光合成の質問2008年

このページには、寄せられた質問への回答が新しい順に掲載されています。特定の知りたい情報がある場合は、光合成の「よくある質問」(FAQ)のページに分野別に質問を整理してありますので、そちらをご覧下さい。


Q:初めて質問させていただきます。植物のデンプン分解の新しい経路についてです。光合成産物として葉緑体に蓄積されたデンプンは従来、葉緑体内でG1P、G6P、TPなどと分解され、TPの形で葉緑体外、細胞質に輸送されてショ糖なる、という経路が考えられていましたが、最近では葉緑体内でデンプンはグルコースに分解されたのち、輸送体によって細胞質に輸送され、ショ糖になる、という新しい経路が考えられるようになってきたそうなのですが、なぜこのような経路が考えられたのでしょうか。また、それをどんな実験で証明できるのでしょうか。(2008.12.17)

A:レポートの課題かなにかでしょうか、下を見て頂ければわかりますように10日ほど前にも同じ質問が寄せられています。そちらと、「質問のコツ」をご覧になって、必要であれば再度ご質問頂ければと思います。(2008.12.18)


Q:光合成の研究を始めてから、たびたび参考にさせていただいております。ご回答よろしくお願い致します。単離されたチラコイド膜に、400nm中心波長のパルスを照射し、蛍光測定と光合成活性による酸素発生を同時にリアルタイムで測定しているのですが、照射されたレーザー強度に対して蛍光強度が小さく、酸素発生もゼロでした。その理由として、単離されたチラコイド膜が光エネルギーを捕集していても、周囲に存在するはずのストロマが存在していない(エネルギーを渡す相手がいない)ため、光合成が行われていないのでしょうか?蛍光強度に関しては、蛍光を上手く検出できていない可能性があるので、照射されたレーザー強度に対して蛍光強度が小さいという表現は誤りかもしれませんが、それが正しかったとするとエネルギー収支的に熱分散が大きく占めていると考えてもよいでしょうか。私は物理工学部生なので、化学に詳しくないですが、質問に対して(中断?)(2008.12.14)

A:もし、レーザーパルス一発による酸素発生を測定しようとしているのであれば、一般的なクラークタイプの酸素電極ではそもそも測定できません。ジョリオタイプというやや特殊な酸素電極が必要です。また、蛍光の収率は、光合成をきちんとしている試料では高くて1%ですから、もともとエネルギーの行方としては、蛍光はほとんど無視できる程度です。一般的に熱放散の増大を蛍光収率の変化で見積もるのは、ごく低い蛍光収率の「変化」を指標にしているのであって、ある時点での蛍光が低いからという理由ではありません。
 あと、チラコイド膜が「渡す」のはエネルギーではなく電子です。具体的にはストロマ中のフェレドキシンが還元されます。酸素発生を見るような場合は、人工的な電子受容体としてフェリシアン化カリウムなどが使われます。このような実験の場合、まずは、単離されたチラコイド膜がまともなものであるのかどうかを調べるのが先決です。レーザーパルスをあてるのも良いのですが、そもそも定常光ではきちんと酸素は発生しているのでしょうか。質問箱を利用して頂けるのは嬉しいのですが、もし、研究として行なうのであれば、実験手法を含めた基礎的な知識を誰か専門家に相談した方が良いように思います。(2008.12.14)

Q:返信ありがとうございます。単離されたチラコイド膜試料に定常光(一般的なプロジェクターの光)を照射し、精度の高い酸素濃度測定器(ニードル式酸素濃度計 MICROX TX3 OXYGEN METER)を用いて酸素濃度を測定をさらに質問させていただきたいのですが、本来、葉緑体の中でチラコイドとストロマがセットで光合成をするのに対して、単離されたチラコイド膜のみでは、光合成を行うのに必要な電子を受け渡す相手(フェレドキシン)がないために、光合成を構成する全ての反応のうちチラコイド膜内で起こる反応は起こるがそれ以外の反応が起こらないと考えて良いのでしょうか?つまり、単離されたチラコイド膜でも、フェレドキシンがなくても、人工的な電子受容体(フェリシアン化カリウム)を用いれば光合成は行われるのでしょうか?
 光合成をまともにおこなっている試料の蛍光の収率はせいぜい1%ほどであるとということを伺って質問したいことがあります。光合成を行っていない試料(例えば、クロロフィルaのみ)の場合では、エネルギーの経路は光合成への経路を失っているわけですから、光合成に使用されるはずのエネルギーはそれ以外の経路である熱分散や蛍光、他分子へのエネルギー移動に分配されると考えることができます。そうであるとすると、光合成を行っていない試料の蛍光の収率は1%以上になるのではないかと考えらることは間違っているのでしょうか?ご回答のほどよろしくお願い致します。(2008.12.17)

A:単離されたチラコイド膜で光合成が起こるのか、という点については「光合成」の定義によります。当然ながら二酸化炭素固定は行ないませんが、電子伝達ならば人工的な電子供与体の添加により可能です。このあたりは、高校で習う範囲です。せめてなにか教科書ぐらい読んでから研究を始めた方が良いと思いますが・・・
 蛍光の収率に関しては、「光合成を行なっていない試料」の定義によります。例えば、有機溶媒中のクロロフィルaの蛍光量子収率は30%にも達します。一方で、「光合成をきちんとしている試料」の光合成を一時的に止めた場合の蛍光の量子収率が1%程度であり、これは、光合成を止めてない場合の蛍光の量子収率(おそらく0.2%程度)よりもかなり高くなります。ですから、蛍光の量子収率に対する光合成をしているかどうかの影響は確かにあるのですが、生体試料ではそれは0.2%から1%ぐらいの間で起こることになります。これは、生体内では熱放散系が働いていることによります。(2008.12.17)


Q:クロロフィルはメタノールで抽出されやすく、カロテノイドはベンゼンで抽出されるわけを教えて下さい。「クロロフィルはなぜ有機溶媒によく溶け、水にはあまり溶けないのか?」のFAQを拝見させて頂きましたが、有機溶媒に良く溶けるのはカロテノイドの方ではないのでしょうか?クロロフィルがメタノール抽出されるのは、OH基などが極性を持つからだと聞いたことがあったのですが・・よろしくお願いします。(2008.12.11)

A:どうも、有機溶媒に「溶ける、溶けない」を、Yes/Noのような二者択一のように考えているようですが、自然界のものはそうそう白黒決着をつけられるものではありません。高校生の時に光合成色素の薄層クロマトグラフィーの実験はしませんでしたか?薄層クロマトグラフィーを有機溶媒で展開する時の色素の溶出の順番は物質の疎水性で決まります。これについては薄層クロマトグラフィーのFAQをご覧下さい。(2008.12.11)


Q:デンプンが分解されるさいに、グルコースを経てグルコース輸送体によって葉緑体から細胞質に移動し、ショ糖になるという過程はどのような実験によって証明されたのでしょうか?(2008.12.8)

A:質問ではグルコースが関与するとの前提となっていますが、そのこと自体疑問がついている状態だと思います。マルトースの寄与の方が大きいという報告もあります。いずれにせよ、その手の「証明」はデンプンが夜間に分解できない変異体の原因遺伝子を調べるといった形でなされることが多いでしょう。(2008.12.8)


Q:光合成細菌において、抽出されたクロロフィルの吸収帯(770nm付近)は、抽出前の膜タンパク質複合体の吸収帯(850nm付近)と比べて大きく短波長側にシフトしました、おそらく、複合体形成による吸収特性の変化に起因するものだと思うのですが、理由を教えてください。(2008.12.6)

A:クロロフィルはタンパク質に配位結合により結合しています。色素の吸収はその物質の電子配置に依存しますが、その電子配置は例えばクロロフィルの中心金属とマグネシウムとタンパク質のアミノ酸残基の間の相互作用によって変化しますから、これにより吸収スペクトルは変化します。一般的にはタンパク質との結合によりクロロフィルの最大吸収波長は有機溶媒中での吸収波長に比べて20-30 nm長波長にシフトします。同じことはバクテリオクロロフィルでも起こります。(2008.12.7)

Q:紅色光合成細菌はほかの光合成生物と同じように緑色のクロロフィルを含んでいるにもかかわらず、赤色に見えるのはなぜなのでしょうか?ちなみに、この紅色光合成細菌はバクテリオクロロフィルa,b,亜鉛バクテリオクロロフィルaを持っているそうです。膜タンパク質複合体からクロロフィルを抽出して、吸収スペクトルを測定すると、770nm付近に吸収が見られました。(2008.12.6)

A:人間の目は分光器としてみた時には極めて精度が悪く、いわば3点でスペクトルを測定しているようなものです。白色光の虹の七色の中から赤色だけを取り除くと人間には緑色に見えますし、一方で緑色の光だけを取りだしてもやはり緑色に見えます。ですから、人間の感覚と色素のスペクトルを直接結びつけることは案外困難です。酸素発生生物が持つクロロフィルは緑色を比較的透過するだけではなく、赤色光をよく吸収します。一方で、バクテリオクロロフィルにおいては、長波長の主な吸収帯が赤い領域ではなく、赤外領域にシフトしていますから、赤い領域の光をどれだけ吸収するか、という点に関してはクロロフィルとかなり異なります。また、菌体の色には、クロロフィル以外の色素、例えばカロテノイドの含量なども大きな影響を与えます。(2008.12.7)

Q:紅色光合成細菌由来膜タンパク質複合体のスペクトル解析をしました。この膜タンパク質単独の可視吸光スペクトルと、膜タンパク質に硫酸ドデシルナトリウム水溶液を加えて膜を可溶化したものでは、スペクトルのベースラインに変化がありました。なぜなのでしょうか?(2008.12.6)

A:使用する分光器の種類にもよりますが、積分球を使用しないで細胞や膜といった懸濁試料を測定する場合、吸収スペクトルのベースラインは、実際には吸収を反映するというよりは散乱を反映することがほとんどです。散乱は試料の粒子径によって影響を受け、膜が可溶化されれば散乱は劇的に低下します。従って試料の可溶化はベースラインの低下をもたらすことになります。(2008.12.7)

Q:2008年12月6日に投稿された質問に関して質問させていただきます。バクテリオの持っているクロロフィルは膜蛋白質複合体として存在してるようですが、複合体となることで長波長シフトするため赤外領域を吸収するということでしょうか?つまり、バクテリオクロロフィル単体では、他の光合成生物と同様に短波長を吸収するということですか?また、バクテリオクロロフィルは通常、菌体内で二量体を形成しているそうですが、そのこととアミノ酸残基の相互作用による電子配置の変化との関係をもう一度教えていただけませんか。よろしくおねがいします。(2008.12.11)

A:バクテリオクロロフィル単体でも、普通のクロロフィルよりは長波長の光を吸収します。それがタンパク質との相互作用によりさらに長波長シフトする、ということです。また、バクテリオクロロフィルが「通常」二量体を形成する、ということはありません。なにかの間違いではないでしょうか。(2008.12.11)


Q:生物学の基礎的な知識を持ち合わせていない者ですが、アロマテラピーに興味があり精油の化学成分表を眺めているうちに以下のような疑問が湧きましたので質問させていただきます。高等植物では生成されたブドウ糖が解糖系でピルビン酸になり、これがコエンザイムAと結合してアセチルCoAとなって反応を繰り返した後メバロン酸が生成される、と理解しているのですがメバロン酸から生成されるイソペンテニルピロリン酸とジメチルアリルピロリン酸は異性体であるといってよいのでしょうか?また、ジメチルアリルピロリン酸にイソペンテニルピロリン酸が付加して行くことでさまざまなテルペノイドが生成されていきますが、植物によってあるいは一つの植物の中でも葉・花・木部などで含有するテルペノイドの種類が著しく異なるのは何(酵素の働き?遺伝形質の違い?)によるもので各々どういう理由(植物の生存にとってのメリット)によるものでしょうか?ホスホエノールピルビン酸とD-エリトロースから分かれるシキミ酸系路で生成されるフェニルプロパノイドなども、含有するものと含まないものがあるのは全ての植物の代謝が一様ではないということでしょうか?そうであるならばその違いはどういう理由によるものなのでしょうか?以上、よろしくご教示くださいませ。(2008.11.23)

A:どうもこの質問は光合成とは無関係のようです。光合成の情報を探すためにこのサイトを訪れた人にとっては、余計な情報はいらだたしいものに感じる場合もありますので、ご配慮頂ければと思います。
 イソペンテニル二リン酸とジメチルアリル二リン酸はイソメラーゼ(異性化酵素)で相互変換することからもわかりますように異性体といえます。
 植物の光合成や呼吸は一次代謝と呼ばれ、それに対してテルペン合成などは二次代謝と呼ばれます。一次代謝は、生育に直接かつ重要な働きをする物質の合成分解なので、生物間である程度の共通性を持ちますが、それでも各代謝産物の量などは一定ではありません。二次代謝においては、生育に直接関わるものではないことが多いこともあり、その物質の種類や量はさらに多様です。そのような多様性は、代謝に関わる酵素の量による場合もありますし、そもそも特定の酵素が欠失していたり、その生物独特の酵素を持っていたりもします。
 違いの「理由」というのは、おそらく利害得失の上に立った進化的な理由をお尋ねなのだと思いますが、二次代謝産物は生育に必須のものではない場合がほとんどなので、その量や存在について明確な意義を実験的に明らかにすることはきわめて難しいと思います。ごく一般的には、外敵防御のような理由が想定されているかと思います。(2008.11.23)


Q:こんばんわ。探し物をしていたら、ここにたどりつきました。初めて質問させていただきます。よろしくおねがいします。同化色素の分離で薄層クロマトグラフィーの実験についてなのですが、ホウレンソウと青のりの同化色素で行ったとき、ほぼ同じような同化色素が現れたのですが、青のりのほうに褐色のルテインが現れました。植物でこのような違いがあらわれたのは植物と藻類と、種類が違うからですか?また、青のりに含まれるルテインはどのような役割があるのでしょうか?クロロフィルaは青緑色をしていますが、なぜこのような色をしているのですか?クロロフィルaの光合成における役割は何でしょうか?たくさん質問してすみません。(2008.11.14)

A:植物と藻類を比べた時に、持っている色素が違うことは充分にあり得ます。同じ藻類でも違う種類であれば違う色素を持つことがあります。ただし、ルテインはホウレンソウにもあると報告されています。また、ルテインの役割については、「これ」という特徴的かつ断定的なものはわかっていないと思います。クロロフィルaの色と役割については、「よくある質問」(FAQ)にいろいろ書いてありますが、そちらは読みましたか?(2008.11.15)


Q:光合成の森をいつも拝見させていただいております。私は光合成の研究に着手したばかりのひよっこなので頭の悪い質問だと思われるかもしれませんが、ご回答のほどよろしくお願いします。私はLI-6400を用い、光合成を測定し、A-Ciカーブを作成したのですが、最大カルボキシレーション速度の算出法でつまづいています。論文等を見ていると値が40-60くらいが一般的なのですが、初期勾配を求めてもこの値よりも圧倒的に低い値(例えば0.1-0.2くらい)になってしまいます。ご教授のほどよろしくお願いします。(2008.11.13)

A:最後の計算結果だけから、そこにいたる過程の中の不都合な点を見つけ出すのは難しいと思います。実際の測定の生の数値と、そこからの計算過程をお送り頂ければ、お答えできるかも知れません。あと、数値に単位がついていないようですが、このような場合、必ずそれぞれの数値の単位が何かを考えて計算する習慣をつけておくと、間違いがだいぶ減ると思います。(2008.11.13)


Q:恐れ入ります。探していたら、ここにたどりつきました。よろしくお願いします。中学1年理科の、光合成について調べる実験の設問です。葉を部分的にアルミ箔で隠し、光合成させた後、よくあるのは、〜〜葉をアルコールで煮るのは何のためか?〜葉緑素を抜くため。今回、初めて見た問題が出題されました。漂白剤で煮るのは、何のためか?参考書でも見当たらず、ネットでさがしておりました。良いアドバイスをいただければ幸いです。(2008.11.12)

A:漂白剤で煮るのも基本的には同じでしょう。あらかじめクロロフィルを分解してヨウ素デンプン反応の色を見やすくするためという回答で良いはずですが。たたき染めの場合などは、むしろ漂白剤を推奨している例が多いように思います。(2008.11.13)


