ポストゲノム時代の生命科学 第1回講義

4次元の光合成

第1回は、生命応答システム分野の園池が担当し、光合成の研究の過去の流れと、今後の研究の方向性について話しました。題目の「4次元」というのは、「構造」の3次元に、時間的変化という次元を含めた4次元の見方が今後の研究には必要である、との思いが込められています。講義を聴く学生さんの中には、文系の人も1割程度はおり、また高校で生物を取っている人は半分だけということだったので、かなり基礎的なことに重点を置き、実際のデータを用いての専門的な話はしませんでした。下に載せたレポートを見る限り、生物をよく知っている学生さんには物足りないものになってしまったようです。少なくとも、もう少し範囲を絞って、1つのことを掘り下げて紹介した方がよかったかと反省しています。実際には、具体的な研究紹介も用意していったのですが、時間切れになってしまいました。第1回なので、すべての寄せられたレポート(41通)を以下に載せておきます。


今日の授業で一番印象に残ったのは、もやしの話でした。”なぜモヤシはあんなにひょろひょろのびるのか?”という質問に対して私はあの場でこう考えた。
1:何故モヤシになるか?・・光がないから。
2:光がある時とない時の違い・・光合成できるかできないか。
3:光合成できる時とできない時の違い・・栄養を自分で作れるか否か。
4:栄養がなければどうすればよいか?・・栄養を吸収すればよいのではない
か。それには、表面積を増やして吸収すればよい。
よって、光がない時モヤシのようにひょろひょろのびる。
しかし講義では、できるだけ早く地上に顔を出し、光合成するためだ、と聞いた。それでは上の考えはどこが間違っているのか?1,2,3はまあ正しいと言えるであろう。問題は4。実際のモヤシをみても、表面積が増えてるとはいえない。もしそうしたいのなら、根毛状のものが作られるべきだ。私の考えは基本的に間違っていたと分かった。それだけでも今日の講義に出ていて良かったと思いました。今学期間よろしくお願いいたします。


今まで大学で習ってきたのは主に生化学の分野であった。授業では主に「どうして」こういう反応が起きるのかという、機構の説明ばかりが重視されていた気がする。確かにそういうことを学ぶことは意味があるが、「なぜ」そういう反応が起きるのかを学ぶことの方がずっと面白い。例えば、なぜ日光の当たるところで育てたら普通に育つ生物が、暗闇で育てるともやしになるのか?また、なぜもやしは生長点をしたに向けて育つのか?こういったことの理由を考えるとき、生物が、なんて緻密に設計されているのだと感心してしまう。そして、今まで生物に持っていたイメージが少し覆された気がするし、生物に興味を持たせる動機にもなった。ついでだから、スーパーでもやしを買った帰った。


難しい講義名とは裏腹にわかりやすい講義でほっとしました。光合成(太陽)について興味が湧いてきました。次の講義からは、私も(一部の人がしていたように)先生の質問に手を挙げて答えられるようにがんばります。


光合成とは、光エネルギーを使って、無機物から有機物を作る反応で、植物はこの方法で自ら有機物を作ることの出来る独立栄養生物である。一方、動物は光合成は行えず、外界から有機物を取らなければならない。確かに動物は移動できる能力を持っているけれども、有機物の合成だけを見ると、植物のほうが優れているような気がする。また、恒常性を保つ仕組みを持つ動物に対し、環境に応じて体を作り変えて対応できる植物も、すごい仕組みをもっているのだと、改めて植物の力強さみたいなものを感じた。
 衛星を使った調査とか、海に鉄を撒くといったプロジェクトなど、初めて聞くことばかりで楽しかった。他の研究内容もたくさん聞きたいと思う。期待しています。


光合成そのものは中学校でも習う事柄であり、草木が光合成により酸素を作り出すということが当たり前のように語られている。しかし、今回の講義を聞いて光合成の奥の深さを実感し、現在行われている光合成の研究の着目点にも触れることができて非常に有意義だった。 中学校時代に一つ面白いことを考えたことがある。それは、『草木は光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出す。では、人間に葉緑体を注射すれば人間も植物と同じ役割を果たせるのではないだろうか?』というものだった。今回の講義を聞き、そのことを思い出した。講義の中では、動物は移動の効率化のために葉緑体を持たないことを選択した、というように述べられていた。これは遺伝的には納得できるのだが、人工的に人間もしくは動物が葉緑体を持つことは可能なのだろうか?ただ、世の中の動物がみんな緑色になっているのは不気味ですが…。
レポートは以上です。大学に入学したばかりで、レポートを書くのになれておらず、かなり至らない点が多いとは思います。申し訳ありません。


