーゼを使っていると、どうやればわかるのですか?ヨウ素液をかけて、だんだん色が消えていくのを観察しようにも、種にどうやってヨウ素液をかければいいのか分かりません。中学生にできる簡単なやり方ありませんか?教えてください。(2006.9.25)

A:一つの方法は、ダイズのような大きな種子を使うことでしょう。水につけて柔らかくしてから真ん中で切って、横断面をヨウ素液によって見ることは可能だと思います。
 あと、酵素の作用を見ようと思ったら、1%ぐらいのデンプン(片栗粉で大丈夫かな)を含むゼリーを(寒天か何かで)作って、そこに、水につけて柔らかくした種子の断面をぴたっと置いてデンプンが分解されるかどうか見る、という実験も可能かも知れません。1日ぐらい置いてから、ヨウ素液をかけて、さっと洗い流せば、デンプンが分解するかどうかを見ることができるでしょう。種子を水に浸す時間を変えると、いつ頃アミラーゼが出てくるのかがわかるでしょう。この時に、実験自体がうまくいっているかどうかを調べるため、唾液をしみこませた紙を置いてみるとよいかと思います。ちょっと高度かも知れませんが、頑張れば何とかなるのではないでしょうか。(2006.9.25)

Q:人間で、でんぷんに対してアミラーゼが働くのに最適な温度は体温ぐらいですよね。植物の場合はどうなんですか?体温とかないですよね。(2006.9.28)

A:アミラーゼに限りませんが、植物の場合、その生命活動の最適温度は、生育温度近くになる傾向があります。植物では、細胞の温度はほぼ生育温度になりますから、その意味では、体温(体の温度)が最適温度になるということもできます。(2006.9.28)

Q:そらまめをつぶしてヨウ素液を垂らし、しばらく置くと、ヨウ素液の色が消えました!! ということはそらまめにはアミラーゼだけでなくマルトースも含まれているということですか?あと、これはそらまめだけでなくでんぷんを貯める全ての植物について言えることなのですか?(2006.10.2)

A:どうも質問の意味がさっぱりわかりません。「ヨウ素液の色が消えた」というのは、ヨウ素デンプン反応によって出ていた色が消えた、ということですか?それとも、もともとのヨウ素液の色が消えた、ということでしょうか。それとマルトースはどう関係するのでしょうか。(2006.10.3)

Q:すみません。はしょりすぎた上に、間違いもありました。でんぷんに唾液を入れ、ヨウ素液を垂らすと、初めは青紫色になりますが、時間が経つと透明になりますよね。これは唾液にアミラーゼとマルターゼが含まれており、それらがでんぷんを分解するからですよね。そして、水をふくませ、柔らかくしたそらまめをつぶしてヨウ素液を垂らすと、初めは青紫色になったんですが、時間が経つとこれもまた色が消え、もとのヨウ素液を垂らす前のような状態になりました。これは、そらまめにアミラーゼとマルターゼがあるということでいいのですか?(2006.10.3)

A:なるほど、今度はわかりました。実験をやったら、ある結果が出ます。今回の場合、その結果から、アミラーゼがある、と推測するのは、よいと思います。ただ、マルターゼの方は何も言えません。なぜなら、ヨウ素デンプン反応は、デンプンがマルトースになっただけで消えるので、マルトースがさらに分解されたかどうかについてはわからないからです。
 さて、アミラーゼがある、と推測したとして、それで「いい」かどうかは別の実験で確かめてみる、というのが研究のやり方です。もし、色が消えたのが、本当に酵素のはたらきによるのだとしたら、酵素を、例えばゆでることによって失活させれば、色の退色はなくなるはずですよね。他にも、いろいろ実験を工夫することはできると思います。そのようにして、自分の推測が本当かどうかをを試す実験をさらに考えるところが、研究の醍醐味です。(2006.10.3)


Q:私は工業プロセスにおいて排出される二酸化炭素の有効利用について考えているのですが、一般的に需要が多く、二酸化炭素の高濃度化によって最も成長が促進される植物を教えていただけますか?そしてその植物は年間どの程度の二酸化炭素を消費が見込めますか?また、二酸化炭素の濃度上昇に伴い二酸化炭素吸収速度はどの程度まで上昇できますか?最後に、日本においてその植物は、大農園での栽培によって工業プロセスにて排出される二酸化炭素を吸収できるだけの可能性があるとお考えになられますか?(2006.9.21)

A:研究の対象として考えておられるのでしたら、まず、きちんと過去の文献を検索することをおすすめします。ただ、その際に、気を付けなければならない点がいくつかあります。
1.時間スケールの問題
 (A)ある瞬間に二酸化炭素濃度を上げれば光合成は増大します。これは、基質濃度を上げた時の酵素反応と同じです。
 (B)しかし、通常、二酸化炭素濃度を上げると植物の気孔は閉じるので、Aの状態は続きません。
 (C)さらに、より長期的には高い二酸化炭素濃度の植物が順化しますから、また状態が変わります。
 これらをごっちゃにして考えていたら、何もわかりません。
2.栽培条件の問題
 二酸化炭素の成長に対する促進効果は、同じ植物でも、植物の大きさ、温室などで囲っているかどうか、水を十分にやっているかどうか、など、栽培の条件によって大きく変化します。

 ごく一般論としては、お芋などの形で光合成産物を特定の器官にため込むタイプの植物の方が二酸化炭素の濃度の上昇が光合成に反映されやすいと思います。また、植物とは言えないかも知れませんが、藻類だと、二酸化炭素濃度の上昇がより直接的に光合成の上昇につながります。大農園での栽培、という形では、個人的には難しいように思います。ただ、温室での二酸化炭素補給というのは、既に現実に行なわれていますから、そこで使われる二酸化炭素を安価に作る、という経済的な誘導なら、現実に可能なように思います。(2006.9.21)

Q:昨日はご丁寧な回答ありがとうございました。私はシンクリミットというものを初めて知りました。すでに二酸化炭素濃度を増加させることで、植物の成長を促進できるという文献は数多く見られましたが、現実的には光や温度といったものが密接に関わってしまい制御が大変難しいようですね。二酸化炭素を安価で売ることで、市場が成り立つかどうかを検討する予定ですが、なかなか難しそうです。現段階での考えでは水素製造時に発生する二酸化炭素によってお芋を育てて、バイオエタノール化することでカーボンニュートラルを実現できる可能性を探ろうと考えています。
 質問に入りますが、芋のようなものは二酸化炭素の濃度を増加させればさせるほど光合成が促進できるものなのでしょうか?文献によるとppmオーダーのものが多く、もっと濃度が高い状態での性質を知りたいのですが。また、ある点で逆に下がってしまうものもあるようですね。条件次第では可能なのでしょうか??(2006.9.22)

A:あくまで一般論ですが、光合成速度は葉内二酸化炭素濃度が数百から千ppmで飽和します。これは、上記の(A)に相当する基質濃度の飽和の場合は、二酸化炭素濃度0.1%で十分だということですね。(B)のように気孔の抵抗を考えても、外の二酸化炭素濃度を1%程度まで上げれば、葉内二酸化炭素濃度は0.1%程度まで上がります。ということは、パーセントオーダーの二酸化炭素があれば、光合成には十分であり、それ以上上げても意味がないことになります。高濃度の二酸化炭素濃度によって、上記(C)のような順化が起こり、光合成がどうなるかは植物種や栽培環境によって異なりますから、一概には言えませんが、既に基質濃度として飽和している光合成の速度がそれ以上大きくなることはないでしょう。ですから、パーセントオーダーを超える二酸化炭素による光合成の促進を考えることは、あまり意味がないように思います。(2006.9.22)

Q:毎回お忙しいのにもかかわらず、ご丁寧な回答を頂ありがとうございます。二酸化炭素を多く吸収し、かつ地質の影響を受けにくく、さらにはバイオエタノールとして回収するといった植物を探しますとやはり先生の言われたとおり芋類が全てに当てはまり検討する価値があると考えているのですが、工学部のせいか文献検索をしてもなかなか芋についての光合成のデータが見つかりません。真に恐縮ではありますが、芋についての文献やデータなどをご紹介いただけたらと思っています。ぜひお願いいたします。(2006.9.24)

A:直接イモ類を用いた研究はぱっと思いつかないのですが、シンク・ソースの関係と二酸化炭素濃度の関係を日本で研究していらっしゃるのは、亡くなられた弘前大学の沢田先生と、あとは、帝京大学の臼田先生かと思います。臼田先生の今年出たばかりの論文がありましたから、そこから孫引きすれば、関連のある論文を調べることができるのではないでしょうか。(2006.9.24)


Q:前回、質問の回答をしていただき、ありがとうございました。それでは、反応中心コア複合体、LHCII、LHCIが光収穫系タンパク質とみなしてよろしいのでしょうか。その他にあれば、詳しく教えてください。できれば、それぞれの光収穫系タンパク質の役割も教えてください。(2006.9.15)

A:9月5日のご質問のことですね。基本的にはそれでよいかと思います。高等植物の場合は、その他、というのは特にないでしょう。ただし、どれも、タンパク質の大きな複合体であり、それぞれが数多くのタンパク質からなっていますので、もし、個々のサブユニットのタンパク質の種類数ということになると、その数は数十にのぼり、それらについては、ちゃんとした教科書を見て頂くしかないと思います。
 光合成には高校で習うように2つの光化学系がありますが、それぞれにその役割を担う反応中心複合体があり、LHCII は光化学系IIの、LHCI は光化学系Iのアンテナとして働きます。 (2006.9.15)


Q:ツユクサの表皮の気孔の周りの細胞に葉緑体がないのは何故ですか?(2006.9.15)

A:「気孔の周りの細胞」というのは、気孔を形づくる孔辺細胞以外の表皮細胞という意味でしょうね。葉の一番表面にある表皮細胞は、空気と接しており、細胞から水が失われるのを防ぐために特別な役割を持っています。そのような役割に特化したために、葉緑体は持っていないのでしょう。逆に孔辺細胞だけが表皮細胞の中で葉緑体を持っているわけですが、これは、気孔の開閉のためにエネルギーが必要なので、そのために葉緑体を持って光合成によりエネルギーを稼いでいる、と考えることができます。(2006.9.16)


Q:お忙しいところ、ご迷惑をおかけします。二つ質問があります。
 一つは、光を消すと、一瞬PGAの濃度が上がるのですが、その後減少する。ということを高校で習います。増加するのはわかるのですが、なぜ減少するのでしょうか。葉緑体の中では、PGAが他の物質、たとえばグリセリン酸二リン酸に変わるにはATPが必要であり、他の物質へのバイパス経路のようなものもないと聞いています。
 二つ目は、気孔は一般に夜閉じると習いますが、呼吸で生じた二酸化炭素はどうしているのですか?教えてください。(2006.9.12)

A:「増加するのはわかるのですが」ということですが、僕には実はそれさえよくわかりません。葉緑体内のATP濃度は、光を消すと1分ほどで減少しますが、元の半分ぐらいの濃度は残ります。つまり、光を消しても、ATP濃度は0になるわけではないのです。従って、PGAがグリセリン酸二リン酸になる反応は完全に止まるわけではありません。炭酸固定の代謝経路は複雑で相互に絡み合っていますから、環境が変化した時の代謝産物の一時的な時間変化は、なかなか一筋縄ではいかないように思います。ルビスコなどの活性も光によって影響されます。PGA量にメインに効くのはルビスコの量と活性状態、二酸化炭素濃度、RuBPの濃度、ATPの濃度のはずですが、その前後の反応によっても左右されるはずです。僕の現時点の知識では、申し訳ありませんが、確実な回答をできません。
 呼吸で生じた二酸化炭素濃度については、特に「どうしている」ということはないと思います。夜間は、細胞内の二酸化炭素濃度は上昇しますが、気孔を閉じていても、完全にガス交換が0になるわけではありませんから、それによって細胞が害を受けるような二酸化炭素濃度にはならないはずです。(2006.9.12)


Q:光の強度が強い時、特に日中など逆に光合成の能力が低下すると聞きました。メカニズムとしては光が強いためにクロロフィルが作り出した余剰なエネルギーが活性酸素を発生させ、この活性酸素がチコライド膜などを損傷するためと聞きました。この推論はあっているのでしょうか?また、このチコライド膜が損傷しているとすると、どのような方法で調べることが可能でしょうか?電子顕微鏡など直接的な方法で確認は可能でしょか?もしくはチコライド膜の損傷によるルーメン内容物の流出物を測定するといった間接的な確認になるのでしょうか?お忙しいところ申し訳ありませんが教えていただけると助かります。宜しくお願いいたします。(2006.9.8)

A:まず、日中の光合成の低下には二種類あります。一つは、おっしゃるような強光による光阻害です。チラコイド膜の損傷というのは、嘘ではないのですが、膜構造が壊れるわけではなく、膜の中のクロロフィルタンパク質複合体の機能が低下します。従って、物理的な観察により確認することは難しく、光合成の活性低下として測定する必要があります。また、一部の複合体のサブユニットは光阻害により分解することが知られていますので、電気泳動などといった方法により、分解産物を観察することも不可能ではありませんが、なかなか難しいと思います。強光による光阻害は、実は他のストレスと強光の複合ストレスによることが多く、自然界では、強光のみで光阻害が起こるケースは多くないと思います。
 もう一つのケースは、日中の水ストレス(土壌中の水分が少なくなって葉からの蒸散に水分供給が追いつかなくなることによって起こるストレス)によって気孔が閉鎖する場合です。この場合は、気孔の閉鎖という物理的な動きによって二酸化炭素の取り入れが阻害され、結果として光合成が低下するので、チラコイド膜や、その上のクロロフィルタンパク質複合体などには、全く損傷はありません。(2006.9.8)


Q:植物が光合成を始める時間帯と、光合成をやめ転流を開始する時間帯について教えて下さい。(2006.9.8)

A:これは、時間によって決まっているのではないのです。光合成は光によって進行する反応です。従って、夜中でも蛍光灯などで充分な光を与えれば光合成を始めます。昼間でも暗くなれば、光合成が止まります。
 転流の方はどうかというと、これは師管を通して起こります。そして、この師管の流れは、光合成産物の量によって左右されます。別に昼間は全く転流をしないわけではありません。また、昼間の光合成の稼ぎが少ないような場合、明け方近くになると光合成産物がなくなって、転流が止まることもあります。
 結論としては、光合成、転流共に、時間帯ではなく、光の条件などによって左右されるのです。(2006.9.8)


Q:定期テストで問題はふ入りのアサガオの写真が載っていて、ふ入りの部分とそうでない部分にアルミホイルを・・と、よくある問題でした。ですが回答は「葉の緑色の部分に光があたると、でんぷんができる」という回答が正解で、「ふ入りの部分でないところに光があたると、でんぷんができる」は不正解でした。理科の教師は「葉が緑色でないアサガオがあったらその問題を正解にする」といいました。アサガオの葉の色が緑色以外のものを知らないでしょうか?(2006.9.5)

A:アサガオは、江戸時代に様々な園芸品種が開発されていて、葉が柳のように細くなったものまでありますが、色はおおむね緑だったように思います。江戸時代の図譜には、葉が黄褐色に彩色されているものがあるようですが、実際の植物の葉がどうだったのかは知りません。(2006.9.5) 


Q:こんばんは。はじめまして。私はガラス温室で植物を育てていますが、不思議に思うことがひとつあります。植物の色が薄く葉がやわらかい時は、リン酸、カリを主に葉面に散布したら葉が固まり、色がのるとききました。日光だけでは固まりにくいのでしょうか。今の時期の日光は強いので当てないほうが良いともいわれたのですが、当てたほうが植物は元気にみえます。当てないほうがいい日光はあるのでしょうか。(2006.9.5)

A:窒素・リン酸・カリが植物の3大栄養素ですが、窒素が多すぎる条件では、ひょろひょろと徒長してしまいます。リン酸・カリを与えた方がよい、というのは、そのような時にバランスをとるためではないかと思います。「あてない方がいい日光」はないかも知れませんが、「強い日光を当てない方がいい植物」はあります。一口に植物といっても、千差万別なのです。例えば、トウモロコシを育てようとしたら、なるべく日当たりをよくする必要があります。一方で、コチョウランなどは、夏の直射日光を当てると葉が傷みます。人間でも、どのぐらい食べれば満腹するかは人によって違いますよね。植物も、種が違うものをごちゃまぜにして議論することはできないのです。(2006.9.5)


Q:高等植物の光収穫系タンパク質にはどのような種類のものがあるのでしょうか。(2006.9.5)

A:「光収穫系タンパク質」というのが、具体的に何を指し、どのレベルのことを聞きたいのかがわかりませんが、一応、レベルとしては大学生・一般ということでお答えします。光化学系Iも、光化学系IIも、どちらも反応中心に近い複合体はクロロフィルaのみを結合しており、反応中心コア複合体と呼ばれる場合があります。これに加えて、それぞれLHCI、LHCII と呼ばれるアンテナ複合体を持っており、これらは、クロロフィルaの他に、クロロフィルbを結合しています。クロロフィルaとクロロフィルbの量比は、それぞれ4ぐらいと、1.3ぐらいといわれております。つまりLHCIIでは、クロロフィルbをクロロフィルaに匹敵するほど持っている、ということになります。(2006.9.5)


Q:葉の厚い着生らんはCAM植物に該当するということですが、ノビル系のデンドロビュームはこれに該当しますか? それともC3 植物に該当しますか?また、この性質から、一般的には見落としがちと思われる、栽培上のポイントがあれば教えて下さい。(2006.9.3)

A:CAM植物を専門にしているわけではないので、残念ながら一般論でしかお答えできません。デンドロビウムは一般的にはCAM植物になると思います。ただ、ノビル系で本当にCAM型光合成を行なっているかどうかは知りません。一般にCAM植物は乾燥耐性はありますが、生育速度はさほど早くありません。ラン科ではコチョウランなどはいかにもCAM植物という感じですね。それに対してノビル系のデンドロビウムは栽培も容易で生育も速いので、CAM型の光合成をできるにしても、C3植物の性質をより多く残しているのではないか、という気が非専門家としてはしております。CAM植物といっても実はC3光合成もするタイプの植物は多く、特に若い個体、若い葉ではC3光合成をするといわれています。100%CAM植物、100%C3植物、というわけではない場合も多いのです。というわけで、申し訳ありませんが確定したことは言えません。
 栽培上のポイントといった場合には、あまり、一般的に見落とす、という点はないように思います。純粋に光合成から見た場合は、CAM植物の方が当然昼間の乾燥に対して強くなります。また、生育速度は遅いので、肥料などは少なくてよいはずです。(2006.9.3)


Q:今人工の蛍光灯をあてているのですが、なかなか泡が出てきません。光合成しているのでしょうか?(2006.9.2)

A:これはペットボトルを使っての酸素発生実験でしょうか。だとすると、蛍光灯を何本使っているかにもよりますが、光が弱い可能性があります。蛍光灯の場合、白熱灯に比べれば発熱が少ないので、温度が上がらない限りなるべく本数を多くして近づけると何とかなるかも知れません。でも、本当は昼間太陽の光でやる方が早いと思います。また、ペットボトルの方法の場合には、水をどうしているかにもよりますが、あててすぐに泡が出るとは限りません。特に一旦煮沸した水を使った場合などは時間がかかります。(2006.9.2)


Q:薄層クロマトグラフィーの手法を用いて光合成色素の分離をしました。光合成色素として、クロロフィルa、bや、カロチンなどが含まれているのはわかったのですが、緑葉が何種類も色素を持っているのは、吸収する光エネルギーの量が関係しているのでしょうか?(2006.9.2)

A:これについては、以前の同様の質問に対して答えておりますので、FAQをご覧下さい。(2006.9.2)


Q:一定の光量における光合成速度の速い植物、藻類を探しています。光飽和点が高くて、光量を上げるほど益々活発に光合成する植物とか藻にはどのような物があるのでしょうか。 また、その時の光合成速度の値はどうなっているのでしょうか。よろしくお願いいたします。(2006.8.31)

A:基本的には、C4植物が光飽和点が高く、光合成速度の絶対値は大きくなります。トウモロコシなどはかなり高いですね。ジョンソングラスなど、たちの悪いとされる雑草は、たいてい光合成が高いと思います。藻類では、僕の経験からすると好熱性のシアノバクテリアは生育が速く、光合成活性も高いと思います。
 藻類での値はぱっとでないのですが、C4植物の光合成の最大活性は、40 μmolCO2/m2/s 近くあったように思います(葉1平方メートルあたり、1秒あたりの二酸化炭素吸収速度です)。


Q:二酸化炭素を取り込むとき、大気中に含まれる窒素酸化物や大気汚染物質も同時に取り込まれると聞きました。では、取り込まれた窒素酸化物や大気汚染物質は取り込まれたあと、どうなるのですか?(2006.8.30)

A:「取り込む」といっても、気孔からの二酸化炭素の取り込みは、単に穴を通って気体の分子が動くだけで、別に積極的に輸送する仕組みがあるわけではありません。それは窒素酸化物などでも同じです。取り込まれたあとも同じで、葉の外にたくさん窒素酸化物があれば、細胞の中にとけ込む量も増える、というだけのことです。細胞に溶けた物質は、それが細胞によい影響を与える場合もあれば、悪い影響を与える場合もあります。大気汚染物質の1つのオゾンの場合などは、活性酸素の一種ですから、細胞の中の物質を酸化してしまうなど、細胞に悪い影響を与えます。一方で、そのような場合、活性酸素を消去するような酵素や物質の量を増やすという応答も見られることがあります。(2006.8.30)


Q:初めまして。中一の子供が自由研究で、双子葉類としてミズヒキ、単子葉類としてカノコユリ、と、シダの葉を同じ位の表面積分採り、耐熱性のポリエチレンの袋の中でつぶしてから約65度の温水で抽出し、コーヒーのフィルターペーパーでろ過、ヨードチンキの5倍希釈液でヨウ素デンプン反応を試みました。ミズヒキははっきりと反応しましたが、ユリとシダは、対照との差がはっきりしませんでした。調べたところ、単子葉類は糖葉が多いとのことで、ユリはそのせいかと思われますが、シダは何か原因が考えられますか。(2006.8.30)

A:僕はシダはよく知りませんが、わらび餅というのがある以上、デンプンは作りそうですね。とすると、あとは量の問題かと思います。もともとシダ類は光の弱いところに生育するものが多く、光合成速度はあまり高くありません。よくヨウ素デンプン反応に使われるアサガオでも、日差しが弱いとはっきりした結果が出ないことからわかるように、ヨウ素デンプン反応は、あまり感度のよい検出法ではありません。可能性としては、シダの光合成速度がミズヒキに比べて低かった、ということがありそうに思えます。ミズヒキ自体、あまり明るいところの植物ではありませんが、それでもシダよりは光合成速度が高いように思います。(2006.8.30)


Q:初めまして。お願いする側としてはまことに失礼だとは思うのですが、できれば早急にお願いできると嬉しいです。光合成の時、少ない二酸化炭素で酸素を多くつくり出せる樹木ってあるのでしょうか?また、そうするために、ほかに光合成に使うものはあるのでしょうか?もし、あるのなら、そのものの名前とかそれはどんなのものかを教えていただきたいです。よろしくお願いします。(2006.8.30)

A:実は、通常の条件では、光合成で吸収される二酸化炭素と発生する酸素は、必ずほぼ1対1になるのです。光合成で吸収される二酸化炭素は式で書くとCO2になります。同じく光合成に使われる水はH2Oです。一方で、光合成の産物である糖(糖が重合したものがデンプンです)は炭水化物で、文字通り炭素に水がついた形をしていて、式で書くと(CH2O)nの形になります。ここで n はブドウ糖では6ですし、ショ糖では12になります。さて、そうすると、光合成の式は nCO2 + nH2O -> (CH2O)n + ?O2 となりますよね。ここで?がいくつになるのか、ということですが、両辺を見比べると?のところには、n が入ることがわかります。つまり、糖やデンプンができる限りは、二酸化炭素が吸収される量と、酸素が発生する量は、等しいことになります。ただし、植物の種子などでは、デンプンではなく脂質を大量に貯める場合があります。その場合は、脂質を構成する原子を見ると酸素が少ないので、全体としてみれば発生する酸素の量が減る可能性はあります。ただ、その場合でも、光合成で最初にできるのはあくまで炭水化物なので、葉のレベルで短期的に見る場合には、酸素と二酸化炭素の量は1対1になるでしょう。
 つまり答えとしては、「少ない二酸化炭素で酸素を多くつくり出せる樹木」というのはあり得ないことになります。(2006.8.30)

Q:ご回答ありがとうございました。わたしはまだ中1で、「式」とか難しいことは分かりません。答えはわかったのですが、なぜそのような結果になるのかがわからないので、もう少し簡単に教えていただきたいです。よろしくお願いします。(2006.8.30)

A:そうですね。何と説明したらよいのやら。つまり、酸素はもともと植物にとって必要だから作っているのではなく、単にデンプンを作るためにできてしまう副産物なのです。デンプンや糖は、二酸化炭素1個に水を1個くっつけて酸素分子を1個はずした形になっています。とすると、デンプンや糖を作ろうとして1個の二酸化炭素を使うたびに、酸素が1個はずれてくるわけです。ですから、デンプンや糖を作る限りにおいては、二酸化炭素ちょっとで、酸素をたくさん作るわけにはいかないのです。・・・わかりますかね?(2006.8.30)


Q:光合成って曇りの日とか蛍光灯などの光でもできるんですか?(2006.8.29)

A:質問する時は「よくある質問のページ」を見てくださいね。どの程度の明るさの光が必要かについては、植物の種類によっても違います。でも、曇り空ぐらいであれば普通は充分光合成ができます。(2006.8.29)


Q:植物は光合成でデンプンと、ほかに何を作るんですか?教えてください。お願いします。(2006.8.29)

A:光合成は、二酸化炭素をデンプンなどの有機物に変える反応です。有機物はデンプンではなくてはいけない、というわけではないので、デンプンの代わりにお砂糖(ショ糖)を主に作る植物もいます。サトウキビなどは有名ですよね。有機物の他には、もちろん酸素を作りますが、これは、いわばしょうがなくできるもので、植物にとっては必要なものではないので、捨ててしまいます。(2006.8.29)


Q:宜しくお願いします。竹・笹に興味をもっています。先ごろ孟宗竹の新竹の葉を数えてみました。22000枚ほどありましたが、竹棹でも光合成をやっているのだろうと想像しております。光合成量など定量したものはあるのでしょうか。さらに、新しい竹と古い竹では表面温度(竹かん)が違うと感じますが(精密温度計がなくて測れませんが1度程度違う)クロロフィルaの退色によるものと考えてよいのでしょうか。(2006.8.28)

A:竹の専門家ではないので、一般的な生物学の知識からの推測ということでお許し下さい。竹の竹棹の緑色は、見るからにクロロフィルなので、光合成をしているはずですが、測定例は知りません。一般的な二酸化炭素の吸収を用いた測定方法で測定するのは難しいように思いますので、測定した人はいないのかも知れません。
 表面温度ですが、これは新しい竹と古い竹でどちらが高いのでしょうね。表面温度を左右する要因をいくつか挙げてみます。
1.クロロフィルaは新しい竹では多いので、それによって光の吸収が多くなります。光をより吸収する新しい竹の方が温度は高くなるでしょう。
2.おそらく新しい竹の方が、水分含有量が高いと思います。水は比熱が大きいので、手で触った時などは、水分が多いものの方が温度が低く感じます。この場合は、古い竹の方が温度が高く感じるでしょう。ただ、この場合は、実際の温度が左右されるわけではありません。
3.新しい竹の方が蒸散が盛んでしょうから、竹棹の中を水がどんどん上がっていっているはずです。従って、新しい竹では、例えば太陽の熱で温められても、中を上がる水によって熱が奪われることが予想されます。この場合には、古い竹の方が温度が高くなるでしょう。
 本当の原因は、なかなか頭で考えるだけでは難しいですね。簡単な実験をすればある程度の推測はつくように思います。(2006.8.28)

Q:葉を数えて気ずいたのですが、2枚葉と3枚葉とあり、維管束の道管の横配列穴に(2,3、2,3)関係があるのでしょうか。竹炭を電子顕微鏡で観察したところきれいに並んでいました。
 竹稈は触ると緑色は冷たく黄色に退色すると暖かく感じます。遠赤外の吸収波長のせいなのでしょうか。竹稈での光合成の立証試験はどのような方法がありますか。竹稈を水浸させ酸素(泡)の観察は行いました。(2006.8.28)

A:前半の質問は今ひとつ意味がわからないのですが、道管の通導量と葉の量によい相関があるということは知られています。古い竹が暖かいのでしたら、上記の2か3で説明がつくと思います。竹で光合成を調べるのは一般的な方法では難しいと思います。クロロフィル蛍光を用いた測定ならばできますが、専用の測定機器が必要です。原理などは、クロロフィル蛍光測定のオンライン教科書をご覧下さい。(2006.8.28)


Q:夏休みの自由研究で、日陰でもよく育つ植物(ヒイラギナンテン)を、日向と日陰で比べて本当にひかげでもよく育つのかを調べてみました。日陰のは葉が大きくとても緑が濃いし、葉もやわらかめ。日向のは葉が小さく葉は黄色いのが多く、葉はとてもかたかったです。母にどうしてか聞いてみたら、光合成の問題なんじゃないかといいます。まだ、学校で光合成をならっていないのですが、葉の色や大きさ、かたさでたくさん光合成をしたり、たくさん光合成をしすぎたりしないように葉っぱの色がうすかったりすることはあるのでしょうか。(2006.8.25)

A:光合成は、光を使う反応です。ですから、葉っぱ光を集めるのですが、そのために、葉に厚みを持たせて入ってくる光を逃さず吸収するようになっています。しかし、暗いところでは、もともと光が少ないので、葉っぱが厚くても下の方の層には光があたりません。どうせ光が下まで来ないなら葉を薄くした方がよいですよね。葉の薄さが柔らかさの一つの原因なのではないかと思います。そして、日陰の場合は、葉を薄くした分、少しでも葉の面積を広くした方が、少しでも光をとらえることにつながります。これで、大きさも説明できます。最後に色に関しては、3つ下の質問への答えをご覧下さい。(2006.8.25)


Q:シダ植物なども光合成してるのになぜ日当たりの悪い場所にいるの?(2006.8.25)

A:このような場合、二つ考え方があります。一つは、シダ植物も日当たりのよいところに生えたいのだけれども、日当たりのよいところはもっと生育のよい元気な植物によって占められてしまっているので、しょうがなく日当たりの悪いところで我慢している、という場合です。二つ目は、シダ植物は、最初から日当たりのよいところに生えるのはあきらめていて、強い光の下では生えられないけれど、代わりに少ない光でもちゃんと生育できるような体を作っている場合です。この二つは、シダ植物を強い光の下で他の植物が入らないようにして育ててみれば区別できます。一つ目の場合なら、すくすく育つでしょうし、二つ目の場合なら、むしろ暗いところよりも生育が悪くなるはずです。実際にどちらになるかは、シダ植物といっても、種類によって異なると思います。(2006.8.25)


Q:クロロフィルが何日ほどで分解されるかを調べるため、10日間葉を採取して、ペーパークロマトグラフィーをしました。このとき、採取した葉が古いものはカロテンが黒ずんでいました。クロロフィルが酸化してフィオフィチンになるということをこの質問箱で知りましたが、これはカロテンが酸化されたものなのでしょうか?また、採取した葉が古いほど、脱色するのがおそくなりました。脱色の原因に酸化がありますが、古い葉の方が酸化されているはずだと思っていたので、この結果が不思議です。それとも、これは採取したのが古い葉は乾燥されていて、濃い抽出液ができたので、ただ抽出液が濃いために脱色するのが遅いだけなのでしょうか?(2006.8.24)

A:これは、葉を取ってからある時間、そのまま放置して、その放置した葉から色素を抽出してクロマトグラフィーにかけた、ということですね。古い葉で脱色するのが遅いというのは、クロマトグラフィーを行なったあと、色素のバンドの色が薄くなるのが古い葉の場合の方が遅い、ということでしょうか。
 一応、そうだとして・・・。カロテンが黒ずんでいた、ということですが、本当に吸収に大きく影響するほどβカロテンが酸化すると、おそらくクロマトグラフィーでの移動度も変化すると思います。可能性としては、むしろ、別の黒っぽい物質ができて、それがカロテンと同じ位置に移動した、という可能性の方が高いかも知れません。その物質の起源は光合成色素かも知れませんが、別にカロテンには限らないと思います。クロマトグラフィーをしたあとは、色素はクロロフィルに影響を与える他のいろいろな物質と分かれるので、色が薄くなる速度はさほど変わらないことが期待されます。もし、抽出液の濃さが違ったのであれば、それが原因である可能性は高いように思います。
 実験というのは、やった実験から考察して、その考察を確かめるためにさらに実験をする、ということを繰り返すことによってすばらしい実験になります。もし、抽出液が濃いことが原因で色の変化が出たと考えたのでしたら、液を薄いものと同じぐらいまで薄めて再度実験をすれば、本当に濃さの違いが原因だったかどうかわかりますよね。それこそが本当の実験のやりかたです。(2006.8.24)