Q:全くの素人の質問で恐縮ですが、世の中に現存するもっとも”質量(又は面積?)効率の良い(=物質単位質量(または表面積?)あたりのO2生成量が最も多い)”光合成物質(植物や細胞、合成物質等)とは何なのでしょうか?また、その”最も効率の良い”光合成物質の1kg(又は単位面積?)あたりに、最適の条件で太陽光やCO2、水が供給された場合に、単位時間当たり(例えば1時間とか)に生成できる酸素量はどの位の量(重さ)なのでしょうか?(2008.11.11)

A:このサイトの「よくある質問」(FAQ)はご覧になりましたか?この中にいろいろな植物の光合成速度を教えて下さいという項目がありますので、まずはそちらをご覧頂ければと思います。いずれにしても、葉の場合には「最適条件」ということであれば単位面積あたりで比較できないことはありませんが、葉と細胞を比べるというのはカンガルーとノミのジャンプ力を比べるようなものです。体重あたり、身長あたり、筋肉量当たり、そして単純な距離の比較では、それぞれ全く答えが違ってきます。「光合成とはなにか」では光合成の効率と速度にまるまる1章割いたぐらいですから一筋縄ではいきません。(2008.11.11)


Q:学校で薄層クロマトグラフィーによる光合成色素分析を行いました。石油エーテル:アセトン=7:3の展開溶媒の下でラン藻、紅藻、褐藻、緑藻、陸上植物についてです。実験の結果、全TLCプレートから灰色のスポットが検出され、フィオフィチンが存在することが分かりました。試料作成時にクロロフィルからのMg脱離を防ぐ目的でMgCO3を加えたのですが、なぜこれを加えてもMgはHに置換されたのでしょうか。またラン藻の実験結果においてRf値3.8、3.2でオレンジ色のスポットが確認できました。比較的濃くスポットされたため何かの色素を示しているのだと推測しましたが、詳しくはどの文献を探しても載っていませんでした。何を表わしたスポットなのか疑問です。以上2つの質問についてお答えいただけると幸いです。よろしくお願いします。(2008.11.1)

A:クロロフィルがフェオフィチンになる反応は基本的に化学的に進行し、酸などによって促進されるといってもアルカリにしたから完全に反応が止まるわけではありません。一方で、マグネシウムをポルフィリン環に入れる反応の方は起こりづらく、例えばクロロフィル合成の代謝系に置いては酵素によって進めている反応です。従って、マグネシウムの離脱反応を遅くすることはできますが、完全に止めるのはなかなか難しいと思います。
 シアノバクテリアは、ミクソキサントフィルという特徴的なカロテノイドを持ち、これは量的にも多いので、これがオレンジ色に見えていた可能性が高いかと思います。ただ、Rf値が3.8、3.2というのは謎ですが・・・(2008.11.2)


Q:こんばんは。質問させていただきます。もやしを暗所で育てると色素体がエチオプラストに分化するので光合成は行えないと思いますが、その状態でももやしが成長できるのはどうしてでしょうか?どこから栄養を得ているのでしょうか?光合成と関係ないかもしれませんがご存知でしたらお教えください。(2008.10.20)

A:この質問には二つの答え方ができます。成長するエネルギーをどこから獲得しているのか、ということでしたら、種子の中に蓄積しているデンプンや脂質を分解することによって得ています。種子の大きさは植物によっていろいろですが、当然のことながら、小さな種子のもやしは貧弱なものにしかなりませんし、ダイズもやしなどはかなり立派になります。光があたって光合成を始めると、小さな種子でも大きく成長できるようになります。一方で、大きさがどうしてあんなに大きくなるのか、ということでしたら、水を吸っているためです。ですから、大きくなったもやしをもう一度からからに乾燥させてしまうと、もやしの重さは元の種子と同じか、むしろ軽くなっているはずです。(2008.10.21)


Q:できれば、今日中に回答をお願いいたします。陸上植物(アカツメクサ)、浅所型緑藻(アナアオサ)、深所型緑藻(ミル)、褐藻(マコンブ, アラメ)、紅藻(タンバノリ)の色素をTLCによって分離し、その組成からいかにして海藻が進化していったかを考えています。前者2つは組成がまったく一致しましたので、陸上植物は浅所型緑藻が進化したものと考えられます。
1)褐藻、紅藻にはクロロフィルbが現れませんでした。
2)深所型緑藻、褐藻にはルテインが現れませんでした。
3)褐藻にはクロロフィルcが現れました。
4)深浅所型緑藻にはシフォネイン、シフォナキサンチンが、褐藻にはフコキサンチンが現れました。
5)陸上植物、浅所型緑藻だけに共通してビオラキサンチン、ネオキサンチンが現れました。
気がつく相違点は上記の通りです。どうして、このような色素組成となったのでしょうか。海藻をとりまく光環境が変わったことが原因だとは思いますが具体的にどう考えてよいかわかりません。今日の陸上植物にいたるまでの進化の過程を教えていただきたいです。(2008.10.19)

A:進化と言うことになると色素の「あるなし」だけを考えても、答えは出すのは難しいと思います。例えば、陸上植物、原核緑藻、そして通常のシアノバクテリアの3つの生物で光合成色素の組成を比べると、陸上植物と原核緑藻が似ていますが、実際は、陸上植物と原核緑藻は単系統ではないと考えられます。もし、海藻をとりまく光環境が重要だと考えたのであれば、必要なのは、それぞれの色素がどのような光を吸収するか、という情報です。色素の名前だけを羅列しても答えは出てきません。それぞれの色素の実際の吸収スペクトルを「光合成事典」などで調べて見比べないといけないでしょう。そのあたりが「具体的にどう考え」るかのスタートポイントになると思います。また「今日の陸上植物にいたるまでの進化の過程」という大きなテーマは、ここでぱっと答えられるようなものではありません。光合成の教科書のページに紹介している「藻類30億年の自然史」をまるまる一冊読まないといけないでしょう。(2008.10.19)


Q:海藻(アナアオサ、タンバノリ、アラメ、マコンブ)についてプロダクトメーターを用いて光合成速度をもとめました。そこで、海藻は全て同じ大きさにカットしたのですが、それぞれに厚みが違うからそのことを考えなくてはいけないと思います。光合成量と厚みにはどのような関係があるのでしょうか。(2008.10.19)

A:「厚み」自体は、光合成に直接影響を与えるわけではなく、どれだけ光が吸収されるかが重要です。高等植物の葉の光合成速度の場合などは、厚みが違っても、面積あたり、時間あたりで光合成速度を表します。これは、厚みが違っても葉の光の吸収率は90%以上であまり変化がないことによります。葉の色が大きく違う場合や、葉からチラコイド膜を単離してから光合成速度を測る場合は、光合成色素の量あたりで考えます。その場合、光合成速度の単位は、例えば、mgクロロフィル当たり、時間あたり、というかたちになります。海藻の場合も、同じような理由で、光の吸収率がどの程度かによりますが、厚みを計算に入れるよりは、面積あたりにしてしまうか、それとも色素量でそろえるのがよいかと思います。(2008.10.19)


Q:初めて質問させて頂きます。この前海藻の光合成量の測定を行ったのですが、酸素発生量がマコンブ<アナアオサ<アラメ<タンバノリの順になり、だいたい水深の深い紅藻などのほうが大きくなりました。この理由はなぜでしょうか?先生は生息水深が関係するといっていたのですが・・・。お願いします。(2008.10.18)

A:すぐ上の質問と同じ大学でしょうか・・・。光合成速度というのは、何あたりで測定したかが重要です。量が違えば当然、光合成の速度は変わります。さらに言うと、藻類の場合、どのような色の光をあてるかによっても、光合成速度は変わります。ですから一概には言えないことになります。生育水深と光合成量の間に必然的な関係があるわけではありません。ただ、自分でいろいろ推測することはできるでしょう。おそらく、先生が求めているのは「正解」ではなく、個人の「考え方」だと思います。(2008.10.19)


Q:オオカナダモの光合成速度について調べるためにプロダクトメーターを使って実験を行いました。オオカナダモの断片をいれ、振とうを行い、3分ごとにガラスの管の液の端を線にあわせて、酸素の量を測定しました。しかし、本来ガラス管の中の液は右に動いていくはずなのに、なぜか左に動いてしまいました。この原因として考えられるのは何なんでしょうか?同じオオカナダモを使った実験でも、他のグループは液が右にずれて、酸素量の測定ができていました。実験の手順を間違えたつもりはないのですが・・・。可能性として考えられることを教えていただけると嬉しいです。(2008.10.18)

A:まず、右にずれる、左にずれる、ということ自体は、何も意味していない、ということはおわかりでしょうか?装置をどのように配置するかによって、右と左は入れ替わりますので、意味がありません。右に動くはずだ、ということですから、ここでは左にオオカナダモを入れる部分を置いているのでしょうね。装置の仕組みは理解できていますか?ガスの体積を測っているのですが。ガスの体積は温度によって大きな影響を受けますが、温度の管理はきちんとできていたのでしょうか。そのあたりが一番可能性が高いでしょう。(2008.10.19)


Q:先日ワカメとほうれん草を使って薄層クロマトグラフィーの色素分析を行いました。それがあまりうまくいかなかった(ワカメはクロロフィルa、フコキサンチンのみでほうれん草はカロテン、クロロフィルa、b、ルテインのみ)のですが、原因はなんでしょうか。教えてください。また、同時にワカメとほうれん草を重ねて点着したのも行いました。結果はほうれん草とほぼ一致したのですが、これは正しいのでしょうか。それとも違いがあるべきなのでしょうか。(2008.10.17)

A:質問のコツは読んでみたでしょうか?細かい実験条件や、そもそも、なぜ「ワカメはクロロフィルa、フコキサンチンのみでほうれん草はカロテン、クロロフィルa、b、ルテインのみ」だとうまくいかなかったと判断したか、などといった情報がないと、やはり答えられません。重ねて点着した実験の方に関して言うと、重ねたからといって色素が変化するわけではありません。見える色素は見えるでしょうし、見えない色素は見えないでしょう。重ねた時に起こることは、薄い色素が上下の濃い色素に隠れてしまう可能性があることと、微妙に位置が異なって見える色素を重ねることによって、それが本当に違うのか、それとも同じところに点着すればまったく同じ位置に来るのかを確かめることができることです。(2008.10.17)


Q:光合成による溶存酸素濃度は、最大どれくらいの数値になるでしょうか?排水処理最終工程で発生した処理水をビーカーに入れ屋外放置しておくとDO値が14〜21程度の値を示します。ビーカーサンプルは、内壁が少し緑(植物?)に変化はしているのですが。それが光合成により酸素を作り出しているとした場合、そのような数値になるのでしょうか。(2008.10.15)

A:空気と平衡関係にある水の溶存酸素濃度は250 μM程度です。藻類などが盛んに光合成をしている時には、過飽和の状態になって溶存酸素濃度がこれを超すことはありますが、平衡状態ではこれが最大値と考えてよいと思います。質問中の「14〜21程度」というのに単位がついていませんが、単位は何でしょうか?いずれにせよ、モル濃度に換算してみれば、250 μMという値との比較で何が起こっているのか、だいたい想像がつくのではないかと思います。(2008.10.15)


Q:クロロフィル強度と光強度の比はなぜ比例するのですか?(2008.10.14)

A:日本語がよくわからないのですが、植物の葉に含まれるクロロフィルの濃度とその植物が生育している環境の光強度はなぜ比例するのか?という質問でしょうか。その場合、まず比例することが前提になっているようですが、実際には、必ずしもそうではありません。単位葉面積あたりのクロロフィル量は確かに光環境の影響を受けますが、比例関係にあるわけではありません。(2008.10.15)


Q:現在、米国の学生科学フェアに出展するプロジェクトの実験前調査をしているのですが、光合成について質問が二つあります。
1、光合成によって生産されるグルコースの量は旋光計でも測定できますか?(もし可能なら測定時の注意事項などアドバイスしてください。)
2、最近、研究者の方々が、通常の大気中の二酸化炭素濃度よりも高い環境で植物を育てる実験を行っていますが、どのような手段で二酸化炭素を定量化しているのでしょうか?
以上です。(2008.10.10)

A:まず、光合成産物として蓄積されるのはグルコースではなく、スクロース(ショ糖)もしくはデンプンです。ですから、光合成の生産を求めるためにグルコースを測定することはありません。いずれにせよ、糖を定量するために旋光計を使うのはやはり難しいと思います。旋光をきちんと見るためにはかなり高濃度が必要です。また、糖の種類によって比旋光度は異なりますから、さまざまな種類の糖が存在してる場合には濃度に換算することができませんから。次に二酸化炭素の定量ですが、これは普通赤外線をどの程度吸収するかによって測定します。窒素や酸素はあまり赤外線を吸収しませんが、二酸化炭素は赤外線を吸収するので、空気に赤外線を当ててどのぐらい赤外線を吸収するかをみれば、二酸化炭素の量を見積もることができます。ただ、水蒸気も赤外線を吸収するので、その分を補正する必要がありますが、そのあたりの詳しいことは「光合成の測定」に書いてありますので、ご覧頂ければと思います。(2008.10.10)


Q:植物の呼吸について、質問させてください。植物は大気中の酸素をATPを得るため、どの程度利用できるのでしょうか。どの程度という抽象的な質問なのですが、本などに植物は大気中の酸素を利用すると書かれていて、それだけで生長に必要な酸素の取り込みは十分であるとのようにも読みとれることに疑問を感じましたので、質問させていただきます。水耕栽培(DFT)で水中への通気を止めた場合、または脱気水で栽培した場合に植物は枯死(根腐れ症)にまで至ることがあります。また、大雨などで冠水した圃場の作物が全滅するのも、根域の酸素欠乏であることを考えますと、大気中の酸素はほとんど利用できないのではと思ってしまいます。気孔から酸素を取り入れる葉内でのATPの生産は理解できるのですが、生長のため必要なATPの生産ためには、根からの取り込みが主に必要なのではないかと考えていますが、いかがなのでしょうか。特に水中に溶解している酸素が必要と考えているのですが、いかがなのでしょうか。ご指導のほど、よろしくお願いいたします。(2008.9.23)

A:根への酸素供給を絶たれた場合に植物の生育が阻害されるという点は、お考えの通りだと思います。ただし、実際に一番重要なポイントは、空気中では酸素濃度が21%にも達するのに対して、水に溶解している酸素の濃度は非常に低いことです(モル濃度で0.3 mM以下)。酸素供給という点からすると空気から取り入れる方が圧倒的に有利であることになります。ですから、葉では、光合成で酸素を発生することも手伝って、「気孔から酸素を取り入れる」必要性は、そもそもほとんどないのです。一方、根の場合、通常の呼吸では土の粒の間の空気の存在が重要になります。そこで、その空気が冠水などによって水に置き換わってしまうと酸素の取り込みが充分にできなくなってしまいます。しかも、当然のことながら根では光合成をしませんから、光合成による酸素の供給も期待できません。つまり、「根からの取り込みが主に必要」というよりは、「葉では酸素が足りなくなることはほとんど無いけれども根では酸素不足になるおそれがある」ということになります。呼吸およびそれによるATPの生産自体は、葉にとっても根にとっても同じように重要です。水田のイネではいわば常に冠水しているわけですが、イネの場合は茎が一種の通気組織として働き、大気中の酸素を根に供給するとされています。それでも、温度が高くて呼吸速度が高くなった場合などには酸素不足になるようです。そして、根の周りが水で覆われている時には、その水に溶解している酸素濃度が重要になるのはおっしゃるとおりです。(2008.9.23)


Q:はじめまして。火星のテラフォーミングに興味があるのですが、いくつか気になることを質問させていただきます。植物が生きていくための最低必要酸素量(または大気中における酸素の割合)はどのくらいですか?あるいは、必要酸素量(または大気中における酸素の割合)が一番少ない現存陸上植物は何ですか?(火星に植える場合、最低ラインに達していなければ人間が作って持っていく必要があるでしょうし)
 また、火星だと光合成はどうなるのですか?太陽光の強さによる酸素・エネルギーか何かが変わるだけで植物は普通に生きていけるのか、それとも太陽光が足りなくなってもやし同然になるのか、あるいはまた別か。(火星の酸素を増やすために植物を植えたとき、地球にいるときとの光合成による酸素排出量の差)
既出の質問でしたらすみません。また、雑な文で申し訳ありません。(2008.9.13)