第一回の授業で最も印象に残ったのは、生物の一見見逃してしまいそうな特徴に対し生物学者の側から積極的に疑問を出しそれに対して論理的な推論を与えようとするという姿勢である。具体的にいうと、なぜ動物は光合成をしないのかという疑問に対して光合成には広面積を要し移動に不都合だからという理由がつけられる。この論理の明快さに非常な感銘を受けた。またこのような事例を通じて生命がなにげなく行っていることの中にも実は深い論理と合理性とが潜んでいることがわかり、生物を履修していない僕でも非常に興味のわく面白い内容であった。このように内容が理解できたのは教授がこちらの理解度を気になさってたびたび基本的な単語の定義や意味などを細かく説明してくれたからでもあり、次回からの教官にもそのような配慮をお願いしたい。第一回の講義がこのように満足のいくものであったため次回からも出席しようと思う。


私は高校時代にも生物を学んでいたのですが、光合成というのは単に植物が自分自身の栄養を生成する活動であり、酸素はその副産物として作られているという認識をもっていました。したがって、光合成により発生した酸素が現在地球を覆っているオゾン層の形成に関わっていたということは思いもよらないことでした。このことはつまり今からでも地球の緑化をすすめれば再度オゾン層を構築することが可能であるということを意味するとみていいということでしょうか。緑を増やすことは二酸化炭素の軽減にも役立つわけですから地球の温暖化をくいとめることにもつながるでしょう。しかしこれはあまりにも楽観すぎるとらえかたにすぎません。現在の日本をはじめ多くの先進国は、木々を伐採したあとの地を利用しなければこれ以上の発展が望み難い状態にあるわけですから。この先植物がいかなる形で順化適応していくのかを自分なりに考える契機にしたいと思います。(396字)


「四次元の光合成」を受講しての感想は、文科生も結構いたのでそれに配慮なさったのだと思いますが、高校で生物を履修した理科生の僕にとっては少し物足りませんでした。光化学系の仕組みなどをもっと詳しく知りたかったです。(鉄硫黄クラスターって何ですか?)ところで授業中に空気中の二酸化炭素濃度上昇による地球温暖化について触れていましたが、光合成を行う植物にとってはよい影響を与えるのではないでしょうか。自然状態では二酸化炭素濃度と気温が限定条件となってしまい、最大速度で光合成を行うことができないからです。光合成速度が上がれば植物の成長速度も上がり作物の収穫量が増えるので、人口増加による更なる食糧不足が懸念される人類にとってもある程度ありがたいことだと思います。よって、温暖化を防ごうとするのなら産業界からのCO2排出量の規制よりは、農林業によるCO2吸収量を重視すべきだと思います。


「光合成」という言葉を初めて耳にした時、CO2を吸収しO2を放出するという不思議な作用を持つ植物は、O2が生存の絶対条件である人間の心強い味方だと思った。人間のためではなく、CO2とH2Oから糖を合成することが植物自身の生存に必要であるのだが、今回の講義で、巨視的観点からの光合成研究として植物プランクトンの分布を地球的規模で観測することによる温暖化解消の試みがあることを知り、人為的にではあるが壊すのではなく増やすことで人間にも利益があるなら試みる価値があるのではないかと思った。本で調べると(高校では生物を選択しませんでした。)、光合成が行われる際光のエネルギーによってクロロフィルやカロチノイドに含まれるP700やP680という物質が励起状態の電子を生じ、それが元の基底状態に戻るときに螢光がでると書かれていた。植物プランクトンはその螢光で観測される。植物と光との意外な関係を見た気がした。


第一回目の講義を経て、私が高校で学んだ「生物学」はほんの一かじりにすぎなかったのだな、ということをまず知らされたと思う。また光合成や植物という高校教科書ではわずか数ページで書かれているものに、今まで知りもしなかった「深さ」があるという印象を大きく受けた。中でも、DNAのマイクロアレーの利用による発現の網羅的解析などの新たな応用にはとても驚いた。同時に、高校教科書をはるかに超えた広い科学の世界が存在することに興奮と期待を覚えた。また、今まではただ当たり前のこととしてしか受け止めていなかった「動物が光合成をしない」ことの理由を知ったときは、自然の効率のよさへの追求に感銘を受けるとともに、知識を鵜呑みばかりしていたじぶんを変えねばというあらたな意識が私の中に生まれたと思う。先端生命科学という分野は先日知ったばかりであるが、今後のゼミが非常に楽しみである。


