ポストゲノム時代の生命科学 第10回講義

ポストゲノムの生命倫理

第10回は、細胞応答化学分野の宮本先生が担当されました。 寄せられたレポートの中から目に付いたもの3つを以下に載せておきます。


科学技術が発達してきて、クローンなど、少し昔では考えられなかったようなことも技術的に可能になってきた。このクローン技術の有用性だが、まず人以外の細胞を用いるケースでは、優れた能力をもつ畜産動物の増産や、特定遺伝子をノックアウトした遺伝的に均質な疾患モデル動物の増産、拒絶反応を起こしにくい臓器を持つ動物の産生、などがある。次に人の細胞を用いる場合では、ヒト胚を作成し、人の発生過程におけるゲノムの修飾やその生物学的影響、体細胞サイクルの初期化と生殖細胞の分化との関係等、研究用の用途を別として人のクローン個体の作成も考えられうる。このあらゆるケースにおいて、倫理上の問題等から、規制が絶対必要である。人のクローン個体の作成については言うまでもなく、ヒト胚をいじること自体に人間の尊厳の侵害という問題が含まれている。また安全性についても問題がありうる。クローン技術に対しては今後も多く議論が交わされるべきであり、たとえ科学に携わっていない人でも皆、クローンに対しては正しい理解が必要であろう。


私は、代理出産にも卵子・精子の凍結保存にも賛成です。もし、私がなんらかの理由で子宮がなかったら、あるいは、ガンになって不妊になってしまったら、と思うとこの方法だけが、唯一の頼みの綱となるでしょう。「生き物」の定義は、はっきりと決まってはいませんが、「繁殖しようとする」すなわち「自分の遺伝子を後世に残そうとする」というのも、そのひとつでしょう。生き物として生まれてきた限り、あらゆる手段をつくしてでも、自分の子供を欲しいと思うのは、仕方のないことなのではないでしょうか。もっとも、それに伴う倫理的問題、リスク、コストは非常に大きいので実現は難しいかと思います。しかし、法律にもう少し融通性をもたせると、いくらか実現に近づくのではないかと思います。人は皆違うのだから、「女性の妊娠可能年齢は35歳未満」というように、かっちり決めてしまうのは確かにおかしいと思います。そういう点を改正して、是非、子供のもてないかわいそうな人たちに希望を与えるようなガイドラインを作って欲しいです。


今まで、人工授精と体外受精の違いさえ分からなかった私にとって、結構今回の講義は参考になった。(人工授精は、精子を子宮に注入、体外受精は培養液中で受精し、受精卵を子宮に戻す方法)そして、代理母による出産を旧厚生省の専門委員会が禁止している理由も、今日はじめて分かった。(安全性の問題や、親子関係のこじれなど…)
 優生思想に関することは特に興味深く聞くことが出来た。確か石浦先生の著書で一度読んだことがあるので、それを思い出しながら話を聞いていた。“優れた”遺伝形質を“創り出す”というのがとても恐ろしいことであるのを再認識することが出来た。「ヒトラーと同じ」という言葉が頭に残っている。
 今までこの講義では各先生の研究室に関する内容だったので、今日の講義は新鮮に聴くことが出来た。確かに理系の人間は専門に関する知識を身に付けなければいけない。しかし、ライフサイエンスを考えているのであれば、バイオエシックスというのは避けて通ることの出来ない道だろう。これからは積極的に調べてみようと思う。