A:植物も呼吸をしているので、確かにそのために酸素を必要としますが、光合成で生育する以上、呼吸によって消費する酸素以上の量の酸素が光合成によって放出されます。ですから、大気中の最初の酸素量が0であったとしても、すぐに光合成をできる体制にあれば原理的には植物は生育できます。藻類の場合は、実際に最初の酸素濃度を0にして培養をすることができます。高等植物の場合は、葉と根に分化していることもあり、大気中の酸素濃度だけでは生育するかどうかを判断できません。大気中の酸素濃度が充分であっても、根が水につかっていたりすると根の呼吸が阻害されたりすることは実際に起こります。
 光合成に必要なのは酸素ではなくて二酸化炭素です。火星の場合、大気圧は地球の1%以下ですが、主成分が二酸化炭素なので、光合成を支えることはできるでしょう。光は地球に比べれば太陽からの距離があるので弱いでしょうけれども、これも光合成を支えるのには充分です。あと、どうしても必要なのは液体の水です。液体の水があれば、基本的には植物は生育できると思います。
 ただ、「火星の酸素を増やすために」とありますが、そもそも火星の二酸化炭素の分圧は、地球の酸素の分圧の0.03%程度しかありません。つまり水が十分にある条件で火星の二酸化炭素を光合成によって全て酸素にしても(注:実際には酸素は水の分解から生じるが、光合成においては吸収した二酸化炭素と等量の酸素が生じる)、地球の0.03%にしかならない、ということになります。(2008.9.13)


Q:こんにちは。高校2年の者です。先日学校で、薄層クロマトグラフィーを使った実験を行いました。そこで、葉緑素の分離を調べたのですが、海草と陸上植物ではどちらの方が葉緑素を多く含むのですか?私は、水中だと陸上より二酸化炭素が少ないので、光合成は陸上ほどは活発に行われないため、海草の方が葉緑素が少ないと考えているのですが、実際はどうなのかお教えください。また、α-ナフトールとβ-ナフトールのRf値の違いは、カルボキシル基の場所が違うことだけが原因なのでしょうか。ご教授お願いします。(2008.9.7)

A:「海草」となっていますが、これはワカメやコンブといった一般的な「海藻」を指していると考えてよいでしょうね?形や重さが違うものの間でなにかを比べる時には、「何あたりで比べるか」を最初に決めておく必要がありますが、この場合は面積あたりで比べるのでしょうか。その場合、種類によっても異なりますから、一概には言えませんが、光合成色素の量はむしろ海藻の方が多いかも知れません。光合成色素の中でクロロフィル(葉緑素)だけを比較した場合には、おおざっぱに言ってそれほど違いはないか、海藻の方が少し少なめかも知れません。
 水中だと陸上より二酸化炭素が少ないので、とありますが、水の場合、二酸化炭素として溶けるほかに炭酸イオンや重炭酸イオンとして溶けることができますから、二酸化炭素の供給は、案外豊富です。一方で、光は水の中だとどうしても弱くなります。光が弱ければ光合成の速度は小さくなりますが、一方で、弱い光を何とか集めようと光合成色素の量を増やす場合が多いので、むしろ光が弱い条件では光合成色素の量は多い場合も考えられます(ただし、これも植物の種類や環境要因によって異なります)。また、陸上植物に比べて海藻では光合成色素の種類が豊富で、クロロフィル以外のいろいろな色素を持っている場合があります。このように、いろいろ条件が違うので、なかなか直接的な比較は難しいと思います。
 α-ナフトールとβ-ナフトールはどちらもナフタレン環に水酸基(カルボキシル基ではないですよね)がついたものですから、違いは水酸基の位置だけです。それでもナフタレン環の方向と水酸基の方向のなす角度が2つの化合物の間で違いますから、その極性(水に溶けやすさ)は微妙に異なります。従って、Rf値に差が生じるはずです。僕自身は実験で確かめたことはありませんが・・・。(2008.9.8)


Q:小学校の教師をしているものです。6年理科に、光合成の学習があります。質問箱にも何度か出てきているように、アルコールで色素を抜いてヨウ素溶液ででんぷん反応を見るというものです。子どもたちに、えんどう豆の葉とともに、校庭(中庭)にあるいろいろな植物で調べてみてもいいよといったのですが、その中に、反応が真逆なものがありました。「日光を当てない葉に着色反応があり、日光に当てた葉は白っぽいまま」ということになりました。葉を取り違えたのだと思うのですが、そうでないならばこのような反応を示す植物があるのかということを教えていただきたいのです。(昨年の実験だったので、それが何の葉だったか忘れてしまいました…)(2008.9.1)

Q:光を当てない時にだけヨウ素デンプン反応が出る植物というのは存在しないと思います。例えば、CAM植物などでは夜に二酸化炭素の固定を行いますが、その場合でもデンプンの合成は昼間に行います。また、デンプン以外にヨウ素と反応する物質が陽の当たらないところに作られる可能性も完全には排除できないかも知れませんが、その物質が光によって消えるというのはかなり不自然です。実験が思った結果と違った場合、再現性を見ることが一番大事なのですが、今回の場合、それは望めないので、現時点での結論としては、やはり葉を取り違えた可能性が一番高いように思います。(2008.9.2)


Q:はじめまして。有機合成化学を専門とする大学院生です。人工光合成に関する研究(特に分子触媒を用いるもの)について調べており、質問があります。
1.光合成FAQの1-Q14の文中に
>現在では、光合成に光化学系が2種類働いているのをまねして、光エネルギーによる直列につながった2段階の電子伝達を行なうことまで成功しています。という記述があったのですが、これに関する文献等ありますでしょうか?
2.人工光合成の研究を活発に行っているグループを知っておられればお教え願いたいです。(国内で調べた限りでは、井上晴夫先生(首都大学東京;ポルフィリン系の均一系触媒等)、福住俊一先生(大阪大学;超分子を用いた電荷分離系の研究等)あたりでしょうか?・・・分野違いになるかもしれませんが、国外の研究者等でも、何かアドバイスあればお聞きしたいです。)
3.今まで調べてきて、「人工光合成系の実現に関して、水の酸化に関しては半導体触媒(TiO2等)を使えば原理的には可能である。技術的な壁としては、(A)二酸化炭素固定(還元)触媒の開発と、(B)双方の触媒の受け渡しをする効率的な電子伝達システムの構築が必要である。」といった理解をしたのですが、この理解は間違っていないでしょうか?また先生としては、(A)と(B)(もしくはそれ以外の問題でも)どちらの方が難しい問題であるとお考えでしょうか?(2008.8.30)

A:
1.単なるプレスリリースでよければ、http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2001/pr20011206_2/pr20011206_2.html
に紹介があります。
2.人工光合成の研究は化学や物理の分野で行われるので、残念ながら僕にはよくわかりません。
3.人工光合成というのは、理学ではなく、工学だと思います。つまり、「原理的に」可能であっても、効率が悪ければ話になりませんし、理論的には説明できなくても、うまくいけば成功です。その意味では、水の酸化も含めて全てのステップで現在の効率は極めて低く、どのステップにおいても、何らかのブレークスルーが必要であるように思います。ただし、電子の伝達は、中では実現しやすい部分ではないかと思います。(2008.8.31)


Q:稲の光合成で二酸化炭素を吸収するとき、1,000?ではどれだけ吸収するのですか?それと、野菜などの吸収量も、教えてください。(2008.8.30)

A:これは、ちょうど日本人の体重は何キログラムですか、という質問に似ています。赤ちゃんは3 kg程度でしょうし、お相撲さんは100 kgを超すでしょう。生き物は、工場で大量生産される製品とは違って、規格化されているわけではありません。さらに言えば、二酸化炭素の吸収量は、暗ければ0ですし、光や温度といった環境条件によって大きく変わります。それらの条件を無視して光合成の速度を答えることはできません。ただ、最適条件の光合成の速度であれば、「よくある質問」の所に書いてあります。(2008.8.31)


Q:質問です。モミジは紅葉して赤くなりますが、赤くても葉緑体はあるのですか?(2008.8.28)

A:きれいな赤色になった葉の場合、葉緑体はなくなっていると考えられます。詳しくは「赤い葉っぱの光合成」をご覧下さい。(2008.8.29)


Q:稲の二酸化炭素吸収量の計算方法を教えてください。(2008.8.28)

A:二酸化炭素の吸収というのは、測定するものであって、計算するものではありません。測定した吸収量から光合成の速度を計算するにはどのような方法があるか、という趣旨のご質問でしょうか。その場合、速度は時間変化を意味しますから、二酸化炭素の吸収量を葉の面積と測定時間で割り算すれば求めることができます。具体的には下の方の8月8日の質問に対する回答をご覧下さい。(2008.8.29)


Q:私は、昨年から「果実の光合成」についての研究をしています。昨年は、するかどうかの研究だけだったのですが、今年は「面積あたりのでんぷんの増加量」について、調べています。そこで、ピーマンで実験をしました。やり方は、最初に質量を量り、光に4時間あてたあと再度、質量を量るというものです。この結果から、ピーマン1平方センチメートルあたり、0,02g質量が増えました。つまり、4時間で0,02g光合成して、でんぷんができたということになると思いますが、この結果は、おかしいのですか?また、葉は、同じ条件で、0,1gだったのですが、こんなに差があるんですか?(2008.8.26)

A:重さを量って光合成を見積もる場合、かなり小さな変化を調べることになります。重量というのは、そのままの重さ(生重量)でしょうね。本当は水を乾燥してから測った方が正確な値が出ます。そうしないと、葉や果実がその4時間の間に少し乾き具合になった時は重さが減少して見えてしまいますから。また、方法によってそれぞれ問題点が生じる可能性を考えておく必要があります。1つ目の場合は、測る部分が他の植物体とつながっている場合で、この時は光合成の産物は篩管を通して葉と果実の間を行き来することが考えられます。ですから、増えた重さが本当にその部分の光合成に由来するものか、それとも、他の部分から運ばれてきたものかを区別することが難しくなります。一方、測定する部分を切り離してから光をあてた場合は、切り離したことによって植物体がダメージを受けたり、蒸散に必要な水が供給されなくなって、光合成が遅くなってしまう可能性があります。このあたり、詳しくは、「光合成の測定」をご覧下さい。差については、光合成を専門としている葉と、そうでない果実ですから、そのぐらい変わってもよいように思いますが、確定的なことを言うのは難しいと思います。研究としては、上で述べたような問題点があることを頭においた上で、自分がどう解釈するのかをまとめることが重要だと思います。(2008.8.26)


Q:ピーマンの光合成の回答ありがとうございます。ピーマンの葉に何種類かのカラービニールをかぶせ、下側を空けて実験したのですが、くさらせてしまいました。やはり暑い時だとできないのでしょうか?(2008.8.26)

A:ピーマンの実が腐るかどうかについては専門ではありませんが、一般的には温度と湿度の問題のように思います。下側を空けた、と言うことですが、日本の夏だとやはりかなり温度が上がってしまったのではないでしょうか。湿度の方は、ビニールの内部に水分が溜まるようだと問題になるかも知れません。ビニールをかぶせるのは温室にするようなものですから夏の暑い時にはなかなか大変だと思います。大学の植物関係の研究においても温室の管理は夏の方が大変です。ただ、自由研究としては、結果として予想したものが得られなかった場合でも、例えばピーマンの葉の状態に関して、どのような要因が悪かったのだろうかと考察を加えればよいのではないかと思います。(2008.8.26)


Q:質問の内容ですが光合成によって水はアルカリに変化するのでしょうか?小学六年生の娘の夏休み研究で、川のpHを毎日5回(9:00.11:00.13:00.15:00.17:00)×8日間調べました。pHメーターを使ったので数字を見ながらはっきりと調べる事ができました。毎朝9時に計ったPHが昼間11時〜17時まで計った数値より酸性が強く、その後アルカリ側に数値が変化するのは「光合成」が関係していると思いはじめました。なぜそう感じたのかと申しますと、晴天の真昼に小学校の池の水も計ってみたことろpH 10以上の数値が出て強いアルカリになっていることがわかりました、その池の状態はため池で水全体がほとんどアオミドロで埋め尽くされていました。情けない親の質問で本当に申し訳ございませんが、どうぞ子供にもわかるようなお返事をお願いいたします。(2008.8.18)

A:それは面白い観察ですね。これについては、よくある質問の「藻類によってpHが変わるのはなぜか?」に説明があります。ただ、小学校六年生だとちょっと難しいですね。二酸化炭素を水に溶かしたものを炭酸水ということからもわかりますように、二酸化炭素が水に溶けると酸性になります。とすれば、二酸化炭素がなくなれば(つまり、二酸化炭素が光合成によって使われてしまえば)よりアルカリになる、というところまでは直感的にわかるように思うのですが、いかがでしょうか。(2008.8.18)

Q:昨日の質問内容の中のアルカリ性と酸性の記入する位置を逆に記し質問を投稿してしまいました。娘に怒られてしまいました・・・お手数をお掛けいたしますが、訂正できましたら宜しくお願い致します。小学六年生の娘の夏休み研究で、川のpHを毎日5回(9:00.11:00.13:00.15:00.17:00)×8日間調べました。pHメーターを使ったので数字を見ながらはっきりと調べる事ができました。毎朝9時に計ったpHが昼間11時〜17時まで計った数値よりアルカリが強く、その後酸性側に数値が変化するのは「光合成」が関係していると思いはじめました。小学校の、ため池の調査結果とは逆の変化をしていたのです。朝方の川のpHの数値はアルカリ性側になり→昼間、酸性側に変化していたのです。大きな川の支流の水だったので時間差が生じ、遅れて数値が出てきたのでしょうか?この事は研究のまとめに書くことが出来ずに、我が家の最大の疑問となってしまったのです。(2008.8.19)

A:川の場合、流れているので話が複雑ですね。流れの速さにもよりますが、水が撹拌されるような速い流れの場合、光合成をして二酸化炭素を吸収しても空気中から二酸化炭素がとけ込みますから、pHの変化はさほど大きくならないように思います。一方で、深くて非常に緩い流れの場合は、池で見られるような変化が見られることもあるのではないかと思います。流れの速さ、pHの実際の動き、などによってさまざまな解釈があり得るのではないかと思います。ただ、池の場合と逆に変化するというのは少し解釈が難しいですね。自由研究をまとめるにあたっては、基本的に、得られた結果について、なんらかの解釈をする、言葉を変えて言えば結果を説明する仮説を立てることが重要です。その仮説を試すことができるような実験を考えて、実際に証明できれば一番よいですし、これこれの実験をすれば、この仮説が正しいのかどうか試すことができるだろう、という予想で研究をまとめるのでもよいのではないかと思います。(2008.8.20)


Q:光合成では、日光が必要ですが、電球の光でも光合成が行われるのでしょうか?(2008.8.15)

A:よくある質問の「光合成はどのような光を使いますか?」に既に回答してあるのでご覧下さい。(2008.8.16)


Q:普通、植物の光合成は、晴れの日のほうが盛んにおこなうけれど、曇りの方が盛んに行える植物はありますか?(2008.8.12)

A:光は光合成のエネルギー源ですから、ある瞬間の光合成のスピードが、光を弱くした時に逆に上がる、ということはあり得ません。しかし、暗い環境に適応した植物の中には、強い光があたると、かえってその光が害になって光合成が(光をあて続けている間に)低下してしまう場合があります。ですから、暗いところに置いてあった鉢を、急に直射日光のあたるところに持ち出したような場合には、曇りの日の方がよく生育をする、という状況はあるかも知れません。例えば、胡蝶蘭などは直射日光を当てないで、光が半分ぐらいまで弱めて栽培した方がよく育ちます。また、光合成をするためには、空気中から二酸化炭素を取り込む必要があります。二酸化炭素は葉の気孔を通して取り込みますが、この気孔は土が乾燥していたり、空気が乾燥していたりすると閉じてしまって、そのために光合成があまりできない場合があります。曇りの日は湿度が高くなるでしょうから、気孔の開き方によっては、曇りの方が光合成が盛んになる可能性はあります。(2008.8.13)


