光合成の質問2023年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:私は農業者です。ハウス栽培をしており、日中の閉鎖的な時間帯にCO2濃度を上げている栽培をしています。その事を小学生や一般のかたにご説明する際に、植物へ与えるご飯の量を増やしてるのですと言いつつ、二酸化炭素を吸って酸素を出すことの簡単な光合成の説明をしているのですが、この説明で良いのか、もしくは不適切で止めたほうがよいのでしょうか?植物の物凄い能力に魅了された一人です。(2023.12.23)

A:人間にとってのご飯は、体を作る材料であると同時に、体を動かすためのエネルギー源でもあります。植物にとっては、二酸化炭素が体を作る材料ですし、太陽の光がエネルギー源です。そのことを考えると、「植物へ与えるご飯」という説明は、二酸化炭素が体を作る材料なっているので、適切だと思います。ただし、植物の場合は、二酸化炭素からはエネルギーが取り出せないので太陽の光も必要だよ、と一言付け加えていただけるとよいのではないかと思います。(2023.12.23)


Q:クロロフィルとシアノバクテリアについて疑問があり、質問させていただきました。生物の教科書では、シアノバクテリアは葉緑体がないと記載されていますが、クロロフィルaは持っていると記載されています。クロロフィルは葉緑体のチラコイドに含まれ、タンパク質と結合し、色素タンパク質になっていると思います。シアノバクテリアのクロロフィルaはどのような状態で存在しているのでしょうか?(2023.10.7)

A:シアノバクテリアでも基本的には葉緑体と同じです。シアノバクテリアの細胞の中にチラコイドがあり、そこでタンパク質と結合して色素タンパク質複合体として存在しています。葉緑体は、シアノバクテリアの祖先が細胞に共生したものが起源であると考えられていますので、基本的な構造はよく似ています。(2023.10.7)


Q:室内と屋外の環境の差(主に光の差、風の有無)が植物の光合成にもたらす影響について教えて下さい。趣味で水草水槽やビオトープをしています。室内でアクアリウム用led照明を使用した水草水槽ではCO2を強制添加したり、底床に肥料を入れたり、液肥で微量元素を添加しないとなかなかうまく植物が育ちません。しかしビオトープのような屋外の太陽光や風がある環境だと新品の砂利に切った草を植えただけでも水草が根を張り成長します。この室内と屋外の環境の差がとても不思議です。(2023.7.20)

A:これは、個別のケースによって原因が異なっている可能性があります。例えば、光で言うと、LEDの種類によって青色光が足りない、あるいは遠赤色光が足りない、さらに場合によっては光量自体が足りない場合がありえますが、実際に何が要因となるかは水草の種類によっても異なると思います。風は、無風状態ではCO2の供給不足を招くことがあります。ただし、この点に関しては、CO2を添加しなくても、通気をするだけで解消することが多いように思います。むしろ案外大きな要因になるのは、環境の「系」の大きさです。たとえ屋外でも、小さな水槽で外界と隔離されていると、光は自然光で風が吹いていたとしても、生物の生育が安定しないことはしばしば見られます。これは生物の種などに寄らず、かなり普遍的な現象で、系の大きさが大きいほどその中の生態系は安定します。屋内と屋外ではもちろん環境の差もあるでしょうけれども、系の大きさも、生育に差が生じる原因になっているかもしれません。(2023.7.20)


Q:高校生でも植物プランクトンのクロロフィルa濃度は測定可能なのでしょうか。また、可能な場合、どういう方法を用いるのか、何が必要なのか教えて下さい。(2023.6.14)

A:「測定」というのは、単に多い・少ないの相対比較ではなく、数値として定量したい、ということでしょうね。その場合、溶液の吸収を測定することができる分光光度計が必要です。あと、通常は、有機溶媒(メタノールやアセトンなど)を使うことが必要です。分光光度計は、安い簡易的なものでも10万円ぐらいはしますから、持っている高校はそれほど多くないと思います。もし、分光光度計が学校にあれば、測定方法はクロロフィル定量法のページに解説してあります。(2023.6.14)


Q:こんにちは。分化について質問させてください。腋性の植物は葉の付け根に葉芽と花芽をつけますが、分化を促すには植物の成長という点で当然光合成も影響していると思います。そこで、日光量が多いと分化はそれに伴って早まるのでしょうか?その逆も然りで、日光量が少ないと分化は遅くなるのでしょうか?よろしくお願いします。(2023.6.10)

A:ここでいう分化は、葉芽になるか花芽になるかの分化ということでしょうか。そうであれば、分化自体は、成長が影響をするというよりは、環境の感知とシグナル伝達に始まる植物ホルモンによる調節の影響が直接的でしょう。一部の植物では、植物体が十分に大きくなっていることが花芽分化のシグナルの発出の前提となっている場合がありますので、その場合には、日光などの成長条件がよい場合には分化は早まります。他に、花芽分化のシグナルとなる植物ホルモンは篩管と通して運ばれ、篩管液の流れは光合成産物の濃度の影響を受けますから、完全に影響がないとは言えませんが、実際には、植物ホルモンの合成のタイミングの変化に比べて篩管液の速度の変化は無視できると思います。(2023.6.10)


Q:光合成色素についての質問です。
(1)クロロフィルなどの分子のエネルギーバンドにおける伝導帯と価電子帯の差、バンドギャップを超えるエネルギーを持つ光が照射されたとき、分子は光を吸収し、電子が励起状態になると考えています。
 そこで、クロロフィルのバンドギャップのエネルギーをx(eV)とすると、クロロフィルは赤色や青色の光を吸収することから、xは赤色の光のエネルギーより小さいと考えらます。すると、緑色の光こエネルギーは、赤色の光のエネルギーより大きいため、クロロフィルが緑色の光も吸収すると考えられます。しかし、実際には緑色の光は吸収しません。この理由はなぜですか?また、そもそも(1)の考えは正しいのでしょうか? わかる範囲だけでも教えて頂ければ幸いです。(2023.5.22)