地球にとっての太陽の役割(=エネルギー源)ということや、もやしの話は中、高の時の生物の授業で教わったことと似ていた。「動物はなぜ光合成をしないのか」に対してわたしは「移動できるのであれば捕食によりエネルギーを得る方が効率的だから」だと思っていたのだが一概にそうはいえないのだろうか。それとも因果が逆なのか。植物がどうやって成長するか、は幼い頃の疑問であった。生物の学習に興味をもったのもそのような存在するのに目に見えないことも教えてくれるからであった。四次元の「生物」とは少しつかみにくい。高校生物でいえば「遷移」くらいである。もっと知りたいとも思った。もっと知りたいと思うもののなかには遺伝子関係がある。調べて分かったがDNAとは遺伝子の本体であるらしい。あとゲノムという言葉は二、三年前の辞書には見当たらなかった。最先端の生命科学とは興味深いものばかりである。


光合成という小学校で習うような現象から、大きなサイエンスの世界が広がっていることに驚いた。DNAというナノメートルレベルの現象から地球規模での温暖化現象まで、三次元空間を横断したかと思えば、時間軸の観点まで持ち出して、長期的な展望を広げる。おそらくその全ての分野が何らかの形で有機的に絡まって、大きな体系を作り上げているのだろう。また個人的に関心を持ったのは、植物(や動物)に対して、機械論的な扱いだけでなく、目的論的な視点が所々に導入されていたことだ。もやしが日陰で細長く伸びることに対して、「もやしが、まだ地中にいると勘違いするから」という説明が加えられると、時に無味乾燥な科学の世界が非常にダイナミックに感じられる。もちろん先生は丁寧に言葉を選んでおられて、上の台詞そのままには喋られなかったが、僕にはそのような意味としても聞こえた(単なる勘違いなのかもしれない)。当然ながら科学に求められるのは、解釈する人間の主観が混じるとはいえ、可能な限りの客観性だろう。科学を科学たらしめてきた大きな部分は客観性と再現可能性に有るのだろうから。しかし時に植物に(そして物理法則にだって!)何か意志のようなものが垣間見える時、そこにもまた科学の醍醐味が有るのではないかと思う。


「4次元」たる主題には少々そぐわないのかも知れないが、私が今回の講義で興味を引かれたのが、植物の生育状態における明条件下と暗条件下での違い、であった。暗条件下で成長点が下向きになるという事実すら知らなかったが、それ以上にその暗条件下(自然界では「地中」である)での形態というのが、できるだけ効率よく地上に達し、そして光合成を行うことを目指すものである、とのことなのだ。地中と空気中の判別はできぬのであろうか、という点が実は少々引っかかったのではあるが、ともあれ植物の光合成を行うための戦略に驚きを覚えたのである。
 また、「動物の光合成」の項で、動物と比較して如何に植物が光合成に適した形態を成しているか、改めて考えさせられたのだった。食物連鎖の底辺たる光合成によるエネルギーが斯くも巧妙な戦術によって造られるとは、なんとも爽快だった。


文系学生や生物未修者が多いことを考慮されて先生もだいぶ遠慮して授業を進めていただいたように思います。しかし、,”ポストゲノム時代の生命科学”という講座タイトルに惹かれてきた学生達ですし,本講座は全学自由ゼミナールで,成績にもあまり関係ありませんので,もう少し突っ込んだ内容でも良かったのではないかと思います。今回の授業では,”なぜ光合成の時間軸に沿った経過が面白いのか”といったことをもう少しくわしく聞きたかったと思います。


人間が知恵と技術を用いて太陽エネルギーを自らのものにするのと同様に、植物は光合成によりそれを行っている。この営みの結果、人間は資源の枯渇などで自らを苦しめているのに対して、植物は酸素を発生させることによりオゾン層の形成に貢献し、二酸化炭素の吸収により温室効果の削減をして自らにとって+要素のものへと結びつけている。ここに人間が作り上げたエネルギー変換のシステムと自然界のシステムの歴然たる差のように思える。 もう一つ授業中に気になったことは、「船で鉄を海にまくと植物プランクトンが増える」という話の途中先生がおっしゃった、「しかし、そうやって生態系をかってに壊していいかはわからない」という言葉だ。理系の学問の利用はみな自然の変化をもたらすように思える。そう考えるうちにどういう技術が善であるかが分からなくなった。善い技術とは何かについてアドバイスを頂きたい。


