読書記録2016

最近、一度読んだ本でも忘れていることが出てきて年を感じます。ひどいときは、新しく読む本だと思って、面白く読み進めていくうちに、何だか知っている気がしはじめて、読み終わる頃に、そういえば昔読んだことがあったと思い出すこともありました。「常に新鮮な喜びが味わえてうらやましいこと」などと言われる状態です。そこで、新しく読んだ本を忘備録としてここに書いておくことにしました(平成14年3月開始)。「新しく読んだ」というだけで、別に新刊の本とは限りません。


「職業としての小説家」 村上春樹著、新潮文庫 平成28年12月読了
 実は、村上春樹の小説は一冊も読んでいないのですが、人気小説作家が小説をどのように考えているのかを知りたくて読んでみました。最初の感想は「村上春樹って、こんな常識人だったんだ」というものでした。何となく、小説家というのは、非常識で、少しやくざな人たちなのかと思っていたのですが。それは昔の話なのでしょうかね。教育学部教授としては「学校について」という章に注意を引かれましたが、ここでも、その主張はまっとう至極、想像力の対極概念としての効率など、頷けるものばかりでした。とは言え、常識的な主張でありながら、読者を楽しませる文章になっているのは、さすが小説家ということなのでしょう。

「進化する遺伝子概念」 ジャン・ドゥーシュ著、みすず書房 平成28年11月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に掲載予定です。

「ロートレックの食卓」 林綾野、千足伸行著、講談社 平成28年10月読了
 ロートレックの生涯を、食の視点からまとめたという不思議な本。その絵を含む多数の写真も掲載されていて、時代の雰囲気も感じられます。

「ローマ亡き後の地中海世界 海賊、そして海軍」 塩野七生著、新潮文庫 平成28年9月読了
 いつもの語り口を堪能しました。文章もうまいのでしょうけれども、この著者の一番の特徴は、案外バランス感覚かもしれませんね。複数の勢力が入り乱れて争う中で、その一方を悪の帝国として切り捨てる昨今の風潮とは異なり、それぞれの考え方を淡々と紹介していきます。そして、何を紹介して何を省くのか、という点についても、そのバランス感覚が発揮されているのではないかと想像します。

「近衛家名宝からたどる宮廷文化史」 田島公編、笠間書院 平成28年8月読了
 先日「御堂関白記」が世界記憶遺産に登録されましたが、その御堂関白記を含む陽明文庫のさまざまな所蔵品を専門家が分担して解説した本です。よくもこれだけのものが無事に残っていたというのが第一の印象です。ただ、文書が主なので、地味は地味ですね。カラー写真が口絵に使われているのですが、朱の書き込みが見やすい、という程度のものがほとんどです。

「神話で読みとく古代日本」 松本直樹著、ちくま新書 平成28年7月読了
 古事記と日本書紀と風土記の記述を比較することによって、神話が作られていった過程を明らかにしてゆく本です。神話というと、なんとなく自然発生的に生まれるように思うのですが、考えてみれば、古事記でも日本書紀でも風土記でも「編纂」されたわけですから、そこに意図があるのは当然なのかもしれません。当然のことをきちんと認識させられました。

「ヒマワリはなぜ東を向くか」 瀧本敦著、中公新書 平成28年5月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。

「たたかう植物」 稲垣栄洋著、ちくま新書 平成28年3月読了
 書評を生物学関係の書籍の書評の所に載せておきました。