Water PAMによるクロロフィル蛍光測定

2017.7.20最終更新

クロロフィル蛍光測定の一般論については、光合成とクロロフィル蛍光をご覧ください。以下のプロトコールは、Walz社のWater PAMを用いて、藻類の培養液のような希薄な液体試料のクロロフィル蛍光を測定するためのプロトコールです。

WaterPAM

Water PAMの特徴

クロロフィル蛍光測定は、植物の葉でも、葉から単離したチラコイド膜でも、藻類の細胞懸濁液でも、広い範囲の試料に応用可能な測定手法です。その中で、Water PAMは、高い感度をもっており、たとえば海水をそのまま試料にするといった、薄い試料の測定に特化しています。高い感度が得られるのは、光の検知にフォトダイオードではなく、光電子増倍管を使っていることが一つの理由です。顕微PAMもそうですが、光電子増倍管を使う場合、連続励起光を使うと光電子増倍管に無理がかかるという欠点があります。これを避けるため、励起光にもパルス光(22μs)を用い、測定パルス(5μs)と次の測定パルス光の間に励起パルスを当てるようにしています。ただし、顕微PAMとは異なり、測定光(650 nm)と励起光(660 nm)には別々のLEDが使用されています。

藻類を主な対象とするクロロフィル蛍光測定装置の場合、緑藻などのようにクロロフィルを主要な光合成色素とするものと、シアノバクテリアなどのようにフィコビリンを主要な光合成色素とするものでは、使用する励起光を変える必要があります。緑藻などを対象とする場合は、通常、光吸収率の高い青色光を励起光として使いますが、シアノバクテリアでは、青色光は主に光化学系Iに吸収されるため、励起効率が極めて悪くなってしまいます。シアノバクテリアの場合は、フィコビリンに吸収されるオレンジ光を励起光として用いるのがベストです。そのため、光合成解析センターでは、励起光の波長の異なる二種類のWater PAMを用意して、広い範囲の藻類・シアノバクテリアの測定に対応しています。シアノバクテリアなどの測定の場合は、励起光には660 nmの光を使う一方、青色光(460 nm)を光化学系Iを選択的に励起する光として使用します。

クロロフィル蛍光の測定

  1. 制御用パソコンを立ち上げ、WinControl-3 ソフトウェア(現在ver.3.22)を立ち上げる。ソフトウェアを立ち上げると、ケーブルが接続されていれば(PMケーブルをPMコネクタへ、OutputケーブルをAUX Outputコネクタへ接続する)、自動的にPAM-Control(制御部)の電源がオンになる。ただし、おソフトを終了しても自動的にオフにはならないので、終了時には、手動でPAM-Controlをオフにすることを忘れないようにする。
  2. 蛍光のシグナル値は、下部右側のOnlineのFtに表示される。試料がなくてもFtが0でない場合には、AutoZeroにより調節する必要がある。Settingsタブの右下にSystem Settingというボタンがあるので、そこを押すとSystem Settingタブが開く。ここでAutoZeroボタンを押せばよい。試料が存在する際のシグナル値は、200-500であることが望ましい。
  3. Settingsタブで、各種の測定条件を設定する。この際、Water PAMの使用にはMeas+Act/SATのチェックを外すことが必須なので、必ず確認する。(PAM-Controlは顕微PAMでも使用するが、顕微PAMの場合は逆にチェックを入れる必要がある)
  4. 測定したいモードに応じてタブを選択する。一般的には、クエンチング解析などに使うChartタブ、もしくは光飽和曲線などを測定するためのLight Curveタブを使うことが多い。
  5. チャートの右上に、測定間隔1/sが表示されているので、より測定点の多い5/sに変えておく。
  6. チャートの右下のStart Onl. Recボタンを押すと測定が開始する。開始後は、Stop Onl. Recボタンになるので、これを押すと測定が終了する。
  7. 測定中にどの光源が働いているかは、下部左側のStatusのところで、Meas. Lightなどのどれにチェックが入っているかを見れば確認できる。
  8. 測定中に励起光を照射したい場合は、StatusのAct. Lightにチェックを入れればよい。この際の励起光の強さは、下部中央のBasicのAct. Int.を変えることにより調節ができる。
  9. 測定中に飽和光を照射したい場合は、下部中央のSAT-PulseのFo,Fmボタンか、SATボタンを押す。前者は、ボタンを押す直前の蛍光値をFo、飽和パルス照射時の蛍光値をFmとして認識する。後者は、励起光照射中などに用い、ボタンを押した際の蛍光値がFm'として認識される。なお、シアノバクテリアのように暗所での飽和パルス照射ではFmが求まらない試料の場合は、Fo,Fmボタンを使わないほうが混乱しないかもしれない。また、そのような場合は、DCMUの添加によりFmを求めるが、そのままでは数値としては蛍光値は記録されない。DCMU添加後、蛍光が最大値になった時点で飽和パルス照射をすれば、その時点での蛍光値が記録されるのでお勧め。

データの保存

  1. 測定終了後、FileメニューからSave Dataを選択してデータをセーブする。
  2. このほかに、チャートの右上のOptionsボタンからExport Allを選択すると、テキストデータとしてセーブが可能。ただし、例えば、Chartタブ、Light Curveタブ、Reportタブで、それぞれ別にExportする必要がある(タブによってExportされる情報が異なる)。また、Exportされるのは、測定データパネルの右側のパネルのパラメーターの中でチェックが入っているものだけなので、必要なパラメーターにあらかじめチェックを入れておく必要がある。

その他の一般的な注意

たまに、PAM-Controlがハングアップすることがある。その場合は、電源OFFボタンも含めて操作が不可能になるが、SETボタンとOFFボタンを同時に押すと、リセットされて正常な状態に戻る。

藻類・シアノバクテリアの測定の際の注意点

クエンチング解析をする場合、陸上植物を試料とする場合は、暗順応をしたのち、最初の状態の蛍光値をFo、そこに飽和パルス光を照射した際の蛍光値をFmとすることにより、解析が可能です。しかし、多くのシアノバクテリアと一部の藻類では、そのような解析では、誤った結論を導いてしまいます。これは、これらの生物では、呼吸もしくは葉緑体呼吸によって暗所でプラストキノンプールが還元されているためです。これらの生物におけるクロロフィル蛍光測定の注意点について詳しくは、Estimation of photosynthesis in cyanobacteria by pulse-amplitude modulation chlorophyll fluorescence: problems and solutionsをご覧ください。