今回の講義では、光合成が地球の歴史と共に進化し、環境からの作用を受けると同時に環境の変化を促してきたということがわかりました。これから、光合成はどう進化して行くゆくのでしょうか。第一は、光合成速度の上昇です。現在光合成を律速している二酸化炭素濃度や温度は、人為的な要因によって上昇しつつあります。進化ではなく、単なる変化なのかもしれませんが、確実な兆候です。第二は、光合成をする種の増加ではないでしょうか。講義では、動物の光合成は移動性からみて不利だと聴きましたが、たとえば植物における食虫植物のように、主たる栄養源を補うという形であれば、比較的下等な動物において出現する可能性はありますし、表面積を増加させる何らかの手段が講じられれば、可動性があるぶん光を得やすいのではないでしょうか。地球環境に合わせて、これからも光合成は際限なく進化してゆくでしょう。そして光合成の進化が止まらない限り、人の光合成研究も止まらないことでしょう。大変考えさせられる講義でした。


今回のゼミを聞いて驚いたことは、とても説得力のある推論が実証されていない、ということです。もやしの「形態形成は光合成の効率を上げるのが目的」だとか「動物が光合成しないのは広い面積をもって移動するのが非効率だから」とか…。話を聞いていた私はなるほどと納得しましたが、実証されていなければ真理ではありません。あんなに筋が通っているのになぜ実証されないのか不思議に思ったほどでした。でもその厳密さが科学なのだとも思います。
 また、光合成という現象への多様なアプローチ方法もおもしろかったです。原子や地球規模の視点でみたりするとどうなるのか、という例がよくわかりました。ただ、主題でもある時間軸をからめた「四次元の光合成」の意味があまりよくわかりませんでした。もっと具体的に例をだしてほしかったです。そこが残念でした。


第1回目の講義ということで、どんな内容なのかまったくわからない状況で聴いていましたが、いろいろ新しい事を学べて僕にとってはとても有意義な講義でした。僕は高校では生物選択だったので、光合成の事も少しはわかったのですが、この講義を通して、光合成自体についてはけっこう勉強したけどその周囲に及ぼす影響やこれからの研究に関してはほとんど無知であることを知りました。僕はやはり将来生物学研究、特に遺伝子学やゲノム関係の方面に進みたいと考えていますが、これまでの勉強方法では無理だと思いました。講義については、個人的には環境ストレスや老化、DNAマイクロアレーなどをもっと掘り下げて説明してほしかったです。生物情報工学の話ももっと詳しく聴きたかったです。遺伝子の解明が進み、生物学が新たな未知の世界に入ろうとしてる今、僕たちのやるべき事、またできる事についてぜひアドバイスを。


四次元の光合成ってなんだ?この題名に興味を引かれて講義を聞いた。ぼくは今まで生物の勉強をしっかりやったことがないので少々心配だったが、わかりやすい、いい講義だった。ぼくの興味のある分野はゲノムで、今様々な生物の塩基配列、そして遺伝子が明らかになっているがはっきりいってそれで何ができるのか、それをどう活かせるのかに興味がある。講義の最後の部分で、遺伝子変異の網羅的解析についてのところで、新しい手法が必要とあった。変異してる部分が一つなら、ある変化が起こったならばその変異が原因とわかるが、多数の変異が重なるともう何がなんだかわからないということだが、これを聞く限り、ゲノムの分野はまだまだこれからだと感じた。分かっていることを実際に利用している部分はまだ数少ないのだろう。今加熱しているゲノム業界でこれからどういう方向に進んでいくのか、それを学んでいきたい。


私は高校時代生物を学んでいなかったので今日の講義は難しかった。最も面白かったのは動物と植物の違いだ。動物は自分の体温を常に一定に保とうとし、植物は環境に適応しようとするということだったが、それを知り植物も生命なんだなあと思った。また動物が機動力を持った上で光合成を行えたら効率的な気がする、それがなぜできないのか不思議に思った。次に面白かったのは海上の葉緑素の分布を調べるというものだった。葉緑素が密にある場所は鉄が多く含まれる場所だというのは非常に興味深かったが、鉄の少ない場所に鉄を補い葉緑素を増やそうという試みは自然の流れに背くことであり途方もないことのように思われた。講義の終わりの方にポストゲノムの話があったが、それと光合成の関係がよくわからなかった。また遺伝子が具体的にどのように生命に関わっているのか、生命は遺伝子により定義されうるのかといった疑問がわいた。


