光合成の質問2011年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:光合成速度の単位の変換について教えてください。過去の資料を見ると、光合成速度の単位がmgCO2/dm2・hとなっていますが、最近の資料ではμmolCO2/m2/sとなっているようです。単位の変換方法について教えていただけると助かります。(2011.12.26)

A:これは光合成速度だからといって特別なことがあるわけではありません。mgをモルの単位に換算し、dmをmに換算し、時間を秒に換算するだけですので。(2011.12.26)


Q:球根植物は、球根から芽、葉を出し、しばらくすると花をつけ(葉より花が先のものもありますが)、その後球根に養分を蓄積していきます。光合成で作っている養分はどの生育段階でも同じ種類の養分(糖類、デンプン等)を生成しているのですか?もしくは、球根養成時になると、それに適した養分を光合成で生成し、転流・貯蔵するようになるのですか?秋植え球根植物の貯蔵根を分析すると、ショ糖と四糖類が検出され、デンプンはほとんど蓄積していませんでした。このような植物では葉の光合成産物として何を生成していると考えられますか?(2011.12.19)

A:葉で作られる光合成産物はどの植物でもまずは炭素3つを含む糖リン酸(三炭糖リン酸)になります。葉緑体の中で光合成産物をそのまま貯める場合はこれがデンプンに変えられます。また、ほかの器官に転流する場合は、三炭糖リン酸が葉緑体から細胞質に輸送されたのちショ糖に変えられ、多くの場合その形で(植物によっては三糖類あるいは四糖類に変えられたのち)篩管を通ってほかの器官に送られます。ですから、葉のレベルにおける光合成産物は、初期産物が三炭糖、安定的な化合物がデンプンあるいはショ糖であり、これはほとんどすべての植物で生育ステージに関わらず同じです。つまり、葉から送り出される光合成産物は、ほとんどの場合ショ糖でこれはかなり普遍的です。
 一方、送り出された光合成産物を根などの貯蔵器官で最終的にどのような物質として保持するかは、植物によって異なりまた生育ステージによっても異なります。多くの場合デンプンまたはショ糖ですが、ステージによって切り替わる場合もあります。身近な例ではバナナの実には最初にデンプンが貯められますが、熟してくるとショ糖に変わります。球根の場合はよく存じませんが、休眠状態のときと芽を出す時で異なる場合も考えられるように思います。いずれにせよ、これは光合成(葉)の側の問題ではなく、貯蔵器官の側の問題です。(2011.12.19)


Q:2006.1.22の『光合成曲線の傾き』の質問について更に質問です。陽生植物と陰生植物のグラフの傾きが違うことは分かりました。ではこの傾きは植物の種固有のものでしょうか?それとも葉の部位(表、裏)によっても変わってくるのでしょうか?また、同一種、同一部位で条件を変えると傾きが変わるということはあるのでしょうか?よろしくお願いいたします。(2011.12.15)

A:実は、陽生植物・陰生植物という言葉のほかに、陽葉、陰葉という言葉があります。これは、同一の植物種であっても、明るいところの葉と暗いところの葉ではその性質が異なることを指す言葉です。植物は、動物と違って環境が厳しいからといってそこから動いて逃げ出すことができませんから、環境適応の能力が発達しています。同一種、同一部位の葉でも、その生育光環境の違いによってその光合成の能力が大きく変化しうることが明らかになっています。光合成曲線の傾きについても例外ではなく、光環境が異なれば同一種でも傾きは変わってしまいます。(2011.12.15)


Q:マクサの文献で、光量および水温が高い場合、黄化になりやすいというものを見ました。光量と温度が高い試験区で黄化が出ていないのに、それ以下の試験区で黄化が見られたりしたのですが、単なる個体差によるものなんでしょうか?何か別の要因があるのでしょうか?参考となる情報があれば、教えて下さい。
【試験設定】日積算光量(2,3,4mol/m2/day)、水温(20,25,30℃)、栄養塩(自然海水の掛け流し)(2011.12.14)

A:6月のご質問の際にもお答えしましたが、まずは実験条件がどの程度適切であり、実験に再現性があるのかどうかを調べることが重要なのではないかと思います。今回のご質問では細かい結果がわかりませんが、会社で研究として実験を行なうのであれば、少なくとも実験を繰り返して行ない、再現性をみて、また統計処理をしてその結果を考えるというプロセスが重要です。(2011.12.14)


Q:始めまして。生物を勉強している時に疑問がわいたので色々調べましたが分からなかったので質問させてください。「補償点の光の強さにおける光合成速度の限定要因は、光の強さである場合とそうではない場合がある」この文の是非を問う問題がありました。回答は「この文は間違っている」とのことでした。補償点=光合成速度と呼吸速度が等しくなる光の強さで、あることはわかります。ただ、CO2濃度や温度が低いなどの条件で、補償点より光合成速度があがらない状態。つまり、補償点と光飽和点が一致するような環境(補償点までは光の強さが限定要因で、補償点以降CO2濃度や温度が限定要因になる)はないのでしょうか?(2011.12.11)

A:まず、「補償点」には光補償点以外にCO2補償点があります。問題文はおそらく光補償点を指していると推察されますが、厳密に言うとCO2補償点である可能性を排除はできません。光補償点であると考えた場合、次に問題になるのは光飽和点という概念です。理論的には、飽和カーブを示す曲線において縦軸の値が最大となる(飽和する)時の横軸の値は無限大です。酵素の化学反応速度論において、酵素活性の最大値を与える基質濃度は無限大になってしまうので、基質との親和性を表す時には酵素活性の最大値の半分の速度を与える基質濃度(Km)を使いますが、これも同じ理由によります。光飽和点というのは教科書には良く出てきますが、あまり意味のあるものではないのです。光補償点と光飽和点が一致するということは、理論的には、光を強くして言っても光補償点にはたどりつかない、と言っているのと同じです。光飽和点を、光の強さを変えても「ほとんど」光合成速度が変わらない点、とした場合でも、その場合、そのあたりの光光合成曲線の傾きはほぼ0のはずですから(というかそれが本来の定義)、その傾きがほぼ0の線と傾きが本当に0のX軸が交差する点として決まる光補償点がどこであるかを決めることは「ほとんど」不可能になります。
 結論としては光補償点が決まる以上は、光合成曲線はX軸を横切っているはずで、横切っている以上、光補償点よりも光を強くすると光合成速度は上がっているはずで、光が限定要因ではないということはあり得ないと思います。もっとも、光補償点付近で「ほぼ」光合成が飽和し、光以外の要因も光と同時に光合成の限定要因になる状況を考えることはできます。ただ、その場合にも光が限定要因でなくなる、というのは間違いになるのではないかと思います。(2011.12.11)

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Q:植物が光合成をより多くできるように、植物を一部だけ改良できるとすれば、どこをどのように改良しますか?実現不可能そうなことでもかまいません。(2011.11.19)

