蛍光と光合成に関するQ&A

このページは、パルス変調を用いた蛍光測定、光合成測定などに関する情報を共有することを目的として設置しました。質問をお寄せいただくときは、光合成質問箱をご利用下さい。 お寄せていただいた質問と回答はこちらで公開します。


Q:シングル・ターンオーバー・フラッシュ(STF)をインターバル有りで複数回照射した際のFv/Fm値の変動に関して幾つかご質問させていただく思います。
1. 暗順応させた植物にSTFをパルス照射した際に見られるFv/Fm値変動の周期性の原因 :暗順応させた植物に対してSTFを数十~数百ミリ秒間隔で照射すると、周期的なFv/Fm値の変動が起こるというデータを幾つかの論文で見かけました(Ananyev, G. and Dismukes, G., Photosynth. Res. (2005)のFig.3など)。最初これはクロロフィル蛍光の誘導期現象のようなものだと思ったのですが、そもそも連続光ではなく、STFのように1度の照射で1電荷分離が起きるような閃光を20回程度照射する場合でも蛍光誘導期現象は起きるものなのでしょうか。20回程度の電荷分離で状態が安定するとは思えなかったのですが。また、この周期性に関して具体的な原因は判明しているのでしょうか。最初私は「周期的」というフレーズからKokモデルの酸素発生の4周期振動のように、何か関連物質の分子構造に由来したものなのかと思ったのですが、少なくともKokモデルではFv/Fmの周期的変動は自分では説明がつきませんでした(S0-S4の移行毎に電荷分離が起きているので、S4→S0の酸素分離のように周期的でなく定期的に電荷分離が起きており、コンスタントなQAの還元が起きているはず?)。
2. STF照射によるFv/Fm測定を異なる照射頻度で行う実験的意味:上記で挙げた論文中で、STFの照射間隔を短くするとFv/Fmが下がり、照射間隔が1 ms(照射頻度=1 kHz)より短くなると周期性が失われることが記載されておりました。このようにSTFの照射間隔によってFv/Fmの値の挙動が異なることは理解しているのですが、ある論文で2つのSTF照射間隔(4 Hz & 100 Hz)でFv/Fmを測定しているデータを見かけました(Krishnan, A. et al. Plant J. (2015)のFig. 3(a))。このように、2つの異なる照射間隔でFv/Fmを測定する実験的意味とは一体何なのでしょうか。データを見る限り、照射間隔が短いほど光合成活性の異なる2サンプル間でのFv/Fmの差が明確に現れるようですが、この場合、照射間隔の長い測定にあまり意味があるように思えないのですが、何か意味があるのでしょうか(単に照射間隔が長いものと短いものの差から、光化学系IIの下流の阻害状態などを推定するため?)。(2016.11.8)

A:
 1.ここで見られている変動は、一般的な意味での蛍光誘導期現象ではありません。むしろ、ご指摘のように酸素発生の4周期振動を反映していると考えられます。当該論文では、その理論的な背景をはっきりとは述べていませんが、実験的には酸素発生の振動ときれいに対応していますので、事実としては間違いないように思います。一方で、ごれもご指摘のように、電荷分離によるQAの還元だけでは振動を説明することはできません。基本的には、酸素発生系のS状態に依存して蛍光強度が変化すると考えることになると思います。熱発光/遅延蛍光の時のように、電荷再結合による発光を含んでる可能性があるのかもしれません。
 2.照射間隔を短くして測定を行った場合場合、S状態の進行などの光合成素過程が遅ければ遅いほど(素過程の進行が追いつかない状態で次の光が来るため)Fvは小さくなると考えられます。つまり、これもご指摘のように、照射間隔を変化させたときの蛍光の変化を見ることにより、相対的な光合成の効率を見積もることが、原理的には可能です。ただ、これだけを根拠に光合成の効率を議論するのは危険だとは思いますが・・・。(2016.11.9)

Q:ご回答いただいた内容に対して、追加で質問させていただきたいことがございます。
1. STF照射で見られるFv/Fmの変動が酸素発生系のS状態に反映して起きているということ、またそれが酸素発生と対応することに関しましては、私も論文で記述を確認することができました(Kolling, D.R.J., et al. Biochem. (2009))。ただそこで思ったのですが、Fvが下がる、つまりFmが下がるかFoが上がっているということは、同時にQAの還元(と、PQプールの還元蓄積)も起きているということだと思います。ということは、前回の質問で述べたデータ(横軸: Flash number、縦軸: Fv/Fm の周期的なグラフ)では縦軸にFv/Fmと記載されていますが、実質的に見ているのはFv'/Fm'という認識でよろしいのでしょうか(もちろんFlash number=1の数値はFv/Fmだと思いますが)。
2. Fvが小さくなる理由にS状態の進行などの光合成素過程の進行の遅さを挙げていただいておりますが、少なくともS状態の素過程の進行は、一般的な高等植物のPSIIにおいては、一番遅いS3→S4の移行でも1 msという記述を見かけました(Ananyev, G. and Dismukes, G.C., Photosynth. Res. (2005))。その場合、照射間隔が1 msより短い(i.e. 1 kHz以上)STF照射でない限り、Fvの減少は起きないのではないかと思えたのですが、実際にはKrishnan, A. et al. Plant J. (2015)のFig.3(a)のように減少が起きています。これはつまり、生物種や生育環境、変異などによりS状態の移行速度が低下し得るいうことでしょうか。
 あと、追加でもう一点ご質問させていただきたい点がございます。論文の光合成に依る酸素発生に関するデータの解釈の仕方なのですが、ご回答いただけましたら幸甚と存じます。上記で挙げたKrishnan, A. et al. Plant J. (2015)のFig. 4なのですが、MethodやResultの部分を読んでも正直内容を理解できず、また手法の元論文がロシア語の論文で、似たようなデータを載せた論文も見つけれず、データの解釈に困っております(特に下側のDCMU添加時のデータ)。Result(951ページ、Normal PET rates through PSII and PSI may be restored in sta6の二段落目)に記載された内容を読む限り、最初酸素発生が瞬間的に増えるのはPQプールの還元、その後の酸素発生の増加はNADPの還元と炭素固定に由来すると記載されております。そのため、私の理解としては、
i. 飽和光を当てた直後からPQプールがある程度還元するまではP680→QA→PQプールへの電荷分離+電子移動が素早く起こるため、酸素発生量が急増する
ii. PQプールがある程度還元されるとP680→QA→PQプールへの電子移動が抑制されるため、酸素発生量が下がる
iii. Calvin回路などの炭素固定系が徐々に活性化されるとPQプールの再酸化が進み、再びP680からの電荷分離+電子移動が活発化して酸素発生量が増加する
というように理解いたしました。しかし、上記の理解の場合、Fig.4の下側のDCMUを添加した際のデータでも、最初QAが全て還元されるまでの瞬間は電子移動が起こせるので酸素発生量が増えるかと思ったのですが、実際には一切の増加がなく、飽和光を当てた直後から酸素発生量がマイナス(酸素消費量が増加?)になっております。これは光合成はDCMUによる阻害で起きず、光呼吸のみが発生した結果、酸素が消費されているというという認識なのでしょうか。また、だとしたら飽和光を止めた直後にDCMU添加+cw15(変異なしのChlamydomonas reinharditii)で見られる数秒の酸素量増加は何に起因しているのでしょうか。(2016.11.9)

A:
1.この実験条件で、蛍光強度の変動がQAの酸化還元のみで起こっているかどうかはわかりません。同じQAの還元状態でも、S状態の差によって蛍光の差が生じている可能性はあります。ただし、(特に光合成の効率が何らかの要因によって低下している場合)ご指摘のようにQAが励起光照射前に還元されている可能性も十分に考えられます。実際のメカニズムを示されているデータからだけで判断するのは難しいように思いました。
2.ご指摘の通りだと思います。S状態の進行が生物種によって異なるという結論は、この論文においても主張されていますし、ストレス条件に置かれた生物や遺伝子の改変によってでS状態の進行が遅くなる例もあったと思います。
3.これについても、DCMUを添加していない場合のメカニズムについては、ご推測の通りです。一方で、DCMUを加えると、移動する電子の数は、QAへの1電子のみ、不安定なフェオフィチンを数に入れても2電子です。当然ながら酸素は発生しません。一方で、DCMU存在下で見られる酸素吸収の原因は、このデータからだけでは判断することはできないと思います。方法論としては、いわゆるジョリオタイプの酸素電極を用いた酸素発生活性測定であるように思えます。ジョリオタイプの電極では、電極近くの酸素濃度を測定する(つまり、試料溶液全体の平均的酸素濃度を見ているわけではない)ので、cw15で見られる見かけ上の酸素濃度の上昇は、最初に吸収されて低下した酸素濃度が、拡散によって元の状態に戻った可能性もあります。(2016.11.9)


Q:junior-PAMで実験をしています。ETRが光合成速度にほぼ対応するようですが、あるAとBという条件で、ETRがAの方が高かったとしても、CO2吸収で測定した場合にBの方が高くなることもあるのでしょうか?(2016.1.4)

A:あります。一つは、ETRの計算方法に問題がある場合です。ETRを装置任せで計算させていると、葉の吸収率を0.84に設定して計算する場合が多いようです。吸収率が大きく異なる葉で測定する場合、当然それぞれの吸収率を使う必要がありますが、そこに考慮を払わないと、間違った結果に結びつきます。例えば、斑入りでクリーム色になった葉の光合成を測定する場合などに、このようなことが起きます。
 他の可能性としては、気孔の開閉や、カルビンベンソン回路の活性などの影響が考えられます。CO2吸収を見ている場合には、気候の開閉の影響を直接受けますが、電子伝達への影響は間接的なため、短時間の測定においては、気孔が閉鎖していても、ETRとして計算した光合成速度は高く出ることがあります。この場合、十分に定常状態に達してから測定を行うようにする必要があります。
 最後に、クロロフィル蛍光測定とCO2吸収測定を同時にしていない場合は、光源などの条件の違いを反映している場合もあります。光源が異なる場合には、光量子計で同じ光量子束密度を示していても、光合成に対する影響は異なる場合があります。(2016.1.4)


Q:HPいつも拝見し参考にさせていただいてます。さて私は現在MINI-PAMを用いて雑穀の各種ストレスの診断を行おうと考えています。そこでインダクションカーブのO,I,D,P,S,M,Tの各所を比較しようと考えておりますがどことどこを比較するとどんなストレスを診断できるのか、ということを教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。(2015.11.20)

A:これまでのQandAを見ていただくをわかると思うのですが、クロロフィル蛍光の測定というのは、測定自体はボタンを押すだけである一方、その解釈はなかなか難しいものがあります。「どことどこを比較するとどんなストレスを診断できる」といった単純な解釈は存在しないと言ってもよいと思います。特にインダクションカーブを使ったいわゆるOJIP解析は、光合成系への影響のスクリーニングには非常に適していますが、障害部位の特定には必ずしも適してはいません。あるストレスを加えたらばこのパラメータが変化したという論文は山ほどありますが、このパラメータが変化したらばこのストレスを受けているという関係を示した論文はほとんどないでしょう。クロロフィル蛍光で差が見られたらば、その情報に基づいて、最終的にはさまざまな光合成測定をする必要があると思います。(2015.11.20)


Q:Walz社のPAM-2000を用いて高温下で栽培しているダイズのYeild、Fv/Fm、qP、qNを測定したいと考えています。私の研究室の設備上、昼間に葉にアルミホイルをかぶせて暗順応させた葉を暗室に搬入して測定することになります。温度を栽培条件と同一に設定できる暗室があればよいのですが、搬入する暗室の温度制御ができません。Actinic Lightを当ててからFの値が安定するまでの間に高温ストレスからの回復が生じてしまうと思うのですが、ストレスからの回復を起こさず、かつFの値がなるべく安定する時間というのは大体何分くらいなのでしょうか?また、Actinic Lightを栽培条件に近づけるために1500μmol/m2/s程に設定したいのですが、暗順応させてFv/Fmを測定した後の葉にこの強さの光を急に当ててしまった場合、光阻害などによるデータへの影響があると思われます。本日この条件で測定したところFの値がFoより低くなるということは起こらなかったのですが、Fの値がFoよりも高い場合でも光阻害が発生しているということは起こりうるのでしょうか?(2015.8.20)

A:まず、Fの値が安定するまでの時間は、健全な植物に中程度の光を当てた場合は速ければ5分ほど、遅くても15分ほどです。しかし、ストレス条件下に置いた植物ではだらだらとFが下がり続けてそもそも「安定]しない場合さえあります。植物の種類と生育条件、測定条件に依存して大きく変化すると思います。
 Fの値がFoより低くなるのは、非光化学消光が非常に大きくなるときで、非光化学消光は光阻害によっても誘導されますから、「光阻害が非常に大きくなるとFの値がFoよりも低くなる」のは確かです。ただ、「Fの値がFoよりも高ければ光阻害が起こっていない」とは言えませんし、「Fの値がFoよりも低ければ光阻害が起こっている」とも言えません。非光化学消光は光阻害以外の要因によっても誘導されますから。
 というわけで、なかなか、簡単な解決策はないのですが、そもそも「Yeild、Fv/Fm、qP、qNを測定したい」というのは研究目的ではなくて、おそらくは高温ストレスの光合成への影響を評価したいという目的があって、そのための手段として測定をするのですよね?そうであれば、Yieldの測定だけであれば、暗順応の必要がありませんから、現場での測定が可能です。PAM2000は、バッテリー駆動が可能ですから、現場に持ち込めば、現場の光条件と温度条件でYieldの測定は可能です。また、そこから連続測定をしつつ暗幕などで暗くして、飽和パルス光だけを間歇的に照射し続ければ、非光化学消光の回復過程を追うことができますから、光阻害の寄与についての情報も得ることができます。こうして、暗所で十分に時間を置いた際に、もし光阻害から回復するのであればその時のYieldはFv/Fmとして考えることができますし、そうすれば、そのほかのパラメータも計算可能です。そのような研究の進め方のほうが得られる情報量と信頼性は格段に上がるように思います。(2015.8.20)