まずOHPの字が小さくて読みにくいです。その点を改善していただきたい。原子力は太陽に影響されないっていってましたが 石油は作り出すことはできないのでしょうか。もしできたらすごいですよね!光合成する生物の出現で今の生物が生きていられると言うことをはじめて学びました。もやしの話はとても興味深いものがありました。いくら遺伝情報としてそれがインプットされているとはいえなんかすごいものを感じます。脳がないのにどうしてってかんじです。遺伝子が一体どの様な仕組みで回りの環境に適応しているのかがもっと詳しく知りたい。初めは人間のことについて取り上げると思っていたので肩透かしだと思ったのですが結構新鮮な話ばかりでした。これからの授業も期待しています。


光合成について、どのような遺伝子解析が行われているか調べてみた。
  光合成系の遺伝子解析は、葉緑体DNA、RuBPカルボキシラーゼ、  ATP合成酵素などの解析が進んでいる。これらの研究の応用として、組換えDNA技術による光合成能の向上が考えられている。例えば、光呼吸によって二酸化炭素を損失するC3植物のRuBPカルボキシラーゼ遺伝子の改変である。この酵素は、光呼吸のオキシゲナーゼ活性と、炭酸ガス固定のカルボキシラーゼ活性を有している。したがって、オキシゲナーゼ活性が低く、カルボキシラーゼ活性の高い酵素をDNA組換え技術でつくり、これを葉緑体に導入すれば、光合成能の高い植物を作成できる可能性がある。このように光合成に関与する遺伝子とそのメカニズムを明らかにし、その知識を有効利用すれば、食料増産などの産業に役立つのではないかと思う。


光合成は水、CO2からグルコースを合成するという植物にとって生育に必要な行為であるばかりか、CO2吸収による温室効果抑制や、オゾン層の形成など、地球環境を形作る働きも持っている。また、生物の得るエネルギーは光合成によって太陽エネルギーから変換されたものであり、人間にとっても光合成から受ける恩恵は大きい。
 現在、光合成の研究スケールはDNAマイクロアレーによる遺伝子発現の調査といった分子レベルから、森林の成り立ちといった地球規模の研究にまで、広範囲に渡っていると学んだ。近年、生物学の研究では、ゲノム解析のようなミクロな分野が取りざたされているが、地球規模でのマクロな生物学がもっと注目されてもよいと思う。さらに実験室の中の研究だけでなく植物プランクトンを増殖させるため、鉄を海に入れるといった実際の地道な行動も必要ではないかと、講義を聞いて考えた。 


高校では光合成について勉強したが今回の講義を聞いて光合成が高校で習ったものよりももっと複雑で奥の深いものだということを感じた。高校の授業では光合成色素の名称を覚え、光合成の化学反応式を覚え、反応途中の産物を覚え、と暗記することばかりだったので今回の講義を通して私の光合成に対する印象は変わった。今回の講義の中で特に興味深かったのは光合成を行う植物は蛍光を発行するということだった。海洋植物が発行する蛍光を宇宙から感知することによって光合成を行っている海藻の群生場所、すなわち海洋生物全般の生育場所がわかるということは私にとって不思議なことだ。こうすることによって漁場がわかるというのは一般の人にとっても重要なことだと思った。また生育場所を決める、すなわち限定要因が鉄であるということも興味深かった。今回の講義では大学の授業では高校のときのように受け身でなく積極的に自分から考えなければならないのだとあらためて感じた。


光合成というと、 酸素発生やオゾン層の形成と結び付けて環境問題との関わりばかりを考えていたが、 今回の講義の中では、 地球規模の大きなレベルだけでなく、 原子レベル・遺伝子レベルでの光合成研究が進んでいることが示され、 新鮮に感じた。 特に、 最近ヒトゲノムプロジェクトで DNAの塩基配列解析がほぼ完了したこともあって、 ゲノム情報を利用した研究の方向性に興味を感じた。また、高校生物では光合成はほぼ植物との関わりでしか論じられていなかったが、 講義を通じて光合成と生命の発展との関わりにも興味を持った。 我々高等動物の進化の根底に光合成が深く関わっているということは、 現在世界中で森林が減少している状況と結び付けて考えた時に、 非常に切実な問題として感じられる。 こうした問題は、 出版物やインターネットで時間をかけてもっと具体的に調べてみようと思う。


