MultiColor PAMによるクロロフィル蛍光測定

2022.5.16最終更新

クロロフィル蛍光測定の一般論については、光合成とクロロフィル蛍光をご覧ください。以下のプロトコールは、Walz社のMultiColor PAMを用いて、多様な光合成生物のクロロフィル蛍光を測定するためのプロトコールです。

MultiColor PAMの特徴

MultiColor PAM

MultiColor PAMは、パルス変調クロロフィル蛍光測定のための装置ですが、測定光と励起光に5種類の光源を使うことができる点が特徴です。陸上植物では、アンテナとして主にクロロフィルaとクロロフィルbが働きます。光化学系Iに結合したクロロフィルaの一部の吸収は、大きく長波長にずれていますが、その他にはそれほど特徴的な吸収スペクトルを示す色素がないため、測定波長によって結果が大きく異なるのは、700-720 nm程度の近赤外の領域だけでしょう。一方で、藻類やシアノバクテリアの一部ように、フィコビリンのようなクロロフィル以外の光合成色素を含む生物の場合、照射される光の色によって光合成の状態は大きく変わりますし、結果として、どの波長で測定するかによって、クロロフィル蛍光測定の結果は異なってしまいます。このことは逆に、測定波長を変えることによって光合成の色素ごとに異なる情報を取得できることを示しています。従来のクロロフィル蛍光測定装置は、測定光として赤(オレンジ)もしくは青の光を用いていました。初期に発売されたキセノンPAMは、光源としてキセノンランプを使っていましたから、やろうと思えば光学フィルターを使い分けることによって異なる波長の測定光を使ってクロロフィル蛍光を測定することができましたが、お世辞にも使いやすい機械ではありませんでした。MultiColor PAMの場合は、異なるLEDを光源として使うことにより、装置は小型でありながら5種類の波長(440, 480, 540, 590, 625 nm)で測定を行うことができます。波長は固定されていて自由はききませんが、たとえば、クロロフィルが励起される440 nmの光とフィコビリンが励起される625 nmの光を測定光に使って比較することにより、アンテナの状態に関する情報を得ることができます。したがって、色素組成が異なる多様な光合成生物を対象に光合成を解析する時に力を発揮すると考えられます。

機器の接続とソフトウェアのインストール

  1. コントローラーの前面の下段のやや右側にあるChargeコネクタに電源コードを、その左に2段に分かれている(上:LED arrey、下:Fluo ML)コネクタにエミッターユニットから出る2本のケーブルを、さらにその左のDetectorコネクタに、ディテクターユニットのケーブルを接続する。また、下段一番左のUSBコネクタと制御用パソコンをUSBケーブルで接続する。
  2. 液体試料測定用の測定スタンドにエミッターユニットとディテクターユニットを取り付ける。測定スタンドには4か所の取り付け場所があるが、2つのユニットが90度の角度になるように配置する。光ガイドとして使うロッドはPerspex製のもので構わない(石英ガラス製である必要はない)。
  3. ディテクターユニットのフィルターボックスには、660 nm以上の光を透過するR665と、700 nm以下の光を透過するSP710を入れる。この際、RG665は弱い蛍光を出すので、それを遮るためにSP710をディテクター側に(R665を試料側に)置くようにする。
  4. パソコンにPamWin-3ソフトウェア(最新版は現在ver.3.22d)をインストールする。なお、古いバージョンのソフトでは、ソフトのインストールのあとで、作成された専用ディレクトリ(PamWinフォルダー)内のUSBPORTディレクトリの中のCDM Setup.exeファイルを、PAM-2500 本体の電源をONにしてPCにつないだ状態で実行してUSBドライバーをインストールする必要があったが、新しいバージョンでは(インストールの途中で出てくるFTDI CDM Driversのインストールのプロンプトに従えば)自動的にドライバがインストールされる。このソフトはPAM-2500と共通であり、ソフトを起動すると、接続されている機器を自動認識して対応したインターフェースが現れる。最新のソフトはダウンロードサイトのPAM-2500の所から入手する。
  5. スターラーを使う場合には、測定スタンドの試料部分の下部にスターラーユニットを取り付け、ケーブルをコントローラー前面のコネクタに接続する。スターラーユニットは、できるだけキュベットに近づけて(上に)設置する。