Q:いつも園池先生のホームページを拝見させていただいています。PAMを用いた植物の高温耐性評価に関する論文を読んでいる中で疑問に感じたことがあり、今回は質問させていただきました。一般的にはFv/Fmなどのパラメーターを用いて「PSIIの量子収量が高温下でも高い値を維持することが高温耐性に寄与している」と結論付けている論文が多いと思います。しかし、Ke Chenら(2014) High correlation between thermotolerance and photosystem activity ? in tall fescue. Photosynthesis Research 112(3): 305-314.の論文では、OJIP-transient curveを用いたクロロフィル蛍光の測定から「高温下においてPSIIの量子収量を低下させることでROSの発生を抑制し、高温耐性を獲得している」と結論付けています。この論文の結論は一般的な「高温耐性=PSIIの量子収量が高い」という理論から外れているように感じます。
・PSIIの高い量子収量は、PSIIの光阻害の程度が低いことを表し、ROSの発生抑制や高い光合成量により耐性を獲得。
・PSIIの低い量子収量は、電子伝達系で余剰なエネルギーの生産を防ぎ、ROSの発生を抑制する。
というどちらの理論も間違っていないように感じます。高温耐性のメカニズムは植物によって異なるため、PSIIにおける高い量子収量は必ずしも高温耐性と関係しないという理解で良いのでしょうか?(2015.2.12)

A:実際には測定条件や栽培条件、植物種によって状況はさまざまでしょうから、一概には言えないと思いますが・・・。一般論としては、Fv/Fmの低下と、ΦII(ΦPSII、Yieldなどとも言います)の低下は、どちらもPSIIの量子収率の低下ではありますが、区別すべきかと思います。光照射条件下でキサントフィルサイクルなどが働いてNPQが上昇すると、ΦIIは低下しますが、その場合は、いわば制御された量子収率の低下です。この場合、もし変化しているのがNPQだけであれば、Fv/Fmには大きな変化がみられないことが予想されます。一方で、反応中心自体に異常が生じた場合は、ΦIIだけではなく、充分暗順応した葉で測定するFv/Fmも低下するはずです。「PSIIの量子収率」だけで議論するのはなかなか難しいように思いますが、NPQやΦIIなどのさまざまなパラメータ、そしてさらにはNPQがどの程度の時間暗所に置くと回復するか、といった点を見れば、量子収率の低下が強光順応の一環なのか、それとも障害なのかを判断できると思います。単一のパラメータだけで高温耐性を議論するのは、危険なのではないかと思います。(2015.2.12)


Q:いつも楽しく拝見しています。高校の教員をしております。光合成の測定実験では、以前プロダクトメーターを用いて海藻の光合成を光条件(白,赤など)変えて行っていました(今は時間がなくやっておりませんが...)。PAMを用いて光合成を測定する時、ファイバーを当てる以外に葉にいろいろな光(赤や青など)を環境光として当てて測定すると、その影響は測れるのでしょうか?よろしくお願いいたします。(2014.12.2)

A:はい。それは可能です。実際に、各種のLED光源を使って、数多くの種類の光を励起光として使えるようにしたPAMがマルチ・カラーPAMとして市販されています。ただ、この場合、光合成色素の吸収による違いの他に、励起光が葉のどこまで深くまで届くかの違いによって(緑色の光が一番深くまで届く)、測定している葉の部分が違ってくるので、結果の解釈は案外厄介です。(2014.12.2)


Q:はじめまして。作物の高温耐性に関する研究を行っているものです。最近PAMを用いた高温ストレスの評価に関する論文を読み始め、PAMと光合成に関する理解を深めるため、園池先生の書かれたパルス変調蛍光装置を用いた光合成の測定に関する論文(低温科学vol.67 2009 p.507-524)を拝見しました。その中でわからないところがありますので答えていただけないでしょうか?p.518で光阻害は光化学反応の結果生じるという仮定の下において、光化学系2に吸収されたエネルギーは、1)光化学反応に使われるエネルギー、2)光によって誘導される熱拡散系によって熱になるエネルギー、3)定常的に熱または蛍光になるエネルギー、の3つの経路によって消費されるということですが、恥ずかしながら定常的に熱として放出されるという意味がわからず困っています。2)の光によって誘導される熱拡散系によって熱になるエネルギーとは、pHの勾配を利用したキサントフィルフィルサイクル、光呼吸、光阻害、water-waterサイクル、3)の定常的に熱または蛍光になるエネルギーとは、光化学系2に吸収された後、1)2)にも使われることなくD1タンパク質などの変性を起こし、最終的に熱になるエネルギーと蛍光として消費されるエネルギーということでよろしいのでしょうか?(2014.11.25)

A:光合成の効率は100%ではありませんので、光合成が最適条件において動いている時でも、必ず熱になる部分があります。ですから、「D1タンパク質などの変性を引き起こ」さないような条件でも、熱になる部分は存在します。これに加えて、光が強いときには、積極的にエネルギーを熱に変えるシステム、つまりキサントフィルサイクルなどが働いて、熱放散を増大させます。この後者の部分が「光によって誘導される部分」であり、前者の部分が「定常的に熱として放出される部分」に相当します。光によって誘導される部分は(例外はありますが)暗所に充分においた植物では0になりますから、その際に見られる熱放散は、定常的な熱放散を示すことになります。ここで光を照射したときに増える部分を見れば、それが光によって誘導される部分を示すことになります。(2014.11.26)


Q:高専生です。いつも研究の際に先生のHPを参考にさせて頂いております。早速2点質問させていただきます。1点目です。Fv/Fmは間伐を行った森林と行っていない森林の植物では差は出るのでしょうか。またその結果は間伐をするべきであるという結論に結ぶことは出来るのでしょうか。2点目です。Fv/Fmを測定する際に暗処理をすることについてです。この暗処理は何のために行うのか。さらに時間はどの程度とればいいのかという事です。突然の質問心苦しいですがご回答宜しくお願いします。(2014.8.27)

A:まず1点目ですが、Fv/Fmの値は、健全な植物ではそれほど環境によらず一定に保たれます。したがって長期的な生育条件の比較にはあまり有効なパラメータではありません。一方で、強くストレスを受けた際には低下しますので、例えば隣の樹木の伐採によってそれまで暗く保たれていた葉に急に直射日光が当たって光合成が低下するなどといったことが起こった場合には、Fv/Fmによって検出することは可能です。2点目ですが、Fv/Fmは、光化学系2の最大量子収率(最大の効率と考えてよいと思います)の指標です。光があたっている時は、光合成系が働いていますから、すでに移動している電子によって光合成の収率が低下しますし、光エネルギーを熱に放散するシステム(キサントフィルサイクルなど)が働いて、光合成の収率を低下させることもあります。このような影響がない状態の最大の量子収率を測定するためには、暗所にしばらく植物を置いて光の影響を排除することが必要になります。これが暗処理(暗順応)です。時間については通常15分程度がよく用いられますが、実験の目的にしたがって変える必要があります。これについては下の方の過去の質問に関連したものがあります。なお、北海道大学から出ている光合成研究法に詳しい解説を書いていますので、研究でクロロフィル蛍光を使う場合には、是非ご覧ください。(2014.8.28)


Q:初めまして。最近植物プランクトンとPAMの勉強を始めまして、いつも先生のHPを参考にさせていただいております。勉強する中でどうしてもわからない部分があり、今回質問箱に投稿させていただいた次第でございます。私は採取した海水のF0値を測ることで植物プランクトンのバイオマスを測定し、Fv/Fmを測ることでキュベット内の植物プランクトンが正常に光合成を行える状態か否か測定したいと思っています。そこで気になる点がいくつかあります。先ほど申し上げたように、私がデータとして使いたいのはF0とFv/Fmです。なので、パラメーターとしてはF0とFmが必要ということになります。
1.その場合、使用する光源は測定光と飽和パルス光のみで、励起光を照射する必要はないと考えているのですが、この考えは正しいのでしょうか?というのも、先生のテキストを拝見し、励起光とはどの程度光化学系をcloseにするか調節できる光であると解釈しました。したがって、この程度光化学系がcloseされているとき、F値はいくらになるのか?を知りたいときには励起光は必要ですが、最小値(F0)と最大値(Fm)を測るときには、最小値を測ることのできる測定光と完全に光化学系をcloseにし、最大値を図ることができる飽和パルス光があれば励起光を当てる必要はないと考えたからです。
2.また私のサンプルは、採取した海水をそのまま測定するため、雑多な植物プランクトンが混在しており、サンプルごとに濃度も異なります。基本的には正確な測定値を出すためにはサンプルごとにサンプルに合った測定光の光強度や周波数を設定しなくてはならないと思うのですが、そうするとサンプルごとに設定が異なり、サンプル間でF0の直接比較ができなくなるのではないかと懸念しております(F0は測定光の設定に影響を受け変動するため)。この場合、やはりサンプル間の直接比較をすることは難しいのでしょうか?
3.また先ほど申し上げたように、雑多な植物プランクトンを測定するため、非光化学消光による蛍光強度の減少が速い時間スケールで起こる種も考慮して飽和パルス光を照射しなくてはならないと考えております。Walzの飽和パルス光の最大蛍光に達するまでの立ち上がり時間は0.8秒程かかるため、珪藻など光化学消光による蛍光強度の減少が速い時間スケールで起こる種を考慮すると正確なFm値が測れないことが予想されます。過去の質問箱を拝見したところ、MTフラッシュを用いると十分立ち上がりが早くなるとのことでしたが、テキストでは蛍光が完全に飽和されない可能性があるとも記述されておりました。これらをふまえると、PAMでは珪藻のような非光化学消光による蛍光強度の減少が速い時間スケールで起こる種の正確なFm値を測定することは難しいということでしょうか?
 長々とたくさんの質問してしまい、大変申し訳ございません。また質問前に十分に勉強したつもりですが、解釈の仕方に問題があり、的外れな質問をしているかもしれません。お忙しいとは思いますが、お時間のあるときに回答していただけると幸いです。お手数おかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。(2014.5.12)

A:以下、ご質問に対応させて回答いたします。
1.FoレベルとFmレベルの情報のみが必要な場合は、ご指摘のように光合成を励起するための励起光は必要ありません。ただし、藻類、特にシアノバクテリアの場合は、暗順応した試料に飽和パルス光をあててもFmは得られません。正確なFmを求めるためには、光合成阻害剤のDCMUを加えて光をあててFmを求める必要があります。これについては、光合成研究法に書いたクロロフィル蛍光の解説に詳しく記述してあります。
2.サンプル間の比較は、極めて難しいと思います。これは、測定条件を最適化できないためという理由もありますが、それよりも含まれる藻類の種類の違いによる影響が大きいと思います。生物種によって、健全な試料のFv/Fmの値は異なります。シアノバクテリアはフィコビリンを含み、このフィコビリンからの蛍光によってFoが下駄をはいた形になるため、陸上植物に比べるとFv/Fmの値は半分近くになります。それに対して、緑藻などは種類にもよりますが、陸上植物に近いFv/Fmを示すことがあります。それらの中間の値を示す藻類もあります。従って、Fv/Fmを比較しても、おそらく光合成の状態というよりは、生物群集の中のシアノバクテリアの割合などが強く反映されるのではないかと思います。
3.藻類での正確なFmの測定は、ご指摘のように短い時間で非光化学消光がみられることによる問題を抱えています。これは、飽和パルス光の立ち上がりの速さの問題であり、昔のPAMでは、KL-1500という光源か、MTフラッシュを使うしか選択肢がなかったので大きな問題でしたが、最近は、LEDによる立ち上がりの早い光源も使えるのではないかと思います。どのタイプの装置をお使いになっているのかにもよりますが、もし、LEDタイプの光源が使えるのであれば、それで解決する可能性はあります。また、そもそも1で説明したように、本当のFmの測定にはDCMUの添加が必要です。その場合には、非光化学消光はほとんどなくなりますから、飽和パルス光自体が必要なくなり、通常の励起光源があれば十分ということになります。(2014.5.12)


Q:はじめまして.よろしくお願いいたします.現在,水中係留型のクロロフィル蛍光計を使って,植物プランクトン(クロロフィルa)現存量の連続モニタリングをしております.この測器は青色光(470nm,15~20 umol quanta/m2/s)を植物プランクトン細胞に照射(10秒)し,その光に反応して射出してくる蛍光強度(640?980 nm)を測定するものです.この蛍光強度はクロロフィルa濃度と良い相関を示すことから,この機器を使って水中のクロロフィルa濃度を推定することができます.この観測から,蛍光強度が日周変動することがわかってきました.植物プランクトン現存量(実際に水中から植物プランクトンを採取し,クロロフィルa濃度をアセトン抽出して測定した量)がほとんど変化しないにも関わらず,夜間に蛍光強度が高くなり,昼間に蛍光強度が低下するのです.この変動パターンは毎日繰り返されているようです.夜間の蛍光強度を1とすると,昼間は0.6?0.7程度まで低下します.この原因ですが,おそらく,昼間は水中の光強度(100?500umol quanta/m2/s)が強いので,non-photochemical quenching(キサントフィルサイクルによる消光)により蛍光強度が低下し,夜間はquenchingは起こらず,プラスキノンプールの減少などにより蛍光強度が上昇すると考えております.この考え方は妥当でしょうか?よろしくお願いいたします.(2014.1.28)

A:照射する青色光は変調されているのでしょうか?いわゆるパルス変調によって変調された蛍光だけをモニターしているのであれば、観察しているのは蛍光強度ではなく、蛍光収率だと思います。その場合は、昼間の測定においては、水中の光環境の下で蛍光測定をしているのだと推定します。ただ、パルス変調にしては青色光の光量が大きいのが気になります。以下、パルス変調により環境の光が当たる条件下で測定しているとしてお答えします。
 蛍光の収率は光化学消光(photochemical quenching)と非光化学消光(non-photochemical quenching)の大きさによって左右されます。後者は、陸上植物ではキサントフィルサイクルによる成分が大きいのですが、藻類の場合は異なり、シアノバクテリアなどはステート遷移の成分がほとんどを占めます。陸上植物の場合は、暗所から明所に移すと光化学消光の低下による蛍光収率の増大と、非光化学消光の誘導による蛍光収率の現象が同時に起こるので、結果とし両者のバランスが重要になります。一般的には生育光付近での定常条件での蛍光収率は、暗所でのレベルとそれほど変わらないことが多いようです。一方で、藻類の場合は事情が異なります。多くの藻類とシアノバクテリアでは、暗所でも非光化学消光がすでに誘導されています。生育光程度の光を照射すると、むしろこの非光化学消光は減少しますから、陸上植物とは全く逆のことが起きることになります。これは、呼吸(シアノバクテリアの場合)や葉緑体呼吸(真核藻類の場合)によって、暗所でプラストキノンプールが還元されていることによると考えられています。したがって、お考えになっているような単純なメカニズムで蛍光強度の変化を説明することは難しいように思います。飽和パルス光の照射などにより、光化学消光と非光化学消光を切り分ける必要があるのではないかと思います。シアノバクテリアと藻類の蛍光挙動の特殊性については低温科学に書いたクロロフィル蛍光の解説にも説明してありますので、ご覧いただければと思います。(2014.1.29)