Q:ご回答ありがとうございました。また近いうちに、抽出液の濃さをそろえて実験したいと思います。ところで、ご回答において、「クロマトグラフィーをしたあとは、色素はクロロフィルに影響を与える他のいろいろな物質と分かれる」とありましたが、これは色素が分解されるということでしょうか。その色素がクロロフィルに「影響を与える」とはどういうことでしょうか。質問ばかりで申し訳ありません。よろしくお願いします。(2006.8.24)

A:「分かれる」というのは、色素が分解される、ということではなく、色素と他の物質が分離して別の所に来る、という意味です。葉っぱの中には、色素の他に、色素を分解する酵素なども含まれます。葉を採取して細胞などが壊れてくると、そういった酵素と色素が出会って、分解や修飾が進む可能性があります。しかし、クロマトグラフィーをかけるために有機溶媒で抽出すれば、酵素は有機溶媒に溶けないものが多いので、酵素の量は減りますし、少し残ったものも、クロマトグラフィーによって色素と同じ位置に来る可能性は低いでしょう。そのようなことを色素と物質が「分かれる」と表現したわけです。そして、「色素はクロロフィルに影響を与える」で文を切るのではなく、「色素は、クロロフィルに影響を与える他の物質と、分かれる」ということです。クロロフィルに影響を与えるのは色素ではなくて、他の物質、この場合想定されるのは、例えばクロロフィル分解酵素です。(2006.8.24)


Q:木の中には黄緑色と緑色をした葉があります。黄緑色の葉には光が当たっているけれど陰になっている葉は濃い緑です。これは光合成が行われている葉と行なわれていない葉ということですか?教えて下さい。公園でいつも不思議に思っています。(2006.8.24)

A:これは、植物の種類によっても違う可能性があります。
 1.樹木の葉は、まず形ができてから中身を詰めていくタイプのものがあります。つまり、最初はクロロフィルが少なく色が薄い葉も、だんだん色が濃くなっていきます。新緑がきれい、というのは、この初期の段階の葉が明るい緑に見えるせいです。光がよく当たっている場所では成長が盛んなため、若い葉の割合が高く、結果として色が明るいという可能性があります。
 2.一般には、暗い環境では、少ない光を集めなくてはならないために多くの色素を持つ傾向があります。そのために、暗い環境に育つ葉がより濃い緑に見える場合があります。
 3.一部の植物は、強すぎる光によって光合成が逆に阻害を受ける場合があります。そのような場合に、クロロフィルの量も減ることがあります。つまり、明るい(明るすぎる)環境ではクロロフィルが減ったために明るい緑色に見える、というケースです。ただ、このようなことが起こる植物の種類は限られます。
 「光合成が行なわれている」というのを、どのように定義するのかにも寄りますが、光合成の効率(当たった光あたりにどの程度光合成ができるか)ということで考えるのならば、クロロフィルが少ない方がむしろ効率は高い可能性があります。実際にどのぐらい光合成をしているかは、むしろ葉の気孔がどの程度開いているか、ということによっても変わりますので、一概には言えません。(2006.8.24)


Q:光合成でできたでんぷんを取り出すには、葉を水とあわせてミキサーで砕いてろ過し、沈殿物をヨウ素液と反応させる、というやりかたでもできるでしょうか。また、でんぷんにもいろいろな形がありますが、葉の大きさの違いが、でんぷんの大きさや形にも影響しているのですか?(2006.8.24)

A:前半のご質問ですが、基本的にできます。デンプンの粒が通る程度のフィルターを通して、その濾液を細い透明な容器にでも入れてしばらくおけばデンプンが白く沈殿するのを見ることができると思います。そうしたら上澄みをうまく捨てさえすればOKです。薄い時計皿のようなお皿に濾液を入れて、デンプンを沈殿させて、横から液を吸い取るのもよいかも知れません。もちろん葉には充分光合成をさせておくことが重要です。
 葉の大きさは、デンプンの大きさなどとは直接関係がありません。(2006.8.24)


Q:私は自由研究で葉の1部をアルミ箔でおおい、よく光をあて、その後エタノールで脱色して水で洗い、ヨウ素液につけておおった部分は光合成をしないことを確かめる。とよくある実験をやりたいのでですが、ヨウ素液やエタノールの入手方法がわかりません。ヨウ素液はイソジンといううがい薬でも良いと聞きますがいいのでしょうか?エタノールの代用品としてアルコール除菌スプレーで大丈夫と母に言われたのですが、果たして代用になりますか?教えてください。(2006.8.24)

A:はい。どちらも大丈夫だと思います。ただし、僕自身は試したことがありません・・・。イソジンは、簡単に言うとヨウ素を別の物質にくっつけたものの水溶液で、その物質からヨウ素が遊離してきます。アルコール除菌スプレーもエタノールを60%程度含んでいるようですので、使えるでしょう。ただ、エタノール以外の物質も少し含むようなので、どうせ薬局に行って買うのなら、「消毒用エタノール」というのを買った方がよいかも知れません。これだとエタノールを80%弱含んでいるはずです。(2006.8.24)


Q:光合成に使用する時間帯別の給水量はわかりますか?木1本あたりどのくらい給水しますか?(2006.8.22)

A:吸水量というのは、蒸散する水の量のことでしょうね。実際には、このような数字は、その日の温度、光の強さ、前に雨が降ってからどのぐらい経っているか、樹木の種類、樹木の大きさによって大きく変化しますので、答えることは不可能です。例えば、他の条件が同じだとしても、雨の直後なら、お昼前後の蒸散が一番大きくなるでしょうし、しばらく雨が降っていないために土がからからになっているような条件では、朝に蒸散が一番大きくなるでしょう。環境によって、蒸散の絶対量が大きく変わるだけでなく、どの時間に蒸散が大きくなるのかさえ異なるのです。(2006.8.23)


Q:光合成の時CO2が使われる証明ってゆう実験なんですがレポートに理論を書きたいんです。どう書いたらぃぃか教えて下さい。(2006.8.22)

A:どうも日本語がよくわからないのですが、学校で光合成の時にCO2が使われることを証明する実験を行なって、それについてのレポートを書くのだが、その時に、その実験の理論的側面を書きたいと言うことでしょうか。それとも、CO2が使われることを証明する実験を自分で考えてレポートを書きなさいと言われた、ということでしょうか。前者だとすると、僕にはどのような実験を指しているのかがよくわかりません。また、後者だとすると、質問自体がレポートの課題ということになりますが、この質問箱はレポートの代作箱ではありません。いずれにしても、質問内容をわかりやすく整理して再度質問して頂ければと思います。(2006.8.23)


Q:『すりつぶし加熱法』について生徒に紹介したところ、いまいちイメージがつかないようでした。そこで、もう少し具体的な方法を教えていただけるとありがたいです。質問としては、ヨウ素反応の基準とするデンプンは、薬品のデンプンで溶液を作り、それを基準としてもよいのでしょうか?(2006.8.21)

A:7つ下のヨウ素デンプン反応に関する質問に対する回答では、植物の種による違いを見る場合に、デンプンがたくさんある方の試料を順次希釈することによって比べられるのではないか、とお答えしたわけですが、市販のデンプンでいわば検量線を書くことももちろん可能だと思います。もっとも、ヨウ素デンプン反応は、あまり感度のよい検出方法ではないので、デンプンの量の差がある程度ないと区別がつかなくなると思います。
 また、偉そうに答えていますが、僕自身がきちんと実験をして条件を決めたことがあるわけではないので、どのくらいきれいに結果が出るのかについては、あまり自信がありません・・・。(2006.8.21)


Q:酸素をださない植物はありますか?また、その植物の名前はなんですか?(できれば画像も)(2006.8.21)

A:「植物」というのは、草や木ということでしょうね。それらを専門的には高等植物といいますが、それらの多くは光合成を行ない、その光合成は酸素を出すタイプの光合成です。ですから基本的には植物は酸素を出します。ただ、寄生植物の場合は、光合成を全くしないものがありますから、それらは酸素を出さないでしょう。寄生植物には色々ありますが、ギョリンソウなどが有名ではないでしょうか。googleのイメージ検索をすれば、すぐに画像も見られるでしょう。(2006.8.21)


Q:初めて書き込みますがお願いします。 何故、陰葉は陽葉よりも呼吸量が少ないのですか?教えてください。(2006.8.19)

A:この「何故」というのは、どのような得があって、という呼吸量が少ない「意義」を聞いているのでしょうか。それとも、どのような機構で、というメカニズムを質問しているのでしょうか。前者ですと、まず、呼吸が少ない方がせっかく作った有機物が分解されませんから得なのはわかりますよね。陰葉の場合は、これに相当します。一方で、陽葉は、光がたくさんあたって成長も早いので、その成長のためにエネルギーをたくさん必要とします。ですから、それをまかなうためには明るいところでの光合成だけでなく、呼吸もたくさんしなくてはならないのです。
 後者のメカニズムに関しては以下のように説明できます。陰葉では成長も遅いので、あまりエネルギーを使いません。そのような時には、呼吸を少しするとエネルギーが余るので、それによってそれ以上の呼吸が抑えられます。結果として、陰葉では呼吸の量が小さくなります。(2006.8.19)


Q:今回、自由研究に、「木の光合成による二酸化炭素の吸収率」を調べているのですが、良い資料がありません。なので、どうか教えてください。(2006.8.19)

A:これは、資料を紹介して欲しい、ということでしょうか。それとも木の光合成について解説して欲しいということでしょうか。樹木の光合成のことをまとめたやさしい本というのは、ほとんどないと思います。樹木は寿命が長いので、小型の実験植物に比べるとどうしても実験的なデータも少なくなります。僕自身も樹木の光合成を研究したことはありません。というわけで、なかなか難しいですね。もし、何かもう少し、具体的に樹木の光合成のこのようなポイントについて知りたい、ということがあれば、調べてみることができるかも知れませんが・・・。(2006.8.19)


Q:私は【師官と道官の位置】をしらべたいのですが、師官を通っている養分はヨウ素液で反応しますか!?できるだけ早めにオネガイシマス!明日にでもやるつもりなのでっ!!!!(2006.8.18)

A:残念ながら反応しません。ヨウ素液で色が付くのはデンプンなのですが、師管を通して栄養分を送る時には、デンプンではなくて糖の形にします。何か師管液と道管液を区別する手段があるとよいと思うのですが、思いつきません。難しいのではないでしょうか。(2006.8.18)


Q:植物では葉だけでなく茎も緑色をしています。したがって、光合成をしていると考えられますが、それを確かめるには、教科書に書いてあったようにエタノールとヨウ素溶液を使ってデンプンをつくっているか確かめる方法が簡単でしょうか?他にも自分でできる方法があったら教えてください。(早急に教えてください)(2006.8.18)

A:ヨウ素デンプン反応の方法が一番簡単だとは思いますが、茎の場合は、葉に比べて固いので、エタノールでクロロフィルを除くところなどがうまくいかない可能性はあります。茎の表面だけを薄く剥いで、充分、熱いお湯で処理するなどした方がよいかも知れません。
 このあとは、細かい話になりますが、もし興味があれば。ジャガイモなどはお芋の部分にデンプンを貯めますが、だからといってお芋の部分は光合成をしていません。光合成をしている部分からデンプンの原料が運ばれてくるわけです。茎の場合も同じで、正確に言えば、デンプンがあったからといって光合成をしていることの直接的な証明にはなりません。ただ、ヨウ素デンプン反応以外の実験はなかなか難しいと思います。薄く剥いだ茎をたくさん集めることができれば、それを水と共にペットボトルに入れて、光を当てることによって酸素の発生を見ることができるかも知れませんが、なかなか難しい気がします。(2006.8.18)


Q:サボテンを剥ぎ取ると白い液体が出て来ました。白い液体は、触るとネバネバしていました。この正体は、何なんですか?早めに返事をお願いします。(2006.8.16)

A:僕の所では光合成の質問しか受け付けていないんですけれどね・・・。
 植物は、道管の道管液、師管の師管液の他に分泌液を持つ場合があります。トウダイグサ科で有名で、ポインセチアなどは、傷つけるとやはり白い乳液を出します。トウダイグサの仲間には形態的にサボテンに近いものが多くありますので、おそらくそれではないでしょうか。(2006.8.16)


Q:自由研究で、光合成について調べています。光合成でデンプンができることはヨウ素液の実験で分かるんですが、どの植物がよく光合成をしているかを調べるためにデンプンの量をはかりたいと思います。何かいい方法はないでしょうか?(2006.8.15)

A:5つ下の質問の中で、すりつぶし加熱法というのが紹介されています。これだと、液体にヨウ素液を入れて色を見ることになりますから、ヨウ素液を入れる液体の濃さを変えれば、ある程度デンプンの量を見積もることができるのではないでしょうか。具体的には、植物Aの抽出液にヨウ素液を入れて色の濃さを見ます。次に、植物Aよりもたくさんデンプンを作る植物Bの抽出液を2倍、4倍、8倍と薄めたものにヨウ素液を入れて色の濃さを見ます。植物Aのの場合の色の濃さが、例えば植物Bの2倍希釈のものと4倍希釈のものの中間ぐらいの濃さになったら、植物Bの方が、だいたい3倍のデンプンを持っている、と見積もることができます。もし、植物Aの方のデンプンが多い場合には、そちらの抽出液を薄めることになります。あと、大事なのは、何を基準にデンプンの量を見積もるか、という点です。普通は、葉っぱの面積をそろえて比べることが多いでしょうか。(2006.8.15)


Q:自由研究で、学校の光合成の実験等で使用した植物と、バラやラベンダー等の、ベランダにある花の定番ともいえるような植物の光合成や呼吸についてのちがいを調べようとおもっているのですが、よい実験方法がうかびません。簡単で、はやくできる方法があるのであれば、教えてください。(2006.8.14)

A:漠然と「光合成や呼吸についてのちがいを調べる」と言われても、なかなか難しいですね。過去の質問「よくある質問(FAQ)」を見てみましたか?中学高校向けの実験のところに、いくつかの実験について載っていると思います。どんなものなら手に入れられるのか、どの程度の度時間をかけることができるのか、そういった条件によっても違いますから、一概には言えません。自分で考えてみて、もう少し、このような実験がしたい、ということが出たら、それについて具体的な質問をしてもらえれば、答えられると思います。単に、「これこれこのような実験をやりなさい」と言われてそれをやるのでしたら、自由研究になりませんし。(2006.8.14)


Q:こんばんは、僕は、自由研究で、光合成について調べようと思って、考えてみたのですが、石灰水も自分の手で作ってみたいと思いまして、質問します。他のサイトを、訪問して見たのですが、どのサイトも、若い理科教職員用の、HPと、なっていて、僕(中学生)にとっては、難しい方法ばかりなのです。是非、中学生でも、できる。簡単で、早くできる、石灰水の作り方は、ないでしょうか。ありましたら教えてください。(2006.8.13)

A:石灰水は、消石灰(しょうせっかい)を水に溶かしたものです。あまり溶けやすくないので、水に多めに消石灰を入れて、溶けなかった部分をこし取った上澄みを使います。消石灰は、学校でグラウンドに白線を引く時に使いますから、もし消石灰が手にはいるなら、すぐに作れますね。
 次に消石灰から作ろうと思った場合です。消石灰は生石灰(せいせっかい)に水を加えて作ります。海苔の缶などに乾燥剤として、半透明な粒状のシリカゲルではなく、白い粉末の生石灰が入っている場合があります。もし、このような形で生石灰を手に入れることができれば、それに水を加えて消石灰を作ることができます。ただ、水を加えると熱を出すので、十分注意する必要があります。例えば、たくさんの生石灰にちょっとの水をたらしたりすると、発熱によって水が沸騰して生石灰・消石灰を含む液体が飛んだりします。石灰水はアルカリ性が強いので、目に入ったりすると大変です。
 最後に、生石灰の段階から作る場合ですが、これはなかなか大変です。炭酸カルシウムを千度ぐらいに熱すれば、生石灰になります。貝殻などは炭酸カルシウムが主成分ですから、原理的には貝殻を熱すれば生石灰を作ることができるはずですが、家庭で千度に熱するのは難しいのではないかと思います。(2006.8.14)


Q: 二酸化炭素の量が多くあっても光合成は行われるのか?(2006.8.11)

A:「あっても」というのがよくわかりませんが、もちろん光合成をします。通常の濃度範囲では、「あっても光合成する」ではなくて、「あった方が光合成をする」ことになります。光合成は二酸化炭素を固定する反応ですから・・・。(2006.8.11)


Q:はじめまして。私は今、夏休みの自由研究で植物の斑について調べています。そのなかで、斑入り植物の斑が消える条件を知りたいと思い調べてみたところ、どうやら日光量に関係があるようだったので、斑入り(覆輪)の、日陰に置いてあったアイビーを日向に置いてみました。しかし、1週間近く経っても変化がなく、夏休み中に結果が出るか心配です。これからも同じようにアイビーの観察を続けるべきでしょうか、それとも別の植物で実験をするべきでしょうか?もし別の植物でやるとしたら、どのような植物を使うといいでしょうか、教えてください。よろしくお願いします。(2006.8.10)

A:植物のふ入りといっても、種類によってその原因は別々のことも多いのです。遺伝的に斑が入る場合も多いですが、ウイルスの感染によって斑が入る場合もあるようです。また、環境条件によって斑の量が変わる場合も確かにありますが、その場合も、同じ1つの葉で斑の量が変わるのか、それとも、環境条件を変えたあとに出てきた新しい葉で斑の量が変わるのか、二通りあるでしょう。
 僕自身はアイビーの観察をしたことはありませんが、ポトスの観察をしたことはあります。ポトスの場合、肥料を与えないでおくと、新しく出た葉の斑の量がだんだん増えていきます。そこに肥料をやると、再び緑色の部分の多い葉が出てきます。この場合は、もとからある葉の斑の量が変わるのではなく、新しく出てきた葉の斑の量が変わるだけのようでした。シロイヌナズナという実験によく使われる植物では、特定の遺伝子が壊れることによって、斑入りになる現象が知られています。この場合は、生育条件の光が明るいほど斑が大きくなる例が知られていますので、光条件が斑入りに影響を与える場合があることは確かでしょう。
 さて、実際に自由研究をどうするかですが・・・。自由研究としては、日向に移したことによって差が出た方が面白いのは確かですが、研究においては、「差がなかった」というのも一つの立派な結果です。せっかく観察しているのでしたら、そのまま続けるのも一つの手かと思います。斑入りのような現象は、変化が出るまでに時間がかかるので、今から新しくはじめても、きれいな結果が出るかどうかわかりません。続ける場合は、どのように「差がない」ことを示すのか、を考えた方がよいと思います。「ぱっと見た目に差がありませんでした」というのは、つまらないですよね。斑の量を、何とかきちんと数字の形で比較したいところです。その場合も、上に書いたように、1)昔の葉っぱが変化しているのかどうか、2)新しく出た葉っぱが変化しているかどうか、を分けて考えた方がよいでしょう。斑が多くなる場合、一度出た緑色の葉っぱが白くなるのと、新しく白い葉っぱが出るのは全く違う意味を持っていると思います。ただ、昔の葉っぱが変化しているかどうかは、日向に移す前にどうなっていたかをきちんと記録していないと難しいかも知れませんが。(2006.8.11)


Q:小学校の光合成の実験でヨウ素デンプン反応をしました。方法としては、すりつぶし加熱法(葉をすりつぶして水を加えて加熱し、糊状にしてろ紙でこしてヨウ素液を加える)で実験しました。草本の場合は、青紫色に呈色するものがほとんどでした。木本の場合、青紫色に呈色するものが多いのですが、クロマツは黄土色になり、ヒバ、クスは初めうす青紫色になるが、しばらく放置するとそれぞれ黄土色、赤色に濁ってしまいます。どうして呈色に違いがあるのか教えていただきたいと思います。デンプンの分子量の違いだと聞いたことがありますが、このことについても教えていただきたいと思います。(2006.8.10)

A:ヨウ素デンプン反応自体は、生物というより、どちらかというと化学の分野の問題で、必ずしも専門ではないので、あまり詳しくありませんが、お許し下さい。呈色反応で色が違う場合、原因は大きく分けて3つあります。(1)スペクトルが違う、(2)濃さが違う、(3)別の物質が混ざっている、の3つです。
 (1)ヨウ素デンプン反応は、デンプンのらせん構造の中にヨウ素が入り込んで色がつく現象です。この際に、らせん構造の長さによってスペクトル(=色)が変化します。デンプンには、直鎖状のアミロースと、分岐したアミロペクチンがありますが、アミロペクチンは直鎖状の部分が短くなって、結果としてより赤っぽい色になります。うるち米と餅米などでは、アミロペクチン含有量が違うので、ヨウ素デンプン反応の色が違うことがよく知られています。「分子量」というのは、直鎖状の部分の分子量のことかも知れませんね。
 (2)スペクトルが同じ物質でも、濃度が違うと人間の目には色が違って見えます。ヨウ素デンプン反応でも、極端な例としてヨウ素を過剰に入れてしまうと、真っ黒になってしまいます。それほどではなくても、濃さが違う溶液は、同じ物質でも色が変わって見えます。
 (3)当然、別の色を持った物質が混ざっていれば、色は変わります。すりつぶし過熱法の場合、クロロフィルやカロテノイドは水に溶けないので、色に影響はないはずですが、例えばフェノール関連物質などを持っている場合、すりつぶしたあとに空気酸化されて褐色から黒色のポリフェノールに変化して色が出る可能性はあるでしょう。皮をむいたリンゴを放っておくと茶色になるのと一緒です。
 これらの原因の中で、どれが該当するかは難しいところですが、「しばらく放置すると」というのは、フェノール関連物質の関与を疑わせます。木本植物は、野菜などに比べるとフェノール関連物質の量が多いことが知られています。(2006.8.10)


Q:緑色ではない葉は光合成をするのでしょうか?ご返答はなるべく早くお願い致します。(2006.8.8)

A:下を見ればわかるように一週間前にも、同じような質問が来ています。やさしい光合成のコンテンツの一つである「赤い葉っぱの光合成」をご覧頂ければわかるのではないかと思うのですが。もしわからなかったら、具体的にわからない部分を質問してもらえると、きちんと答えられるかと思います。(2006.8.10)


Q:食品の薬理効果を研究している企業研究者です。あるカロテノイド化合物に薬理効果があることが細胞レベルの実験を進めている上でわかりました。しかし、この化合物をDMSOに溶解して何度も冷解凍して用いると、劣化して退色したサンプルのほうが効果が高いように思える結果を得ております。「劣化した化合物溶液」を3次元のHPLCで「劣化していない化合物溶液」と比較しますと、化合物ピークは3割ほど減っていたのですが分解した化合物と思われるピークは全く確認されませんでした。劣化した化合物は、どこにいったのでしょうか。揮発したか、UV吸収を持たない化合物へと変化したのでしょうか。そこで質問なのですが、これらの化合物は退色するとどのような化学構造の化合物に変化するのでしょうか。HPを見て非常に詳しいと感じて質問いたしました。インターネットレベルで調べますとカロテノイドのポリエンの部分が酸化を受けて分解すると解説しているページもありました。レチノイドやテルペンに変化したのでしょうか。どうかご存知でしたら教えていただければ幸いです。(2006.8.4)

A:HPLCで検出されない理由としてはいくつか考えられます。カロテノイド類の吸収は共役二重結合の数によって決まりますから、そこが切れたり、一重結合になったりすれば、吸収は大きく変わってしまう可能性はあります。もう一つの可能性としては、分解産物が一様でないことが考えられます。凍結融解といった、ある意味で乱暴なやり方で分解した物質は、特定の単一物質に分解するのではなく、少しずつ構造の違った多様な物質に変化する場合がよくあります。そのような場合、HPLCでは非常に小さい数多くのピークになることが予想され、実際上はピークとして何も観察されない場合があります。もとがカロテノイドとしますと、揮発するような成分に変化した可能性はさほど高くないと思います。
 僕の専門はカロテノイドではありませんし、有機溶媒中の分解となりますと、一般的な生物学ですらありません。従って、分解産物が何かということに関しては、僕には予測がつきません。ただ、上記のように、凍結融解による分解は、単一の分解反応にはならない可能性が強いように思います。(2006.8.4)


Q:今理科の課題研究で植物の生息場所について調べているのですが。。。日陰に生息している植物は光合成をしているのでしょうか??していないのであれば植物は動く事ができないのでどのようにして養分を作っているのでしょうか??ご返答宜しくお願い致します。(2006.8.3)

A:「日陰」といっても、晴れた日の野外の日陰は、夜の照明された室内よりもよほど明るいことが多いのです。観葉植物などは室内でも育てますから、植物の種類にもよりますが、ある程度暗くても植物は光合成をすることができるのです。もっとも、真っ暗では光合成をできませんから、植物は生きていくことができずに枯れてしまいます。(2006.8.4)


Q:先日は光化学系Iの反応活性の測定法について詳しく教えていただきありがとうございました。今は各測定項目において予備実験を行い測定技術の習熟を行っています。先日伺った実験系では酸素電極を用いていましたがどうも今ある溶存酸素計では十分な検出精度を得ることができませんでしたそこで還元されると色の変化するメチレンブルーを用いて酸素濃度の変化をを検出しようと思いますが可能でしょうか?もしできないのであればどのような代替法があるでしょうか?(2006.8.3)

A:僕自身はメチレンブルーを使ったことはないのですが酸素濃度でもメチレンブルーの色は変化するのでしょうかね。おそらく、たとえ変化する場合でも、酸素濃度変化を色の変化として検出するのは難しいかと思います。これは、もともと溶液中にはかなりの酸素ガスがすでに溶けており、実際に変化する濃度のはその何十分の一かになるからです。酸素電極を使う場合などは、得られた信号から一定の電圧を引き算して、残りの信号を拡大することによって小さい変化を検出しています。おそらく、同様の仕組みが必要になるかと思います。
 代替法といっても、なかなか難しいですね。光化学系Iの活性測定は、専門家でもそれほど多くの人がやっているわけではありません。どのような機器が使用可能かによっても違いますし。どこにお住まいかにもよりますが、柏の研究室まで来て頂けるのでしたら、一度酸素電極を使ってみて頂くことも可能かとは思います。(2006.8.4)


Q:ナスの施設園芸場面での細霧冷房の情報を収集しています。細霧冷房を利用する際に良くないことは「植物が濡れた状態になること」と言われています。その要因は
1.直射日光の下で葉が濡れることでルビスコの数と活性を減少させる
2.気孔が閉じることによる低二酸化炭素状態
 でよいですか?また、1はどのくらい害があるものでしょうか?2は一度閉じるとどのくらいでまた開くようになるものでしょうか?(2006.8.2)

A:僕らの研究室でやっていたのは、インゲンの葉の濡れの影響で、ナスにそのまま当てはまるかどうかについてはよくわかりません。インゲンの場合を説明しますと、
 1.葉が濡れると気孔が閉鎖する
 2.気孔が閉鎖した状態で光があたると葉の中の二酸化炭素濃度が低下する
 3.二酸化炭素濃度が低下した状態で光が当たり続けると、ルビスコの量と活性が低下し、電子伝達活性も低下する
ということが起こっています。「気孔の閉鎖→低二酸化炭素濃度→ルビスコの活性減少」という因果関係になっているようです。
 気孔は葉が濡れると1分以内にほぼ完全に閉じた状態となり、濡れたままにしておくとその後数十分かけて半開の状態にまで戻ります。葉を乾かせば、すぐに気孔は開くのではないかと思います。ルビスコの活性は、24時間の「雨処理」により約50%にまで落ちます。(2006.8.2)


Q:質問なのですが、葉緑体は緑色なんですよね?それでは、植物によって赤や赤紫の葉がありますがそれはどのように光合成しているんですか?又、どうやって赤や赤紫の色を発色しているんですか???(2006.8.1)

A:やさしい光合成のコンテンツの一つである「赤い葉っぱの光合成」をご覧頂ければわかるのではないかと思うのですが。もしわからなかったら、具体的にわからない部分を質問してもらえると、きちんと答えられるかと思います。(2006.8.1)


Q:中学1年生です!!今、夏休みの自由研究に取り組んでいます☆ 質問なんですが・・・
1.昆布は、他の植物に比べると、光合成しずらいのですか?
2.又、学校では、光合成により酸素とでんぷんができるとならいましたが、やっぱり、昆布も光合成すると、でんぷんができるのですか?
3.もし、でんぷんが出来るとしたら、昆布のうまみ成分と関係していることは、有りますか?
4.ホウレンソウの鉄分などの成分なども光合成と関係していることは、有りますか?(2006.7.31)

A:まず質問1ですが、何かを比べる時には条件を同じにする必要があります。例えば、オリンピックのマラソンの金メダリストと100 m競争の金メダリストは、どちらが偉いですか、と聞かれても困りますよね。条件を同じにして100 m走らせたら100 m競争の選手が勝つでしょうし、42.195 km走らせたらマラソンの選手が勝つでしょう。同じように地上の植物と海中の植物を比べるのは不公平です。ただ、光合成に必要な光は、水の中では弱くなりますから、それぞれで一番よい時の成長(例えば1週間で重さが何倍になるか)を比べたら陸上の植物の方が有利でしょうね。
 2番目の質問についてですが、デンプンというのは、糖が何個もくっついたものです。ちなみに、普通のお砂糖(ショ糖)は糖が2個くっついたものです。コンブの仲間は、デンプンは貯めませんが、デンプンと同じように糖が何個もくっついた別の物質を貯めます。一般に、同じものが何個もくっついたものを重合体というのですが、重合体は安定なので、よく貯蔵するための物質として使われます。逆に言うと、他の物質とあまり反応しないので、うまみ成分にはならないでしょう。
 光合成の反応を行なうタンパク質の中には、鉄をくっつけたものがいくつもあります。鉄が完全にない条件では光合成はできません。ですから、その意味では鉄と光合成は関係しています。ただ、光合成以外にも鉄を必要とする反応はあります。(2006.7.31)


Q:小学6年生の授業です。でんぷんは,水と二酸化炭素を日光によって生成されることは知っています。では,5年生で学習した”元気に成長するためには,水と空気と温度の他に日光と肥料が必要である”というのは,どうなってしまうのでしょう。
1.でんぷんの生成に肥料は関係ないのでしょうか?
2.植物は,光合成によって無機物を有機物変える物でよいのでしょうか?
また,肥料の成分にもいろいろあるかと思いますが,
3.肥料は人間にとって害となる物(必要ない物)でよいのでしょうか?
バラバラの質問で申し訳ありませんが,よろしくお願いいたします。(2006.7.31)

A:水の分子式はH2Oで、水素と酸素からなっていることはご存じですよね。同様に二酸化炭素はCO2で炭素と酸素からなります。デンプンは、炭素と酸素と水素からなりますから、原料としては、水と二酸化炭素があれば十分、ということになります。一方で、光を吸収するのに必要なクロロフィルには、炭素、酸素、水素の他に、窒素とマグネシウムが入っています。また、光合成には様々なタンパク質が必要で、タンパク質には、炭素、酸素、水素、窒素の他にイオウが含まれます。つまり、原料として必要なものと、作る時に必要なものは違うわけです。例えば、サトウキビからお砂糖を作ることを考えましょう。サトウキビには砂糖が含まれていますから、他に何も必要ないか、というと、煮詰めるために燃料が必要だったりするわけです。その場合、砂糖の生成には燃料は、関係あると考えるのでしょうか、ないと考えるのでしょうか。それによって1番の質問の答えが決まります。
 2番目の質問は、日本語がよくわかりませんが、「植物は光合成によって無機物を有機物に変えているのでしょうか?」という質問ですか?それならば、炭素の同化という面ではその通りです。ただし、植物では、無機の窒素や、無機のイオウも、有機物に取り入れられます。それらも、窒素やイオウの立場から見れば、無機物だったものが有機物になるわけなので、それを含めれば、光合成以外でも、窒素同化、イオウの同化によって、窒素やイオウが有機物に固定される、という言い方はできます。
 3番目の質問も、日本語がよくわかりません。「色々ある肥料は、すべて人間にとって害になるか(必要ないか)?」という質問でしょうか。そもそも、「害になる」のと「必要ない」のは、まるで違うことなので、それらがなぜ一緒にされているのかがわかりません。また、「人間にとって」というのは、「人間が食べた時に」ということでしょうか。そのあたりをはっきりさせて頂くと、答えられると思います。(2006.7.31)


Q:自由研究の宿題で、『どうして葉っぱは秋になると紅葉するのか』という事について調べたいのですが・・・。どのような、実験をすれば良いのでしょうか??今は、夏なので「紅葉」をしていないのですが。できるでしょうか??(2006.7.31)

A:うーむ。夏に紅葉の実験をするのは難しい気がします。それだけでなく、テーマとしても難しいですね。「どうして」というのがどのような意味かにもよりますが。「どうして」というのが、「どんな得があって」ということでしたら、いまだに専門家の間でも定説がないと思います。また、「どのような反応がおこって」というメカニズムを知りたいのであれば、これも高校のレベルで細かい反応を調べるのは難しいでしょう。できそうなのは、紅葉が起こる時には、どんな色素が減って、どんな色素が増えているか、という「紅葉が起きる時には色素がどうなっているか」という実験だと思います。でも、そうなると、やはり夏には難しいと思います。やはり、なにか夏に(もしくは1年中)起こる現象を調べるのをお勧めします。(2006.7.31)

