光合成の質問2019年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:いつも楽しく拝見しています。PAMで光合成(電子伝達速度)を測る際、吸収率は84%で設定されていますが、例えば紫色の葉や紅葉などでは吸収率が異なると思われます。これらの葉の吸収率はどれくらいなのでしょうか?(2019.12.26)

A:実際の葉の吸収率は、その葉によって大きく異なりますから、一概には言えません。また、光合成にとって重要なのは、最後にクロロフィルにエネルギーが伝わることであって、アントシアンが吸収したエネルギーは光合成には寄与しません。従って、紅葉などの場合はそもそも葉の平均吸収率をそのまま使うこと自体があまり適切ではありません。一定の吸収率を設定したうえで電子伝達速度を計算し、その結果を考察する時に定性的に葉の吸収を考慮に入れるのが現実的だと思います。(2019.12.26)


Q:葉を脱色するためにエタノールに浸けますが、エタノールに葉緑素が溶け出た後、葉緑体の他の成分は葉にとどまりますか?それとも葉緑素とともにエタノールに溶け出るのですか?(2019.12.22)

A:他の成分がどうなるかは、ものによって異なります。例えば、クロロフィル以外の光合成色素、例えばカロテノイドの多くなどはエタノールに溶けますので、一緒に溶け出てきますが、タンパク質などの多くはエタノールには溶けないので、葉に留まります。(2019.12.23)


Q:光合成生物の多くが、嫌気環境や窒素飢餓になると、油脂などの生育に不要な炭素化合物を作るようになるのはどうしてですか?(2019.10.21)

A:ご質問にあるような状況は、特に藻類の窒素飢餓条件で顕著に見られます。光合成生物における無機窒素の同化においては、炭素骨格(2-オキソグルタル酸などの有機酸)にアンモニアを導入してアミノ酸に変えます。無機窒素が十分に供給されている条件では、光合成によって生成した炭素骨格がアミノ酸に変換されて細胞内で使われますが、窒素飢餓条件になると、窒素同化が止まりますから、炭素骨格が細胞内に過剰になり、それらは窒素を含まない炭素化合物である油脂などに変えられて蓄積されます。このような応答は陸上植物でも見られますが、陸上植物の場合は、環境の窒素濃度はそれほど短期的には変動しないので、過剰な炭素化合物を蓄積しても意味がないため、光合成自体が抑制されてそれ以上の炭素化合物の蓄積が起こらないようになるのが一般的だと思います。一方、藻類では、環境中の窒素濃度は大きく変動する可能性があるので、将来窒素濃度が上昇した時に備えて炭素を細胞内に蓄積しておくことには意味があるように思います。嫌気条件への応答は生物によって異なるように思いますが、何らかの理由で増殖が阻害される一方で、光合成が継続するような条件に置かれた場合には、やはり光合成によって過剰に合成された炭素化合物が細胞内に蓄積する例はあります。(2019.10.21)


Q:I am studying photosynthesis for a company project and found your book 光合成とは何か of great interest. My question is: what efforts are being made in Japan to improve crop productivity 作物の生産性 by enhancing photosynthetic efficiency? For example, is it possible to adapt C4 syndrome to C3 plants? Photosynthesis has a very low conversion rate 低い変換率. Will it be possible to raise it very much in C3 plants? Thank you very much. ご返事は日本語でも結構ですよ!(2019.9.17)

A:C3植物(イネ)のC4化は、農業生物資源研究所で研究が進められていましたが、成功していません。維管束鞘細胞と葉肉細胞を新たに分化させることは難しいので、葉緑体とサイトゾルにC4に必要な4つの酵素を発現することによって疑似的なC4回路を作り出そうというプロジェクトでしたが、結局回路は回りませんでした。おそらくは、さらに代謝産物のトランスポーターをも適切に発現させることが必要なのだと考えられます。また、ルビスコの酵素的な性質を改善してスーパールビスコを作ろうというプロジェクトがかつて奈良先端大などを中心にして進められましたが、結局これも成功しませんでした。光合成の効率を上げる研究においては、僕の個人的な見解としては、以下の2つの点を考える必要があります。
 1.C4植物は、高温強光乾燥条件ではC3植物より高い光合成速度を示すが、低温弱光湿潤条件ではかえって光合成速度がC3植物よりも低くなる。基本的に、すべての環境条件でほかの植物よりも光合成活性が高い植物を作ることは不可能である。
 2.最適な環境条件における光合成の効率は、光合成の40億年近い歴史の間に最大化されており、それをこれ以上改善することは事実上難しい。ただし、野外の植物においては、さまざまな環境条件によって光合成の効率は意図的に低下させられており、そのような条件でその「たが」を外すことにより光合成の効率を上げることは可能かもしれない。しかし、その場合、副作用として長期的な生育などにはマイナスの効果を与える可能性があるので、そのような効果が出る以前の段階で収穫する、あるいはそのような効果が現れない環境条件と組み合わせる、といった方策をとる必要性があると考えられる。(2019.9.17)