Q:あけましておめでとうございます。新年になりましたが、お聞きしたいことがあります。よろしくお願いします。現在、クロロフィル蛍光による植物の生育評価の研究を行っております。その中で論文等の検索をしていると、ほとんどの論文が「PAM」によるクロロフィル蛍光の測定による実験を行っています。しかし、私は「PAM」ではなく、「カメラ」による非破壊・非接触のクロロフィル蛍光による生育評価の研究を行っているため、そういった手法の論文を探しているのですが最新のものはほとんど見つかりません。やはり、カメラによる評価法は過去の論文だけで、現在ではPAMによる評価法が主流なのでしょうか?(2014.1.8)

A:「カメラ」は2次元的に蛍光を測定する機器である一方、「PAM」は測定光を繰り返しあてる(=変調した測定光を使う)ことにより蛍光を測定する機器です。ですから、カメラとPAMは対立するものではなく、組合せによって「PAMのカメラ」「PAMでないカメラ」「PAMであってカメラではないもの」「PAMでなくカメラでもないもの」が存在します。現在でもスクリーニングなどの目的ではカメラ型の蛍光測定装置は広く使われています。ただ、定量的に評価する際にはPAMになっている方が精度は高いと思います。また、カメラの特徴が生かせるのは、スクリーニングのように複数の個体をまとめて一度に比較する場合か、葉に異所性(heterogeneity)がある場合です。研究機器は、その目的に応じて選ぶことになりますから、単に個体の生育評価をするだけなら、PAM型のものでカメラ型ではないものを使う人の方が多いということは十分に考えられます。(2014.1.9)


Q:施肥による光合成についての質問です。実験でソバに対して異なる量の窒素施肥を行い、waltzのmini-pamで光合成への影響を調査したのですが、qPやNPQ、Fv/Fmでは明確な差はなく、YeildやETRにはある一定の施肥量までは上昇するが、それ以降は下降するという結果が見られました。つまり、窒素施肥による影響は、電子伝達速度や有効量子収率への影響が大きく、qPやNPQは小さく、ある一定以上の施肥は阻害要因となるということでしょうか。また、このような例はほかの植物でも報告されているのでしょうか。よろしくお願いします。(2013.9.25)

A:データの解釈自体は、一般的にはそのようになります。ただし、以下の点を注意する必要があります。まず、Fv/Fm以外のクロロフィル蛍光のパラメータは、励起光の光量に応じて変化しますから、単一の励起光の結果の結果から他の光条件でもそうなるだろう、と推定するのは危険です。特にNPQなどは励起光が弱い時には値が小さくて差が見られない時でも、励起光が強い時には差が見られる場合があります。励起光強度を変えたときにどのようになるか(光光合成曲線)を調べることが必要だと思います。次に、クロロフィル蛍光で測定できるのは収率です。速度ではありません。光合成速度については、一定の換算式を用いてETRとして計算可能ですが、これはあくまで単なる計算であり、光化学系の量比や、葉の吸収が変化した場合には(少なくとも機械の自動計算に頼っている時は)意味を持ちません。窒素の施肥を変えた場合には、通常、葉面積あたりのクロロフィル量が変化すると思いますから、ETRを直接比較することは難しくなります。もし、葉の色がかなり変わるような条件である場合には、クロロフィル蛍光により光合成の状態を測定するのは望ましくありません。ガス交換での測定が必要になってきます。(2013.9.25)


Q:いつも楽しく拝見しております。クロロフィル蛍光測定について質問があります。透過してくる蛍光を測定する際、葉の表から励起光を照射して裏で測定する場合と裏から照射して表で測定する場合とでは、柵状組織,海綿状組織の配列が影響して違いがでるのでしょうか? よろしくお願いいたします。(2013.8.9)

A:はい。影響するはずです。葉の透過率自体は表からでも裏からでもそれほど変わりませんが、葉の中心部まで届く光の割合は、大きく変わりますので、励起されている葉の部分が変わりますし、結果として発光した蛍光がどの程度葉の中を通るかの長さも変わりますから、自己吸収の影響も大きく変化します。それらの効果がどの程度大きいかは、励起光の波長によって変わるはずです。(2013.8.9)


Q:以前、質問にお答えして頂き誠にありがとうございます。その後も勉学のため、ホームページを拝見させていております。その中で蛍光測定時の暗処理の時間について質問をさせてください。先生のホームページには「ストレス処理による変化を知りたいなら5分程度の暗処理」、「葉の最大能力を知りたいなら30分の暗処理」と記述しております。この2つの暗処理は実際に生育評価をPAMで行う際に、どのように運用すればよいのでしょうか?私の見解ではストレスを与えた供試体を30分の暗処理で測定して最大能力値を求め、その後5分の暗処理でストレスによって減少した値を求める。以上の2つの値の差(どれだけ減少したか)からストレス評価を行う、という考えなのですがこの運用方法で正しいのでしょうか?お忙しいところ申し訳ないのですが、ご回答をよろしくお願いいたします。(2013.3.11)

A:ストレス処理の影響を見る場合になぜ暗処理を短くするかというと、暗処理を長くすることによってストレスから回復してしまうとストレスの影響を正しく評価できないからです。従って、まず長い暗処理をして次に短い暗処理をすることには意味がありません。ストレスからの回復が最小限であるうちに短い暗処理を先にすることが必要になるでしょう。(2013.3.12)


Q:いつもホームページを拝見させていただいております。本日はBBY膜の低温蛍光スペクトルについて先生にお聞きしたく、質問を投稿させていただきます。ホウレンソウから単離したBBY膜(光化学系Iもかなり混じっているのですが)を液体窒素中で440 nmの励起光で励起すると、PSII由来の684, 693 nmの蛍光とPSI由来の730 nm付近の蛍光のピークが見られました。同じサンプルで550 nmの励起光で励起すると、上述のピークに加えて640 nm付近にブロードな蛍光が見られたのですが、この蛍光は何に由来するのでしょうか?測定に用いたバッファーは25 mM MES, 10 mM CaCl2, 0.3 M sucroseで、640 nmの蛍光の強度はPSII由来のものの半分から8割程度でした。お忙しいところ恐縮ですが、お答えいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。(2013.2.15)

A:ホウレンソウのBBYであれば、640 nmに蛍光を出す色素は持っていないと思います。ということはクロロフィル蛍光ではないアーティファクトである可能性が強いのですが、実際に何に由来しているかは色々試してみないとわからないと思います。可能性として考えられるのは、1)バッファーの蛍光、2)試料室の蛍光、3)迷光の散乱光、の3つだと思います。ご使用のバッファーは、おそらく通常は蛍光を出さないように思いますが、念のために確かめた方がよいかもしれません。バッファーがあること自体は散乱などの強さも変えますから、バッファーのみで蛍光が出たとしてもバッファーの蛍光だとは断言できませんが、濃度依存性があれば間違いないでしょう。また、クロロフィル蛍光以外にも測定装置を使っている場合は、他の蛍光物質などで試料室が汚染されていないことを確認することも必要かもしれません。さらに、分光器によっては励起光や蛍光に迷光が混ざる場合があり、その迷光の散乱光または散乱光の迷光が見掛け上蛍光として見えることがあります。この場合には励起光側もしくは蛍光側に光学フィルターを入れて見ればわかります。励起光に640 nmの迷光が混ざっている場合は励起側に550 nmは通すけど640 nmは通さないフィルターを入れれば、余分な蛍光は消えるはずですし、逆に蛍光側が550 nmの光を迷光として通してしまう場合は、蛍光側に550 nmの光を通さないフィルターを入れればよいことになります。原因の特定には、励起光と蛍光を両方振る2次元測定をしてみるのもよいかもしれません。(2013.2.15)


Q:はじめまして。本日は蛍光誘導のデータについて質問させて頂きたいと思い投稿致しました。お忙しいところお手間をおかけいたしますが、宜しくお願い致します。わたしは暗順応させた葉に飽和閃光を100μsの間照射して、蛍光の誘導期現象を測定しています。園池先生のホームページに掲載された蛍光誘導曲線と同様の曲線が測定で得られています。エクセルを用いて、手元にある蛍光誘導の測定データから、ある時間tおける蛍光誘導曲線の上部分の面積A(t)を求め、(Amax-A(t))/Amaxを片対数グラフにプロットしてみたのですが、前半が直線、後半が曲線となってしまいます(わたしにはそのように見えます)。Homannさんの論文をはじめいろいろと論文を参照致しましたが、片対数プロットした際には前半はα、β成分が混ざるために曲線となり、後半はβ成分のみのため直線に乗る、という風に理解いたしました。わたしの浅い知識では、わたしの蛍光誘導測定結果をグラフ化すると、論文で説明されているグラフと異なったものとなってしまう原因がわかりません。そこで、今回園池先生に質問させていただくことを決意いたしました。質問の内容がうまく説明できているかどうか自信がありませんが、ご回答お待ち申し上げております。何卒よろしくお願いいたします。(2013.1.20)

A:まず確認ですが、測定はDCMUの存在下でやっているのでしょうか。2つの成分を分けるのが目的の時には、系2より下流の影響を受けることを避けるため、DCMUを加えて測定するのが一般的です。DCMUがない場合、あるいは効きが悪かった場合などは、下流の影響が測定後半に現れることはあります。この可能性を確かめるためには、少し濃いめのDCMUを葉に浸潤させてから実験をしてみればよいでしょう。
 実際のデータを見てみないと確かなところはわかりませんが、もう一つの可能性として、測定時間が不十分である場合があります。測定の最初の部分では速い成分の寄与が量的には大きくなりますから、ごく早い時間部分だけを見ると片対数グラフで直線に見えることはあります。その後時間がたつと速い成分が減衰して、遅い成分と量的に拮抗するようになるため曲線に見えるようになります。そのままもっと時間がたつと、今度は遅い成分だけが残りますから、また直線に見えるはずですが、そこまで行かない時に測定をやめてしまえば、見かけ上、前半が直線、後半が曲線に見えることはあります。この可能性を調べるには、単に測定時間(この場合は飽和閃光の長さ)を長くしてみればよいことになります。(2013.1.21)


Q:こんにちわ、私は現在、大学でクロロフィル蛍光について学んでいます。学ぶ中で、ドイツのWalz社のPAM-2100(型が古いですが)を使って蛍光測定の実験を行っています。このPAMについて質問なのですが、測定項目の中にあるqP,qN,NPQ,φPSII等の項目は理論的確証がないため、あまり利用されていないと聞きました。現に、クロロフィル蛍光を扱った文献を読んでいてもこれらの項目を見ることがほとんどありません。やはり、確証の持てるFv/Fmだけを利用し、その他の項目は測定数値を証明する情報がないため研究が進んでいない、もしくは研究者たちは利用しないのでしょうか?(2013.1.18)

A:まず「研究者たちは利用しない」ということはありません。光合成分野の論文ではFv/Fmしか測定していない論文の方が少ないぐらいです。ただし、クロロフィル蛍光測定は、測定が簡便なため、光合成を専門としていない植物の研究者も頻繁に利用するようになっています。そのよう場合、一番意味が単純で測定が簡単なFv/Fmのみを測定する例が多いため、植物関連の論文全体ではFv/Fmが一番利用されているように見えることになります。
 理論的な「確証」という点については、確かにFv/Fmだけが、数式の展開のみからその意味を導出することができます。と言っても、他のパラメータが「情報を持たない」わけではありません。光合成のエネルギー収支をモデル化することによりそれぞれのパラメータを導くことができますし、経験的にそれぞれのパラメータが生理的な現象とよい相関があることが示されています。Fv/Fmは光化学系2の情報しか与えませんから、光合成の全体像を探るためにはその他のパラメータを見ることが必要になります。(2013.1.18)


Q:蛍光の計測方法にポンプ&プローブ法やパルス変調など、いくつかあると思いますが、これらの方法はどのようにして使い分けたらいいのでしょうか。(2012.3.15)

A:ポンプ&プローブは蛍光の励起光をあてたのちの変化を追いかけるのに用いられます。パルス変調は一定の励起光をあてたときの光合成速度やQAの酸化還元状態などを定量化するのに用いられます。非常に大雑把には変化を見る時はポンプ&プローブ、定常状態の解析はパルス変調ということになるでしょう。詳しくはクロロフィル蛍光のページからもリンクしてある低温科学研究所からでた光合成研究法をご覧ください。(2012.3.15)


Q:始めまして。Walz社製光合成測定器JuniorPAMを用いてクロロフィル蛍光の計測を行いましたが解析方法が分からなかったので、園池先生のオンライン教科書で勉強させていただいています。そこで、ひとつ分からないことがあったのでお聞きしたいです。電子伝達速度"ETR"について、私の計測結果を見ると、ETRの値は常に0.0となっていました。そこでΦII、PARの値も見てみると、PARの値も常に0となっていました。これは、植物が光合成するために必要な光がなかったことを表しているのでしょうか。 お返事をいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。(2012.3.14)

A:電子伝達速度であるETRを測定するためには、当然光合成を駆動する励起光を照射しますが、その励起光の強さをどのように取るかについては2つの方法があります。1つはセンサーを利用して、実際の光量(PAR)を測定する方法、もう一つは、あらかじめLEDの各強さごとの励起光の相対強度を測定しておいて、それをInternal PAR listとして用意し、LEDを特定の強さにしたときには、そのリストからPARの値を表示する方法です。ご質問の場合は、外部センサーを付けずに測定し、かつ内部リストが空欄になっているのではないかと想像します。外部センサーが利用可能であれば、それを利用するのが一番ですが、できない場合はInternal PAR listを設定する必要があります。その方法は、ソフトウェアのバージョンによっても違いますし、いくつに設定すればよいのか、という問題も残ります。確か、制御ユニット(PAM control)を初期化すると、内部リストも初期値に戻るので、とりあえずそうするのがよいかもしれませんが、その場合、他のパラメータも初期値に戻りますので、いろいろ注意が必要です。照射励起光のPARが別途測定可能なのであれば、その値を使ってΦIIから自分で計算するのが一番安全ではあります。(2012.3.14)