A:もし、改良できる部分があれば、何億年もの生命の歴史の中で改良されていると思いませんか?おそらく最適条件での植物の光合成の効率を上げることは不可能だと思います。一方で、本来は暖かい地方の植物であるイネを北海道で育てるとか、自然ではありえないような濃度の窒素肥料を与えて育てるとか、雑草を排除してほかの植物との競争を排除するとかなど、本来の環境とは違う環境で植物を育てる場合には、植物もその新しい環境に適応しているわけではないので、光合成の効率を上げることが可能でしょう。植物だけを考えるのではなく、植物と環境を一体として考えることが重要です。その場合、当然、どのような環境を考えるかによって、改良のポイントも異なってくることになります。(2011.11.19)


Q:はじめまして。単純興味で恐縮なのですが、ネットを漁ってみても言及している資料に行き着くことができなかったので質問させていただきます。水中で光合成をおこなう水生植物には、光合成に二酸化炭素ガスしか使用できないものと、二酸化炭素ガスと重炭酸イオンの双方を使用できるものがいるようなのですが、このような違いはどのような光合成の仕組みの違いによって生じているのでしょうか。また、同じように水中で光合成をおこなっている藻類やシアノバクテリアにも、ガスのみ使用できるものとイオンも使用できるものというような違いが存在するのでしょうか。(2011.9.7)

A:植物(C3植物)と一般的な藻類は、二酸化炭素の固定反応にルビスコという酵素を用います。その際、基質となるのは二酸化炭素分子であって重炭酸イオンではありません。ただし、細胞内には二酸化炭素と重炭酸イオンの間の化学反応を促進する炭酸脱水素酵素という酵素があり、二酸化炭素と重炭酸イオンは相互に変換されます。一方、藻類などでは、外界の二酸化炭素を細胞内に取り込み濃縮する機構を持っており、これは、二酸化炭素を輸送する酵素と重炭酸イオンを輸送する酵素などからなっています。おそらく、ご質問の違いは、光合成の違いというよりも、この輸送系の違いを反映しているのではないかと思います。(2011.9.7)


Q:葉緑体への分化についての質問なのですが、プラスチドからエチオプラストさらには葉緑体までのカスケードってまだ解明されてないですよね。(2011.9.6)

Q:プラスチドというのは色素体で葉緑体などの総称です。もしかしたらプロプラスチドと言いたかったのかな?いずれにせよ、これは、何を「解明」というかによります。プロプラスチド->エチオプラスト->葉緑体という流れはカスケードといえるでしょうから、解明されているとも言えます。その変化の過程なども詳細に記述されています。その変化のメカニズムについては分かっているところもわかっていないところもあります。(2011.9.6)


Q:高校で生物を教えております。大学は遠い昔に卒業したのですが、そのころから植物生理は一番苦手な部分です。植物そのものにはとても興味はあります。そこで光合成についてもっと知りたいと思っていたら「光合成とはなにか」という本を他の大学の先生から薦められ読みました。今まであやふやだった光合成の事がとてもわかりやすく書いてあり、すっきりしてうれしく思っています。そこで質問が2つあります
1.本では NADP+ + H+ → NADPH(Pがなくても同じと考えて良いのですよね)と表記されています。高校の教科書・参考書はそこが曖昧で、NADP + H2 → NADPH2 と書いてあるものも今でもあります。NADP+でなければならない理由は電子の受け渡しを考えれば納得いくのですが、そうすると、NADP+分子は、結果的にH+を1個引き抜くと考えるのですか?それとも2個ですか?その答えにもよるのですが、たとえば83ページの図4−2はNADHは2分子となっていますが、これは4分子ではないのでしょうか?
2.プロトンがチラコイド側から、ルーメン側に流れる仕組みについてです。本の120.121ページあたりについての質問ですが図4−14と、101ページの図4−8を併せて考えるとと、水1分子が分解されると、4個のプロトンがチラコイドからルーメン側に流れると考えて良いのでしょうか?高校の教科書などは電子伝達系において多量のプロトンが内側に流れプロトンの濃度差ができるとしか表記されていないのですが、定量的に数値はわかっていると考えていいのですか?つまりグルコース1分子作るためには、12分子の水が分解されることになるので、12×4=48個のプロトンが内側に流れ、それによってATPが18分子(教科書では光化学系で18分子となっている)作られる。本では1ATPは4プロトン・・・となっていますので、だいたいあっているように思いますが、(2011.9.2)

A:本をお読み頂きありがとうございます。さてご質問の方ですが。
1.電子伝達の際に重要なのは光によって動かされる電子であって、プロトンは、それに付随して適切な量比で反応することになります。プロトン自体は酸化還元反応とは無関係なので、酸化還元の反応では電子の数を考えないといけません。プロトンの方は、例えば場合によっては水のプロトンが使われることもあります。つまり、NADPHへの還元の際には、電子が2個取り込まれる、ということは常に正しいのですが、プロトンの方は、場合によっては反応相手の分子の中の増減によって相殺されることもあります。図4-2に関しては、これは解糖系の反応ですが、グリセルアルデヒド3-リン酸が1,3-ビスホスホグリセリン酸に酸化されます。しかし、この際に同時にリン酸基がくっつく反応も起こるので複雑です。しかし次の反応で、リン酸化酵素の働きによりATPの形でリン酸基が外れて3-ホスホグリセリン酸になります。そこで真ん中を飛ばしてグリセルアルデヒド3-リン酸と3-ホスホグリセリン酸の構造を比べると-Hの一つが-OHになっているだけの違いです。これは2電子分の酸化に相当しますから、できるのは1分子のNADPHであり、グルコースあたりではグリセルアルデヒド3-リン酸は2分子できますから、生じるNADPHは2分子になります。なれないと面倒かもしれませんが、プロトンはそもそも簡単に解離する場合もありますし、電子の酸化還元から考えた方が安全だと思います。
2.プロトンの数については「理論的に予想される」値は分かっているという段階だと思います。プロトンの数を正確に実測するのは案外大変です。理論的に「輸送される」プロトンの数は水1分子あたり4プロトンです。反応に従っていろいろなところでプロトンの解離や結合が起こりますが、それはとりあえず考えなくてもよいでしょう。ただし、1ATP/4プロトンというのは、125-126ページに書いてあるように生物種によっては成り立たない可能性があります。そもそもこの比が整数でない場合もありそうです。このあたりは、まだ完全には決着していない部分です。(2011.9.2)


Q:子供の自由研究の中で、疑問に思ったことを質問します。ちぎった葉っぱ(根がない状態)でも光合成は、行うのでしょうか?ちぎった直後なら行うのでしょうか?さらに、暗くした容器に葉っぱの状態で入れておいても呼吸を行うのでしょうか?例えば、暗くした容器にあさがおの葉っぱを数枚入れ何時間か放置すると石灰水を入れたときに普通の空気より白く濁るのでしょうか?濁るまでには長い時間がかかるのでしょうか?もし、葉っぱの状態では呼吸はしないのであれば実験の仕方を考えなければならないので、質問させていただきました。よろしくお願いします。(2011.8.28)

