光合成の質問2022年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:光合成の際の気孔からの気体の出入りについて教えてください。晴れた日の昼間、光合成がさかんに行われているとき、実際には呼吸も行われているが、見かけ上二酸化炭素を気孔から取り入れて酸素を出しているように見えると参考書等には書かれています。これは、気孔からは実際には酸素も二酸化炭素もでているが、周りの二酸化炭素の量は減少するので、見かけ上二酸化炭素は出ていないように考えてもいいという意味でしょうか?それとも、本当に酸素のみが(蒸散による水蒸気はのぞきます。)気孔からでてきていて二酸化炭素は全く排出されないのでしょうか?(2022.4.4)

A:これは、どちらかというと言葉をどう定義するかによります。人の呼吸の場合は、吸って吐いてという体積的な動きによって気体が出入りしますが、植物の場合は、葉に気孔という穴が開いているだけで、気体自体が体積として動くわけではありません。その代わり、個々の分子が拡散によって移動します。拡散は、個々の分子のランダムな動きですから、「どちらに動く」ということは決まっていません。しかし、もし部屋の右側に多くの分子があって、左側にはほとんど分子がなかったら、右側から左側へと(たまたま)動く分子の数は多いのに対して、左側から右側に動く分子は存在するけれども数は少なくなります。その場合、何もしなくても、右側の分子の数は減って、左側の分子の数は増えますから、実質的には分子は右側から左側へと移動することになります。つまり、拡散の場合、全体的には常に濃度が高い方から低い方へと分子が移動します。しかし、個々の分子に着目すれば、数は少なくとも、濃度が低い方から高い方へ移動する分子も存在します。したがって、呼吸で発生した二酸化炭素の分子は、一定の確率で気孔から外へと出ていきます。一方で、光合成によって葉の内部の二酸化炭素の方が外よりも濃度は低くなりますから、全体としての二酸化炭素は、外から内側へと移動することになります。(2022.4.4)


Q:現在、部活でクロロフィルについて研究しており、その活動の一環としてクロロフィル蛍光の測定を行いたいと考えています。貴サイトに掲載されていた二次元解析についての北海道大学の論文を拝読したところ、手間はかかるものの比較的に容易にクロロフィル蛍光の測定装置の自作が可能であるという記述を見つけました。そこで、その方法についてインターネットで調べてみたのですが、詳しい作り方について解説しているサイトを見つけることはできませんでした。また、別の測定方法についても同じように調べたところ、高価な機器を用いた方法しか見つけられませんでした。なので、安価に自作できるクロロフィル蛍光の測定装置の作り方と必要な材料を教えてほしいです。予算は最大2万円ほどで考えており、デジタルカメラ、パソコン、分光光度計(UV-1280)が使えます。(2022.3.22)

A:おそらく「測定」というのが何を意味するのかによるかとは思いますが、もし、クロロフィル蛍光により「光合成を」「定量的に」測定しようとすると、残念ながら非常に難しいと思います。一方で、クロロフィルが蛍光を出すことを「検出する」だけであれば、比較的簡単です。ただ、これもどこまでの情報を求めるのかによります。
 一番検出が簡単なのは葉からアルコールなどで抽出したクロロフィル溶液の蛍光です。分光器のキュベット(セル)で4面透明なもの(ガラスでもプラスチックのものでもよい)にクロロフィルのアルコール溶液を入れて、液晶プロジェクターがあれば、その光を小さな穴をあけたボール紙か何かを通して(=光を細いビームにして)キュベットに照射して、それを光の照射方向と直角の方向から眺めると、クロロフィルの赤い蛍光を確認できると思いますし、デジタルカメラで記録することができます。
 植物の葉で蛍光を確認するのはそれより難しくなります。これは、クロロフィル量当たりの蛍光の強さが溶液の場合よりも葉の方が小さくなるのに加えて、あてた光の反射と蛍光が混ざってしまうためです。キュベットの場合は、あてた光はそのまま180度の方向に通り抜けるので、直角方向から見ると、蛍光が主に観察されます(蛍光は、どちらから光が当たっても四方八方に放出されます)。しかし、葉の場合は、あてた光の反射光が見えてしまうので、これを取り除く必要があります。このためによく使われるのが色フィルターです。例えば、青い色ガラスや色セロファンなどをフィルターとして使って、それを通した光を葉に当てます。クロロフィルの蛍光は赤い光なので、帰ってきた光の内、赤い光だけを通すガラスやセロファンを通してみれば、蛍光だけを観察することができます。ここで重要なのは、赤フィルターと青フィルターを重ねて見ると真っ黒になるような組み合わせにすることです。分光光度計が使えるということですから、より厳密に、2つのフィルターを重ねると光の透過率が各波長でほぼ0になること、一方で赤いフィルターは690 nm程度の光(蛍光)を通すこと確認するのがよいかもしれません。そのような組み合わせの2つのフィルターを用いることにより、あてた光の反射光を除去して蛍光だけを見ることができます。照射光については、フィルターを使わずに、光源として青色LEDを使うという手もあります。
 もしこのような方法で、葉の蛍光が観察できれば、それもデジタルカメラで記録することができ、この場合、枯れ葉では蛍光が出ない、といった対照実験をすることもできます。また、市販の除草剤には、DCMUのように光合成を阻害するタイプのものもあります。光合成が阻害されると、それにエネルギーが使われなくなりますから、その分のエネルギーが蛍光になることが多く、したがって、葉の一部にDCMUを塗ると、塗った場所の蛍光が強く見えるはずです。ただし、そのような実験をするためには、かなり強い蛍光が見えている必要があり、DCMUがどの程度葉の中に入るかは、植物の種類によっても違いますから、きれいな結果を出すのは案外難しいかもしれません。(2022.3.22)


