光合成の質問2010年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:一応チェックはしたんですが、もし重複した質問でしたらすみません。オオカナダモで光合成と浸透圧の関係を調べる実験を行いました。内容は以下の通りです。
・条件を変えたオオカナダモを25℃の強い蛍光灯の光を当てた部屋に置く。
・1日後にスクロース溶液に3分浸してから顕微鏡で観察し、原形質分離しているスクロース溶液の濃度から浸透圧と、光合成の関係を考察する。
オオカナダモのそれぞれの条件は以下のとおり
1.水槽から取ってきたオオカナダモを水槽の水を入れて部屋に置く
2.1に光を出来る限り光を通さないよう分厚い布を何重にもかけて部屋に置く
3.1を水槽の水ではなく純粋に炭酸水素ナトリウムを水溶液が1%になるようにした溶液に入れて部屋に置く。
4.3に光を出来る限り光を通さないよう分厚い布を何重にもかけて部屋に置く
結果は
1→13%、2→8%以下、3→18%、4→15%(%はそれぞれが原形質分離をしたときのスクロース溶液の濃度)
となりました。そこでなんですが、光合成によって作られたデンプンは水にとけないので浸透圧は変化しないと思っていたのですが、あっさりとその仮定が覆されてしまいました。なぜこのような結果になったのでしょうか?仮定そのものが間違っているのでしょうか。 また、二酸化炭素の量を炭酸水素ナトリウムによって変化させましたが、二酸化炭素を加えた3や4が1や2よりも浸透圧が高いのは、やはり明反応による酵素やデンプンの合成が行われているのでしょうか?とても答えにくい質問だとは思いますが、出来る限り早くお答えいただければ幸いです。(2010.12.20)

A:面白い実験ですね。僕自身、このような実験をやったことはないので正解は知りません。ただ、考えられる筋道と、それを証明するための実験系を考えてみるぐらいです。 まず、光合成産物が最初にたまるのは葉緑体ですが、原形質分離で観察しているのは細胞質です。葉緑体のでんぷん蓄積と、細胞質の浸透圧は直接は関係しないかもしれません。 次に、光合成産物としてデンプンをためるということは、デンプンだけをためることは意味しません。デンプン合成の途中の経路の産物、たとえば三炭糖リン酸などの濃度も、光照射時には上昇する可能性があります。 3番目に、炭酸水素ナトリウムの添加効果は、光合成に対する影響としても解釈可能ですが、塩を溶かせばその分浸透圧が上がります。外部の浸透圧が上がった場合に、細胞内の浸透圧調整物質により細胞の浸透圧を上げることはよくありますので、その可能性を確かめるために、同じ濃度の硫酸ナトリウムや塩化ナトリウムではどうなるかを実験することが必要かもしれません。 僕に考え付くのはこのぐらいですが・・・。(2010.12.20)


Q:初めて質問させて頂きます。確認はしたのですが、既出だったらすみません。光合成の定性実験でオオカナダモを使用した際、緑の光からも光合成が見られました。原因として光の吸収領域が大きかったためと考えられたのですが、オオカナダモ自体が緑の光も光合成可能なのかとも思いました。そこで質問なのですが、オオカナダモはクロロフィル以外の色素は存在するのでしょうか?(2010.12.9)

A:オオカナダモは光合成色素としてクロロフィル以外にカロテノイドを含むはずですが、カロテノイドも緑色の領域の吸収はそれほど大きくありません。ただ、よく見るクロロフィルの吸収スペクトルはあくまで抽出した色素の溶液のスペクトルです。実際の葉では、散乱が大きく、光の経路が葉の中であちこちに曲げられて長い距離を通過しますから、緑色の光でもかなり吸収されます。陸上植物の葉の緑色の光の吸収率は80−90%に達します。オオカナダモではこれよりも低いことが予想されますが、それでも緑色の光の過半は吸収するのではないでしょうか。(2010.12.9)


Q:こんにちわ。前回の質問,ご丁寧にお答えいただき,ありがとうございました。そこで,さっそく質問があるのですが,pHについてです。Plant,Cell and Environmentの論文で,クラミドモナスを用いた実験ですが,「準最適pHの環境下(1.5 4 5 6-7)でだけ,循環的電子伝達,クロロレスピレーション,ステート遷移のような電子伝達が誘導されるという結果が,PSIIの蛍光測定から明らかにされた」と書いてありました。いわゆる,酸性pHでだけ,この様な,システムが働くということです。外界のプロトン濃度が,何に直接影響を与えているのか,考察していても答えが出てきませんでした。また,なぜこのようなシステムが,酸性側のpHで働くのか調べてみましたが,全く出ていませんでした。何かご存知でしたら,ご教示いただけると幸いです。(2010.10.25)

A:好酸性の微生物の場合、中性の細胞内と酸性の外界の間のプロトン濃度勾配を保つため、プロトンATPaseが働き、ATPを消費するので、循環的電子伝達を駆動してATPを合成する例が知られています。ただ、クラミドモナスの場合はこれとは違うように思えます。「酸性側のPHで」というよりも、「ストレス条件下で」ということである、というのが一番素直な解釈ではないでしょうか。(2010.10.25)


Q:葉の光の吸収や反射に興味があります。葉がどのような光の成分を反射しているか(分光反射率)はどのように測定するのでしょうか?クチクラの発達した葉ではやはり反射率は高いのでしょうか?また、表面反射と内部反射は区別して測定することはできるのでしょうか?よろしくお願いいたします。(2010.10.13)

Q:普通は積分球を使うのだと思います。積分球の片側から測定光を入射し、反対側には葉を置きます。測定光のラインから90度の方向を分光器の受光部分を置くと、反射によるスペクトル成分を調べることができます。表面反射と内部反射を非破壊的に測定するのは難しいと思います。非常に細いグラスファイバーを差し込んで実測することは可能かもしれませんが、やったことはありません。(2010.10.14)


Q:植物は、自分で光合成して養分を作る事が出来るので、根から吸い上げる土の養分や肥料などは必要ないのではないかと思うのですが、実際には肥料を与えたほうが生育がいいのはどうしてでしょうか?(2010.10.11)

A:植物は、光合成により水と二酸化炭素を材料としてデンプンなどを作ることができます。ところが、生き物の体を作るためには、デンプンなどのほかに、タンパク質やDNAなども必要です。タンパク質やDNAには窒素やリン、イオウといった物質が含まれているのですが、これらは、水や二酸化炭素には含まれていませんから、別にどこからか吸収しなくてはなりません。植物は、そのために根からも肥料分を吸い上げることが必要なのです。(2010.10.11)