A:夏休みをとっていたものでお返事が遅くなりました。
 1.ちぎった葉っぱでもしばらくの間は光合成をします。ただ、光合成をするためには気孔を開いて二酸化炭素を取り込む必要がありますが、開いた気孔からは水が蒸散していきますので、葉がしおれてしまいます。そうすると気孔を閉じますので、光合成の速度は非常に遅くなってしまいます。植物の種類にもよりますが、しおれる前に石灰水で検出できる程度の光合成をさせることは可能だと思います。まずは10分程度で試してみてはいかがでしょうか。葉柄の部分を水にさしておけば、もう少し長く光合成が持続します。なお、光合成をさせるためには光がある程度強い必要がありますが、それによって葉っぱが熱せられないように注意する必要があります。
 2.暗くした状態では葉っぱも呼吸を行います。ただし、通常、光合成の速度よりも呼吸の速度は遅いので、二酸化炭素濃度の変化をみるのには、光合成の実験よりもやや長い時間が必要です。なお、空気中の酸素濃度自体は二酸化炭素よりも非常に高いので、呼吸自体は気孔が閉じていても持続しますが、葉からの二酸化炭素の放出は気孔が閉じると遅くなるので、やはり、葉をちぎって長く置くと呼吸を観察しづらくなるでしょう。例えば1時間放置すれば、充分石灰水で呼吸を検出することはできると思います。(2011.8.31)


Q:突然メールでの質問お許しください。私は、78歳の市井の一老人です。現役時代は、電子材料関連の仕事をしておりました。定年後は、中学生の理科の実験など手伝って余暇を潰しております。その様な中で、カイワレ大根の種を水道水およびマイナス100ミリボルト程の電界を形成した水道水(いずれも肥料などは未添加)に播種して成長を観察しました。場所はカーテンで締め切った光の直接入らない部屋の中で行い、気温は15度前後(1月でした)(結果の写真をもしアドレスが分かればお送りしたいのですが)ブランクの場合は発芽も遅く、発芽率も低い状態でいたが、電界下では2日ほどで100%発芽しました、茎も一週間で10センチほどになり早いようです。これとは別に、樹木や草の幹と大地間をアースしますと、+50mVほど電位が観測され、花のつぼみもしぼんでしまう事も観測され、種のおかれた電界によって植物の光合成が大きな影響を受けるように印象を受けたしだいです。電界と植物の生長に関しては色々と文献が発表されていますが、それらはすべて10ボルトくらいの大きな電圧が印加されたような場合です。私が実験しましたのは、100mV前後の弱い電界での実験です。このような実験結果はどのように光合成の原理で説明できるのでしょうか。ご教示いただければ幸いです。お伺い申し上げます。(2011.8.22)

A:どことどこの間の電位差なのかがわかりませんので、具体的なことがわかりませんが、いずれにせよ、光が直接入らない室内での実験ということですから、光合成とは無関係だと思います。光合成にはエネルギーとして光が必要ですから、暗い室内では電位差のあるなしに関わらず光合成の速度は非常に低いと思います。また、花のつぼみがしぼむのも、通常は光合成とは関係ないと思います。(2011.8.22)

Q:早速のご返事ありがとうございました。先生ご指摘のどことどこの電位かという件ですが、葉面と培地間および幹と培地間の電位です。葉面と培地の間の電位については、生物のご専門の方々が既にご研究されて色々とご発表になっており、WEB上で見る事が出来ます。幹と培地間については、この電位が地震と関係が有るという事で日本各地の方々が毎日測定されてWEB上にその結果を発表されています。関東地区では、"地震予知 生体電位 八街市"の方のデータを""内のキーワードで索引してみる事が出来ます。葉面でも幹でも培地間に電位が生じており、日の出とともに電位は上昇し、昼過ぎには下降に転じ日没にはほとんど零近くなり翌朝まで安定した値となります。この現象は、光によって植物に含まれう水が電子を引き抜かれていく様子を示しておるものと私は解釈いたしております。光合成では水が電子供与体となるとされております。この電子供与も光の作用無くしては自然界では起こらないようです。私は、この水の電子供与を光ではなく分極性陽電極による電気2重層でも起こるという事について先生のご見解を伺いたかったのです。この現象は、外部電極によっても簡単に起こるようです。(2011.8.26)

A:ご質問の趣旨がわかりづらいのですが、「植物において水の電子供与が光によらずに起こるか」というご質問でしょうか。そうであるとすれば、その前に書いていらっしゃる通り、生物現象として水の分解ができるのは光合成だけであり、光の存在なくしては水が電子供与体となることはありません。
 一方、何らかの人工的な電極によって水からの電子供与が可能か、というご質問でしたら、それは可能です。ただし、植物はそのような電極は持っておりません。
 なお、一般論として申し添えますが、抵抗がある程度大きい2点間に電位差が生じることは、特に内部に電子伝達(起電力)を持たずともよく見られます。また、その電位差は、2点間の抵抗の値の変動によって変化します。これは、電子材料関係のお仕事をされていたのであればよくご存じだと思います。一方、植物体には多くに水が含まれ、その水の量は、環境条件によって変動し結果として植物体の抵抗値もやはり変動するでしょう。ご指摘の現象は、起電力の変化ではなく、抵抗値の変化によるものであると考えた方が自然のように思います。(2011.8.31)


Q:柚子の葉っぱは、たてに2枚並んだような不思議な形をしていますが、何か光合成をするうえでの特殊な理由があるのですか?(2011.8.21)

A:答えとしては、光合成をするうえでの直接的な「理由」はないと思います。以下、少し難しくなりますが少し説明を。
 植物の葉っぱの形は、種類によって色々ですが、共通点は平べったいことです。生き物の形にはそのような「多様性」と「共通性」がよく見られます。そして、共通性、つまりどの植物でも同じになっているような性質は、光合成のような基本的な機能を反映しています。つまり、どんな植物にも光合成は必要で、光合成には光が必要です。その光を効率よく集めるためには平たい形が有利になり、そのためほとんどの葉っぱは平たくなるわけです。一方で、多様性は、それぞれの植物がおかれたまわりの色々な様子(環境)を反映しています。円形だったり、楕円形だったり、手のひら型だったり、2枚並んだようだったりする平面的な葉の形は、光合成のようなどの植物にも共通の機能によって決まっているのではなく、例えばこの枝の付き方の場合はこのような形が有利だとか、雨が多い所ではこう、あるいは風が強いとああ、といったように、それぞれのおかれた環境によって少しずつ変化しているのです。この「環境」には、枝の付き方のような植物自身の生き方もありますし、雨風といった気象環境もありますし、場合によっては他の動物・植物との関わり方という生物の作る環境もあります。では、具体的にたてに2枚並んだような葉っぱが、どのような環境を反映しているか、というのは僕にもわかりません。このような質問には「正解」というものはなく、一人ひとりが考えてみることが重要なのだと思います。(2011.8.21)


Q:光合成をする生物に共通するタンパク質や蛋白質複合体、酵素について調べています。現在、Rubis-co などの炭酸同化に関わる酵素、鉄-硫黄クラスターを持つタンパク質がその候補として挙がってますが、他にほかにどのようなタンパク質が挙げられますか?また、テキストではクロロフィルなどの色素は、それ単体ではなく、タンパク質と結合している形で存在しているようなのですが、それらの役割とは、いったいどのようなものなのでしょうか?(2011.8.11)