クロロフィル蛍光の測定条件設定

  1. 制御用パソコンのPamWin-3ソフトウェアを立ち上げる。
  2. コントローラーが接続されていていればソフトから認識される。コントローラーのスイッチを入れた直後は認識されないことがあるので、スイッチを入れてから1分ほど置いてからソフトを立ち上げるとよい。
  3. プログラムを立ち上げると、COM-Portsが確認されたのち、「Do you want to start a New Report?」というプロンプトが出るので、通常はYesを押す。
  4. プログラム画面は、上部、右側、下部、中央部の4つのパネルからなっており、中央部パネルのみは、タブ形式で内容が切り替わる。それ以外の上部、右側、下部のパネルには、いつも同じ情報が表示されている。
  5. 最初は、中央パネルにGeneral Settingsタブが開くので、そこで測定条件をセットする。この状態で既に光の検出自体は始まっており右側パネルのFtの所に蛍光レベルが表示されているはず。また、下部のパネルには、照射光の状態がブロックで示されており、例えばMLのブロックをクリックすると、ブロックの中央が赤くなり、MLが照射される。具体的な設定項目は以下の通り。
    1. General Settingsタブの一番左のMeas.Light小パネルで測定光の設定を行う。Intで光量を設定し、その下のAuto MF-Highのチェックボックスには通常チェックを入れておく。これにより、測定光だけの際には、MF-Lの低い周波数で測定光が照射されるために励起効果が弱くなる一方、励起光や飽和パルス光が当たっている時にはMF-Hの高い周波数で測定光が照射されるため、時間分解能とS/N比がよくなる。それぞれの状態の具体的な周波数は、すぐ下で選択して設定する(単位はHz)。
    2. その下の小パネルで、ゲイン(増幅率)とダンピング(時間平均)を設定する。測定光が弱いなどの理由でシグナルが小さい時にはGainを上げる必要があるが、その場合にはノイズも大きくなる。ダンピングは、最低の1にすると時間分解能は10 μs(ただし測定光の周波数以下にはならない)であり、最大の8にすると時間分解能は4 msとなる。測定光の周波数が100 kHzであっても、ダンピングが4以下では時間分解能への影響はほぼないので、実際にはダンピングの設定は4かそれ以上でよい。
    3. その下の小パネルのAnalysis Modeで、Slow Kineticsによるクエンチング測定などか、Fast AcquisitionによるOJIP測定かを選択する。
    4. 右側の2列の小パネルで、励起光(Act.Light)、飽和パルス光(Sat.Pulse/MT)、系1光(PSI Light)などの光源の設定と、Slow Inductionで蛍光の誘導期測定の際の飽和パルス光照射条件の設定をする。励起光はWidthを0にすることにより、連続照射(切るときはマニュアルで切る)に設定することができる。飽和パルス光の光量設定は、「Int」と「Int (Fo,Fm)」の二種類がある。これは、試料によっては、暗順応した状態FoレベルでFmを測定する際には少し弱めの飽和光が必要(強すぎるとシグナルがかえって小さくなってしまう)けれども、励起光照射下では十分強い飽和光が必要である場合に、別々に飽和光の光量を設定できるようにするためである。PSI lightは、Far redとBlueの選択肢があるが、Blueを選択する場合にはオプション光源が必要となる。
    5. タブの下部右寄りの小パネルではZero Offsetの設定ができる。Zoffボタンを押すことにより、その時の蛍光レベルがバックグラウンドとして引き算される。葉の測定においてはZero Offsetはほぼ無視できるが、MultiColor PAMで主に想定される懸濁試料では、Zero Offsetが必要となる。バックグラウンドレベルは、測定光の種類とGainによって異なる。もし測定光とGainを一定にして測定する場合には、対象試料を含まない培養液などをキュベットに入れて単にZoffボタンを押せばよい。異なる光源を使う場合には、Measure Zoff listボタンを押して測定光ごとのリストを作成する。この際、For all Gain Settingsにチェックを入れておけば、すべてのゲインにおいてリストを作成することができる。作成したリストを適用するためには、Apply Zoff listにチェックを入れる必要がある。リストは、PamWin_3フォルダのData_MCフォルダのZero_Offset_Col.iniファイルに保存される。
    6. 個々の実験設定は、タブ右側のOpne/Save User Settingsによってファイルの書き出し、また読み込むことができる。ファイルはPamWin_3フォルダのUser Settingsフォルダに保存される。ただし、Zero Offsetの値は保存されない。