Q:調べたい事柄がありネット検索をしていたら貴サイトにたどり着きました。申し訳ありませんが質問をさせてください。 盆栽(黒松・赤松・もみじ・かえで等)を室内展示をしています。一鉢の盆栽を7日間室内展示(朝に展示して夕方は外に出す)をします。その7日間の室内展示を年間で仮に10回したとしら室内に70日間展示していることになります。年間2割強、太陽光線が当たらない環境にある植物は光合成に関してどのような影響が考えられますか?また、7日間室内展示した後は葉が弱くなり葉焼けを起こしますので、寒冷紗(遮光率50%)の下で7日間管理します。その場合、植物が年間の4割強は何等かの形で太陽光を遮光された形になるので、その場合は光合成に関してどのような変化や影響が考えられますか?(2010.10.10)

A:光が弱いことの影響は、いくつかに分けて考えることができます。
1.光が非常に弱いと生育に十分なエネルギーを光合成のよって得られない可能性があります。ただ、1年に4割という程度でしたら、枯れてしまうなどの影響が出る心配はあまりないと思います。それでも生育速度は遅くなることが予想されます。(もっとも、これから幹を太らせないといけない鉢植えの場合は、生育速度の遅さが問題になる可能性はありますが、展示するまでになった盆栽でしたら、生育速度が遅くても構わないのではないかと、盆栽の素人としては考えますが。)
2.弱い光の下でしばらく栽培した植物は強い光に弱くなります。しかし、葉やけに対する考慮などもされているようですので、これは大丈夫でしょう。
3.光合成とは直接関係はありませんが、光が弱いと、特に草本の場合、丈がひょろひょろ伸び、葉がうすくなるるなどの形態的な変化を示します。また、花の咲く時期などに影響が出る可能性もあります。ただ、今回のように盆栽であって、年間の半分以上は十分な光が与えられているのであれば、影響は少ないと思います。
結論からすると、もし年間の6割程度は、直射日光の下で育てられるのであれば、光合成の面からなにか悪影響が出る可能性はあまり考えなくてもよいのではないかと思います。(2010.10.10)


Q:本日サイトを見つけて化学的、生物学的、多方面からの質問回答に感動致しました。ひとつ質問をさせてください。以前、酸素法を用いて海藻の光合成速度の測定を行い、光-光合成曲線を作成したのですが、最大光合成量Pmaxが不明瞭でした。光強度の設定としては0、25、50、100、200、400μEとしました。数値だけを見ると200μEで光合成速度が最大を取ったのですが、各光強度で得たパラメータを用いて作図したところ100から200μEの間に最大光合成速度を取るようにも見えました。求めたパラメータ(光の放射強度μEに対する光合成速度O2μL/h)を使って最大光合成速度を計算する事は可能なのでしょうか。それとも時間を掛けて100〜200μEの間の光合成速度を細かく測定する必要があるのでしょうか。よろしくお願いします。(2010.9.22)

Q:これは、おそらく光合成の問題というよりは、データ処理の問題だと思います。光光合成曲線を数式で表すモデルは、いくつか考えられています。ただ、高等植物の葉と藻類では異なりますし、それらのモデルがどの程度現実を反映しているかは、結局実際に測定してみなければわかりません。モデルに数値を当てはめて最大光合成速度を計算する方法は、基本的には化学反応速度論において実際の酵素活性のデータをミカエリス・メンテンの式に当てはめて酵素の最大活性を求めるのと同じです。ただし、0, 25, 50, 100, 200, 400といったデータの取り方だと、モデルへの当てはめをしたとしても誤差が大きく、結局100〜200の間、という程度の答えしか出ないように思います。藻類の場合は、強光で光阻害が起きやすいので、光光合成曲線をプロットしたときに最大光合成速度のところで、極大をとることが多く、モデルの構築自体が難しいという側面もあります。一方で、陸上植物の場合、なかなか光強度を上げても光合成速度は飽和せず、その場合には、最大光合成速度が実測値よりも高いと予想される場合も多く、モデルを適用して解析することに意味があります。結論としては、藻類での実験の場合、もう少し細かく光の強さを振らないと正確な最大光合成速度は求まらないように思います。ただし、100での測定と200での測定で、光合成速度があまり変化していないのであれば、実用的には200での値を最大光合成速度とみなしても、それほど誤差が大きくないという可能性はあります。(2010.9.23)


Q:(ここでは例として)トマトの栽培において、リン酸やカリウムの施用(葉面散布含む)は光合成および転流を促進すると言われますがそのメカニズムの詳細を教えていただけますでしょうか。リン酸の減少はRubisco活性低下につながりシンク能が制限され光合成が阻害されるためですか?カリウムについてはデンプン合成に関わるために同様にシンク能に影響するためでしょうか?よろしくお願いします。(2010.9.17)

A:葉緑体から光合成産物が運び出される場合には三炭糖リン酸の形をとります。この際、三単糖リン酸と無機のリン酸イオンが対向輸送されますので、細胞質のリン酸濃度が低下していると葉緑体から光合成産物を運び出すことができません。これがリン酸欠乏が直接光合成と転流を低下させる場合のメカニズムです。カリウムの場合は、光合成系への直接的な影響の話を聞いたことはありません。もしかしたら、気孔の開閉あたりを通して影響があるのかもしれませんが、残念ながらよく知りません。(2010.9.17)


Q:いつも楽しく拝見させていただいております。先生は高校生物の教科書をお書きなので、お尋ねします。生物?の光合成分野で吸収スペクトルが出てきます。教科書では縦軸は吸収率と書いてあることが多いのですが、資料集などでは吸光度で表しているものもあります。吸光度の定義も書いてないので、また対数を知らなくてはならないので高校生には吸収率の方がとっつきやすいと思います。吸収率ではなく吸光度で扱う利点は何でしょうか?よろしくお願いいたします。(2010.9.15)

A:吸光度(吸収)を用いる利点は、それが物質の濃度に比例することです。一般に物質の定量法として吸収を測ることがよくありますが、それは、吸収が物質濃度に比例することを利用しています。吸収率にしてしまうと、濃度との直線関係はなくなってしまいます。(2010.9.15)


Q:HPを拝見させていただき大変勉強になりました。そこでひとつ質問があります。現在、藻類の光合成を抑制するために遮光シートを使用して水準を変えて実験をしております。目的は光合成を抑制してpHの上昇を抑えることですが、低い光量子(50以下)でもpHが上昇する結果となりました。そこで、各種藻類の光補償点について文献値等があれば教えていただきたく投稿いたしました。文献値がなければ、光量子がどの程度であれば炭酸同化作用が促進されるのか教えていただけませんか?実験で使用した藻類の種類について私では同定できませんでしたが、表面が黄色のものや緑色でどろっとしたものもありました。以上よろしくお願いいたします。(2010.9.3)