A:光合成関連のタンパク質は、みな光合成生物に共通だと思いますが・・・。当然光化学系のタンパク質などは挙げられると思います。後半は質問の意味がわかりませんでした。「それらの役割」の「それら」というのは色素のことですか?そうだとすると当然その役割は光を吸収することになります。それとも「タンパク質」のことですか?そうだとすると、色素やその他の電子伝達成分などを適切に配置することが役割です。ただし、タンパク質自体の一部が電子伝達をする場合などがありますから、一概には言えません。「テキストでは」となっていますが、実習か何かの調べ物ですか?やはり調べる時には、きちんとした教科書で勉強すべきかと思います。学部学生でしたら「光合成の科学」ぐらいがよいと思います。教科書については、「光合成の教科書」をご覧ください。(2011.8.11)


Q:電子伝達系で、実質電子が閉じた回路を移動するだけのものを循環的光リン酸であると聞きました。 また、緑色硫黄光合成菌や高等植物などの光化学系 1 を持つ生物は、還元力が十分な時、電子で立つ軽を最後まで行わず、環状電子伝達系を用いて、ATP を大量に合成するとききました。この循環光リン酸化と環状電子伝達系というのは同じものなのでしょうか?もし違うのであれば、環状電子伝達系とはどういうものなのでしょうか?(2011.8.10)

A:一般的には循環的光リン酸化は循環的(環状)電子伝達によっておるといってよいと思います。ただし、例えばストレス条件では光化学系2においてもシトクロムb559を経由する環状の電子伝達が起こるとされており、これなども環状電子伝達と呼ばれることがありますが、ATP合成は起こらないので、光リン酸化ではありません。(2011.8.10)


Q:現在、紅色光合成細菌の電子伝達系について調べております。紅色光合成細菌の電子伝達系は、P780 の励起によってはじまり、チトクロム c1 がそれに電子を返すことで完結しますが、 その間の各素反応で一番速度が遅く、この系全体の律速反応になっている反応は一体どれになりますか?逆反応を防ぐために、光化学中心反応系での反応が一番早いようなので、最低限それではないようなのですが。(2011.8.9)

A:僕自身は光合成細菌を扱っていないので、実際のデータは知りません。ただ、紅色光合成細菌は反応中心とシトクロムbc1複合体の間でサイクリック電子伝達をしていると思います。酸素発生型の電子伝達において、反応の律速段階はシトクロムbf複合体のキノン酸化で、その次に遅いのが酸素発生系におけるS状態の進行(の内の一段階)であることを考えると、酸素発生をしない紅色光合成細菌においてもシトクロムbc1複合体におけるキノンの酸化が律速段階になっている可能性が高いように思います。(2011.8.9)


Q:クロロフィルの色について、高校の生物の教科書や資料集などには、クロロフィルa(青緑色)、クロロフィルb(黄緑色)とありますが、クロロフィルcについては色が書かれていません。クロロフィルcは何色と言ったらいいのでしょうか。(2011.7.29)

A:見た目の色というのは、色素の濃度によって大きく違いますので、実は、青緑色、黄緑色といってもあまり意味がありません。クロロフィルaも薄い溶液すると黄緑色に見えます。なので言葉で表現する代わりに、植物学会のサイトの中の村上先生が書かれた研究紹介のページhttp://bsj.or.jp/topics/02/に、様々な色素の溶液の写真が載っていますのでそれをご覧になるのが一番だと思います。ただ、この場合でも、濃さを変えると色合いは大きく変化します。(2011.7.30)


Q:私は植物が太陽系とは異なる惑星系でどのように進化するのかということに興味をもっております。例えば、私たちの天の川銀河には、太陽よりも温度の低い星が主に占めており、このような低い温度の星は可視光ではなく、赤外線で明るく輝いています。このような低い温度の星の周りでも、地球植物の「光合成」が同じようにできるのかが知りたいと考えています。一方で、最近クロロフィルdやクロロフィルfのような近赤外線に吸収ピークをもつ新しい種類のクロロフィルが発見されており、このようなクロロフィルがあれば、低い温度の星の周りでも光合成が可能であるかもしれないと考えています。質問として、
1. クロロフィルdは還元電位を調整して、低いエネルギーの光を吸収しているようですが、原理的にどの程度まで還元電位を調整することができるのでしょうか?
2. クロロフィルaもクロロフィルdのように、還元電位の調整機構はあるのでしょうか?(2011.7.21)

A:光合成で働く色素には2種類あり、一つは光エネルギーの吸収に働くアンテナ(集光性)色素、もう一つは、励起エネルギーを受け取って酸化還元反応を起こし電子受容体に電子を渡す反応中心色素です。集光性色素は光を吸収してエネルギーを反応中心色素に渡すだけなので、酸化還元の反応は起こしません。したがって重要なのは酸化還元電位ではなく、エネルギー順位(=一番長波長側の吸収の波長)です。励起エネルギーは集光性色素から反応中心色素に受け渡されることになりますから、エネルギー順位は反応中心色素の方が集光性色素より低い必要があります。したがって、反応中心色素がどれだけ低いエネルギー順位を持っているのか、という点が重要になってきます。一般的に、生体内の色素は有機溶媒中の色素に比べて波長が長波長によっており、これはタンパク質と色素の配位結合によります。通常は20 nm程度のシフトですが、同じ複合体に結合したクロロフィルの間でもシフトの程度はさまざまです。さらに、反応中心色素においては、二量体構造をとることにより、さらに最大20 nm程度吸収波長が長波長側へシフトしています。これはクロロフィルaの場合もクロロフィルdの場合も定性的には同じです。もちろん、もともとクロロフィルdの方がより長波長の光を吸収できますので、シフトした後の吸収波長もクロロフィルdの方が長波長になりますが、シフトの幅はどちらの場合も有機溶媒中に比べて数十nm程度ではないかと思います。(2011.7.21)


Q:光合成とは、直接関係がないかもしれませんが、教えてください。原発事故で、各地で、ヒマワリの栽培が伝えられています。放射性物質をヒマワリが吸収(?)するというのは、どういう仕組みでしょうか?そもそも本当なのでしょうか?(2011.6.29)

A:別に放射性物質を選んで吸収するわけではありません。植物はいろいろなイオンを根から吸収しますから、その際に放射性物質があれば一緒に吸収することはあります。その際に、どれだけの量を吸収するかは植物の種類とイオンの種類によってさまざまだと思いますが、イオンは蒸散流により吸い上げられますから、蒸散の盛んな植物(例えばヒマワリ)は、最初に試してみるには悪くないと思います。特定のイオンをより効率的に吸い上げる植物もあるかもしれませんし、ヒマワリが最適かどうかはわかりません。実際に、そのような方法によって実用レベルの放射性物質除去効果があるかどうかは、これから調べてみないとわからないと思います。(2011.6.30)


Q:サニーレタスの赤色の色素であるアントシアニンが出来るメカニズムについて教えてください。出来れば、紫外線や青色の光がどの様に関係しているのかまで知りたいのですが(2011.6.23)

