光合成の質問2024年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:はじめまして、当方、趣味で多肉植物(アガベ等)を育てております。多肉植物を徒長せず、健康に育てるために勉強しています。ネットでは水をあまり与えず、日照条件を良くして風をあてる、木酢液を与えるなど、様々な情報がありますが、CAM型光合成を行う植物に最適な方法を根拠を踏まえた知識を待って育成したいと思っております。徒長のメカニズムと徒長させない方法をご教授頂けたら幸いです。何卒宜しくお願い致します。(2024.7.24)

A:「徒長」は、「いたずらに伸びる」という意味ですが、一般的に植物が背を高くする一番の理由は、光をめぐる他の植物との競争です。植物は光のエネルギーを利用して光合成により生きていますから、他の植物の陰になって光が当たらなくなることは避けなくてはなりません。従って、周りが植物に覆われて暗くなった際には、それらの植物の上に出るために背を高くすることが有利になります。他方、光が十分にあるときには、むやみに背を伸ばしても倒れやすくなるなどの弊害もありますから、必要以上に背を高くするのはかえって不利になります。従って、周りに植物があるかないかで背の高さは調節されています。一般に「日照条件をよくする」とよいと言われるのは、光を十分にあたれば植物は必要以上には背を伸ばさないことによります。周りの植物の有無の指標は、光の明るさ/暗さだけではありません。葉を透過した光だと赤外線の割合が増えますから、その割合も指標になります。従って、植物が受ける光の赤外線の割合が多いと植物は徒長しやすくなります。ただし、これら光をめぐる部分は、CAM植物だけでなく、一般の植物でも同じです。
 CAM植物特有の部分としては、やはり水やりが大きな意味を持ちます。CAM植物は、乾燥地域に適応した植物なので、土壌中に水分が滞留したりすると、場合によっては根が腐って枯れてしまいます。また、種類によっては、水分が少ない条件下でのみCAM植物になるタイプの植物もいます。その場合は、水分がある程度多くても生き延びることはできます。ただし、CAM植物は、乾燥に対する耐性を獲得することの代償に、生育は非常に遅いのが一般的です。成育が遅いことは、植物にとっては一般的にデメリットですが、「徒長しない」という意味では栽培者にとってはむしろメリットになり得ます。従って、その意味でも、水分は控えめな方がよいと思います。(2024.7.25)

Q:アガベなどの多肉植物の徒長に関して質問させて頂いた者です。詳しくわかりやすい説明をありがとうございましたm(_ _)m追加質問させて頂きますm(_ _)m水のあげすぎは根腐れの原因にはなるが、日光がしっかり当たっていれば徒長のはしないということでしょうか?ネットや参考書では「水のあげすぎ=徒長」という書き方をされている方がいらっしゃいます。水をあげすぎると徒長してしまうメカニズムが知りたいですm(_ _)mまた、リンゴ酢や木酢液を適宜あたえることで、植物の根から直接炭水化物を吸収させる事で日光が弱くても徒長しづらくなるという記事を読みました。その事に関して、植物は根から直接、炭水化物を吸収する事ができるのか?そうであれば、極端な考え方ですが、植物は日光で光合成をしなくても生きていけるのでは、という疑問があります。お忙しい中、大変恐縮ですが、ご教授頂きたいです。よろしくお願い致しますm(_ _)m(2024.7.26)

A:水のあげ過ぎと徒長の関係については、上の回答の最後に書きましたように、水を控えることにより成長を遅くすれば、形の変化がゆっくりになる(≒徒長しない)と解釈することはできます。ただ、一般的な意味での徒長は、光環境の影響による場合がほとんどだと思います。植物は炭水化物の吸収する能力をある程度は持ちます。特に、光合成をしない切り花などの場合、花茎から炭水化物を供給することによって持ちをよくすることができると言われています。ただし、光合成の機能を代替することはできません。光合成をしない条件で炭水化物により植物を成育させることは難しいのです(ただし、一部の藻類では可能です)。また、適切でない光環境によっておこる植物の徒長を、炭水化物の供給によって止めるのはなかなか難しいと思います。その他、炭水化物の添加はバクテリアや菌類の増殖を引き起こして植物の生育にむしろマイナスの影響を与える場合もよくあります。酢酸は、正確には有機酸であって炭水化物ではありません。酢酸は、炭水化物に比べると、バクテリアや菌類の増殖を引き起こしにくいので使われているのかもしれません。酢酸は、土壌のpHを変えるなど、エネルギー源としての働き以外の働きもしますので、植物の種類によっては、何らかのプラスの効果がある可能性もありますが、光合成に対する直接的な効果、あるいは光合成に代わって植物の成長を支える効果はあまりないと思います。(2024.7.26)


Q:質問させていただきます。私は現在、学校に勤務しております。小学校や中学校の理科において、光合成によるデンプン生成を確認するために、ヨウ素デンプン反応が用いられます。この実験は、天候に左右される場合が多く、なんとか天候に左右されず安定して実験できる手法がないか模索しているところです。安易に思いつく方法としては、照度計でルクスを確認しながら、事前に光源を前日などから当て続ける(夜も)ということです。使用する植物や気温など、その他の条件にも左右される部分がありますが、この手法で十分にデンプンは生成されるでしょうか?もし可能であれば、植物によってヨウ素デンプン反応を確認するために必要なルクス量や時間などを調べたり、光合成速度など調べるとおもしろい探究活動になるのでないかと思っております。お忙しいと思いますが、ご回答よろしくお願いいたします。(2024.2.20)

A:結論から申し上げますと、全くデンプンが溜まっていない状況から、人工的に光を当ててデンプンをためることは、不可能ではありませんが、それほど簡単ではありません。普通の室内の光量は、太陽の直射日光に比べると1/100のオーダーです。最低限、強い光源が必要です。光が弱いと、単に光合成にとってのエネルギーが少なくなるというだけでなく、気孔が閉じ気味になることによってデンプンの原料となる二酸化炭素の取込も阻害されます。比較的一般に手に入る光源としてはプロジェクターがよいかもしれません。最近のものはLED型が多いと思いますので大丈夫だと思いますが、一般的には光が強いと熱も発生しますから、葉温が上がらないように注意する必要もあります。なお、昼の間にたまったデンプンが夜に消費あるいは転流によって失われないようにするだけであれば、ある程度弱い光でも十分です。(2024.2.20)