A:水中の光合成生物は陸上植物に比べると光補償点が低いことが多いようです。しかも、弱光で培養していると光補償点は低下するはずですから、遮光しない状態に比べてさらに光補償点は低くなることが予想されます。具体的な光補償点は、もちろん種類・温度によりますから何とも言えませんが、緑藻、シアノバクテリアなどでは高くても5 μmol/m2/s程度だと思います。実験室で藻類の株を培養・維持する際には20 μmol/m2/s程度の光を使う場合が多いので、50というのは藻類の生育に充分すぎる値だと思います。(2010.9.3)

Q:先日(9/3)に質問したものです。さっそくの返信どうもありがとうございます。具体的な数字も出していただき、今後の参考とさせていただきます。それと申し訳ありませんが、もうひとつ質問させていただけますか?アカウキクサ等が水面を覆った場合、水中の酸素(溶存酸素)が減少するといったことがよくおきるようですが、そのメカニズムが分かりません。空気の遮断効果や根の微生物による消費はかなり多いのでしょうか?よろしくお願いします。(2010.9.6)

A:おっしゃるように水面が葉で覆われると、空気中の酸素が水に溶け込む速度は遅くなるのではないかと思います。ウキクサの場合、葉の表面でガス交換を行いますから、光合成により発生した酸素は大気中に放出され、水中の酸素濃度の増加につながりません。また、根の微生物は別としても、植物も呼吸をしており、根ではウキクサ自体による酸素消費が起こります。さらに、水中が遮光されれば植物プランクトンによる酸素発生はある程度低下するでしょう。これらが総合的に効いているのではないかと思います。
 なお、水面がおおわれた場合、大気との酸素の交換速度と共に二酸化炭素の交換の速度も影響を受けます。pHにより光合成の変化を間接的に見ている場合は、二酸化炭素の溶け込む速度の影響をも受けることになることに注意が必要です。前の質問での遮光をどのように行なっているかにもよりますが。(2010.9.7)


Q:いつも興味深く見させていただいております。東京大学の寺島先生が書かれた文章で『葉の展開時に裏側から光を当てると、葉肉組織の構造は変わる。』とあったのですが、実際にどのような変化が見られるのでしょうか?海綿状組織の形態が変化するのでしょうか?よろしくお願いいたします。出典:「光合成系としての葉の構造」化学と生物Vol. 37, No. 4, 1999, p.270(2010.9.2)

A:昔のデータなのでうろ覚えですが、海綿状組織と柵状組織の区別がよりつきづらくなったと記憶しています。「光の強い側に柵状組織が発達した方が光獲得の上では有利だが、葉の発生・構造上の制約のため、葉の裏に柵状組織が発達するまでには至らない。しかし、少しでも光獲得に有利な方向に構造が変化する」という結論だったと思います。僕に聞かないで、寺島さんに直接確認した方がよいと思いますが…。(2010.9.3)


Q:平成14年度の講義「植物科学I」の中に書いてある、海綿状組織の細胞間隙に水を入れて透明に見えるようにする方法(インフィルトレーション)のやり方について教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。また、もしこの方法をやったら、どの程度透明化できるのでしょうか?(2010.8.21)

A:葉をちぎって水の入った試験管に入れゴム栓をし、水流ポンプなどで減圧すると、葉の気孔や切断面から細胞間隙の中の空気が泡として出てきます。そこで、大気圧に戻してやると、今度は周囲の水が細胞間隙に入ることになります。要は、水中で減圧してまた大気圧に戻す作業をすればよいので、方法はどのようなものでも構いません。緑色の光に対する透過率はこのインフィルトレーションにより20%程度上がるのではないかと思います。(2010.8.21)


Q:よくこのサイト参考にしております。「いろいろな植物の光合成速度を教えて下さい」という質問がありましたが、あのデータはどういう資料、実験からの数値なのか、お分かりになる範囲で教えていただけると幸いです。なかなか具体的な数値を出している資料がないと思うのですが…(2010.8.17)

A:最近の本には確かにあまり出ていないのですが、昔の本を探すと案外見つかります。例えば、1972年の「物質と交換と輸送」朝倉書店のデータとして、1992年の「光合成」朝倉書店が引用している図には、各種植物の光光合成曲線が出ています。(2010.8.17)


Q:いつも興味深く拝見させていただいています。葉の中での柵状組織と海綿状組織の形態・機能分化の内容に興味を持ちました。現在の研究ではかなり遺伝子的な解析が進んでいると思われますが、柵状組織,海綿状組織になるための遺伝子は見つかっているのでしょうか?もし見つかっているのであれば、それは位置的なもの(葉の表面・裏面)によって発言が決まるのでしょうか?また、何か実験の提案があればということですが、柵状組織だけになった葉、海綿状組織だけになった葉を作って、光合成を測ってみたら面白いと思います。(2010.8.16)

A:葉の大きさや形のように外から見てもすぐにわかる形質の場合、原因遺伝子をスクリーニングすることが比較的容易にできますが、葉の内部組織の分化に関わる遺伝子のスクリーニングはなかなか根気のいる仕事になるのではないかと思います。僕自身は形態の専門家ではないこともあり、そのような分化に関わる遺伝子については聞いたことがありません。ただ、そのような遺伝子の変異体があれば、確かに光合成を測定してみたいところではありますね。(2010.8.16)


Q:植物の成長には、音が関係しますか?光合成とは違うのかもしれませんが・・・。音と言っても、植物の細胞が振動の影響を受けて違う反応をするのかということです。 細胞にも固有振動数があると思うので、細胞分裂を盛んに行える振動数の音があるのでしょうか?(2010.8.14)

A:音が植物に対して影響を与えるかどうかを調べた研究例はいくつかありますが、あまり明確な答えは得られていないと思います。一方で、葉が擦れ合うような物理的な刺激によっては、植物の生育は影響されます。自然界で葉が擦れ合うような状況に置かれるのは、風が強い時であるため、そのような環境下では丈があまりひょろひょろ伸びないように矮性(背が低いこと)の形質を示します。昔、盆栽をなでてやるとうまく育つという話がありましたが、これなどはその影響を見ていたのかもしれません。音がこのような物理的刺激を引き起こすようなことがあれば、植物の形態に影響を与える可能性はあります。ただ、細胞分裂が盛んになるといった変化はあまり期待できないのではないかと思います。(2010.8.14)


Q:こんにちは、私は県で普及員として働いている者です。この職業から、いろいろな資材業者さんとお会いする機会があり、ある資材について、『曇天時などに(梅雨など)に施用し、(日照不足で通常は光合成能力が低下するところですが)光合成を促進させます』といった説明をしておりました。光合成は光がないと行われないため、説明したところの効果は期待できないと思うのですが、先生のご教授をお願いいたします。(2010.8.9)