Q:先生の著書「植物の形には意味がある」158ぺージににある「東京大学の舘野先生」の項の詳細を知りたく、公開されている論文を探しましたが、見つけられませんでした。ご教示いただけると幸甚です。(2019.8.30)

A:該当の論文は、Osone, Y., and Tateno, M. (2005) Functional Ecology 19:460-470.です。Free accessですので、どこからでもお読みになれます。(2019.8.30)


Q:今高校の課題研究にてすり潰したホウレンソウからアセトン溶液を用いてクロロフィルを抽出し.エッペンドルフチューブにとり、10分間遠心した後ワイヤレス分光センサps-2600を用いて遠心時間、アセトンの濃度などの変数を設けてそれにより蛍光強度が変化するのか測定する、という実験を行なっています。蛍光の波長を測定するにあたり、同様の実験操作をしても計測結果にばらつきがあり、何に原因があるのかと悩んでいます。そこで質問なのですが、ワイヤレス分光センサps-2600はアセトン溶液に抽出したクロロフィルの蛍光を計測するのに適しているのでしょうか? メーカーにも問い合わせメールをしておりますがご存知であればご教示頂きたく問い合わせさせていただいております。(2019.8.27)

A:一般的に、測定結果のばらつきを考えるときには、そのばらつきが、試料のばらつきによるものなのか、それとも測定自体のばらつきによるものなのかを区別することが重要です。ワイヤレス分光センサps-2600は、蛍光測定だけでなく吸収測定もできるはずです。クロロフィル溶液の吸収を測定したときには、ばらつきは出ないのでしょうか。もし、吸収測定では一定の値が得られるのに、蛍光測定ではばらつきが大きいようでしたら、測定方法に何らかの問題があるのではないかと予想できます。一方で、吸収測定でもばらつくようでしたら、むしろクロロフィルの抽出に問題があるのではないかと考えられます。その情報を加えて再度質問していただけますでしょうか。(2019.8.27)

Q:先日のご指摘をふまえ、吸光/透過率と蛍光強度を測定しなおしました。実験手順は以下の通りです。
1.ホウレンソウの葉2gと80%アセトンをすり鉢に入れすりつぶす
2.ホウレンソウの葉の部分避け液体部分のみをエッペンドルフチューブに1.5mlとる
3.同様に3回繰り返し、2本ずつ6本のサンプルを用意する
4.小型遠心機を用いて6本のサンプルを10分間遠心する
5.エッペンドルフチューブ2本分の上澄みで3パターンの透過/吸光度・蛍光強度をスペクトルメーターを用いて測定する
 溶液の色から同様の実験操作ができていないことは明らかなのですが、何が原因なのかと悩んでおります。実験を見て見て下さっている小石川の先生にはすり潰し方の問題ではないかと指摘を受けました。実験操作・測定結果をふまえ、実験操作の改善・問題点などをご指摘いただきたく存じます。抽象的な質問で大変恐縮ですがご回答いただければ幸いです。(2019.9.20)

A:「ホウレンソウの葉2gと80%アセトンをすり鉢に入れすりつぶす」の部分ですが、加える80%アセトン量が書いてありませんが、一定なのでしょうね?ここがばらばらだと、当然結果もばらばらになります。あと、すりつぶす操作がばらつきの原因である場合、一番良いのはすりつぶさずにクロロフィルを抽出することです。ジメチルホルムアミド(DMFと略称されます)を使うと、葉を浸しておくだけでクロロフィルが抽出されます。高校でDMFが入手可能かどうかにもよりますが、入手できれば葉のクロロフィル定量には一番良い方法だと思います。(2019.9.20)