動物とは何か。植物に対立する概念なのか。聴講後この疑問が生じた。百歩譲って生物に有効な定義が与えられたとしよう。生物は動物と植物に二分されるのか。講義中に取り上げた植物プランクトンはしかしいずれに属するのか。まずは高校の教科書。どこにも記述はない。困った時の広辞苑。動物:運動と感覚の機能を有す生物群。植物:根が生えて固定的な生物をいう、菌類・細菌類・原生動物の一部も含む。困った。なんとも割り切れない定義である。ネガポジのような関係にないのだ、両者は。生物の教科書に付随する資料集を思い出す。お、巻末に分類表が出ている。しかし混迷の度合いは深まる。「前細胞段階」ウイルス、リッケチア、「モネラ界」細菌類、「菌類界」「地衣界」云々。細胞をユニットとする生物の分類は一部日常感覚とずれる。本講義から植物の必要条件として光合成を挙げたいが、専門的には誤りであろうか。


自分はまず、講義の前に配られたプリントに書いてあった講義の題目「四次元の光合成」という題を見て心躍らせた。そして実際の講義での光合成研究の方向性についての解説の中、特に制御、環境応答についての所での光合成の解析を時間を含め四次元で行うという話を聞き、納得するとともに、中学校で少し学んだだけの光合成というもののスケールの大きさ、というか、何か奥深いものを感じた。しかし何といっても講義の中で一番驚いたことは、地球温暖化防止の策のひとつとして植物プランクトンを用いる、という策のことである。しかも、海に鉄を撒くと、確かに植物プランクトンの増加は認められており、このようなスケールの大きい実験もなされているのだと驚くと同時に、植物=木・草といった自分が誤りの固定観念をもっていたことにも気づき、反省させられるのだった。


もっと化学的で専門的な話をするものと予想していたのですが、文系の僕にも容易に理解出来る内容だったので驚きました。印象的だったのは動物が何故光合成をしないのかという話題です。それ以上に生物学では「どうなっているか」以外に「なぜそうなっているのか」が重要だという点に面白さを感じました。また、環境応答という言葉は知らなかったのですが、自分の体を変化させて生きるという植物のシステムは、動物の僕にとって驚きでした。もっと詳しい話が聞きたかったので時間が短くて残念でしたが面白かったです。


生命科学において、研究対象がミクロになればなるほど時間的スケールも小さくなり、逆にマクロになると非常に長いタイムスパンで対象を観察しないと、状況が明らかにならない、という研究対象の大小と時間を絡めた話が印象的だった。特に生態系を地球規模で考える場合には、超長期的視野で現象をとらえる必要があるだろう。単純にミクロ的現象の和で環境問題をとらえられない理由がここにあると思う。


光合成を利用して地球環境を改善しようという研究が大変興味深かった。特に「船でニュージーランド沖に鉄をばら撒いてかき混ぜてみたらクロロフィルの量が増えた」というのがおもしろかった。鉄の量がクロロフィルの量の律速条件だというが、鉄がクロロフィルの生成にどのように関わっているかわからなかったので調べてみた。すると葉緑体はタンパク質にマグネシウムが結合したもので、鉄はその結合の触媒であることがわかった。それにしても触媒であるなら鉄自体は消費されないはずなので、「しばらく経つとクロロフィルの量は元に戻ってしまった」というのは不思議である。やはり自然はそう簡単に人間の思いどおりにはならないのだろうか。今回の講義を聴いて、今まであまり好きではなかった植物の分野に興味を持つことができてとてもよかった。


講義の題名が「4次元の光合成」ということなので、僕はここでは光合成の中心物質であるクロロフィルについて調べたことを簡単にまとめてみたいと思います。多くの植物は葉緑体内部にクロロフィルaという物質を持っていますが、これは光合成において主に
   1)光を集める。
   2)エネルギーを反応中心に運ぶ。
   3)電子の流れを産み出す。
   4)化学エネルギーに転換する。
という過程に関わっています。ここでは1)について述べたいと思います。植物は光合成をするのに光エネルギーが必要なため集光装置を持っていますが、これには反応中心近傍に存在するものと周辺部分に存在するものがあります。これらは蛋白質でありそれぞれクロロフィルaが結合しています。また光合成色素にはクロロフィルaの他にクロロフィルbという物質があり、これは周辺部分の蛋白質にしか結合していません。ここで重要になるのはクロロフィルbはクロロフィルaよりも吸収する波長が若干短いということです。これによってより広い波長の光を吸収できるわけです。植物はaとbの比率を動的に制御することにより効率的に光合成をすることができるそうです。このようなシステムが自然に産み出されたという事実には感動を覚えます。植物にもまだ興味をひくものがありそうです。