A:同じものなのかどうかはわかりませんが、光合成細菌を用いた資材の質問が今年の初めにありました。その際に見た説明は、あまり科学的に妥当なものであるようには思われませんでした。ただ、その時の答えにも書きましたが、理由は説明できずとも実際には効果がある、という場合も否定はできませんので、本当のところはきちんと調べてみないとわからないのではないかと思います。(2010.8.9)


Q:水中の中にある小さな木は光合成するのですか?光は当たっても二酸化炭素がないから無理なんでしょうか?(2010.8.9)

A:二酸化炭素は空気に含まれるだけではなく、水にも溶けています。ただ、空気中の二酸化炭素を使う場合と、水中の二酸化炭素を使う場合は、やり方が違うので、空気中でも水中でも光合成ができる植物の種類は非常に限られます。普通は水につかっていない木が水につけられた場合には、水に溶けている二酸化炭素を利用して少しの間は光合成をすることができますが、やがて枯れてしまいます。水草(海草)など、もともと水の中で生活している植物の場合は、葉が薄くて二酸化炭素を通しやすくなっているため、水に溶けている二酸化炭素を利用して光合成を行なうことが可能で、生育を続けることができます。(2010.8.9)


Q:先生のHPの「赤い葉っぱは光合成をするか」を拝見して大変興味を持ちました。疑問に思ったのですが、クロロフィルがアントシアニンでマスクされることによって光合成活性機能が低下することはないにしても、現実問題として受けることができる光の量が少なくなり光合成できる量が減るといったことはないのでしょうか。またアントシアニンの効果としては、有害な紫外線などから葉を守ることがあげられるかと思います。キサントフィル反応も同じような効果を持つと考えられますが、幼葉に赤みがかったことが多いことを考えると、キサントフィル反応に関係する色素の誘導は、クロロフィルの誘導より遅れるのでしょうか。当初赤い葉が、時間とともに緑になるとことは、当初アントシアニンに頼っていた部分を、キサントフィル反応に置き換わるのかと思いました。先生のご意見をご教示いただけたら幸いです。またもし上記2点について議論してある文献などがありましたら教えていただけたら幸いです。(2010.8.6)

A:アントシアンの蓄積によって光が遮蔽されるために光合成が落ちることは原理的にはあり得ます。ただ、アントシアンが蓄積される条件というのは、たいてい光が強いか温度が低い場合が多く、実際にそのような条件で光合成速度を比べた時には光が律速になっておらず、あまり大きな差は生じないように思います。
 赤いアントシアンと黄色いフラボノールはどちらもフラボノイドですが、キサントフィルとβ-カロテンはカロテノイドです。フラボノイドの役割については一般に紫外線のスクリーニング効果が挙げられていますが、実際にそれを明確に示した論文はあまりありません。琉球大学の山崎先生は、フラボノールがペルオキシダーゼの電子供与体として活性酸素(過酸化水素)の除去に関わるという大胆な仮説を提出されています。キサントフィルはキサントフィルサイクルの構成成分として過剰な光エネルギーの熱放散に関わり、またβ-カロテンは活性酸素の一種である一重項酸素の消去に関わっています。それぞれが少しずつ異なる役割を果たしていますから、「置き換わる」というイメージとは少し違うような気もします。むしろ、葉を作る時と枯れる時という一番危ないときに、防御の手段を二重三重にしておこう、ということかもしれません。Trends in Plant Scineceに載った山崎さんとShirleyのやり取りなどが参考になるかもしれません。A function of colour (1997) Trends in Plant Science 2: 7-8
(2010.8.6)


Q:はじめまして。NHKの地球大紀行というDVDを見ていたら、『海洋に含まれていた鉄分が光合成生物の出した酸素によって酸化されて酸化鉄ができたため、海が真っ赤になった。その酸化鉄が沈殿して鉄鉱石ができた』と紹介していました。海が青いと青い光、海が赤いと赤い光の環境に光合成生物がさらされるわけですが、それと光合成で有効な光が赤・青であることとは関係があるのでしょうか?その生育環境での光を吸収できるように適応したというように...。(2010.7.29)

A:面白い考え方ですね。光合成の起源については、まだ謎の部分が多いのですが、現在の植物が持つクロロフィルと、酸素を発生するタイプの光合成は、ほぼ同時期に出現したと考えられています。とすると、鉄が酸素により酸化したのはそれより後のことですので、植物が持つクロロフィルが出現したのは「赤い海」より以前の話だということになります。そうだとすると赤い海とクロロフィルの吸収は、直接は関係がなさそうに思えます。(2010.7.29)


Q:光合成の量について質問します。太陽からの光の強さは、夏と冬とでは違うと聞きました。これは、葉っぱに当たる光の量が、水蒸気の多寡によって異なるために生じることなのでしょうか?夏に光合成の量を多くするためには、どのような方法があるのか教えてください。追伸:現在、オクラとメロンをハウスで栽培しています。今年は梅雨で雨が多く、オクラの出荷数量やメロンの成長が思わしくありません。梅雨時の栽培方法があったら合わせてお教えください。(2010.7.15)

A:日本は北半球にありますが、日本の夏には地球は北半球を太陽の方向に少し傾けるように自転しています(冬には逆になります)。ですから、太陽は夏には頭上から照りつける形になる一方、冬には斜めから差し込むことになります。日差しが傾くと弱くなるのは朝晩と一緒ですから、冬には太陽からの光の強さは弱くなります。植物は、その生長を光合成に負っていて、光合成は光がなくてはできませんから、残念ながら光が弱くても光が強いときと同じように植物を育てることはできません。強いて言うと、光が弱いときは必要な窒素分なども少なくなりますから、肥料を与えすぎないようにするということはあるかもしれません。(2010.7.15)


Q:はじめまして。先日大学で丸一日暗黒化においたインゲンの葉に白熱電球(40Wミニレフ球)で光照射し、(1)どの光がもっとも光合成に有効であるかを調べ、(2)照射部位に光合成によりでんぷんが新たに合成されることも観察・証明するという実験を行いました。(2)は各班で対照実験を考えなければならなかったのですが、アルミホイルではの全体を覆った班が大半でした。しかし教授が求めていた対照実験を行えた班はありませんでした。「新たに」がポイントだと思い、実験前のでんぷんが本当に0なのかどうか調べれば良かったのではないかと考えましたが、それだと要因を変えて同じ実験をするという対照実験の定義に合わなくなってしまいます。どのような対照実験を行えばよかったのでしょうか?(2010.7.4)