Q:ホームページ読みました。それで、夏におこる現象とは例えばどんなものがあるのですか??また、宜しければ、実験方法も教えて下さい。(2006.8.3)

A:夏は成長の季節ですから、光合成の研究としては、光と成長の関係でしょうかねえ。ただ、そこを考えるのが「自由研究」ですから。テーマと実験方法を教えてもらったら自由研究になりませんよ。本当は、まず植物を観察することから初めて、その中で疑問が生じてくると一番面白い研究になります。頭の中だけで考えた研究は、よくても1.5流の場合が多いものです。(2006.8.4)


Q:植物は、密度のうすい不安定な太陽光エネルギーをどのように濃縮し、安定なエネルギーに変換しているのですか?(2006.7.31)

A:大学生・一般レベルでのご質問とのことですが、具体的に何が知りたいのでしょうか。答えとしては、光合成の反応により変換している、ということになりますが・・・。「太陽光エネルギーを濃縮し、安定なエネルギーに変換」する仕組みが光合成そのものなのです。光合成は高校の教科書にも載っていますよね?光合成の仕組みの中でわからない点があるのでしたら、具体的に質問して頂けると回答することができると思います。(2006.7.31)


Q:はじめまして。先生のHPを見て勉強させていただいております。先生が研究を始めたきっかけとして『ミッチェルの化学浸透説』に興味をもたれたとおっしゃっておられましたが、そちらを調べたところ、あまり情報が見つからず、よく理解できずにいます。もし宜しければどういったものか教えてください。また、調べているうちにヤーゲンドルフという人がなんかしたと言うのを見かけたのですが、もし宜しければそちらもお願いします。蛍光とパルス変調に関係するか分かりませんが、御教授いただけると光栄です。よろしくお願いします。(2006.7.30)

A:化学浸透説とパルス変調の間には全く関係はありません。「調べたところ、あまり情報が見つからず」とありますが、googleで「化学浸透説」を検索すると、山ほど解説をしたページがヒットしますが・・・。
 化学浸透説というのは、光合成や呼吸で電子伝達が行なわれる際に、膜を隔ててプロトンが輸送され、そのプロトンの濃度勾配のエネルギーを使ってATPが合成される、というATP合成のメカニズムに関してミッチェルが提唱した説です。そして、ヤーゲンドルフは、プロトン濃度勾配によるATP合成を実験によって直接的に証明した人です。(2006.7.31)


Q:クロマトグラフィーは、極性の違いによる光合成色素の分離方法だと思うのですが、光合成色素の役割と極性の違いには何か関係があるのですか?例えば、クロロフィルaは光化学系の反応の中心ですが、ペーパークロマトグラフィーでは一番下に展開してきました。他の色素にもこのような関係があるのでしょうか。教えて下さい。(2006.7.30)

A:光合成色素の役割と極性の違いには直接的な関係はありません。ですから、一番下に展開したから反応中心である、といったような関係もありません。どのあたりに展開するかは、溶媒によっても違いますし・・・。(2006.7.31)


Q:唾液のアミラーゼ活性の実験で空試験の方が値が低くなってしまいましたが考えられる失敗理由はなんだと思いますか??(2006.7.28)

A:ここは、光合成質問箱なのですが??? それに最低限実験のやり方を説明しないとわかってもらえませんよ。この場合、デンプンの減少を見るので、空試験の方が値が高くなるはずだ、ということですよね。また、一般的には、実験をやっていて、アミラーゼを入れてデンプンが増加したら、おかしいと思ってやり直すと思うのですが、やり直しても同じ結果だったのですか?それともやり直さなかったのかな?実験というのは、頭を使わずに、単に言われた操作を機械的にやるだけではダメなものです。
 まあ、それはそれとして。一般的には、最初に入れるデンプンの量(もしくは他のものの量)が一定でなかった(間違えていた)、というのが一番ありがちです。その場合は、何回か実験を繰り返せば、毎回同じように間違えることはないでしょうから、平均などをとれば正しい結果が得られるはずです。(2006.7.29)


Q:南米のとある国にて、植物の挿し木増殖を考えています。難発根性の植物は、挿し木実施後の光合成を活性化することで発根を促進できると知り、トライしてみようと思っています。その為に、光の条件と二酸化炭素濃度をコントロールし(湿度は以前からコントロールしている)、発根率が向上するか実験したいのですが、まずは手作りの試験設備で試験を考えています。様々な試験の経験をお持ちとお見受けします。一般的な素材で、できるだけ安価にできる試験設備のアイデアを教えて下さい。(LED等は入手困難ですが、通常の電化製品等はこちらでも手に入ります。)ちなみに、現在考えているのは、天井の無い木箱を作り、その中に蝋燭を灯してCO2を出し、光源は市販の電気スタンドを設置。しかし、これでは二酸化炭素濃度を現状より上げることはできても、制御することにはなりません。昔、こんなのをやってみた等、アドバイスを御願いします。(2006.7.27)

A:僕自身は、挿し木実施後の光合成により発根が促進される、という話は聞いたことがないので、どの程度光合成が促進されればよいのかわからないので難しいところです。発根の促進には、通常、オーキシンという植物ホルモンが効きますが、これを試した上で、もしくはこれが効かない条件で、ということでしょうか。人工的に合成したオーキシンは園芸店などで発根促進剤として売っていますので、もし、まだ試されていないのでしたら、そちらをまずは試されることをお勧め致します。
 二酸化炭素濃度のコントロールは、一般家庭ではかなり難しいかと思います。通常実験室では、二酸化炭素ボンベを購入して、そこからの二酸化炭素と空気を一定の割合で混ぜ合わせることによってコントロールします。一般家庭で入手できる二酸化炭素源は、燃焼、動物の呼吸、ドライアイス、といったところかと思いますが、いずれも濃度をコントロールするにはむきません。二酸化炭素濃度を低い方にコントロールすることならできます。二酸化炭素はソーダライムを通すと吸収されますから、ソーダライムを詰めたビンなどに空気を通せば二酸化炭素濃度がほぼ0になった空気を作ることができます。これと通常の空気を一定の割合で混ぜ合わせれば、二酸化炭素濃度が低くコントロールされた条件を作ることはできます。ただ、光合成を促進する、という目的には意味がありませんね。
 ドライアイスはほぼ純粋な二酸化炭素の発生源になりますし、重曹に塩酸を加えるといった化学反応によっても二酸化炭素を発生させることは可能です。そのようなものがふんだんに手に入るのであれば、発生した二酸化炭素を空気と一定の割合で混ぜ合わせることによってコントロールすることができるはずです。しかし、この場合は、二酸化炭素を混ぜる割合は1%程度でしょうから、きちんとコントロールするためには流量計が必要になりますし、挿し木のように何週間も様子を見る、という実験にはむかないように思います。
 というわけで、どうも名案は浮かびません。お役に立てずに申し訳ありません。(2006.7.27)


Q:はじめまして。わからないことばっかりです。教えてください。光合成によって作られるでんぷんの量を調べるには、全く同じ葉があるとすれば、初めの重さを量り、片方だけアルミホイルをかぶせて一日おいてから、重さを量るとその差が光合成で出来た量だったり呼吸で減った量だったりするのですか?それだけでわかるのですか?不安です。教えてください。
 それから、クロロフィルが多い種類は光合成をたくさんするのですか?だとしたら、緑色が濃い種類のほうがより光合成するのですか?知りたいことばかりです。どうか、教えてください。(2006.7.26)

A:重さを量って光合成をどれだけしているか見積もる、ということは、原理的には可能です。実際に、30年ぐらい前まではそのような方法が使われていました。しかし、原理的には可能でも、いろいろと問題があります。葉は茎につながっているわけですから光合成をして作った有機物を葉に貯めずに茎の方へ送ってしまう(転流といいます)かも知れません。そうすると、実際に光合成をした量は多くても、重さの増加は小さくなってしまいます。もし、もっと詳しいことが知りたかったら、高校理科研究という小さな雑誌に書いた「光合成の測定」という文章を読んでみてください。高校の先生向けですから少し難しいかも知れませんが、全くわからない、というほどではないと思います。
 緑色の濃い種類と緑色が薄い種類の葉を同じ条件で比べた場合は、緑色の濃い種類の方がより光合成をする場合が多いでしょう。ただし、それだけでは決まりません。光合成には光と二酸化炭素と水が必要です。光と水は同じ条件で比べればよいのですが、二酸化炭素は、同じ濃度にしても、片方が気孔を閉じていたりすると二酸化炭素が葉の中に入れずにそちらの光合成は低くなります。従って、光合成をどれだけするかは、緑色の濃さだけではなく、葉の中にどれだけ効率よく二酸化炭素を取り込めるか、という葉の構造によっても変わってきます。(2006.7.26)

Q:ご解答いただきありがとうございました。『光合成の測定』を読みました。前よりはわかったのですがいざやるとなるとどうしたらいいかわかりません。自分なりに出した結論(今から下に書きます)の間違いを正してください。茎の1点に熱を加え、物資が葉から移動しないようにして、葉の半分にアルミホイルをかぶせる。一定時間経ってから葉の右と左から同じ面積分取り出して重さを比較し、光合成で作った量を求める。以上です。ずさんな文ですいません。(2006.8.7)

A:はい。大筋はよいと思います。ただ、茎の1点というのは、実際には、茎の周りに高温の水蒸気をあてる、ということをしていたと思います。栄養の通り道(師管)は殺して、水の蒸散(道管を通る)は妨げないようにする、ということが必要なので、それだけでも案外大変なのです。おそらく茎の太さ、植物の種類によっても、処理の方法は違うと思いますので、1回の実験で結果を出すのは難しいでしょう。最初はともかく、転流は無視して、葉の重さを比べてみてはいかがでしょうか。
 もう一つ考えられるのは、水耕栽培をすれば、根っこごと植物体の重さを量れます。植物体全体ならば転流のことは考えなくてもすみます。何かの芽生えをしばらく水耕栽培で育てて、一度水耕液から引き上げて水気を拭き取って重さを量り、また水耕液に戻して、光を当てる条件と光を当てない条件で育てます。例えば1日たって、また水気を拭き取って重さを量れば差を見ることができるかも知れません。(2006.8.10)


Q:はじめまして。私たちのクラスでは、今、課題研究というものを行っています。それで、私たちの班は、「光の波長の違いによる光合成への影響」を調べることにしました。カイワレダイコンを発光ダイオードを使って育てようと思っているのですが、ある参考書に「植物は補償点より大きい光の強さでないと生育しない」と書いてありました。それで、カイワレダイコンの補償点、光飽和点がどれくらいなのか調べてみたのですが、わかりませんでした。なので、カイワレダイコンの補償点と光飽和点の光の強さがどれくらいなのか教えてください。だいたい何ボルトぐらいの発光ダイオードを使えばいいのでしょうか?(2006.7.24)

A:まず、カイワレダイコンという種類のダイコンがあるわけではないので、念のため。ダイコンの芽生え、特に遮光して少し徒長気味に育てたものをカイワレダイコンと呼ぶようです。僕自身はダイコンで光合成を測定したことはありませんが、特にダイコンが特別な光合成をしているとは思えないので、光補償点は 10-50 μmol/m2/s、光飽和点は 500-1000 μmol/m2/s といった程度と考えておけばそんなにはずれないと思います。光の明るさの単位については、光の単位のページをご覧下さい。このμmol/m2/sという単位は、学校の蛍光灯の真下ぐらいが10、明るい曇り空が100、真夏の太陽の直射日光が2000といった所です。つまり、明るい曇り空ぐらいの明るさがあれば問題なく育つでしょう。
 発光ダイオードの電圧は、別にそれによって明るさが決まるわけではありません。一般に電圧が高いものの方が電流も多く流れて明るい傾向はあるかも知れませんが、電圧がわかれば明るさがわかるようにはなっていません。最近は、高輝度タイプ、超高輝度タイプなどというのが出てきていますので、一概には言えません。もちろん発光ダイオードを一度にいくつつけるのか、植物との間をどのぐらいの距離離すのか、といったことによってもまるで違ってしまいます。こればっかりは、実際に試してみないとわからないと思います。必要に応じて、発光ダイオードの数で調節することになるのではないでしょうか。発光ダイオードを用いた植物栽培装置というのが売られていますが、そのようなものでは、パネルに発光ダイオードを数百並べて明るい光を出しています。(2006.7.24)


Q:光合成について理科の自由研究で調べることにしたのですが、学校で決めた課題は30分でできる光合成の量にしたのですが、一番実験で光合成に使われている、葉はどれでしょうか。それと同じような大きさの葉は何があるでしょうか。教えてください(2006.7.23)

A:実験に使う材料は、その実験の種類によって変わってきます。例えば、ペットボトルに水と葉っぱを詰めて光を当てた場合の酸素の発生を見る場合は、高等植物の葉でもできなくはありませんが、オオカナダモなどの水草の方が適しています。ヨウ素デンプン反応でデンプンの蓄積を見るのでしたら、柔らかい草の葉が適しています。普通はアサガオなどがよく使われますね。まずは、どのように光合成の量を測るかを決めるのが最初になるかと思います。
 また、「同じような大きさの葉」というのは、比較の対象にするためにいくつかの植物を使う、ということでしょうね。そうであれば、野外を見回して、そのような大きさの葉を探す、というのも自由研究の重要なステップの一つです。生物の研究は、自然を眺めるところからスタートするものですから。(2006.7.24)


Q:植物(特に水草など)は、酸素が使われている量によって、光合成で酸素を作る量って変わるんですか?(2006.7.20)

A:「酸素が使われている量によって」というところがよくわからないのですが、この質問は、「酸素を吸収する呼吸の速度が違うと光合成に影響するか」という意味でしょうか。それとも、「周囲の酸素の濃度が違うと光合成に影響するか」という意味でしょうか。
 もし、前者だとすると、呼吸は光合成にあまり影響を与えないはずです。光合成で作ったものを呼吸で分解することになりますから、光合成が呼吸に影響を与えることはありますが、呼吸はさほど光合成に影響を与えません。
 後者だとすると、これも周囲の酸素の濃度は、光合成による酸素を作る速度には影響を与えません。ただし、酸素濃度が高いと、光合成によって二酸化炭素を固定する速度は低下する場合があります。(2006.7.20)


Q:私は今、適当なビンの中でマリモを飼っています。植物全体にいえる事かも知れませんがマリモって蛍光灯などの光でも光合成はできますか?最近天気が悪く、家に一日中常温で日に当てられる所が無いため心配しております。よろしくお願いします。(2006.7.19)

A:マリモのような藻類も含めて、一般に植物は蛍光灯の光でも光合成をできます。ただし、むしろ、光の明るさの方が問題です。マリモの光合成の測定例を見ると、数百μmol/m2/sという光だと十分に光合成が起こる、という感じですから、順調に育てるためには 100μmol/m2/s程度の光が欲しい気がします。これは、明るい曇り空ぐらいの明るさです。ですから、まあ、十分に開けた窓際に置いてあれば、しばらく天気が悪くても大丈夫でしょう。普通の家の蛍光灯などの照明の下の明るさは、これの1/10程度です。ですから、蛍光灯だけで育てようとすると、マリモ専用に蛍光灯スタンドか何かで近くから光を当てる必要があるかも知れません。(2006.7.19)


Q:一般の植物、植物性プランクトン、光合成可能なバクテリアの中で一番光合成の効率の良いものは何なのでしょうか?(2006.7.17)

A:「光合成の効率」という言葉の定義にもよりますが、光の吸収によって始まる光化学反応において、「光子1個が吸収された時に反応が何回起こるか」という意味だとすると、どの生物でもほとんど1(つまり100%の効率)になります。これに対して実際に二酸化炭素をどの程度固定できるかは、二酸化炭素の濃度を初めとして温度、水分供給など、様々な環境要因によって左右されますので一概には言えません。それならその環境をそろえて比べればよいのでは、と考えますが、陸上植物とプランクトンではそもそも、それぞれ空気中と水中にいるわけですから、二酸化炭素濃度をそろえる、などということは不可能です。さらには、同じ光でも、植物が使うのは可視光ですが、光合成細菌が使うのは赤外光ですから、光の波長に関しては全く違うものを使っていることになります。
 考えられるとすれば、比較する生物において、それぞれにとって最適な条件での生育速度(例えば乾燥重量が倍になるまでの時間の逆数)を比べることはできるかも知れません。その場合、光合成以外の部分にエネルギーを割いている生物が不利になります。陸上植物では、葉の他に光合成をしない幹や根を発達させる必要がありますから、効率は悪くなるでしょうね。とすると、真核藻類とシアノバクテリアと光合成細菌ですが、光合成細菌はエネルギー源が赤外線なので、可視光に比べて損だと思います。残る真核藻類とシアノバクテリアを比べると、シアノバクテリアは真核藻類の葉緑体が単独で生きているようなものですから、光合成以外の余計な部分が少ない、という意味ではシアノバクテリアに軍配が上がるような気がします。しかし、これらはあくまで一種の思考実験ですから、実際に実験をしてみないと本当のところはわかりません。しかし、まるで培養条件が違う生物同士の生育を厳密に比べるということは非常に難しいので、少なくとも同じ人が多数の生物種を比べた例はほとんどないのではないかと思います。(2006.7.17)


Q:はじめまして、こんにちは。中学2年生です。葉緑素と光合成色素の違いは何ですか。教えてください。(2006.7.14)

A:葉緑素というのは、クロロフィルという名前の光合成で働く色素です。光合成で働く色素には、クロロフィルの他に黄色い色素であるカロテノイドや青い色素タンパク質であるフィコビリンなどがあります。それらをまとめて光合成色素と呼びます。ですから、大きな分類として光合成色素があり、葉緑素は光合成色素の一種である、ということになります。(2006.7.14)


Q:光合成が葉のどこで行われているのか、を確かめる方法には、どんなことがあるのかを知りたいので教えて下さい。(2006.7.12)

A:場所を確かめるためには、1)光合成をしているかどうかを視覚的にわかるようにする、2)部分部分を取り出して、それぞれの部分でどれだけ光合成をしているかを調べる、のどちらかが必要です。その時に考えなくてはいけないのは、どの程度の細かさで「どこで」が知りたいのか、という点です。視覚的な方法では、よくヨウ素デンプン反応が使われます。また、「光合成を目で見てみよう」のようなこともできます。ここでわかるのは、葉っぱのほぼ全面で光合成が行なわれている、ということです。もし、もっと細かいレベルで見ようと思ったら(例えば、どの細胞で、もしくは細胞の中のどの部分で、など)、まずは、光合成以前に、それを見分ける、もしくは分けて取り出すことが必要になります。
 つまり、考え方としては、まず、どの程度の細かさで「どこで」が知りたいか考えて、次に、その細かさで見る方法(例えば顕微鏡)、または、その細かさで分離する方法(例えば表皮の部分だけを葉がしてみる)を考える必要があります。そこが決まれば、では、そのような条件で光合成をするかどうかを確かめるのにどんな方法があるか(もしくはないか)をお答えすることができます。(2006.7.13)


Q:緑の葉は葉緑体で光合成をすることは分かるのですが、葉の色が緑でない物は、どのような仕組みで光合成をするのでしょうか? 葉の色が緑でなくても、葉緑体があるのでしょうか?(2006.7.11)

A:葉の色が緑でないものでも、たいていは葉緑体を持ちます。やさしい光合成のコンテンツの一つである「赤い葉っぱの光合成」をご覧頂ければと思います。(2006.7.11)


Q:はじめまして。高校三年生です。この間生物の実験で、青しそと赤しその光合成色素を調べた時に、疑問に思ったのですが、なぜ同じ場所で青しそと赤しそを、作る事が出来るのでしょうか?また、赤しそはなぜ赤いのでしょうか?学校の先生からは、光の吸収がヒントだと教わったのですが、なかなかインターネットで調べても答えが見つかりません。回答お待ちしています。(2006.7.11)

A:2番目に質問から答えますと、赤ジソは赤い色素を持っているから赤いのです。最初の質問は「同じ場所に生えている以上体を作る材料は同じはずなのに、なぜ別の色になるか」という意味でしょうね。動物の場合は、外から食べ物として摂取した色素をそのまま使う場合も多いのですが(フラミンゴのピンク色は食べ物に含まれている色素だそうです)、植物の場合、たいていは自分で合成します。従って、植物の種類によって、作る色素が異なれば、材料が同じでも違う色になります。
 おそらく、紫陽花の花の色のように、同じ色素が土壌の pH などの条件によって異なる色に見えることを想定していたのではないかと思うのですが、青じそと赤ジソの場合はそもそも持っている色素が別のものなのです。(2006.7.11)

Q:分かりやすく丁寧な回答をしていただきありがとうございました。 『青じそと赤ジソの場合はそもそも持っている色素が別のものなのです』 という回答に対しての質問なのですが、その色素というのが光合成色素の事でしょうか?後何度も質問して申し訳ないのですが、光合成色素と展開溶液及びプレートの表面《シリカゲル》との関係についても教えてもらいたいです。(2006.7.11)

A:赤い色素は光合成色素ではありません。「赤い葉っぱの光合成」を見てみましたか?そこを見ると少し概念がつかめるかも知れません。後半に関しては、自分で自分の質問内容を理解していますか?「質問のコツ」を読んでみてください。答えがわからなくて質問するのならよいのですが、質問がわからないから質問をしても、やっぱりわかりませんよ。(2006.7.11)


Q:クロロフィルaとβーカロチンではカロチンのほうが極性が低くなるのは共役系の数が関係しているのですか。(2006.7.11)

A:共役系の数は、吸収スペクトルには大きな影響を与えますが、極性に関してはさほど大きな影響を与えません。βーカロテンはほとんど純粋な炭化水素ですが、クロロフィルは酸素や窒素を含みます。ごく一般論として、酸素や窒素の原子が構成成分として増えてくると、分子の極性は増加します。これは、より構造が似ているβーカロテンとキサントフィル類で比較するとわかります。キサントフィル類はカロテンにない酸素を含みますので、キサントフィルの方が極性が大きくなります。(2006.7.11)


Q:純生産量=総生産量−呼吸
純生産量がマイナスになってしまいました。一体何を意味するのか教えてください。(2006.7.11)

A:この場合、光合成よりも呼吸の方が大きいということになりますよね。光合成と呼吸が釣り合う光の明るさを光補償点といいます。環境の明るさが光補償点よりも低ければ、呼吸の方が大きくなります。そのような場合は「稼ぎ」が赤字の状態ですから、植物が生き続けることはできません。もし、その程度の光しか受けられない状況が続けば、いずれ枯れることになります。一方で、これは光の明るさによって変わりますから、通常の状態の植物でも朝晩に暗くなった時は呼吸が光合成を上回ることはありますし、夜間には当然呼吸だけになります。
 というわけで、もし、特に光合成の機能がおかしくなった植物でないのでしたら、「何を意味するのか」の答えは「暗い」だと思います。(2006.7.11)

Q:呼吸が多いとどうして生きていけないんでしょうか? 私は植物プランクトンについて調査しました。(2006.7.11)

A:動物が呼吸で生きていけるのは、外から栄養を取り込んでそれを呼吸などで分解してエネルギーを得るためです。それに対して、植物(植物プランクトンでも同じ)の場合は、呼吸といっても分解できるのは自分で光合成で作った物質だけです。もし、光合成よりも呼吸の方が大きい場合には、分解するものがなくなって、あとは自分の体を分解していくしかありません。当然最後には分解するものがなくなりますから、エネルギーを得ることができなくなって死ぬことになります。(2006.7.11)


Q:先生のご回答(2006.7.6)において,「高等植物の場合、光合成は可視光のうち、赤と青の光を使います。その間の緑色の光や紫外線、赤外線などはほとんど光合成に使われません」とお書きになられていますが,これは抽出色素の吸収スペクトルの話と混同されてはいませんでしょうか。高等植物でも緑色光は数十%程度は吸収しますし,作用スペクトルを見ても,青や赤よりは効率が低いものの,緑色光でも光合成を行うという図はみかけます。たとえば杉林などでは,林床の光強度は入射の数百分の1にもなりますし,林冠の反射光も明るいグリーンではありません。もし緑色光をほとんど使わないのでしたら,林床が明るい緑になるか,林冠が緑に輝いているか,あるいは緑色光は吸収されても色素を介さずに熱等に変換されるかの,いずれかになると思うのですが。実際のところ,(平均的に見た)高等植物の光合成において,緑色がほとんど使われないというのは,例えば赤色と比べてどのくらい効率が低いのでしょうか。(2006.7.10)

A:おっしゃるとおり、散乱や組織の厚み、葉の重なりなどによって実質的な光路長をどんどん長くして考えてもよいのでしたら、小さくとも有限の吸収があれば、最後にはほとんどの光を吸収するようになります。そのような条件では吸収スペクトルというのは意味がなくなります。葉の作用スペクトルを考えたも、同様に、光路長が長くなれば最終的には波長によらずにフラットなスペクトルになるでしょう。そのような場合は、波長によって光路長が違うのを考慮しないで比較することになりますので、僕のような分光測定をやっている人間からすると、そもそも「効率」を比較していることにはならないと考えてしまいます。
 では、実際に光合成にどの程度役立っているのか、ということになりますと、難しいですね。作用スペクトルを見て緑色の光で充分光合成をするはずだ、といっても、もともと赤や青の光である程度の光合成をしている場合には、その上に吸収が小さい緑色の光があたってもほとんど意味がありません。実際には、葉の裏側などで透過してくる緑色の光しかあたらないような部分の葉緑体が全体の光合成に対してどの程度の寄与をしているか、ということを考えなくてはいけません。葉の中の光環境は、今、東大理学部の植物学教室にいる寺島さんが専門家ですが、主にやっていたのは葉の中の光の明るさの勾配で、スペクトルの変化までは見ていなかったように思います。実際に見積もるとなると、光が律速になるような明るさの光を葉に当てて光合成速度を測り、次に緑色の部分の光だけを除いた時にどの程度光合成速度が落ちるかを見るのでしょうね。そのような測定をきちんとやった人はいないのではないでしょうか。(2006.7.10)
 追記:その後寺島さんが実際にこのような実験をして、実際に葉の裏では緑色の光が光合成に有効に働いていることを確かめました。

Q:早速のご回答ありがとうございました。先生のご回答を私なりに読み解くと,「青色と赤色で十分に飽和する光環境で一枚の薄い葉があるようなモデルを考えると,そこでは緑色光はほとんど使われていない」ということですね。では光制限下で主に緑色光が当たっているような環境(葉が多数重なっているような状況)では,緑色光による(相対的に効率の低い)光合成が行われていると解釈してよいでしょうか(このような光環境は森林や水田などで普通に見られると思います)。
 といいますのは,高等植物において光合成が優先的に青赤で行われるのは,地上の幅広い光環境への適応のようにも感じられるからです。一本の樹木や森林を考えた場合,林冠などが飽和光以上のときは,そこではキサントフィルサイクルや蛍光によりエネルギーを逃がし(青赤系の有効利用),緑色光が透過して逃げる。森林内部ではその緑色光を利用して,作用スペクトル的には効率が低いながらも光合成が行われる。このように緑色も含めた各色をうまく利用して,強光阻害から光律速までの幅広い光環境に適応し,エネルギー調達を行っていると,私には思われるのですが。この解釈は強引でしょうか。(2006.7.11)

A:前半の部分はおっしゃるとおりだと思います。ただ、例えば林床の光環境にしても、明るさについてはいろいろ情報があるのですが、スペクトルについての情報は少ないようです。可視光と赤外光の割合について議論されるぐらいでしょうか。そして、そのような光環境は個々の林の構成樹種や密度によって大きく変化します。おそらくサンフレックが見られるような林と完全に閉じた林では林床の植物の光合成の効率は劇的に違うと思います。定性的にはよいと思うのですが、実際の寄与を見積もろうと思うと難しいというのが僕の印象です。
 後半のお話は、進化的な議論にもなりますので、「正解」はないのだと思います。それでも、いくつか考えてみることはできます。水圏での光合成を考えた場合、水の中のスペクトルというのは、地上でのスペクトルに比べてはるかに多様です。外洋の深いところでは青い光だけが届きますし、内海だと緑色の光、汚い池などでは赤の光が優先します。そして、それして光合成色素も多様で、様々なカロテノイドに加えてフィコエリスリンやフィコシアニンなどといったクロロフィルとは全く違う吸収スペクトルを持つ色素がアンテナとして働いていますし、クロロフィルにしてもc1, c2, d といった陸上植物には見られないものを持ちます。これらは、環境のスペクトルの多様性に対して色素の多様性を発達させたとして理解できます。しかし、陸上植物の場合、クロロフィルはa,bだけですし、フィコビリン色素は持たず、カロテノイドの種類も限られます。カロテノイドは、主なものはβカロテンとキサントフィルサイクル色素で、これらはどちらかというと光捕集というよりは強光ストレスに対する適応に役立っています。ですから、陸上では、水圏に比べて、スペクトルの多様性に対する応答よりも、光強度の多様性に対する応答の方が重要なのだと思います。そのようなことを考え合わせると、ご意見の中で「青赤系の有効利用」というのはやや苦しいかと思います。エネルギーを熱として放散するためにスペクトルがこれこれでなくてはいけない、ということはないように思います。そして、緑色の光を中に入れて内側で有効利用する、という考え方も、もし、それが本当に必要なのであれば、クロロフィルではなくてフィコビリンを持っていた方が絶対に得です。それから考えると、陸上植物では光のスペクトルの多様性に対する応答の優先順位はさほど高くない、と僕は思うのですがいかがでしょうか。(2006.7.11)


Q:墓で草むしりをしてその草を持って帰ると土はへりますか?植木ばちが根っこでいっぱいになったとき土はどうなったのですか?光合成ではかならずしも土は必要ないのでしょうか。(2006.7.9)

A:生えてきた草をどんどん取っていけば土は少しずつは減ります。ただし、草の量に比べればわずかです。植木鉢の場合も、根が増える量に比べると土が減る量はわずかです。とすると、あふれるはずですが、たいていの場合、もとに比べてつまった状態になるようです。長いこと放っておいた植木鉢を植え替えようとするとなかなか鉢から抜けないというのはよくありますよね。
 水栽培でも植物が育つことからわかるように、植物が必要なのは土自体ではなくて、土の中に含まれている栄養分です。植物の体を作る元素のうち、下の質問にもあるように炭素は空気中の二酸化炭素から取り込むことができますが、窒素やリンなどは根から取り込むことになります。土の中からそのような栄養分が減る分、土の量は植物の成長に伴って少し減ることになります。植物の体の重さの方は、根から取り込んだ栄養分に加えて、空気から取り込んだ炭素分や根から吸い上げた水などが加わりますから、ずっと重くなります。(2006.7.9)


Q:なぜ植物は光合成をすると二酸化炭素を吸って酸素を出すのですか?(2006.7.9)

A:植物の体の重要な成分に炭素があります。例えば、体を構成する糖やタンパク質なども炭素を含んでいますが、土にはほとんど使える炭素がありません。そこで、その炭素を空気中の二酸化炭素から取り込むのが光合成の主な役割です。というわけで「光合成をすると二酸化炭素を吸う」というよりも、二酸化炭素を吸うこと自体が光合成の目的なのです。
 一方で、二酸化炭素を植物が使える形の炭素にするためには還元剤(別の物質から酸素を取る物質)が必要になります。この還元剤を作るために水を分解するのですが、その際に酸素が発生します。酸素自体は植物は使わないので、いらないから捨てるので植物は酸素を出すのです。(2006.7.9)


Q:自由研究でクロロフィルについて調べようと思っています。具体的にはよくわからないのですが、クロロフィルがどのように光合成に関わっているのかを詳しく調べたいのです。資料を見ても「クロロフィルによって光合成が・・・」というふうにしか書かれてなくてなにも知らない私たちは「ふ〜ん。」としか思わないんです。最終的にクロロフィルの○○な構造の△△という物質が□□という働きをするため光合成ができるのだということを明らかにしたいんです。そのためにはどんな実験をすればよいのでしょう?めんどくさい質問ですが教えてください。お願いします。(2006.7.7)

A:クロロフィルの「働き」を簡単な実験で調べようと思うとなかなか難しいですね。例えば光の働きを調べようと思えば、植物に当てる光の明るさを何段階かに調節するとか、いろいろな色の光を当ててみるとかいった実験が可能です。しかし、クロロフィルとなると、クロロフィルがない植物、少ない植物、でどの程度光合成をしているかを調べるぐらいでしょうか。世の中には、ふ入りの葉っぱはありますから、同じふ入りでも完全に白いもの、クリーム色のもの、薄い緑のものを濃い緑の葉っぱと比べれば何か言えるかも知れません。ただ、物質レベルの問題を議論するためには、その物質を植物から取り出さないといけませんが、中学・高校レベルの実験では細胞を壊したあとで光合成を調べるのは非常に難しくなります。そのあたりが問題でしょうか。
 自由研究のテーマとしてクロロフィルを調べたい、と考えてくださるのは、光合成研究者にとってはうれしいことなのですが、テーマが先に決まる研究というのは、概して面白くない場合が多いのです。研究などのテーマは、頭で理論を考えても、なかなかよいテーマは思いつかないものです。特に、中学・高校レベルの実験の場合は、使える装置などが限られますから、理論的に実験を考えても、実際にそれができるとは限りません。一般には研究というのは、疑問からスタートします。まずは植物をじっくり観察し、その中で「何でだろう」という現象が見つかって、ではその現象を理解するためにはどのような実験をしたらよいか、と発展していくとよい研究になります。なかなか難しいでしょうけれども・・・。(2006.7.8)