A:これは光合成色素に限らず、光の吸収の一般的な話ですね。ここでいうバンドギャップは、基底状態の準位と励起状態の準位のエネルギー差のことだと思います。(1)の考えは、「バンドギャップを超えるエネルギーを持つ光が照射されたとき」という部分が間違いです。「バンドギャップに相当するエネルギーを持つ光が照射されたとき」が正しい表現です。準位間のエネルギー差を大きく超えたエネルギーを持つ光が照射された場合には、光は吸収されません。ちなみに、吸収スペクトルに見られる吸収バンドは通常ある程度の幅を持っていて、準位間のエネルギー差として与えられる数字とは多少異なるエネルギーの光も吸収できるように見えます。これは、エネルギー準位自体が、分子の運動によってある程度の幅を持つことを反映しています。したがって、同じ物質の吸収スペクトルでも、低温で測定する方がシャープな吸収バンドが得られます。(2023.5.22)


Q:植物や藻類は、二酸化炭素を利用しますが、一酸化炭素やメタンも利用できますか?(2023.4.4)

A:これは「光合成の基質として」という意味なのだと思いますが、利用できません。一般的に広く代謝の基質として取り込まれる可能性があるかという点では、専門ではないので確実なことは言えません。ただし、一酸化炭素は光合成の反応にも必要なヘムに強く結合しますので、ヘモグロビンを持つ動物にとってはもちろん、植物にとっても高濃度に存在すると生育にあまりよくないのではないかと想像します。メタンは酸素の存在下ではエネルギー物質として働きますし、そのエネルギーを使うことができる生物もいますが、光合成生物でメタンを利用する例は聞いたことがありません。(2023.4.5)


Q:現在コーヒーに関する会社で働いております。コーヒーノキは標高が高く、昼夜の寒暖差があると果実がしまって美味しい種(すなわちコーヒー豆)ができるという説明がよくされます。私はこの説明を昼間光合成によって蓄えた養分が夜に果実へ転流されるという認識でおりますが、なぜ都合よく果実に養分がいくのでしょうか?また、収穫時期は低地と比べ高地のほうが遅くなりますが、このことは高地のほうが低温によるストレスによって生育がゆっくりとなるからでしょうか。よろしくお願いします。(2023.2.2)

A:あくまで植物の一般論ですが。転流速度は温度が低いと遅くなりますので、夜間が寒いと転流されるということはないように思います。植物も夜間は呼吸をしますが、温度が低いと呼吸も抑えられますから、夜間が寒いとエネルギーを消費する呼吸が抑えられて光合成産物が蓄積しやすい、といったことはあるかもしれません。生育速度も低温ではゆっくりになりますので、おっしゃるように生育については低温の影響が一番考えやすいと思います。(2023.2.2)


Q:初めてご質問させていただきます。よろしくお願い致します。マダガスカルに自生するパキポディウムという植物を育てておりますが、葉脈が赤くなり、先端が枯れてきてる状態です。葉の色もやや黄色になってます。原因が光阻害に関係するのではないかと思い推察頂ける範囲でいいのでご教示頂ければと思います。成育環境条件はLEDライト(2万ルーメン程度+紫外線)と冬の窓越しの日光(紫外線8割カット)を使っています。気温は最低23℃最高32度で平均25℃です。気温が30℃近いときは特に症状が重くなるような気がしています。水は越水で管理しておりますので常に用土は湿っております。肥料はあまりあげていませんが、殺菌剤を越水に入れています。殺菌剤の結晶か分かりませんが土の表面や幹の一部に白い結晶上の塊が少しついたときもありました。葉ですが、本来は土壌に対して平行に伸び大きくなるのですが、ライトに向かってウサギの耳のように伸びて広がらない状態です。うまく説明できず申し訳ありませんが、葉の異常に考えられる原因として推察出来るものを教えて下さい。(2023.1.1)

A:植物の栽培の専門家ではないのであくまで一般論ですが……。「越水」というのは、「腰水」のことだと思いますが、そうだとすると、あまりお勧めはできません。白い結晶の塊ができているということは、水やりも下からのみ行っていたのではないかと思います。その場合、水が土壌中を上がる時に塩分が一緒に動いて土壌表面にたまってしまいます。たとえ過湿に強い植物を腰水にする場合でも、水やりは土の表面からにして、鉢の下にたまる水はその都度捨てた方が無難です。また、パキポディウムは多肉植物のようですから、そもそもあまり過湿に強いようには思えません。鉢の土が乾いてから水やりをした方がよさそうに思います。次に光阻害の可能性ですが、光もしくは温度の条件が変わったかどうかが重要です。例えば、もともと森の中で育つ植物の場合、徐々に慣らしていっても直射日光の下では育たない場合がありますが、パキポディウムの自生地は開けた場所のようですから、少なくとも十分に慣れた環境で光阻害を起こす可能性は少ないように思います。光が急に強くなった場合や、温度が急に低下した場合には、光阻害が起こる可能性がありますが、これまで同じ状態で育ててきているのであれば、生育阻害の原因にはならなそうに思えます。殺菌剤とウサギの耳に関しては僕は知識を持ち合わせません。はっきりしたことは言えませんが、僕だったら、まずは腰水をやめて水やりを控えて様子を見るかな、と思います。(2023.1.1)