A:実験で求められるポイントというのは、その実験をデザインした人によって異なりますし、「対照実験の定義」にしても、必ずしも万人に共通とは限りません。なので、「正解」かどうかはわかりませんが、一般論を答えておきます。(2)の実験では「光の照射」を変化させる要因として考えているわけですよね。その場合、光の明るさを変えたと考えた場合の対照実験は光の明るさを0にすることになりますから、アルミホイルで覆うというのが確かに対照実験になります。一方で、光を当てる時間を変えると考えた場合は、光照射の時間を0にする、つまり、光を当てる前の葉での実験が対照実験になるでしょう。そのように考えれば、対照実験の定義に合わないということはないと思います。(2010.7.4)


Q:以前から疑問に思っていたことを教えて下さい.草木は冬になると枯れてしまう物が多くあります.すると,冬には光合成をする植物が少なくなり,結果として冬には空気の酸素が少なくなり空気が悪くなるような気がしているのですがいかがでしょうか?それとも,枯れた植物の光合成を補填する何かが起こっているのでしょうか?(2010.6.14)

A:実はおっしゃる通り、夏と冬とでは空気の組成は少し変化します。大気中の二酸化炭素濃度は、現在およそ0.04%ですが、北半球の場合、この値が夏と冬とで0.0008程度上下します。上下するといってももともと0.04%のものが0.0392%になる程度なわけですから、変動幅はもとの2%程度ということになります。酸素の方は、もともと空気中の21%を占めますから、そこへ0.0008%の酸素が加わってもほとんど無視できる値です。したがって、空気の組成がわずかに変化するのは確かですが、「悪くなる」というほどではありませんね。ちなみに、南半球では季節が逆なので、大気組成も逆に動くはずですが、陸地の占める面積の割合が小さい(海が多い)こともあって、観察される変動幅は、北半球よりもさらに小さくなります。(2010.6.14)


Q:光合成の反応過程で、光化学系Iと光化学系IIというのが出てきたのですが、反応の順番は光化学系II→電子伝達系→光化学系Iです。どうして光化学系I→電子伝達系→光化学系Iの順番で名前が付けられなかったのですか?発見された順番などの理由で名前が付いているのでしょうか?気になったので、もし理由があるようでしたら教えていただけませんでしょうか?(2010.6.10)

A:答えを書き始めたところで、I, IIは発見の順番であるとの記述を見つけたので、念のため原典にあたっていたので解答が遅くなりました。系I, 系IIという名前を付けたのはオランダのDuysensで、1961年のことです。この時点では、実体としての系Iと系IIに関する情報はほとんどなかったので、発見の順番であるという記述には無理があるようです。基本的には紅藻の細胞の中でシトクロムfという電子伝達成分を酸化する働きを持つ色素系を系I、還元する働きをする色素系を系IIと名付けていています。名前をつける際にどうやってI, IIを割り当てたのかの記述は、当該論文中にはありませんでした。実際に「もの」として系I、系IIが単離されるのはもっと後のことになります。また、現在のような電子伝達の仕組みも、この段階では仮説でしかありませんでした。答えとしては、細かいメカニズムが分かる前に、名前だけつけられてしまった、ということだと思います。なお、蛇足になりますが、光合成の場合、電子伝達という用語は、2つの光化学系の間の部分だけを指すのではなく、2つの光化学系を含む全体を指します。ときどき、教科書でも間違っていますが・・・。(2010.6.11)


Q:突然すみません。初投稿の中学3年です。ペーパークロマトグラフィーによる光合成色素の検出をしたいと思っています。展開液にトルエンなどを使うそうなのですが、家ではとても使えそうにありません。何か、市販のもので代用出来るものはありませんか?よろしくお願いします。(2010.6.9)

A:中学生に売ってもらえるかどうかは確認していませんが、ハクキンカイロやシミ抜きなどなどに使うベンジンは薬局などで売っていると思います。ベンジンは混合物ですが、主成分はn-ヘキサンという物質です(ただし、シミ抜き用は洗剤の成分を含んでいる場合があるそうなので、燃料用の方が安心かもしれません)。また、アセトンはホームセンターなどにも売っているようです。マニキュアの除光液はアセトンが主成分なので、いざとなったらこれを使うこともできます。展開液としてはヘキサンにアセトンを3割ぐらい加えたもの(割合は試行錯誤する必要があるかもしれません)が使えます。薬品類の購入は大人と一緒の方が安心かもしれません。(2010.6.10)


Q:教育実習の授業で,中学生にオオカナダモを用いて光合成が行われる場所を調べる実験をするのですが,実験の手順として,「エタノールにつける→水につける」という操作が何のために行うのかがよくわかりません。脱色させるため,とも聞きましたが,この実験でオオカナダモを用いるのはオオカナダモの葉は薄くて観察しやすいから,と聞きました。薄くて観察しやすい葉であるにも関わらず,脱色しなければならないのですか?(そもそもエタノールは脱色することが可能なのですか?) また,オオカナダモを用いる理由が葉が薄くて観察しやすい以外の理由もあるならば,教えて頂きたいです。よろしくお願い致します。(2010.6.5)

A:オオカナダモのヨウ素デンプン反応の実験のことですね。まず、通常の陸上植物の葉では、細胞層が多いので切片を作らないと葉緑体を観察できません。オオカナダモの場合は葉が薄いので、切片を作らなくてもそのまま観察可能です。ヨウ素デンプン反応のためには、当然細胞の中にヨウ素が入る必要があります。ただ、生きている細胞の細胞膜の物質の透過性は高くないので、そのままではヨウ素デンプン反応を見るのは難しいと思います。エタノールにつけなくとも、熱湯にしばらくつけてからであれば、ヨウ素が中に入りやすくなり、ヨウ素デンプン反応を見ることができます。ただ、この場合はクロロフィルは残っていますから、場合によって発色が見づらい場合があります。その点、エタノールで脱色すれば発色自体は見やすくなります。ただし、葉緑体が光合成の場所であるということを示すためにはむしろ緑色が残っていたほうがよい、という見方もできます。クロロフィルは炭化水素の長い鎖であるフィトール鎖を分子内に持ちますので水にとけない脂溶性の物質で、エタノールなどの有機溶媒にはとけます。ですから、エタノールにつければ葉を脱色することができます。エタノールにつけると、葉は脱水もされますから、そのままだとパリパリになってしまいます。それを避けるためにヨウ素液につける前に一度水につけるのが普通です。(2010.6.5)

Q:よく分かりました。分かりやすい回答ありがとうございます。追加質問です。オオカナダモを実際に観察すると,葉脈が一番真っ黒に染まっていました。葉脈には葉緑体はないですよね?では師管の中の糖が染まっているのですか?また,ヨウ素液で染色した葉緑体は,青紫色というよりは茶色に染まっていました。ヨウ素液は青紫色に染まるといいますが,実際には青紫色にはならないものなのでしょうか。葉緑体は茶色に染まっているにも関わらず,葉脈は真っ黒になっていたので,葉脈の何が染色されているのか,お聞きしたいです。(2010.6.7)