MultiColorタブ

  1. 上記の多くの設定はPAM2500と同一であるが、MultiColor PAMに特有の設定はMultiColorタブから行う。
  2. MultiColorタブの左側は、光源の色の設定小パネルで、440, 480, 540, 590, 625 nmの5種類の波長を測定光・励起光のそれぞれに選択できるほか、測定光については400 nmの光源、励起光については420-645 nmの白色光源を選択することができる。この際、測定光を選択すると励起光の波長も同じになる(400 nmの場合は除く)が、励起光を選択する場合には、測定光の波長はそのままなので、任意の組合せで波長を設定できる。Multi Color STにチェックを入れると、シングルターンオーバーフラッシュの場合にはすべての波長のLEDが点灯するので、非常に光量が大きくなる。
  3. Stirrer onのチェックを外すとスターラーを止めてそれに由来する可能性のあるノイズを減らすことができるが、通常の条件ではスターラーの影響は大きくない。Stirrer off during SP/FKにチェックを入れて、飽和パルス光照射の速いキネティクス測定の時だけスターラーをオフにすることもできる。
  4. その下のMeasure PAR listsボタンを押すと、光量子センサー(液体試料の場合は球状センサーを使う))をコントローラーのExt.Sensorコネクタに接続した状態で光量を測定する。1つの波長について、測定光が100 kHz、intensity=10の条件で、励起光とMTフラッシュのすべて(20段階)の光量が測定されてリストとしてセーブされる。基本的に励起光の波長と同じ波長の測定光条件で測定されるが、励起光としてWhiteを選択した場合には、測定光として選択されている波長の測定光が選択可能であるが、通常の測定では400 nmの測定光を使う。All colorsにチェックを入れておくと、5種類の波長全てでこの測定を行う。
  5. パネルの右側では、光吸収断面積(シグマ)のファイル操作ができる。これについては、「Fast kineticsの測定の概要」を参照。

Slow kineticsの測定

  1. いわゆるクエンチング測定などは、上記のように設定タブのAnalysis ModeでSlow Kineticsを選択したうえで、Slow kineticsタブから測定を行う。
  2. 測定画面の右の下側の小パネルに、Ind.Curveという選択ボタンがあるが、実際には、ここでManualを選択して、自分で照射光のタイミングなどをタブの下のブロックで操作して測定した方がやりやすいことが多い。ただし、定型的な測定を繰り返し行う際には、Ind.Curveや、励起光後の回復過程も測定するInd.+Recも便利である。Manualではない測定の場合の測定条件は、General Settingsタブで設定する。
  3. Manual選択ボタンの下のStartボタンを押すと測定が開始するので、タブの下にある測定光(ML)、励起光(AL)、飽和パルス光(SAT pulse)のブロックを必要なタイミングで押すことにより測定を行う。最初に測定光だけを当てている状態で、下部パネルのFo Fmのブロックを押せば、飽和パルス光が照射され、その際の蛍光レベルがFm、その直前の蛍光レベルがFoとして登録され、タブの右側に表示されている様々な蛍光パラメーターの計算に用いられる。
  4. 測定が終了したらStopボタンを押す。