Q:夏休み自由研究中ですが、疑問がでましたので質問します。よろしくお願いします。経緯:毎年つる性の豆の栽培研究をしています。昨年の猛暑では、北栽培(午前中10時まではなんとか日が当たる)では、家の南側のものに比べて生育が大変遅かったのですが、最終的には最も収穫量が多くなりました。そこで今年は、あまり実用的な方法ではありませんが、生育前半は家の南側で過ごさせて生育量を十二分に得て、梅雨明け後は家の北側に移動させて、さらにもっと多くの収穫量を得ることができないか研究することにしました。今年の研究の具体的な内容:家の南北で二鉢づつ栽培し、梅雨明け後1鉢づつを南北で入れ替えました。1鉢2株植えです。現在の4鉢は、北のみ栽培(日の出〜10時まで日向)、北→南栽培、南のみ栽培(12〜18時が日向)、南→北栽培になっています。途中経過:予想に反して、現在収穫量が最も多いのが北のみ栽培で、最も少ないのが最も期待した南→北栽培です。この南→北栽培では前半の生育量は十分に確保されたのですが、南から北への移動後は花上がりが遅く落花も多く、なんだか「生育の調子が狂った」のが持続しているような感じです。疑問点としては、生育途中に栽培環境を大きく変える(家の南側から北側に移動するやその逆の移動)ストレスは、実はものすごく植物にとって大きいことで、さらに、開花収穫が始まってしまうと、もう大きな環境変化に対応不能な状態に入ってしまっていたのではないか・・・と思われたことです。そこで質問ですが、今回の自由研究の結果、特に南→北移動栽培で低収になった要因で、光合成メカニズムとして、思い当たることがあったらご教示いただけないでしょうか。よろしくお願いします。(2008.8.10)

A:家の北側と南側でのいろいろな環境要因の中で、一番大きく変わりそうなのは日照、次いで日中の温度と湿度でしょうか。日照については、薄暗いところで育てた植物を急に明るいところに移動させると、極めて大きなストレスがかかることが知られています。一方で、どちらも直射日光があたる条件で、日照の時間だけが変わる場合には、それほど大きなストレスはかからないと思いますが、光合成の効率は少し下がるかも知れません。また、植物は、日照の向きに応じて葉を一番よい方向に向けているものです。ですから、特に日照時間の短い北側では、場所は同じで鉢の向きを変えただけでも生育に影響が出る可能性すらあります。
 もう少し細かいメカニズムとしては、光合成色素の量なども問題になるかも知れません。明るいところでは、少ない色素で光を集めることができますから、色素の量を減らしても大丈夫ですが、日照時間が急に短くなると、十分に光を集めることができない、などということも可能性としては考えられます。この場合も、日照時間というよりは、光の明るさの変化が起こった場合に顕著に観察されます。温度は、酵素の反応速度に影響を与えますから、やはり、酵素の量などを通じて、同様の変化が引き起こされる可能性があります。また、湿度は、光合成にとって重要な気孔の開閉に影響を与えます。いずれにしても、環境要因の急激な変動がストレスとして植物に働くことは間違いのない事実です。ご質問中に「開花収穫が始まってしまうと」とありましたが、実際には、開花収穫がきっかけになるだけではなく、そもそも葉が十分に展開しきってしまうと、大きな環境変化に対して十分に対応できないということがあります。いったん大きくなった葉でも、ある程度の変化を起こすことはできますが、通常は大きな変化には対応できません。
 最後に、光合成とは関係ありませんが、花の形成は光環境がシグナルになっている場合があります。その場合、花の付き方自体が光環境の変化によって影響を受ける場合もあるかと思います。(2008.8.11)


Q:小学生の自由研究なのですが、光合成について調べています。分からないことがありますので、よろしくお願いします。昨年、金魚の水槽の水が、なぜいつも緑色になるのか?その正体は何なのか?という事を調べました。そして、それが植物の一種で「藻」らしいことが分かり、光合成しているんじゃないかと思いました。今年は、その「藻」が光合成しているのかどうか調べたいと思っています。酸素を吐き出しているのか?でんぷんを作っているのか?の2点を調べたいのです。そこで、でんぷんを作っているのかどうか調べるのに学校で習ったように、ヨウ素液を付けて調べたいのです。だけれど、ただヨウ素液を付ければ言い訳ではないと思うのですが、そこからどうやっていいのか困っています。「藻」をどのような状態にしてからヨウ素液を付ければいいのか、家庭で出来るような方法があれば教えてください。(2008.8.9)

A:葉の光合成を調べる時に、お湯で葉っぱを柔らかくしてからエタノールで脱色して、そこにヨウ素液をかける方法の他に、たたき染め法(たたき出し法)という方法があります。たたき染め法では、葉を濾紙にはさんで上からたたいて、葉の内容物を濾紙に写し取り、これを漂白剤で脱色してからヨウ素液につけてデンプンを検出します。ですから、金魚の水槽の水を濾紙で漉してみてはどうでしょうか。そのあと、漂白剤の液に10分ほど浸してから、軽くゆすいで、ヨウ素液につけてみると、デンプンがあれば染まるのではないかと思います。ただ、僕自身やったことがないので、断言はできませんが・・・。
 始めてやる実験の場合は、その方法自体がうまくいっているかどうかをチェックする必要があります。例えば、ヨウ素デンプン反応が出ることを確認している葉っぱを水と一緒にミキサーに入れてジュースにして、ちょうど金魚の水槽の水と同じぐらいの緑色にしてから、上で説明したように濾紙で漉して試してみるのもよいかも知れません。それでうまくいけば、方法は大丈夫でしょうから、今度は本番の水槽の水でやってみるのでしょう。僕も結果が知りたいので、もしよければ、実験をしたあと結果を教えて頂ければと思います。(2008.8.9)

Q:8月9日 「藻」のでんぷん反応の調べ方についての質問に、とても分かりやすくご回答いただきありがとうございました。実験の結果の報告と、また質問させてください。まず、枝豆の葉をミキサーにかけて、ちょうど水槽の水と同じくらいの緑色にして、ろ紙でこし漂白してから試してみました。ほんのわずかでしたが、でんぷん反応がありました。そして、同じ方法で「藻」にも挑戦してみました。結果は・・・でんぷん反応は見られなかったです。この実験をする前に、緑色の水槽の水をペットボトルに入れ、それを日光に当てて光合成をさせ集まった気体を試験管に移し、火をつけた線香を近づけて酸素の反応を調べるという実験をしました。線香の火は少し大きくなったので、藻が酸素を吐き出していたんだと思いました。だから、きっとでんぷんも反応があるだろうと予想していたのに、実際はでんぷん反応が見られませんでした。それで、私が考えたのは・・・植物はみんな光合成をしてでんぷんを作ると思っていたのに、でんぷんを作らない植物もあるのかもしれない?でんぷんを作っているけど、微量すぎて今回の実験では反応が出なかった?分からない事だらけなんですけど、でんぷん反応は見られなかったけれど、酸素の反応があったので、光合成をしていると思っていいのでしょうか?でんぷんを作らない植物もあるということでしょうか?またいろいろ調べてみたいので、何かいい方法があれば、教えてください。よろしくお願いします。(2008.8.18)

A:実験というのは、やること自体も大切ですけれども、得られた結果を精確に解釈することも大切です。一般的に実験を解釈するあいに非常に難しいのは、「ない」場合と「少ない」場合を見分けることです。今回、枝豆の葉で検出されたデンプンが「ほんのわずか」だったのがちょっと気になりますね。枝豆では、非常にはっきりした反応が見られて、一方で「藻」では見られなかった場合は、葉に比べて「藻」ではほとんどデンプンを貯めない、と解釈してもよいように思いますが、比較する対象でデンプンがわずかだったとすると、それよりも少し量が少なければもう検出できないかも知れません。ですから、今の時点では葉よりもデンプンは少ない、という解釈に留めておいた方がよいように思います。他の方法で調べたいところではありますが、ぱっとよい方法を思いつきません。もし、材料がたくさんあるのでしたら、濾紙でこす量を多くして、もっと濃い緑の状態でもう一度比較すると、もう少しはっきりしたことが言えるかも知れません。
 酸素を出している以上、光合成をしていると結論してもよいと思います。ですから、光合成をしているけれども、デンプンの量が少なくて検出できなかったか、もしくは、デンプン以外ものが光合成の産物となっているか、のどちらかでしょう。知識としては、植物の葉の場合、種類によってはデンプンを貯めないものもあります。例えば、イネ科の植物の多くではデンプンの代わりにショ糖を貯めることが知られています。藻類では、少なくともかなりの種類でデンプンか、またはデンプンに似た物質を貯めることが知られています。ただ、デンプンを貯めない藻類というのがどのくらいいるのかについては僕は知識を持っていません。(2008.8.18)


Q:見かけの光合成速度は、吸収した二酸化炭素(mg)÷葉面積(10平方cm当たり)÷時間(1時間当たり)で計算するそうですが、単位はあるのですか?あったら教えてください。あえて単位をつけずに、例えば光合成速度は5であるといっても大丈夫でしょうか?教えてください。(2008.8.8)

A:その計算方法の場合、単位はそのまま、mgCO2 dm-2 h-1 になります。ただ、最近は二酸化炭素量をモルで示すのが原則なのと、dmという単位は使わなくなっているので、二酸化炭素(μmol)÷葉面積(1平方m当たり)÷時間(1秒当たり)で示します。その場合は単位は、μmol m-2 s-1 になります。単位をつけないと、別々の実験を比較することができません。ある人の5というのと別の人の10というのが、どのような関係にあるのか、単位なしではわかりません。単位がついていて同じであれば、倍だな、とわかりますし、違っていても換算して比較することができます。ですから、やはり単位はつけないといけませんね。(2008.8.9)


Q:光合成が盛んになると、水分を多く必要とするという話を聞いたことがありますが、鉢植えの水が早くなくなるという現象はおきますか?教えてください。(2008.8.8)

A:「光合成が盛んになると」というよりは、「光合成を盛んにするためには」というべきかも知れません。光合成をするためには、気孔を開いて二酸化炭素を取り込む必要がありますが、気孔を開くとそこから水が蒸発してしまうのです。ですから、光合成を盛んにしている状態では、鉢植えの水が早くなくなるでしょう。水がなくなって土が乾燥すると、ひからびるのを避けるために植物は気孔を閉じます。そうすると、二酸化炭素を取り込むことができなくなりますから、光合成の速度は低くなってしまいます。(2008.8.9)


Q:海藻であるコンブも光合成をすると思いますが、コンブは光合成を行って、酸素を排出するのでしょうか?コンブに気泡などがついているところを見たことがないのですが、海草であるアマモのように酸素を排出しないのなら、光合成の結果、コンブの中ではどのような変化が起こっているのですか?(2008.8.5)

A:コンブもやはり酸素を出すタイプの光合成をしています。ですから、酸素は出すはずです。ただ、僕自身はちゃんと海に潜って観察したことがないので泡として出すかどうかはよく知りません。一般論としては、泡を出すか出さないかは、光合成の他に、植物の形態にも依存します。例えば、よく光合成の実験に使われるオオカナダモでは、軸の部分を切って逆さまにすると、軸の切り口から泡が出てきて酸素を集めるのが簡単になります。つまり、気体が一カ所からまとまって出てくればくるほど目に見える泡として観察しやすい、ということがあります。もしかしたら、アマモとコンブでは構造が異なるのかも知れません。あと、コンブの方がアマモより温度が低くてより水深が深いところに生育するように思いますから(これも実際に観察した経験はありませんが)、コンブの方が光合成の速度が低くて泡を観察しづらい、ということもあるかも知れません。(2008.8.7)


Q:塾の講師です。小中学生に算数・数学とともに理科を教えています。植物による恩恵として日頃より光合成を力を入れて生徒に教えているつもりです。そんな時、特に興味を持ってくれた生徒に対し、カナダ国旗にもなっているサトウカエデを例にとし、「ちょうど人間が口で摂取したデンプンを消化液を使って糖に変えて小腸柔突起で吸収する」のと同様に、光合成により葉で作られた「デンプンは糖に変えられ師管を通り植物の必要な部分に運ばれる」その運ばれる途中の糖を採取し煮詰めたのがメープルシロップと説明しました。子供に説明した後でこんな説明はないなと自分でも恥じておりますが、まずこの説明はどの程度正しいのでしょうか?またもしこの説明がある程度正しいとすれば、植物の葉における光合成の産物がなぜデンプンであって糖ではないのかが私としては大きな疑問となったわけです。ぜひ教えて下さい。ちなみにこのサイトはこの質問をどこかに投げ掛ける目的でたどり着いたもので、初めての投稿となります。(2008.7.24)

A:基本的にはご説明の通りでよろしいかと思います。光合成の直接の産物はリン酸がついいた三炭糖(トリオースリン酸)という物質で、これをどのように貯めておくか、というのが植物にとっての問題となります。グルコース(六炭糖)というのが考えられますが、グルコースという糖は他の物質との反応性が高いので、高い濃度になると生物に悪影響をおよぼします(糖尿病などもそうですね)。なので、普通はより安定なショ糖かデンプンの形で貯蔵します。実際にショ糖をかなりの濃度まで貯蔵する植物はあります。いわゆるお砂糖を取るサトウキビなどがそうでしょう。しかし、ショ糖を高濃度に貯めると、浸透圧が上がりますから、それに対する対策が別途必要になります。その点、デンプンにしてしまえば、水にほとんど溶けませんから、浸透圧の心配をする必要がありません。そこで、多くの植物ではデンプンを貯蔵物質として使います。ただ、デンプンは水に溶けないので、葉から根や他の器官に輸送する時(転流といいます)には不便です。従って、転流をする場合には、いったんデンプンを分解してショ糖(場合によっては他の糖の場合もあります)にしてから運ぶわけです。(2008.7.25)

Q:「植物の葉における光合成の産物がなぜデンプンであって糖ではないのか」に対するご回答有難うございました。光合成の産物を貯蔵するにあたり、水に溶け易い糖ではなく、水に溶けにくいデンプンとして蓄えることで浸透圧の問題を回避できるとのご回答、よく納得できました。ただまだ私の中でもやもやしている点は、デンプン製造現場となって葉緑体において、できたものは順次糖に変えて転流させることになっているのであれば、この現場にあっては、「デンプンではなく、直に次工程に送り出せる形の糖であって良いのでは」ないかと思うのですが、そうなってはいないわけですから、そこのところ理由を教えていただければありがたいです。(2008.7.25)

A:なぜ、葉緑体では光合成産物を一度デンプンに変えるか、という点に関しては、基本的に転流の能力を超えた部分を「しょうがないので」デンプンに変えておく、ということだと思います。葉の中のデンプンの量は、昼間に増加して夕方に最大となり、夜の間に減少して明け方に最低になります。つまり、光合成の能力が転流の能力を上回るとデンプンが蓄積し、下回るとデンプンが減少すると考えられます。光合成産物が直接転流される場合、上記のトリオースリン酸の形で葉緑体から運び出され、細胞質の中でショ糖に変えられて他の器官に輸送されます。このショ糖の合成にはショ糖リン酸合成酵素(SPS)という酵素がはたらきますが、この酵素の活性が低いと葉の中のデンプン量が増加し、この酵素の活性が高いとデンプン量は少なくなる、という実験結果があります。このことも、葉の中のデンプンの蓄積は光合成による炭素固定量と転流による光合成産物の輸送量のバランスによって決まっていることを示しています。(2008.7.25)


Q:こんにちは。夏休みの自由研究で光合成についてやろうと思っています。まず、ビンの中でろうそくに火をつけ、ふたをして消します。それまでの時間を計っておきます。その後、ビンの中にほうれんそうを入れて、光合成をさせ、もう一度さっきと同じことをします。酸素が増えているわけだから燃える時間が長いはずです。友達と一緒に考えたアイデアなんですが、こんなに上手くはいくのでしょうか?(2008.7.21)