Q:ピーマンの実の表皮には、葉緑体があるのでしょうか?教えてください!!(2006.7.5)

A:「表皮」というのは、生物学では組織の最外層の細胞の部分を指す言葉ですが、ここではより広くピーマンの皮に、という意味でしょうね。僕自身は、きちんと顕微鏡で観察したわけではありませんが、緑のピーマンの色素はクロロフィルですし、光合成もきちんとしていますから、必ず葉緑体は存在するはずです。(2006.7.6)


Q:先日は、質問に答えていただき、ありがとうございました。今回は、ある問題集を見ていたら疑問に思った事があったので質問をします。
1.「日光を浴びないと光合成をしないので、植物の葉にデンプンができない」と覚えているのですが、黒い紙で葉を覆っても光合成をしないですか?(黒は熱を吸収しますが、…)
2.光合成は、葉だけではなく、茎でもすると習ったような気がしているのですが、どうでしょうか?
3.光合成は、太陽のどの光線を使ってするのですか?(紫外線や赤外線など)
すみませんが、教えて下さい。(2006.7.5)

A:
1.質問は光があたらないで、熱が伝わるだけでは光合成をしないのか、という質問でしょうか?でしたら、しません。光合成には光が必要です。
2.茎でも緑色の部分は光合成をします。
3.高等植物の場合、光合成は可視光のうち、赤と青の光を使います。その間の緑色の光や紫外線、赤外線などはほとんど光合成に使われません。ただし、吸収する光の種類は持っている光合成色素によって違い、光合成色素は藻類や光合成細菌では高等植物とは異なりますから、正確に言うと、何の光合成かによって違います。(2006.7.6)

追記:上記の3について、「緑色の光がほとんど光合成に使われない」という表現は誤解を招くのではないか、とのご指摘があり、もっともなので、やや専門的になりますが、説明を補足します。
(1)光合成の色素であるクロロフィルの吸収スペクトルを見ると、520 nm付近の緑色の光の吸収は、青い光や赤い光の吸収に比べてせいぜい1/10程度です。吸収しない光は使えませんので、その意味では緑色の光は光合成にはあまり使えないことになります。
(2)一方で、吸収が1/10のものを10個並べておいてそこに光を通せば、吸収が1のものと同じだけの光を吸収します。つまり、何度も何度も吸収すれば、吸収が小さいものでも最終的には多くの光を吸収することができます。高等植物の葉は葉の垂直面に細胞が複数層ならんでいることが多く、しかも多くの木の葉では、葉の裏にある海綿状組織は細胞が不定型で細胞間隙に囲まれており、散乱が非常に強くなっています。そのため、海綿状組織は一種の鏡としてはたらき、上部で吸収されなかった光を再度上部組織に送り返す効果があります。結果として、生葉での光の吸収率は緑色の光でも60%以上に達します。また、林や群落を考える場合は、上部の葉で吸収されなかった光を下部の葉によって吸収することも充分考えられます。
(3)緑色の光が、いわば「効率が悪い」のは、クロロフィルの吸収が弱いためであり、いったん吸収されれば、そのエネルギーが光合成に使われる割合は、赤や青の光と大きく違いません。吸収光あたり駆動される反応の割合を量子収率といいますが、葉緑体レベルでは緑色の光の光合成量子収率は赤や青の光の時とほとんど変わりません。むしろ450 nm付近の青に近い領域で収率が落ちています。
(4)従って、緑色の光だけを葉にあた場合、もちろん葉の種類にもよりますが、赤や青の光による光合成のおそらく八割程度の光合成は起こるのではないかと思います(当てる光の量をそろえた場合の話です)。難しいのは太陽光のような白色光をあてた場合に、その中の緑色の光が全体の光合成に対してどの程度寄与しているかです。虹の7色と考えると、もしどの色でも効率が同じなら1/7の寄与になるはずですが、効率が半分なら1/14になるはずです。直感的にはこれよりさらに寄与が小さくなるように思うのですが、実際にそのような定量的な解析をした例は見たことがありません(葉の光合成速度の1/20の変化をきちんと測定するのはなかなか難しいのです)。(2006.7.11)
さらに追記:その後、東京大学の寺島さんが実際にこのことについて実験を行い、厚い葉の裏の方では、緑色の光が光合成に対して有効に働いていることを確認なさいました。


Q:部活動での研究で紫外線による光合成の機構への影響について調べています。その中のNADP光還元活性の測定の項目でFd(フェレドキシン)が必要なのですが調べたところ市販品はなく自分で調製しようと思いましたが調製法がわかりません。代わりに使えるものがあれば教えていただけないでしょうか?(2006.7.5)

A:高校の部活動としてはものすごく高度な内容ですね。NADP光還元の測定では通常、光化学系Iからの電子をフェレドキシンに渡し、フェレドキシンからフェレドキシンNADP還元酵素(FNR)を経てNADPを還元してそのNADPの還元による吸収の変化を分光器で測定します。FNRは電子伝達の場であるチラコイド膜に結合していますので、試料にチラコイド膜を使う場合は、フェレドキシンとNADPを加えるだけですみます。しかし、NADPの吸収は340 nm付近と紫外線の領域なので、紫外線の測定ができる分光器である必要がありますし、また、光を当てることによる電子伝達を見るわけですから、分光器の中の試料に光を当てることができるようになっている必要があります。さらに、当てた光が分光器の測定を妨害しないように、フィルターなどを工夫する必要もあります。というわけで、おそらく高校などに通常おいてある分光器で測ろうと思うと、たとえフェレドキシンがあったとしても、極めて難しいかと思います。
 もし、そのような用途に使える分光器があった場合には、フェレドキシンは海外の会社からなら買うことができます。有名なアメリカの試薬会社にシグマというのがありますが、そこなどはフェレドキシンを扱っていますので、日本の試薬会社に頼めばそこから取り寄せてもらえると思います。ただし、手元のカタログによると一番安いもので1 mgが8,300円します。
 また、フェレドキシンが絡む反応は酵素反応なので、特異性があり、別の物質で代用するというのがなかなか難しいものがあります。あとは、全く別の測定方法で光合成を測るということも考えられますが、そのためには、酸素電極なりなんなりといった別の測定装置が必要になってしまいます。(2006.7.5)

Q:フェレドキシンの件についてはありがとうございます。NADP光還元活性の測定は分光光度計を用いて行うつもりでしたが必要なフェレドキシンの量と価格を考えると断念せざる得ません。そこで2-6ジクロロフェノール・インドフェノール(還元されると青色から無色になる)を電子受容化合物であるNADPの代わりに用いて行おうと思います。この場合は還元型プラストシアニンから受け取った電子をPSIは電子受容化合物である2-6ジクロロフェノール・インドフェノールに直接渡すことができるのでこの方法を用いればフェレドキシンを用いずにNADP光還元活性の測定と同様の測定ができると思うのですがどうでしょうか?(2006.7.5)

A:だいぶ話が専門的になりましたね。おっしゃるように、ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP)は光化学系Iから直接電子を受け取ることができますので、そのような方法を系I活性の測定に使うことは理論的には可能ですが、実際には以下の問題点が存在します。
 問題点とは、酸化型のDCIPは光化学系IIからも電子を受け取ること、また、還元型のDCIPは光化学系Iの電子供与体になることです。DCIPは酵素ではなく単なる化学物質なので特異性が低いのです。従って、チラコイド膜での測定を考えている場合には、普通の条件ではDCIPが系Iから電子を受け取っているのか、系IIから電子を受け取っているのかが区別できません。この場合、系IIを、阻害剤のDCMUなどを加えて止めておけば、系Iだけから電子を受け取ることになりますが、今度は、系Iに電子を与えるものがなくなりますから、人工的な電子供与体も加えてやらないといけません。電子供与体を還元しておくためには、通常過剰量のアスコルビン酸などを加えますが、もしそうしてしまうとDCIPも還元されてしまうので、電子受容体として働かなくなってしまいます。また、アスコルビン酸を加えないような状況では、系Iから電子を受け取って還元されたDCIPは今度は系Iへの電子供与体として働くことになりますから、定量的な解析ができなくなってしまいます。
 従って、実際には、DCIPの光還元測定は、単離された系IIの活性測定の時には使われますが、系I活性の測定には通常使われません。系I活性の測定に使う場合には、アスコルビン酸と共にDCIPを入れて電子供与体とし、メチルビオローゲンを系Iからの電子受容体とします。メチルビオローゲンは電子を受け取るとそれを酸素に渡すので、活性を酸素濃度の減少として見ることができます。メチルビオローゲンは酸化還元電位が低いので系IIからは電子を受け取りません。もちろんこの場合は、測定には分光器ではなく、酸素電極を用いることになります。(2006.7.5)

Q:教えていただいてありがとうございます。先ほどご説明になられた実験系で予備実験を行って見たいと思います。メチルビオローゲンは1,1’−ジメチル-4、4’-ジピリジニウムジクロリドのことでしょうか?また酸素電極は溶存酸素計でも代用できるのでしょうか?(2006.7.5)

A:物質名についてはその通りです。溶存酸素計というのは僕自身は使ったことがないので、よくわかりません。系IIにおける酸素発生活性や、系Iにおけるメチルビオローゲンによる酸素吸収活性は通常クロロフィルあたり時間あたりで示すと、標品にもよりますが、数十から数百μmol / mgChl /h という程度になります。実際の測定は数分で行なうでしょうし(あまり長いと失活する)、クロロフィル濃度は10-30 μgChl程度でしょう(あまり高いと光が通らなくなる)から、予想される酸素濃度変化は計算できますよね。溶存酸素計の能力がその程度の濃度変化を検出できるかどうかを製品の説明書・カタログなどで調べればわかるかと思います。(2006.7.6)

Q:酸素電極の件はありがとうございました。溶存酸素計のスペックを調べたところ十分酸素濃度も変化を検出できることがわかりました。先日教えていただいた実験系では過酸化水素分解酵素の働きを阻害するためにシアン化カリウムを用いるそうですが、学校での薬品管理上使用することは難しいので使用できないそうです。何かほかに阻害剤として使えるものはありませんでしょうか?阻害剤は皆基本的に毒性があるということはわかっていますが。(2006.7.7)
 先ほど過酸化水素分解酵素阻害剤について質問いたしましたがいろいろと調べてみたところ 3-amino-1,2,4-triazole がカタラーゼ阻害剤として作用するということがわかったのですが。シアン化カリウムの代わりに用いることができるでしょうか?また使用できるとしたら最終濃度はどのぐらいが適当でしょうか?(2006.7.7)

A:3-amino-1,2,4-triazoleは確かにカタラーゼの阻害剤ですが、ちょっと調べてみると他にもいろいろな反応を阻害するようですね。余り使いやすい試薬のようには思えません。もう一点問題があって、チラコイド膜の場合、過酸化水素を分解するのはカタラーゼではなく、アスコルビン酸パーオキシダーゼという酵素です。そして3-amino-1,2,4-triazoleがアスコルビン酸パーオキシダーゼを阻害するかどうかはよくわかりませんでした。僕自身はシアン化カリウム以外の試薬で測定したことはないので、このあとは単に持っている知識からの考察になりますが、アスコルビン酸パーオキシダーゼは基質となるアスコルビン酸がない状態では急速に失活し、その失活は不可逆的です。ですから論理的には、測定に使用するチラコイド膜を一度適切な緩衝液で薄めてしばらく放置し、もう一度遠心機などで集めれば、それだけでアスコルビン酸パーオキシダーゼは失活するはずです。どのように調製した試料かにもよりますが、場合によっては、もともとアスコルビン酸パーオキシダーゼは失活しているかも知れません。その場合には、何もしなくても測定が可能であることになります。(2006.7.8)

Q:APXを失活させる方法について教えていただきありがとうございました。予備実験のプロトコルを作成するため文献を調べていたところチラコイド膜内外のプロトン濃度勾配を阻害するために電子伝達系の脱共役剤であるFCCP( Carbonyl cyanide p-trifluoromethoxy phenylhydrazone )を用いる方法があるそうですが先生のページのプロトコルではプロトン濃度勾配を阻害するものとしてメチルアミンを用いているようですがFCCPと作用に違いはあるのでしょうか?(2006.7.9)

A:作用としては変わらないと思いますが、おそらくFCCPの方が低濃度で効果があると思います。比較的高濃度が必要なメチルアミンの場合、イオン強度が変わったりすると思いますが、そのような副作用はFCCPの方が少ないでしょう。イオン強度などを気にしなくてもよい測定条件であれば、メチルアミンの方が安いと思いますので・・・。(2006.7.9)


Q:中学校の教師をしております。勉強不足で申し訳ありませんが、教えて頂きたいと思います。光合成では水が必要ですが、その水は、どこから補給されるのでしょうか?好気呼吸で得られた水を使っているのでしょうか?それとも、蒸散によって根から吸収された水を使っているのでしょうか。好気呼吸などの呼吸で得られた水だけで、光合成の水をまかなえるのでしょうか?もし、まかなえるのであれば、蒸散によって根から吸収された水は使われないのでは?そのまま外に?回答をお待ちしております。よろしくお願いします。(2006.6.30)

A:特に水分子というのは目印がついているわけではありません。細胞内には水がたくさんあって、特に昼間は葉から蒸散で失われる一方、根から供給され続けます。この速度は、細胞内の水が1時間に4回入れ替わるぐらい速いのです。ほかに、おっしゃるように好気呼吸をはじめとする様々な反応でも水が生じます。めまぐるしく出たり入ったりする水分子のうち、光合成の基質として使われた水の出所はどこかというのは、あまり意味がありません。あちこちでアルバイトしている学生がコンビニでガムを買うのに使った百円玉の出所がどこかを調べるようなものです。強いて言うと、蒸散流によって水が細胞に入ってくる割合が一番高いでしょうから、もし、賭けをするのであれば、蒸散流によって入る水、と答えるのが一番よいかと思います。(2006.6.30)


Q:先日も動物の葉緑体について質問させてもらったものですが、もし仮に動物に葉緑体を持たせるとしたら、どのような方法が考えられるでしょうか?私自身の拙い考えにご指南していただければ幸いです。
 1:受精卵などに葉緑体を挿入する。(卵割の際に葉緑体が一緒に分裂するかはわからないですが)
 2:遺伝子操作を行い、葉緑体の分裂に必要な遺伝子を組み込み、葉緑体を挿入する。
将来的に実現できそうなことがあまり思い浮かばなかったのですが、この二つの評価をしていただけませんか?(2006.6.26)

A:葉緑体はもともとシアノバクテリアの共生によって生じたものです。従って、シアノバクテリア同様、独自のゲノムを持っていて、分裂することができます。ところが、葉緑体のゲノムの大きさはシアノバクテリアのゲノムの1/10以下です。つまり、もともと持っていたゲノムの9/10以上は葉緑体から失われたことになります。それではその9/10のゲノムに載っていた遺伝子がどこに行ったかというと、植物の核のゲノム上に存在します。そして、その核にあるたくさんの遺伝子のはたらきがないと、葉緑体は機能を持つことができず、また分裂もできないのです。というわけで、葉緑体を動物に入れて機能を持たせるためには、膨大な量の植物の核にのっている遺伝子も動物に組み込む必要があります。これは、とうてい無理でしょう。
 僕だったら、葉緑体の祖先のシアノバクテリアを動物に入れることを考えますね。それなら、機能に必要な遺伝子は全て持っていることになります。あとは、シアノバクテリアがなくなったり、増えすぎたりしないようにする量の調節すること、また、シアノバクテリアが作った光合成産物を「収奪」するようなシステムを作ること、の2点を実現すればよいのではないでしょうか。どうやればよいかはよくわかりませんが・・・。(2006.6.27)


Q:始めて質問します。小学校で6年理科を教えている者です。専門ではないので、余り詳しく解答していただいても分からないところがあると思いますので、その点はよろしくお願いします。

質問:「木を切り倒すのではなく、周りに切れ目を入れただけで枯れた。これは、何故か?」

という問題に対しての6年生にどう説明すれば、分かってもらえるでしょうか?すみませんが、教えて下さい。
私としては、
①師管が残っているので作った養分を全体に回すことはできるが、その前にする作業(根から吸い上げた水を葉までまわして、葉ででんぷんを作る)が道管を切っているので、葉ででんぷんを作るために必要な水を送ることができないから枯れてしまう。
②道管師管とも切れてしまい、道管の作業(水や肥料を葉などに送ること)や師管の作業(光合成で作られたデンプンをブドウ糖からショ糖に変えて全体へ回すこと)ができないので枯れてしまう。
という2つを考えてみたのですが、いかがでしょうか?(2006.6.26)

A:僕は小学生を教えた経験がないのではっきりとは言えませんが、6年生にプドウ糖だのショ糖だのといってもわからないのではないかと思うのですが・・・。大事なポイントは、木の幹の中心部分はほとんど死んでいて、木を支えるのに役立っているだけなのに対して、周辺部分は生きていていろいろなものを根から葉っぱへと運んでいる、という点だと思います。そこが理解できれば、周辺部分の生きているところを切ってしまえば、真ん中に死んでいる部分が残っていたとしても生きていけないことは自然と理解できるかと思います。(2006.6.26)


Q:また蛍光法に関することなのですが、御聞きしたいことがあります。脈絡がなく唐突な質問のような気もするのですがNon-photochemical quenchingについて、キサントフィルサイクルと関連した迅速な可逆的エネルギー依存型quenchingと、光阻害に関連した、より時間スケールの長い(長く影響が続く)quenchingがあると聞きました。ちょっと文章だけでは、よく分からないのですが、簡易に説明頂くことは可能でしょうか。ご存知でしたら御教え下さい。(2006.6.26)

A:前にも言いましたように、クロロフィル蛍光に関しては、かなり詳しい解説をオンライン教科書に書いてあります。「ご存じでしたら」というところを見るといまだに読んでいないのでしょうか。もし、読んでいないのであれば、まずはお読み下さい。また、既に読んでいるのであれば、何が「わからない」のかを具体的にご指摘下さい。また、質問をする前には「質問のコツ」をお読み下さい。脈絡がなくともよいのですが、何がわからないのか、わからないと答えようがありません。(2006.6.26)


Q:水草がなぜ光合成できるのかを教えてください。又、水の中で光合成すると、普通に光合成するのとでは、違いは有りますか?(2006.6.26)

A:光合成をするのに外から必要なものは、光、水、二酸化炭素です。水の中を考えた場合、水は基本的には光を通しますし、もちろん水はありますし、二酸化炭素は水に溶けます。とすると、特に水草だから光合成ができない、という理由はないように思いますが・・・。むしろ、なぜ「水草は光合成をしづらいかも知れない」と思ったのかを含めて、再度質問して頂くと、もう少しピントのあった答えをできるかと思います。(2006.6.26)


Q:初めまして。「光合成」について気になったので教えて下さい。
①太陽の光以外でも光合成はするのか?
②もしするとしたら、蛍光灯では光合成をするのか?
この2点です。よろしくお願いします!(2006.6.25)

A:これに関しては過去に同じ質問が寄せられていますので、FAQをご覧下さい。(2006.6.25)


Q:藻類の炭素固定について教えてください。種類や方法などを中心に教えてもらえるとありがたいです。(2006.6.25)

A:5日前にも同じ質問が来ているのですが、レポートの課題か何かですか?下の2006.6.20の質問を見てください。また、質問をする前に、「質問のコツ」を読んでください。(2006.6.25)


Q:前に同様の質問もあるような気がして、申し訳ないのですが確認したいことがあり質問させて頂きました。PSIIの下流と言う言葉(Downstream processes of PSIIと論文などに出ている)に一般的な定義はあるのでしょうか?例えば、オンライン教科書にある励起光下の実効量子収率が低下している場合、QpかFv'/Fm’の低下のどちらかの可能性が考えられ、説明に前者は下流の電子伝達の異常、後者はPSII自体の異常とあります。質問は、下流とは具体的にどのコンポーネントからどのコンポーネントまでの流れか、(PQpool〜carbon fixationまででしょうか?)と、Fv'/Fm'の低下の場合のPSII自体の”自体”とはPSII全体という意味で、下流部のいくつかも入るのでしょうか?
 さらに蛍光法によって得られるPSIIパラメータは量子収率、光合成有効光吸収断面積、再酸化速度などがあると思うのですが、”PSIIの構造に関するパラメータ”と言われた場合、再酸化速度についてはどうなるのでしょうか? と言いますのも、PSIIの構造に関するパラメータ(σPSIIやPSII反応中心:Chla比)は、もちろん光などの環境によっても変わるが植物種(補助色素の違い)に依存しても変わると聞いたことがあり、再酸化速度も同様なのか確認したいためです。再酸化速度に関してはPSIIの下流とか炭素固定速度が関係していて、PSII(の構造)とは直に関係してないのでしょうか?教えて下さい。(2006.6.25)

A:「下流」というのは別に専門用語ではなく、普通の日本語です。ですから明確な定義があるわけではなく、その時の文脈によって異なります。系IIの下流の場合、問題としている時間スケールによって、電子伝達の部分だけを指す場合もありますし、炭酸固定なども含めて使われる場合もあります。Fv'/Fm'の場合は、直接的な影響という意味では、下流の影響は受けません。ただし、例えばプラストキノンプールが還元されている状態で光が照射されることにより系IIに光阻害が誘導されFv'/Fm'が低下する、というような場合は、プラストキノンプールの変化が直接Fv'/Fm'を変えるわけではありませんが、系II自体の変化を引き起こし、結果として二次的にFv'/Fm'が低下します。
 後半は、質問の意味がよくわかりません。再酸化速度というのは何の再酸化速度ですか?系IIで酸化還元するものはたくさんありますが・・・。もし、例えばQBの再酸化であれば、当然プラストキノンプールの酸化還元状態の影響を受けます。(2006.6.25)


Q:ジャガイモの葉のでんぷんが糖に変えられくきの中を通って行きますが、どのようにしてでんぷんから糖に変えられるのでしょうか?(2006.6.25)

A:デンプンというのは、実は、糖をいくつも長い鎖のようにつなげたものなのです。ですから、デンプンから糖に変える時には、その鎖のつなぎ目を、ちょきちょき切ると糖になるのです。人間の唾液の中にはアミラーゼという名前のタンパク質があって、これはデンプンの鎖を切る働きをします。葉の中でも、同じようなタンパク質が働いて、デンプンを糖に変えてきます。(2006.6.25)

Q:お返事ありがとうございました。ジャガイモのこいものデンプンはどこから来るのかを調べていますが、先生のページを見て「葉で光合成によって作られたデンプンは一度水に溶けやすいショ糖に変わりくきを通って運ばれてジャガイモの場合はそれがこいもになる。昼間に葉にためられたデンプンは夜の間に少しずつ分解されるが光合成が過剰にされた場合はデンプンのまま残る。ショ糖がデンプンに戻るわけではない(この部分はわかりにくいのですが・・・)。」などがわかりました。どこか間違っているところがあったら教えてください。デンプンがどこからくるのか実験するとき葉にデンプンがあるという実験だけでは茎からや種芋からではないという証明ができません。ジャガイモを葉ごと暗幕で包み光合成ができない状況(ずっと夜の状態)と葉のすべてにアルミはくを包む(茎には日光が当たる)のと何もしないもののこいもの出来具合の比較実験というのはできるでしょうか?実際に実験をする時間が与えられていないので予想でまとめるしかありません。ほかに何かいい実験結果が出る実験方法があれば教えてください。文が長くなって申し訳ありません。(2006.6.27)

A:「わかりにくい」となっている「ショ糖がデンプンに戻るわけではない」というところ以外は間違いないかと思います。「ショ糖がデンプンに戻るわけではない」の部分は、やや誤解を招きかねないと思いますが、要は、ショ糖は葉緑体の中で合成されるわけではないので、光合成の産物は(葉緑体の中では)ショ糖を経由してデンプンになるのではなく、(ショ糖ではない単糖から)直接デンプンが合成される、という意味です。
 葉を暗くしてしまうと、おそらく生育が止まってしまいますし、数日でクロロフィルなどの分解も始まってしまいます。ですから、そのような実験で比較することは難しいかと思います。種芋を取り去る時と残す時で小イモの生長を比べることも考えられますが、その場合でも植物の生育自体が大きく影響を受けるでしょうから、生育の差の影響なのか、種芋のデンプンを子イモに輸送できなくなったせいかを決めることはできないように思います。器官の間の物質の移動というのは、相互に起こりうるので、専門家でもきちんと決めるのは苦労します。
 本当に実験で決めようと思うと、いわゆる放射性同位元素を使う必要があるでしょう。空気中の二酸化炭素の中の炭素を、放射性を持つ炭素で置き換えておいて、途中から植物をその空気におけば、放射能が植物に光合成によって取り込まれます。しばらくして子イモの中のデンプンが放射性になっていれば、子イモのデンプンが光合成によって取り込まれたものであることがわかります。その場合でも、茎からではない、という証明にはなりません。茎の緑でも少しは光合成がされますから。やっぱり難しくて、よい実験は思いつきません。(2006.6.27)


Q:こちらの植物生理学の講義に対する質問のページで、動物に葉緑体があっても(表面積などの問題で)あまり得することはないということを見させてもらいました。しかし、あまり得をしないとはいえ、少しでも得られるエネルギーが多いほうが生物にとっては有利になると思うのですが、なぜ葉緑体を持とうとする動物はいないのでしょうか?また、動物にとって、葉緑体で光合成をすることでのデメリットはあるのでしょうか?(2006.6.22)

A:こういった質問は、「正解」があるわけではなく、答えを考えて楽しむためにあるので、僕の回答が全てではないですし、「正しい」わけでもないので・・・。念のため。
 別に葉緑体に限らず、世の中を見回すと、持っていれば便利そうなものはいくらでもあります。例えば、人間は、海で難破したら、海の水を飲めずに乾きに苦しめられますが、ある種の動物が持っているように塩分を積極的に排出する機構を持っていれば、海の水を飲んで生きながらえることができます。ただ、別に持っていると積極的に害があるわけではないものでも、持っていることによって多少の「コスト」がかかります。例えて言えば折りたたみ傘のようなものですね。雨が降った時には便利ですから折りたたみ傘を持っていることには意味がありますが、いくら折りたたみでもある程度の重さがありますから、どう考えても雨の降らなそうなお天気の時は持たないのが普通でしょう。同様に、動物も、どうしても獲物が捕まらない時には光合成をできたらよいと思うでしょうけれども、まあ、普通には大丈夫、ということだと思います。さらに言えば、葉緑体というのはタンパク質の固まりみたいなものですから、実は作るのにかなりのエネルギーが必要です。気安く、「念のために持っておこうか」と言えるようなものではありません。その意味では、雨のための折りたたみ傘というよりは、雪が降った時のスキーといった感じでしょうか。雪国だったらよいでしょうけれども、いくら雪の時は便利でも東京だったら持つ気は起こらないでしょう。(2006.6.22)


Q:植物は、光合成と呼吸の両方をしているわけですが、酸素供給という観点からみると、何対何の割合で行われているのでしょうか?(2006.6.22)

A:光合成の速度は光の強さによって大きく変動しますので、割合も刻々と変わってしまいます。さらに、光合成産物がたまると呼吸速度が増加する場合がよく見られますので、夜と昼間では呼吸速度も変化することになります。最後に、植物種によっても呼吸や光合成の速度は異なります。というわけで、一般的な見積をすることは困難ですが、暗所での呼吸速度と、飽和光下での光合成速度を比べるのであれば、おおざっぱに言って光合成速度は呼吸速度の10倍程度と思えばよいでしょう。(2006.6.22)


Q:どのくらい光合成をすると、どのくらいのでんぷんができるのですか。(2006.6.22)

A:これは、植物の種類によっても違います。光の強さなどの環境の条件によっても違います。ですから、一口には答えられません。それでも、非常におおざっぱなことを言うと、光合成の能力が高い草の場合、10 cm四方の葉っぱあたり、1日に1gぐらいでしょう。(2006.6.22)


Q:光合成には1と2があるらしいのですが、どういうものが1で、どういうものが2なのですか?詳細にお願いします。(2006.6.22)

A:1と2は光化学系I、光化学系IIのことでしょう。WEB上では文字化けしないようにアラビア数字を使っていますが、実際にはローマ数字で書きます。光合成の二つの光化学系の内、チトクロームfを酸化するものを光化学系I、還元するものを光化学系IIと名付けました。
 質問がこれだけですと、「詳細に」と言われても何を答えればよいかわかりません。「質問のコツ」を読みましたか?漠然とした質問には漠然とした答えしかできません。(2006.6.22)


Q:食品メーカーに働いているものなのですが、新商品で大根を出汁で炊いて殺菌したものを開発しているのですが、なぜか5日程度したところから変色(青紫色)するものがまれに出てきます。大根の産地の人に聞いたらでん粉が多くなってきている時期だから関係あるのではというのですが、、、。また、明るいところにおいてある方が変色する率も高いので、大根の切り身で光合成がおきうることはあるのでしょうか?それともポリフェノールとかが原因なのでしょうか?変な質問で申し訳ありませんが、分かる程度で教えていただけると助かります。(2006.6.22)

A:青首ダイコンの首の部分の色はクロロフィルですし、切ったあとでもクロロフィルを蓄積して光合成をするようになる可能性はなくはありませんが、お話は殺菌したあとの話ですよね?とすると、光合成、というか生理的な現象が関与している可能性はありません。ポリフェノールに関しては専門家ではないのでよくわかりませんが、色からすると違うような気がします。(2006.6.22)


Q:初めまして。現在私は、専門学校の卒業研究として、『粒子状物質による植物の蒸散及び光合成に与える影響』というテーマに取り組んでいます。植物の光合成の進み具合を、光合成作用によって作られた栄養(糖分)をつかって測定できないかと考えているのですが得られた結果を具体的な数値で表すには、どのような方法がありますでしょうか?(2006.6.21)

A:20−30年ぐらい前までは、光合成産物の量の増加を使って光合成の進み具合を測定する、ということがやられていたのですが、きちんとした値を求めることが難しいため、現在では使われなくなりました。もし、定量的な実験をなさりたい場合には、光合成による酸素の発生量を測定する方が楽だと思います。研究の現場では酸素電極という装置が酸素の量を量るのに使われるのですが、高校などの教育現場向けに、プロダクトメーターという安価な装置も売られているようです。
 あとは、植物体を水(栄養液)栽培して、育ったところで植物体全体を乾燥して重さを量って、その重さの増加量から、光合成の能力を見積もる、ということは可能かも知れません。これなら、乾燥器と秤があればできます。(2006.6.21)


Q:はじめまして。早速質問ですが、ケナフはとても光合成する、ケナフは普通の植物の約10倍もの光合成をすると聞いたのですが、なぜ他の植物と違いケナフはそれほど光合成をするのか教えていただけませんか。(2006.6.21)

A:よくケナフは光合成能力が高いと言われているので、ちょっと調べてみました。科学的な論文が掲載される雑誌の中を検索してもあまりケナフの話は出てこないのですが、Indian Journal of Experimental Biology という雑誌(2002年、38号、841-844頁)に、40 mgCO2/dm2/hr という光合成速度が出ていました。これが本当だとするとイネと同じぐらいで、トウモロコシの2/3といったところです。イネというのは、まあこのタイプ(専門的にはC3植物といいます)の植物の中では光合成能力が高い部類なので、光合成が高い、というだけなら嘘だとは言えませんが、普通の植物の10倍というのはあきらかに嘘でしょう。いずれにせよ、トウモロコシ(専門的にはC4植物になります)には負けるようです。というわけで、別に「他の植物と違」うことはなさそうです。(2006.6.21)


Q:藻類の炭酸固定の方法について教えてください。(2006.6.20)

A:特に藻類だからといって炭酸固定に特別な方法をとっているわけではありません。高等植物と同様に、カルビン・ベンソン回路で炭酸固定は行なわれます。(2006.6.20)


Q:光合成の測定機器である、液相型酸素電極法と気相型酸素電極法の測定原理や、双方の利点と欠点を、詳しく教えていただけませんか?(2006.6.19)

A:酸素電極の原理ついては「光合成研究法」という本に詳しく載っています。古い本ですが、図書館に行けばあるのではないでしょうか。原理は液相でも気相でも変わりません。ただ、空気の21%は酸素ですから、気相で測定する時は二酸化炭素濃度を非常に上げないと測定ができません。通常二酸化炭素濃度での光合成を測るのは気相の酸素電極では難しいでしょう。そのような場合は、酸素電極ではなく、二酸化炭素の吸収で光合成を測定します。水の中の酸素濃度は、250 μM程度ですから、このような問題は生じません。ただ、葉っぱの光合成を測ろうと思うと液相では難しいので、葉緑体を単離して光合成を測る、と言ったことになります。(2006.6.19)

Q:今回、学生実験で、液相型酸素電極法・気相型酸素電極法とも、葉を用いて(葉の状態のまま)光合成を測定しました。この場合では、十分な二酸化炭素濃度が確保できていれば、気相の方が利点があるということですか?(2006.6.19)

A:液相型の実験でどのように「葉の状態のまま」測定したかにもよりますが、一般的には葉で測るなら気相の方がよいでしょうね。ただ、上にも書きましたが、もともと酸素は21%ありますから、ダイナミックレンジ(この場合測定フルスケールに対する変化の大きさと考えて下さい)はどうしても小さくなります。これも、結果としてきちんと測定できているなら問題ないと思いますけど。(2006.6.20)