Q:初めて質問させていただきます。学位論文研究でイネの葉の光合成特性の品種・系統間差異を調べるためにLI-COR社のLI-6400-40を用いてクロロフィル蛍光解析を行っています。光合成速度に関与するパラメータ算出のために正確な電子伝達速度の値が必要なのですが、弱光下(PPFD300-500)の時に比べて、強光下とくにイネの飽和光に近いPPFD2000のときには、同じ葉を測定していても、繰り返し飽和光を照射して得られる電子伝達速度の値が不安定になるように感じています。測定条件は大気CO2濃度、飽差約1.5kPa、葉温30度としています。また飽和光照射の間隔は2分以上あけるようにしています。強光下で正確な電子伝達速度の値を得るためには、測定環境や測定回数など、どのようなことに注意して測定したらよいのでしょうか。よろしくお願い申し上げます。(2010.8.22)

A:強光下でクロロフィル蛍光による電子伝達速度の見積もりが不安定になるのは、原理的なもので、誰がやってもそうなります。同じLI-6400で二酸化炭素の吸収速度を測定する場合、飽和光の方が当然数値が大きくなりますので安定しますが、クロロフィル蛍光測定の場合、電子伝達速度は照射光量子束密度と電子伝達の実効収率の掛け算で求めています。照射光量が大きくなるにつれて収率は小さくなっていき、その掛け算は一定値に近づいて飽和するはずですが、収率の数値がどんどん小さくなれば、当然相対的な測定誤差はどんどん大きくなります。これは、二酸化炭素の吸収速度の弱光下での立ち上がりをきちんと測定しようとすると、飽和光での測定よりも難しいのと全く一緒です。もともとクロロフィル蛍光は、飽和光近くでの光合成速度を求めるのにはあまり向いていないのです。測定誤差を小さくする一般的な方策(何度も測って平均するなど)以外には、あまり有効なやり方はないように思います。(2010.8.22)


Q:栽培実験を行い異なる条件化での成長量を比較したいのですが、Fv/Fmは成長量の指標として用いることが出来ますか?(2010.4.19)

A:残念ながらできません。Fv/Fmは光化学系2の「収率(効率)」の指標であって「量」の指標ではありません。例えば、葉面積が2倍になってもFv/Fmは変わりませんし、何らかの理由で葉面積あたりの葉緑体量が半分になっても、残った葉緑体が健全であればFv/Fmは変化しません。Fv/Fmに限らず、クロロフィル蛍光のパラメータにより生長量を見積もるのは難しいと思います。(2010.4.19)

Q:回答ありがとうございます。栽培実験に関する質問をした者です。重ねての質問になりますが、お願いします。Fv/Fmは光合成の最大収率との事ですが、「Fv/Fmが大きい個体は最終的に個体サイズが大きくなる」といったことはあるのでしょうか。「光合成の最大収率が大きい→光合成生産物が多い→成長に使える有機物が多い」・・・といった流れをイメージしたのですが。(2010.4.21)

A:Fv/Fmから個体サイズを見積もることはできません。健全な植物の最大量子収率は植物種や栽培条件に寄らずほぼ一定です。もちろん、たとえば低温にさらされて光合成機能が大幅に落ちた植物ではFv/Fmも下がるでしょうから、その場合にはFv/Fmが下がっている植物では光合成産物が少なく、成長も遅くなると言えます。しかし、健全な状態よりもFv/Fmが大きくなるということは基本的にありません。健全な植物同士を比較してもFv/Fmには大きな差が見られませんから、Fv/Fmを比較する意味はないことになります。(2010.4.21)


Q:初めて質問をさせてもらいます。私は今PSI社の二重変調蛍光光度計を用いてクロロフィル蛍光を測定しています。私の勉強不足もあると思いますが,2つ程質問させてもらいます。1つ目はQuenching測定に関してです。励起光を2分程度照射した後に励起光を停止させFo'を求める際に,熱放射システムが働いているため,Foよりも蛍光は低下するのは理解しています。シアノバクテリアに関してはこれがそうならない場合があるのも理解していますが,クロレラなどの緑藻類のQuenching測定を行う際にFo'がFoよりも低下してくれない場合がよくあります。これではQpが求まらず,光化学系IIの下流の状態がわかりません。そこで,Fo'がFoより低くならない場合,QAの酸化がスムーズにおこなわれていないと解釈してもよろしいのでしょうか?
 2つ目の質問なのですが,シアノバクテリアのクロロフィル蛍光に関してです。シアノバクテリアはそのまま測定してもFm値は求まらないのは理解しています。そこで,DCMUを加えているのですが,DCMUを試料に加えるタイミングなどはありますか?光を照射させる何分前とか,光を照射させる直前など。 長々と申し訳ないのですが,よろしくお願いします。(2009.11.16)

A:シアノバクテリアに限らず、真核生物でも単細胞藻類の場合は、いわゆるクロロレスピーレーションのため暗所でプラストキノンプールが還元されている例が多いようです。Fo'がFoより低くなるのは、励起光をあてている間に非光化学消光が強く誘導されるからですが、もともと暗所でプラストキノンプールが還元されて非光化学消光が誘導されている場合は、Foも消光されて低くなっていますから、Fo'との差が見えづらくなります。クロレラは自分では測定したことがないのですが、クラミドモナスではやはりシアノバクテリアと同じような傾向が見られます。したがって、「QAの酸化がスムーズにおこなわれていない」というよりは、シアノバクテリアと同じように暗所でプラストキノンプールが還元されていると解釈した方が自然な気がします。
 DCMUを加えるのは、一連のQuenching測定が終了してからであれば、特に光照射とのタイミングは問題となりません。僕は、一連の測定を終了して励起光を切ってFo'を確かめ、そのあとDCMUを加えて直後に光照射を初めてFmを決めるようにしています。(2009.11.17)


Q:初めて質問させていただきます。現在C4植物(トウモロコシ)のクロロフィル蛍光をPAMで測定しているのですが、得られてくるFv/Fmの値は、葉肉葉緑体だけでなく維管束鞘葉緑体からの蛍光も含まれて(反映されて)いるのでしょうか?PAMによる測定では表層に近い葉緑体の蛍光しか感知できず、葉内部の維管束鞘葉緑体までは測定されていないのではないか?という話を耳にしたので質問させていただきました。どうぞ宜しくお願い致します。(2009.11.10)

A:トウモロコシの場合、PAMの測定では維管束鞘細胞の情報は反映されません。これは、表層に近い部分しか感知できないため、というよりは、トウモロコシの場合は維管束鞘細胞にほとんど系2が含まれないためです。C4植物にもサブタイプがありますが、トウモロコシが属するサブタイプでは維管束鞘細胞の光化学系はほぼ系1からのみなります。従って室温で蛍光を測定した場合、葉肉細胞からの系2の蛍光がほとんどを占め、維管束鞘細胞の情報は得られないことになります。(2009.11.11)


Q:クロロフィル蛍光でのパラメータについてですが、Foと表記されているものの読み方を教えてください。つまり「エフゼロ」なのか「エフオー」なのかということです。私個人は最初に勉強したときから「エフゼロ」だと思っていました。Fの後に下付きのゼロだと思ったわけです。しかしパラメータの意味を考えても実際の数値でも決してゼロではないわけで、「origin」のオーだという話もあると聞きました。実際にSchreiberの論文をいくつか見ても、ゼロの下付きに見える場合と小文字のオーに見える場合などがありました。abbreviationにもFmは(Fmaxという表記もあったので周知のとおりですが)maximum fluorescenceと説明してありましたが、Foはminimumやinitialなど論文によって使っている言葉が違いました。またこのHPのQ&Aを見るとオーを使っている場合が多いように感じます。ゼロだと下付きにする必要がありめんどうだということでオーを使っているのではという気もしますし、どちらが正解でどちらが間違っているということもないような気もします。ただ修士論文に光合成収率のデータを載せたいと思っており、正確を期するためにも知っておきたいので教えていただければ幸いです。(2008.1.14)

A:Shreiberさん自身は「エフオー」と読んでいるそうです。質問中にあるように、もとはoriginから来ているようです。時間軸のゼロと考えればエフゼロでもよいようには思いますので個人的にはあまりこだわりがないのですが、どれかに統一するのであれば、エフオーが安心かと。海外の学会などで聞くと、「エフジロ」も聞きますし、「エフノート(naught)」というのも聞いたことがありますが。書く場合は、おっしゃるように下付にするのが面倒くさいので、このホームページではオーを使っています。その意味でもエフオーがよいかも知れませんね。ちなみにATPaseの構成成分のF1FOはエフワンエフオーです。このオーはオリゴマイシン感受性から来ているからなのですが、片方が数字で片方が文字というのはわかりづらいですね。(2008.1.14)


Q:シアノバクテリアにおける横軸時間と縦軸蛍光強度の図についておききしたいのですが、はじめ光を当てた時に大きく増加して、そのあと一定値におちついておりますが、細胞内ではどのような反応が生じているのか詳しく教えて下さい。(2006.11.16)

A:光を当てた時には、QAの還元がまず起こります。これにより蛍光強度は増大します。一方で、シアノバクテリアにおいては、非光化学消光が暗所で誘導されているので、生育光程度の励起光を与えた場合は、非光化学消光が減少し、結果として、それによっても蛍光強度が増大します。ただし、電子伝達が動き始めるとQAはそちらによって再酸化されますし、非光化学消光も、電子伝達の流れによって、ある程度振動します。しかし、どちらの場合も、やがて一定値に落ち着くことになります。(2006.11.17)


Q:はじめまして、僕は4回生で細菌の光合成機構について研究しています。以前は、分かりにくい質問をしてして、すいませんでした。シアノバクテリアの光合成機構についてお聞きしたいのですが、蛍光における実験で励起光を照射した瞬間に最大値となり、その後一定になっておりますが、照射してすぐにもっとも最大となる時のシアノバクテリアにおける電子伝達の流れを教えて下さい。(2006.11.23)

A:答えとしては、上で書きましたように、蛍光が最大になる時には、QAが還元されています。クロロフィルの蛍光がどのようなものか理解していますか?研究としてやるのであれば、まずは、このサイトのオンラインテキストを読んでみることをお勧めします。そこを読めばわかりますように、「励起光」と一口に言っても様々なものがあるのです。せっかくテキストを用意しているので、まずはそこを勉強して、その上でわからないところを質問してください。(2006.11.23)


Q:クロロレスピレーションを少し教えて頂けませんでしょうか?これは夜行われる呼吸限定なのでしょうか?ある文献で、鉄が植物の成長を制限しているために、夜間のFv/Fmの減少が見られたとありました。その原因がクロロレスピレーションと関係があるそうなのですが・・。ちょっと調べると、それは鉄が足りないために鉄を必要とするcytochromeb6fの濃度が低くなり、PQpoolの夜間の還元?が厳しくなるとありました。自分がわかりませんのは、慢性的に鉄制限ならば夜、昼関係なく常にFv/Fmが低いのではと感じるからです。クロロレスピレーションは夜限定?だとしても、昼間は夜より高いFv/Fm(特に日の出、日没にFv/Fmが最大で、昼間は光阻害でFv/Fmが減少する)になるところが良く分かりません。何か、教えて頂ければうれしいです。(2006.11.3)

A:藻類とシアノバクテリアのクロロフィル蛍光は、高等植物の場合と大きく違います。詳しくは、オンライン教科書の該当の部分をご覧下さい。これらの生物では、一般的な方法ではそもそもFmが測定できないのです。シアノバクテリアでは呼吸系により、藻類ではクロロフィルレスピレーションにより、暗所でPQプールが還元されるため、飽和光照射時の蛍光(Fm)が小さくなって、結果として見かけ上のFv/Fmが減少します。これは、光阻害とは全く無関係で、PQプール還元による非光化学消光の誘導に起因するものです。本当のFv/Fmを見積もる時には、藻類の場合はDCMUを加えてFmを測定しますから、見かけ上のものをFv/Fmと呼ぶのは適切ではありません。呼吸系においては、cytochrome b6/f はPQプールより下流にありますから、それが減少すれば、当然PQプールは還元され、結果として見かけ上のFv/Fmは減少します。また、生育光環境程度の光が当たっている時は、呼吸系よりはるかに多くの電子が光合成の電子伝達系を流れますから、それにより、むしろ暗所に還元されていたPQプールは酸化されます。それで、昼間の方が見かけのFv/Fmは下がるのです。(2006.11.4)


Q:いくつか論文を読んでもよくわからなかったので、お聞きしたく思いました。アクティブ蛍光法(PAMやFRRF)などの測定原理に関することなのですが、いまいちシングルターンオーバーとマルチターンオーバーの意味がしっくりきません。お教え頂けませんでしょうか?(2006.10.22)

A:シングルターンオーバー、マルチターンオーバーというのは、光合成の光化学系の励起の状態を示す言葉で、特に蛍光測定とは直接は関係がありません。光合成の研究では、短いフラッシュ(閃光)を使って反応を解析することがよくあります。しかし、フラッシュといっても、ある一定の時間光っているわけで、発光時間は、その光源によって違います。タングステンランプなどを使った場合は、ランプ自体はせいぜい数百ミリ秒程度の時間分解能しかありません。キセノンフラッシュの閃光時間は、通常数十マイクロ秒で、特別仕様で数マイクロ秒のものがあります。レーザーフラッシュだとナノ秒、ピコ秒、場合によってはフェムト秒のオーダーのものも存在します。 光があたると光化学系は電荷分離を行ないますが、反応中心が酸化されている状態では、その間にさらに光があたっても、それ以上光化学反応は起こりません。ですから、光化学系IIで言えば、数マイクロ秒の閃光時間を持つフラッシュを使えば、光化学反応は閃光の間に1度しかおきません。これが、シングルターンオーバーフラッシュです。しかし、ミリ秒の閃光時間を持つフラッシュを使えば、その閃光時間の間に何度も電荷分離がおきます。これがマルチプルターンオーバーフラッシュです。ただし、電荷分離した反応中心が再還元される速度は系Iと系IIで大きく違うので、系IIでシングルターンオーバーであっても、系Iでシングルターンオーバーにならない場合はあります。一般に、光化学反応を一回だけ進めたい場合にはシングルターンオーバーフラッシュを使います。ただ、閃光時間が短いと全ての反応中心を励起することは難しくなります。ですから、むしろ反応中心を何度も励起してよいので、全ての反応中心で反応を起こさせたい場合や、ある程度電子を流して、光化学系間の電子プールを全て還元させたい場合などには、マルチプルターンオーバーフラッシュを使います。(2006.10.23)