A:糖はヨウ素液では染まりません。ただ、葉脈に近い部分の細胞には葉緑体が多く全体に濃くは見えますけど。あと、ヨウ素デンプン反応の発色はデンプンの種類によることが知られています。デンプンは糖の重合したものですが、その分岐の仕方の違いによってアミロースとアミロペクチンがあります。青紫色と茶色というのはこのアミロースとアミロペクチンの発色に対応しているのかもしれませんが、オオカナダモのデンプンの主成分が何かは調べたことがありません。(2010.6.7)


Q:光合成細菌はクロロソームを持っていますが,このクロロソームの内容物は具体的にどのようになっているのでしょうか?色素分子の集合体を脂質膜が覆っていることまでは知っているのですが,水など他の内容物はないのでしょうか?もしあるならばそれは大体どのくらいの割合で含まれているのでしょうか?重量比や体積比で大体の量を教えて頂ければ幸いです.また,内容物それぞれの役割などもしありましたら簡単に教えて頂きたく思います.ちょっと漠然とした質問で申し訳ありませんがよろしくお願い致します.(2010.6.1)

A:基本的にはクロロソームの内部は、ほぼ結晶に近いバクテリオクロロフィルであると言われていますから、割合としては大部分がバクテリオクロロフィルであると言ってよいでしょう。その疎水的な性質を考えると、水などもあまりないと思います。クロロソームと膜の間にあるベースプレートの方はバクテリオクロロフィルのほかにタンパク質を含むはずですが、その重量比などはよく知りません。(2010.6.2)


Q:小学校教員の友人から聞かれたのですが、ジャガイモのデンプン確認実験を単元の都合上、6月中旬から7月中旬の梅雨時の日照不足の実験になり、ヨウ素デンプン反応の確認が困難で毎年、児童に見せてあげられません。葉を摘み取って直接蛍光灯に1日あてても確認できず、コリウスなどの鉢植えの葉を勧めても友人はデンプン確認=ジャガイモにこだわり実験時期もずらすことができないため困っています。日照不足時でもジャガイモの葉の光合成量を増やせる小学校でもできる簡単な方法がありましたら教えて下さい。屋外、屋内どちらでもかまいません。よろしくお願いします。(2010.5.6)

A:光が少なくてもたくさん光合成をする条件というのは基本的にあり得ないと考えてよいでしょう。それに、仮に何か特別なことをやってそれが実現したとしても、光合成には光が重要であるという根本的な所にかえって誤解を招きかねないと思いますし。ただ、「蛍光灯に1日あてても確認できず」という部分については、もっと強い光をあてるという方向での改良の余地があるかもしれません。なるべく強い光源を用意して(例えば液晶プロジェクターなどでもよいでしょう)、当たった部分の温度が上がらないようにして(光を葉に直接当てずに水の層を通すと赤外線が吸収されて温度の上昇が抑えられます)、気孔が閉じないようにする(できれば葉を摘み取らず根がついたままの状態で光を当てる)と、でんぷんを検出できる可能性があるかもしれません。(2010.5.6)


Q:数年前から、趣味として自作のLED照明で植物の栽培実験をしている者です。自作のLED照明は、赤(625nm)と青(470nm)を組み合わせたものです。色々な植物を試して見たのですが、観葉植物などの耐陰性のある植物には効果あるようです。特に、胡蝶蘭には効果があるようで、室内でLED照明のみによる栽培ですが、毎年花を咲かせています。そこで、何故、自作のLED照明が胡蝶蘭に効果があるのかを知りたくて、投稿させていただきました。 著書などによると、植物の光合成に使われる色々な色素の中で、クロロフィルaやクロロフィルbが主な色素ということですが、自作したLED照明はクロロフィルbの吸収特性に近いものになっています。自作のLED照明を複数個使って胡蝶蘭の葉面を照らしていますが、簡易な照度計で測定した葉面の照度は1000〜2000ルクス程度です。 一般的な植物は、660nm(赤)と450nm(青)に吸収スペクトルを持つクロロフィルaの色素が主だと言うことですが、胡蝶蘭はクロロフィルbの色素が多いため、自作LED照明の効果が高いのでしょうか。それとも、胡蝶蘭もクロロフィルaが主色素であり、耐陰性が非常に高いため、自作のLED照明でも育っているのでしょうか。それとも、別に原因があるのでしょうか。専門的な知識が無いため、的外れな質問になっているのかも知れませんが、よろしくお願いします。(2010.4.4)

A:太陽の光とLEDの光では、色(波長)と明るさが異なります。色の方はご指摘のように光合成色素が吸収する波長と合っているかどうかが重要です。藻類の場合は、クロロフィルとは大きく異なる吸収を持つフィコビリンなどの色素をもつ場合がありますが、陸上植物の場合は基本的にはクロロフィルが光を集める役割をしており、クロロフィルaとクロロフィルbの比率も2.5から3.5の場合がほとんどで、植物によって極端に異なることはありません。胡蝶蘭のクロロフィルaとクロロフィルbの比率を測定したことはありませんが、一般的な値とさほど変わらないのではないかと思います。625 nmと470 nmの光をあてていれば、胡蝶蘭を含め、多くの植物は問題なく育つと予想します。一方で、太陽の直射光の明るさは最大100,000 luxを超しますから、ご使用のLEDは太陽光の直射光の1/50から1/100程度にしかなりません。明るい光を要求する植物の場合は育たないことが予想されますので、胡蝶蘭の耐陰性が高いためにLEDでもよく育つ、という予想の方が正しいでしょう。(2010.4.4)

Q:早々に、ご回答いただきまして、ありがとうございました。初歩的なこととは思いますが、追加質問をさせていただきます。ご回答に陸上植物全般的に「クロロフィルaとbの比率が2.5から3.5」とありますが、これはクロロフィルaを基準にbが2.5から3.5倍ということでしょうか。それともその逆でしょうか。また、この倍率は、光合成への貢献度と考えて良いのでしょうか。よろしくお願いします。(2010.4.5)

A:あいまいな書き方をして申し訳ありません。クロロフィルaがクロロフィルbの2.5から3.5倍ということです。この比率が光合成への貢献度を示すというわけではありません。ただ、光を集める役割を果たす部分にはややクロロフィルbが多いので、暗いところに生育する植物ではクロロフィルbが相対的に多くなる(クロロフィルa/b比が減少する)傾向はあります。(2010.4.5)