Q:最近流行のUVカットガラスは、植物にどんな影響を与えますか?そのガラスを使った部屋の植物の生育があまりよくないようです。(2006.6.19)

A:紫外線は、光合成のエネルギー源としては使えませんし、通常は、かえって光合成を阻害する方向に働きます。ですから、原理的には紫外線をカットすると、植物の生育は良くなりそうな気がします。というわけで生育が悪くなる原因はわかりませんね。そもそも、同じような部屋で、普通のガラスの場合は生育がよいのでしょうか。もしそうでなければ、単にその部屋の構造が悪いのかも知れません(湿度が保てない、など)。あと、UVカットガラスは見た目は透明でしょうか?UVと同時に可視光も一部カットしているようだと、そのために光合成が低下する可能性は考えられます。(2006.6.19)


Q:薄層クロマトグラフィーについてなのですが、、、。実験を実際に行って見ると、観察される色素のRf値が、生物の教科書などにのっているRf値と一致しないのですが、なぜなのでしょうか?あともうひとつ質問なのですが、カロチン、クロロフィルa,bのRf値が、カロチン>クロロフィルa>クロロフィルbとなるのはどうしてなのでしょうか?(2006.6.19)

A:過去の質問箱(FAQ)を読んでいませんね。クロマトグラフィーについては、過去に何度も質問が寄せられています。中学生・高校生向けの実験のページをまずは見てください。そして、さらにわからないことがあったら、再度ご質問下さい。(2006.6.19)


Q:光合成の話で、炭素固定速度(光合成速度or基礎生産速度)が、光化学系IIのDownstreamに支配されるというのを聞きました。このDownstreamというのは、いわゆるZスキームのある部分のことでしょうか?教科書を調べろと言われそうですが、第一電子受容体が電子を貰ってから後の電子の流れの度合いor速度を指すのでしょうか?また似たような言葉で、Down regulationとありますが、これは全く別のことなんでしょうか?すいません。御教え下さい。(2006.6.19)

A:Downstream は直訳すれば下流で、ある連続した反応系がある時に、特定の反応よりも後を意味します。電子伝達は、Zスキームの通り光化学系IIー>プラストキノンー>b/f複合体ー>プラストシアニンー>光化学系Iと進みますから、プラストキノン以降は全て光化学系IIの下流になります。さらに、電子伝達によってATPとNADPHが合成され、それが炭酸固定反応に使われますから、その意味では、炭酸固定反応も光化学系IIの下流と言っても間違いではありません。ただ、「支配される」というのがどのような意味で使われているのか、ちょっと僕にはわかりかねます。
 Down regulation は活性の抑制のことです。「阻害」(inhibition)というと、マイナスのイメージがありますが、Down regulation は、むしろ、何らかの目的で、活性を積極的に下げている、抑制している時に使われます。従って、Downstreamとは全く別のものです。(2006.6.19)

Q:早速のお返事ありがとうございます。と言うことはDown regulationは、ある環境下に適応するために生き物が積極的(能動的)に持ってる機能を下げるプロセスと考えて良いんでしょうか。また先程のメールで安易に”支配される”と書いてしまいました。これは蛍光法(PAM,FRRF)で測定できるPSIIパラメータと基礎生産の関係と言いましょうか(明反応と暗反応の関係性と言いましょうか)。例えば最大or実効量子収率(Fv/Fm)が高いからと言って必ずしも炭素固定速度(基礎生産速度)や生物量が高いとは言えないと聞いたことがあるのですが、その一方で電子伝達がスムーズなら炭素固定速度も高い(つまり炭素固定速度は電子伝達に支配される)というのも感覚的に分かる気がします。何を問うているのか自分でも曖昧なのですが、電子伝達が快調なのに、有機物があまり出来ない状況というのは有り得るのでしょうか?もちろん、栄養も無ければいけないと思うのですが、そもそも栄養がなければ電子伝達も低いはずと思うのですが。
 また全く違う話かもしれませんが、ある知見にQaの再酸化速度(1/τQa)やPSII全体の再酸化速度(1/τPSII)の話で、1/τQaの度合いが1/τPSIIの上限を定める(べき)とか、1/τQaと1/τPSIIの値がほぼ等しい場合、PSIIのdownstreamとupstreamがバランスしていると書かれていて、正直ほとんど理解できませんでした。この文章意味が通ってるかも心配なのですが、もし答えがありましたら御教え下さい。(2006.6.19)

A:蛍光のパラメータといってもいろいろあります。例えば、Fv/FmやFv'/Fm'は系IIの状態を反映しており、下流についての情報はほとんど含みません。一方で、qPやφIIといったパラメータは下流の情報を含みます。ですから、前者のFv/Fmの場合は、これが高くても光合成をほとんどできない、という場合はあり得ます。各パラメータの意味についてはクロロフィル蛍光測定のオンライン教科書をご覧下さい。もう一点、全く別なケースとして、例えば電子がフェレドキシンに流れず、酸素へと流れることもあります。そのような場合、電子は流れてもフェレドキシンの還元力が使えないので、もちろん二酸化炭素の固定はできません。
 後半の部分についてですが、「PSII全体の再酸化速度」というのが何を指すのかがよくわかりません。ただ、系IIの内部の電子伝達も H2O -> Mn cluster -> Z -> P680 -> Phe -> QA -> QB というように連続した電子伝達反応からなります。それをQAというポイントから見た場合、QBへの電子伝達反応が下流になり、水からの電子伝達が上流になるわけです。QAの再酸化はQBへの電子伝達で起こりますから、QAの再酸化速度は下流の電子伝達をみていることになります。もし、「「PSII全体の再酸化速度」というのが上流の電子伝達を示しているのであれば、2つが等しければ、上流と下流の電子伝達速度がバランスしている、という言い方はできるかと思います。(2006.6.20)

Q:またお返事頂きありがとうございます。すいません。後半の質問のPS2全体の電子輸送速度に関しては、自分でもっと勉強してから、是非、また質問させてください。前半の回答の一つわからないのは、Fv'/Fm'とφIIは、全然違うのでしょうか?どちらも、一定の定常状態の光に慣らされた状態で測ることによって得た光化学反応の量子収率だと思うのですが・・またとんちんかんなこと聞いてますでしょうか? もし質問の意味が通っておりましたら御教え下さい。(2006.6.21)

A:Fv'/Fm'とφII は、どちらも光化学反応の量子収率ですが、φII = Fv'/Fm' x qP という関係になります。qPは、それこそPSIIの下流がどれだけつまっているかの指標ですから、Fv'/Fm'がPSIIの実効量子収率だとすると、φII は下流も含めた電子伝達全体の実効量子収率になります。例えば、光化学系Iが阻害された場合、Fv'/Fm'は直接は影響を受けませんが、φII は減少します。(2006.6.21)

Q:Fv/Fmは、結局、第一電子受容体Qaの酸化還元状態に依存して変化する蛍光強度(Fv=(Fm-F0))に依存するPSIIでも最初の方の過程で決まるパラメータで、光合成有効光吸収断面積σPSII(光化学反応を引き起こし得る光捕集色素群の大きさで実際には、その色素群に光子が吸収される確率を掛けたもの)もPSIIの最初の方の過程(反応中心(p680)が励起されるまでの過程まで)を見ていると考えてよいんでしょうか。つまり、いわゆる蛍光方で測定されるパラメータは、どこを見ているかというと明反応のしかもPSIIの一番最初の部分(上流)の電子伝達の状態を表すパラメータなんですよね。
 で前回の御回答で、qpは下流の状態を含むのでφIIはPSII全体の電子伝達の実効量子収率ということでしたが、すいません。再度質問させて頂きたいのですが、”qp(光化学反応による蛍光の消光)は下流の状態を含む”と言いますのは、Qaの酸化還元状態に依存していて、それは下流の電子伝達の状態で決まるという解釈で良いのでしょうか?その感覚で考えますと(結局Qaの酸化還元次第ということは)、Fv/Fmもdownstreamの方の情報を含むような気がするのですが・・・
 すいません。質問が整理できてますでしょうか?また、よろしければ御教え下さい。(2006.6.22)

A:下流の影響が出るのは、ある一定の光条件の下で、定常的に電子が流れている場合に、下流がつまったことによってもQAの還元が起こるからです。でも、Fv/Fmは暗順応した試料で測定します。暗いところにおいて置いた試料に短いパルス光を一度あてただけの変化なら、下流がつまっていようとうまく動いていようと関係ないことはわかりますよね。オンライン教科書は読んでもらえたのかな?(2006.6.22)


Q:植物は月の光で光合成ができるのか、教えてください。(2006.6.19)

A:もし、月の光でも光合成の反応が原理的に進むかどうか、という意味のご質問でしたら、進みます。ただ、月の光はあまりにも弱いので、実際には、月の光による光合成を測定しようと思っても、測定できない(見ることができない)ことになるでしょう。(2006.6.19)


Q:クロロフィルムには、クロロフィルムa,bとありますが、なぜ光合成用の色素が2つもあるのでしょうか?(2006.6.18)

A:光合成色素の大きな役目の一つは、光のエネルギーを吸収することです。しかし、1つの色素で吸収できる光の色(波長)は限られています。ですから、複数の色素を組み合わせていろいろな色の光を吸収することがよく行なわれます。質問には「2つ」とありますが、光合成用の色素としては、クロロフィル以外にもカロテノイドなどがあります(ただし、カロテノイドには光のエネルギーを吸収する以外の役割もあります)。(2006.6.19)


Q:某国立大学の大学院の入試問題に、「葉緑体の構造をもたないで光合成を行う植物の仲間を二種類あげよ。」とあったのですが、答えがわかりません。こちらの勉強不足かと思いますが、調べれば調べるほど解らなくなってしまいました。ぜひとも、お力添えをお願いします。(2006.6.15)

A:「葉緑体の構造」というのが具体的に何を指すかがわからないことと、「植物の仲間」というのがどこまで「仲間」に含めるかがわからないので、お答えが難しいのですが、原核生物の光合成生物を二種類挙げたらどうでしょう。原核生物なら細胞内小器官を持ちませんから、葉緑体は持たないことになります。原核の光合成生物としては、シアノバクテリア(藍藻)、プロクロロン(原核緑藻)、紅色光合成細菌、緑色光合成細菌などがあります。(2006.6.16)


Q:光合成について勉強しているんですが、光合成色素について詳しく教えてください。(2006.6.14)

A:「質問のコツ」を読んでいませんね。読んでから、もう少し具体的に質問をお寄せ下さい。(2006.6.16)


Q:現在コケの研究をしているのですが、その生育がよいか悪いかの判断をどのようにすればよいか困っています。コケのクロロフィルを抽出することも案で挙がったのですが、クロロフィルが多いことが生育がよいということではないのではないか、というところにたどり着きました。実際はどうなのか、教えていただきたいです。また、何かよい案がありましたら、教えていただけたら助かります。お願いします。(2006.6.14)

A:植物の生育の一番の目安は、重さ(できれば乾燥重量)の増加だと思います。栽培条件がわかりませんが、例えば土に植えているのであれば、土を洗い流して、よく水気を切って重さを量る(生重量)か、乾燥させて重さを量る(乾燥重量)のが一番です。クロロフィルでも、もちろん指標にはなると思いますが、その場合、光の条件によって左右されます。一般的には暗いところで育てると乾燥重量あたりのクロロフィル量は光を集めようとして増えますし、明るいところで育てると減ります。重さやクロロフィルは、ある生育期間での変動をみる方法ですが、その他に、ある一定の時点での光合成を測定する方法はあります。一般的に、植物の生育は光合成に依存しますから、光合成の速度を測れば生育速度についての情報を得ることができます。ただ、コケの場合、従来の葉の測定に用いられているような光合成測定器を使うのは難しいように思いますので、クロロフィル蛍光を用いた装置などが必要になるかも知れません。(2006.6.16)


Q:光合成の分り易い解説有難うございます。さて、ふと感じたのですが、光合成には「クロロフィル」と言う物質が関与しているというお話しでしたが、一日の日射量を仮に一定だとした場合、クロロフィルの既存量または摂取量において、光合成による二酸化炭素の消費及び酸素の放出量に影響を及ぼすものなのでしょうか?
素人考えなのでご容赦いただきたいのですが、もし仮に摂取量において上記のような影響が顕著に出るならば、
①「クロロフィル」が、仮に水に溶解するとして、その水溶液を最適値量で供給した場合、上記による影響は顕著に現れるのでしょうか?又、その植物種による最適値などがあれば御教授ください。
②上記のクロロフィルを最適量投与した場合の、種の違いによる光の照射量の最適値及び光の種類(主に波長及び可視の光色などの因果関係並びに光のもたらす熱エネルギーによる影響)が及ぼす影響など?
 要は、地域社会での大気環境改善策として光合成という自然の恵みの恩恵を被ろうと思案しているしだいなので、そのへんの所でのご教授のほどを、よろしくお願い致します。(又、小学校のころ「夜」植物は、「酸素を吸収し二酸化炭素を放出するので鉢植えなど屋外に出さなければいけない」と教わった記憶があるのですが、この記憶は正しいでしょうか?)
 以上よろしくお願いいたします。(2006.6.13)

A:まず、クロロフィルは光を集めるアンテナの役割をしています。そして光は光合成にとってなくてはならないものである一方、過剰にあると植物を傷つけます。従って多すぎても少なすぎてもいけないことになります。
 次に、光合成は、試験管の中で何かを混ぜたらできるような反応ではなく、必要な成分が一定の場所に厳密に配置されている必要があります。従って、クロロフィルを外から加えても光合成を促進することにはなりません。ちなみに、クロロフィルは水には溶けませんので、たとえ与えるとしても有機溶媒に溶かして与えるしかありませんが、有機溶媒をかけたら植物は死んでしまいます。
 人間が光合成を促進するためできることは、(1)肥料などを与える、(2)ストレスを与えないようにする、(3)育種や遺伝子組換えなどによってよりよく光合成をできる植物を作る、という3点が主かと思います。最初の(1)はいわば、クロロフィルを与える代わりにクロロフィルの原料を与えることに相当します。(2)は乾燥したら水をやる、光が強すぎたら少し遮ってやる、光が弱かったらランプでてらしてやる、といった細かい作業になるかと思います。(3)については、現時点では光合成自体を変えることによって生育を上げた植物が実用化された例はまだないと思います。
 最後に、夜の植物ですが、確かに植物も呼吸をするので、夜は酸素を吸収しますが、その量は人間に比べればかなり少なくなります。従って、もし、鉢植えを屋外に出さなければならないような場所では、複数の人間が一度に寝たらたちまち死んでしまうと思います。もし呼吸が気になる場合は、鉢植えを外に出すよりも人間を外に出した方が効果的です。(2006.6.16)

Q:先生、前回の質問に大変分りやすいご回答有難うございました。先生のご回答を見ると、少し私の質問の仕方が乱暴であったように感じ反省をしております。どうぞお気に触るような事がありましたらご容赦ください。
さて、光合成促進には、①適切に肥料を与える②適切に水・光の照射を行うというお話でしたが、担当直入に「初心者がガーデニング」行う等の場合、光合成促進を考慮して、その辺の事が植物の種類ごとに分り安く解説が施されている、”文献”などございましたら、分る範囲で結構ですのでご教授の程よろしくお願いいたします。(2006.6.16)

A:うーむ。僕の答えは、そんなにとげとげしていますかね。いつもこんな調子で会話をしていますので、お気に障ったらこちらこそ申し訳ありません。
 さて、文献とのことですが、適切な施肥、水、光の管理というのは、ガーデニングの基礎なので、どんなガーデニングの本にでも載っていると思います。一方で、どの程度が適切か、という点に関しては植物ごとに異なりますので、自分が扱う植物の本を探す必要はあります。僕は子供の頃、園芸少年で、NHKの趣味の園芸と、園芸植物事典が愛読書でした。というわけで、まずはそのようなものでも、書店でぱらぱらめくってご覧になってはいかがでしょうか。(2006.6.16)


Q: 植物のでんぷんは、どのようにして、できるのか。(2006.6.11)

A:植物には葉緑素(クロロフィルとも言います)という緑色の色素を含む葉緑体というものを葉っぱの中に持っています。葉の中ではこの葉緑体の中で、光合成によって作られた栄養分を原料にデンプンを作ります。その他、例えばサツマイモなどはお芋の部分にデンプンを貯めますが、これは、栄養分をお砂糖などの形にして茎から根へと運び、そこでデンプンを作ります。(2006.6.16)


Q:『光合成が行われている事を確かめる実験』の時に、実験に使うオオカナダモの葉をお湯につける事をしたのですがその後にアルコールにつけて脱色する事はしなかったのです。お湯につけた後にそのままヨウ素液をつけ、反応を見ました。(反応した。)
この実験の後に「なぜ、葉をお湯につけたのか」っという問題が出ました。僕は、「細胞壁を壊してヨウ素液とデンプンを反応しやすくするためため」っと書いたのですが、×でした。先生がいうには、α(アルファ)やβ(ベータ)などが関係しているというのですが、この実験の場合『お湯につける』という事の意味を教えてください。(2006.6.6)

A:特にα、βというのが、僕にも全くわかりません。実験の説明などが別にあって、そこで説明されていることはありませんか?
一般的には、葉をお湯につける理由として
1.お答えのように、ヨウ素液が細胞の中に入りやすくする
2.アルコールで葉緑素を抜く時に、抜けやすくする
3.転流や分解によるデンプンの減少を抑える
というような目的があるかと思います。切り葉では、茎から離れているので、転流は考える必要がないのですが、オオカナダモでは、もしかしたら3のようなことも必要なのかも知れません。あと、アルファ・ベータの方に関しては、冗談好きの先生の場合、冗談の場合もあるので、うっかりできません・・・。(2006.6.9)


Q:ペーパークロマトグラフィーの実験についてです。ジエチルエーテルを用いて椿の葉から色素を抽出し、トルエンで展開しようしたところ、何度やっても色素が分離せず、すべての色素が一緒に上昇してしまいました。失敗の理由を教えてください。(2006.6.6)

A:失敗した理由というのは、「正解」というのがないので、はっきり言って、これだ、という答えが今ぱっと思いつきません。とりあえず、展開溶媒をトルエンから別のものに変えてみてはどうでしょう?過去の質問を見れば、どのような展開溶媒が一般的に使われているかがわかると思います。あとは、試料に含まれている水は少なければ少ないほどうまくいきます。普通はシリカゲルに水を吸わせますが、これが不十分だとうまくいかない場合があります。(2006.6.9)


Q:初めまして。生物の授業で『植物は光合成によってデンプンを作る(6二酸化炭素+12水+光エネルギー=グルコース+6酸素+6水)ということを学びました。そこで、6メタン+6水+光エネルギー=2グルコース を作ることもできるんですか? (2006.5.29)

A:これは「できない」というのが答えです。植物は二酸化炭素を有機物に変える時に「ルビスコ」という名前の酵素を使いますが、この酵素は二酸化炭素しか炭素源として使うことができません。ですから、炭素源としてメタンがあってもダメなのです。ただ、光合成ではありませんが、メタンをエネルギー源として使うことができる細菌は存在します。その場合でも、炭素源としては二酸化炭素を使います。(2006.5.29)


Q:薄層クロマトグラフィーの実験で、Rf値を計算したところ、物質①Rf=0,8、物質②Rf=0,7、物質③Rf=0,6、物質④Rf=0,6と出た場合それぞれの物質は何になるんですか?お忙しい中、すみませんが、なるべく早めにおねがいします。(2006.5.28)

A:これだけの情報では物質を特定することはできません。「質問のコツ」のページと「よくある質問のページ」をご覧になった上、再度具体的な質問をしてみて下さい。(2006.5.28)


Q:初めまして。私は、現在薄層クロマトグラフィーの実験のレポートを作成しています。植物類によって共通な色素、異なる色素があるそうですが、なぜ、異なる色素が必要なのですか?あと、植物の色素と生息場所は関係あるんですか?(2006.5.27)

A:光合成の一番中心的な役割を果たす反応中心というものは、色素がタンパク質に結合したものですが、これは、植物の種類によらずほぼ同じです。一方で、その反応中心のために光を集めるアンテナの役割を果たす色素は、様々なものがあります。
 生育場所との関係を考えてみましょう。空気の色の場合、まあ、大抵は透明で、どこそこへ行ったら空気が赤かった、という話は聞きませんが、水の場合は違います。海や湖沼、池などを見ても、五色沼などという場所があるぐらいで、様々な色をしています。ということは、水の中の生き物にとっては、周りから来る光は場所によっていろいろ違うことになります。植物や藻類、海藻などは光合成によってエネルギーを得ているわけですから、光合成のための光を吸収できるかどうかは大問題です。1つの色素は、ある一定の色の光しか吸収できませんから、違う色の光を吸収しようと思ったら違う色の色素が必要になってくるはずですよね。
 これだけの情報があれば、レポートを書けるかな?(2006.5.27)


Q:アンテナ色素と補助色素という言葉があると思うのですが、この2つの違いはなんですか?本質的に異ならないとしたらこの2つの言葉の使い分けはどのようになされているのですか?(2006.5.24)

A:補助色素という言葉は高校の教科書などにも載っていて、一般的な言葉なのですが、実は歴史的な言葉として考えた方がよい言葉です。昔は、反応中心複合体にはクロロフィルaが存在して「主要な」色素として機能し、アンテナとしてその他のクロロフィルbやカロテノイドといった色素が働いているというイメージだったので、クロロフィルa以外の色素を補助色素といったのです。ところが実際には、クロロフィルaも数分子の反応中心や電子伝達成分として働くものの他は、ほとんどがアンテナとして働いていることがわかりました。従って、現在では、反応中心色素、集光性(アンテナ)色素といった機能による分類をする方向に変化をしています。というわけで、現時点においては、なるべくアンテナ色素という言葉を使った方がよいかと思います。(2006.5.24)


Q:こんばんわ。初めて質問させていただきますが、宜しくお願いします。
まずカルビンの実験における二次元ペーパークロマトグラフィーに使われる展開液は何が使われており、一回一回はどういう面において(質量、親水性など)分離しているのでしょうか??
あともう一つは、ヒルの実験においてシュウ酸鉄Ⅲがシュウ酸鉄IIに変わる際に電子を受け取りますが、このときの化学反応式は分かりますでしょうか??
あと電子の行き先がないと反応しない(光合成は行われない)と調べた資料には書いてあったのですが、それはどのようにして証明できるのでしょうか??なにか行われた実験などがあれば教えていただきたいです。はじめてでいくつも質問して申し訳ないですがよろしくおねがいします。(2006.5.23)

A:まず、カルビンの実験で使われた展開液は、一次元目がフェノール:水(72:28)、二次元目が水飽和ブタノール:水飽和プロピオン酸(1:1)です。どちらも水を含んだ有機溶媒ですので、分離の原理自体は同じです。基本的には、展開溶媒にその物質がどの程度溶けるかによって分離されます。一次元目の展開液は極性がより高い(つまり水的な性質が強い)ので親水性の物質が大きく動いて分離され、二次元目の展開液は極性が低い(つまり油的な性質が強い)ので疎水性の物質が大きく動いて分離されると考えられます。
 次にシュウ酸鉄ですが、シュウ酸鉄IIIの化学式は(C2O4)3Fe2で、シュウ酸鉄IIの化学式はC2O4Feです。シュウ酸イオンはC2O42-になります。従って、シュウ酸鉄の還元の化学反応式は
 (C2O4)3Fe2 + 2e- → 2C2O4Fe + C2O42-
となります。e-は電子を示します。シュウ酸は2価の酸なので、硫酸鉄などの反応と基本的に同じです。
 最後に、電子伝達反応は葉緑体の中のチラコイド膜で起こり、そこで生じた還元力(電子)はストロマで起こる炭酸固定に使われます。ですから、葉緑体を壊してチラコイド膜を取り出すと、電子の行き場がなくなり、酸素発生が止まります。そこに、電子を受け取る物質を入れれば、また酸素発生が再開するはずです。ですから、単離したチラコイド膜に光を当てて、まず酸素が出るかどうかを見て、次にシュウ酸鉄IIIなどの酸化剤(電子受容体)を入れて酸素が発生すれば、電子の行き場がない時に酸素発生が止まることを証明できます。これが有名なヒルの実験です。(2006.5.24)

Q:見させていただきました。初めてにもかかわらず細かく説明していただきありがとうございますm(_ _ )m
あつかましくもぅ一つ質問さしていただきたいのですが、カルビンの実験で二酸化炭素を追い出すために窒素を入れますが、二酸化炭素よりも質量の軽い窒素を入れてどぅして二酸化炭素を追い出せるのでしょぅか??できれば携帯にも回答をいただければありがたぃです。あつかましくて申し訳ナィです。(2006.5.24)

A:二酸化炭素の場合は炭酸イオンになるのでやや複雑なのですが、一般には、気体が液体に溶解するのは化学反応ではなく、いわば単に液体の分子の隙間に気体が入り込む、という物理的な反応です。その際に、隙間に入っている気体は、別の気体を大量に入れれば追い出されてしまうことになります。従って、質量の差は特に大きな要因になりません。二酸化炭素の場合は、気体と炭酸イオンが平衡状態になっていますが、気体が追い出されれば平衡によって炭酸イオンが気体へと変化しますから、やがては、炭酸イオンもなくなることになります。(2006.5.24)


Q:原子の出す光はなぜ輝線スペクトルになるのですか?それから、原子の種類が変わるとなぜスペクトルが変わるのですか?(2006.5.17)

A:光合成の質問とは思えませんし、昨年も5月16日に「大学の授業でスペクトルをやりました。レポートが出たのですが 意味がわかりません。1,原子はなぜ輝線スペクトルなのか?2,原子が変わるとスペクトルが変わるのか?についてです。 教えてください。」という質問がWEB上でされているところを見ると、その大学のこの時期恒例のレポートのようですね。「質問のコツ」をご覧になるとわかるように、レポート課題のまる写し質問はダメな質問の1つにあげてあります。また、検索すれば過去の答えもすぐ見つかりますから、そちらをご覧下さい。(2006.5.18)


Q:なぜRf値は乾燥や加熱で変化するのですか?(2006.5.14)

A:どうもどこかの高校のレポートの締切が間近のようですね。下の質問への答えを見てください。(2006.5.14)


Q:加熱や乾燥によるRfの変化、分類による含有色素の違いは何故おこるのですか??(2006.5.14)

A:きちんと答えてもらうためには、きちんと質問することが大事です。この質問だけではほとんど意味をなしません。光合成質問箱に寄せられた過去の質問を考えると、光合成色素の薄層クロマトの実験、もしくはペーパークロマトの実験を行なって、それについて質問をしているのではないかと想像できます。過去の質問箱を見て頂ければわかりますように、Rf値はその分子の性質によって異なります。ですから、過熱や乾燥によってRf値が変化したとすれば、それはその分子の性質が変化したことを示します。「分類による含有色素の違いは」の部分は、それでも意味不明です。過去の質問箱と「質問のコツ」を十分に読んでから再度ご質問下さい。(2006.5.14)


Q:光合成光化学系IIの電子伝達(Zスキーム)に関して、知りたいことがあります。第一電子受容体のQaからQb、そしてPQへと電子が流れていくと思いますが、この速度に(環境要因の一つとして)鉄(例えば海水中の鉄)が関係することなどが知られております。
質問は、やはり光合成に必要な硝酸、リン酸、珪酸などは、上の電子伝達と関係するのか?が知りたいです。一般に上記の速度はτで示されると思いますが、硝酸、リン酸の濃度とτにどんな関係があるか知りたいです。例えば、硝酸、リン酸が豊富に必要量あれば、τは小さくなるなど・・・(2006.5.12)

A:これは専門的な質問ですね。どうもご質問の前提に何らかの誤解があるように思います。QAからQBへの電子伝達反応は光化学系IIの複合体の内部での反応であり、その反応速度が環境条件によって左右されることは、ないとは言いませんが、極めて限られます。培養実験などで培地から特定の成分を抜き、ほとんど生育が停止したような条件でしばらく維持したような場合には光化学系の内部に大きな影響が出ることはありますが、自然条件で海水中の鉄の律速によって反応中心内部の反応速度に影響が出る可能性は低いと思います。おそらく窒素やリンの場合も同様だと思います。また、鉄の場合に関してですが、鉄の含量は光化学系IIに比べて光化学系Iの方が圧倒的に多く(光化学系Iは複合体当たり最低12原子の鉄を含む)、鉄欠乏の影響は光化学系Iにより顕著にでるという報告の方が多いと思います。最後に、τというのは通常、物理などの分野で時定数として使う記号で、「一般的に上記の速度はτで示される」というのは誤解を招きます。(2006.5.12)

Q:早速のお返事ありがとうございます。しかし、窒素制限or鉄制限(これは自然環境において、これらが低濃度であるため)でPS2パラメータ(光化学反応の量子収率や光合成有効光吸収断面積)が影響を受けるという報告もあるのですが・・・逆に言いますと、Qa→Qb→・・の一連の電子伝達の速度は、環境要因によらずある程度一定値なのでしょうか?再度、質問になってしまいましたが、よろしければ教えてください。(2006.5.12)

A:おそらくPS2パラメータというのは、いわゆるφIIと呼ばれる「光化学系IIの実効量子収率」ではないでしょうか。これはクロロフィル蛍光測定により得られるパラメータですが、実際には、光化学系IIではなくそれより下流に阻害がかかった場合にも低下します。ですから、光化学系Iの電子伝達がおかしくなった場合にもφIIは低下するのです。
 また、量子収率や光吸収断面積は電子伝達成分の傷害によっても低下しますが、集光色素系の減少によっても低下します。栄養制限や温度制限がかかると光合成生物は同じ光でも強光だと認識するようになりますから一般論としては集光色素系を減らす方向へ順化します(鉄の制限の場合は光化学系Iについては反応中心量が低下しますから、それを補償する意味で集光色素系が増大しますが)。従って、栄養制限によって電子伝達速度自体は変化しなくとも、量子収率や光吸収断面積が低下することは十分にあります。別に僕自身は、環境を変えてQAからQBへの電子伝達速度を測定する、という実験を色々やっているわけではないので、断言できませんが、予想としては複合体内の電子伝達速度は余り変化しないでしょうね。ただし、複合体から出たあとの電子伝達速度、例えばプールのプラストキノンが関与する反応の速度などは変わる可能性があると思います。(2006.5.12)


Q:植物の二酸化炭素吸収速度(呼吸して放出された二酸化炭素も視野に入れたとき)が純光合成量純光合成量ですよね?では、光合成有効光量子束密度と二酸化炭素濃度の複合影響について教えてください。(2006.5.11)

A:ご質問だけからでは「について」と言われても、どのような答えを求められているのかがわかりません。「質問のコツ」をご覧頂けましたか?それを見て、再度具体的な質問を寄せて頂ければお答えできると思います。(2006.5.12)


Q:褐藻、緑藻、紅藻には生育場所にあった補助色素を持っているということなのですが、これらの吸収スペクトルについて書いてある本が少なく、困っております。どのように考察されるのでしょうか。よろしくお願いいたします。(2006.5.10)

A:スペクトルについては、1つおいて下の質問に対して回答したように「光合成事典」にいろいろ載っています。あと、「考察」というのは、本に書いてあることを書き写したり人に聞くことではなくて、自分で考えることですので・・・。(2006.5.11)


Q:光合成植物にはC4回路とC3回路を使っているものがあると聞きましたが、この二つは具体的にはどう違うのでしょうか?また、トウモロコシはC4だと聞きました。植物の種類によってこの二つの区別は可能ですか?あと、シロイヌナズナはどちらに属しているのでしょうか?(2006.5.10)

A:C3とC4については過去の質問箱をご覧下さい。植物によってC3,C4が決まっているものがほとんどですが、まれに、環境条件によってC3とC4の両方の状態を取れる植物もいます。シロイヌナズナはC3植物です。(2005.5.10)


Q:初歩的な質問で申し訳ありません。
1.クロロフィルa以外にも補助色素ではない色素は存在するのでしょうか
2.各種色素の吸収スペクトル(ビオラキサンチン、ルテイン等)を調べたいと思うのですが、なかなかそのような資料が見つかりません。どうすればよいでしょうか。(2006.5.9)

A:
1.もちろん光合成細菌はバクテリオクロロフィルが反応中心クロロフィルとしても働いていますからクロロフィルaではありません。高等植物型の光合成をする生物では、通常クロロフィルaが反応中心として働きますが、シアノバクテリアではクロロフィルdやジビニルクロロフィルが反応中心クロロフィルとして働く例が知られています。また、高等植物の光化学系Iの反応中心はクロロフィルaとクロロフィルaの立体異性体であるクロロフィルa'という色素が2つ合わさってできており、後者のクロロフィルa'は正確に言えばクロロフィルaとは別の色素です。
2.色素の吸収スペクトルは、学会出版センターから出ている「光合成事典」にいろいろ出ているので、それを見るとよいのではないでしょうか。1つの図書館になくても、最近は他から取り寄せてくれるシステムなどもありますので探してみて下さい。