Light Curveの測定

  1. Light Curveのタブから、光-光合成曲線の測定を行うことができる。
  2. 基本的には測定画面の右のStartボタンを押せば、自動的に光量を少しずつ上げて測定を繰り返すことにより、光合成速度(ETR)の光依存性測定が行われる。Light Curveの横軸は光量であり、MultiColor PAMには光量子計を接続して直接光量を測定することも可能であるが、光量子計を試料に挿入すると陰になる部分ができるので、実際にはあらかじめ設定したPARリストによる光量を用いる方がよい。
  3. どのように光量を上げていくかは、Startボタンの上のEditボタンから、編集することができる。励起光の強さと持続時間をそれぞれクリックすると新しい値を入力できる。Intカラムで励起光量を設定するが、ここにMF1KあるいはMF100Kといった記述をすることができる。この場合は測定周波数を上げることにより、ごく弱い励起光の代わりとしている。また、Uniform timeにチェックを入れると、最後に入力した持続時間にすべての持続時間が統一される。光量PAR自体は、リストから読み込まれるので、直接は変更できない。持続時間に0が入力されているところで、測定は終了する。デフォールトのリストでは、最大光量のあとで持続時間を0にしているので、そこで終了するが、これを例えば2に書き換えれば、そこから光量を下げていくプロトコールに修正することができる。このパラメータリストをパネル上部のアイコンからセーブしておけば、必要に応じて読み込んでそれをそのまま使うことができる。
  4. 測定画面の右側上部のFITボタンを押せば、その下のラジオボタンで選択したモデルにより、光光合成曲線のフィッティングが行われる。結果は、グラフ上に線で表示され、FITボタンの上の計算機ボタンを押せば、計算結果を見ることができる。

Fast kineticsの測定の概要

  1. いわゆるOJIP測定は、上記のように設定タブのAnalysis ModeでFast Acquisitionを選択したうえで、Fast Kineticsタブから測定を行う。
  2. OJIP測定は、飽和パルスを照射した際の蛍光の上昇キネティクスを測定するだけなので、極めて簡便で再現性も得られやすい一方で、情報量は限られる。基本的には、測定パネルの右側のStartボタンを押せば測定ができる。Startボタンの下のAuto ML onにチェックを入れておけば、飽和パルスの照射直前に測定光がonになり、測定後に自動的にoffとなる。
  3. グラフの右側のAverage pointsを設定することにより、この数の隣り合うデータポイントが平均化される。これによりノイズは減り、データ量も小さくなるが、時間分解能は犠牲になる。なお、下のAvaragingとは無関係
  4. グラフの右側のAveragingにチェックを入れると、Fast settingタブの左側にあるTarget Averageの回数の測定カーブが積算平均される。回数分Startボタンを押してもよいし、下部パネルの右側のClockの所のonにチェックを入れれば、その右側の秒数の時間間隔で自動的に繰り返し測定が行われる。Averagingにチェックを入れると、ResetとNewというボタンが現れ、それぞれデータを破棄もしくは保存して、繰り返し測定を中止する。
  5. Calcボタンについては後述する。

Fast settingタブの設定

タブの中央にはLEDなどを制御するトリガーのパターンを示すグラフがあり、その周囲に設定項目のパネルが配置されている。

タブの左側パネルの設定項目

  1. パネル左上のRead with Start Condにチェックが入っていると、トリガーファイルの条件が初期条件として設定される。
  2. その下のMF-maxで測定周波数を設定する。基本的にはGeneral settingsタブで設定するMF-Hと同じだが、ここでは200 kHzも選択可能である。
  3. その下のMF-logにチェックが入っていると、MF-maxの照射後、測定光の周波数を時間とともに対数的に減少させる。これにより、測定光の励起効果を小さくすることができる。当然ながら、MF-maxの照射後も測定を継続する場合にのみ意味を持つ。
  4. その下のRate usとPointsが測定点の間隔と総数を示す。測定時間はこの二つの掛け算になる。Pointsが32000を超える場合には、その下にExt.Timeのチェックボックスが表示される。これがonになっていると、32001の点と64001の点でそれぞれデータ取り込み間隔が倍になるため、測定点数は同じでも合計の測定時間は長くなる。
  5. その下のTarget Averageについては、上の「Fast kineticsの測定の概要」を参照。