A:メカニズムというのは生合成経路のことでしょうかね?アントシアニンは光合成色素ではないので、僕の専門外ですが・・・。生合成はフェノール化合物を出発材料にして、多段階の酵素反応を経て最後に配糖体となります。合成の調節は、生合成系酵素の複数の遺伝子の発現を転写因子で一括して調節しているようですが、光による直接的な調節の様式はよく知りません。ただし、生理的には、紫外線照射によってアントシアン含量が上昇するという報告をよく聞きます。(2011.6.24)


Q:光合成色素のページのカロテノイドのβカロテンの4行目に「クロロフィルがエネルギーを吸収した状態におかれると・・・」とありますが、このときのクロロフィルはアンテナの役割をする光捕集色素が光エネルギーを吸収した状態にあるのか、それとも反応中心色素が蛍光を吸収した状態のどちらなのでしょうか。(2011.6.18)

A:ご指摘の箇所は、アンテナとして働くクロロフィルを想定して書いておりました。ただし、実際には反応中心色素においても三重項クロロフィルが生じる場合があり、βカロテンはその場合にも三重項の消去に働きます。従いまして、βカロテンは、アンテナ・反応中心によらず、一般的にクロロフィルの三重項状態の消去に機能すると言えます。
 なお、「反応中心色素が蛍光を吸収した状態」とあるのは「反応中心色素がアンテナクロロフィルからエネルギーを受け取った状態」という意味でしょうね。色素間の励起エネルギー移動において、励起された色素の蛍光スペクトルとエネルギーを受け取る色素の吸収スペクトルの重なりが大きいときにエネルギー移動の確率が大きくなるのは確かなのですが、エネルギー移動に際して実際に蛍光が出るわけではありません。(2011.6.18)


Q:海藻の光合成について質問があります。マクサを使った実験をしており内容は、日積算光量(mol/m2/day)、温度(℃)、栄養塩(μg-at./L)の条件は一緒で、光の照射時間(明:暗)を変えた場合、マクサにどのような影響が現れるかというものです。下記のような条件で試験区を9試験区設け、光の照射時間(明:暗)を変更しました。
●日積算光量(2、3、4mol/m2/day)、温度(20、25、30℃)、栄養塩(調温自然海水の掛け流し:分析値約3.5μg-at./L)
●光の照射時間(明6h:暗18h)、(明12h:12h)
3週間育成した結果、栄養塩が低かったせいか全試験区で黄化や枯死が発生しましたが、枯死発生率(黄化も含む)を比較すると光の照射時間が長かった明12hの方が枯死発生率が高いデータとなりました。これは、栄養塩の少ない状況で明12hの方が、明6hよりも倍の時間光合成を行っていたからでしょうか。ただ疑問に思うのは、今回のように栄養塩が少ない状況の中、明6hの時間あたりの光量は、明12hよりも高いはずなので、明6hの光合成反応の方が高くなり、それに伴う栄養塩も必要となることから、海藻に与えるダメージも大きくなるのではないかと思うのですが、結果は、明12hの方が枯死発生率が高くなるというデータでした。このような結果に至った要因について、何か参考となる情報があれば教えて下さい。宜しくお願いします。(2011.6.14)

A:おそらく、光合成が関与しているかどうかを調べるためには、単に枯れるかどうかだけでなく、光合成の速度を測る必要があるのではないかと思います。確かに藻類を含む植物の生育は光合成に依存しますので、生育が悪かった場合、その原因が光合成にある可能性は十分にあります。しかし、全ての条件で枯死が起こるような実験条件では、そもそも実験が正常に行なわれたのかどうかがわかりません。やはり、きちんとした対照実験は研究の原点ですので、少なくとも一つの実験条件では正常に生育することを確認したうえで、実験条件をいろいろふることが必要だと思います。3週間の実験の前にどのような生育条件だったかがわかりませんが、光合成以前に、生育環境の変化が枯死につながった可能性も十分にあるように思います。(2011.6.14)


Q:今、論文を読みながら勉強しています。 (論文名:Physiological characterization of ‘stay green’ wheat cultivars during the grain filling stage under field growing conditions) その中で、光合成に関する用語がたくさん出てきて、なかなか理解が進まないのですが、文中に、「高い非光化学的クエンチングの値は、植物の光阻害を防ぐために、吸収した過剰な光を消散させるのだろう」という一節があるのですが(英文を翻訳したので日本語が適当でないかもしれません)、非光化学的クエンチングって、熱放散を表す指標みたいなものですよね?熱放散によって光阻害も防げるのでしょうか。次に「非光化学的クエンチングは主に光合成の電子伝達によって発生するチラコイドのpHの変化の大きさによって支配され、光子が吸収される量が光合成の必要条件を上回ったとき、光合成の電子伝達をフィードバック管理することができる」とありました。(これも、日本語変な気がします…すみません)いまいち、この文章が理解できないのと、この働きから、カルビン回路でのより高いATPとNADPHの要求が、より高い光合成能力の維持につながるとあります。いま私が読んでいる論文は、緑葉の維持と、光合成の維持についてのものなのですが、非光化学的クエンチングが高いことで、なぜ光合成能力の維持につながるのか教えていただきたいです。私の中では、入ってきたエネルギーのうち、光化学に多くエネルギーが使われ、熱発散に少なくなるほうが光合成が維持できている気がするのです。(2011.5.19)

A:非光化学消光が熱放散の指標である、という理解は正しいと思います。おそらく問題は「光阻害」というものの理解にあるように思います。植物が吸収したエネルギーのうち、光合成に使われずに余ったエネルギーは、場合によっては植物(光合成系)に害を与えます。そのような状況の下では、その余ったエネルギーを安全な熱の形に変えることは、そのような害の抑制につながります。それが熱放散です。熱放散は、吸収したエネルギーを「無駄に」熱に変えてしまうわけですから、その意味では光合成の効率を下げます。しかし、光合成の効率を下げることによって光合成系が破壊されることを防ぐことができるのであれば、それは、光合成の維持につながるでしょう。問題なのは、「光合成の効率の低下」と「光合成系の破壊」のどちらにも「光阻害」という言葉が使われる点にあります。熱放散は短期的な光合成効率の低下をもたらしますが、まさにそのことによって光合成系の破壊を防いでいるのです。(2011.5.20)


Q:光合成関連質問です。
1. 海中の金/Auを始めとする重金属類を固定するような光合成をする海洋植物は、ありますか? 珊瑚はカルシュウム/Caを固定しています。
2. 珊瑚の遺伝子を組み替えて例えば金/Auを固定するような研究は可能でしょうか?(2011.5.18)

A:あまり光合成に関連しているようには思えませんが・・・。それはともかく、答えとしては、一般論としては難しいと思います。
1. 低濃度のものをある場所に高濃度に濃縮するためには、低濃度のものがその場所をたくさん流れなくてはなりません。海洋生態系全体では、そのような流れがあるととらえることはできますが、個々の生物での流れはさほど大きくありません。陸上植物の場合は、蒸散の形で細胞内の何倍もの水が1時間で入れ替わるような流れがありますから、水中生物に比べると重金属の集積などは起こりやすいでしょう。昔、ホテイアオイなど、葉の部分は空気中で、根が水中にある植物を使って、重金属の除去ができないか、という研究は行われていましたが、コスト面で難しかったようです。
2. サンゴはカルシウムを骨格として必要としているので、固定しているわけです。別に金が細胞内にあっても何の役にも立ちませんから、三語には金を細胞内に固定する仕組み自体がありません。もし金を固定させようと思ったら、そのための代謝系を1からすべて作り上げなくてはなりませんからやはり難しいでしょうね。ただ、カルシウムと化学的な性質が似ている同族元素を取り込ませる、などといったことは、もしかしたら取り込みシステムを多少変えることでできる可能性はあると思います。(2011.5.19)


