光合成の質問2022年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:中学校の理科の授業で葉の脱色にエタノールを使うとエタノールが緑色になります。葉緑体がエタノールに溶け出したという理解で間違い無いでしょうか?また、この理解が合っているのであれば、そのエタノール内の葉緑体は光合成をするのでしょうか?(2022.8.31)

A:実際にエタノールに溶けだすのは、葉緑体そのものではなく、葉緑体に含まれている緑色の色素であるクロロフィル(葉緑素)です。クロロフィルは、単独でも光を吸収する能力は持っていて、実際に緑色に見えますが、吸収した光のエネルギーで有機物を作る光合成の能力は持っていません。なので、緑色になったエタノール溶液では、光合成の反応は残念ながら起きません。(2022.8.31)


Q:植物に含まれるクロロフィルの量と植物の光合成の多さに関係はありますか?クロロフィルが多く含まれるほど光合成が多く行われるようなイメージがあり、2つの関係について調べたのですが、見つけられませんでした。よろしくお願いします。(2022.5.31)

A:基本的には正しいイメージだと思います。例えば、このサイトの「ヨウ素デンプン反応の実際」に掲載してあるヨウ素デンプン反応の写真を見てください。植物の葉での実験例はタデ科の植物(斑入りのミズヒキ)を使っていて、葉の部分によって緑の色の濃さが異なり、濃い緑の部分、薄い緑の部分、かなり白っぽい部分があります(写真左)。この緑はクロロフィルなので、エタノールで脱色するとすべて色がなくなってしまいます(写真中央)が、ここでヨウ素液を反応させると、色の濃さに再び濃淡が現れ(写真右)、その濃淡は、元の緑色の濃淡とよく一致していることがわかります。つまり、クロロフィルの量と光合成の活性の間には関係があることがわかります。とは言っても、例えばクロロフィルの量を何かの仕組みで倍にしたとしても、光合成の活性が倍になるかどうかはわかりません。クロロフィルがあまりにも多くなってしまえば、お互いに影になって、すべてのクロロフィルに光が当たらなくなる可能性があります。その場合には、クロロフィルの量を増やした割には、光合成が増えなくなるでしょう。結論としては、クロロフィルの量と光合成の活性には、関係はあるけれども、比例関係かどうかはわからない、というところだと思います。(2022.5.31)


Q:こんにちは。僕達は光合成に関する研究をしています。植物にカーボンナノチューブを与えたときに光合成が活性化するという記事をみつけました。そこで、仮説として、カーボンナノチューブを与えるとチラコイドにおける電子伝達の速度が加速することが原因であると考えました。この仮説を証明するためにチラコイドにおける電子の流れを測定したいのですがなにか有用な電子の計測方法があれば教えてもらいたいです。(2022.5.25)

A:高校レベルで「電子の流れ」をどのように理解しているのかが僕の方では必ずしもわからないのですが、光合成の電子伝達は、水が酸素に分解する際の電子が、光化学系2、光化学系1を通ってNADPHへと渡り、このNADPHが二酸化炭素を有機物に変換します。つまり、電子の流れを測定しようとしたときの方法としては、(1)酸素の発生速度、(2)光化学系2などを通る電子の量、(3)NADPHの生成量、(4)二酸化炭素の吸収量、(5)有機物の合成量、(6)クロロフィルの蛍光を使った間接的な方法、などがあります。これらの測定の一部については、「光合成の測定」に掲載してありますので、ご覧ください。
 「光合成が活性化するという記事」というのは、おそらく2014年にNature Materialsに掲載された論文に関わるものだと思います。この論文では、上記の(2)の方法と(6)の方法を使っています。(2)の方法は、葉を緩衝液中で破砕して、遠心分離によってチラコイド膜を集めて、それに、光化学系2から電子を受け取ると色が変わる試薬を加えて分光器を使って色の変化を定量するというものです。なので、やろうとすると遠心分離機と分光器が必要になります。(6)は、葉の測定であれば、パルス変調クロロフィル蛍光測定装置という機械で葉を挟んで直接測定すればすぐに結果が出ます。ただし、この装置はやや特殊なので、かなり先進的な高校であっても持っているところはないのではないかと思います。ただし、大学で測定させてもらえば、測定自体は極めて簡単です。そのあたり、どのような設備があるかによって何が測定できるかが変わってきます。
 なお、水を差すようなことは言わない方がよいかもしれませんが、その2014年の論文は、光合成の専門家から見ると、やや正確性を欠く測定・議論をしています。論文で示された結果がすべて正しいという前提で計画を進めるのは少し危ういところがあるかもしれません。(2022.5.25)