タブの上部と右側パネルの設定項目

  1. 右側パネルの一番上のEnable triggerには常にチェックを入れておく。次の Enable pretriggerは、たとえば測定開始前にあらかじめ赤外光を照射しておく時などに使うので、必要に応じてチェックを入れる。チェックを入れると、その事前照射時間を選ぶボックスが現れるので、時間を選択する。その下のPulse widthは、STフラッシュ以外の光源の持続時間を入力するために使う。
  2. その下の各光源のチェックボックスは、チェックをしておくと、中央のトリガーパターンのグラフにその光源のパターンが表示される。ここのSTにチェックが入っていると、その右のST widthが選択可能になる。
  3. その下のTrigger on time, Trigger off timeは、光源のon/off時間を入力するために使う。まずon timeの時間を入力しリターンで確定してから、off timeの時間を入力(してリターンで確定する)必要がある。
  4. その下のZero time shiftの下の時間をダブルクリックするとZero timeを変更できる。例えばここに10000(μ秒単位)と入力すると、グラフ上の0点の10 ms前からトリガーパターンの線が表示される。
  5. 上部パネルには、トリガーの種類が青背景のアイコンで示されており、トリガーは、このアイコンを選択したのちに、グラフのトリガーラインを(例えばシフトキーを押しながら右クリックする)といった方法で設定する。実際の方法は、トリガーの種類によっても異なるので、マニュアルを参照する必要がある。
  6. トリガーパターンは、上部パネルの中央付近の拡張子FTMのFast kinetics trigger patternを指定して呼び出すこともできる。また、その右のフォルダアイコンをクリックしてトリガーファイルを読み込んだり、保存アイコンをクリックして作成したパターンを保存することもできる。そのさらに右のDefaultボタンを押すと、標準的なOJIP解析のためのパターンが読み込まれる。

Fast kineticsの解析

MultiColor PAMの特徴の一つは、OJIP測定の際の蛍光の立ち上がりO-I1から、試料の光化学系IIの機能的吸収断面積(SigmaII)を算出して、それを異なる波長の間で比較することによりアンテナ色素の情報を得ることができる点にある。このようなFast kineticsのデータの解析は、Fast kineticsタブの右側のグラフ右側の下部のCalcボタンによって開始する。Calcボタンを押すと、解析方法を選ぶウィンドウが開くので、Q-I1Fit、1-q、Exp.Fitの内から選択する。解析にあたっては、クロロフィル濃度が十分に低い(0.3 μgChl/ml)こと、プラストキノンプール(とQA)が最初に十分に酸化されていること、(励起光照射以前にパルス変調測定光により)正確にFo(=Oレベル)を測定すること、I1レベルをSTフラッシュにより正確に測定していること、が必要である。

Q-I1Fit

  1. Q-I1Fitを選択して開いたウィンドウの左上のFit Data SettingsパネルのI1 by STには、通常チェックを入れておく。ただし、DCMUを加える際などにはI1の測定にSTは必要ないので、チェックを外す。
  2. その下のI1 Corr.(%)は、0%でよい。
  3. その下のST off time (ms)は、STフラッシュの終了時点を入力する。通常の1 msの測定で最後の時点で50 μsのSTフラッシュを照射する場合には、1.05 msを指定すればよい。
  4. その下のFit time limit (ms)は、フィッティングを行う時間を指定する。通常の1 msの測定では1 msを指定(全データが解析対象)すればよい。
  5. その横のFit Settingsパネルには、下の大きなファイル名リストの中でファイルが2つ以上選択されている場合には、FitとCommonの二つの小パネルが表示される(ファイルが一つ以下しか選択されていないときにはFit小パネルだけが表示される)。基本的には、Fit小パネルのパラメータがフィッティングされ、Common小パネルのパラメータの中でチェックされているものについては、複数のファイルの間で共通の値としてフィッティングされる。
  6. その右のShow variationsにチェックを入れると、フィッティング結果に10%の影響を与えるシグナルの相対変化(%)が表示される。これが小さければ緑色で表示されるが、赤で表示された場合には、フィッティングが完結していなかったことを示す。
  7. 右サイドには、RC ParametersとReoxidation parametersのパネルが表示されている。このReoxidation parametersパネルのWith reoxidationにチェックが入っている場合には、蛍光上昇中のQAの再酸化があるものとしてフィッティングされる。DCMUを入れての測定の場合には、このチェックを外す必要がある。
  8. 右下のResultsパネルのUse for 1-q plotにチェックを入れておくと、ここがでフィッティングしたFo, I1, Jが1-qの解析に送られる。
  9. ファイルリストの下には、いくつかのボタンが並んでおり、これによりフィッティングを行う。一番左のDrawボタンを押すと、選択したフィッティング対象データが重ね書きで表示される。Simulateボタンを押すと、Windowに表示されているパラメータでモデル曲線を描く。右側のEnter fit resultsにチェックが入っている時には、最後のフィッティング結果のパラメータでモデル曲線を描くので、パラメータにより曲線がどの程度代わるかを視覚的に確認できる。
  10. Start fitボタンを押すと、フィッティングが開始する。結果のパラメータは表の形で表示されるとともに、元データとフィッティングデータが、Fast kineticsタブに表示される。