Q:学校で光合成の勉強をしていた時にふと思ったのですけど、空気中の二酸化炭素の量が増えた場合、減った場合、植物が光合成をする量は変化するのでしょうか。(2011.5.1)

A:はい。変化します。光合成は二酸化炭素を材料にしますので、増えた場合は光合成をする量も増えますし、減った場合は光合成をする量も減ります。ただ、二酸化炭素が減った場合は、葉の気孔を開いて少しでも多くの二酸化炭素を取り入れようとしますし、増えた場合は気孔を閉じますので、実際の光合成量は、二酸化炭素の量の変化ほどには変化しませんけど。(2011.5.2)


Q:シアノバクテリアを使った遺伝子操作について質問させてください。よろしくお願いいたします。 トランスジェニック動物を作成するのと同じ要領で、豚の受精卵の前核にシアノバクテリアのDNA溶液を注入すれば、「一つ一つの細胞内に、シアノバクテリアと同様の物質が出現し、光合成をおこなう豚」を誕生させることはできるのでしょうか? 「シアノバクテリアのDNAのどの部分が光合成をするDNAなのか」は、まだすべて解明されいないと思いますので、とりあえず「シアノバクテリア全体のDNA(シアノバクテリア自体のDNA)」が溶けた溶液を、豚の受精卵の前核に注入したという仮定です。 レベルの低い質問で申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。(2011.3.26)

A:たとえば、人間の皮膚の細胞と心臓の細胞は全く別の働きをしていますが、同じゲノム(DNAの総体)を持っています。ということは、豚のDNAを入れたから豚になるわけではない、ということです。そもそも豚というのは「豚の細胞」という一種類の細胞からできているわけではないのですから。ゲノムのDNAのそれぞれの部分がどのように使われるか(DNAの発現)が、受精卵の段階から正しいステップを踏んで進めば、細胞が分裂し、それぞれの機能を持った細胞に分かれて(分化して)いって豚になります。DNAが全てシアノバクテリアに置き換えたとしても周りの細胞が豚では、ちゃんとしたシアノバクテリアになることはないでしょうし、豚とシアノバクテリアのDNAが混ざっているような状況では、豚にもシアノバクテリアにもならず死ぬだけだと思います。
 一方、たとえば、特定のシアノバクテリアの遺伝子を一つ、それも豚の遺伝子の発現と同じような発現をするように工夫をした遺伝子を、豚の細胞に入れれば、その遺伝子の働きを豚の細胞に再現することも可能でしょう。ただ、光合成の代謝を支える遺伝子の数は、おそらく最低でも数百になりますので、そのような形で遺伝子を入れることは困難です。さらには、光合成をするには細胞の状態がそれに適している必要があります。細胞の状態も全てシアノバクテリアと同じにした場合には、それはすでに豚ではなくなっているでしょうし。(2011.3.27)

Q:回答ありがとうございます。やはりゲノムが二つあると死んでしまうのですね。豚は真核生物、シアノバクテリアは原核生物なので、「豚のゲノムがシアノバクテリアのゲノムに"勝ち"、うまくシアノバクテリアを取り込むのでは?」と妄想してしましました。大昔にシアノバクテリアの祖先が原始的な真核生物に入り込み、その生物の核に自分のDNAの一部まで渡し、その生物(の遺伝子)の一部となった、というような神業(共生)を、どのようにしてシアノバクテリアの祖先は成し遂げたのか、また、どの位の期間をかけてそれを行ったのか、具体的に解明される日が待ち遠しいです。
 この「共生」に関する質問をさせてください。この大昔に起こった「共生」は、とある一つの細胞だけに起きて、現在地球に存在する植物すべての祖先をさかのぼると、その一つの細胞にたどり着くのか、または、その「共生」はあらゆる場所・あらゆる細胞で起こっていたのか。どちらなのでしょうか。よろしくお願いします。(2011.3.28)

A:原核生物のシアノバクテリアが共生して真核生物の藻類になったのは、おそらくただ一度の出来事であったのではないかと考えられています。もう一度あったのではないか、という説もありますが、確定的ではありません。一方、その後、真核生物の藻類が別の真核生物の共生する、という出来事は何度も繰り返して起こったと考えられています。何事も一番最初にやるのが大変ということでしょう。ですから、すべての植物は、シアノバクテリアまでさかのぼると1つの細胞にたどりつく可能性が高い、ということになると思います。(2011.3.29)


Q:光呼吸に関して質問があります。
1、光呼吸とは「ルビスコと酸素が反応して生じる2-ホスホグリコール酸をPGAに戻す反応であり、この際にATPや還元力、CO2の放出等エネルギーの無駄が生じる」ということですがルビスコが酸素と反応することで何をいくら得て、何をいくら失っているのでしょうか。
2、光呼吸の意味について仮説を立ててみました。仮に地球上に人類が誕生せず植物がもっと繁栄していたなら、その光合成能力を考えると大気中のCO2濃度は限りなく0に近い状態になっていたように思います。その環境で生き残るためにルビスコは酸素と反応し、光呼吸があると考えることは出来ないでしょうか。(2011.3.2)

A:光呼吸の反応式は
2RuBP + 3O2 + 2ATP + 還元型Fd → 3PGA + CO2 + 2ADP + 3Pi + 酸化型Fd + 2H2O
となります。RuBPというのは炭素を5個含む有機物、PGAは炭素を3個含む有機物ですから、2x5-3x3=1という計算で、炭素1個分の有機物が失われて二酸化炭素に戻ります。このほか、エネルギーとしてATPが2分子、還元力としてフェレドキシン(Fd)が1分子失われます。特に、何かを得ているわけではありません。
「その環境で生き残るために」というためには、生き残るのに有利でなくてはなりませんが、光呼吸により物質的に得るものがない、というのが問題点です。二酸化炭素は生じますが、これはそもそも自分の体だったものですから、それによって得をするわけではありません。強すぎる光の下での過剰なエネルギーを無駄遣いすることによってそのエネルギーが悪さをしないようにする、というのが現在考えられている一つの仮説です。(2011.3.6)


Q:ハウスでトマトを栽培している農家です。「高品質・多収=光合成産物を増やす」ということを考え、照度・温湿度・水・CO2の管理を試行錯誤しています。そこでお聞きしたいことがあります。
1.一般にCO2施用をする時、作物を問わず1500ppm以上与えても、それ以上光合成能力は向上しないといわれていますが理由が解りません。光・水・転流速度等、何か制限要因があるのでしょうか。
2.1の考え方とは反してトマトで8000ppmという高濃度施用で成果をあげている事例があるそうです。収量等詳しくは知らないのですが、超密植で元気に栽培出来ているそうです。また、「風と光合成」著者・矢吹萬壽にはカブラが9000ppmで300ppmに比べて20倍にも大きくなるという記述があるそうです。本当であれば試してみたいと思うのですが、一般に普及していないということは何か問題があるのでしょうか。また、CO2濃度を濃くしすぎると作物に障害が出るという人もいるのですが本当でしょうか。(2011.2.14)