私は以前からなぜヒトはミドリムシの様に光合成しないのか不思議に思っていました。食物を摂取して光合成もしたら地球の温暖化も少しはましだったろうし餓死する人も減ったろうと思ったからです。講義の中で動物は移動するときに広い面積をもっていると不利なので光合成をしないという話を聞いて少しは納得しました。でもやっぱり少しでも足しになるなら光合成すべきだと思ったのでどれくらい足しになるか調べてみました。ヒトがC4植物の葉緑体を持っていて露出部分の表面積が1平米とし、日照16時間と仮定しても光合成によって得られる熱量はせいぜい42kcalでやはりほとんど足しになってないことがわかり、はじめて聞いた成長点の位置の話も含めてやはり生物はよくできていると思いました。また、高校生物では光合成は細胞、個体レベルでしか習わなかったので、光合成の研究が地球環境問題の解決に役立つかもしれないと言う話は新鮮でした。21世紀もいろいろな研究が私たちの抱えるたくさんの問題を解決していけばいいと思います。


文系でしかも高校時代に生物を全く取っていなかった私が、前回の授業で一番印象にのこったことは、単純なことだが日光の有る無しで豆の発育が違うということだった。もちろん、小学校や中学校でこの違いはすでにならっていたが、あらためて授業を受けたことで豆がモヤシになることに不思議さを感じた。モヤシは太陽の光を手に入れるために細長く成長するが、モヤシはまだ生まれてから一度も太陽を見たことがないはずである。にもかかわらず、モヤシは太陽の存在をすでに知っている。そしてその見たことがない太陽をみるまでは通常自分が作り出す葉緑素を作らなくてもいいということも知っている。これは祖先から受け継いでいる遺伝子のおかげなのだろうが、それならば植物に限らず、われわれ生命はどこまでこの世のことを生まれた瞬間から知っているのだろう、という疑問が沸いてきた。


まず、遅れてすみません。使い方が分からなくて、しばらくとまどいました。先日の講義は以外とおもしろくて良かったです。特に、自然淘汰の立場から、動物の進化やモヤシの形と成長を分析したところが非常に興味深かったです。具体的に言うと、論理的に考えて、光の密度が小さいので光合成を効率よくするには移動能力や体の表面積が小さいことがかえって不利であることを説明できることや、モヤシが環境によって形や成長の具合が異なる理由が説明できることがおもしろかったです。また、鉄分を海に投入することでそこに生息する植物や魚の数を増やす発想も興味がもてました。幅広くいろいろなことを教えてもらったわけですが、実は、もう少しテーマをしぼって詳しく話してくれた方が望ましかったです。その方がいろいろと具体的な話が聞けましたし。せっかく大学に来ている以上、できたら専門的な話を優先的に聞きたいです。


遺伝子変異の影響を調べるに当たって従来の方法では無理だというのはよくわかりましたが、具体的には今はどのような新しい方法が行われているのですか?あと従来の方法といったものもどのようなものなのか教えてください。
 次に光合成には広い面積が必要であるっとおっしゃたことには正直びっくりしました。今までそんなこと考えたこともなかったので。。。広い面積をもって移動するのが効率的でないため動物が光合成を行わないことにも非常に興味がもてました。ところで植物の面積というのは葉1枚のことをいうのですか?それとも植物体の表面積のことをいうのですか?もしそうなら大きい動物だと小さい物より植物より表面積ははるかに広いし光合成効率もよいと思うのですが?この点はどう説明できるのでしょうか?
 最後に今回の授業でお話になったことについて進展がおありでしたら教えてください!以上でレポート終わります。


僕はDNAやゲノムといった分野に興味があるのですが、高校では生物を履修していなかったので少し不安に思いながら本講義をとっています。これから自分でも勉強を進めていきたいと思っていて、この講義を大きな足がかりにしたいと思っています。講義内容にあった、21世紀に解き明かすべき生命科学の大きな謎、人類への課題、というものにも早く触れてみたい、とわくわくしています。 第一回の講義では、光合成研究の方向の一つとして挙げられていた、制御環境応答:時間を含めた四次元の解析、という項目に納得させられました。科学が発達するにつれ、例えば原子レベルでの物体の解析などのように、科学の目はミクロの方へ向くようになる、と僕は偏って感じていたようで、地球レベルでの研究にも同じように力が注がれていることを今更ながら認識させられました。今回の講義はとても分かりやすかったですが、次回の講義(人口核酸で病気を治す)も生物の知識がない者にも分かるように講義をしてほしいと思います。


”光合成”という聞きなれたメカニズムがテーマであり、またスライドを使っての講義だったので、生物を履修していない私にもイメージが膨らみました。地球がまだ二酸化炭素で覆われていた頃から、現在にいたるまでの経緯や、場所や環境によって異なってくる植物の形態を合理的に説明していくところにも興味を覚えました。また、これからのポストゲノム時代の中で、特定の塩基配列がどのような役割を果たすか、ということを特定する効率的な技術がまだ確立されていないという点にも少なからず刺激を受けました。レポートというよりは感想文になってしまいましたが、今回はこれを提出します。