Q:30年も前に生物学を学び、現在しがないサラリーマンをしてます。往年の好奇心から、「キャンベル生物学」を毎晩数ページずつ読んでいます。p.641に、クラミドモナスの説明文に「単一のコップ型葉緑体を持つ」とあります。TEM写真が添えられていますが、単一、コップ型とは、どんな形態で、どんな特異的な機能を持つのか、理解できません。今となっては教養課程or雑誌ニュートン程度がやっとの私に、どうぞ教示お願いします。(2010.2.28)

A:陸上植物の場合、一つの細胞には数多くの葉緑体がオルガネラ(細胞内小器官)として存在し、光合成を支えています。単細胞の藻類においては、陸上植物と同様に一つの細胞に数多くの葉緑体がある場合と、一つの細胞には一つだけ葉緑体があって細胞の分裂と同期して葉緑体も分裂する場合があります。クラミドモナスは後者の型の単細胞藻類で、一つの細胞に一つしか葉緑体が存在しないことを「単一の」と言っています。コップ型というのは、空気の抜けたゴムボールを片側からげんこつで押したときの形をイメージしていただければよいのではないかと思います。この形は、機能的に意味があるというよりは、細胞の核のない部分に広がるとそのようになるという側面が強いのではないかと思います。核がげんこつに相当するわけですね。(2010.3.1)


Q:こんにちは.先生の『光合成とはなにか』の8章の雨が植物に与える影響の部分を読んで,以下の考察が思い浮かびました.先生のご教授がいただければ幸いです.バラ施設栽培において,電気代の安い深夜に補光(平均22.0μmolでかなり低い)を行い同時に炭酸ガス施肥(平均1200ppm)をすると収量や品質はどうなるかの研究を行いました.結果,収量および品質(炭水化物含量)は無処理区と比較して大きく低下しました.いま思いますと,深夜のバラハウス内は湿度95%近く,このことが本の記述(p181図8-1)の『陽が差しているときには阻害が大きい』に当てはまると言えるでしょうか.よろしくお願いします.(2010.2.4)

A:葉が濡れているときに日が差すと光合成が阻害される場合があるのは確かなのですが、高い湿度だけで阻害が起こるという話はあまり聞きません。また、光量が22μmol/m2/sだとすると阻害を起こすには非常に弱いので、ご質問の現象は違うところに原因があるように思います。ただ、ぱっと原因を思いつきません。あと、話は本題からそれますが、炭酸ガスは光が強いときに必要になりますので、あまり光が弱いときに施肥をしても効果は少ないように思います。(2010.2.4)


Q:光合成に関して専門的な知識は皆無なのですが質問お願いいたします。緑藻のミルを酸素瓶に入れて、溶存酸素量をウィンクラー法で求めました。ここから光合成で発生した酸素量は求めることが出来たのですが、この酸素量から光合成で合成された糖類を算出することは可能でしょうか。発生した酸素量mlをmolに計算し、高校の生物で習った光合成の化学式に当てはめて計算してよいものでしょうか。よろしくお願いいたします。(2010.2.2)

A:はい。基本的にそれでよいと思います。もちろん、あくまで見積もりですので実測値とどの程度合うかという問題はありますが、緑藻類の光合成産物の貯蔵形態は糖の重合体であるでんぷんですから、光合成の基本式からの計算で問題ないと思います。(2010.2.3)


Q:有機溶媒による葉の色素の抽出の実験をほうれん草の葉で行いました。考察で蛍光を生じるのはクロロフィルのどのような性質によるかとあるのですがわかりません。教えていただけると嬉しいです。(2010.2.2)

A:これは、やはり出題をした先生の意図がわからないと答えられませんね。おそらく授業中に何らかの説明があって、それに基づいて考察を求められているのではないでしょうか。「質問のコツ」を読んで思い当たりませんか?例えば、蛍光を出すためには光を吸収する必要がありますが、それが求められている答えかどうかは、授業を聞いていないものにはわかりません。(2010.2.2)


Q:私は現在大学の農学部で森林科学の勉強をしています。光合成は初心者です。私は林業の現場で行われている「葉枯らし乾燥」について研究をしたいと考えています。「葉枯らし乾燥」というのは、スギなどを伐倒後に林地に3カ月程放置して含水率を落とすというものです。葉枯らし乾燥についての論文では、葉が枯れて落ちるまでの数カ月間、木材の含水率は割とコンスタントに落ち続けるという結果になっています。そして、それは蒸散によるものと考えられているようです。しかし、私が勉強した限りでは、導管に空気が入るキャビテーションによる通導抵抗の増加や、葉の含水率が落ちることの応答である気孔の閉鎖などで、蒸散は止まってしまうようです。もしそうならば、気孔の閉鎖後は木の切断面または表面からの蒸発による含水率の低下しかおきず、ただの丸太の乾燥と同じということになります。そこで私がお尋ねしたいのは、「含水率の低下が始まってから応答するまでの時間と、どの程度まで含水率が落ちた時にその応答が起こるのか?」ということです。このような質問をするのは、数か月間蒸散が続くことはありうることなのかということを知りたかったからです。大学生なら自分で論文を検索するべきですが、どのようなキーワードで検索するべきか分かりません。茎を切断した植物の気孔の開閉や、乾燥の進み方に関する論文などを検索したい場合のキーワードなども教えていただけるとありがたいです。長い質問で申しわけありませんが、回答お待ちしております。(2010.2.1)

A:まず、お断りしなくてはいけないのは、僕がやっているのは生物としての光合成なので、伐採された、生きていない木については専門外になる、という点です。ですから、そもそも生きていないものに「蒸散」という生きている植物の機能を示す言葉を使うこと自体に抵抗があります。生きている状態で含水率がどんどん落ちるということはあまり考えられませんから、気孔の生理的な応答は含水率が落ち始めたらすぐに起こる、と言えるのではないでしょうか。言葉の使い方はさておいて、葉からの水分の蒸発が意味を持つかどうか、という点については、気孔閉鎖時の蒸散量が参考になると思います。気孔が開いているときは、葉からの蒸散量は150 μmol m-2 s-1程度ですが、気孔が完全に閉鎖して、葉の表面のクチクラからだけ蒸散する場合には、この値は4 μmol m-2 s-1程度にまで落ちます。ただし、丸太の面積に比べると、葉の面積は大きいですから、このような低い蒸発速度であっても、葉をつけていた方が蒸発速度が有意に大きくなる可能性は十分にあると思います。そのあたりを実際に確かめるためには、(もし今までに測定例がなければ)定量的な測定が必要になると思います。(2010.2.2)