A:これは非常によい質問です。ホウレンソウが光合成をすれば酸素を出すのだから、ロウソクの燃える時間が長くなるはずだ、というわけですね。確かに、原理的には良さそうです。ただし、このような実験の場合、やる前に2つのことを考えるとよいでしょう。
 一つ目は、実際の具体的な手順です。漠然と考えている時には良さそうに思えても、実際にやろうとすると難しい、という場合はよくあります。実験の細かいところまで、どんな大きさのどんな形のビンを使うのか、、ホウレンソウは葉っぱを1枚使うのか、ロウソクにはどうやって火をつけるのか、そのようなことを、頭の中で一度思い浮かべて実験してみます(一種の思考実験ですね)。最初にビンにロウソクを入れて火をつける時は、中の空気と外の空気は同じですから、別にどのようにしても大丈夫でしょうけれども、ホウレンソウを入れて光合成をさせたあとは、ビンの中の空気は少し酸素が増えているはずですよね。その空気を逃がさないようにロウソクに火をつけるにはどうしたらよいか、ということなどを考える必要があります。
 もう一つは、少し難しいですが、量の見積です。空気の中に酸素と二酸化炭素がそれぞれどのぐらい含まれているかは知っていますか?酸素は21%、二酸化炭素はだいたい0.04%です。最近、二酸化炭素濃度が上がっている、といっても酸素に比べると薄いのです。光合成では、二酸化炭素を吸収して酸素を発生しますが、その反応は1対1で起こります。つまり、二酸化炭素を吸収した分だけ、酸素が出るのです。これはロウソクが燃える時も同じで、酸素が吸収された分だけ二酸化炭素がでます。そうすると、十分に光合成をさせたあとに酸素の濃度がどうなるか考えると、二酸化炭素の分が酸素になって合計21.04%ということになります。とすると、もし最初にロウソクが例えば21秒で燃え尽きたとすると、予想としては、それが21.04秒ぐらいにになることになります。0.04秒を見分けるのはちょっと無理ですよね。とすれば、何とか別の手だてを考えなくてはなりません。例えば、最初にロウソクを入れて火をつて一定時間おいてから消します。そうすると、酸素濃度が減って、二酸化炭素濃度が増えます。例えば、酸素濃度が10%まで落ちるたとすると、二酸化炭素濃度は10.04%になる計算になります。そこからすぐにもう一度火をつけた場合と、そこにホウレンソウを入れて光合成をさせてから火をつけた場合なら、酸素濃度が10%と20%にそれぞれなるはずですから、差を見ることができるかも知れません。
 もっとも、ある程度考えたあとは、まずは実際に実験してみることをお勧めします。実際に実験してみると思わぬ発見があって、新しいアイデアの実験につながるかも知れません。(2008.7.22)


Q:今回ピーマンに何種類かのカラービニールをかぶせ成長の具合を実験したいのですが、ピーマンが光合成するかどうかも実験したくて。それはヨウ素溶液などにつければわかりますか?(2008.7.19)

A:「ピーマン」というのは「ピーマンの実」ということですよね。実は、ピーマンの実でヨウ素デンプン反応が起こるかどうか、やったことがないので知らないのです。葉っぱと違って厚みがあるので、ちょっと難しいかも知れません。表面をカミソリで薄くそぐなどして工夫する必要がありそうです。あと、たとえピーマンの実のデンプンがあったとしても、それがすぐにピーマンの実が光合成をしている証明にはならない点にも注意して下さい。つまり、光合成の産物は、ピーマンの実で作られなくても、ピーマンの葉っぱから運ばれるかも知れませんよね。いずれにせよ、一度実験をしてみて、その結果を見て、もしうまくいかない点があったら、ではどうしたらよいだろうか、と考えて実験をすることができれば、本当の「研究」になります。(2008.7.19)


Q:クロロフィルをクロロフィリドにすると活性酸素を発生しなくなるのか教えてください。(2008.7.17)

A:ある色素が活性酸素を生成するかどうかは、エネルギーの吸収効率、吸収したエネルギーをどれだけ熱なり光合成なりに使うか、そして酸素との反応性の3つに依存しますから、クロロフィルであっても、条件によってどの程度活性酸素を発生するかはさまざまです。クロロフィルとクロロフィリドではその吸収スペクトルはあまり変わりませんから、エネルギーの吸収効率自体は変わらないはずです。残りの2つの要因がクロロフィルとクロロフィリドでどの程度異なるかは知りませんが、どちらも色素の存在状態(例えばタンパク質に結合しているかどうか)によって大きく影響を受けますから、一般論として議論するのは不可能だと思います。(2008.7.18)


Q:はじめまして。質問なんですが、エアープランツも他の植物同様に光合成をするのでしょうか?もし、光合成をするなら、水をあまり必要とはしないのにどういう仕組みで光合成をするのでしょうか?ご存知でしたらお教えください。お願いします。(2008.7.13)

A:エアープランツやサボテンなど、水をあまり必要としない植物ももちろん光合成をするのですが、その場合、CAM型と呼ばれるやり方で光合成をする場合が多く見られます。光合成の反応では、基質に水を用いますが、その量はさほど多くなく、植物が必要とする水は、実際には葉の気孔から蒸発してしまう水がほとんどです。気孔からの水の蒸発(これを蒸散といいます)は、気温が高くて湿度が低い昼間に盛んなので、CAM型の光合成を行なう植物では昼間に気孔を閉じて水の損失を防ぎます。ただ、そうすると気孔から二酸化炭素を取り込むこともできなくなってしまいます。そこで、蒸散の少ない夜の間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、それを一度リンゴ酸などの有機酸の形に変えて細胞の中(正確には液胞の中)に貯めておくのです。昼間には、このリンゴ酸から二酸化炭素を作り、その二酸化炭素と光のエネルギーを用いて光合成をするので、気孔を閉じておいても大丈夫なのです。(2008.7.14)


Q:現在生物の授業で薄層クロマトグラフィーの実験を行ないました。Rf値がカロチン>クロロフィルa>クロロフィルb>ルテインになったのですが、分子量はクロロフィルb>クロロフィルa>キサントフィル>カロチンになりました。分子量とRf値の関係を調べてみたのですが明確な答えがわからなかったので教えて頂きたいです。(2008.7.12)

A:Rf値は分子量とは強い関係がありません。「よくある質問」には薄層クロマトグラフィーの実験に関する質問が載っていますので、まずはそちらをご覧下さい。(2008.7.13)


Q:光合成色素に色素の吸収波長帯のレーザーを当てるとどうなりますか?(2008.7.12)

A:吸収されます。高出力のレーザーだったら吸収したエネルギーによって色素自体が破壊されるでしょうね。(2008.7.13)


Q:中学校のときオオカナダモで光合成の酸素、二酸化炭素に関する実験をしましたが、何故オオカナダモを使うのでしょうか?また、他の水中植物でも同様の実験ができるのでしょうか?(2008.7.11)

A:別にオオカナダモではなくても実験をすることは可能です。実際にクロモなどは実験に使われているようです。ただ、中学校で実験をする場合、近くにうまく水中植物が自生している場所があるとは限りませんから、どうしても市販していて簡単に手に入るものを材料とする場合が多くなります。その意味では、オオカナダモは金魚屋さんなどで簡単に手にはいるのが魅力です。しかし、オオカナダモは外来植物なので、最近は、日本に自生している水中植物を使おうという動きもあります。(2008.7.11)


Q:高校一年生です。夜遅くに申し訳ありませんが、カルビンベンソン回路が回路系になっていることの利点と欠点を教えてください。お願いします。(2008.7.11)

A:夜遅くに質問頂いても、答えるのはいずれにせよ朝になってからです・・・。それはさておき、僕も、この手の課題を学生に出すことがありますが、この手の問題には「正解」があるわけではありません。「回路になっていないカルビン回路」というものがあれば、それと比べることによって利点と欠点を考え、また実験的に証明することさえできるかも知れませんが、実際にはそのようなものがないので、基本的には想像するしかないのです。ですから、僕が課題を出す時にも、何か「正解」を求めているわけではなく、むしろ学生さんが課題をきっかけに「考える」という作業をしてくれることを期待しているわけです。とは言え、例えばどんな「考え方」があるかを少し考えてみましょう。まずは、回路になっていない反応で二酸化炭素を固定するとしたらどうなるでしょう?カルビン回路では既にある有機物に二酸化炭素をくっつけて、そこからいろいろ反応をさせて、最後の段階で最初に使った有機物を再生する形の回路になっています。植物の場合、有機物は全て二酸化炭素を固定して作るわけですから、出発点に有機物を使う以上、その有機物はもともと二酸化炭素だったはずで、基本的にはニワトリと卵のようにぐるぐる回っていることになります。ということは、回路ではなく二酸化炭素を固定するためには、最初に有機物を使わず、二酸化炭素から直接有機物を作らなくてはいけないはずです。そのような反応を考えた時には、どうなるでしょう・・・といった具合に考えてみるのがよいと思いますが。(2008.7.11)


Q:青色のBTB溶液に息を吹きこませ緑色にした試験管にオオカナダモを入れ、光を当てたところBTB溶液が青色になるとき、
○それは溶液中の二酸化炭素が減少してアルカリ性になったのか
○それは溶液中の酸素が増加してアルカリ性になったのか
区別できません・・・。それと↑の緑色のオオカナダモの試験管をアルミニウムはくで包んだものに光を当て、BTB溶液が黄色になったときそれは
○溶液中の二酸化炭素が増加して溶液が酸性になったからか
○溶液中の酸素が減少して溶液が酸性になったから
かどっちか考えても区別できないのでよければ教えてください。(2008.7.8)

A:「質問のコツ」は読みましたか?そちらに、どのような質問をすれば、明確な答えが得られるか、ということが説明してあります。自分で自分の質問の意味がわからない時はよい質問になりません。ここで質問されていることは、光合成のメカニズムからは答えを得ることはできません。二酸化炭素と酸素のどちらがpHに影響を与えるか、という化学の問題です。「よくある質問」にはBTPの実験についての記述もありますし、二酸化炭素とpHの関係についても書いてあります。これらを読んで、自分が本当に疑問に思う点を再度ご質問頂ければきちんと回答できると思います。(2008.7.9)


Q:光合成が行われない夜間は、逆に二酸化炭素を排出すると聞いたのですが、本当ですか?(2008.7.7)

A:2つ下の質問に対する回答をご覧下さい。(2008.7.7)


Q:温暖化、エネルギー利用、食料危機などの問題を人間が人工的に光合成をする事で全て解決できると思いますが、何故いつになってもできないのでしょうか。(2008.7.5)

A:人工光合成で問題が解決する、と思う理由を考えてみることが大切だと思います。おそらく、人工光合成の工場ができると、そこでどんどん二酸化炭素が吸収されてエネルギーと食料が生み出される、というイメージをお持ちなのではないかと思います。しかし、人工光合成でも光合成である限りは光を必要とします。そして光というのはエネルギーとして非常に「薄い」のが特徴なのです。太陽から地球に降り注ぐ光のエネルギーは膨大で、たった1時間分で人類のエネルギー消費の1年分をまかなえます。ところが、面積あたりにすると1平方メートル当たり1.4 kWと、とたんに家庭で使うような単位になります。つまり、太陽の膨大なエネルギーを使うためには光を受ける膨大な面積が必要なのです。植物の葉っぱが、あのように薄く広がっているのも、その薄いエネルギーを集めるための工夫として考えることができます。ですから人工光合成の工場が実現したとしても、それは膨大な面積を必要とします。ちょっとそこらに建てるというわけにはいきません。かといって、山の森を切り開いて作ったのでは少なくとも地球環境の問題の解決にはなりません。日本では無理としても、広い砂漠に工場を建てるという選択肢はありますが、それであれば、技術的に未完成な人工光合成の工場ではなく、充分実用化している太陽電池のパネルを置いてもよいはずです。それがそのようになっていないのは、膨大な面積のパネルを置くこと自体が、少なくとも現時点では経済的に引き合わない、ということが原因なのでしょう。経済性が原因であるとすれば、人工光合成の技術が完成しても結局は同じことでしょう。植物は地球上の広い面積を覆って光合成をしています。それを人間が破壊し続けるのであれば、たとえ人工光合成の技術が完成したとしても、問題の解決には全く役に立たないのではないかと思います。(2008.7.5)


Q:私のお母さんが「植物は昼間太陽の光が当たっているときに酸素を吸収して二酸化炭素を出す、夜になると二酸化炭素を吸収して酸素を出すんだ」と言っているのですが本当ですか?私はちょっと違うと思っているのですが、教えていただけますか・・・(2008.7.1)

A:人は呼吸によって酸素を吸収して二酸化炭素を出しますよね。光合成は呼吸とは逆向きの反応ですから、二酸化炭素を吸収して、酸素を出します。光合成は、光を使う反応なので、当然、この反応は昼間に起こります。一方で、光のない夜の間は、植物も人と同様呼吸をしますので、酸素を吸収して二酸化炭素を出します。というわけで、お母様がおっしゃっているのはちょうど逆ですね。自分の子供を試したのかな?(2008.7.1)


Q:今度、花を植える時に、せっかくなら二酸化炭素を多く吸収するような、光合成をたくさんする花を植えてみようと考えています。やはり葉っぱが大きい花や、C4型の光合成をする花が良いのだろうと思っているのですが、具体的にどの花かと考えると、なかなか浮かんできません。何か最適な花はないでしょうか。(2008.6.28)

A:葉っぱが大きければ、それだけ光合成もたくさんしますから、大きい葉っぱを持っているものがよいことは確かでしょう。比較的大型のC4植物としてはケイトウなどがあります。ただ、C4型の光合成が効率が高いのは、高温で乾燥気味の場所の話です。じめじめした暗いところではケイトウもC3植物に負けてしまうかも知れません。光合成の面から考えるのも面白いのですが、植える場所との相性も大切です。基本的に光合成をたくさんする植物は、成長が早くてどんどん大きくなります。最初の一年は実験をしてみるのもよいかも知れません。いろいろな植物を植えてみて、その場所で何が一番よく育つのかを見るのは面白いと思います。(2008.6.30)


Q:授業で光合成の同化色素の分離実験を取り扱ったのですが。
・色素抽出液に水ではなく有機溶媒を使用したのはなぜか?
・展開で色素が分離しないまま上昇してしまった原因は何か?
・Rf値が班によってばらつきがあったのはなぜか?
・イチョウの葉が秋になると黄色になるのは葉の中でどのような変化が生じたのか?
これらの疑問が拭えません。質問の数も多く、節操な質問となってしまいご迷惑もおかけしますがご回答のほどよろしくお願いします。(2008.6.28)

A:別に質問の数が多いのは全く構わないのですが、「質問のコツ」は読みましたか?そちらに、どのような質問をすれば、明確な答えが得られるか、ということが説明してあります。また、「よくある質問」には色素と有機溶媒の関係などが説明されています。これらを読んで、自分が本当に疑問に思う点を再度ご質問頂ければきちんと回答できると思います。(2008.6.28)

Q:素早い回答ありがとうございます。さきほど質問させて頂いたものですが、試験週間中ということもあり「質問のコツ」のを読んでいませんでした。典型的な丸写しタイプとなっていてお恥ずかしい所存です。「よくある質問」のほうも拝見させていただき疑問点も解決いたしました。質問への対応真にありがとうございました。(2008.6.29)

A:解決して何よりです。(2008.6.30)


Q:光合成に使われる光エネルギーは、太陽エネルギーの約何%ですか?(2008.6.24)

A:せっかくだから太陽から出発しましょう。太陽の放射するエネルギーは3.8 x 1026 Wと言われています。この光は四方八方に広がるので、このうち地球に届くのは20億分の1程度の1.8 x 1017 W程度です。さらにこのうち、大気圏と通って地表に届くのは約半分、届いた光の内光合成に使える可視光の光はさらにその半分です。このうち、どれだけが植物や藻類に吸収されるのかという地球規模の見積は残念ながらよくわかりません。
 次に植物の葉にあたった光のエネルギーの行方を考えてみます。あたった光の内、光合成色素によって吸収される割合が約9割、吸収された光によって光合成の反応が引き起こされる割合はほぼ100%です。ですから、「使われるエネルギー」ということでしたら、約90%ということになります。光合成の初期反応の結果、光のエネルギーはATPやNADPHといった化学エネルギーに変換されますが、この化学エネルギーはこの「使われる」光エネルギーの最大で38%程度です。そして、この化学エネルギーで二酸化炭素から糖が合成されますが、合成された糖の持つエネルギーは使われたATPやNADPHのエネルギーの80%程度です。つまり、糖の合成の段階で、糖の持つエネルギーは吸収された光エネルギーの30%程度になります。これが、光合成の反応としての効率の上限の値となります。実際の植物では昼には光が強すぎて無駄になる分があるかも知れませんし、夜には(実際には昼間も)呼吸によって失われる分があるでしょう。これらも計算に入れると、畑などで植物が有機物を固定する効率は、吸収した光エネルギーに対して最大でも5%程度、普通の森などでは1%程度だと見積もられています。(2008.6.25)