Q:極相林のQ&Aを拝見しました。理系アタマではないのでこんな表現になりますが、その森を周囲からきっちり区切ってガラスケースに閉じ込めた状態と仮定したとして、「酸素と二酸化炭素の需要と供給が同一の{±0}の状態にある。」といった解釈では、おっしゃりたい内容と近いでしょうか…?(2006.5.8)

A:はい。その通りです。ただ、森をガラスケースに閉じこめる場合には、地面の中の根っこや、その中の虫、動物などを全て入れるようにしなくてはなりませんが。そして、もちろん極めておおざっぱな話です。森を切り開いたところに新しい木が育つ場合と比べて、ぐらいにお考え頂ければと思います。(2006.5.8)


Q:初めまして,小学校の教員をしております。早速ですが,6年生理科の授業について質問をさせてください。実は,研究大会で授業をする事になり,今,6年生のA区分といわれる「生き物同士の関わり」について勉強しています。授業では,植物の光合成により植物の栄養源である”でんぷん”を,植物自身が作り出している事,そして作り出すためには「日光,緑色」が必要である事などを本時の中で押さえたいと思っています。その実験では,ただ単に葉っぱだけを調べるのではなく,植物の部分部分を細かく細分化して調べ,緑色と日光に着目させたいのです。そこで,ホームページでもあったように”スイカの皮””斑入りの葉””赤ピーマン”など,いろいろな植物で調べさせたいと思っているのです。その検出方法は,小学校ではエタノールで葉緑素を落とし,ヨウ素液で検出させています。その方法で,いろいろな植物のでんぷんは検出できるものなのでしょうか?つたない質問ですが,よろしくお願いいたします。(2006.5.7)

A:デンプンの検出ができるためにはいくつかの条件が必要です。
 一つは、実際にデンプンを貯めること。これは、A)植物によってはホウレンソウなどデンプンを貯めずにショ糖を貯める種類があることと、B)光合成の速度が低くて貯めるデンプンの量が少ない場合があることに寄ります。後者の場合は、生育の遅い植物の場合と、実験の条件が悪い場合(光が弱いなど)があります。
 二つ目は、ヨウ素デンプン反応の発色をきれいに見ることができること。光合成をする部分は緑色ですから、クロロフィルを抜かないときれいに発色を見ることができません。その際に組織が固かったりするとクロロフィルの抜けが悪くて見た目でぱっとわからないことがあるようです。
 アサガオを使った斑入りの葉の実験などはうまくいくと思います。しかし、スイカの皮や赤ピーマンでどうなるかは、実際に試してみないとわかりません。僕自身やったことがないもので・・・。緑色のピーマンはある程度光合成をするはずですが、ヨウ素デンプン反応の発色を見るのは難しいかも知れませんね。表面を薄くそぐようにして薄い薄片を作ってからクロロフィルを抜くのでしょうか。(2006.5.8)


Q:こんにちは。実験のレポートで分からないことがあったので質問します。クロロフィルをヘキサン:エタノール(1:1)の混合溶媒で溶かしだすときの反応式が分かりません。これはどこが結合して溶かし出されているのでしょうか??教えてください。おねがいします。(2006.5.5)

A:「反応式が」とのことですが、これはそもそも「化学反応」ではありません。クロロフィルとタンパク質の結合は共有結合ではないのです。ドライクリーニングのときに洋服から油汚れが有機溶剤に溶け出るのと同じです。洋服と油が化学結合をしていたり、油と有機溶剤が化学反応を起こすわけではありませんよね。(2006.5.6)


Q:バクテリオクロロフィルaは主色素ですか?(2006.5.4)

A:「主色素」という言葉は聞いたことがありません。念のため、光合成事典も調べてみましたが、載っていませんでした。どういう意味でしょうか?反応中心色素という意味ですか?もし、そうだとしたら、バクテリオクロロフィルaは一部の光合成細菌で、反応中心として働いています。(2006.5.4)


Q:桜はどうやって光合成をするのかを教えてください(夏に葉がなくなった時)。(2006.5.2)

A:桜であれ何であれ、通常の植物は葉で光合成をしますので、葉がなくなった時には光合成をしません。緑色の茎を持つものや、緑色の実でも光合成はできますが、量的には葉の光合成に比べると無視できる場合がほとんどです。夏に葉がなくなる、という状況がよくわかりませんが、アメリカシロヒトリにでもやられた場合でしょうか。いずれにせよ、光合成はできないので、幹などに貯めてある栄養分で新しい葉を作るしかありません。それができない時には枯れることになります。(2006.5.2)


Q:HPを拝見し、とてもわかりやすかったです。さっそく質問させてください。野菜を育てていますが、野菜にも夜が必要でしょうか?野菜の種類によっても違うのかも知れませんが、例えば花や実を食べないレタスなどの葉物野菜の場合は、24時間明るい環境と、夜には真っ暗になる環境では、どちらが生育がよいのでしょうか。(2006.5.1)

A:一般に、生育の速さという点だけから考えた場合には、夜は必要ありません。ほとんどの植物は24時間明るい環境でも育ちますし、生育速度は夜がある時より速いことが多いと思います。もっとも、植物によっては夜が必要だというものもある、という話も昔聞いたように思いますが、何の植物だったか忘れてしまいました。生育とは別に花の咲き方は夜昼の時間によって大きく影響されます。葉物野菜は一般に、あまり生育しないうちに花をつけてしまうと収穫できませんから、昼の時間が長くなると花をつけるようなもの(長日植物)の場合は、あまり夜を短くできないことになります。光合成としては、昼だけでも構いませんが、花の咲き方まで考えると夜が必要になってくる場合もあるかと思います。(2006.5.1)


Q:貴HPの光の単位のページを拝見しましたが、よくわからなかったので、ずばりお答え頂けると助かります。
1.植物が育つのに一般的に必要な太陽光を真っ暗な室内で蛍光灯でまかなおうとした場合、蛍光灯を植物に触れそうなくらい接近させたとして、何ワットの蛍光灯がどのくらい必要だと考えればよいでしょうか?
2.また、過去の質問のなかで、「LEDではなく蛍光灯でも十分な光を惜しみなくあてれば植物は育つ」とありましたが、惜しみなくのというのは具体的にはどのぐらいの強さの光をどのくらいの時間あてると考えたらよいでしょうか?窓辺で植物を育てていて、南向きで光がよく入る条件で、という場合で。(2006.4.30)

A:「光の単位」のページに書いてありますように、「何ワットの蛍光灯」という時の「何ワット」というのは蛍光管全体での消費電力なので、それだけではどれだけの明るさの光を出すのかはわからないのです。学校の教室で使うような長い蛍光灯と、机の上に置くスタンド用の短い蛍光灯が同じワット数だとしても、直接比べることはできませんから。
 また、成長に必要な光の明るさは植物の種類によって大きく異なるので、数字としては一概に言えません。だいたい真夏の太陽の直射日光は2000 μmol /m2/s程度の明るさですので、これが自然界での光の強さの上限です。研究では植物を室内で育てることがありますが、イネなどは同じ単位で800程度、キュウリやトマトは200程度あれば十分に育ちます。研究によく使われるシロイヌナズナなどは80ぐらいで十分です。普通、夜に蛍光灯をつけた室内の明るさは同じ単位で5-10ぐらいですから、これだときついですね。その際の蛍光灯からの距離を約2 mとして、これから1/4の約50 cmまで近づけると、光の明るさは距離の二乗に反比例するとして計算して16倍の80-160 μmol/m2/sになります。これなら、シロイヌナズナには十分、キュウリやトマトでも何とかなるかも知れません。25 cmまで近づければキュウリやトマトでも大丈夫でしょう。ただし、あまり近づけると蛍光灯とはいってもかなり熱を持ちますから、温度のコントロールに気を配る必要があります。(2006.5.1)


Q:クロロフィルaがほとんどの植物に含まれているのはどうしてですか??(2006.4.24)

A:この「どうして」というのはどのような意味でしょうね。クロロフィルaの合成系をほとんどの植物が持つため、というのが1つの答えですが、多分それは聞きたいことではありませんよね。進化的に答えるのであれば、藻類や高等植物はシアノバクテリアが共生することにより生じたわけですが、その最初の共生は1回だけだったと考えられます。つまり、植物はあるシアノバクテリアの子孫である、という言い方もできます。シアノバクテリアはクロロフィルaを持っているので、植物もそれを受け継いでいる、というのがもう1つの答えです。一方で、クロロフィルaでなくてはいけない理由(他のクロロフィルではいけない理由)を考えるのは難しいですね。シアノバクテリアの中にはクロロフィルdを主に使っている種類がありますから、その意味ではクロロフィルaでなくとも何とかなるのでしょう。クロロフィルには、光を集めるアンテナの役割と、集めた光エネルギーを化学エネルギーに変える反応中心の役割の2つがありますが、前者はクロロフィルbなども働いています。おそらく反応中心として働くには、吸収する光の波長、他の物質との反応性など、いろいろな面でクロロフィルaが一番使いやすかった、ということなのかも知れません。(2006.4.25)


Q:はじめまして。質問に大変わかりやすく回答されているのを拝見し、是非教えていただけたらと思い、投稿しています。野菜を育てることが好きな者です。室内で観賞しながら食べられる野菜の鉢植えを考えていますが、室内だと光の量が少なくなると思います。光合成の不足分をカバーする為に、糖分を肥料として補うとよいと聞きました。どのような肥料がよいと考えられるでしょうか?また、室内という環境に合う野菜がありましたら、教えていただけないでしょうか。(2006.4.19)

A:研究をする上では、光合成がうまくできなくなった植物を育てる必要が出てくることがあります。そのような場合に糖を与えることによって光合成を補う、という例はあります。与える糖としては普通のお砂糖(ショ糖)でも十分です。しかし、一般的にはあまりお勧めできません。糖などの有機物の濃度が低い場合には、生育できるのは主に光合成をするものになりますから、土に何かが生えてくるとしてもせいぜい藻類ぐらいですが、糖を与えてしまうとそれを栄養源にカビなどが繁殖するようになってしまいます。また、糖を濃く入れると、浸透圧が上がりますから、根からの水の吸い上げが悪くなくなって、生育が悪くなります。ですから与える場合は、濃度などにもかなり気を配らなくてはなりません。土を消毒して濃度に常に気を配ってやれば何とかなるかとは思いますが・・・。
 基本的には、暗くてすくすく育つ、という野菜はあまりありません。もやしは例外でしょうけれども。もやしでなくとも、芽生えを使用する野菜の場合は、種子に蓄えられている栄養分をしばらくは使うことができますから何とかなります。最近は豆の芽生えをサラダなどに使うことがありますが、そのようなものは大丈夫でしょう。大きく育てるものはだいたい難しいと思いますが、矮性のミニトマトなどだったら何とかなるかも知れません。(2006.4.20)

Q:さらにひとつ質問させていただけますか?室内で育てていて、発芽はするのですが、そのあと本葉が出てこないまま、伸びてしまいました(レタスです)。同じくレタスで、ある程度大きくなったものを同じ部屋に置きましたが、そちらはなんとか育っています(枯れていません)。生育の段階によって、光合成に必要な光の量が変わるのでしょうか?よろしくお願い致します。(2006.4.22)

A:マメなどの比較的大きな種子を持つ植物では、発芽直後はその栄養分を使って生育できるので、その間に葉を作って細々とでも光合成をすればその後も生育できます。一方で、レタスの場合、種子は小さいので最初に葉を作るのに十分なエネルギーが得られず、いわば光合成で稼ぎながら葉を作っていく形になります。従って、最初から光が弱いと葉をちゃんと作れないことが予想できます。しばらくは光の当たる環境で育てたものは、そこで葉を作っておけますから、それから暗くなっても、しばらくはすでに作られた葉で細々とでも光合成をしていれば何とか生き延びられると考えることができます。(2006.4.22)


Q:はじめまして。さっそく質問です。サイトを見て光合成には明反応と暗反応があるということを知りましたが、化学反応式が分かりません。また、ADPやNADPHといった言葉もはじめて聞くのでどんな物質で光合成においてどんな働きをするのかよく分かりません。なるべく詳しく教えてください。よろしくお願いします。(2006.4.15)

A:明反応、暗反応と一口に言っても実は極めて多くの反応が組み合わさっているのです。ですから、単純な化学反応式にまとめるのは難しいですね。基本的に言うと、光合成は、光を使ってATPとNADPHを作る反応系(これを明反応と呼ぶこともありますが、正確な定義としては難しいことがあります。それについては過去の質問箱を見てください)と、ATPとNADPHを使って二酸化炭素を有機物に変える反応(暗反応と呼ばれることもあります)に分けることができます。ATPは生物のエネルギー源として使われる物質で、反応を進めるためのエネルギーを供給します。NADPHは生物にとっての還元剤です。有機物を燃やす(酸化する)と二酸化炭素ができます。ということは二酸化炭素から有機物を作るためには酸化することのの逆反応である還元をしなくてはいけません。そこで、二酸化炭素から有機物を作る(暗反応)ためにはATPとNADPHが必要なわけです。これを明反応が供給することになります。ですから、それをまとめて書くと
 明反応: 光のエネルギー+水 → 酸素+ATP+NADPH
 暗反応: 二酸化炭素+ATP+NADPH → 有機物
ということになります。ただし、化学式としてはこれは不正確で、実際にはATPを作るにはADPとリン酸が必要ですし、NADPHを作るためにはNADP+が必要ですが、そのようなことや分子の数は無視してあります。(2006.4.16)


Q:光化学IIと光化学Iは何でしょうか、二つの違いが何でしょうか。すみません、このことについて全く理解できないから質問をしました。(2006.4.14)

A:「大学生・一般」のレベルとのことでご質問を頂いていますが、これは何が聞きたいのでしょうか?光化学IIと光化学Iは高校の生物の教科書にも出てくるはずです。そこでは、2つの光化学系が協調して電子伝達系を構成してATPを作る、と習うと思いますが、「全く理解できない」と言われてしまうと、何をお答えしたらよいのかわからなくなってしまいます。おそらく大学レベルの知識について質問をするためには、まず、高校レベルの知識をしっかり学ぶことから始めた方がよいように思います。(2006.4.16)


Q:気候コンダクタンスは何でしょうか。(2006.4.12)

A:これは「気孔」コンダクタンスでしょうね。気体が気孔を通る時の通りやすさのことです。(2006.4.12)


Q:何で明るい光条件下でクロロフィルa/bが高いでしょうか。(2006.4.10)

A:クロロフィルaとbでは、一種の役割分担があります。一般に、光エネルギー変換を行なう反応中心という部分に近いところにはクロロフィルaだけが存在しているのに対して、光エネルギーを集めるアンテナの部分には、クロロフィルaと共にクロロフィルbも結合しています。光が暗い時にはアンテナがたくさんあった方がよいので、そこに結合しているクロロフィルbも多くなりますが、明るい条件では植物はアンテナを減らしますので、クロロフィルbの量も減少し、結果としてクロロフィルa/b比は高くなることになります。(2006.4.11)


Q:人工光合成について質問があります。色素増感電池や水の完全分解による水素製造など人工光合成を模倣した仕組みで実際に市場にでているものはあるのでしょうか?もしありましたら商品名など教えていただけるとありがたいです。(2006.4.9)

A:人工光合成というのが何を意味するかによって答えは変わるかと思います。例えば光合成では水素はできません。できるのはプロトン(水素イオン)の濃度勾配です。色素を使う、というのも一般的には光合成とは結びつかないと思います。植物の光合成のメカニズムを模倣した形での光エネルギー変換が実用化された例があるか、という質問でしたら、答えは「まだ無い」ということになると思います。一方で、単に光の吸収に色素を使う、とか、何らかの形で水が分解される、という程度の、実際の光合成のメカニズムとは関係のない「人工光合成」ならば、実用化された例があるかも知れません。ただ、そのようなものは僕の専門外になりますので、はっきりとお答えすることができません。(2006.4.9)


Q:初歩的な質問で恐縮ですが、観葉植物(ゴムの木、カポック等)や畑の野菜(ほうれんそう、小松菜等)は光合成でどの程度の炭酸ガスを吸収し、酸素を放出するのでしょうか。例えば晴天の夏の日中だと葉面積1平方メートル当り何グラムの炭酸ガスを吸収できるのでしょうか。様々な環境要因で変わると思いますが一般的にはどの位の値をイメージしたらよいのでしょう。(2006.3.16)

A:光合成の速度については以前に質問に答えが書いてありますので、ご覧下さい。一般的に草本では光合成の速度が高く、木本では速度が低くなります。草本の中でもC4植物と呼ばれる一群の植物で光合成が高い傾向があります。以前の質問への答えであげてある数値の場合はそのようなC4植物での最大値ですので、観葉植物ではこれよりかなり小さくなるでしょう。ホウレンソウなどでは最大値の8割程度はいくかも知れません。(2006.3.17)


Q:地下にある時に白いアスパラガスやネギに光が当たるとなぜ緑色になって光合成を出来るようになるのでしょうか?トリガーとしてはたらくものは光なのですか?葉緑体の元となるものは白色の時にはどうなっているのでしょうか。(2006.3.15)

A:はい、トリガーとしては光が働いています。フィトクロームという赤い光を吸収する色素が光の感知に働いているようです。葉緑体は、葉にあるものはクロロフィルを持っていてまさに緑なのですが、根や花といった細胞にも葉緑体の仲間があり、全てまとめて色素体と呼ばれています。例えば根にある色素体は通常はクロロフィルを持たずにデンプンを貯蔵するために白色体と呼ばれています。これらは、原色素体とよばれる未分化な状態から光などのシグナルによって葉緑体なり、その他の色素体に分化していくのです。(2006.3.16)


Q:はじめまして。植物は連続光を当てるよりパルス光を当てた方が成長(光合成)が促進されるという記事をインターネットで見つけました。明反応と暗反応があることまでは分かったのですが、パルス光にした方が光合成が促進される理由が分かりませんでした。暗反応が光を必要としないとしても、いつでも明反応を行える連続光の方が成長(光合成)には有利だと思うのですが違うのでしょうか。教えて下さい。よろしくお願い致します。(2006.3.15)

A:当該ホームページを見てみました。光合成の知識に関して間違った点もありましたが、パルス光にした方が光合成が促進されるという点に関しては、「光量あたりの」光合成量が促進されると書いてあって、これは昔から言われているので間違いありません。例えば、1秒おきに1秒間のパルスをあてれば光量としては連続光の半分になります。そこで、得られた光合成速度を2倍にして光量を同じにして比べた時には、パルス光の方が光合成が高くなる、という意味です。(2006.3.16)

Q:「光を消した直後の数μ秒は光合成していた時の惰性というか余韻で若干の光合成をする」ならば、その惰性を有効利用することで光量を節約できる(=同光量ならパルス光が有効)と理解できます。またはパルス光のように明暗を繰り返すと葉緑素が連続光下より活発に活動するような刺激になるのでパルス光の方が有効になるのでしょうか。申し訳ございませんが、やはり素人考えでは何故パルス光の方が有利になるのか理由が分かりません。お手数ですがもう少しだけ具体的な理由を教えて下さると嬉しいです。(2006.3.16)

A:実際の光合成系では光化学系が2種類あったりして複雑なのですが、思考実験として簡単なモデルを考えてみます。物質Aに光が当たると励起状態A’になるとします。A’はBと反応すると産物Cを作ってAに戻ります。通常、光の吸収自体は極めて速い反応なので、AがA’になる速度はピコ秒といった短い時間で起こるでしょう。しかしA’とBの反応にはもっと時間がかかる可能性があります。これが例えば1ミリ秒で起こるとします。そうすると、光が当たってから1ミリ秒の間はAはA’になったままですから、その間に光が当たっても、それは反応には何の役にも立ちません。1ミリ秒たって元のAに戻ってから光が当たれば、今度はその光は有効に反応に使われます。このような場合、短いパルス光を1ミリ秒の間に1回当てても2回当てても100回当てても、起こる反応は同じになりますから、1ミリ秒に1回当てた時が効率(光量あたりの反応)がよく、2回、3回となるに従って効率は悪くなっていきます。連続光はずっとパルス光を当て続けた状態と考えることができますから、やはり1ミリ秒に1回だけパルス光を当てた時に比べて光量あたりの反応で比べると損になります。
 ご質問にはありませんが、実は、パルス光の頻度を1ミリ秒に1回よりも逆に少なくした場合も効率が落ちます。上記の考え方だけですと、パルス光の頻度を1ミリ秒に1回よりより少なくした時は効率には変化がなさそうに思えます。しかし、実際には、光合成の中では、1つの反応が完結するために複数の光子を必要とする反応があります。つまり、光が当たるごとにAがA’になりA’’になり、A’’’になり、最後にA’’’’になると初めてBと反応する、といった感じです。その場合、あまり時間がたつとせっかくA’になったものが自然とAに戻るのでその分の光は無駄になります。ですから、必要以上に時間をおく、つまりパルス光に頻度を必要以上に下げた場合も効率は悪くなります。結果として、パルス光の頻度はあるところで最大値を取ることになります。(2006.3.16)


Q:こんにちは。先生に3つの質問です。光量子計を購入したくネットで探しましたが、種類が豊富&価格帯も広くどれが妥当か迷っています。①先生のお勧め商品はありますか?測定対象は、草本(常緑)・青枝垂れ(もみじ)で屋内で育てます。樹木や草本は大好きなので結構見ていますが、私は光合成等を専門的に勉強したことはありません。②素人が測定し判断するのは困難ですか?参考書籍を調べましたが、草本が多く樹木はあまりありませんでした。ある研究所に問い合わせたところ、樹木は年数も費やし困難なため研究はあまりないと言われました。私は社会人ですが、学べるなら大学院に行きたいと考えています。③屋内緑化と樹木(特にカエデ類)の研究が出来る大学や教授の方をご存知でしょうか?実は理数系は苦手です。でも植物は大好きなので、きっと私にも何かできるかもと思っています。もし教えていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。(2006.3.15)

A:1.まず、誤解がないかどうか確認しますが、光量子計というのは光の明るさを測定する器械で、光合成を測定する器械ではありませんよ。従って、「光量子計で植物を測定する」ということはあり得ません。光量子計で植物がどのぐらいの明るさの環境で生育しているかを測定する、ということはありますが。とりあえず以下は光量子計だとして・・・。「種類が豊富&価格帯も広く」というのは、人によって測定の目的が違うからなのです。ですから、測定の目的がわからないと一概には言えません。研究上、通常使われるのは、LiCor社製のLI−250という機種で、校正済みのセンサーと一緒に買えば光量子束密度の絶対値を測定できますから測定できますから便利です。ただ、6桁の値段が付いていたように思います。
 2.こちらは光合成の測定の話ですか?樹木でも草本でも、もし光合成を測定する、というだけでしたら、いくらでも測定例はあります。ただし、研究対象とした時に樹木の場合は時間がかかるので、メカニズムの研究などは少ないことは確かです。樹木でも最近はクロロフィル蛍光の測定によって簡便に光合成を測定できるようになりました。測定自体は機械さえあれば極めて簡単ですが、その解釈は素人だとやや難しいかも知れません。このホームページの蛍光測定のページに解説がありますので、どの程度理解できるかチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 3.屋内緑化とカエデの関係がよくわかりませんが・・・。屋内緑化となると、おそらく分野としては生物学ではなくなりますので、僕にはよくわかりません。樹木の研究という場合も、分類の研究ならある特定の樹種について研究していることがあると思いますが、一般的には生物学の場合、自分の興味のある現象を解析するのに一番よい材料を選ぶ、という形になります。というわけで、あまりお役に立てません。理数系は苦手でも何とかなるかも知れませんが、研究となると「植物が好き」というだけではなく、論理的思考が求められると思います。(2006.3.15)


Q:窓際にあるカーテンに小さな植物(花の咲く植物)を植えたいのです。カーテンの生地自体が植物のプランターの役割をするプロダクトです。給水は霧吹きを考えています。カーテンなので太陽の光は浴びる事が出来ると思います。今は実験段階で、毛糸や綿の中に植物の種を入れて、糸状にし、霧吹きで水やりをして、実際に芽を出し、育って行くかという実験をしています。うまくいけば種の入った糸(毛糸)を編んでカーテンのようにしようと思っています。実験しているのは、芝生/貝割れ大根/ジプソフィラレペンス2種/朝顔 の5種です。貝割れ大根は芽がすぐに出てきて、育つ可能性はあります。しかし実際はタンポポのように小さな花を咲かせる植物を探しているのですが、貝割れ大根の様に土を必要とせず、幅5mmほどの毛糸の中で育つ事のできる植物について何かご存知でしたら教えて頂けませんでしょうか。お返事頂けると有り難いです。ありがとうございます。失礼します。(2006.3.14)

A:植物の光合成にとって一番重要なのは光で、二番目は水です。三番目は二酸化炭素ですが、これは通常十分ではないとはいえ二酸化炭素濃度が減る環境条件というのはあまりありませんからとりあえずは無視できます。今の場合、光の方は問題なさそうですが、水の方が問題ですね。サボテンなどは別ですが、普通の植物は葉の気孔から非常に多くの量の水を蒸散によって失います。光合成を活発に行なっている時には、1 m四方の葉から一時間に400-500 mlの水が失われます。ということは昼間だけ考えても1平方メーターあたり何リットルもの水が必要ですから、植物が育ってくると霧吹きだけではとうていまかない切れないように思います。植物の種類によっては、着生蘭のように気根によってかなり水が不足した環境でも育つことができるものもありますが、それらは大抵生育速度が遅く、種から栽培するのは難しいように思います。毛糸ではさほど水をためてはおけないでしょうから。
 種からの発芽、というだけでしたら、問題ないように思いますが、水の問題が解決しないと、「花の咲く」という以前に、何でも育てるのが難しいように思います。天井にタンクでも仕込んで、そこから毛糸沿いに少しずつ水を垂らすことでもしないと・・・。あとは、アサガオのように蔓植物を使って、根は一カ所にまとめてそこへ水をやるのでしょうか。でもそれだと毛糸に種を仕込むというアイデアが生きませんね。
 植物としては、トキワハゼなどが小さくて花が咲いてよいと思います。小さい植物は一年草の寿命が短いものが多いので、そのあたりとの兼ね合いもありますね。(2006.3.14)


Q:光合成に関する質問からそれてしまうかもしれませんがよろしくお願いします。光量子束密度と放射照度についての質問です。例えば、蛍光灯(水銀)と高圧水銀ランプを比べると、蛍光灯の電子密度は1010(cm-3)で高圧水銀ランプの電子密度は1016(cm-3)だから、例えばすべての電子が水銀と反応したとして、蛍光灯は254nmの波長がでて、高圧水銀ランプはある所にピークを持つ波長(連続波長を発する)がでたとすると、単位立方当たりのランプの中の光子(連続波長)の数だけを比較すると高圧水銀ランプの方が10(cm-3)多くなるだろうと考えました。だとすると、殺菌灯(蛍光灯の発光塗料がないもの)の254nmの放射照度(W m-2)と高圧水銀ランプから発する僅かな254nmの放射照度(W m-2)がある距離で同じエネルギー(マイクロワットオーダーのエネルギー)だとしたら、放射照度は、マイクロワットオーダーのエネルギーだけれども、ある距離における光量子束密度は、高圧水銀ランプの方が単純に10個(cm-3)多いと考えてもいいのでしょうか?(2006.3.12)

A:まず、ランプの専門家ではないのですが、高圧水銀ランプでも水銀による輝線は出ますよね。高圧にすると、輝線以外に電荷結合によるブロードな放射も見られるようになる、というのが僕の解釈です。そして、この電荷結合による放射は、水銀の圧力に依存して変化しますから、定圧水銀灯と高圧水銀灯を電流だけで直接比べることに意味はないようにに思いますが・・・。最後の質問の部分の意味が取りづらいのですが、
1.光のある波長における放射照度が同じ時に、その波長における光量子密度を比べたらどうなるか、という意味でしたら、常に同じになります。波長が一定なら、放射照度が同じで光量子密度が違うということはあり得ません。
2.光の輝線のピークの放射照度をそろえておいて、スペクトル全体の光量子密度を定圧水銀灯と高圧水銀灯で比べたらどうなるか、という意味でしたら、高圧水銀灯の方が電荷結合によるブロードな放射がある分、光量子密度が大きくなるはずです。ただし、単純に106倍になる、というわけではありません。
 これでお答えになっているでしょうか?(2006.3.14)


Q:こんにちは、私は農業関連の仕事をしています。最近に先生のHPを知りました。過去の質問からほとんど読ませていただきました。仕事柄多少でも植物生理を知っておかなければと思い、10数年前に増田芳雄理学博士の植物生理学入門を購入しました。その中で、『地球に注がれる太陽エネルギーのうち、半分は赤外域なので植物に吸収されない。残りの半分のうち60%だけが植物に吸収される。これは緑色近辺の光が吸収されないためである。しかも、植物に吸収される光エネルギーのうち、光合成によって糖を生成するとき化学エネルギーに変換されるのはわずか1%にすぎない』とあります。(『』は原文です)その図解として『入射光を100として反射される部分20、通過する部分10、熱になる部分20、蒸散に使用される部分49、クロロフィルに吸収される部分1』となっています。先生の回答を読む限りでは、紫色の光も光合成に利用されていると書かれているように思いますが、紫色の光も含めて利用率が1%なのでしょうか?糖を生成するときの化学エネルギーに変換される光は紫色も含まれるのでしょうか?私の読解力が不足しているせいか、購読している本からは糖を生成するために必要な光は赤色のみと解釈してしまいましたが、私の間違いでしょうか?未熟な質問で申し訳ありませんが、教えていただきたくお願い申し上げます。(2006.3.10)

A:まず、光の色についてですが、光合成に使われる光は、光合成色素に吸収される光です。そして光合成色素の主なものはクロロフィルであり、クロロフィルは、赤と青の光を主に吸収し、緑色の光はそれほど吸収しません。ですから植物の葉は緑色に見えます。以前にも「赤の光だけが光合成に使われると書いてあるが」という質問が寄せられたことがありますが、そのような記述は不正確です。青い光(波長にして400-500 nmの光)でも光合成は全く問題なく進行します。
 次に光合成の効率のことですが、これは、実は条件によって全く違うのです。高校の生物を思い出して頂くと、光ー光合成曲線というのを習います。これは、横軸に光の強さ、縦軸に光合成の速度をとったグラフで、はじめは光を強くすると共に光合成の速度が上がっていきますが、やがて頭打ちになっていくら光を強くしてもそれ以上光合成速度は上がらなくなります。一方、葉の色素による光の吸収を考えると、一般的な範囲内では光を強くするとそれだけ吸収量も直線的に上がります。つまり、光が弱いうちは、光合成に使われる効率は高いのですが、光をどんどん強くしていくと光合成はあるところで頭打ちになりますから、それ以上に光はすべて無駄になることになります。本に書いてある効率が、直射日光があたるような条件を考えているとすると、太陽の光というのは非常に強いので効率が1%でも全く不思議はありません。しかし、光を弱くすればもっと効率は上がると思います。極端な例では、もし、光子1個を葉にあてて、それがクロロフィルに吸収された時に光合成の反応(この場合は有機物の生成ではなく反応中心において反応が引き起こされるかどうかを考えます)が起こる確率を測定すれば、ほぼ100%になります。(2006.3.10)

Q:早速のご回答していただきまして、ありがとうございます。私の質問の仕方に問題があるのか、先生のご回答の中に質問に対する答えがあるのか理解できませんでしたので、もう一度ご質問させていただきたいと思います。「赤い光だけが光合成に使われる」とは思っていません。光合成の反応の中で最終的に糖を生成するために光エネルギーを化学エネルギーに転換させるクロロフィルは赤い光を吸収(利用)するクロロフィルなのでしょうか?青い光を吸収するクロロフィルも糖を生成するために光エネルギーを化学エネルギーに転換できるのでしょうか?あくまでも糖を生成するということだけに焦点を絞ってお願いいたしたく存じます。
 それと先生のご回答の中でもう一つ疑問が発生しました。それは「強い光の条件下では利用効率が1%でも、弱い光の条件下ではもっと高くなる」とのことですが、温室栽培の作物に50%の遮光フィルムを覆って光の透過率を1/2にした場合でも、光合成量は1/2ではないということなのでしょうか?よろしくお願い申し上げます。(2006.3.11)

A:別に赤い光を吸収するクロロフィルと青い光を吸収するクロロフィルが別々にあるわけではないのです。1つのクロロフィルの分子が青と赤の光を両方吸収します。また、青い光を吸収したクロロフィルでも赤い光を吸収したクロロフィルでも、光合成という面では全く同じです。糖を生成するためであれ何であれ、クロロフィルに吸収されさえすれば光の色による差は特にありません。
 後者の疑問に関してはその通りです。特に直射日光のように強い光が当たっている場合は、透過率を50%にしても、光合成速度は、例えば、70%なり80%なりまでしか低下しません。さらに強すぎる光によって光合成の反応が阻害される場合があり、それを光阻害と呼びます。光阻害を起こすような環境におかれた植物の場合は、遮光することによってむしろ光合成速度が上がる場合さえあり得ます。(2006.3.11)