Q:淡水性クロレラ類の培養を行っています。良好な繁殖条件の光量と水の栄養濃度の条件を変えて種々試験を行っています。2リットルペットボトルを用い、上方から見て底面に置いた白板が確認できる濃度を基準に、繁殖後、同じ濃さになるまで水で薄めて、繁殖結果の定量化を試みています。その結果、24時間で最大でグリーンウォーターの濃さは4倍になるケースがあり、現在の飼育条件では、24時間で最大2回の分裂(4倍の繁殖)を行っていることがわかりました。さて質問です。植物プランクトンの例ではなくても、光合成による植物重量の変化について、過去に事例がありましたら目安のひとつとして知っておきたいと希望しております。光合成による、「照射光量」と「産出糖類の重量」の関係に関する計測例がありましたら、教えていただけませんでしょうか?(2022.5.20)

A:24時間で2回分裂ということは、倍化時間が12時間ということですね。植物プランクトンとして藍藻(シアノバクテリア)の例を挙げると、大雑把な倍化時間は8時間ぐらい(24時間で最大3回分裂)でしょうか。生育光が弱い時には、生育光を強くしていくと生育速度も上昇しますが、一定以上で上昇しなくなり、さらに光が強くなると、逆に生育速度が遅くなって、場合によっては死んでしまいます。どの程度の照射光量がよいかは、種類にもよりますが、一般的なシアノバクテリアの場合は、太陽の直射日光の1/10ぐらいまでは生育がよくなりますが、太陽の直射日光程度になると生育が悪くなります。ただし、照射光量を考える上では、細胞の濃さも関係しますので、なかなか一筋縄ではいきません。細胞が濃い場合は、細胞がお互いに影をつくるので、より強い光でも生育できます。(2022.5.20)


Q:光合成の際の気孔からの気体の出入りについて教えてください。晴れた日の昼間、光合成がさかんに行われているとき、実際には呼吸も行われているが、見かけ上二酸化炭素を気孔から取り入れて酸素を出しているように見えると参考書等には書かれています。これは、気孔からは実際には酸素も二酸化炭素もでているが、周りの二酸化炭素の量は減少するので、見かけ上二酸化炭素は出ていないように考えてもいいという意味でしょうか?それとも、本当に酸素のみが(蒸散による水蒸気はのぞきます。)気孔からでてきていて二酸化炭素は全く排出されないのでしょうか?(2022.4.4)

A:これは、どちらかというと言葉をどう定義するかによります。人の呼吸の場合は、吸って吐いてという体積的な動きによって気体が出入りしますが、植物の場合は、葉に気孔という穴が開いているだけで、気体自体が体積として動くわけではありません。その代わり、個々の分子が拡散によって移動します。拡散は、個々の分子のランダムな動きですから、「どちらに動く」ということは決まっていません。しかし、もし部屋の右側に多くの分子があって、左側にはほとんど分子がなかったら、右側から左側へと(たまたま)動く分子の数は多いのに対して、左側から右側に動く分子は存在するけれども数は少なくなります。その場合、何もしなくても、右側の分子の数は減って、左側の分子の数は増えますから、実質的には分子は右側から左側へと移動することになります。つまり、拡散の場合、全体的には常に濃度が高い方から低い方へと分子が移動します。しかし、個々の分子に着目すれば、数は少なくとも、濃度が低い方から高い方へ移動する分子も存在します。したがって、呼吸で発生した二酸化炭素の分子は、一定の確率で気孔から外へと出ていきます。一方で、光合成によって葉の内部の二酸化炭素の方が外よりも濃度は低くなりますから、全体としての二酸化炭素は、外から内側へと移動することになります。(2022.4.4)