授業の最後に「DNA microarray」という単語が出てきたので、講義の主題「光合成」とは直接は関係無いが、この単語について調べてみた。ガラス板などの基板に多数のDNAを配置し、この上に蛍光標識したDNAを反応させると、塩基配列の相補性によって結合したものが見分けられるため、どの遺伝子が発現しているかが、多数の遺伝子の状況が同時に分かる、という技術である。つまり、多数の反応が一度に関わっているような場合でも、関連する遺伝子が一気に分かるというわけだ。しかし、分析しようとする反応系以外で働いているものとはどうやって判別するのであろうか。その点が今の私にとっては知識不足な点である。


今、空を見上げると、太陽が輝いている。まぶしい、ただそれだけしか感じない。講義の中で先生は、太陽は地球のエネルギー源であり、人間のエネルギー源でもあるとおっしゃった。我々はそのことに全く気づかないでいる。私自身もそうであった。太陽の恩恵を感じる時といえば、よく晴れた日に洗濯物がよく乾いたり、冬の寒い日に太陽の光でわずかな暖かさを感じる時ぐらいであった。もし、たった今、太陽がなくなったとしても、電気もあるし、充分生きていけると考えていた。太陽は偉大である。、私は講義を聞いて一番強く、このことを思った。話は変わりますが、私は今まで生物という科目を一度も勉強したことのない人間です。このゼミを受けるに当たって、かなりこのことで不安に思っていましたが、第1回目は、興味深く聞かせていただき、理解もしやすかったです。勉強になりました。


今回の題材が光合成ということで、高校時代に生物を選択していない僕でも何とかついていくことができましたが、いくつかの新しい発見がありました。シアノバクテリアという光合成をする生物の存在、光というエネルギーはエネルギー密度が低いこと、植物プランクトンを発生・増加させるためのユニークな実験などなど。しかし、僕が一番新鮮に感じたのは、「光合成研究の方向」についてでした。勿論、高校時代に生物を選択していないといっても中学生の時に光合成は葉緑体で起こり、ヨウ素液を使った実験で、証明もしました。高一の時に受けた授業で植物についてもしましたが、その植物について「未だにわからないことがある」ことが意外だったのです。それも、原子レベルの解析といったより細かいところへのアプローチだけでなく、地球規模で評価するといったより大きいところへのアプローチをしていることに対して何よりも驚きを感じました。木(単体)のことがわかれば植物について全て理解したことになるという先入観があったからです。その後、ゼミに関係ある文献ということで、「光合成(西村光雄著)」を読みました。序論以外は生物をやっていない者が読むのは無謀だと思い断念しましたが、序論を読むだけでも発見の連続でした。例えば、「光合成とは生物が光エネルギーを生物学的に利用できる形に変える複合過程」であって、植物のしているのは、光合成の一つの型でしかないということや、「光合成は地球上最大の化学過程であって、物質的・エネルギー的に地球上の他の過程に大きく影響を与えている」こと、光合成の特徴に基づくバイオマスの利用や光エネルギーの化学的変換を目標とする人工光合成の研究についてでした。はじめは生物を勉強していないことが、ゼミを授業に取り入れる不安定要素でしたが、自分が趣味があることを分かりやすくやって頂いて本当に安心しました。


感想。僕は生物を高校で習わなかったので,理解できるか不安でしたが,講義は分かりやすく,安心しました。今回のテーマは光合成ということで,動物は何故光合成をしないか,鉄を海にまいて植物プランクトンを増やせるか,といった疑問も扱われ,面白かったです。ところで,特に気になったのは,「何故そうなるのか」という問題提起の仕方です。この問題提起は理論を構築する上では重要なものだと思いますが,適切なレヴェルでないといけません。例えば,人が手を上げられるのは何故かという問いに対しては,信号が脳から送られ…と説明されるでしょうが,更にそれはなぜかという風に突き詰めていくと,どうしても壁にあたってしまうように思われます。そして,これを解決できるのは視点の切り換えだと思います。講義で登場したグローバル,微視的視点といったものを使いこなすことだと思います。これからの講義ではこういったアプローチ方法も学んでいきたいと思っています。
(講義への注文)最先端の研究を紹介する時にはどの部分までが解明されているのかということを出来れば明言していただきたいです。