A:1に関しては、その通りで、制限要因があるというのが答えになります。光が制限要因になるときもありますし、転流速度が制限要因になるときもあります。ただ、「作物を問わず」というのはどうでしょうか。植物の生育は、その種類と環境要因によって左右されます。例えば、光の明るさが異なれば、CO2が飽和する濃度も当然違ってきます。一般的にある濃度以上の二酸化炭素濃度で光合成が飽和する、というのは正しいと思いますが、それが、植物種によらず(環境条件にもよらず)1,500 ppmである、というのは信じられません。
 2については、実験室環境で、CO2濃度を確実に飽和させようと思った時は1%程度の濃度にするのが普通です。ですから、9,000 ppmというのはそれほど的外れな値ではないと思います。ただし、問題点が2つあります。飽和カーブというのは、濃度を上げていくと、最初は上げただけ変化しますが、やがて変化が鈍ってきて、濃度が高くなると、濃度をさらに上げてもなかなか変化しなくなる、というカーブです。CO2がただで手に入るなら、濃度をできるだけ上げてみるのもよいかもしれませんが、実用を考えると、わずかな効果のために必要以上にCO2濃度を上げることはかえって損になるでしょう。もう一つの問題は、植物の光合成が高いCO2濃度に応答して変化することで、気孔は閉じますから、濃度を上げる効果は一部打ち消されてしまいますし、光合成産物がたまると、光合成関連のタンパク質などを減らす、という応答もおこります。「障害」とは言えませんが、高いCO2濃度にさらすことによりCO2の効果の一部が打ち消されることは十分にあります。(2011.2.14)

Q:先程、質問した者です。早速の回答ありがとうございました。「作物を問わず」というのは言いすぎでした。CO2施用について調べていると農業分野ではおよそ1500ppmまでという場合が多いので間違った表現で書いてしまいました。云われる通り、通常10000ppmものCO2を施用するコストを考えると、どの程度の品質・収量の増加で利益が出るのか見極める必要があると思います。 回答の中で「植物の光合成が高いCO2濃度に応答して変化する」とはどういうことですか。HP内に記述があれば教えていただけないでしょうか。また、それによってなぜ気孔は閉じるのですか。
 それから先生はキュウリを使って光合成試験をしていたそうですが、キュウリの葉の光合成だけを考えた場合、光・温度・湿度・CO2・水分等どのような環境で光合成量が最大になるのでしょうか。また、同化産物を転流させて最高の収量を得るところまで考えた場合は最適環境はかなり変わってきますか。トマト栽培の参考にしたいので教えてください。(2011.2.14)

A:光合成の応答は、大きく分けて2種類あり、ひとつは気孔の閉鎖です。植物を高CO2濃度の環境におきますと、気孔が閉じます。CO2の濃度を感知して気孔を閉じるわけですが、そのメカニズムについては現在、盛んに研究がおこなわれています。「なぜ」というのが、「何の利益があって」という意味でしたら、おそらく蒸散を抑えるためだと思います。植物にとって水は生命線なので、十分にCO2を取り込める環境では、気孔を閉じて水の蒸散を抑えるのでしょう。もう一つは、光合成関連タンパク質の量を減らすという応答で、これも、光合成の産物が溜まってくると、それ以上に光合成をすることを避ける、という意味合いがあると解釈できます。植物は、人間のために光合成をしているのではないので、生育に必要とする以上のことはしないのが普通です。
 植物がどのような環境条件で光合成を最大化するか、という問題は一筋縄ではいきません。なぜなら、生育環境によって植物自体が変化するからです。強い光で育てた植物では強い光の下での光合成速度は高くなっても、弱い光の下では、弱い光で育てた植物よりも光合成が低くなることがあります。一般的な作物であれば、直射日光の下で育たないということはあまりないので、その条件で育てれば、直射日光の強さ(2000 μmol/m2/s)までは光は強いほうが光合成速度は上がるでしょう。温度の場合は、キュウリやトマトなら30℃ぐらいまでは高いほうが光合成速度は上がると思います。ただ、これらは、普通によく育つ条件が一番よい、というにすぎませんから、あまり参考にはならないと思います。CO2の濃度を上げた場合、同化産物をイモに蓄えるような植物では、生育がよくなる場合が多いといわれています。これは同化産物が積極的に転流されるため、上で述べた光合成タンパク質の抑制などが起こらず、光合成が抑制されないためだと考えられています。
 HP上には、まとめて解説したページはないのですが、3年前に出した「光合成とはなにか」には光合成速度と効率を解説した章があります。(2011.2.15)

Q:回答ありがとうございます。よく解りました。そこで疑問がひとつ湧いてきました。進化の過程で水辺から遠く離れた植物はCO2がたっぷりある状態では気孔を閉じて水分の蒸散を抑えようとする行動は理解できるのですが、水分が十分ある場所で進化してきた植物は同じように気孔を閉じるのでしょうか。(2011.2.16)

A:これは面白い点ですね。僕自身知識としては知りません。茎を水が上がっていくのにもある程度の抵抗がありますから、蒸散があまりに盛んだと根には十分に水が供給されたとしても、葉は水不足になる場合があるでしょう。ですから、やはり気孔の制御は行なわれるのではないでしょうか。一方、水草や、滝のそばで水しぶきを常に浴びているようなところシダなど、葉に水が供給される環境に適応した植物の場合は、そもそも気孔が退化してなくなるようです。(2011.2.17)

Q:回答ありがとうございます。昨日、「光合成とはなにか」を買ってきました。まず、理解しやすいところから読んでいます。いつも何気に見ている葉っぱでこんなすごいことが起こっているんだと思うとワクワクした気持ちになってきます。また、疑問に思ったことがあれば質問させていただきたいと思います。(2011.2.17)

A:お買い上げありがとうございます・・・。何か分からない点がありましたらいつでもどうぞ。(2011.2.18)


Q:やさしい農業実験(農業図書)という本に見かけの光合成速度を測定する方法がついています。方法は次の通りです。まずA液(0.2モルホウ酸溶液9ml+0.05モルホウ砂溶液1ml+フェノールレッド少量)、B液(0.2モルホウ酸溶液8ml+0.05モルホウ砂溶液2ml+フェノールレッド少量)、C液(0.1ミリモル炭酸水素ナトリウム溶液10ml+フェノールレッド少量)の3つを作ります。ゴム栓の穴に植物の葉をはさみ、C液の入った試験管内にふたをする。しばらくするとC液の色が濃くなりA液の色と同じになるのでストップウォッチを押す。さらにB液の色になったらストップウォッチをとめ時間を求める。二酸化炭素mg1/葉面積/時間を計算する。AからBになるまでの二酸化炭素吸収量は0.0034mgに相当する。とあります。あまり化学に詳しくないのでこれでどのようにして光合成速度がわかるのかよくわかりません。仕組みを教えてください。
 今度、この方法で光合成速度を測定することになりました。その際、結果を簡単にレポート1枚でまとめるのですが、枚数が紙面に余裕がありません。それでもこの実験方法を具体的に記載すべきでしょうか。それとも〜法など実験に名称があったらそれでもよいのでしょうか。合わせて教えてください。(2011.2.7)