Q:例えばFRRF法では、青色LEDを使って1マイクロ秒のフラッシュ幅(閃光時間)を、これまた1マイクロ秒間隔で100発打って蛍光を飽和させ(F0,Fmを得るため)、その後、同じ1マイクロ秒幅のフラッシュを、今度は間隔をもっと長くして(例えば50マイクロ秒)にして20発打つことで、PSIIの第一電子受容体Qaの再酸化過程を解析するということをやっており、これがシングルターンオーバーと呼ばれているらしいですが。この方法だと飽和+緩和過程で1つの蛍光誘導カーブ(コーツキー曲線)を書くのに1.3ミリ秒程かかります。例えば、ある論文によると、それを20回orそれ以上行って(20回カーブを書かせて)その平均値を使って光化学系IIのパラメータ(Fv/Fm、σPSIIなど)を議論するということをやってるらしいのですが・・20回の各コーツキカーブ間の測定間隔を仮に10ミリ秒とったりすると、約200ミリ秒ほど時間がかかる測定なのですが。再度、ご質問で恐縮なのですが、一回の光化学反応というのは、系のどの部分までをいうのでしょうか?上記のFRRF測定プロトコルは本当に、一回の光化学反応を起こさせるシングルターンオーバーになってるのでしょうか?すいません、また教えて頂ければ幸いです。(2006.10.23)

A:要は、反応中心クロロフィル(系IIであればP680)が酸化されていたら、それ以上の電荷分離は起こりません。ですから、一回の光化学反応というのは、基本的に一回の電荷分離と考えて頂ければよいと思います。説明頂いた測定プロトコルでは、個々のフラッシュに関してはシングルターンオーバーになっています。ただし、それを1マイクロ秒間隔で100回照射することにより、事実上マルチプルターンオーバーフラッシュとして使っていることになります。緩和過程では、間隔を長くすることにより、再びシングルターンオーバーとして、この場合はプローブ光として使っているのでしょう。これは、マルチプルターンオーバーフラッシュを照射してからの蛍光の減衰を見ているのと同じですが、飽和励起光とプローブ光の光源を1つでまかなえるように閃光間隔を工夫しているのではないかと思います。(2006.10.23)

Q:すいません。再度御確認をお願いしたいのですが。実質、マルチ照射(ってことは複数回電荷分離が起こる)っぽくなってますが、PSIIの第一電子受容体であるQAから次のQBへと電子が流れるのに200?600マイクロ秒ほどかかるらしいので、それよりも、この測定プロトコルは速く(先述のように300マイクロ秒)照射してる(つまりQaは完全に還元している)ので、余計な照射分は蛍光になるだけので、その次の緩和(flash間隔を長くとる)過程で見ている再酸部分は、一回分ということでシングルターンオーバーということでしょうか?すいません、日本語の意味変でしょうか?湖沼や海洋現場でFRRF測定をするそうなのですが、FRRF照射を受けた海水or湖中の植物プランクトンの平均的なPSIIを測定するおり、すべてのQa(照射を受けた植物プランクトンのすべてのQa)を還元するのに300マイクロ秒必要という意味ではないんですよね。(2006.10.23)

A:申し訳ありありません。上の2番目の答えで、マルチプルターンオーバーフラッシュと書いたのは、飽和光照射という意味で使ってしまっていました。PAMでは、マルチプルターンオーバーフラッシュを飽和励起光として使うので、つい、そのような使い方をしてしまいました。最初の100回のフラッシュ照射は、QAの再酸化速度を考えると、100回まとめた場合には、完全にはシングルターンオーバーとは言えない気がしますが、マルチプルではなく、目的は、通常は飽和していないシングルターンオーバーフラッシュで、QAを完全に還元させるために飽和光として使われている、ということでしょう。QAの再酸化速度を見るためには、系間に電子が貯まっていない方がいいですから、飽和光でありかつほぼシングルターンオーバーフラッシュであれば、理想的な光源といえます。一方で、そのあとの再酸化過程については、シングルターンオーバーかどうかは意味が無く、単にプローブ光のフラッシュとして使われていると思われます。蛍光を測定するためには、色素を励起する必要がありますが、励起による光合成系への影響はなるべく小さくする必要があります。そこで、励起に使うプローブ光はなるべく短い寿命のものが使われますが、ここではそれに、シングルターンオーバーフラッシュを使っているということでしょう。ですから、やっていることは、いわゆるポンプ&プローブ法による蛍光測定ですね。最初のポンプ光として1マイクロ秒間隔の100回のフラッシュ照射を行ない、これによってQAを完全に還元し、ついで、プローブ光によって蛍光の減衰過程を追っていく、ということだと思います。混乱させてしまったようで申し訳ありませんでした。(2006.10.24)


Q:こんにちは。PAMに関して勉強しています。海氷珪藻で蛍光の測定をしようとしています。測定装置は、WATER-PAMです。質問は、飽和パルス光の持続時間に関してです。高等植物では持続時間として0.8秒くらいがよく使われますが、珪藻の場合はどのくらいが適しているのでしょうか?0.05秒くらいが良いと聞いたことがありますが、実際はどうなのかよく分かりません。実際、0.8秒で光曲線などを測定してみたところ、一見きれいな値を示すのですが、これが本当に正しい値なのか不安です。解釈の仕方も通常とは異なってくるのではないかと思ってしまいます。このHP上で、珪藻は非光化学消光による蛍光強度の減少が非常に速い時間スケールで起こるということが書かれていたので、高等植物とは違う値を設定しなければならないのだろうとは思いました。論文をいろいろ参照してみたところ、海氷藻類で、0.6秒から0.8秒の飽和パルス光の持続時間を設定している論文もありました。また、珪藻での蛍光測定に関して、参考となる論文がありましたら教えていただけないでしょうか?よろしくお願いします。(2006.10.17)

A:ご質問の点に関しては、飽和パルス光の立ち上がり速度や、記録計の時間分解能などが効きますので、使う機械によって異なることになります。しかし、僕自身は、WATER-PAMを使ったことがないので、機械のスペックがわかりませので、以下は一般論です。基本的には、おっしゃるように、藻類では非光化学消光の誘導が極めて速い点が問題となります。これは、単に飽和パルス光を短くすればよい、という問題ではありません。飽和パルス光が長くても、その間の蛍光変化を速い時間分解能で測定できるのであれば、蛍光が上昇して減衰していく過程をモニターできますから、ピークのところを取ればよいことになります。しかし、普通のペンレコーダーなどを使ってしまいますと、ペンの動きが間に合わずに蛍光強度を過小評価してしまうことになります。さらに、飽和パルス光の立ち上がりの問題があります。KL-1500などのタングステンランプを励起光に使っている場合には、持続時間を0.8秒に設定していても、実際には、最大の光強度になるまでに0.3秒程度かかってしまいます(従って、最大強度のでの持続時間は0.5秒と言うことになります)。この場合、最初の0.3秒の時間の間に非光化学消光が誘導されてしまったら、結局何を測っているのかわからなくなってしまいます。従って、藻類での測定においては、立ち上がりが充分速い励起光源を使う必要があります。0.05秒ぐらいが良いと聞いたことがある、というのは、立ち上がりが早い励起光源としてMTフラッシュというのが出ていて、それが、50 msの持続時間を持っていることを指しているのだと思います。これならば、充分に速く立ち上がります。また、このMTフラッシュは、信号の保持回路がついていますので、この回路を通すと、信号を変化した最大値で0.5秒間保持させることができます。そうすれば、ペンレコーダーなどでもきちんと蛍光強度を測定することができます。参考論文ということですが、ケイ藻はについてはあまりサーベイしていないので、わかりません・・・。
(2006.10.18)

Q:飽和パルス光の最適な持続時間は、飽和パルス光の立ち上がり速度や、記録計の時間分解能を考慮して決めるものだということがよく分かりました。WATER-PAMの性能をよく理解した上で、最適な持続時間を見つけるようにしたいと思います。あと、ひとつだけよく分からないことがありましたので教えていただきたいと思いました。MTフラッシュとは何なのか、よく分かりませんでした。正確には、MTとはなんのことを指しているのか教えていただきたいです。インターネットで調べようとしましたが、検索に引っかからなくて知ることができませんでした。よろしくお願いします。(2006.10.19)

A:失礼しました。MTフラッシュというのは、Walz社が出している励起光光源です。マルチプル・ターンオーバーの略称のようです。50 ms程度の長めのフラッシュで、光化学系が何回もターンオーバーする、という意味です。Walz社のホームページを見ればスペックなどはわかると思います。(2006.10.19)


Q:植物の環境適性の差をMini-PAM測定で評価できないかと考えております。例えば、一定の低温や高温環境に遭遇させた時の植物の生育適応能力が光合成能力の差として現れると考えた場合、Mini-PAMで測定した光合成収率の経時変化で評価することは可能でしょうか? 可能である場合、収率の数値に具体的にどの程度の変化が生じた時に、明らかな系統間差があるものと捉えるべきでしょうか? 野菜や草花など園芸作物での一般的な事例でお知恵をお貸しください。(2006.10.6)

A:クロロフィル蛍光測定の中で一番簡単に測定できるパラメーターはFv/Fmですが、特定の環境条件でのFv/Fmの低下を、ストレス耐性の指標にした論文はたくさんあります。その他のパラメーターを使っても問題はないはずです。従って、可能である、というのが前半のご質問に対する回答になります。どれだけの差が出たら系統間差があるか、という質問は光合成の質問ではなく、統計学の質問です。答えは、系統内のばらつきよりも大きな差が出た時、となります。ばらつきの大きさは、材料、環境条件、パラメーターの種類によって変わりますから、自分で測ってみるしかありません。(2006.10.6)

Q:ご指摘の通り、統計処理で有意差を見るということは承知です。最終的には個体選抜に供試できたらと考えますが、実際にトマトやキュウリなどの事例で、数値がどの程度下がると、何らかの形態的、あるいは生理的な変化が出てくる、というような研究報告があれば是非ご紹介下さい。(2006.10.6)

A:クロロフィル蛍光は、光合成の状態を直接反映するのです。クロロフィル蛍光によって統計的に有意な差が出ていれば、そのまま生理的な差があるということを意味しています。形態と光合成の間には直接の因果関係はないので、こちらについてはわかりませんが。(2006.10.6)

Q:早速のご返答ありがとうございました。お勧めの良い論文はありませんでしょうか?(2006.10.6)

A:何についての論文かがわからないと勧めろと言われても困りますが、まずは、クロロフィル蛍光測定を普及させたSchreiberの論文を読んで、きちんと原理を理解することが早道かも知れません。Google Scholarで"U Schreiber"と検索すればすぐにたくさん引っかかります。(2006.10.6)

Q:実際に園芸作物とPAMを供試しての耐ストレス性試験のモデル事例があればご紹介願えればと思った次第です。分かりづらいお願いで申し訳ありませんでした。でもその前に、もう少し基本的なことから勉強してみなさいということですよね。(2006.10.6)

A:モデル事例、と言えるかどうかわかりませんが、クロロフィル蛍光が耐ストレス性試験に役立つという応用的な論文はいくつかあります。しかし残念ながら、そのような論文の多くは、クロロフィル蛍光の機械を買ったので、いろいろな植物、いろいろな品種で測定してみて、いろいろな差が出ました、というだけの、測定方法の原理を理解しているかどうかも怪しい論文がほとんどです。中でまとものなのは、Andrews et al. (1995) J. Exp. Bot. 46, 1195-1203でしょうか。園芸作物ではなく作物になりますが、トウモロコシの3つの品種で低温の影響を見ています。ただ、品種間の差を検出するのが目的ではないので、モデル事例にはならないかも知れません。(2006.10.6)


Q:初めまして。先生のHPを拝見して勉強させて頂いております。早速質問させてください。私は紅色非硫黄細菌に分類されている光合成細菌を用いているのですが、このような細菌でもPAMを用いることは可能でしょうか?ちなみにこの光合成細菌はPSIはもたず、PSIIに類似した構造のみを持っています。私は勝手にこの細菌を用いる場合でもPAMを使うことは可能だと考えて、mini-PAMをもちいて測定してしまいましたが、そこでのデータの解釈の仕方に自信がありません。異なる2つの培養条件においた細菌を細胞重量が同じになるように調整して、Fo,Fm,Fv/Fmを測定した結果、Fv/Fmはほぼ同じ値を示したのに対してFo,Fmの値がもう一方と比べてそれぞれ1.5倍ほど違っていました。私はこのデータの解釈は光合成をする効率自体は同じだけれども(Fv/Fmはほぼ同じ)Foが大きいのでクロロフィル含量も高く、光合成をするための機関が発達しており、光をたくさん吸収できるため、Fmもおおきくなったのではないかと思っています(ちなみにFo,Fmが多きかったほうの細胞はユビキノンを多く含んでいることはわかっています)。つまり、ある光源から光粒子が1000個でたとして、Fo,Fmが低いほうは光粒子を100個吸収しNADHなどのエネルギー物質を70個作ると仮定するともう一方は1000個の光粒子から150個吸収し、105個のNADHを作る、結果としてより多くのエネルギー物質を生産することができるということなのかと考えています。PAMはもちろん、光合成に関してもあまり詳しくないので非常に不安です。このような解釈であっているのか教えていただきたいです。よろしくお願いします。長文失礼しました。(2006.7.3)

A:光合成細菌の場合、色素は当然バクテリオクロロフィルですから、クロロフィルよりは吸収も蛍光も長波長にシフトしています。mini-PAMを用いた場合に、どの程度きちんと測れるかについては、僕自身経験がありませんので、よくわかりません。ただ、Fvが出ているということは、とてつもなく変なことはおきていないように思います。細胞重量でそろえた細胞について、片方の種類のFoとFmが1.5倍になっていた理由としては、おっしゃるように、そちらの種類でクロロフィル含量が高いせいである可能性が一番強いと思います。Fv/Fmは、光合成のいわば理論上最大の収率を示すのですが、実際にどの程度光合成ができるかどうか、とは必ずしも一致するとは限りません(もちろん一致する場合もあります)。もし、どちらにかけるか、と聞かれたら、クロロフィル含量が多い方の種類で(細胞あたりの)光合成能力が高い方に賭けますが、完全に確実とは言えません。光合成が高いという考え方は、おそらく方向としては間違っていませんが、実験から「結論」するのは難しいかと思います。実験結果と矛盾しない、という感じかと思います。(2006.7.3)