Q:勉強不足で恐縮ですが、よくある質問の項にゼアキサンチンとビオラキサンチンについて「ビオラキサンチンは光を集めるため弱光下で多くなり、ゼアキサンチンは強光下で増える」というのがありました。一般には、ゼアキサンチンは多くの門の藻類が持っていますが、ビオラキサンチンは主に比較的強光の水面近くに生息する緑色植物門が持っていると考えられています(私は、多くの場合ビオラキサンチンは緑色植物門の指標になると理解しています)。もしビオラキサンチンが弱光下で必要なキサントフィルであるなら、深所性の藻類の方が必要であると考えられますが、何故水面近くの緑色植物門の藻類に多いのでしょうか?変な質問で申し訳ありませんが、ご回答を頂ければ幸いです。(2006.3.10)

A:ご質問にあるゼアキサンチンとビオラキサンチンの量の増減は、この2つにアンスラキサンチンを含めた3種類のキサントフィルの相互変換によって起こり、キサントフィルサイクルと呼ばれています。そして、この相互変換は数分のオーダーの時間範囲で起こる短期的な応答です。つまり、光環境応答に関与するキサントフィルの量に関しては、ある藻類がビオラキサンチンを持つ・持たない、もしくはたくさん持つ、などといっても、それを定量した細胞の状態が記述されていない限り、あまり意味がないことになります。
 ここからは光合成屋の推測ですが、比較的強光で生育する緑色植物門の藻類は、光ストレスを受けた時に備えてキサントフィルサイクルが発達しており、それに関する色素(ゼアキサンチン・アンスラキサンチン・ビオラキサンチンの合計量)を多く含むのではないかと思います。そして、実際に色素を抽出する細胞が特に光ストレスを受けていなければ、これらの色素はビオラキサンチンでいる割合が多くなりますから、結果として、主なキサントフィルとしてビオラキサンチンが存在することになります。一方で、強光にさらされる機会のない藻類に関しては、キサントフィルサイクルを持つ必要がありませんから、色素の合計量は少なく、相互変換もほとんど起こらない可能性があります。そのような場合には、その量の少ないキサントフィルの主成分がゼアキサンチンであってもおかしくはないと思います。
 他の可能性として、ある種の藻類では、ジアジノキサンチン/ジアザキサンチンを用いたキサントフィルサイクルが存在するようです。そのような藻類では、強い光条件の下でもジアジノキサンチン/ジアザキサンチンがあればビオラキサンチン/ゼアキサンチンは必要ない、ということがあり得るかも知れません。ただ、僕自身は、どのような藻類がこのジアジノキサンチン/ジアザキサンチンを持っているのか、よく知りません。(2006.3.10)


Q:植物の光合成がなくなったらどうなるか?(2006.3.5)

A:植物は生きていくためのエネルギーを光合成に頼っていますから、寄生植物のように他からエネルギーを得られるもの以外はみんな枯れてしまいます。さて、植物は、光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を出しています。一方で、人間などの動物や細菌などは、呼吸することによって酸素を吸って二酸化炭素を出しています。植物の光合成と動物の呼吸が釣り合っているので、地球上の生物はうまく生きていけるわけですが、もし、植物の光合成がなくなったら、人間がはき出した二酸化炭素はそのままになり、空気中の酸素はどんどん減っていくでしょう。そうしたら、動物は呼吸をすることができなくなり、いずれやはり死に絶えてしまいます。
 たとえ酸素がどこからかもらえるとしても、やはり問題が残ります。動物は、たいてい他の生物を食べてエネルギーにしているわけですが、その他べた肉が100%自分の肉になるわけではありませんし、それ以外に動くためのエネルギーなども必要です。とすれば、もし地球上に動物しかいなくなったら、それらはお互いにお互いを食べるしかなく、その際に必ず全体の数が減っていきます。やがて最後の一頭が残って、それはゆっくり飢え死にするしかなくなります。
 つまり、地球上のほとんどの動物は、その餌(エネルギー)と呼吸する酸素を植物に頼っているので、植物が地球上からなくなれば、動物もいずれ全滅することになります。


Q:こんにちは。私は光質がレタスの成長に及ぼす影響について調査しています。抽出されたクロロフィルの赤色光吸収率は660nmで最大であるといわれています。しかし、昨年卒業研究でCCFL赤青比8:2において赤色ピーク波長(610nmと660nm)と灯数(5灯と8灯)の組み合わせがレタスの生長に及ぼす影響について調査したところ、8灯610nmのみが他処理区よりも2倍近く乾物重が大きく、5灯610nm,5灯660nm,8灯660nmの処理区間には有意差はなありませんでした。5灯においては波長による乾物成長の差はないのに8灯においては610nmの処理区の方が660nmよりも乾物重が大きいと言えます。この結果の理由はなんなのでしょうか?なお、全処理区において徒長などの形態変化は見られませんでした。
 レタス生体内では吸収効率は610nmの方がよい、ということはありえるでしょうか?また、もしそうだとしても、5灯において2波長間で乾物重が同じなのに、8灯においては610nmの方が乾物重が大きいという結果を説明できません。5灯で有意差があり、8灯において有意差がないなら、光飽和と言えるのですが・・・。クロロフィルの光吸収効率以外の要因があるとすれば、それはフィトムなどの光レセプターがひきおこす作用でしょうか。
 しかし、葉の厚さや単位面積あたりのクロロフィル含有量などには全処理区間で有意差がなく、葉数は8灯610nmにおいて有意に大きいので、形態変化というよりも、成長段階が進んでいるようにも思われます。私は光受容体はフィトクロム・クリプトクロム・フォトトロビンしか知らないのですが、赤色光610nmに吸収効率のピークをもつ光受容体はありますか?
長くなってしまい、申し訳ありません。お尋ねしたいのは2点です。
1.CCFL赤青比8:2において灯数5灯(おそらく約100PPF)では植物の乾物蓄積は赤色ピーク波長610nm=660nmだが、8灯(おそらく約140PPF)では610nm>660nmであった。もしよろしければこの結果についてご意見をお聞かせください。
2.フィトクロム・クリプトクロム・フォトトロビン以外の光受容対とその吸収スペクトルと働きについて教えてください。

 私の卒業研究は企業から依頼されたランプを用いてレタスを栽培し、成長調査をおこなって、どの光源が商品価値のあるレタスの栽培にもっともよいか判断することが目的だったので、卒業論文にはこのような結果についての考察はしません。ただ、私事ですが3月6日に大学院前期過程の入試をうけます。もし3月6日までに答えて頂けて、しかも面接でこの実験結果について聞かれたら、先生のご意見を参考にさせて頂きたいと思います。もしそれがいけなかったら、自分の考えのみを述べます。面接で参考にさせて頂いてよろしいでしょうか?この点についてもご返答頂けますと、嬉しいです。(2006.3.3)

A:内容がかなり具体的なので、ホームページに公開するのはどうかと思い、最初メールでお答えしたのですが、どうも届かなかったようなので、ここに答えておきます。
 結論から申し上げると、実験結果をうまく説明できる仮説は思いつけません。100PPFというのは、PPFDが100μmol/m2/sということでしょうか。基本的にその程度の光領域では、光合成速度(≒生育速度)は光の明るさに依存します。従って、明るさを変えることによって波長依存性が変わる、というのは極めて不自然です。おっしゃるように、5灯で有意差があり、8灯において有意差がないなら、光飽和と言えますが、実際の実験結果は説明できないように思います。
 また、フィトクロム・クリプトクロム・フォトトロビン以外の光受容体といっても、キサントフィル類(500 nm付近に吸収を持つ)が気孔の開閉に関わっているかもしれない、というデータがある程度で、610 nmという領域に吸収をもつものはないように思います。
 むしろ、考えるべきはピーク波長ではなくその他の波長の光の存在ではないでしょうか。実際のスペクトルをきちんと見る必要があると思います。例えば、赤色ピーク波長が短波長になれば、遠赤光の強さはだいぶ違ってくるように思います。ただ、その場合にも光の強さを4割変えたら、スペクトルの効果がなくなった、という実験結果を説明するのは難しいように思います。
 なお、あまり有意義なお答えになっていないので、意味がないかもしれませんが、この内容を参考に面接に臨んで頂くことはまったく問題ありません。人から教わるというのは立派な学習の1つですから。(2006.3.3)


Q:とろろ昆布(おぼろ)においてカロチノイドによる赤い変色が起こる原因について知りたいと思っております。酸素・光(紫外線・可視光線含む)のどれによるものなのか・・・加工後でも光合成は行われるのかなどです。宜しくお願いいたします。(2006.3.1)

A:コンブではダメだと思いますが、耐乾燥性のある藻類の場合、一度乾燥しても再び水を加えることにより、光合成活性が戻ることはあります。しかし、とろろ昆布は、コンブを単に刻んだものではなくお酢か何かで処理していたと思います。そうなりますと、なおさら加工後に光合成というのは無理だと思います。一般的に褐藻などはお湯につけたりすると色が変わります。これは、複数持っている色素のうちの一部のみが壊れることにより、残りの色素の色がみえるようになることによります。食品の専門家ではないのでよく知りませんが、お酢(酸)による処理などによって、一部の色素が壊れて、残りの色素(カロチノイド?)の色が見えてくる、ということはあるかも知れません。そのような場合に、色素の分解は、酸素、光、湿気の存在で促進されますので、当然、それらの要因の寄与は考えられますが、これは、生物学の分野の問題ではなく、食品工学の問題なので、僕ではお答えできません。(2006.3.2)


Q:水がなくても育つ植物はありますか?(光合成には水が必ず必要ですか?)(2006.2.23)

A:植物が行なう光合成の反応には必ず水が必要です。水を分解して酸素を出す反応が光合成の反応の出発点になっています。ただし、この部分の水の量は非常に多いわけではありません。実際には、葉っぱから蒸発で失われる水の量の方が多く、これはある程度工夫によって減らすことができますから、他の植物よりも「より少ない」水で育つ植物はあります。しかし、全く水がなくては育ちません。
 ちなみに、水が必要なのは光合成の反応だけではありません。ほとんどの生物活動に水は必要です。ですから、植物に限らず、動物でも細菌でも、完全に水がない状態で育つことはできません(増えないけれど生き延びる、というだけなら不可能ではありませんが)。「火星に生物がいる(いた)のか」という議論をする場合に、火星に水があるのかどうかが問題にされるのは、そのような理由があるからです。(2006.2.23)


Q:光合成色素の分離でRf値をだしますが、このRf値を出す事によって何が分かるんですか?(2006.2.22)

A:Rh値を比べることによって、その分離された色素が何であるかを推定することができます。過去の質問箱に詳しい説明がいくつか載っていますので、そちらをご覧下さい。(2006.2.23)


Q:光合成は、植物にしかできないものなのですか?(2006.2.20)

A:これは、「植物」と言った時に、どのようなものを想像するかによると思います。もし、根っこがあって、茎があって、葉っぱがあって、というのが植物だとすれば、それ以外にも光合成をする生物はいます。例えば、金魚鉢の水などは、しばらくすると緑色に色が付いてくることがありますが、これは、非常に小さい緑藻が生えてくるせいです。このような細胞1個からなるような小さい藻類は、よく「植物プランクトン」と呼ばれることがあります。これは、普通の植物とは見かけが似てもにつきませんが、名前の通り光合成をします。また、さらに小さい細菌の仲間のシアノバクテリアも光合成を行ないます。
 サンゴ(珊瑚)はイソギンチャクなどとやや近い動物ですが、これも光合成をします。ただし、この場合は、サンゴ自体が光合成をするのではなく、サンゴがいわば体の中に飼っている植物プランクトンが光合成をしているのです。その意味では、ある程度高等な動物で光合成をするものはいない、とは言えます。ただ、プランクトンなどの微生物の場合は、鞭毛を持って泳ぐ動物的な行動を示すもので、光合成をするものもいます。結局あとは、何を植物というのか、という問題に戻ってしまいます。(2006.2.20)


Q:こんにちは。早速質問なんですが、光合成の公開実験でコリウスの場合、先生は「葉の重なりなどによって太陽の光の当たり方が違っていて、それによって差が生じた」と推測してますが、普通は葉の先端はよく光が当たるので、光合成の活性が高く、根元で活性が低くなると僕は考えました。そうなると、モミジの場合も根元の方が光合成活性が高いという点に疑問を感じるのですが、これはなぜなんですか?どうして紅葉するのかという事とも関わっているのでしょうか?教えて下さい。宜しくお願いします。(2006.2.14)

A:「赤い葉っぱは光合成をするか」のことですね。葉の中で、どの部分の光合成活性が高い、ということは一般的には決まっていないと思います。単子葉植物などの場合は、葉の根本で葉が作られていきますから、基部ほど「若い」ことになり、そのような場合には、基部の方が活性が高い、ということがあるかも知れません。ただ、双子葉植物の場合は、そのようなことはないと思います。「葉の重なりに」といっても、隣の植物と重なっている場合は、葉の先端の方が暗くなるかも知れませんし、逆に光が強すぎる場合は、暗いところの葉の方が元気なのかも知れません。
 生物を相手の実験の場合は、実験で得られた差が、意味のある場合と意味のない場合があります。この場合、コリウスで測ったのは1回きりですから、別の葉っぱでは先端の光合成効率の方が高いかも知れませんよね。葉の赤い部分と緑の部分に関しては、いわば赤い部分と緑の部分とがそれぞれ何カ所もあるわけですから、その間に差がない、という結論を出せますが、葉の先端と基部の差については、1回きりの実験ですので何とも言えません。もし、この差の原因を調べたいのであれば、まず、疑問の答えを予測して(つまり作業仮説を立てて)、それを証明する実験系を考えて実験する必要があります。科学の研究というのはそのようにして進みます。
 あと、一番下の実験の植物種は紅葉をしていますが、植物種としてはモミジではありません。(2006.2.14)


Q:夜分遅くにすみません。光合成細菌(紅色非硫黄細菌)について研究している高校生です。光合成細菌を培養しているボトルに市販のカラーフィルム(赤、青)を巻いて培養してみました。その結果赤のフィルムを巻いた細菌の方が増えました。青のほうが、透過する光の範囲が広いので、青の方が増えるとおもったのですが・・・なぜ、赤の方が増えたのか、もしよろしければ、教えてもらえないでしょうか。また、光合成細菌において、吸収スペクトルと作用スペクトルがずれることはあるでしょうか?赤外線で増えるということは、熱をあたえるだけでも増えるということでしょうか?盛り沢山ですみません。教えていただけると助かるのですが。よろしくお願いします。(2006.2.13)

A:「市販のカラーフィルム」というのがどのようなものかわからないので・・・。「青のほうが、透過する光の範囲が広いので」というのは分光器か何かで実際に確認した結果なのでしょうか?
1.まず最初に、もし2つのフィルムで光を透過する率が大きく違えば結果はそれによって変わります。つまりスペクトルの問題以前に明るさの問題がないかどうかチェックをする必要があります。
2.次に、見た目の色とスペクトルというのは、必ずしも対応するとは限らない、という問題があります。さらに赤外線は目に見えないので、問題が複雑になります。青い光を主に通して赤い光は通さない見た目の青いフィルムでも、赤外領域の光は通す、ということはしょっちゅうあります。
これらは、どちらも分光器か何かで透過率のスペクトルをチェックしていれば問題ないわけですが。
3.従って、透過率のスペクトルがわからないと結論できないと思います。
4.吸収スペクトルと作用スペクトルがずれる例は、アンテナ組成が異なる2つの光化学系をもつ酸素発生型の光合成生物(紅藻やシアノバクテリア)で知られています。あとは、カロチノイド領域(500 nm付近)で、若干作用スペクトルが低くなるぐらいなので光合成細菌の場合はそれほどずれることはないと思います。
5.深海の熱水噴出口には、もちろん太陽の光は届きませんが、その熱によって若干の赤外線が出ていて、それに依存する生物がいるかも知れないと報告されています。ただ、太陽光に比べれば非常に弱いので、それで光合成細菌を育てるのは無理だと思います。(2006.2.14)


Q:造園の仕事をしています。 移植の時、低温、強風がその後の生長に大きく作用するようです。その仕組みを説明する資料を作成していますので次の事を教えてください。
 1. 光合成は風ストレスを受けると気孔が閉じて機能が落ちると聞きました。その関係を教えてください。
 2.低温、高温が光合成の働きを大きく作用すると聞きました。その仕組みを教えてください。
  以上、宜しくお願いいたします。(2006.2.9)

A:
 1.おそらく風自体が気孔を閉鎖するのではなく、乾燥ストレスによるものではないかと推測します。葉からの蒸散は風によって促進されますので(物理的に葉の表面の空気が入れ替わるため)、蒸散速度が上がり、根からの水分供給が追いつかなくなると、気孔が閉鎖して光合成が低下し、生育が悪くなります。
 2.光合成は、光のエネルギー吸収する部分と、そのエネルギーを使う部分に分けることができます。一般に、温度ストレス(実は乾燥ストレスも)は後者の化学反応を阻害しますが、前者の光の色素による吸収は物理的な反応であり温度(や乾燥)の影響を受けづらいので、結果的に吸収した光のエネルギーが過剰になり、それが細胞内に悪影響を与えます(これを光阻害といいます)。
 ただし、この1,2共に、別に移植後でなくとも起こる現象です。従って、移植後の生育に限って言えば、次のことが影響している可能性が考えられます。
 3.移植時には、根が切断されているため、根からの水分供給が制限され、乾燥ストレスに弱くなっていると考えられます。
 4.低温は、根からの水分の吸い上げを阻害することが知られていますので、同様に乾燥ストレスを助長する可能性があります。また、移植時には、掘り返された土壌が空隙を多く含むため、そこに貯まった水が凍結しやすい、ということがあるでしょう(土壌に吸着している水は凍結しづらい)。そのような土壌の凍結によっても、当然根からの水分の吸い上げは阻害されます。
 結論としては、移植時には、根からの水分供給の制限が最も大きい生育阻害要因であるように思います。一般に、移植時には葉を少し刈り込むことが推奨されていますが、これは蒸散を少なくすることによって生育阻害を避けるという意味でしょう。また、上記2が起こっているような状態の場合は、被陰することによって光の強さを減らしてやるとよい場合もあると思われます。(2006.2.9)


Q:講義でルビスコを学んだのですが、結局のところルビスコってなんなのか理解できません。教えていただけますか?(2006.2.8)

A:ルビスコというのは、葉緑体にあるタンパク質の一種です。酵素として働き、二酸化炭素を有機物に固定する最初の部分を触媒します。(2006.2.8)


Q:このHPで、ほぼ1m×1mの大きさの葉っぱが理想的な光合成を行ったとして、1日で10リットルの酸素ができること、人間1人が必要とする酸素は1日10リットルであることを仰られています。植物の種類にもよりますが、1m平方というのは、小ぶりの鉢植え観葉植物で3〜5鉢あれば十分かなうと思います。そういう鉢植えを部屋の中に置いておくと、そこから生まれた酸素で生活できると考えてよろしいのでしょうか?この発生(反応生成物という方が正しいですが)量は、どのような計算方法で算出できるのか、できるだけ簡単にお教え願えませんか?またこれに関連しますが、10リットルの酸素が発生するには、水分はどれくらい与えないといけないのでしょうか?この算出法も併せてお教えください。(2006.2.7)

A:言われて計算し直してみたら、2mx2mぐらいのようでした。計算方法は以下の通りです。
 まず光合成ですが、1992年に朝倉書店から出た「光合成」という本の75ページに、いろいろな植物の光合成速度が出ています。速度は植物の種類によって非常に幅があるのですが、光合成速度が高いものに充分光を当てると60 mgCO2/dm2/hr以上の速度が出そうです。これを今普通に使われている単位に換算すると40 μmolCO2/m2/sぐらいになります。
 次に呼吸ですが、安静時の人間の呼吸回数は1分間に15回ほど、量としては8リットルぐらいと言われています。吸い込む空気の二酸化炭素濃度は0.04%程度ですから無視できます。はき出す空気の二酸化炭素濃度は3−6%程度と言われているので、今とりあえず安静時ということで3%とすると1分間にはき出す二酸化炭素は8リットルの3%は0.24リットルです。1モルは22.4リットルであることを考えて、1秒あたりに直すと0.24/22.4 x 106 μmol / 60 s = 179 μmolCO2/s となります。
 これが先ほどの光合成と釣り合うようにするには、179/40 = 4.5 m2 の葉の面積が必要となります。
 ただし、これはあくまで、一番光合成をよくする植物に充分光を当てた条件です。実際には、植物は夜は光合成をしませんし、朝晩は光が弱くなります。また、観葉植物のような室内でよく栽培される植物は、光の弱いところで育つ光合成活性の低い物が多く、特に樹木の場合は、最大でも光合成活性が、上記の計算値の1/6程度、というものがざらにあります。従って、実際に部屋の中の植物だけで人間の呼吸を賄おうとすると、とても数平方メーターではダメでしょうね。
 光合成による酸素発生は水の分解によって起こります。1分子の酸素の発生(1分子の二酸化炭素の吸収に相当)には、2分子の水が必要ですから、先ほどの計算で言えば、1秒間に179μモルの2倍、360μモルの水が分解されることになります。1日にすると、360 x 10-6 x 18(水の分子量) x 24x60x60 = 560 g の水が分解されることになります。ただ、注意しなくてはいけないのは、植物は、光合成の基質として水を必要とする他に、気孔からの蒸散にも水を必要とします。この蒸散量は、光合成の基質として分解する水の量の250倍程度と言われています。とすると、560 g x 250 = 140 kg となり、莫大な量の水が必要になることになります。これは、室内の観葉植物にやる水の量と違いすぎる、と感じられるかも知れませんが、それは、室内の観葉植物が、理想的な条件(植物の種類も含めて)とはほど遠い条件でしか光合成を行なっていない、ということを示しています。(2006.2.8)


Q:素人向け読み物にクロロフィル分子式(図)を紹介しようと思っていて、色々見比べていて気がついたのですが、中央部のMgに四方から伸びる結合の線が、人によってまちまちで、
・最も多いのは対角線上の2本が実線、もう2本が点線ですが、
・まれに全部実線の場合、
・また実線の2本が90°をなしていてもう2本が点線、
と言うような例を見受けます。
 どうもベンゼン環の電子分布辺りからこの手の話題は鬼門でして、しかも金属錯体と来た日には何のことやら・・・・・
で、どれが正しいのか探していて、貴ページの第4回講義のQ&Aに、「Q:今回の講義で一番印象に残ったことは、クロロフィルの構造についてです。
 4個のピロール環の斜め方向に電子が共鳴構造であることにより動き、
 その二方向で吸収する光の波長が異なることは初めて知りました」
の文章を見つけました。Mgへの結合を実線と点線で書き分ける意味があるのか、またその場合実線と点線の方向はどちらにすべきなのか、全く素人な質問でご噴飯かとは思いますが、ざっくりお答え頂けると有り難く。(2006.2.6)

A:通常、化学構造を示す図では共有結合を実線で、水素結合や配位結合を点線で示す場合が多いようです。
 クロロフィルの構造式では、窒素を持った五角形の構造が四方からマグネシウムをはさむような形になっています。フィトールという細長い炭化水素の鎖を左下においた場合に、この五角形を左上から時計回りに I, II, II, IV と名付けると(つまりフィトールをくっつけた五角形が IV になる)、III の五角形の横にもう一つ余分な窒素を含まない五角形がありますので、これを V とします。
 さて、構造式の五角形をじっと見つめると、I とIII の五角形の窒素の両側の結合は両方単結合なのに対して II と IV の五角形の窒素の両側の結合は単結合と二重結合一つずつになっています。窒素は3つの結合を持つことができますから、II と IV の五角形の窒素はもう手一杯ですが、I と III の五角形の窒素は、もう一つ結合相手を持つことができます。その結合相手がマグネシウムになります。従って、I と III の五角形の窒素とマグネシウムとの結合は共有結合(実線)になります。II と IV の五角形の窒素とマグネシウムは別に共有結合はしていないのですが、間の電子には若干の偏りがあるので(配位結合)、点線で示すことになります。
 なお、クロロフィル分子全体の共鳴構造とは直接は関係ないと思います。(2006.2.7)

Q:ご回答を良く考えているうちに、また分からなくなりました。IとⅢの五角形の窒素の両側の結合が単結合なのは、相手の炭素がその隣の炭素と二重結合してるからですよね?同様に、IIとⅣの窒素結合のうち一方が二重結合なのは相手の炭素がその隣の炭素と一重結合してるからですよね?ところが、ポルフィリン環を構成する炭素骨格はベンゼン環同様に全体が共役したパイ電子の分布を有しているため、便宜上は交互に一重結合と二重結合で表現している炭素間の結合は、実はどれもほぼ同等な結合なのではないでしょうか。従って、4つの窒素の間には実質上は差が無いと考えることが出来るのではないでしょうか。それなのにIとⅢがほかより強く中央のマグネシウムと配位するのはなぜなのでしょうか?(2006.2.8)

A:すみません、誤解を招いたようです。上の回答は、「Mgへの結合を実線と点線で書き分ける意味があるのか」という質問に対するものです。通常書かれる化学構造式においてどのようにして実線と点線が決まっているのかを説明しています。通常は、I と III の五角形を単結合に書きますが、I の外側、II の内側、III の外側、IV の内側とぐるっと回ると単結合と二重結合が完全に交互になるルートを作れますから、ルート上の単結合と二重結合を入れ替えて構造式を書くこともできます。その場合には、I と III が配位結合になって、II と IV が共有結合になります。説明は化学構造式の書き方について言っているだけで「IとⅢがほかより強く中央のマグネシウムと配位する」と言っているわけではありません。電子の実際の存在状態を考えると、おっしゃるように全体で共役しているでしょう(というか、共役していないと可視光を吸収できないでしょう)。(2006.2.8)


Q:こんにちは。光合成細菌について質問したいのですが、明条件でのグルコースから水素発生までの化学式を教えてください。(2006.2.4)

A:これは、何か特定の例の話ではないでしょうか?光合成細菌といっても、いろいろなものがありますし、一般論としては答えが出ないような気がします。
 生物による水素発生は、ヒドロゲナーゼ反応か、ニトロゲナーゼ反応によって生じます。ヒドロゲナーゼの反応は
 2H+ + 2e- → H2
であり、ニトロゲナーゼの反応は
 N2 + 8e- + 8H+ + 16ATP → 2NH3 + H2 + 16ADP + 16Pi
です。どちらの反応も還元力(電子:e-)が必要であり、ニトロゲナーゼの場合はこれに加えてATPの供給が必要です。グルコース云々というのは、還元力 and/or ATPの供給源として必要であり、1つの化学式に納まるわけではありません。(2006.2.4)


Q:初めまして、早速質問させて頂きますが、収穫後の緑色葉菜類の光合成能力はどれぐらい維持できるのでしょうか。また、光合成に有効な波長帯といいますと、一般に知られている青色(400〜500nm)と赤色(600〜700nm)の波長帯になると思いますが、ネットで「590nmの波長が光合成に有効である」と取り上げているのはどう理解すればいいのでしょうか。お忙しいところ、大変恐縮ですが、ご回答頂ければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。(2006.1.30)

A:光合成の研究では、ホウレンソウをよく使うのですが、八百屋さんから買ってきて冷蔵庫に二三日置いておいてから、チラコイド膜という光合成をする膜を単離して活性を調べると充分活性があります。どこまで持つか、という実験はしたことがないのですが、しおれさせなければ一週間ぐらいは、ある程度の活性を示すのではないかと思います。ただし、光合成活性は、あるところでパタッと止まるのではなく、徐々に低くなっていくと思いますので、比べれば新鮮なものの方が活性は高いと思います。
 ネットで取り上げられているという590nm云々という話ですが、そこだけ取り出されても前後の関係がわからないので難しいですね。可能性としては、1.単なる間違い、2.紅藻などフィコビリン系の色素を持つ光合成生物の場合を考えている、3.590 nmの波長の光でも吸収されれば光合成に有効である、ということを意味している、といったところでしょうか。3に関してですが、クロロフィルは590 nmにも低いながら吸収を持ちますから、吸収された光あたりで考えれば、別に効率が悪いわけではありません。もちろん、当てた光あたりにすれば、吸収される光が少なくなりますから、効率は悪いことになります。(2006.1.30)


Q:はじめまして。私も産総研の人工光合成について質問なのですが植物の光合成の太陽エネルギー変換効率と人工光合成の太陽エネルギー変換効率を知りたいのですが。(2006.1.26)

A:植物の光合成の場合、水の分解の量子収率は100%近くなります。光合成の場合エネルギーの変換効率をどのように定義するかが難しいところです。植物の場合、エネルギーは最初に電子伝達に使われ、それによってATPが合成され、そのATPのエネルギーによって二酸化炭素から糖が作られますが、各ステップである程度のロスがあります。つまり、ATPまでの変換効率と糖までの変換効率を比べると、後者の方が低くなるはずです。また、光以外の条件、例えば二酸化炭素濃度がどうか、というような問題もあります。理想的な条件で糖の合成までを考えた場合、おおざっぱにいって30%程度のエネルギー変換効率になるでしょうか。人工光合成の方のエネルギー変換効率は0.1%程度のようです。(2006.1.27)


Q:はじめまして。光合成速度と気孔コンダクタンスの関係について質問させてください。先日、実験で二酸化炭素濃度による光合成速度の変化を観察しました。光強度を500μmol/㎡/sで一定にし、二酸化炭素濃度を500ppmから2000ppmまで変化させました。50ppmのときは82mmol/㎡/sだった気孔コンダクタンスが、1000ppmでは63mmol/㎡/sほどに減少していました。その後、1500ppmで128mmol/㎡/sまで上昇していました。光合成速度のグラフは二酸化炭素濃度1000ppmの辺りで傾きが緩やかになり、他の班と同じようなグラフだったのですが、気孔コンダクタンスは他の班は減少し続けていたそうです。実験の監督をしてくださっていた院生の方は測定ミスではないかとおっしゃったのですが、測定しなおしても同じような結果になりました。気孔コンダクタンスが減少していたのに、また開く原因としてどのようなことが考えられるのでしょうか?ご迷惑でなければ回答していただけるとうれしいです。よろしくお願いします。(2006.1.25)

A:これは難しい質問ですね。この場合、2つの斑で気孔コンダクタンスに関しては異なる結果が得られた、ということですね。僕が答えられるのは、一般的な光合成の知識と論理から推定出来る場合なのですが、同じ実験をして異なる結果が出た場合には、その異なる理由は知識と論理からは導き出すことが出来ません。一般論としては、二酸化炭素の濃度の上昇と共に気孔コンダクタンスは減少するのが普通ですから、他の斑の方が考えやすい結果です。とすると、他の斑と何が違ったのか、ということが重要になってきますが、それは、実際に実験をやっていた人でないとわからないことです。しかも、何かを間違えて植物体がストレスを受けるなどして気孔が通常より閉じてしまう、ということはありがちなのですが、間違えて気孔が開く、というのはあまり聞きません。というわけで、あまりお役に立てません。気孔コンダクタンスがどのように算出されるかは理解していますか?出来るのは、その算出のもとになる測定データが影響を受けるような実験上の問題がなかったかどうかを思い返してみるぐらいでしょうか。(2006.1.25)


Q:今、私は卒業論文を書いています。気孔コンダクタンスなど気孔に関する論文を書いています。しかし、気孔コンダクタンスがどのように光合成に関わっているのかがよく分かりせん。光合成速度を速くする直接的原因ではないのですよね?また、他の論文を読むと、「気孔コンダクタンスは気孔の開度を示すパラメーターだ」と書いてありました。先生に聞いてみると「(論文に書いてあることに対して)そういうわけではない、物質の通りやすさだ」といいます。そこもよく分かりません。気孔が開いていると通りやすいのではないのですか?もっとわかりやすく説明してもらえませんか。本を探しても見つかりません。(2006.1.25)

A:光合成の基質は二酸化炭素です。しかし、空気中の二酸化炭素濃度は 0.04% 程度とかなり低いので、光や温度が最適な時の光合成の速度は二酸化炭素がどれだけ獲得できるかによって律速されてしまいます。従って、気孔が閉鎖することにより二酸化炭素の葉への取り込みが遅くなると、それによって光合成速度も低下してしまいます。一方で、人工的に二酸化炭素濃度を上げてやると気孔がかなり閉じていても光合成速度は高く保てます。その意味では「直接的」原因ではないのですが、間接的に(二酸化炭素濃度を通して)光合成速度を規定すると考えてよいと思います。
 先生の答えの方は、「示すパラメーターだ」という部分の解釈の違いによるのだと思います。気孔の開度を定量化する方法にはいくつかありますが、気孔の横幅と縦の幅の比などが使われます。そして気孔の開度が大きいほど気孔のコンダクタンスは上がります。その意味では、気孔の開度と気孔のコンダクタンスの間には相関があり、気孔コンダクタンスは気孔の開度を「示す」という言い方ができなくはありません。一方で、相関があると言っても、それは直線関係ではありません。つまり、定性的には相関関係があっても、例えば、気孔開度が半分になったら、気孔コンダクタンスが半分になるかというと、そうは言えないわけです。もし、「示すパラメータだ」という言葉を定量的に解釈すると、そのように、量的関係としては直線関係にないパラメーターは、気孔開度を示すパラメーターとは言えない、という立場もあるでしょう。どこまで定量性を要求するか、という違いだと思います。一方で、コンダクタンスは定義として物質の通りやすさですから、コンダクタンスは物質の通りやすさだ、という言い方は、定量的にも成り立ちます。つまり、気孔コンダクタンスが半分になった時には、二酸化炭素の通りやすさも半分になったと言えます。(2006.1.25)