Q:光飽和点、光補償点に関して、「ある時間帯」で説明されたものが多いと思います。たとえば1か月(=30日)で考えた場合で下記の2条件で作物の品質はどうなるでしょうか。仮に、光飽和点を100、光補償点を50とします。(1)日照が100の日が15日、50以下の日が15日=補償点越えトータル日照=750 (2)日照が75の日が30日=補償点越えトータル日照=750 (1)と(2)の場合では、作物の品質には差は出ますでしょうか・・・?(2019.8.26)

A:まず、光光合成曲線は、「ある時間帯」での説明ではなく「ある瞬間」での説明です。ですから、一日のうちでも夜は呼吸により二酸化炭素を吸収しますし、明け方や夕方の暗い時には光補償点程度の時があります。また、日中でも雲がかかれば光は弱くなります。そのため、もし、定量的に光合成の状態を知りたいと思ったときには、一日の日射変動のデータが必要になります。日照の最大値のデータだけでは光合成を求めることはできません。
 したがって、定量的に計算するためには、日射変動のデータを光光合成曲線で光合成速度に変換して、それを時間軸に沿って積分する必要があります。一般的には、光補償点がより低い植物の方が日照不足になっても強い、といった定性的な議論に留まらざるを得ないように思います。そして、定性的な議論でよければ、そもそも光光合成曲線は飽和カーブを描きますので、トータルの光量が同じであれば、より弱い光で長い時間光があたる条件の方が積算光合成量は大きくなります。ただし、作物の品質は、光合成だけで決まるわけではないことに注意をする必要があります。
 なお、光飽和点というのは、あくまで概念であって現実に定義できるものではありません。光合成は光量が大きくなるにしたがって最大光合成速度に近づきますが、それは漸近線の形を取ります。理論的には光飽和点は無限大になりますし、グラフで適当に光飽和点を決めようとしても、その値は大きくばらついて一つの値になることはありません。一方で、光補償点は、実験データの曲線がX軸を横切るところの光量としてきちんと定義できます。(2019.8.26)


Q:黒い葉の方が光合成が盛んになると考え、葉に色を塗って確かめようとしましたが、反応が出ませんでした。色を塗ったことで光が葉にあまり届かなかったのではと考えました。葉を黒くする方法を探していますが、思いつきません。何かよい方法はないでしょうか。(2019.8.17)

A:ご質問に少しわからない点があるのでいくつか確認です。
1.「反応が出ませんでした」というのは、ヨウ素デンプン反応かなにかで、光合成の反応が出なかったということでしょうか。
2.その場合、色を塗らなかった葉は反応が出たのでしょうか。
3.「葉を黒くする方法」というのは、どのような意味でしょうか?色を塗ったら、葉は黒くなったのですよね?それでだめな理由は何なのでしょうか。もし、「光合成をしなかったから」という理由でしたら、それは、結果が予想と違っていたからダメ、ということになりますから、実験の計画を立てる上で、あまりよい考え方ではありません。一方、「葉に光が届かなかったから」という理由でしたら、どのような条件を実現したいのかを考える必要があります。もし、葉の表面が黒くないのに、葉が黒い条件にしたいのである場合、葉のどこが黒いのでしょうか。葉の中には光合成をする部分があるはずですが、葉の中を黒くすれば、やっぱりその部分に光が届かなくなるのではないでしょうか。それとも、光合成をする部分を改変して、その部分自身がすべての光を吸収できるようにする、という意味でしょうか。その場合、少なくとも、光合成をする部分がどのように光を吸収しているのかを調べないといけないでしょう。
 最後の点に関しては、光合成は光を吸収するためにクロロフィル(葉緑素)という複雑な分子を使います。例えば、その分子の構造を変えてすべての色を吸収するようにすることができればよいのかもしれませんが、葉にたくさんある分子をすべて違う分子に変えるというのは、ものすごく複雑な作業をする必要があるように思います。(2019.8.17)