Q:孔辺細胞の葉緑体の光合成について質問です。気孔から取り入れた二酸化炭素は、どうやって孔辺細胞の葉緑体まで運ばれるのでしょうか。具体的な場所があれば教えてください。また、葉緑体は孔辺細胞以外にも植物内に分布しているのでしょうか。もしあるとしたら、気孔と孔辺細胞が近いことから、素早く孔辺細胞の葉緑体に二酸化炭素が運ばれるというようなことがあるのでしょうか。よろしくお願いします。(2008.6.15)

A:葉の細胞の内、表面にある表皮細胞は一般的に葉緑体を持たないのですが、例外的に気孔を形づくる孔辺細胞だけは葉緑体を持ちます。一方で、葉の内部にある葉肉細胞は、基本的に葉緑体を持ちます。ですから、葉緑体のほとんどは葉肉細胞(と場合によって維管束の周りの維管束鞘細胞)にあり、孔辺細胞の葉緑体は量的には大きな割合を占めるものではありません。
 細胞内への二酸化炭素の取り込みは、ここから取り込まれる、といった特別な場所があるわけではなく、細胞表面から直接取り込まれると考えられます。葉緑体の細胞の中での位置を見ると、ほとんどの場合、細胞壁に張り付くように分布していて細胞の中心には存在しません。これは、細胞表面から取り込まれる二酸化炭素を少しでも有効に利用する戦略として解釈することができます。特に葉の裏側では細胞と細胞の間に隙間(細胞間隙)があり、二酸化炭素は気孔からこの細胞間隙に拡散してさらに細胞内に取り込まれます。孔辺細胞はある意味で気孔そのものですから、孔辺細胞の葉緑体は葉の内部にある葉肉細胞の葉緑体よりは、二酸化炭素を取り込みやすいでしょうね。話が細かくなりますが、取り込みには、アクアポーリンという水や二酸化炭素の通る穴として働くタンパク質が関与していることがわかっています。ただし、「取り込み」と言っても、エネルギーを使って二酸化炭素を濃縮するようなシステムではなく、光合成をしている状態では、二酸化炭素濃度は外気>細胞間隙>細胞内>葉緑体内とだんだんと減っています。つまり、アクアポーリンなどの助けは借りているとは言え、二酸化炭素は基本的には拡散によって葉緑体に取り込まれていると考えてよいと思います。(2008.6.16)


Q:植物がしているように、二酸化炭素から有機物を作ることは可能ですか?可能ならどのような実験が効率がいいのでしょうか?(2008.6.15)

A:これは、酵素などの力を借りず人間が化学反応を使って、という意味ですよね?そうだとすると、可能ではありますが、それほど簡単ではありません。有名な尿素の化学合成の場合、二酸化炭素とアンモニアを高温高圧下におくことによって二酸化炭素を尿素にすることができます。条件にもよると思いますが、半分以上の二酸化炭素を尿素の形に変換できるようです。その他にも方法はあると思いますが、化学合成は専門ではないので・・・。(2008.6.15)


Q:稲を刈り取り、稲架に掛けて天日干するとおいしい米になる。それは光合成をしているからです。しかし現在は機械乾燥するので、おいしくありません。と言う記述がありました。刈り取られた稲がどのように光合成するのでしょうか?。どのようにしておいしい米になるのでしょうか?(2008.6.14)

A:光合成は、葉の葉緑体の中で行なわれますので、葉緑体の状態が適切に保たれさえすれば、例えば、細胞が壊れた状態でも光合成をすることが可能です。従って、刈り取られたイネでも、刈り取られた直後は光合成をすると考えられます。一方、光合成をするためには葉の気孔を開いて二酸化炭素を取り込む必要がありますが、気孔を開くと葉の水分が失われるので、水の供給が絶たれると気孔は閉じてしまいます。また、乾燥状態では葉緑体の状態を適切に保つこともできません。ですから乾燥過程でイネが意味のある光合成をすることはあり得ないと思いますが・・・。光合成以外の要因で天日干ししたお米がおいしくなることはあるのかも知れませんが、僕はよく知りません。(2008.6.14)


Q:人工光合成はできるのでしょうか?もしできないのなら、植物の光合成の過程を人工的に再現していくと人工的には不可能な反応は何なのですか?(2008.6.12)

A:この質問もよく来るので、FAQの方へ回答しておきましたのでご覧下さい。(2008.6.13)


Q:はじめまして、私は今、学校で緑のカーテンを作っています。植物はゴーヤとひょうたんを使用しています。せっかくの機会なので、それらの葉っぱが吸収する二酸化炭素の量を知ることは出来ないかと考えているのですが、ゴーヤやひょうたんの葉っぱの光合成速度は大体どのくらいになるのでしょうか。もし分かっているのであればその数値で計算するのですが、そうでなければ、「よくある光合成の質問」にあった、「葉っぱ1平方メートルあたり1日に10リットルの二酸化炭素を有機物に変え、10リットルの酸素を出す」を参考にさせていただこうと思っています。ちなみに、根拠はどのようなものがあるのでしょうか。(2008.6.10)

A:植物がどの程度の二酸化炭素を吸収しているかは、光合成測定装置という測定機器によって実際に測ることができます。これは、二酸化炭素の濃度を測ることができる機械です。これによって、例えば、十分な光があたっていて元気なある面積の葉っぱがある時間あたりどれだけの二酸化炭素を吸収するかを測ることができます。これが「根拠」に相当します。この値は、植物の種類によって異なりますが、おおざっぱに言って1時間に10 cm四方の葉が0.01から0.06 g(5-30 ml)の二酸化炭素を吸収します。ゴーヤとヒョウタンが実際にどの程度の光合成をするかの数値は持っていませんが、少なくともこの範囲に入ると思います。ただし、光合成速度といった場合、このように十分に光があたっている一番よい状態での光合成速度をさす場合の他に、1日を通して吸収される二酸化炭素の量を考える場合もあります。こちらは、夜のあいだは二酸化炭素をむしろ放出するわけですし、昼間といっても晴れの日もあれば雨の日もあり、同じ晴れの日でも光の明るさは刻々と変化します。さらには、緯度によって昼間の長さそのものも違います。ですから、実際にその場で測ってみないことには一日を通しての光合成速度を見積もることは難しいのですが、それらを極めておおざっぱに考えてみると1日10リットルという値になったというわけです。実は、同じ種の植物でも、例えばトウモロコシなど品種が違うと光合成速度が大きく違う場合もあります。生き物というのは工業製品とは違うので、規格に基づいて作られるわけではありません。人間と同じで個性もあるのです。その意味では、1日10リットルというようなおおざっぱな数値で考えるのも悪くないように思います。(2008.6.11)


Q:始めまして。私は農業をしている者です。水稲栽培をしていますが、稲は光合成がかなり高い方だと回答されていましたが、1アール当りどの程度のCO2を吸収し酸素を排出しているのか教えて下さい。又水田には微小植物や生物が光合成をし1アール当り1.69L/分酸素を発生していると見たことが有ります。減反政策をせず耕作面積を拡大すれば、主食の自給率も上がり、又温暖化対策、食糧不足対策にもなり良いことがたくさん有ると思うのですが!(2008.6.6)

A:「植物がどれだけ二酸化炭素を吸収しますか」という質問の場合、答え方に二通りあります。一つはある瞬間にある光が当たっている条件で、光合成によってどれだけ二酸化炭素が吸収されているのかを答えることです。しかし、実際には、夜には光合成は行われずにむしろ呼吸によって二酸化炭素を放出しますし、昼でも晴れの時と雨の時では光合成をする速度は全く異なります。ですから、一年間を通してそれら全てを考えた上で、結果としてどれだけの二酸化炭素が固定されたかを答えるのがもう一つの答え方です。「1アール当り1.69L/分酸素を発生している」というのは、1分あたりの数値なので、おそらく前者の答え方だと思うのですが、温暖化対策などに効いてくるのは後者の答えだと思いますから、お聞きになりたいのは後者の答えだと推測します。僕は植物生理が専門なので、前者の答え方による葉の面積あたりの光合成速度ならぱっと数値がわかりますが、後者の答えはぱっとわかりません。ただ、むしろ実際に農業をなさっているのであれば、見積もることはできると思います。光合成によって固定された二酸化炭素は植物の体になるわけですから、植物体の重さがわかればそれがどれだけの二酸化炭素から作られたのかを計算できます。1アールの水田から、取れるお米と稲藁の重さはわかりますでしょうか。植物では、その乾燥重量のおおざっぱに言って5割増しぐらいが吸収した二酸化炭素の重さになります。ただし、地球の温暖化を考えた場合、お米の部分は人間が食べるのでよいとして、稲藁の部分がどうなるかが問題です。もし燃やせば、また二酸化炭素に戻りますから、結局、二酸化炭素を吸収したことにはなりません。(2008.6.7)


Q:園芸初心者です。FAQ「植物の栽培に西日は悪いか?」は大変参考になりました。その関連質問ですが、園芸本などではよく「植物は午前中の方が元気なので、なるべく午前中に日に当てましょう」とか、「光合成はその60〜70%が午前中に行われます」といったことが書かれておりますが、これは本当でしょうか?また、そうだとしたら午前中が良い理由は、光の関係でしょうか?それとも植物の特性でしょうか?拙宅の庭は正に猫の額ほどで、しかもどちらかと言いますと、午前中の日光よりも西日がよくあたる環境です。他の方の学究的なご質問とはレベルが違っていて申し訳ありませんが、ご教示いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。(2008.6.5)

A:FAQで触れていますように、これは植物の種類によっても異なります。繰り返しになりますが、午前と午後の主な違いは、午後の方が一般的に温度が高く、湿度が低くなることです。そのような状態で強い光があたると、種類にもよりますが、植物によくない場合が確かにあります。ですが、もともと高温や乾燥に強い植物(例えばトウモロコシ)では西日が当たっても全く問題ないと思います。「植物は午前中の方が元気なので」というのは午後の方が空気や土壌の乾燥が進むことを言っているのだと思いますが、これも、植物の種類や温度などによって異なります。「光合成はその60〜70%が午前中に行われます」というのも、まあ、そのような場合もあるでしょうけれども、そうでない場合も多いように思います。お庭で、「どちらかというと西日がよくあたる」という程度でしたら、強い光に極端に弱い植物でない限りさほど心配なさる必要はないと思います。(2008.6.6)


Q:二酸化炭素の濃度が、空気中の二酸化炭素の濃度より高くても、植物が、吸収できるのは、なぜですか?(2008.6.5)

A:うーむ。これは高度な質問ですね。中学生以下という区分でご質問頂いていますが、なかなか簡単に説明するのは難しいので、少し込み入ってしまうかも知れませんがご容赦下さい。
 呼吸の反応というのはいろいろの化学反応からなっています。AがBになるという化学反応には、いったんBになったらAに戻れない不可逆反応と、BからAに戻る反応も進む可能性のある可逆反応の2種類があります。可逆反応の場合は、反応の結果できるBをたくさん与えると、逆の反応が進みますから、結果的にもとの反応は進まない状態になります。呼吸の中で二酸化炭素を出す部分の反応には2つあってそれが連続して起こりますが、そのうち1つは不可逆反応です。ですから、二酸化炭素濃度を上げたからといって、ここで逆の反応が起こって呼吸の反応が止まる、ということはないのです。人間の場合、二酸化炭素濃度が非常に上がると中毒症状が出ますが、これも、直接呼吸が止まることによるのではなく、血中の二酸化炭素濃度が上がったことによるものです。人間の場合でも二酸化炭素濃度を上げた結果呼吸が止まって窒息する、ということはないはずです。ですから、植物でも人間でも高い二酸化炭素のもとでも呼吸自体はできるが、人間の場合は、血中の二酸化炭素濃度が上がると神経系などに影響があるので中毒症状を示す、ということなのだと思います。(2008.6.6)

Q:前回は、質問に答えていただきありがとうございました。二酸化炭素の濃度が、空気中の二酸化炭素の濃度より高くても大丈夫だとありましたが、何のためにそうなったのですか?(2008.6.7)

A:「何のために」というのはいわば進化的な疑問ですね。農業では、二酸化炭素施肥といって、温室などで二酸化炭素濃度を上げて植物を栽培する場合があります。しかし、自然界では火山の近くでもない限り二酸化炭素濃度がそれほど高くなる条件は考えられませんから、二酸化炭素の高い濃度に適応して植物が進化したわけでもないのに、なぜ高い二酸化炭素でも大丈夫になったのかと不思議に思えるかも知れません。ただ、光合成生物が始めて出現した30億年近くの昔の地球の二酸化炭素濃度は今よりずっと高かったのです。光合成生物はそのような高い二酸化炭素濃度の大気の中で進化してきたので、二酸化炭素濃度が高くても大丈夫なのでしょう。その後、光合成の働きで、地球の大気中の二酸化炭素濃度はどんどん低下して、現在の濃度にまでなります。人間の神経系などは大気中の二酸化炭素濃度が低下してから進化したので、高い二酸化炭素濃度には適応していない、と考えることができます。特に理由がなければ、持っている二酸化炭素耐性を捨てる必要もないでしょうから、植物の場合は、そのまま高い二酸化炭素でも大丈夫な性質を保持したのでしょう。ただし、生物の進化は明確な目的に従ったものではありませんから、「何のために」という質問に対する答えは、あくまで「そう考えると説明がしやすい」というだけで、それを実験的に証明するのは難しいでしょう。(2008.6.7)


Q:以前にショ糖の検出方法について質問をさせていただいたもの(小学校の教諭)です。ショ糖の検出が小学校レベルでは難しいことが,先生のお答えを読ませていただきよくわかりました。ショ糖試験紙を使っての実践例も,ある文献にあったのですが,小学生が自分で実験をして確かめるためには実験の操作が難しそうです。実は以前にもちょっと触れた糖尿病の試験紙(成分がグルコースオキシターゼ・ペルオキシターゼ・o−トリジン)を使ってジャガイモの体内の糖(ブドウ糖ですよね?)の有無を調べたのですが,葉柄や茎のいたるところ(土の中)で反応が出て,土の中は反応が出ないと思っていたので大変驚きました。(確かめたのは午後1時ごろです。)
 (質問)上記の結果は,光合成によって作られたブドウ糖が,葉柄や茎で見られたと考えてよいのでしょうか?ショ糖でないことは先生のお答えを読んでもわかったのですが,これは光合成による養分の移動とは異なるのでしょうか? 何度も質問させていただき申し訳ありません。よろしくお願いします。(2008.5.20)

A:グルコースオキシダーゼを使う試験紙の場合、糖に対する特異性はこの酵素の特異性で決まりますが、これはかなり高く、ショ糖などとはほとんど反応しないはずです。ただし、この方法は、グルコースとグルコースオキシダーゼの反応によって過酸化水素を発生し、この過酸化水素によって色素が酸化されて色が変わることを利用していますので、例えば、過酸化水素が試料に含まれていればグルコースがなくても反応が出てしまうと思います。妨害物質の影響の可能性を減らすためには例えば、水に溶ける成分だけを抽出して反応を見る、熱で余計なタンパク質などを変性させておく、といった手順をとっても結果が変わらないことを確かめるのがよいかも知れません。また、植物の葉ではグルコースは、ショ糖の1/10程度の濃度存在します。師管液中の糖の場合もショ糖が主成分ではありますが、グルコースも低濃度含まれているでしょう。一般的に植物の組織に糖尿病試験紙ではっきり出るような濃度のグルコース(検出限界は0.05%程度?)が含まれるかどうかについては、実際に僕自身やってみたことはないのでわかりません。検出限界との兼ね合いも重要かと思います。きちんとしたお答えができずに申し訳ありません。(2008.5.21)


Q:はじめまして、先生のHPは大変ためになります。植物の環境ストレス応答の温度ストレスのところで、「細胞外で水が凍ることによって細胞内の水が失われ、浸透圧が上昇する」という記述がされていますが、なぜ細胞外で水が凍ると浸透圧が上昇するのでしょうか?初歩的な質問でしたら大変申し訳ありません。(2008.5.15)

A:これは初歩的どころではない難しい質問です。以下の説明はある意味で比喩的なものとなりますが、ご容赦下さい。細胞膜の水の透過性は必ずしも高くありませんが、比較的長期的な時間を考える場合は水を通すと考えてよいかと思います。その場合、どちらからどちらへ水が移動するかを考えた場合、あらゆる物質と同じで濃度が高い方から低い方へ流れます。塩の場合は濃度というのは水に溶けているのでわかりやすいのですが、水自体の濃度は比喩的に説明すると自由に動ける水の量として考えることができます。この際、水に塩などの物質が溶けている場合は、それの物質の存在によって自由に動ける水の量が減ります。従って、塩が溶けている水と溶けていない水があれば、溶けていない水から溶けている水の方向への水の移動が生じ、これを浸透圧として解釈することができます。一方、凍った水は、当然自由に動けない水になりますから、氷と水とが細胞膜で隔てられていれば、水の方から氷の方へ水が移動します。その際、半透膜であれば、塩は移動できませんから、結果として水の側の塩濃度は上がり、浸透圧は上昇することになります。(2008.5.16)