Q:私は現在カリフォルニアに住んでいます。先日(2月21日)理科の授業で光合成の実験をしました。内容は外に生えていた蔓植物の葉に一部銀紙をかぶせて3日放置した物を、とってきて温めたエタノールにつけて脱色し、ヨウ素溶液に漬けました。本来なら銀紙が巻かれていた場所は、青紫色に染まらないはずですが、全部青紫色に染まってしまいました。ちなみに葉っぱは、場所を変えて六枚ほど用意しましたが全て失敗しました。教科書にも載っている実験ですが、なにかコツやよく失敗する原因があれば教えてください。(2022.2.25)

A:実験は、どこかで一つうまくいかないと結果が出ないため、うまくいかない点を特定するのは難しいのですが、考えられるポイントを以下に挙げておきます。「銀紙」がどのようなものであるかにもよりますが、案外光を通す場合があります。例えば、アルミホイルを使った場合にも、光発芽のような弱い光でも引き起こされる現象の場合は、透過した光によって発芽してしまうことがあります。光合成は、光発芽よりは強い光が必要となるため、それほど問題にならない場合が多いのですが、ヨウ素デンプン反応の実験の場合、昼間に光合成をすることだけでなく、暗い条件で呼吸や転流によってデンプンが減少することが重要になります。そして、呼吸の速度は弱い光によって抑制される例が知られています。また、葉を全部覆う場合は問題が少ないのですが、一部を覆う場合は、隙間から案外光が入ってしまう場合があります。あとは、ヨウ素液が濃すぎる場合に、デンプンの量に依存しない着色が見られる場合があります。ヨウ素デンプン反応に用いるヨウ素液は、薄い黄色(せいぜいビール程度の色、麦茶の色では濃すぎる)に見える程度の濃度でも、デンプンが十分に溜まっていれば十分に濃い発色が見られます。発色が見られる範囲において十分に薄めて使う方がきれいな結果が得られます。ただし、染色は時間をかけて(5分ぐらい)行う必要があります。(2022.2.25)


Q:有光下での酸素消費過程について質問です。光呼吸、メーラー反応、葉緑体呼吸のそれぞれの反応で消費される酸素は、光合成時に光化学系にて生成された酸素でしょうか?根などから吸収した酸素でしょうか?前述の両方でしょうか?反応経路を勉強したところ根などからの酸素を用いているのではないかと思ったのですが、有光下では生体内で同時に酸素が生成されているので、光合成由来の酸素を使うこともあるのではないかと気になり質問させていただきました。要領を得ない質問かもしれませんが、お教えいただけますと幸いです。どうかよろしくお願いいたします。(2022.1.28)

A:「反応経路を勉強したところ根などからの酸素を用いているのではないかと思った」という部分の詳細がわからないので、なぜそのようにお考えになったのかがわかりませんが、基本的に根から葉へ酸素が移動することはないと思います。たとえ光合成をしていなかったとしても、葉の周囲の空気は21%の空気を含む一方、土壌中は、土壌微生物や根自体の呼吸により酸素濃度が低下しているのが普通です。したがって、葉から根へ酸素が移動することはあっても、根から葉へ酸素が移動することはないでしょう。また、葉の周囲の酸素濃度は高いので、光合成が働かないと酸素が足りなくなる可能性も低いと思います。(2022.1.28)


Q:タンパク質、脂質の合成が、植物体のどこでどのように行われるかを知りたく、過去のQ&Aを拝見しました。2004.3.4のご回答からは、「タンパク質の合成…細胞質でも、葉緑体でもミトコンドリアでもおこる。」「脂質の合成…色素体でおこる。小胞体でもおこる。」と理解しました。一方、2017.12.7のご回答から、「植物の体の有機物は、すべて光合成で得られる」と理解しました。上ふたつを合わせると、下の(1)(2)のどちらかの理解となるのですが、よくわかりませんでした。(1)葉緑体における光合成によって、糖やデンプンが作られ、それを原料としてミトコンドリアや小胞体や色素体においてタンパク質や脂質が合成される。(2)葉緑体以外でも、ミトコンドリアや小胞体や色素体で実は光合成が起こっていて、そこで、糖だけではなくタンパク質や脂質が作られる。恐らく(2)ではないと思うのですが、当方はほとんど素人でございましてそもそも最初の理解から見当違いかもしれません。お忙しい中恐縮ですが、ご教示いただければ幸いでございます。(2022.1.17)

A:御推察の通り、(1)が正しい理解です。植物の有機物は光合成が出発点となりますが、有機物は葉緑体から他の場所に輸送されて使われます。従ってタンパク質や脂質の合成の材料も、葉緑体で合成されたものが、それぞれの合成の場所に輸送されて使われます。(2022.1.17)