Q:1.ヨウ素デンプン反応が出ませんでした。
2.色を塗っていない葉はヨウ素デンプン反応が出ました。
3.葉を黒くしたものがヨウ素デンプン反応が出なかったので、ポスカで表面を塗ったことで葉に光が入らなかったと考え、これではダメだと思いました。それで、表面を覆うのでなく、インクを吸わせるなどして中から染めることを思いつきました。しかし、先生からのメールで、その方法でも、結局は黒インクがじゃまをして葉緑体には光が届かないと気づきました。光の波長と光合成速度の関係や、光合成色素の光の吸収率などは、調べて学んでいるところです。葉緑体そのものを黒く変えることができればよいと思ってますが、僕には今のところ分子の構造を変える方法が分かりませんし、自宅でできることなのかも分かりません。僕は、黒い葉の方が光を吸収でき光合成が盛んになりそうなのに、葉はなぜ黒くないのかという疑問から実験を始めました。調べる中で、葉が緑に見える理由を知りましたが、本当に黒ではいけないのかを確かめたいと思い、何とか葉を黒くできないかと考えて行き詰まっています。(2019.8.17)

A:なるほど。わかりました。ただ、そうすると、やはり難しい気がします。葉緑体自体の色、もしくは葉緑素自体の色を変えることは、たぶん専門の研究者でもまだ成功していないのではないかと思います。何か別の方向から考えるしかないのではないかと思います。(2019.8.17)


Q:自由研究で「ミカンの観察」を今年で9年間継続をしています(現在、茨城県の中学3年生です)。中学2年の時は、単純にヨウ素液を使用してミカンの葉っぱデンプンを調べました。また、葉っぱだけでなく他の部分でもデンプン反応が出るかを調査しました。
調査結果:葉っぱ、果実の中心にある維管束、発芽し始めた種子、1年以内の若い枝で、デンプン反応が確認できました。
 ここで疑問なのは、光合成によってつくられたデンプンは水に溶けないので水に溶けるショ糖に変えられ師管を通ってからだ全体の細胞に運ばれ、それぞれの細胞で使われると教科書に書かれていました。ショ糖に変えられたのであればヨウ素でんぷん反応は出ないはずなのに、なぜ反応がでたのか知りたく質問箱に投稿しました。特に、若い枝には反応が出て2年目以降の枝には肉眼で確認できる反応が見られませんでした。ただし、ミカンなどの植物を研究している機関のホームページなどをみると、果樹の幹のデンプン量を計測すると収穫量とかも予測できると書いてありましたので、個人でもできる検査方法も合わせて教えて頂ければと思っています。「みかん 枝 でんぷん」で検索すると「ウンシュウミカン‘青島温州’の樹体内デンプン含量の時期的変化と 冬季の根中デンプン含量による着花量予測」など、の文面が出てきます(2019.7.21)

A:ご質問の内容にある通り、葉で作られた光合成の産物は、一度水に溶けるショ糖などの糖に変えられて他の場所に運ばれます。ただ、運ばれたその瞬間に使われるとは限りませんから、運ばれた先の細胞で一時貯めておくことになるのが普通です。そしてその際に、多くの植物では、もう一度デンプンにすることが多いのです。そのため、他の枝や根などでもヨウ素デンプン反応が観察されることになります。ただし、イネ科の草などの中には、デンプンにせず、ショ糖のままためておく植物もあります。そのような植物では、あまりヨウ素デンプン反応は見られないでしょう。
 枝におけるデンプンについてですが、ヨウ素デンプン反応は非常に良い方法で、デンプンの検出方法として専門家も使います。検出方法を変えることよりも、検出の条件を検討したほうがよいかもしれません。以下の3点について考えてみてはどうでしょうか。
1.枝や幹は硬いので、ヨウ素液が内部に入らない可能性があります。ごく薄い切片にしてみる、あるいはお湯などで柔らかくする、などといった対策が必要な場合もあると思います。
2.デンプンがたまるのは枝や幹の全てとは限りません。おそらくは、周囲の一定の場所にたまると考えられますから、どの部分を調べるのかを考えたほうがよいと思います。
3.上のこととも関係しますが、全面にデンプンがたまるとは限らず、特定の小さな場所だけにデンプンが集中する場合もあります。そのような場合、もし、学校の顕微鏡などが使えれば、顕微鏡で見てみると、ヨウ素デンプン反応がごく小さな点のように見える場合もあります。
 さらに面白い結果が出ることを期待しています。(2019.7.22)


Q:いつも楽しく拝見しています。葉の透過率、反射率を測るのに積分球を使いますが、その際入射光の強度はどれくらいにするのでしょうか?(2019.7.16)

A:積分球は、単独で使うものではなく、分光器につけて使います。従って、通常は、入射光の強さは分光器の設定次第です。性能の良い分光器であれば、弱い光も感知できますから、弱くてもよいでしょう。(2019.7.22)