Q:はじめまして、質問させてください。植物の光合成と現在の人工光合成のスペクトルの比較を教えてください。そのほかにも比較できるものがあれば、教えてください。よろしくお願いします。(2006.1.23)

A:スペクトルというのは、波長ごとの光の分布です。ですから、「光のスペクトル」というのはあっても、「光合成のスペクトル」というのは存在しません。ある物質が吸収する光のスペクトルのことをその物質の「吸収スペクトル」といいますから、「葉緑体の吸収スペクトル」というのはあります。これは、ほぼクロロフィルの吸収スペクトルになります。また、ある反応が光によって引き起こされる場合に、その波長ごとの効率をその反応の「励起スペクトル」といいます。ですから、「光合成の励起スペクトル」というのは存在して、これも、おおざっぱに言えばクロロフィルの吸収スペクトルと同じになります。人工光合成というのは、いろいろな研究が進められていて、その仕組みも様々です。ですから、吸収スペクトルにしても励起スペクトルにしても、その仕組みに依存しますから、一概には言うことはできません。(2006.1.23)
 「質問のコツ」は読みましたか?質問者が何を知りたいのかがはっきりしないと、なかなかはっきりとした答えをすることができません。

Q:無知な質問の仕方ですいません!では、改めて質問させてください。植物の葉緑体クロロフィルの吸収スペクトル、また産業技術総合研究所の光制御反応センターが世界初成功させた、光触媒WO3とTio3を用いた人工光合成の吸収スペクトルはわかりますでしょうか?(2006.1.24)

A:クロロフィルの吸収スペクトルは過去の質問箱にもありますが、400-500 nmの青い領域の光と、600-700 nmの赤い領域の光を主に吸収します。高等植物には、光を吸収して光化学反応を行なう光化学系が2種類ありますが、おおざっぱに言えば、どちらも同じ吸収スペクトルになります(厳密に言うと700 nm付近などに若干の違いがあります)。吸収極大は、だいたい435 nm付近と675 nm付近になります。その間の500-600 nmの緑色の光は吸収されにくいので、葉っぱは緑色に見えます。
 一方、産業技術総合研究所のシステムは、基本的には30年以上前に発見された本田・藤島効果の延長線上にあるようですが、光合成をまねて、2つの系を使っている点が特徴です。1つは、600 nmまでの光、もう1つは、460 nmまでの光を利用する、ということですから、2つの系でだいぶスペクトルは異なるようです。実物を見たことはありませんし、具体的なスペクトルも知りませんが、波長からすると、前者は赤みがかった色、後者は黄色っぽい色になるのではないかと思います。(2006.1.24)


Q:こんにちは。初めて質問致します。高校生の子どもをもつ母で、子どもの参考書や教科書を頼りに、独学で生物を再勉強しようとしている者です。
 実はこの1週間、ずっと悩んでいることがあります。それは光−光合成曲線の傾きについてです。陽性植物と陰性植物の光合成曲線を同じグラフ上に書いた場合、最初の斜めの直線部分は、2本の傾きが同じで平行になると考えてよいのでしょうか?参考書や教科書に載せてある図では平行に見えるものが多く、子どもも先生から「2本は平行になる」と教わったようなのですが、ある参考書で、2本の傾きが違うものを見つけて戸惑っています。(平行に見える図をのせている参考書にも、平行になるという記述はありません。)葉緑体の能力がどの植物も同じなのなら、平行になるのかなと思うのですが、実際はどうなのでしょうか。お忙しい中、申し訳ありませんが、是非どう考えたらよいか、教えてください。よろしくお願いいたします。(2006.1.22)

A:「葉緑体の能力」というのは、実は植物によって違います。光が弱い領域で光合成曲線がどの程度の傾きを持つかは、その植物がどの程度光を集める能力(アンテナ能力ですね)を持っているかによって決まり、通常大きく違うわけではありませんが、それでも種による差はあります。陽生植物と陰生植物は(ところで陽性、陰性ではありません)、この光を集める能力に少し差があるはずなので、原理的には、最初の直線部分の傾きには差があるはずです。
 生物の教科書は、僕も書いたことがありますが、あの中の図はデザイナーが書き直します。専門雑誌に載る論文の場合は、著者が描いた図がそのまま載りますが、教科書の場合はデザイナーが書きやすいように変えてしまうことも多く、2本線があるとどうしても平行になりがちなのです・・・。(2006.1.22)


Q:はじめまして。葉緑体の色素を抜く実験をしましたが、色がぬけた葉緑体も光合成はできるのですか?(2006.1.21)

A:色が抜けた葉緑体では光合成はできません。光合成は、光のエネルギーを使うのですが、その光は、色素によって吸収しているのです。ですから、色素がなくては光合成はできなくなります。
 また、実際には、色素を抜くのにエタノールなどを使うと思いますが、エタノールなどを加えてしまうと、葉緑体の構造や、葉緑体の中のタンパク質なども傷んでしまいますので、たとえ、光を吸収することができたとしても光合成はできないでしょうね。(2006.2.21)


Q:初めまして。HP興味深く見させていただきました。自宅近くの歩道に数本イロハモミジが植えられていますが、夏葉焼けを起こした個体だけがきれいに紅葉しませんでした。葉焼けのメカニズムを知りたく本で調べた所、てっきり水分ストレスかと思っていましたが、2004.12.27の投稿では「葉焼けは強すぎる可視光によって起こる」と記載されていました。水分ストレスと葉焼けのメカニズムは異なるのでしょうか?ちなみにモミジの葉はパリパリニなっていました。植栽環境はアスファルト上に植えられ、東西南北影になる物もなく、水は雨水のみです。よろしくお願いします。(2006.1.21)

A:野外で通常に生育している植物は普段直射日光を浴びているわけですから、暗いところに育てた鉢を外に持ち出すのと違って葉焼けを起こさない気がしますよね。実は、「強すぎる光」というところがポイントなのです。「強すぎる」というのは、使える以上の光が来る、という意味ですから、同じ強さの光でも、使える量が減った場合は、強すぎる場合があるのです。例えば、水分ストレス、塩ストレス、低温ストレス、高温ストレスなどがかかっている場合は、光合成も含めて植物の機能が低下しますから、使える光エネルギーが減ってしまいます。そうすると、入ってくる光は同じでも、余る分が増えますから、「強すぎる」ことになるのです。僕は低温ストレスについて研究をしていましたが、普通の条件で低温にさらすと数時間で光合成がダメになってしまうような低温に弱い植物でも、暗いところで同じ低温にした場合は、びくともしないことを経験しています。多くの「ストレス」は、植物の場合、実際には光ストレスとの複合ストレスであることが多いのです。(2006.1.21)


Q:植物に与える光が弱くなったために、ストレス応答遺伝子発現の誘導が起こることはありますか?また、引用文献があれば教えてください。(2006.1.21)

A:光が弱くなっただけでストレス応答遺伝子の発現が誘導された、という話は聞きませんね。ただ、光合成とは無関係な話なので、僕が気がつかないだけかも知れませんが・・・。植物が暗所に連続しておかれた場合は、老化が促進されて、プロテアーゼの発現などが上昇しますが、これも、いわゆる「ストレス応答遺伝子の発現」とは違うように思います。(2006.1.21)


Q:四国の柑橘農家です。ハウス栽培において、炭酸ガスが不足するのを防ぐために、固形の発生材等を使用する例があるようですが、補給しない場合に光合成に悪影響を及ぼす可能性があるのでしょうか?逆に、充分な日照が得られるケースで、大気中の炭酸ガス濃度より高くした場合に、光合成効率をUPする事はできるのでしょうか?又、光合成が充分行われる状況下では、酸素は不要なのでしょうか?ご教示よろしくお願いします。(2006.1.20)

A:まず、光合成は二酸化炭素を使いますから、二酸化炭素濃度が低下することによって、光合成の速度も低下してしまいます。ただ、実際にハウス栽培においてどの程度二酸化炭素濃度が低下するのかはよく知りません。また、少なくとも短期的には、二酸化炭素濃度を上げることによって、光合成の速度を上げることが出来ます。実際にそのような方法をとって栽培している例もあるようです。
 植物は光合成だけでなく呼吸もしていますので、酸素濃度が0になってしまうと困りますが、光合成が充分行なわれる状況ではそのようなことはないでしょう。空気は酸素を21%も含むので、呼吸に充分な酸素濃度は通常では維持できると思います。 (2006.1.20)


Q:こんにちは、度々お世話になっています。今回また疑問が出てきてしまい調べてみても分からなかったので投稿させていただきました。質問させて頂きたいことは
 1.光合成光化学系IIの阻害剤DCMUは、フェオフィチン−プラストキノン間で作用するのでしょうか?それともプラストキノン類のある間で作用するのでしょうか?専門書を見たところ本によって図中の表記が異なっているものがあり混乱しております。
 2.植物体にある物質Aを加えてそれによる光化学系IIの活性を見るために、仮にDCMUがフェオフィチン−プラストキノン間で作用する場合、Aを与えたものと与えなかったもののクラスII葉緑体を単離してDCMUを投与し、フェオフェチンの吸光度変化を測定することは物理的に可能なのでしょうか?もしも可能であって数値に変化が見られた場合、フェオフェチンの活性変化は光化学系IIの活性変化の指標といえるでしょうか?
 3.光化学系・電子伝達系を阻害する阻害剤が何種類かありますが、DCMU、DSPD、DBMIB、ポリリジンをいっぺんに混ぜ、得られた葉緑体に投与した場合、その阻害剤間で何か反応しあったりすることはないのでしょうか。また、それぞれの阻害反応はしかるべき場所できちんと起こるものなのでしょうか?
 4.光合成の暗反応である炭酸同化を定量的に測定できる方法か、または異なる条件下においた二株の同種の植物体の暗反応活性を、相対比として調べることができる実験方法はないのでしょうか?(2006.1.19)

A:
 1.DCMUはプラストキノンのアナログですから、QBサイトにプラストキノンの代わりに結合することによって阻害が引き起こされます。従って、阻害される反応は、QA -> QB の反応です。
 2.フェオフィチンは極めて再酸化されやすいために、通常の条件では、フェオフィチンの還元型を検出することは困難です。強い還元剤を共存させておいて、連続光を照射することにより、フェオフィチンの還元型の蓄積を見ることは可能ですが、その際に測定できるのは、フェオフィチンの量(=系IIの量)であって、活性ではありません。
 3.複数の阻害剤を入れた場合の効果を予測するのは難しいと思います。あちこち阻害された状態では、それらの阻害反応が「しかるべき場所できちんと起こる」かどうかを確かめるすべがありません。できれば避けた方がよいと思います。いずれにせよ、あちこちを同時に阻害することが有効なケースというのがあまり思いつきません。
 4.二酸化炭素が低濃度の場合、炭酸固定が光合成を律速しますから、二酸化炭素の吸収速度を測定すれば、事実上、炭酸固定速度を測定していることになります。これは、通常の光合成測定装置(二酸化炭素濃度の減少を赤外線で測定するタイプの装置)によって、異なる二酸化炭素濃度で光合成を測定し、その二酸化炭素ー光合成曲線の初期勾配を見ればよいことになります。
 このぐらい専門的な話題になると、参考にするには「光合成事典」(学会出版センター)がよいと思います。光合成の測定に関しては、「光合成研究法」という共立出版から出ていた古い本が非常によいのですが、おそらく古本屋でしか手に入らないと思います。(2006.1.19)

Q:先日は質問の解答ありがとうございました。阻害部位についてはようやく納得できました。阻害剤に関しては混ぜないほうがいいんですね。混ぜて大丈夫か大丈夫でないか、どうなるか、科学的に解明されてない分、手法としては使えないという意味だと理解しました。先生の解答を拝見させて頂いて今回また疑問が出てきてしまったので再度質問させていただきたたく思います。
 1.自然条件下で育てた植物体の葉をアルミホイルなどで覆って遮光した場合、当然明反応は途中でストップしますよね?ではそのストップした時点でP700もP680も今まで光エネルギーのおかげでできていた電子を受け取る準備が出来なくなる、ということは遮光した時点で系Iと系IIが止まると考えて、その間を繋いでいる電子伝達系の最終電子受容体であるプラスストシアニンは還元された状態でP700に電子を渡す直前の状態のままであるということになると思うのですが、このまま遮光しつづけた場合、その還元型PCはどのようにして再び酸化型に戻るのでしょうか?それとも分解でもしてしまうのでしょうか?また、他のさらに還元されやすい物質に電子を渡すのでしょうか?
 2.1の続きのような感じですが、なぜ電子はあのような物質の順に電子を渡していくのでしょうか?励起されたP680から電子が順にキノン類・PCと渡されていく場合、なぜあれだけの数の電子受容体を経なければならないのでしょうか?あの順番は、葉緑体チラコイド中にある全ての物質の中で、酸化剤としての強さの順序をつけた場合の並び、ということになるのでしょうか?
 3.前回の質問で還元型のフェオフィチンは測定が困難とありましたが、実際にどれくらいのスピードで再酸化されるのでしょうか?どれだけ手順をすばやく行ったとしても、葉緑体の単離・薬品投与・吸光度測定という手順では還元型は捕まえられないのでしょうか?
 4.NADPはNADP+で存在する場合とNADPHで存在する場合では、どちらがより安定なのでしょうか?
 5.私は今、物質を投与した場合それが光合成に影響を与えるか、という実験をしたいと思っています。しかし勉強すればするほど、ある時間経過ごとに物質を投与した植物体の葉緑体を単離し光合成の活性度を同時間帯のコントロールとの吸光度差によって示すことは非常に不可能に近いのでは、と思えてなりません。専門家でいらっしゃる先生の目から見て、正直不可能なのでしょうか?ある実験条件を考えても、それが本当は理論的に正しいのか正しくないのか、知識が不足している分決定的な穴がある場合でもそれが見つけられず困っています。知識を補ってもまた穴がで出てくる、それの繰り返しです。そして結局は私の行おうとしているこの実験は、実際に実験をする前に考えついた全ての方法が机上で否定され得ることなんじゃないだろうか、と思えてなりません。でももしかしたらできるかもしれない、そう思ってやる予定でいます。ただ一言、光合成の専門家でいらっしゃる先生のお考えをお聞かせ願えたらと思います。(2006.1.21)

A:
 1.電子伝達や酸化還元というのは個々の分子で見れば還元・酸化の二通りの状態しかありませんが、実際の葉緑体の中では、例えばプラストキノンが全て酸化されるか還元されるわけではなく、通常は一定の割合で、酸化型と還元型が混ざっています。溶液系では、この酸化型と還元型の割合は、溶液の酸化還元電位とその物質の標準酸化還元電位で決まります(ネルンストの式)。このあたりは、化学の教科書で勉強して下さい。ですから、別に光条件でもプラストシアニンが完全に還元されるわけではありません。プラストシアニンは、確かに光で駆動される系IIからの電子で還元されますが、一方で、同じく光によって駆動される系Iによって酸化されますから、その釣り合いで、どれだけの分子が還元されるかが決まります。これは、系Iと系IIの間だけではなく、系Iの下流でも同じです。NADPは系Iによって光還元されますが、他の炭酸固定系やチオレドキシン系などによって酸化されますから、そのバランスによって酸化還元状態が決まります。
 光によって還元(酸化)された成分が、系の酸化還元電位によって暗所で徐々に再酸化(再還元)されることはあります。その場合には、電子伝達によって、他の成分に電子がわたる(他の成分から電子を受け取る)場合と、系の中の別の酸化還元する成分と徐々に反応して酸化(還元)される場合が両方あります。後者は、溶液中の一般的な酸化還元反応と同じです。
 2.電子伝達における酸化還元は、電子伝達成分の物理的な位置によって規定されています。酸化還元反応は、反応を起こす2つの物質の距離が短ければ短いほど起こりやすくなります。例えば、P-700の電子受容体であるFXとFA、それにP-700自体の酸化還元電位を考えると、FXに電子がある(FXが還元されている)場合、その電子はFAにもわたりますし、P-700を再還元することもできます。酸化還元電位的にはP-700の方がよりポジティブなので、P-700に電子がわたりそうですが、実際には、FXとより近い場所にあるFAに電子がわたります。
 3.フェオフィチンからP-680への電子伝達速度は、半減期約30 n秒です。手順の素早さ、などというレベルの時間ではありません。この手の測定は、フラッシュフォトリシス(閃光分光法)といって、短いフラッシュを照射した直後の吸収変化を時間分解で測定することによって行ないます。
 4.NADPの安定性というのは、分解して別の物質になったりしない、という意味での安定性ですね。それですと、生体内では、大きく違うという話は聞きません。もっとも人工的な電子供与体として使われるTMPDなどの場合、ラジカルになる酸化型では還元型に比べて不安定になることが知られていますから、もしかしたらNADPについてもNADP+の方が少し不安定なのかも知れません。
 5.薬剤を投与して、葉緑体を単離して、分光的な手法で光合成を測定する、ということは昔からやられていますから、不可能ではありませんが、当然、時間分解能は限られます。早い変化を追うことはできません。僕だったら、最近発達してきたクロロフィル蛍光を使って、非破壊的かつ連続的に光合成をモニターすることをまず考えます。クロロフィル蛍光に関しては、僕のサイトの該当ページをご覧下さい。
 なお、この実験が卒研か、大学院の実験かにも寄りますが、大学院レベルの実験だと考えると、このような質問箱だけで実験を進めるのは危険なような気がします。大学の近くに光合成の専門家を見つけて、一度相談された方がよいように思います。(2006.1.21)

Q:度重なる多くの質問に丁寧に答えて頂き本当にありがとうございます。前回の一番目の質問に関してはもう一度熟考してまた理解できない部分がありましたら質問させていただきたく思います。それ以外の質問に関してはよくわかりました。蛍光の手法に関しては機器がないので諦めています。今回はチラコイド膜内の酸性度について質問させて頂きたく投稿させていただきました。
 1.光合成中プロトン供給によりチラコイド内部は最高でpH3.8程度の酸性条件になると知りました。にもかかわらずATP合成酵素が働きATPが合成されている事実から、この酵素は広い範囲のpH条件で活性を持つことができると考えていいのでしょうか??それとも、何らかの保護のような形を受けて実質膜貫通タンパク酵素でありながらそのような酸性条件とは境界を隔てた格好になっておりタンパク自体はその条件にさらされていない、という状態なのでしょうか?
 2.チラコイド膜内のプロトンは、ATP合成タンパクを通ってでしか膜外に出られないのでしょうか?また入ってくるとき、つまりチラコイド膜内にプロトン勾配を生じさせるルートは、水からの供給・シトクロム複合体の電子通過時の流入・NADPH生産時の流入(と専門書にありました)の三通りなのでしょうか?ちなみに流入は受動輸送なのでしょうか?
 3.明所では明反応が働きチラコイド膜内は常に酸性条件と考えていいのでしょうか?また暗所に置いたとき、徐々に膜内プロトン濃度は減少すると思うのですが、その濃度はどこまで下がるのでしょうか?膜内外に勾配が存在し続ける限りプロトンは外に移動し続けるのでしょうか?また、勾配がなくなったとき、内外のプロトンの移動はなくなると考えていいのでしょうか?(勾配なしで移動があるのならATPは常に合成されることになり明反応の意義の一つが失われると思うので・・・(膜内への流入が受動輸送の場合))(2006.1.24)

A:
 1.ATP合成酵素はプロトンの濃度勾配によって駆動されます。pHというのは、プロトンの濃度を示したものですから、そもそも「広い範囲のpH条件で活性を持つ」のは、その働きからも当然ですよね。
 2.プロトンを内腔に輸送するルートとしてはその通りです。プロトンがチラコイド膜外に出るルートとしては、ATP合成酵素の他に、いわゆる「漏れ」があります。これは、本来はプロトンを通さない脂質膜でもいくらかは通してしまうという性質によります。プロトンのチラコイド膜内腔への輸送はもちろん受動輸送であるわけがありません。光合成の電子伝達というのは、そもそもプロトンを(能動的に)輸送するためのシステムですよ。受動的にプロトンが流入して、それをATP合成酵素に通せばエネルギーが得られるなら、植物に光は必要ありませんし、人間は何も食べなくても生きていけます。
 3.光の当たっている条件では、チラコイド膜内腔は多かれ少なかれ酸性になります。光を消した場合、内腔のプロトン濃度は、内外で平衡になる点まで減少しますが、膜を隔てて存在するイオンはプロトンだけではないので、電気化学ポテンシャルとして平衡に達した時のプロトン濃度が、膜内外で全く一致するとは限りません。しかし、おおざっぱに言って、膜内外のプロトン濃度がほぼ等しくなった点で平衡に達するということは言えるでしょう。(2006.1.24)

Q:今回も明快なお答え大変感謝しております、ありがとうございます。私は今学士の卒業研究を行っているのですが度重なる失敗で中々うまくいかず、還元型を捕まえるという考えも今ある機器では測定が難しく、今回考えたATPを定量的に測ることで光合成活性比を導くというのが最後にして一番実行可能な手法なのではと思い現在取り組んでいます。連日の質問攻勢で誠に失礼ではありますが、もしよろしければ今回また、不明な点に関してご教授願えたらと思い投稿させていただきました。
 1.チラコイド膜内のプロトンが膜外に移動しATPが合成される段階が、光合成明反応の中で一番遅い反応であり、明反応の律速段階となっていると知りましたが、実際の速度はどれほどのものなのでしょうか??また低温におけばATP合成酵素の活性も低くなる(0度付近では不活性)と考えていいのでしょうか?
 2.暗所におくとATP合成酵素は不活性になり、逆にATPを分解するほうに働くとありましたが、低温にしておけば当然その反応は防げると考えても差し支えないのでしょうか?
 3.暗所で不活性状態のATP合成酵素に光をあてると再活性するともありましたが、この光はどういった波長の光でも可能ということなのでしょうか?また温度が低ければ光があたっていても活性は低い(又はは不活性)と考えてもいいのでしょうか?
 4.ATP合成酵素の阻害剤の中で、除去により再び酵素を再活性させることのできる阻害剤はどういったものがあるのでしょうか??(2006.1.25)

A:今までの質問は、光合成の活性を測りたい、というのが目的だったんですか・・・。いやはや。
 もう百年以上も、世界中の様々な研究者が光合成の活性をいろいろな方法で測ろうとして、実際に測ってきたわけです。新しい光合成の測定方法を開発したいということであれば、その意気込みは買いますが、そのためには、光合成のメカニズムについてはもちろん、過去の測定方法に関して充分な知識が必要です。これまでのご質問からすると、光合成のメカニズムに関しては、教科書を読んだだけ、測定方法については、ほとんどご存じないようです。このような状況で、新しい光合成の測定方法を開発するなどというのははっきり言って無理だと思います。
 研究というのは、一足飛びにできるものではありません。まずは、従来の方法で一度はきちんと測定してみないことには、新しい測定方法を開発するなどということはできません。これまでの方法というのは、「実行可能な手法」だからできたわけです。逆に言えば、現在一般には使われていない方法というのは、何か難しい点があるから使われないわけです。実際に、40年ぐらい前までは、乾燥したホタルをすりつぶした粉末を使ってATPを検出する、という方法によって葉緑体の機能が研究されています。しかし、それは、非常に定量性に欠けたり難しい点があるために、現在は使われなくなっているわけです。
 とにもかくにも、大勢の人が使っている方法でまずはやってみないと、たとえ新しい方法を開発したとしても、それがうまくいっているかどうかすらわからないですよね。光合成の測定といっても、色々あります。光合成のどの部分を測定したいかによっても違いますが、まずは、近くで光合成を測定している研究室を見学しに行くことをお勧めします。(2006.1.25)


Q:はじめまして。私は緑藻アオサのルテイン量を調べる予定で,分析方法について検討中です。一定量の市販乾燥アオサ粉に100%メタノールを加えてホモジナイズした後,色素抽出液とメタノールを合わせて一定量に定容しました。その際,アオサ粉に少量の純水を加えて湿らせて抽出した場合と,湿らせないで抽出した場合を比較すると,前者のほうが抽出液の色(緑色)が濃く,色素の抽出効率が高いようでした。そこで抽出液をHPLC(溶離液:100%メタノール)にかけてルテイン量を比較したところ,純水を加えた場合のルテイン量は,加えない場合の2倍程度ありました。なお,クロマトグラムの検出ピークを比較すると,クロロフィルa,bも同様の傾向がありました。この理由について,ご教示をいただければ幸いです。よろしくお願いします。(2006.1.18)

A:組織からの色素の抽出は、、色素がどのぐらい溶媒に溶けるのかと、組織をどの程度細かく破砕できるか、の2点で決まります。メタノールの場合、水と任意の割合で混じりますから、100%メタノールが95%メタノールになっても、クロロフィルやカロテノイド程度であれば色素の溶解度はそれほど大きな影響は受けません。つまり、アオサ粉を水でしめらせてもさほど、この面では大きな影響はないはずです。一方で、乾燥した細胞は堅いので、100%の有機溶媒中ではなかなか細かくならないのではないかと思います。水に湿らせることによって、アオサが柔らかくなれば、ホモジェナイズした時により均一に細かくなって、抽出効率は上がるはずです。この後者の影響の方が大きいので、抽出効率が上がるのだと思います。
 ちなみに、乾燥した藻体に石油エーテルを加えて色素を抽出する場合もありますが、この場合は、石油エーテルは水と混じらないので、藻体を湿らせるとかえって色素の抽出効率は落ちる可能性があります。(2006.1.19)


Q:2000ルクスでも(一般的でいいので、生物によっても違うと思いますが)水中の中のヘドロなどは植物性プランクトンや動物性プランクトンは光合成しますか?たとえば水を攪拌して太陽光で殺菌する機械をあつかってるのですが、蛍光灯の2000ルクスでも光合成しますか?水深が50センチから1mの範囲にヘドロを持ってきたとして。少しわかりズライかもしれませんが、だいたいでかまいません。よろしくお願いします。(2006.1.18)

A:光合成というのは「する・しない」の2種類があるのではなく、光の強さなど環境要因によって連続的にその速度が変わっていくものです。ですから、太陽が充分に当たっている時に比べてどの程度の速度で光合成をするのか、という質問だと解釈して以下にお答えします。
 まず、2000ルクスというのは、太陽の光の50分の1以下でしょう。光合成の速度は光強度が強くなると飽和していきますから、光合成速度がそのまま50分の1になるわけではありませんが、一桁ぐらい小さい値になるのではないかと思います。さらに、水の透過率の問題があります。ヘドロがあるような環境では、水の透過率は非常に小さくなり、たとえ水の表面では充分な光があったとしても、1 mも潜れば光の明るさは非常に弱くなってしまいます。これも考え合わせると、おっしゃるような条件では光合成の速度は、極めて小さくなるのではないかと予測できます。(2006.1.18)


Q:早速質問なんですが、紅藻の光合成の作用スペクトルによると、フィコエリスリンが吸収する波長の光はクロロフィルaが吸収する波長の光よりも光合成に有効であるように思われます。これはなぜなのか、どのように解釈すればよいのか、できれば少し詳しく教えて下さい。(2006.1.18)

A:これに関しては、すでに過去の質問箱に回答がありますので、そちらをご覧下さい。(2006.1.18)


Q:初めまして。いきなりなんですけど、葉っぱの抽出液に光をあてると赤く発光する理由って何なんですか??出来るだけ詳しく教えてほしいです。(2006.1.16)

A:「理由」というのは具体的には何を聞きたいのでしょう?説明としては、葉っぱの抽出液は赤い蛍光を出すからなのですが・・・。蛍光の出るメカニズムとなると物理の領域の話になりますが、このホームページの蛍光と光合成のページのオンライン教科書を見ると最初の方に蛍光の詳しい解説が書いてありますのでご覧下さい。(2006.1.16)


Q:ある本に光合成の反応式 6CO + 12HO → CH12O + 6O + 6HO と書いてありました。右辺のH2Oはどういうことなのかわかりません。6CO + 6HO → CH12O + 6Oではないんですか?教えてください。(2006.1.14)

A:光合成というのは、一つの反応ではなくて、非常に多くの反応の集まりです。それらの反応は、大きく分けて光のエネルギーを使う光化学反応と、二酸化炭素を有機物に変える炭酸固定反応に分けることができます。前者の光化学反応では酸素が発生しますが、それは、水が分解されてできます。従って6分子の酸素(酸素原子12個分)を発生するためには、水はその分子の中に1個しか酸素原子を含みませんから、12分子の水が分解される必要があります。最初の式で、左辺の水が12HOになっているのは、それを意味しているのです。一方で、炭酸固定反応など、それ光化学反応以外の反応では6分子の水が作られます。これが、右辺の6HOです。別に、2番目の式のように、整理した形に変えても間違いではありません。ただ、そのように書くと、何となく6COの中のOが右辺のOになるように見えるので、誤解のないように12原子の酸素を含む12HOを明示したのだと思います。
 ちなみに、上の質問文の中の最初の式の酸素分子と、その元になる水の酸素原子を赤字に変えておきましたが、そのようにすると、左辺の水の酸素12原子と右辺の酸素6分子の12原子が対応しますよね。2番目の式のように書いてしまうと、酸素原子の数を合わせて書くことができなくなってしまいます。(2006.1.14)


Q:早速、質問なんですが、葉の構造で葉肉の部分が柵状組織と海綿状組織に分けられて書いてあったのですが、どのように機能が違うのですが?
 また、葉緑体の構造でチラコイドは緑色でクロロフィルなどの同化色素を含んでいて、光エネルギーを受け取る。無色のストロマの部分では、二酸化炭素を固定すると書いてあったのですが、グラナの説明がありません。グラナはどのような働きをしているのですか?大学に入学してから独学で生物の勉強を始め、先生には大変失礼な質問だと思いますが、解答していただけるとありがたいです。宜しくお願いします。(2006.1.12)

A:柵状組織と海綿状組織では、その細胞の中の機能という意味では大きな差はありません。柵状組織は葉の表側に位置しており、海綿状組織は葉の裏側にあります。多くの葉では、表から光が入りますが、柵状組織は規則正しい形の細胞がきちんと並んでいるので、光は比較的まっすぐにはの中へと導かれます。一方、海綿状組織は、不定形の細胞が間に隙間を持ちながら不規則に並んでいるので、入ってきた光は、あちこちに散乱され、いわば一種の鏡のように働きます。木の葉などを見ると、表は濃い緑なのに、裏から見ると白っぽく見えるのはそのせいです。これは、表から入った光はなるべく葉の中に取り込み、裏へと抜けそうになった光は散乱させて再び葉の中に戻す、という光の有効利用に働いています。葉の中の細胞の形を変えることによって、葉にあたる光が少しでも無駄にならないようにしているのです。
 グラナというのは、チラコイド膜と別のものではなく、チラコイド膜のうち、重なった部分をグラナと言います。従って、クロロフィルなどの光合成色素を含んでいて光エネルギー変換反応が起こる、と点は、グラナでも同じです。光合成の光エネルギー変換反応には、光化学系Iと光化学系IIの二種類がありますが、グラナ(グラナチラコイド膜)の部分は光化学系IIが多く、一重のチラコイド膜の部分(ストロマに突き出している感じになるのでストロマチラコイド膜と言います)には光化学系Iが多い、と言うことがわかっています。しかし、一部のチラコイド膜が積み重なっていることが、植物にとってどのような利益になっているかは、まだはっきりとわかっていません。
 別に質問はちっとも失礼ではないと思いますよ。ただ、朝倉書店の朝倉植物生理学講座のシリーズの「光合成」のような本を読めば書いてはあると思います。(2006.1.12)


Q:クロロフィル蛍光画像解析による光合成の可視化実験のページを見たのですが、緑色でない葉の場合、光合成に影響が出るということは分かりました。そこで質問なのですが、植物は葉の色によって蒸散量にも変化がでるのでしょうか。光合成と蒸散の関係なども教えていただきたいです。お願いします。(2006.1.8)

A:「可視化実験のページ」というのは、「光合成を目で見てみよう」のことですね。ふ入りの葉の場合のように、白くなっている部分では光合成をしません。さてその時にその部分での蒸散がどうなっているのか、というと・・・僕も知りません。水の蒸発というのは、物理的な過程なので、どの程度の蒸散が起こるかは、気孔の数とその開き具合によって決まります。しかし、白い部分にも緑色の部分と同じように気孔があるのかどうかさえ、知りません。ふ入りにも、遺伝的に起こるものとウイルス感染などによって起こるものなどがあり、そのメカニズムは1つではないので、もしかしたら、場合によっても違うかも知れません。また、葉の表面の表皮細胞には葉緑体がないのですが、気孔を形づくる孔辺細胞だけは例外で、葉緑体を持ち、その葉緑体によって生じるエネルギーが気孔の開閉にも使われていると考えられています。従って、葉緑体が完全に失われるようなタイプの真っ白なふ入りでは、気孔の開閉に不都合が生じるように思います。ただし、薄いクリーム色の、少しは葉緑体を持つタイプのふ入りの場合は、正常かも知れませんので、この場合も、ふ入りの種類によって異なるように思います。
 蒸散は、上にも書きましたように物理的な過程なので、光合成の状態によって直接影響を受けることはありません。しかし、光合成は、気孔からの二酸化炭素を使う反応ですから、水不足になって蒸散ができずに気孔を閉じると、光合成も止まります。従って、蒸散の速度と光合成の速度の間には、よい相関が見られます。(2006.1.9)