Q:現在、部活でクロロフィルについて研究しており、その活動の一環としてクロロフィル蛍光の測定を行いたいと考えています。貴サイトに掲載されていた二次元解析についての北海道大学の論文を拝読したところ、手間はかかるものの比較的に容易にクロロフィル蛍光の測定装置の自作が可能であるという記述を見つけました。そこで、その方法についてインターネットで調べてみたのですが、詳しい作り方について解説しているサイトを見つけることはできませんでした。また、別の測定方法についても同じように調べたところ、高価な機器を用いた方法しか見つけられませんでした。なので、安価に自作できるクロロフィル蛍光の測定装置の作り方と必要な材料を教えてほしいです。予算は最大2万円ほどで考えており、デジタルカメラ、パソコン、分光光度計(UV-1280)が使えます。(2022.3.22)

A:おそらく「測定」というのが何を意味するのかによるかとは思いますが、もし、クロロフィル蛍光により「光合成を」「定量的に」測定しようとすると、残念ながら非常に難しいと思います。一方で、クロロフィルが蛍光を出すことを「検出する」だけであれば、比較的簡単です。ただ、これもどこまでの情報を求めるのかによります。
 一番検出が簡単なのは葉からアルコールなどで抽出したクロロフィル溶液の蛍光です。分光器のキュベット(セル)で4面透明なもの(ガラスでもプラスチックのものでもよい)にクロロフィルのアルコール溶液を入れて、液晶プロジェクターがあれば、その光を小さな穴をあけたボール紙か何かを通して(=光を細いビームにして)キュベットに照射して、それを光の照射方向と直角の方向から眺めると、クロロフィルの赤い蛍光を確認できると思いますし、デジタルカメラで記録することができます。
 植物の葉で蛍光を確認するのはそれより難しくなります。これは、クロロフィル量当たりの蛍光の強さが溶液の場合よりも葉の方が小さくなるのに加えて、あてた光の反射と蛍光が混ざってしまうためです。キュベットの場合は、あてた光はそのまま180度の方向に通り抜けるので、直角方向から見ると、蛍光が主に観察されます(蛍光は、どちらから光が当たっても四方八方に放出されます)。しかし、葉の場合は、あてた光の反射光が見えてしまうので、これを取り除く必要があります。このためによく使われるのが色フィルターです。例えば、青い色ガラスや色セロファンなどをフィルターとして使って、それを通した光を葉に当てます。クロロフィルの蛍光は赤い光なので、帰ってきた光の内、赤い光だけを通すガラスやセロファンを通してみれば、蛍光だけを観察することができます。ここで重要なのは、赤フィルターと青フィルターを重ねて見ると真っ黒になるような組み合わせにすることです。分光光度計が使えるということですから、より厳密に、2つのフィルターを重ねると光の透過率が各波長でほぼ0になること、一方で赤いフィルターは690 nm程度の光(蛍光)を通すこと確認するのがよいかもしれません。そのような組み合わせの2つのフィルターを用いることにより、あてた光の反射光を除去して蛍光だけを見ることができます。照射光については、フィルターを使わずに、光源として青色LEDを使うという手もあります。
 もしこのような方法で、葉の蛍光が観察できれば、それもデジタルカメラで記録することができ、この場合、枯れ葉では蛍光が出ない、といった対照実験をすることもできます。また、市販の除草剤には、DCMUのように光合成を阻害するタイプのものもあります。光合成が阻害されると、それにエネルギーが使われなくなりますから、その分のエネルギーが蛍光になることが多く、したがって、葉の一部にDCMUを塗ると、塗った場所の蛍光が強く見えるはずです。ただし、そのような実験をするためには、かなり強い蛍光が見えている必要があり、DCMUがどの程度葉の中に入るかは、植物の種類によっても違いますから、きれいな結果を出すのは案外難しいかもしれません。(2022.3.22)


Q:私は現在カリフォルニアに住んでいます。先日(2月21日)理科の授業で光合成の実験をしました。内容は外に生えていた蔓植物の葉に一部銀紙をかぶせて3日放置した物を、とってきて温めたエタノールにつけて脱色し、ヨウ素溶液に漬けました。本来なら銀紙が巻かれていた場所は、青紫色に染まらないはずですが、全部青紫色に染まってしまいました。ちなみに葉っぱは、場所を変えて六枚ほど用意しましたが全て失敗しました。教科書にも載っている実験ですが、なにかコツやよく失敗する原因があれば教えてください。(2022.2.25)