Q:窓が近くにない室内でハーブ類を育てたいのですが、照明は蛍光灯で150〜300ルクス程度です。これ以上明るくできない場合(この場所から移動せずに)どうやれば栽培ができるでしょうか? この場合、「光合成細菌剤」や葉緑素の原料の「アミノ酸剤」の利用は大きな効果があるのでしょうか?(2010.1.23)

A:それだけ弱いとかなり難しいでしょうね。少なくともひょろひょろになりそうな気がします。ただ、ハーブと言ってもいろいろな種類のものがあると思います。僕はハーブの種類には詳しくないのですが、もともと生育速度がゆっくりなものは、比較的弱い光でも育つ傾向があります。詳しい人に聞いて種類を選べば場合によっては可能かもしれません。植物の肥料は足りないものを与えなくては意味がありません(これは人間のサプリメントも同じですが・・・)。物質は光の代わりにはなりませんから、少なくとも理論上は大きな効果は期待できないでしょう。ただ、もちろん、光のほかにも足りないものがある場合は、それを補充することにより生育が良くなることは十分にあり得ます。(2010.1.23)

Q:早速にご回答いただきありがとうございます。光に代わるものはないということですね。これに関しまして分からないことがもうひとつあります。光合成細菌の効果として植物の光合成を助けるとうたっている光合成細菌資材がいくつかありますが、これらも光合成に必要な照度(400ルクス)が確保された上での補助的な効果と考えられますか? それとも今回のような照度が足りない条件(150〜300ルクス)でも効果があると考えられますか?
■光合成細菌の効果として説明されている内容 商品A:(略)、商品B:(略)(2010.1.24)

A:ご質問中の商品説明は、著作権の問題を考え掲載を省略しましたが、科学的な説明としては納得できるものではありません。「その説明を読んで、科学的に効果があると予想するか」というご質問でしたら、答えは否定的です。一方で、別に論理は通らなくとも、実際に施用した場合に効果があれば、肥料としては役に立ちます。その意味では効果がある可能性はありますが、僕自身は実験をしたことはありませんのでわかりません。この手の資材については、ホームページ上でその「効果」の実験や、経験談が載せられている場合もありますが、それはたいていの場合、「何もやらない場合」と「○○入りの肥料をやった場合」の差を示しています。肥料をやれば生育が良くなるのは不思議ではないので、本当にあるものの効果を試そうと思ったら、「ただの肥料をやった場合」と「○○入りの肥料をやった場合」を比べて○○だけの効果を比べなくてはいけないのですが、そのような実例は見つけることはできませんでした。(2010.1.25)

Q:とても親切で分かりやすいご回答に心から感謝いたします。科学的な判断の素晴らしさを感じます。度々で誠に恐縮なのですが、今回のご質問に関しまして最後のご質問があります。どうぞよろしくお願い致します。
(1)最初のご質問の照度を500〜750ルクスに上げることができましたらハーブの生育が大きく改善すると予測されますでしょうか?
(2)地温制御で低光量環境での生育期間の長期化ができるという研究がありますが、今回の目的にも科学的に効果があると予測されますでしょうか?(2010.1.29)

A:最初のご質問ですが、実際にある光条件で生育が可能かどうかは、その光による光合成の稼ぎが、呼吸による消費を上回るかどうかによって決まります。どのぐらいの光がその分岐点(これを専門的には光補償点と呼びます)を超すかは植物によって異なりますが、光が少しでも強くなればこの補償点を超すようになる可能性は増えます。その意味では生育が改善する可能性は十分にあります。ただし、繰り返しになりますが、結局は植物の種類によります。
 2番目のご質問ですが、温度を下げると呼吸も低下します。一方で、光が非常に弱いときには、光合成をどのくらいするかはその光の強さによって決まってしまいますから、温度を下げても(とくに地温の場合)それほど光合成には影響がありません。そのような場合、光合成による稼ぎは変化せずに、呼吸による消費だけが減りますから、トータルの収支がプラスに改善し、植物が枯れなくなる可能性はあります。したがって、この方法はハーブにも適用可能ですが、低温にした場合は、枯れなくはなるかもしれませんが、どんどん生育することはあまり期待できません。ご紹介いただいた研究例でも、アトリウムに植えた樹木が枯れないことを目指したもので、もし林業として成り立たせようと思ったら話は全く別になります。(2010.1.29)


Q:二酸化炭素が地球温暖化の原因の1つだそうですが、その二酸化炭素をエネルギー源にはできないのでしょうか。宇宙開発をするだけの技術があるのですから、一本の草木がしていることを、人工的に作れないなんて、人間の力はそんなモンなのですか?(2010.1.22)

A:質問に対する答えは、どちらもイエスです。二酸化炭素をエネルギー源にはできませんし、人間の力はそんなもんです。草を一本作ることに比べたら宇宙船を作るなんて簡単至極、ということでしょう。ただ、念のために付け加えますと、植物は二酸化炭素をエネルギー源にはしていません。エネルギー源はあくまで光です。(2010.1.22)

Q:早速のご回答ありがとうございました。「でも、そこをなんとか」人間の英知で編み出せないものでしょうか。私たちはこの地球に対し、広島や長崎はじめ、原爆、水爆実験でこの地球に計り知れない熱線を浴びせてきました。地球温暖化の原因の1つだと確信しています。科学の力で人工光合成を作り出せないでしょうか。(2010.1.26)

A:人工光合成自体は不可能ではありません。しかし、植物よりも効率のよいものを作るのは極めて難しいでしょう。また、植物は自分で増えてくれますが、人工光合成の機械を作るためには、そのこと自体に資源とエネルギーが必要です。もし仮に人類に英知があるとすれば、今後は、環境を破壊しつつ、それを修復するために科学技術の粋を集めるのではなく、環境を破壊しないように生き物の力を利用する方向に進むのではないかと予想します。(2010.1.27)


Q:波長650nmの光では1molの光量子のもつエネルギーは平均して44kcalとあったので、 アインシュタインが定義した光量子量の数の式、E=hν=hc/λに当てはめて計算したのですが、どうしても44kcalとなりません。h=6.6262×10^-34(J/s),c=3×10^8(m/s)で計算しました。 ちなみに私は、上に示した値とλ=650×10^-9(m)を当てはめて計算して、0.03×10^-17(J)となり、1cal=4.18(J)なので、(0.03×10^-17)/4.18=7.17×10^-20(cal)=7.17×10^-17(kcal) というまったく44kcalとかけ離れた数字になりました。 何度も計算しているのですが、どこで間違えているのかがわかりません。(2010.1.15)

A:光量子の式は、光子一個のエネルギーを求める式なのです。実際に求めたいのは1モルの光子の持つエネルギーですよね。だとすると1モルに含まれる光子の数(=アボガドロ数)を掛けなくてはいけません。ですから6.02 x 10^23を掛け算すればよいはずです。(2010.1.15)