A:ホウ砂はホウ酸のナトリウム塩です。ホウ酸は弱酸、水酸化ナトリウムは強塩基です。「弱酸と強塩基の塩」に弱酸を加えると、いわゆる緩衝液になって、pHが安定します。A液とB液は、この緩衝作用を利用してpHの少し異なる標準液を作っていることになります。C液の炭酸水素ナトリウム溶液は弱塩基です。二酸化炭素の水溶液は炭酸で酸性を示しますから、炭酸ナトリウムに二酸化炭素を加えていくと、その量に応じてpHが酸性に動いていきます。これをpH指示薬であるフェノールレッドで調べ、A液のpHからB液のpHに変わるまでの時間を測定していることになります。どのぐらいの二酸化炭素が加わるとそれだけのpH変化が起こるかはあらかじめ調べておくことができますから、その換算係数(おそらく、0.0034 mgという数値)を使えば二酸化炭素量に変換することができます。
 レポートの書き方は、先生の方針にもよると思いますが、一般的には方法について意味のわかる最低限の記述は必要だと思います。余裕がなくとも、二酸化炭素の濃度変化をpH変化として検出した、という事実は載せた方がよいのではないかと思います。(2011.2.7)

Q:昨日、見かけの光合成速度の測定について質問したものです。化学が苦手なので追加で質問します。この実験の場合、C液は葉から出てくる二酸化炭素が溶け込むため次第に酸性になっていくということでしょうか。光合成は二酸化炭素を吸収して酸素を出す反応ですが、なぜ二酸化炭素が溶け込むのでしょうか。またフェノールレッドは酸性で黄色、アルカリになると赤くなるのでC液はだんだん赤みが薄れていくのでしょうか。つまりA液の方がB液より赤いということですか。お手数ですが分かりやすくご説明お願いします。(2011.2.8)

A:すみません。わかりづらかったですね。上で説明したのは、pHが変化する原理の説明です。二酸化炭素が溶け込む方向の反応のほうがわかりやすいと思ったので・・・。実際の実験においては光合成によって二酸化炭素は吸収されます。時間が十分あれば、炭酸水素ナトリウム溶液中の二酸化炭素と、試験管の中の空気の中の二酸化炭素は平衡になる(行き来の結果、ちょうど釣り合った状態になる)ので、空気中の二酸化炭素濃度が低下すると、炭酸水素ナトリウム溶液から二酸化炭素が放出されて、溶液のpHは塩基性になるはずです。実際に実験はもうやったのでしょうかね。原理は簡単ですが、案外、実際に実験をするとなると難しいようにも思います。(2011.2.9)


Q:往年の生物学徒の50歳のオヤジです。毎晩「バイオディバーシティー・シリーズ 3 藻類の多様性と系統」を数頁読んで、独学しています。分類の問題かもしれませんが;同書では、藻類の定義を『酸素を発生する光合成を行う生物の中からコケ植物・シダ植物、種子植物を除いた全て』としています。しかし、同書201ページには、「不等毛植物門の黄金色藻綱のスプメラ属・アントフィサ属は葉緑体を失ったとされる」と記されています。葉緑体がなければ『酸素を発生する光合成を行う…』という上記の藻類の定義から離れるわけで、スプメラ属・アントフィサ属は藻類ではないと思います。藻類の不等毛植物門の黄金色藻綱に含まれるという分類には、無理があるのではないでしょうか?(2011.1.31)

A:おっしゃるように、2か所の記述には矛盾がありますね。少なくとも、どちらかの記述を変更する必要があるでしょう。ただ、分類は問題を抱えていて、確定したものではありません。昔と違って、ゲノムのDNA配列を丸ごと比較するというようなことまでできるようになったものですから、なおさら問題が先鋭化しています。すなわち、DNAの配列などからたどることができる系統関係と、機能の上での類似性のどちらを重要視するか、という問題です。機能を重視すると、光合成を失ったものは藻類ではなくなりますが、その場合、葉緑体があるかどうかだけが異なるような近縁のものでも、別の分類群に入ることになります。この考えに立てば、寄生植物は植物として扱わないことになりますが、世の中は白黒に分断できるものではなく、わずかに光合成をする植物などもあるようですから、境界を引くことは簡単ではありません。マラリア原虫はもちろん光合成はしませんが、葉緑体の名残を細胞内にとどめています。一方、系統関係だけを重視すれば、そのような問題はなくなる一方、機能的には全く似ていない生物が同じ分類群に入ります。寄生生物と光合成生物を同じに扱うのは、それはそれで勇気が要ります。さらに、上述の藻類の定義の場合、原核生物のシアノバクテリアは藻類に分類されますが、これは、生物を大きく、真核生物と原核生物に分けるという、分類の大元の考え方とは相いれません。シアノバクテリアは、原核生物の分類体系では藍色細菌門、植物分類体系では藍色植物門になりますから、蝙蝠のような感じですね。「藻類」という言葉に関しても分類体系の用語ではなく一種の慣用名である、というのが現在の方向のようです。光合成生物の分類については結論は出ていないのですが、機能を客観的、定量的に判断することは難しいので、徐々にゲノム配列などによって分類を定義する方向に動いていくのではないかと思います。(2011.2.1)


Q:学術的な話を知ることができるので、いつも楽しく拝読させていただいております。今日は初めて質問させていただきます。『植物の私生活』(デービッド・アッテンボロー著/山と渓谷社)に「林床に生える植物の葉は乏しい光を最大限に活用するため、いろいろ工夫している。(中略)ベゴニアの葉の裏面は赤い色素でおおわれていて、葉を通り抜けようとする光を反射させ、光を再利用する」とありました。葉の中を透過する緑色の光の反射は葉の裏の海綿状組織で行われているかと思いますが、葉裏が赤い(アントシアニンが含まれている?)とさらに反射に有利に働くのでしょうか。また、赤い葉は赤以外の光を吸収するということなので上記のベゴニアの場合、葉の裏側で緑色の光を反射ではなく吸収しているのではないか、とも思ったのですが、ご見解をお聞かせいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。(2011.1.16)

A:結論から申し上げますと、僕にはよくわかりません。アントシアンは、通常表皮細胞の液胞などに存在すると思うのですが、葉裏の表皮細胞にアントシアンがあるとすれば、海綿状組織を通り抜けたさらに裏側で、そこに色素があっても、それほど何かに影響があるような気がしません。また、おっしゃるように赤い色素は緑色の光を吸収しているでしょうから、葉を通ってきたわずかな緑色の光を有効利用するのに赤い色素で吸収することが役立つようにも思えません。すみません。お役にたてないようです。(2011.1.18)