Q:薄層クロマトグラフィーによる植物色素の分離の実験についてです。植物の種類による含有色素の違いはなぜおこるのですか?乾燥や加熱により、クロロフィルaなどの色素は変質するのですか?至急お願いします。(2008.5.15)

A:やや、質問の意図が取りづらい部分がありますので、もし回答が求めていたものではなかった場合、「質問のコツ」を読んでから再度ご質問下さい。
 最初の質問から。基本的に各種の色素も酵素によって合成されます。従って、ある色素を合成する酵素がない場合は、その色素を持ちません。もし、メカニズムを質問しているのであれば、必要な合成酵素を持っているかどうかが違うから、というのが答えになります。
 2番目の質問は何を乾燥したり加熱したりするのかが不明ですが、もし、クロロフィルaでしたら、単に乾燥したからといって変質はしません。試薬として粉末になったクロロフィルaが販売されています。そのような粉末は、むしろ湿気があると変性が進みます。一方で、加熱した場合は、変質が促進されます。(2008.5.16)


Q:スイカの皮の光合成と縞模様の謎というページを拝見しました。吸収スペクトルをはかるというところまではわかるのですが、そこからどのようにして抽出液中のクロロフィルaやクロロフィルbの濃度が測定できるのですか?もし、この質問の答えがどこかに載っているとか掲載されていたグラフなどから簡単に読み取れるということなら申し訳ありません。(2008.5.10)

A:吸収スペクトルというのは、測定する波長を変えて吸収の大きさをとったものです。ある波長でのクロロフィルの吸収の大きさは、クロロフィルの濃度に比例しますので、吸収の大きさを見れば濃度の目安がつきます。例えば1 gのクロロフィルaを1リットルの溶媒に溶かした液の吸収を測っておいて、それと比べれば、吸収から具体的な濃度を求めることができます。ただし、クロロフィルaとクロロフィルbが両方ある場合は、1つの波長で吸収を測っても、abがそれぞれどれだけあるかを求めることはできません。そこで、2種類のクロロフィルがそれぞれ一番大きな吸収を持つ点で(つまり2つの波長で)吸収を測ると、ごく簡単な連立方程式を解くことによって別々に濃度を求めることができます。具体的な方法は、「クロロフィル定量法」をご覧下さい。
(2008.5.10)

Q:何度もすみません。先ほどの質問と関連していることなのですが、クロロフィルの濃度というのは植物ごとにだいたい決まっているものなのですか?それとも植物の生育環境によって変化するものなのでしょうか?(2008.5.10)

A:クロロフィルの濃度は生育環境によって影響を受けます。ですから、同じ植物でも、暗い環境に育ったものと明るい環境で育ったものでは異なるクロロフィル量を持ちます。また、「新緑」という言葉がありますが、出たての葉の色は薄くて、時間がたつにつれて緑が濃くなりますよね。これは、クロロフィルの量が増えていくことを反映しています。(2008.5.10)


Q:植物葉の生体重1gに含まれるクロロフィルの含有量の求め方を教えてください。(2008.5.9)

A:クロロフィルの定量法は、「クロロフィル定量法」に詳しく解説してあります。葉の生重量あたりのクロロフィルを求める場合は、この中のDMFを使う方法がよいと思います。(2008.5.10)

Q:どの式を使えばよいかわかりません。(2008.5.10)

A:上の3つの式が単位をμMで求める場合、下の3つの式が単位をmg/mlで求める場合です。高校生だったら濃度の単位はわかりますよね?もしかしたら、Chlという表記がわからなかったのかな。クロロフィルは英語でChlorophyllと書くので、略号としてChlと書きます。Chl a はクロロフィルaの濃度、Chl b はクロロフィルbの濃度、Chls a+babの合計濃度を示します。溶液中の濃度がわかれば、入れた溶媒の量をかけ算すればクロロフィルの量が求まりますから、元に入れた葉の重さで割れば生重量あたりのクロロフィル量になることはわかりますよね?(2008.5.11)

Q:何回もすいません。光合成と地球上の炭素循環との関連とはなんですか??(2008.5.11)

A:「質問のコツ」は読みましたか?この質問は、車輪と自転車の関連とは何ですか、という感じです。もし、そもそも自転車がわからないのであれば、そこから質問を始めないと話になりませんし、わかっているのであれば、車輪との「関連」というのが何を意味するのかがわかりません。(2008.5.11)


Q:初めて質問させて頂きます。陸上植物からエーテルで抽出した抽出液に含まれるクロロフィル成分のクロロフィルa、クロロフィルb、フェオフィチンa、フェオフィチンbのそれぞれの濃度を知りたいと考えております。こちらのホームページに載っている方法では分光光度計と計算式を使ってクロロフィルa,bの濃度は求められるようですが、フェオフィチンは求められないと思います。インターネットで調べたところ、HPLCを使って分離、定量することができるようですが、分光光度計などを使ってもっと簡潔に濃度を求める方法はありますでしょうか。もしありましたら実際に測定する際に参照するプロトコールの情報を教えて頂けますでしょうか。宜しくお願い致します。(2008.5.8)

A:それぞれの色素の吸収スペクトルと吸収の大きさは明らかになっていますので、いくつかの波長において吸収を測定し、一定の計算式によって各色素の濃度を求めることは原理的には可能です。しかし、実際には、そのような計算式は報告されていません。これは、そのような計算式を使う人間がいないことが原因です。陸上植物の葉においては、フェオフィチンbは含まれていないと考えて構いません。また、フェオフィチンaはクロロフィルaの数百分の一しか含まれていません。従って、フェオフィチンbを求めるという状況は考えられませんし、フェオフィチンaを求めようと思っても、0.1%しか含まれていない色素の量を吸収スペクトルから求めるのは不可能です。
 ただし、実際には、色素抽出液中にはフェオフィチンが無視できない量存在する場合がありますが、それは、抽出に時間がかかったり温度管理がうまくいっていなかったりすることが原因で、クロロフィルが変性して生じるものです。従って、そのような抽出液のフェオフィチン量を定量したとしても、得られるのは、どのくらい実験がへただったか、という情報であって、葉の中の光合成色素量に関する情報は得られません。
 以上の理由で、吸収スペクトルからフェオフィチン量を求める計算式は存在しないのです。HPLCの場合は、クロロフィルとフェオフィチンを分けて検出できますから、濃い抽出液でフェオフィチンを定量し、それを例えば100倍に希釈してクロロフィルを定量するといった手段を使うことができます。そこで、わずかな量のフェオフィチンを定量するためにはHPLCを使うことになるわけです。(2008.5.8)


Q:学校で薄層クロマトグラフィーによる、光合成色素の分離の実験を行いました。材料は、ホウレンソウ、スジアオノリ、モサオゴノリ、ヒジキで、展開溶媒は、石油エーテル:アセトン=7:3で行いました。いずれの実験でも、クロロフィルaの真上に黒というか、グレーの色がついたのですが、これがなんなのかどうしてもわかりません。教えていただけたら幸いです。よろしくお願いします。(2008.5.6)

A:与えられた情報から、一番それらしいのはフェオフィチンだと思います。フェオフィチンは、肉眼では灰色に見えることが多く、展開した時の易動度はクロロフィルよりも大きくなります。本来、植物に含まれるフェオフィチン量はクロロフィルの数百分の一しかないのですが、クロロフィルが変性するとフェオフィチンが生成するため、色素の抽出や、その後の展開に時間がかかると、検出されるフェオフィチンの量は増えていく傾向があります。(2008.5.7)


Q:パルス変調蛍光測定装置などの高そうな機械を使用しないで、スイカの皮や野菜ジュースなどが光合成しているかを容易に調べる実験方法はありませんか?(2008.5.5)

A:ピーマンの実の光合成をペットボトルを使った酸素発生の実験によって確かめた実験例がありますから、スイカの皮に関しては、それで可能かも知れません。ただ、このような簡易的な実験だと、測定に時間がかかりますから、野菜ジュースのようにどんどん活性が失われるようなものには使えないと思います。野菜ジュースに関しては、やはり、専門的な測定機器を使わざるを得ないと思います。(2008.5.6)


Q:学校で薄層クロマトグラフィーの実験をしました。乾燥標品(ワカメとホウレンソウ)をヘキサン抽出する前にメタノール処理(試料にメタノールを加え、ヒーティングブロックで加熱)を行ったのですが、抽出前にメタノール処理をしたのは何故ですか?(2008.5.5)

A:ヘキサンは極性が非常に低いので、水と混じり合いません。ですから、水を含むようなサンプルからの抽出の際には、前処理が必要になります。そのような場合、水と混ざるアセトンやメタノールが使われます。完全な乾燥標品ならば、水分の問題はないように思いますが、乾燥標品の場合は組織が固くなっているので、溶媒がなかなか組織に入っていきません。そのような場合は、標品を細かくすることと、熱メタノールで処理することが効果的です。アセトンでも何とかなるとは思いますが、アセトンの場合はタンパク質を変性させる力が強いので、試料が凝集しやすく、抽出する効率はメタノールより落ちるようです。本当のところは、実験をした先生に聞いてみないことにはわかりませんが、そのあたりが理由ではないでしょうか。(2008.5.6)


Q:しぼりたての野菜ジュースは光合成するんでしょうか?また、ほうれん草のお浸しはなぜ光合成しないんでしょうか?(2008.5.4)

A:生物は細胞から成り立っていますが、光合成は、その細胞の中の葉緑体の中で行なわれます。ミキサーで野菜を細かくすると細胞も壊れますが、その際に、細胞の中の葉緑体は壊れずにいるものが残ります。ですから、細かくした直後は光合成をするはずです。しかし、そのような状態では不安定ですから、光合成の活性はすぐに失われていってしまいます。また、ジュースにするために、細かくする時に水を加えてしまうと、葉緑体の中にはいろいろな塩やタンパク質などが含まれているのに外側が何も含まない水になってしまい、水が葉緑体の中に入ってパンクしてしまいます。そのため、水を加えて野菜を細かくすると光合成の活性は即座に失われてしまいます。ですから、葉緑体の光合成の活性を保とうとする時には、水ではなく、100 ml 当たりに14 g 程度の砂糖の入った砂糖水を使うとパンクが防げます。というわけで、ジュースをどのように作るかによりますが、気をつけて作ったジュースはしばらくの間(数分から非常に条件のよい時で数時間程度)は光合成をする能力を持つ、といってよいでしょう。
 お浸しにするには、熱を加えますが、温度が高くなるとタンパク質の構造が壊れてしまいます。光合成には色素としてクロロフィルが使われていますが、光合成にはクロロフィルだけでなく、タンパク質の働きも必要です。熱をかけてもクロロフィルはすぐには壊れないので、緑色のままですが、タンパク質が機能しなくなってしまうので、お浸しでは光合成ができなくなってしまいます。(2008.5.4)


Q:お茶は、半陰葉植物で光飽和点が低いと聞きましたが、曇りの日は光合成してるのでしょうか?教えてください。(2008.4.26)

A:まず、光が弱くても、植物が枯れていなければ光合成はします。ただ、ご質問はその光合成が呼吸を上回って実質的な二酸化炭素の吸収が起こるかどうか、という意味でしょうね。そうだとすると、重要なのは光飽和点ではなく、光補償点です。光補償点よりも光が強ければ光合成が呼吸を上回って二酸化炭素の吸収が観察されます。植物の光補償点は、種類によって異なりますが、光飽和点と同じく陽生植物で高く陰生植物で低い傾向があります。お茶でどの程度かは知りませんが、イネなどの強い光を好む植物でも光補償点は太陽の直射日光の1%程度の光の明るさですから、たいていの場合曇っていても光補償点を超すでしょう。お茶の場合はもっと光補償点は低いでしょうからなおさらです。基本的に、曇っていても光合成をしていると考えてよいでしょう。(2008.4.26)


Q:こんにちは。お忙しいところもうしわけありません。小学校の教員をしているものです。6年生の学習の中に「葉に日光があたると養分ができること」を学ぶ内容があります。その学習の中で,葉で作られたデンプンが移動することを確かめようとしたのですが,あまりうまくいきませんでした。教科書にも「水に溶けるものに変わって移動する」と書かれていて,そのときは全くの思いつきで糖尿病の試験紙を使ってやってみたのですが,反応が出るもの(カボチャなど)とそうでない植物がありました。後で調べたら,その試験紙はブドウ糖に反応するものでショ糖に反応するものではないとか・・・。また,別の文献には,茎からショ糖とブドウ糖が検出されたという記述もあり,基礎的な知識がないために何がなんだかわからなくなってしまいました。
(質問)茎の中を移動している養分は何と考えればよいのでしょうか。またそれをできるだけ簡単に検出する方法を 教えてください。小学生の授業で使いたい(無理でしょうか?)と考えています。よろしくお願いします。(2008.4.21)

A:光合成の産物は葉の中の葉緑体ではデンプンに変えられるのですが、デンプンは水に溶けないので、そのままでは他の器官に運ぶことができません。そこで、通常は一度ショ糖に変えてから運びます。お芋にデンプンを貯めるような場合も、一度はショ糖に変えて、芋の部分に運んでからもう一度デンプンにすることになります。ブドウ糖は、実は、いろいろな物質との反応性が高いので、細胞の中で濃度が高くなると危険です。ですから、ブドウ糖の形で運ばれることはありません。一部の植物ではショ糖ではない別の糖の形で運ぶ例があることが知られていますが、通常の植物はほとんどショ糖で運ぶと考えてよいでしょう。ショ糖は、ブドウ糖と違って他の物質との反応性が低いので、比較的安全なのですが、検出しようと思うとそれだけ難しくなります。ただし、ショ糖はブドウ糖と果糖が結合した形をしていますので、希塩酸などで加水分解してブドウ糖と果糖に変えれば、おっしゃる試験紙でも検出できるのではないかと思います。ただ、希塩酸を使うのは小学生の授業では難しいかも知れませんね。小学生の授業でもできるショ糖の定量法は残念ながら僕には思いつきません。(2008.4.21)


Q:初めまして。葉焼けのメカニズムについて探していたら、本HPにたどり着きました。 一つ、ご教授ください。1)強光下での光合成の低下の要因に光阻害、水ストレスとの回答がありました。2)葉焼けの質問への回答に、光阻害の回答がありました。3)細霧冷房による葉濡れにより気孔が閉鎖して、CO2濃度低下のインゲンのはなしがありました。そこで、強光下で葉焼けが発生した場合、水ストレスによる気孔の閉鎖ではなく、外気の湿度が高いことに寄る気孔の閉鎖により発生することもあるのでしょうか。 また、強光下で、細霧冷房による気孔閉鎖により光合成が低下し、葉焼けをおこすこともありますでしょうか。 表現がへたくそでわかりにくいかもしれませんが、ご回答のほどよろしくお願いします。(2008.4.18)

A:ご質問は、「強光でも、葉の濡れもしくは湿度が高いことによって気孔が閉鎖し、光合成が低下して葉焼けを起こすことがあるか」ということでしょうか。こちらで研究をしていた条件では湿度は制御しておりますので、葉を濡らした場合も、濡らさない場合も湿度は同じになっています。従って、湿度が高くなったことが光合成の低下の原因ではないと考えています。一方で、光条件については、直射日光があたるような条件では光合成の阻害が起こるが、光が弱い時には光合成の低下は見られない、という結果を得ています。従いまして、強光でも阻害は起きると思いますし、むしろ光が弱い時には阻害は小さくなると考えてよいかと思います。(2008.4.18)


Q:こんにちは。C4植物で、光合成能力の高いといわれているトウモロコシを育て、それを光合成速度の測定や遺伝子の解析に用いようと思います。そこで、様々な種類のトウモロコシが市販されていますが、研究室で使用するトウモロコシはどのような種類のものを用いるのが良いか分かりません。ハニーバンタムなどは食用では有名ですが、一代交配と書かれてあり、研究用として使用してよいものか分かりません。これについて様々な文献などでも調べてみましたが、分からず質問させていただきました。ご存知でしたら、ご教授をお願い致します。(2008.4.16)

