光合成の質問2021年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:光を吸収する際にクロロフィルbやカロチンなどではなくクロロフィルaが主要な色素である理由は何かあるのでしょうか。それともただ調べた結果がそうだっただけということでしょうか。(2021.6.16)

A:すべての光合成色素が光を吸収できる(=光のエネルギーを集めるアンテナとして機能できる)のに対して、クロロフィルaだけは、反応中心として電子伝達を駆動することができます。具体的には、光を吸収してエネルギーを持った状態(励起状態)になったクロロフィルaが電子受容体に電子を渡すことによって自らは酸化されます。これによって電子受容体を還元して電子伝達がスタートします。このような酸化還元する能力は、カロテノイドよりはクロロフィルの方が優れていますし、クロロフィルの中でもクロロフィルaは非常に優れていると思います。もちろん、系統的な制約もあると思いますが、基本的には酸化還元の能力がクロロフィルaの反応中心としての働きを決めている側面が強いのではないかと思います。(2021.6.16)


Q:お忙しいところ、初めての質問失礼します。学校にて各々実験をデザインしてそれを行うと言う授業で、光の角度と色の違いによる酸素発生量の違いを水草を使って行おうと思っているのですが、実験のデザインの部分で行き詰まっています。 1、どこを対象にして角度を決めればいいのか。2、どのぐらい光源と水草の距離を取れば確実に差が出るのか。3、どのような光源を使うのがベストなのか。
 最後にすごく根本的なことを尋ねるのですが、この実験はきちんと機能するのでしょうか?(2021.5.7)

A:このような実験は、原理的には可能なのですが、実際にやろうとすると、極めて難しいのではないかと予想します。一つの理由は、条件を変えてから酸素発生速度に違いが出てくるまでにしばらく時間がかかることです。植物の状態にもよると思いますが、10分ぐらいかかることは十分に考えられます。その場合、ある条件にして10分、次の条件にして10分という風に、条件ごとに時間がかかりますから、3つの条件を調べるだけでも30分かかります。そして、その間は他の条件が変化しないように気をつけなければなりません。次に、光の色に関しては、例えば、違う色のLEDを使うという手がありますが、違うLEDの光の強さを比べるのは、専用の測定機器がないと難しいと思います。その場合、差が出たとしても、それが色の差なのか、強さの差なのかが判断できません。これは、白色光に色セロハンなどを使って異なる色の光をつくった場合でも同じです。
 個別の質問について答えると、1.水草がオオカナダモだとすると、さまざまな角度に葉が出ていますから、光を当てる角度を決めるのも難しいですね。よい案は思いつきません。2.距離は光源の強さにもよります。光源が弱ければ、距離が長くなった時に当然酸素発生量が少なくて、差を見るのが困難になります。ただ、1の問題が解決して、一定の方向から光を当てることになった場合は、距離が短いと光が広がりますから、距離を遠くする必要があります。実際の距離は光源の種類にもよると思います。3.酸素発生をきちんと見るためには、ある程度強い光が必要ですので、まずはそれが重要です。本当は、太陽の直射光が強くて光が広がらないのでよいのですが、曇ったり、時間と共に確度が変わったりするという問題があります。蛍光灯や電球は、光が広がりますから、少なくとも角度を変える実験を考えた場合にはあまり適切ではないでしょう。LEDは比較的指向性があるので、よいと思いますが、1個では光の強さが不十分かもしれませんね。いずれにしても、なかなか難しい点が多いとは思いますが、一つ一つ困難を解決していくのも研究の醍醐味ですので、頑張ってください。(2021.5.7)


Q:「光合成とはなにか」をはじめ、「植物工場」に関しては、旧日立中央研究所高辻正基先生の著書等を読ませて頂きました。しかしながら、経済新聞などでは、植物工場の40%位が、光線にLEDを利用していても未だ赤字であるとの記載がありました。LEDを利用して太陽の光にかわる光を放射し、明反応は促進するとして、暗反応のカルビンサイクルを促進するために、明反応で出来た水素及び新しく水素を追加して、ADP+NADPHを強化し、植物栽培を積極的に助長していく試みは行われているのでしょうか?(2021.5.2)

A:前段から後段への論理展開がよくわかりませんでしたが、植物工場を黒字にするために光合成の側を改変できそうか、という意味のご質問でしょうか?そうだとすると難しいと思います。赤字の原因は、従来の農業よりも余計にコストがかかることにありますから、たとえカルビン回路を促進することができたとしても、それにさらに余計なコストがかかれば何の意味もありません。植物工場の黒字化は、基本的には付加価値の付与によってなされるのだと思います。一方で、前段には意味がなく、純粋に光合成を強化できるかどうかを聞きたいのであれば、いくつかの試みはなされています。質問文中で「水素」とあるのは、還元力を指しているのだと思いますが、これを「追加」しても光を強くすることと同じなのであまり意味がありません。しかし、カルビン回路の鍵となる酵素であるルビスコの改変の努力などがなされています。また、C3植物のC4化なども試みられています。それでも、光合成を改変して植物の生育をよくする研究で目覚ましい成果をあげた例はありません(理由は『光合成とはなにか』をお読みであればご存知と思います)。なお、これも『光合成とはなにか』に書いておきましたが、「明反応」「暗反応」という言葉は現在では使わないようになっています。(2021.5.3)


Q:光合成のデメリットはどんなことがありますか?なぜ全ての生物が光合成をするように進化しなかったんでしょう?光合成をする事は生物にとって負担になるのでしょうか?(2021.4.22)

A:これについては、いろいろな答え方があると思うので、以下はそのうちの一つとお考え下さい。例えば、ヒト(人間)が光合成をしようと考えたとします。一人のヒトの活動を支えるためのエネルギーを普通の植物の光合成によって得ようとした場合、数十平方メートルの面積の葉が必要となる計算になります。そのような大きな面積の葉を作るための負担もさることながら、そのような大きな葉を抱えて動く自体も大きな困難を伴うでしょう。光合成の泣き所は、エネルギーの密度が必ずしも高くない光をエネルギー源として必要とし、同じエネルギーを得るためには大きな面積が必要な点です。ヒトのような動物は従属栄養生物といって、光合成生物に従属して生きています。大きな面積を自分で作るより、他の光合成生物を食べて動ける生物として生きていく方がはるかに楽だったということのように思います。(2021.4.23)