Q:いつも勉強させていただいております。早速質問なのですが、今度スギ・ヒノキで蛍光測定(MINI-PAMを使用して)を行おうと思っているのですが、MINI-PAMのファイバーと葉の距離をほぼ一定に保たなくては成らないと操作方法に書いてあるのですが、針葉樹の場合、どのように葉とファイバーの距離を一定に保てばよいのでしょうか?クリップではどうもうまくいかないのではないかと思っています。よろしくお願いします。(2006.6.2)

A:僕の所ではサンプルホルダーを自作しています。といっても、単にプラスチックの下敷きを切ったもので葉をはさむようにして、そこに、穴を開けたゴム栓を固定して、穴の部分にファイバーを差し込めるようにしただけです。総経費200円+労働時間1時間ぐらいでしょうか。簡単な工作をして自分の試料にあったホルダーを作るのが一番早道かと思います。(2006.6.2)


Q:園池先生こんにちは。この前実験の合間にふと思ったことがあります。クロロフィル蛍光を測定することによりΦPSIIやNPQなどいろいろなパラメータを出すことができると思います。これらのパラメータはすべてPSIIの反応中心やアンテナに関わるパラメータであると思います。しかしクロロフィル蛍光はPSI(のアンテナクロロフィル)からもでると考えてよろしいのですよね。それなのにそういうのを考慮せずに、たとえば「NPQは系IIアンテナからどのくらい熱として散逸しているかの指標だ」と決め付けてよろしいのでしょうか。自分がクロロフィル蛍光について土台がしっかりしてないからこのような質問をするような気もしますが、どうもムズムズしています。抽象的なご質問ですが何かアドバイスあったらお願いいたします。(2006.5.8)

A:クロロフィルの蛍光は確かにPSIからも出るのですが、1)室温での蛍光強度は、PSIIからの蛍光に比べ相対的にかなり弱い、2)反応中心の電子伝達成分の酸化還元状態などを変えても蛍光強度にほとんど影響がない、という2つの特徴を持ちます。従って、全体の蛍光に対する影響としては、PSIの蛍光は小さな一定の「げた」としてしか作用しません。つまり、蛍光の変化に注目する限りにおいては、そこにはPSIからの情報はほとんど含まれないということになります。PSIにもキサントフィルは存在し、しかもキサントフィルサイクルによって相互変換も起こすことがわかっているのですが、蛍光強度の変化として現れない以上、熱放散などには効いていないと考えるしかありません。PSIのキサントフィルサイクルは、いまだもって謎のままです。一方で、PSIIの蛍光からPSIの情報を得ることは可能です。定常状態においては、PSIの電子伝達速度とPSIIの電子伝達速度は(サイクリックの部分を除けば)一致するはずですから、PSI(もしくはプラストキノンプールより下流)が全体を律速するような状態では、蛍光はその律速段階についての情報を提供してくれるはずです。qPなどは、PSIIというよりは下流の情報を示すパラメータですし、phyII は電子伝達全体の収率を示していて、PSIが阻害された場合にも低下します。ですから、そもそも、PSIIのクロロフィルの蛍光から計算されるパラメータであっても、「すべてPSIIの反応中心やアンテナに関わるパラメータである」というわけではないのです。(2006.5.8)


Q:初めまして。先生のHPを拝見して勉強させて頂いております。MINI-PAMを使用して、強光および弱光条件下で育ったホウレンソウ着生葉のクロロフィル蛍光を測定しています。成育光強度は、強光条件で600μmol m-2 s-1、弱光条件で100μmol m-2 s-1です。強光条件下で育った葉において、Fmを測定した後、100-200 μmol m-2 s-1程度の励起光下で定常状態を得てFm'を測定すると、Fm'の値がFmの値を上回ってしまうことがあります(大きい時では10%程度)。その結果、NPQやFv/Fm-Fv'/Fm'といった熱放散活性を反映する(理論上は正になるはずの)パラメータが負となってしまいます。Fm測定前の暗処理の時間を1時間程度に延ばしてみたり、測定光・飽和光強度を変えてみても同様の結果になります。また、励起光強度を500μmol m-2 s-1程度まで上げると、Fm'の値はFm以下まで下がります。弱光条件下で育った葉ではこのような現象は観察されません。これは、何か測定上の問題の可能性が高いでしょうか?それとも、このような成育・測定条件で起こりうる生理的な応答と考えてよいのでしょうか?初歩的な質問かもしれませんが、どうぞよろしくお願い致します。(2006.4.10)

A:どうも僕にはそのような現象の経験がないので、一言ではお答えできません。一般的には飽和光の明るさが足りない、飽和光に極めて短いパルス光を用いている、などといった時に起こるような気がしますが、その場合は、飽和光強度を変えればFmも変わりそうなものです。また、冬季の樹木などでNPQが強く誘導されるため、暗所でもNQPが0にならない例は報告されていますが、ホウレンソウではあまり考えられませんし、その場合には暗処理の時間を変えるとFmも変わると思います。僕のところではいろいろな実験をしていますが、藻類と違って高等植物ではFmがきちんと出なかったケースはなかったように思います。もしかしたら、MINI-PAM特有の現象かも知れません(僕はOld PAMを使っています)。そうなると僕ではよくわかりません。あまりお役に立てず、申し訳ありません。(2006.4.11)


Q:こんにちは。早速質問ですが、先生の公開実験で、枝豆の実での実効量子収率が0.1以下と極端に小さくなっています.これは,光化学系IIはある程度あるものの,系Iやb/f複合体などの電子伝達成分を構成する他の成分が少ないか,または機能していないと考えられます.と記述してありましたが、理解出来ませんでした。また、Fv/Fmと実効量子収率がどのような点で異なるんですか?初歩的な質問で申し訳ありませんが教えて下さい。宜しくお願いします。(2006.1.15)

A:Fv/Fmというのは、最大量子収率といって、光化学系IIの中でどの程度反応が有効に起こるかどうかの指標です。実際には、暗いところに置いた植物にぱっと短い光を当てて測定します。一方で、実効量子収率というのは、ずっと一定の光を当てた状態(定常状態)で、電子伝達鎖を電子がが流れている状態で系IIがどの程度働いているかを見ます。つまり、最大量子収率の場合は、系IIだけを見ているのですが、実効量子収率の場合は、他の部分も含めた電子伝達を見ているので、例えば、系Iが機能していない時は、系IIは問題なくても収率は低下してしまいます。枝豆の場合は、最大量子収率はさほど落ちていないことから、系II自体の機能にはさほど問題はないことがわかります。にもかかわらず、実効量子収率が落ちていたので、系II以外の部分、例えば系Iやb/f複合体がおかしくなっているのではないか、と推測したわけです。


Q:大学の友人に「パルス変調を用いたクロロフィル蛍光測定って何?それによってどういう成果を出せるの?」と質問され、私は、まず蛍光の説明をしてから、光合成は色素による光エネルギーの吸収から始まるので蛍光とは切っても切れない縁があると答えました。そして、クロロフィルからの蛍光の強さの変化を測定できるので光合成が飽和するような光を当てる前と後の蛍光強度の差(光合成の効率)が調べられると説明したのですが、「もっと分かりやすく具体的に説明してよ。」と言われて困っています。お忙しい中ですいませんが、もし良ければ、少し具体的に説明してもらえませんか。(2005.11.17)

A:もう20年近い教師生活でわかったのは、人に説明した時にわかってもらえるかどうかは、言葉ではなく、説明する側がどれだけ充分に理解しているかだ、ということです。自分が心から納得していないと、人に説明してもわかってもらえません。それは、ここで僕が説明の台本を書いて、それを読み上げた場合でも同じです。自分で理解していないことは人には伝わりません。このサイトのオンライン教科書は完全に理解できましたか?まずは充分に自分で納得するまで勉強することが大切です。その過程でわからないことがあったら質問して下さい。また、ご友人に、このサイトを紹介して、何がわからないのかを質問してもらった方がより直接的ではあります。


Q:多くの論文に「radiationless(noradiation) energy dissipation」とありますが、これは何をさしているのでしょうか。また、冬の植物でエポキシ化は減少するにも関わらずNPQまで減少してしまうのはなぜでしょうか。(2005.11.1)

A:植物が光合成に使えなかったエネルギーは、何らかの形で消去(dissipate)しなくてはなりませんが、通常は、蛍光になるか、熱になります。この場合のradiationは蛍光の「放射」を指しますので、non radiationというのは、熱の形でのエネルギー放散を指します。具体的なメカニズムとしてはキサントフィルサイクルなどのNPQとほぼ重なります。冬の植物というのは、オーストラリアのDemmig-Adamsのグループのデータか何かでしょうか。申し訳ありませんが、どのようなデータを指しているのか、ぱっと思いつきませんので、よくわかりません。論文名などがわかれば調べてみますけど。


Q:私は今、熱発光と遅延発光について学んでいます。熱発光は、キノンにトラップされていた、電子が熱を加える事により、ギブスエネルギーを越えて、P680の方へ逆行して、再結合がおこり発光するということはなんとなくでも理解できました。が、遅延発光の場合このギブスエネルギーをどのように越えて、P680で再結合するのかが、わかりません。(2005.9.9)

A:おそらく熱発光では「熱を加える」ので、何らかの形で活性化エネルギーを加えることが必要だ、と考えられたのだと思います。しかし、実際の(光合成系の)熱発光の測定では、試料は通常、光の励起直後に液体窒素温度まで冷却します(もしくは、液体窒素温度において光で励起する)。「熱を加える」というのは、単に室温まで戻すのを速めるのが主な目的です。従って、室温での熱エネルギーだけで、充分活性化エネルギーの壁を乗り越えてしまいます。遅延蛍光の場合は、通常、室温で測定しますから、放っておけば電荷の再結合が起こり、発光が見られることになります。逆に言えば、室温で自然に起こる遅延蛍光を、液体窒素まで冷やすことによって「固定」して、後からゆっくり発光させたのが熱発光であるという言い方も出来ます。


Q:高校生です。植物を暗いところから明るいところに移した時のFv/Fmの変化のグラフを見ています。Fv/Fmが分かりません。量子収率と同じですか?それから、光合成質問箱(古い質問)に「光合成の効率を示すのに、「量子収率」というものが使われます。これは、光量子(光子)1個があたったときに、光合成に有効な反応が起こる確率です。これだと、赤い光でも青い光でも量子収率は同じになります。一方、普通、効率というとエネルギー効率(当てた光のエネルギーのうちどれだけが光合成に使われたか)が頭に思い浮かびますが、これだと、赤い光が当たったときに比べて、よりエネルギーの大きい青い光が当たったときは、最低励起状態になるまでに熱で失われるエネルギーが大きいので、見かけ上エネルギー効率が低くなります。これだと不便なので、量子収率が使われるのです。」と書いてありました。光合成に有効な反応とは、光エネルギーで水を分解し、電子を取り出すことなのですか?後半の“赤い光?使われるのです。”のところで、見かけ上エネルギー効率が低くなるというのは量子収率でも同じ事がいえないのですか?よろしくお願いします。(2005.9.7)

A:Fv/Fmといいうのは、クロロフィルから出る蛍光という光を測定して、そこから計算される数値です。この数値は、理論的に光合成の量子収率とよい相関関係があることがわかっています。定義としては「同じ」ではありませんが、Fv/Fmを見れば、だいたい量子収率がどうなっているかがわかる、とお考え下さい。「光合成に有効な反応とは、光エネルギーで水を分解し、電子を取り出すことなのですか?」という点に関しては、その通りです。光を吸収しても、必ずしも光合成が進むとは限りませんが、反応が進む時には、光子1個を使って、電子が1個流れる反応が進みます。同じ反応が進む場合には、そのエネルギー収率は、

「電子1個が流れる反応が起こる割合÷光の持っているエネルギー」

となり、青い光と赤い光では「光の持っているエネルギー」が違いますから、結果も変わってしまいます。一方、量子収率の場合は、収率は

「電子1個が流れる反応が起こる割合÷光子の数」

となりますから、青くても赤くても光子1個は1個ですから、結果は同じになります。


Q:こんにちは。私はC4植物を材料に低温耐性について研究しているのですが、C4植物のNADP-ME型にはグラナがなく、極端にPSIIが少ないですよね?それでも蛍光を測定するとちゃんと反応を示してくれるのですが、C4植物の蛍光特性が低温に及ぼす影響はどの程度評価できるのでしょうか?低温耐性を評価する場合、PSI特性(活性酸素消去など?)を主に測定していけばいいのでしょうか?光合成に必要なNADPHなどはC4回路で主に生成しますし、PSIIでのプロトン勾配も大きく生じないような気がしているのですが、実際はどの程度働いているのか論文などがあれば教えてください。また、C4植物は強光条件で生育が有利ですが、熱帯作物などの低温感受性植物はC3植物よりも光阻害の状態になりにくいと考えてもいいのでしょうか?よろしくおねがいします。(2005.6.10)

A:「NADP-ME型のC4植物にPSIIが少ない」とありますが、正確には、「NADP-ME型のC4植物の維管束鞘細胞にはPSIIが少ない」ですね。NADP-ME型のC4植物でも葉肉細胞にはある程度のPSIIが存在します。そして、クロロフィル蛍光を測定した時に見えるのは、PSIIが存在する葉肉細胞の情報だけなのです。C4植物の場合、維管束鞘細胞と葉肉細胞では、その性質が大きく違いますので、どちらについての情報が知りたいか、によって答えも大きく変わってしまいます。 トウモロコシの低温感受性については、僕がぱっと思いつく論文としてはFoyer のグループが

Kingston-Smith AH, Harbinson J and Foyer CH (1999) Acclimation of photosynthesis, H2O2 content and antioxidants in maize (Zea Mays) grown at sub-optimal temperatures. Plant Cell Environ 22: 1071--1083