A:実験は、どこかで一つうまくいかないと結果が出ないため、うまくいかない点を特定するのは難しいのですが、考えられるポイントを以下に挙げておきます。「銀紙」がどのようなものであるかにもよりますが、案外光を通す場合があります。例えば、アルミホイルを使った場合にも、光発芽のような弱い光でも引き起こされる現象の場合は、透過した光によって発芽してしまうことがあります。光合成は、光発芽よりは強い光が必要となるため、それほど問題にならない場合が多いのですが、ヨウ素デンプン反応の実験の場合、昼間に光合成をすることだけでなく、暗い条件で呼吸や転流によってデンプンが減少することが重要になります。そして、呼吸の速度は弱い光によって抑制される例が知られています。また、葉を全部覆う場合は問題が少ないのですが、一部を覆う場合は、隙間から案外光が入ってしまう場合があります。あとは、ヨウ素液が濃すぎる場合に、デンプンの量に依存しない着色が見られる場合があります。ヨウ素デンプン反応に用いるヨウ素液は、薄い黄色(せいぜいビール程度の色、麦茶の色では濃すぎる)に見える程度の濃度でも、デンプンが十分に溜まっていれば十分に濃い発色が見られます。発色が見られる範囲において十分に薄めて使う方がきれいな結果が得られます。ただし、染色は時間をかけて(5分ぐらい)行う必要があります。(2022.2.25)


Q:有光下での酸素消費過程について質問です。光呼吸、メーラー反応、葉緑体呼吸のそれぞれの反応で消費される酸素は、光合成時に光化学系にて生成された酸素でしょうか?根などから吸収した酸素でしょうか?前述の両方でしょうか?反応経路を勉強したところ根などからの酸素を用いているのではないかと思ったのですが、有光下では生体内で同時に酸素が生成されているので、光合成由来の酸素を使うこともあるのではないかと気になり質問させていただきました。要領を得ない質問かもしれませんが、お教えいただけますと幸いです。どうかよろしくお願いいたします。(2022.1.28)

A:「反応経路を勉強したところ根などからの酸素を用いているのではないかと思った」という部分の詳細がわからないので、なぜそのようにお考えになったのかがわかりませんが、基本的に根から葉へ酸素が移動することはないと思います。たとえ光合成をしていなかったとしても、葉の周囲の空気は21%の空気を含む一方、土壌中は、土壌微生物や根自体の呼吸により酸素濃度が低下しているのが普通です。したがって、葉から根へ酸素が移動することはあっても、根から葉へ酸素が移動することはないでしょう。また、葉の周囲の酸素濃度は高いので、光合成が働かないと酸素が足りなくなる可能性も低いと思います。(2022.1.28)


Q:タンパク質、脂質の合成が、植物体のどこでどのように行われるかを知りたく、過去のQ&Aを拝見しました。2004.3.4のご回答からは、「タンパク質の合成…細胞質でも、葉緑体でもミトコンドリアでもおこる。」「脂質の合成…色素体でおこる。小胞体でもおこる。」と理解しました。一方、2017.12.7のご回答から、「植物の体の有機物は、すべて光合成で得られる」と理解しました。上ふたつを合わせると、下の(1)(2)のどちらかの理解となるのですが、よくわかりませんでした。(1)葉緑体における光合成によって、糖やデンプンが作られ、それを原料としてミトコンドリアや小胞体や色素体においてタンパク質や脂質が合成される。(2)葉緑体以外でも、ミトコンドリアや小胞体や色素体で実は光合成が起こっていて、そこで、糖だけではなくタンパク質や脂質が作られる。恐らく(2)ではないと思うのですが、当方はほとんど素人でございましてそもそも最初の理解から見当違いかもしれません。お忙しい中恐縮ですが、ご教示いただければ幸いでございます。(2022.1.17)

A:御推察の通り、(1)が正しい理解です。植物の有機物は光合成が出発点となりますが、有機物は葉緑体から他の場所に輸送されて使われます。従ってタンパク質や脂質の合成の材料も、葉緑体で合成されたものが、それぞれの合成の場所に輸送されて使われます。(2022.1.17)