光合成は何色の光を使うのですか?

光合成に使われる光はクロロフィルなどの光合成色素によって吸収されます。ですから、光合成色素が吸収できる光が光合成に使われることになります。クロロフィルの場合、主に青い光の領域(波長では400-500 nm)と赤い光の領域(波長では600-700 nm)の光を吸収します。そして、その間の緑色の光の領域(波長では500-600 nm)の光の吸収効率が悪いので、葉っぱは緑色に見えるわけです。ただ、緑色の光でも、吸収さえされれば光合成に使われます。吸収された光のうちどれだけが光合成に使われるかの効率で比較した場合には、可視光の中で一番効率が悪いのは緑色の光ではなく、青い光です。また、クロロフィル以外の光合成色素が吸収した光のエネルギーがクロロフィルに伝えられる場合は、その光エネルギーも光合成に使われます。例えば、紅藻などが持っているフィコビリンという光合成色素は、緑色の光を吸収しますが、その光はクロロフィルに伝えられて効率よく光合成に使われます。

では、普通の植物の場合、光の色によってどのぐらい光合成の効率が違うでしょうか。溶液中のクロロフィルの緑色の光の吸収効率は確かに低いのですが、葉全体でみた場合には、緑色の光でも8割から9割を吸収できます。これは、葉の中では、光を何度も往復させて、吸収効率が悪い光でも利用できるようにする仕組みが働いているためです。ですから、光の色による光合成の効率の差はせいぜい1−2割でしょう。時々、「植物の光合成は赤い光で促進される」などという記述を見ることがありますが、これは嘘とまでは言いませんが、なぜ赤だけを取りあげるのか、おかしな話ですね。さらに、光が明るい時には、葉の中まで入り込むことができる緑色の光の方がむしろ、赤や青の光より高い効率で光合成を進めることが、東京大学の寺島さんの研究でわかっています。というわけで、クロロフィルという「色素分子」の吸収を考える場合と、植物の葉という「構造体」の吸収を考える場合では、全く結果が違う場合があり、これを混同すると、おかしな議論を繰り広げることになってしまいます。

可視光以外の光についてや、太陽以外の光源を使うことができるかどうかについては「光合成はどのような光を使いますか?」をご覧下さい。