Kingston-Smith AH and Foyer CH (2000) Bundle sheath proteins are more sensitive to oxidative damage than those of mesophyll in maize leaves exposed to paraquat or low temperatures. J Exp Botany 51: 123--130

という2つの論文を書いています。これらは僕の専門のPSIを調べているので手元にあるのですが、PSIIがらみの論文だったら、もっとあると思います。光阻害との関係については、一概に言うのは難しいと思いますが、他のストレスがかかっていない、強光だけのストレス条件には、C4植物は強いように思います。


Q:パルス変調の教科書拝見いたしました。私は現在、実験試料を植物としていまして、植物の全体の蛍光イメージを画像化しようとしています。励起光としてYAGレーザ20mJ、10Hzを使用しています。このレーザ光を植物全体に照射するために対物レンズで拡散させます。そこで問題となっているのが植物を励起状態にするためのレーザ光のパワーは最低どのくらい必要なのか知りたいです。イメージ画像が現在取得できないで困っています。よろしくお願いします。(2005.5.19)

A:レーザー自体のパワーがわかっていても、それがどの程度拡散されるか、検出系の感度がどれくらいか、がわからないとお答えのしようがありません。また、クロロフィルの励起で重要なのはパワーではなく光子数(正確には光量子束密度)です。僕のところでは市販のCCDカメラを検出系に使っていますが、植物体の表面で50-200 マイクロmol photons/m2/s の励起光を使っています。


Q:現在,季節による変化を追うために,野外条件下の木本類の季節変化を追っています.おそらく冬季には低温ストレスを負っていると考えております.そこで,7月を夏季,2月を冬季として測定を行い,夏季と冬季のFv/Fm,KineticsでqP,qNを測定してます.Fv/Fmは冬季に低下し0.6程度まで低下しました.そこで,冬季はストレスを受けているだろうと思っています.そして夏季と冬季でqP,qNを比較し,何か違いが出るかと思っていますが,Kineticsで測定する蛍光強度は7月が蛍光強度が1600くらいなのですが、2月は600程度になってます.この蛍光強度の差はどのように考えたらよいのでしょうか?そして,qNの値が冬季は上昇傾向にあります.これは,熱放散を積極的に行い,活性酸素の生産を防ぐため.という可能性がありますでしょうか?(2005.1.22)

A:冬季の樹木でqNが大きくなっており、それが暗所(夜の間)でも完全に回復しないので、Fv/Fmの低下となって現れる、ということは、オーストラリアのDemig-Adamsのグループが報告していたと思います。解釈としては、熱放散を盛んにして光阻害を防ぐ、ということだったと思うので、おっしゃるような現象は充分にあり得ると思います。ただ、蛍光強度が倍以上違うというのは、やや差が大きい気がしますので、その他の要因もあるかも知れません。半年たつと機械の方の感度なども少しずつ変化している可能性もなくはないので、もし絶対値をきちんと議論したいのであれば対象として一定の蛍光を示すものでのチェックが必要かと思います。


Q:はじめまして、中国から来た留学生です。今、博士2年生で、大気汚染物質は植物にどんな悪影響を及ぼすかを研究しています。最近、一本の英文を読んで、光合成に関する分からない言葉がいくつかありました。友たちから先生のこの光合成質問箱を聞きまして、このメールを送ります。よろしくお願いいたします。私の質問は以下通りです。
1.元の英文はこのように書いてあります。

The ratio between variable and maximal fluorescence (Fv/Fm) was measured in dark-adapted (15 min) leaves at the beginning of each measurement and after ozone fumigation.

質問:葉は暗いところにも発光(蛍光)しますか?(光を吸収してから、蛍光を放出するのではないでしょうか?)

2.元の英文はこのように書いてあります。

In the illuminated leaves, the steady-state fluorescence in response to the 700 μmol m-2 s-1 light intensity (Fs) and the maximal fluorescence in response to a saturating (10000 μmol m 2 s 1) pulse of white light (Fm') were measured and the ratio between (Fm'- Fs)/Fm' = F/Fm') was calculated.

質問:光が700μmol m-2 s-1である時に、蛍光がもっとも安定ですか?また、光が10000 μmol m-2 s-1である時に蛍光がもっとも高いですか?

3.The electron transport rate (電子伝達速度?)の定義は何でしょうか?どうやって計算しますか?これは低くなると、光合成がうまく行ってないということですか?

4.the photochemical efficiency(光化学効率?)の定義は何ですか?どうやって計算しますか?the photochemical efficiencyは光合成とどんな関係がありますか?

5.非光化学消光と光化学消光はそれぞれ何ですか?どうやって計算しますか?それぞれが高くなると、または低くなると、どんな意味を示しますか?

たくさんの質問をして、申し訳ありません。よろしくお願いいたします。(2004.12.16)

A:
1.dark-adapted というのは、測定前にあらかじめ暗所においておく、ということで、蛍光測定自体は光を当てて行います。
2.別にある光の強さで蛍光が「安定である」ということはありません。700 μmol の光があたった時の光合成の状態に関する情報が欲しかったと言うことでしょう。
また、"saturating" と書いてあるように、ある一定以上の光では蛍光の強さはあまり変わらなくなります。おそらく10000でも5000でもあまり変わらないでしょう。
3,4,5に関しては、このサイト内のオンライン教科書をご覧下さい。詳しい解説が書いてありますので、読めばわかると思います。


Q:YieldとFv/Fmの値は、PSII間なのですか?つまり、H2O→2,6-dimethyl-p-quinoneまでの電子の流れなのでしょうか?それとも、H2O→NADPまでの流れなのですか?(2004.6.30)

A:まず、Fv/Fmの値は、原理的には光化学系IIの初期電荷分離の部分だけが生きていれば高い値が出ます。極端な例としては、DCMUを加えてQAからQBの電子伝達を阻害しても、QAまでは電子が行くので、蛍光の変化を観察することはできます。ただ、このような場合は、いくらパルス変調といっても測定光による還元型のQAの蓄積が無視できなくなりますから、Foが上がり、結果的にある程度のFV/Fmの低下として観察されます。従って、測定光の強さや、暗順応の時間などによって結果が変化しますので、注意が必要です。 Yield(ΦII)の方は、定常状態の電子伝達速度なので、NADPまではおろか、炭酸固定まで動いていないと高い値は出ません。どのくらいの時間をかけて「定常状態」にしているかにもよりますが、炭酸固定までを含めての光合成活性と考えてよいと思います。ただし、二酸化炭素の固定によって光合成を測っている場合と違うのは、光呼吸や酸素の還元によって電子が流れている場合も活性として検出されるということです。電子の流れ自体は光化学系IIの部位で見ているわけなので、蛍光の測定の場合は、還元力が二酸化炭素の固定に使われずに、酸素に抜けている場合にも、活性として検出されます。


Q:はじめまして。蛍光の学習にこのHPをよく利用させていただいています。今回初めて質問させいただきます。現在OS5-FLを用いて蛍光の測定をしております。このうち、Kineticsで測定したqPの値がたびたび1.0を超えてしまいます。理論的には1.0を超えない値のはずなのですが…これはどうして起こるのでしょうか??そして、Cheesemanの論文(Plant, Cell and Environment 1997 20,579-588)や、Wen-Yuan KAOの論文(Photosynthetica 37(3)405-412,1999)において暗処理を行うKineticsやFv/FmでPAR(PFD)を変化させた値が結果として出ていますがこれはどう測定してあるのですか??暗処理するパラメーターでどのように設定して光を変化させれるのでしょうか??(2004.6.19)

A:1つ目の質問に関しては、僕自身OS5-FLを使っていないのでわかりませんねえ。内部でどのように計算しているのかによると思います。一番確かなのは自分で計算することです。蛍光のトレースは紙に打ち出せますよね?そうしたら、それを定規か何かで測って、計算するのが一番です。機械が計算してくれるのは便利なのですが、それに頼ると、もし何かおかしなことが起こっているときに見逃してしまいます。どんな場合でも、常に蛍光のトレースを確認することが重要です。

後半の論文については手元にないので、よくわかりませんが、クロロフィル蛍光については、いろいろいいかげんな論文が出ています。大きく分けて、
1)生育光を変化させてFv/Fmを測定しているのだが、書き方が悪くて、それがあたかも測定時の光のように取れてしまう。
2)励起光をあてる前にFv/Fmを測定してるのだが、その測定条件として励起光の光量子を記載してしまう。
という二通りのパターンが多いようです。いずれにせよ、僕の経験では単に著者の不注意な記載が原因である場合がほとんどだと思います。


Q:今回はじめて質問させていただきます。今、系Iの測定をするために勉強しているのですが、あまりイメージがつかめません。還元型というとどうしてもクローズという感がするのですが、P?700では還元型がオープンなのですか?それはなんでですか?もしかすると非常にばかげた質問かもしれませんが、まだまだ勉強不足なものでよくわかりません。また系Iについて、わかりやすい論文があったら教えてください。よろしくお願いします。(2004.5.26)

A:確かに、通常のクロロフィル蛍光の測定だと、「Qの還元」=「クローズな系II」になります。しかし、系IIにおいてQは電子を受け取る側です。一方で、P-700は系Iにおいて電子を与える側です。ですから、系Iでは系IIとは逆に「P-700の還元」=「オープンな系I」になります。もちろん系Iにも電子を受け取る側があります。Aは系Iの一番最初の電子受容体ですが、Aから見ると、「Aの還元」=「クローズな系I」になります。光を当てたときに電子を受け取る側と電子を与える側では、逆になるのは当然ですよね。 系Iと系IIで違うのではなく、還元側と酸化側で違うわけです。系Iの総説としては、2001年と3年前になりますが、Biochim.Biophys.Acta-Bioenergetics誌の1507巻が特集を組んでいます。P-700については、WebberとLubitzが61-79ページに、電子伝達については、BrettelとLeiblが100-114ページに総説を書いています。パルス変調によるP-700測定に関しては、パルス変調を開発したSchreiberの論文のどれかを読めばよいのではないでしょうか。


Q:一度以前に質問させていただいたものです。今回、蛍光の勉強をしているのですがどうもF685/F735というパラメーターの意味が理解できません。低温になると、この値が高くなるんですか?チラコイド膜とも関係しているようですが・・・。また、この測定は機械で自分が操作して測定できるものなのですか?参考にできる文献などがあれば、それも含めて教えていただくと幸いです。GW中申し訳ありません。 (2004.5.2)

A:光合成系には光を吸収して光化学反応を行なう光化学系に2種類有り、それぞれ光化学系I、光化学系IIと呼ばれます。F685/F735というのは、この光化学系量比(系II/系I比)を示すパラメーターです。光化学系IIは室温では主に680 nm付近に蛍光を発光するのですが、光化学系Iの場合は、室温では蛍光が極めて弱く観察が困難です。しかし、液体窒素温度まで冷やすと、光化学系Iは735 nm付近に(F735)、光化学系IIは685 nm付近(F685)と695 nm付近(F695)に蛍光を発光します(Fは蛍光-Fluorescence-の略です)。従って液体窒素温度で蛍光を測定すれば光化学系Iと光化学系IIの量を見積もることができます。ただし、同じ量の光化学系Iと光化学系IIがある時に、同じ強さの蛍光が出る、というわけではないので、F685/F735が直接系II/系I比を示すわけではなく、あくまで相対的な量の変化を知るために用いられます。蛍光強度の波長分布(スペクトル)は、蛍光光度計という分光器の一種があれば測定できます。ただ、F685/F735の測定の場合は、上記のように液体窒素温度で測定する必要があるので、液体窒素温度での測定を可能にするオプション(もしくは改造)が必要となります。若干これより専門的な説明は、オンライン教科書の3.2にあります。また、液体窒素温度での蛍光スペクトルの初期の論文としては、Murata et al. (1966) Biochim. Biophys. Acta 126, 234-243. Rijgersberg et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 545, 473-482.などがあります。


Q:蛍光の誘導期現象のことについてお聞きしたいことがあるのですが,Fmに到達するまでにかかる時間ΔTと言うのは一般的にはどのくらいの時間なのでしょうか?また、実験装置や実験系によってその時間は変わってくるのでしょうか?(2004.3.3)

A:蛍光の誘導期現象では、光化学系IIの受容体(QA)が還元されて蛍光が大きくなるのが一番大きな変化の要因です。光化学系の受容体が還元されるのは光によってですから、当然、どのくらいの強さの光を当てるかによって、Fmに到達するまでにかかる時間は変わってきます。また、QAの再酸化を阻害するDCMU等の阻害剤を加えれば、非常に短い時間でFmに到達します。ですから、一概には言えませんが、通常は光の強さを加減して数秒から数十秒でFmに到達するようして観察する場合が多いのではないかと思います。


Q:C3植物、光強度1000 umol、外気CO2濃度がゼロ(その他は、自然条件)の条件でETRの計算値が40 umol m-2 s-1と言う数値が得られました。この数字の解釈は、光呼吸速度が40 umolということなのでしょうか?C4植物で同様の測定をするとETRは、ゼロになるのでしょうか?(2003.11.4)

A:ETRは、炭酸固定に限らず、何らかの理由で電子伝達鎖に電子が流れる場合に、プラスの値を持ちます。ですから、ご指摘のように光呼吸もETRに寄与しますし、例えば単純にメーラー反応で酸素に電子が流れる場合や、water-water cycleなどで電子が流れる場合でもETRとして検出されます。実際に、何が電子伝達を担っているのかを調べるには、酸素濃度を変えてみるなどのチェックが必要にかるかと思います。C4植物で僕自身はきちんと測定したことがありません。ただ、光呼吸以外の要因も考えられるわけですから、完全にはゼロにならないのではないでしょうか。


Q:異なる光環境に生育していた植物のFv/Fmを測定し、Fv/Fm測定後すぐにサンプリングした葉の色素組成を分析したところ、Fv/Fmの値は約0.8で一定であったのに対し、Z/(A+V+Z)(mmol/mmol)の値は約0.03から約0.15まで変化が認められました。Z/(A+V+Z)は熱散逸量を間接的に表すものであるとすると、熱散逸によるFm、Foの減少が同じ割合であったためFv/Fmには影響が現れなかった、ということでしょうか?(2002.10.22)