スターラー利用の際の注意点

スターラーの回転の調節は、Dual PAMの場合と異なるので注意する。

  1. MultiColor PAMの場合は、MultiColorタブのチェックボックスにチェックを入れることにより回転をon/offする。
  2. また、スクリプトからスターラーを操作する場合には、Stirrer on/offにより制御する。
  3. Dual PAMでは、外部トリガーを使ってスターラーを調節していたため、TRボタンを押すことによりスターラーをon/offしていたが、MultiColor PAMの場合は、TRボタンは、外部トリガーを接続している時にのみ利用する。同様に、DulaPAMでは、スクリプトにTR on/offを記述することによりスターラーを制御できたが、MultiColor PAMの場合は、このコマンドは、外部トリガーにより、接続されている機器を制御する場合にのみ利用する。

データの保存

  1. 測定されたデータは、基本的には自動的にセーブされる。セーブ先はPamWin_3フォルダの中のDATA_MCフォルダとなる。
  2. キネティクスデータも、上部のメニューバーの「Option」の「Kinetics auto save」にチェックが入っていれば、自動的にセーブされる。
  3. テキスト形式でキネティクスをエクスポートする場合は、Fast kineticsの場合は、Fast kineticsタブの右の上にあるエクスポートアイコンを使い、Slow kineticsの場合は、Windowの右下にあるView Modeボタンを押してから、Slow kineticsタブの上部に出現するエクスポートアイコンを使う。

スクリプトファイルの概略

MultiColor PAMにおいては、一連の測定操作をスクリプトファイルにまとめて保存しておくことができる。これにより、複雑な測定手順を自動実行できる。以下に、デフォールトで作成されているスクリプトファイルの概略を示す。

シグマ測定

スクリプトファイルの名前はSigmaで開始する。例えば、Sigma1000cyano_10.prgやSigma1000Chlor_10.prgは、fast kin. trigger fileである sigma1000_ALを開いて測定が行なわれる。「cyano」や「Chlor」は、それぞれ、シアノバクテリア測定用、クロレラ測定用を意味している。sigma1000_ALにおいて設定されているのタイミングなどは、fast settingsにおいて確認することができる。このファイルでは、最初に測定光がオンになり、次いで励起光がオンになり、その1ミリ秒後にシングル・ターンオーバー・フラシュがたかれて全体で2ミリ秒ちょっとで測定が終了する。スクリプトファイルの既定では、これを10秒間隔で繰り返して測定するが、120秒に修正することが推奨されている。これは、スクリプトファイルのWait(s)をクリックして変更することによってできる。

OJIP測定

スクリプトファイルの名前はPolyで開始する。例えば、Poly200ms.prgは、fast kin. trig. fileであるPoly200ms_ALを開いて測定が行われる。この場合、測定光と200ミリ秒の励起光が同時に照射されて、MF-Hにより高い時間分解能で測定が行われる。

オシレーション測定

オシレーション測定(ファイル名は1_Oszillation.prg)においては、0,1,2,3,4回のシングル・ターンオーバー・プレフラッシュ照射の後、20 msのパルス励起光により蛍光の誘導期現象が測定され、その後近赤外光により系を再酸化したのち、次のサイクルの測定に入る。これにより、4周期振動の様子を観察することができる。

蛍光減衰の測定(QA->QB測定)

既定のスクリプトファイルには使われていないが、fast kin. trigger fileとして、ST50-Decay.FTMが作られている。これは、50マイクロ秒のシングル・ターンオーバー・フラッシュ照射の後、80ミリ秒間、蛍光の減衰を測定することができる。ここで見られるミリ秒での減衰成分は、、QAからQBへの電子伝達速度を反映する。同様に、RelaxST50, RelaxST20, RelaxST5も蛍光減衰測定用のトリガーファイルであるので、既存のスクリプトファイルを修正して、これらのトリガーファイルを呼び出せば、簡単に蛍光の減衰測定ができる。