A:キサントフィルサイクルによる熱放散には、ゼアザンチンの生成の他、光照射時のチラコイド膜内腔の酸性化によるLHCPのプロトン化などが必要であるとされています。従いまして、ゼアザンチンの量がそのまま熱放散の程度を表すわけではありません。Fv/Fmは暗所で測定する光化学系IIの最大量子収率ですが、ストレスがかなり強くかかっている時を除いて、通常大きな変化は示しません。暗所では、熱放散はあまりないと考えるのがむしろ良いかと思います。光が当たっているときの電子伝達の実効量子収率はφIIとして蛍光により測定することができます(詳しくはオンライン教科書の方を見てください)。また、熱放散の指標としては非光化学消光NPQやqN等を測定することができます。光照射下で、このようなパラメーターを測定してみれば、ゼアザンチンの量との相関を観察できるのではないかと思います。


Q:delayed light emissionとはどういった現象なのですか?できるだけ、詳しく教えていただきたいです。(2002.9.13)

A:delayed light emissionは日本語では遅延蛍光といいます。遅延蛍光については、テキスト理論編1.2に簡単な説明があります。基本的には、光エネルギーを吸収した反応中心が電荷分離を起こしたあと、再び電荷の再結合(逆反応とも言います)を起こすことによって再びクロロフィルが励起状態になり、その励起したクロロフィルが基底状態に戻る時の発光を言います。遅延蛍光は蛍光と同じく主に光化学系IIから発光します。遅延蛍光は通常の蛍光より寿命が長いので、励起光を当てたあと、初期の蛍光が消えてから、発光が時間と共に減衰していくのを測定します。遅延蛍光は、蛍光や熱発光と共に、光化学系IIの研究に使われてきましたが、光化学系IIの状態によって複数の減衰成分があるため、それを解析して光化学系IIの情報を得るのは案外難しく、最近では、光化学系IIの状態をモニターするために遅延蛍光を使用する例は、数えるほどしかありません。これに対して、同じ電荷の再結合に由来する熱発光の方が、成分と光化学系IIの状態の対比がきちんとわかっているため、まだしも報告例があります。


Q:YieldやETRのパラメータには計算の上では暗適応においてでてくる値は使わなくていいので,もし自然光下でこれらの測定をしようと考えるなら暗適応はいらないのでしょうか?(2002.9.9)

A:その通りです。基本的にYield(phyII)やETRの計算に必要なのは、Fm'とF(FTなどとも表記)だけで、FoやFo'などの数値は必要ありませんから、自然光のもとで平衡状態にある植物に飽和パルス光を当てるだけでパラメーターが求まります。


Q:oldPAMのP700測定ユニットでP700+を測定しているのですが、一つ腑に落ちないことがあります。FRを照射しシグナルが定常に達した後、パルス光を照射すると、シグナルは一旦大きくなります(ΔAmax)。ということは、FR照射中でも一定量のP700が残っていたということを示しているのだと思います。FR照射下の定常状態で、P700+が100%にならずにP700が存在しているということは、FR光によってP700+→P700の反応が起きているということなのでしょうか?FRはそもそもPSIIを励起させないものとすれば、この還元力はどこから来ているのでしょうか?PSI cyclicによってPCに電子が供給されているのでしょうか?それともPC以外の他のものが還元しているのでしょうか(例えばO2-とか?)?講習会でもF0'がF0より大きくなることからFRもPSIIを若干励起させるということが議論されていましたが、これはPSIIがFR領域の波長を吸収するのか、それともPAMシリーズのFR光源にFR以外の波長が含まれているのか、どちらなのでしょうか?(2002.8.31)

A:P-700をFRで完全還元できない理由は3つ考えられます。1つ目は、質問の最後で取り上げられているように、FRがPSIIも励起することによるものです。これは、基本的には、FR光源にFR以外の波長が若干含まれるためと考えられます(FRの波長をいくつからと定義するかにもよりますが)。FRといってもPSIを還元することができるのはせいぜい720 nm以下の光です。700-720 nm付近が充分強くて、かつ、PSIIのクロロフィルが全く吸収しない光を出す光源を作ることはレーザーでも使わない限り不可能に近いでしょう。わずかなPSIIの励起はやむを得ないと思います。2番目の理由は、サイクリックな電子伝達です。PSIの還元側のNADPHやフェレドキシンから、b/f複合体、プラストシアニンを通して、P-700が還元されます。サイクリックな電子伝達の速度は一般にストレス条件下で上がるようです。3番目の理由は、PSI複合体内での電荷再結合です。複合体内の電子受容体のFA/FB等が還元状態にある場合、酸化型のP-700に電子を渡す電荷再結合の反応を起こすことがあります。このような電荷再結合の速度は、Fx、A1、A0と初期の電子受容体になるほど速くなるので、FA/FBが壊れたような試料では、P-700が電荷再結合により再還元されやすくなります。 これら3つのうち、何が起こっているのかは、P-700酸化のFR強度依存性を取ることによって推測することができます。1つ目の原因の場合は、FRのスペクトルに原因があるので、基本的にはFR強度を上げても取り除くことができません。一方、2番目、3番目の原因の場合は、再還元の速度とFRによる酸化の速度の競争になるので、FRの強度を上げることにより、P-700の酸化は進みます。従って、ストレス条件下で、サイクリックが盛んになって、P-700が再還元されているような条件では、ストレスがかかっていない条件と比べて、P-700酸化の依存性をみるとFR強度に対して飽和しにくくなります。


Q:クロロフィル蛍光を測定することでin vivoでのPQの還元状態は算出出来るのでしょうか?(2002.8.20)

A:QとPQは酸化還元的に平衡状態にあります。従って、基本的に光化学消光はin vivoのPQの酸化還元状態を反映します。適当な光条件(例えば生育光)下での光化学消光を測定することにより、PQの酸化還元状態を知ることができます。ただし注意しなければならないのは、DCMUなどPQとQの間を阻害するような試薬が存在すると、PQとQの間の平衡が成り立たないので、蛍光からPQの酸化還元状態を知ることはできなくなります。さらに、もう一つ注意する必要があるのは、あくまで、ある程度の電子が流れている時にのみ有効だということです。例えば、b/f複合体を阻害するDBMIBは、PQを酸化する効果を持つはずですが、もし、電子伝達が完全に阻害されるような濃度を加えた場合は、光化学消光はそもそも見られませんから、酸化還元状態を知ることはできません。また、同様な理由で暗所でのPQの酸化還元状態を知ることもできません。


Q:園池先生のPAMでは、黒色の細長い定規のようなもので葉をはさみ、植物に被害を与えることなしに測定できましたが、何をどのように組み立てたらよいのでしょうか?(2002.8.7)

A:黒いプラスチックの下敷きを切って2枚の細長い形にし、1つの片側に穴をあけてファイバーオプティクスの先がはまるようにしたゴム栓をくっつけて自作しました。細長くしたのは、短いと2枚を大型クリップで挟んでとめたときに、間の葉に力が加わり葉が痛むので、それを避けるためです。葉を挟んだところと遠いところをクリップで挟めば、プラスチックの弾性により葉にかかる圧力は非常に弱くなります。


Q:Kautsky effectという現象がありますが、この現象から解析できることというのは何でしょう?On line教科書でも、Kautsky effectについて記載されているところがありますよね。そこに示されたグラフでD、P、M1、M2などのポイントが載っていますけれど、何か解析できることがあるのでしょうか?(2002.8.1)

A:蛍光の誘導期現象(Kautsky effect)は、系IIの酸化還元状態と熱放散のシステムの働き具合で蛍光の収率が変化する減少です。従って、そのD、P、M1、M2などといった変化から、原理的には、酸化還元状態などの情報を得ることができるはずですが、実際には、複数の要因が絡み合って起こる現象であるため解析が困難で、解析というよりは、「解釈」にとどまっていました。そこへパルス変調が登場して、複数の要因を切り分けることができるようになり、解析が進んだわけです。


Q:PAMを用いた「植物のストレス診断」というのは、実際には何をデータとしているのでしょうか?低温ストレスを与えると、F0の値が変化するといいますが、F0の値をインデックスとするのでしょうか?そして、F0の値が変化する要因というのは何が考えられるのでしょうか?(2002.8.1)

A:パルス変調により得られるインデックスは、Fo、Fm、Fvなどといった蛍光の直接の大きさによるものと、そこから計算されるqP、pN、NPQ、φIIなどといったものがあり、それぞれ、目的に合わせて使われます。例えば、植物の生育は光合成に依存しますから、生育にどれだけ影響があるかは、光合成電子伝達の収率であるφIIに対する影響をみればわかることになります。Foは、各種のストレス(特に高温ストレスによる場合が、姫路工業大学の佐藤和彦さんのグループによって調べられていて有名)によって上昇することが知られています。Fo上昇の原因は単純ではありませんが、すくなくとも、アンテナから反応中心へのエネルギー伝達が阻害されればFoが上昇します。


Q:なぜ蛍光はほとんど系IIからしか出ないのでしょうか?ある程度は系Iからも出るとは聞いていますが・・・。(2002.8.1)

A:まず、系Iの蛍光が弱いのは、室温での話です。液体窒素温度まで冷やすと、系Iからも系IIに負けないぐらいの蛍光がでます。このような蛍光強度の温度依存性の違いに、生理学的な意味づけを与えることは困難だと思います。物理的には、系Iのクロロフィルと系IIのクロロフィルで、電子準位の状態に差があるため、としか言いようがありません。


Q:ポンプ&プローブ測定の特徴は何ですか?パルス変調とどこが違いますか?

A:テキストにも書いてありますが、ポンプ&プローブ測定は、蛍光測定を短いパルス光を測定(励起)光として使って行う測定です。連続光による蛍光測定と違って、測定光を当てている時間がきわめて短いので、光合成系に対する励起効果は無視できます。また、測定光をきわめて強いパルスにできるので、感度は非常に高いのが普通です。ただし、パルス変調のように、測定光の周波数のシグナルだけを増幅するわけではないので、外部の光や、ノイズに対する耐性はポンプ&プローブのほうが落ちます。詳しくはテキスト(理論編)の第5章をご覧下さい。


Q:PSI社の蛍光カメラ(二次元蛍光画像解析システム)ではクエンチング測定ができるそうですが、それならばパルス変調の測定装置を買う必要はないのですか。

A:蛍光カメラによるクエンチング測定は、パルス変調というよりは、ポンプ&プローブに近いもので、飽和パルス光自体による蛍光を引き算することにより補正しています。従って、あくまで、擬似的なクエンチング測定と考えた方がよいと思います。蛍光カメラでは、非常に簡便に測定ができますが、もし、正確な蛍光パラメーターを求めたい場合は、パルス変調の機種が必要となります。


Q:P-700の測定をしたいのですが、吸収測定ができる機種は何ですか。

A:吸収測定は、今のところ、Old PAM と呼ばれている、昔ながらの大きなWalz社のPAMでしか測定できません。HanzatechやLicorの機械、Walzのものでも、PAM2000やMiniPAMではP-700のユニットをつけることができません。


Q:Fo'がFoよりも大きくなることがありますが、どうしたらよいでしょう。

A:シアノバクテリアでは、暗所での蛍光消光がありますので、基本的には、Fo'のほうが、Foよりも大きくなります。高等植物では、理想的には、Fo'のほうが小さいはずですが、実際には、光を切ったあとの蛍光の落ちがゆっくりであり、Fo'のほうが大きくなる例が見られます。QAの再酸化が遅いのが原因であるならば、励起光を切った後に赤外光をつけることにより、改善されるはずですが、赤外光が部分的には系IIも還元してしまうことなどもあり、実際には、あまり効果がないことも多いようです。その場合には、Foの値で代用するしかなさそうです。Fo'を計算で求める方法もあります(Oxborough and Baker 1997 Photosynth. Res. 54: 135-142)がどの程度実用性があるのかはよく知りません。


Q:クエンチング測定でFがなかなか一定値に落ち着かないのですが。

A:生育光と異なる光環境においた場合など、なかなか定常状態にならない場合があります。場合によっては、数時間蛍光強度が変化し続ける場合もあるので、基本的にはどこかであきらめて測定するしかありません。そこを準定常状態と考えるしかないと思います。


Q:クエンチング測定で、一定値になるのを待っているとFoより蛍光が小さくなってしまいます。

A:光が非常に強い場合や強いストレス条件下など、光阻害が時間と共に進行する場合は、蛍光強度がどんどん小さくなる場合があります。この時は光合成の励起光をもう少し弱くしてみることで解消するかどうかをみます。あまりにも強いストレス条件下での測定は、何を意味するかわかりませんので、お薦めしません。ただし、シロイヌナズナの変異株などでは、強光下で必ず定常状態の蛍光強度F(FsとかFt等とも表記)がFoを下回る例が報告されています。この場合は、非光化学消光が非常に大きいためと考えられます。従って、何らかの理由で、非光化学消光が非常に大きい場合は、野生型でも同様のことが起こる可能性があります。非光化学消光が大きい場合は、励起光を切ったあと、一旦Fo'まで少し下がり、次いで、蛍光強度がFtを越えて大きく増大し、Foまで回復します。このような変化が見えているときは、非光化学消光のせいだと判断して、そのまま実験を続ければよいかと思います。


Q:光合成曲線を求めるとき縦軸にETRを表示しますが、これは説明書によるとディメンジョンは/m2sとなっています。単位面積あたりです。しかし、ETR=ΔF/Fm'xPARxKからは、単位面積あたりという値は理解できません。ΔF/Fm'はディメンジョンがなく,PARは/m2sのディメンジョンを持っているから、ETRはのディメンジョンは/m2sになるのでしょうか。しかし、感覚的には理解が難しいです。光を吸収できるクロロフィル当たり、と考えのが妥当では無いのでしょうか。面積当たりのクロロフィル濃度が薄くても、ΔF/Fm'の値は変わらないと思うのですが。また、入射光はクロロフィル分子によって全て吸収される、といった前提があるのでしょうか。

A:式の最後のKというのが葉の吸収率(÷2、系IIに約半分吸収されると考える)だと思います。計算上Kをかけることにより、「当てた光」から「吸収された光」に変換していることになります(正確かどうかは大いに疑問ですが)。通常、PAMの機械では、Kとして0.43といった値が入力されていますが、これは、実は、簡便のためにそうしているだけで、実際には、本来、葉によって大きく異なります。従って、クロロフィルが薄くて白い葉っぱでは、Kが小さくなるので、ETRも小さくなることになります。葉の吸収率を測定しないままで、異なる植物種に、ETRの式を安易に適用するのはきわめて危険です。