A:生理学的にある特徴の解析をしたい、ということがあれば、それに適した材料を選ぶ必要があると思いますが、「合成速度の測定や遺伝子の解析」といった漠然とした目的であれば、世の中のトウモロコシ研究でよく使われている品種を使うのが、使える情報量が多くてよいと思います。もしさまざまな文献を調べたのでしたら、当然それらの論文には使った材料の品種が記載されていると思うので、一番多く使われているものを使えばよいのではないでしょうか。迷ったらゲノムプロジェクトではZea mays ssp. mays line B73が使われていたので、これが安心かも知れません。(2008.4.17)


Q:はじめまして、河川の礫に付着する藻類の光合成速度を勉強しているものです。光の単位の換算についての質問です。 HPに記載してあるように、光量子束密度と放射照度との換算係数を計算した論文を引用すると、「真夏の直射日光の放射照度は、440 W m-2 ぐらい(つまり 440 x 4.57 = 約2000μmol)、同じく照度は110,000 lux ぐらいである」となります。 私がある地方気象台のデータを調べたところ、各正時に記された夏至一ヶ月前後の「全天日射量」の最大値は概ね3.6〜4.1 MJ m-2でした。1 J m-2 = 1 W m-2とし「全天日射量」から「直射日光の放射照度」を求めた結果、約1,000〜1,150 W m-2となりました。先に述べた「直射日光の放射照度」は、440 W m-2とに開きあります。上述のようにある係数を使って、気象台のデータ「全天日射量」から光量子束密度を換算することは可能でしょうか?(2008.4.14)

A:計算自体は、それでよいのだと思います。数値の開きの原因は、むしろ放射の定義にあるかと思います。全天日射量は、紫外線から赤外線を含む全ての波長領域の放射量です。一方で、光の単位のページにありますように、引用した論文の換算係数は、「波長領域は400-700 nm であることが前提となっています」。この波長領域の光を、光合成有効放射という言い方をする場合もありますが、この場合は、紫外線や赤外線は含みません。真夏の直射日光の光量子束密度2000μmolの場合も、光合成有効放射としての値です。きちんと計算したことはないのですが、おそらくそれで数値の開きは説明がつくのではないでしょうか。(2008.4.15)


Q:お世話になります。以前、光合成質問箱で質問させていただきました。その節はありがとうございました。今回は、光合成色素について質問があります。私は、LED光(赤色:625nm、青色:470nm、PPFD:約110μmol/m-2/s)で小松菜を育成しております。すると、太陽光で育成した小松菜に比べ、葉の色が濃い緑色になり、ツヤがあります。そこで、紫外可視分光計(拡散反射型)で測定してみたところ、全体的に吸光度はLED光で育成したほうが高い結果となりました。この結果からも、葉の色がLED光で育成したほうが濃く見えるのだと思います。そこで質問です。
1)何故このように葉の色に違いが出るのでしょうか。
2)照射している波長帯が必ずしも光合成色素(クロロフィルなど)に有効な波長ではないですが、太陽光とは違い、今回のように照射する波長に適応して、吸収する波長が変化することがあるのでしょうか。測定結果を見る限り、吸収する波長にそれほど違いは見られませんが。
3)紫外領域(300〜400nm付近)での測定結果にかなり違いが見られました。特に、葉の裏側を測定した結果が、葉の表に比べて顕著に違いました。これはLED光で育てた場合、紫外光が当たらないためでしょうか。もしそうであるならば、どの色素が変化または影響していると考えられますでしょうか。
長々と申し訳ありませんが、ご教授いただけると幸いです。(2008.4.6)

A:まず、最初のご質問ですが、ここの「何故」というのは、メカニズムを聞いているのでしょうね。おそらく、クロロフィルの量が違うためだと思いますが、それを調べるのは簡単です。まずは、葉面積あたりのクロロフィル量を測定してみてはいかがでしょうか。定量法は、このホームページでも、クロロフィルの定量のページに解説があります。2番目のご質問ですが、光環境に応じて光合成色素の組成が変化することはよくあります。シアノバクテリアなどではフィコビリンの種類や量が大きく変動するので、細胞の色自体ががらりと変化する例が知られていますが、高等植物では、クロロフィルaとクロロフィルbの量の比が変化する程度なので、それほど吸収スペクトルには大きな影響が出ません。上のようにクロロフィルを有機溶媒に抽出してからスペクトルを比較すれば、若干の変化を検出することは可能かも知れません。最後に紫外領域の吸収についてですが、紫外領域は、散乱の影響が最も大きい領域でもありますので、そもそも吸収の変化が色素の変化に由来するのかどうかさえわかりません。葉の構造が変化すれば、当然散乱も大きな影響を受けます。まずは、何らかの色素が変化しているのかどうかを確認するのが先決ではないでしょうか。クロロフィルの定量を行なう際に、カロテノイドなどの脂溶性の色素が変化しているのかどうかは、スペクトルをみればわかります。同様にして、水や50%メタノールといったより親水性の高い溶媒で色素を抽出してスペクトルを測れば、紫外領域のスペクトルの変化が色素の量の変化に由来するのかどうかがわかるかと思います。(2008.4.6)

Q:丁寧なご回答ありがとうございます。早速、検討していきたいと思います。ちなみに、このような人工光による葉の組成変化を研究している事例はあるのでしょうか。私の調べ方が悪いと思うのですが、見つけることができませんでした。何かキーワードとなる言葉や論文がありましたら、教えて頂けないでしょうか。よろしくお願いいたします。(2008.4.6)

A:おそらく研究の目的自体が分野によって異なるので、僕にはよくわかりません。僕は、植物生理学や物理学、化学といった理学系の分野の出身なのですが、そこでは、使う光が「人工光」であるかどうかは、あまり意味を持ちません。LEDで植物を育てたら、形がこうなりました、という記述で仕事が終わったら研究ではない、というのが基本的なスタンスです。もし、光のスペクトルによって植物の形態に変化があるのでしたら、どの色素がどの波長の光を吸収しているのかを考察し、それを証明するために、その波長領域だけが異なる2つの光源を用意して植物の形態をみるか、もしくはその色素の欠損株の形態をみる、といった方向に研究が進むと思います。その場合、研究の出発点がLEDだったとしても、最後に出る論文の題目は、例えば「青色光受容体の何々が植物の形態を決めている」といった感じのものになるでしょう。そのあたりが、研究事例を見つけることが出来なかった理由ではないでしょうか。光環境の変化に対する光合成や形態の変化の論文自体はものすごい数ありますよね。
 もっとも、記述だけでは研究にならない、というのはあくまで理学的な考え方の場合です。例えば、もし、LEDを使うことによって照射エネルギーあたりの植物生育量を2倍にすることが出来れば、そのメカニズムは不明のままでも、農学的には大きな意味を持ちます。理学的な論文にはならなくても特許にはなるでしょうし、農学関係の雑誌には論文が載るように思いますが、その辺は僕が詳しくないのでわかりません。(2008.4.7)


Q:植物は夜、呼吸によって二酸化炭素を放出する為、寝室に植物が有ると体に良くないと言う人がいます。ほんとうですか?(2008.4.1)

A:まさに、それに対する答えが光合成FAQの植物の呼吸の速度はどれぐらいか?に書いてありますので、ご覧下さいな。(2008.4.2)


Q:お世話になります。水産養殖池中で発生するPhytoplankton発生量を予測する原単位を定めるため、池水の水質分析をおこないTN、NO3、TP、PO4ーP濃度、とPhytoplanktonの代表としてChlo.a濃度を分析し、Chlo.a濃度と水質分析値それぞれとの相関関係を分散・回帰グラフで見たら、PO4ーP濃度との関係が非常に高いことが解りました。溶存しているこれらの物質は餌に因るものであり、餌の投与量によってPhytoplanktonの発生量が把握できると考えているのですが、こんな手法で宜しいのでしょうか?また燐酸塩の利用はATP合成に使われると考えて良いでしょうか?お忙しいなかご面倒をかけますが宜しくご教授お願いいたします。(2008.3.28)

A:シアノバクテリアを含む藻類の生育を律速する栄養塩は、その生育水域によってさまざまですから、当該水域の栄養塩とクロロフィル濃度の回帰分析によって律速栄養塩を明らかにするという手法は意味を持つと思います。あと、藻類におけるリン酸欠乏については申し訳ありませんが、僕にはわかりません。高等植物の場合は、カルビン回路で固定された炭素は無機リン酸との対向輸送によって三炭糖リン酸の形で葉緑体から運び出されますので、リン酸欠乏は炭素固定の停止を招きます。カルビン回路にはATPが使われますから、これはATPのリン酸と考えることもできます。この他、生体膜を構成する脂質のうち、リン脂質の形でリン酸が必要とされますし、もちろんDNAにも必要ですが、これらのうち、藻類の場合、どこに最初の影響が現れるかは知りません。(2008.3.28)


Q:平成16年度の植物生理学第1回講義「植物生理学の内容と光合成の意義」のQで「共生説ではまずはじめに古細菌の中に好気性細菌が入り込み現在の動物となる生物が誕生し、その後一部の細菌においてさらに光合成細菌が入り込んで現在の植物のもととなる生物が誕生したといわれている。」という文章を見ました。植物と動物の起源についてですが、動物の祖先が先で植物の祖先が後なのではなく、動植物に共通の祖先があって、先ず植物が分岐したという表現の方が適切だと思うのですが、いかかでしょうか?「原初の生物」から分岐の順序としては先ず「細菌」、「真核生物」になって「原生生物」→「植物」→「菌類」→「動物」の順だとされています。「サルからヒトが進化した」という表現が間違っているのと同じように、「植物から動物が進化した」と言っているわけではありませんが。(2008.3.23)

A:誤解を招いたかも知れませんが、この植物生理学の講義の第1回では、植物の地球環境における位置について考えました。ですから、講義の文脈の中では、動物は従属栄養生物であるのに対して植物は独立栄養生物であることに力点が置かれています。もちろん、従属栄養生物が動物である、と言っているわけではありませんが、ここでいう「現在の動物となる生物」というのは好気呼吸を行なう生物の意味で使われているのだと思います。Qの方は、学生さんのレポートですので、本当にその学生さんがそのように考えていたかはわかりませんが。ただ、好気呼吸を行なう生物が先に出現し、次いで植物が生まれた、と解釈すれば、とくに間違った表現ではないと思います。
 次に、分岐の順序としては、「植物」の定義にもよるかも知れませんが、「「原生生物」→「植物」→「菌類」→「動物」の順だとされています」というのは、現在は支持されていないと思います。もし、どこで、「されている」のかを教えて頂ければその論文が何を根拠にしているのか調べてみることは出来ます。そもそも、原生生物というのは、真核生物の雑多な集まりで、分子的な系統樹の上で意味のあるまとまりをなしません。また、真核藻類も含めて植物と考えるのであれば、植物は分岐のあちこちに出現していて、ある単一の時点で分岐したのではありません。昔は(五界説においても、それ以前の説においても)ある時点で植物というものが出現したと考えられていましたが、現在では、生物の様々な分類群の中で、光合成機能を共生によって得たものが植物となり、退化によって機能を失ったものは非光合成生物に戻るといった具合に、系統的な位置と言うよりは、光合成という機能を反映した分類であると考えられています。ただし、一次共生によって生じた光合成生物の直接の子孫だけを植物とする狭い考え方の場合は、植物(この場合は、陸上植物、緑藻、紅藻などからなる)は単系統になります。そのような立場に立った場合でも、植物や、人間に至る後生動物など多くの現存する真核生物は、クラウン生物群と呼ばれる多様な生物の放散が起こった時代にほぼ同時に分岐したと考えらていれます。(2008.3.23)


Q:始めまして。私は、精神病を患っており、現在、失業中の身ですが、環境問題に興味を持ち、図書館や、マクドナルドなどで、新聞や、書籍を読んで、自分なりに調べています。現在、地球温暖化問題が取りざたされていますが、なぜ、光合成に関してもっと議論しないのか、植物で解決し様としていないのか、そこが、大きな疑問でした。本をある程度読むと、植物は、光合成だけではなく、呼吸もしていて、カーボンアクティブではないのかと思ったりして、少し納得している次第です。一方で、微細藻類など海の植物は、光合成をすると、炭酸カルシウムになって、海底に沈むとありました。それだと、微細藻類を増やせばいいのかと思ったり、増やしすぎると氷河期になってしまうのかと恐れたり、いろいろ分かってきました。「光合成の科学」と言う本も精神病の為に十分ではないですが、地球温暖化についての先生の考えがかかれていたので、興味深く読ませていただきました。僕は、他に思いつきのアイディアがあります。日本には、光触媒と言う優れた環境テクノロジーがありますが、それとアミン化合物による、二酸化炭素の分別、さらにそれを巨大な海水のプールに培養している微細藻類に放出して、その結果発生した炭酸カルシウムを地上に回収保存すれば、排気ガスによる温暖化対策になるのではないかと考え付きました。炭酸カルシウムは、陸上では、900度以上にならないと、分解して二酸化炭素にならないとWikipediaに書いてあったので、また、海中だと、分解してしまう場合もあるように読んだものですので、上記のプールのアイディアでいけるのではないかと考えています。二酸化炭素の分別には、アミン化合物の他にも、CAM植物やC4植物のC4回路を使って大気中の二酸化炭素を取り込めないかと思ったりもします。リンゴ酸になれば、二酸化炭素を固定したことには、ならないでしょうか?あるいは、リンゴ酸ごと、微細藻類に光合成させられないでしょうか?私は、専門家ではないので、論理がめちゃくちゃかも知れませんが、先生方に聞いていただきたく、今回Q&Aを見つけたので、考えをぶつけてみました。よろしくお願いいたします。(2008.3.17)

A:ご質問の趣旨が今ひとつ明快にわからないのですが、全体として考え方が合っているのかどうかを知りたい、ということだと解釈してお答えします。基本的には、藻類に光合成をさせれば二酸化炭素を吸収します。ただし、リンゴ酸であれ、他の有機物であれ、固定された炭素をそのまま放っておけばまた分解されて二酸化炭素に戻ります。炭酸カルシウムは有機物に比べると安定ですが、それでも分解はしますし、もし、炭酸カルシウムを「回収保存」するためにエネルギーを使ってしまったら、元の木阿弥です。というわけで、保存するのが難しければ、むしろ使ってしまおう、というのが今の風潮です。石油や石炭を使う代わりに光合成の産物である有機物を使えば、全体としては二酸化炭素の排出を抑えることができるのではないか、という発想で、バイオエタノールなどといっているものは、この系列になります。ただ、光合成の産物は食料でもありますから、バイオエタノールを作るのに、人間の食料を使うのはあまりよいアイデアのように思えません。本当は、人間が食べられないような部分を燃料にするのが一番よいでしょうね。(2008.3.18)


Q:会社員です。宜しくお願いします。会社のキャンペーンで「Ecoキャンペーン」という企画を考えており、省エネ商品を購入頂いたお客様に、景品として「観葉植物」を贈呈しようと検討しております。できればキャンペーンの趣旨から、光合成の効率の良い観葉植物を景品にしたいと思っております。どのようなモノが良いのか、ご教授いただけたらと思っております。宜しくお願い致します。(2008.3.14)

A:実は、これは難しい注文です。観葉植物はおそらく室内で栽培するようなものを想定しているのだと思いますが、そうすると当然のことながら室内の弱い光でも生育できるような種類であることが必要となります。さらに、1年間に背が2倍にも3倍にも伸びるような植物ですと、なかなか世話が大変です。ですから、たいていの場合、観葉植物としては、弱い光でゆっくりと育つような種類のものが喜ばれます。一方で、どれだけ光合成をするのかは、ほぼその植物の育つ速度を見ればわかります。どんどん育つ植物は光合成をたくさんしますし、ゆっくり育つ植物の光合成速度は低いものです。つまり、光合成を盛んにする植物は、強い光の下でめきめき大きくなる植物ということになります。というわけで、そもそも、観葉植物として喜ばれるという条件と、光合成をたくさんするという条件は、相容れないのです。
 なお、ご質問には「光合成の効率」とありますが、この効率というのが、どれだけ無駄なく光を使えるか、という効率のことだとすると、植物によってあまり違いはありません。なので、上のように、光合成の速度、と解釈してお返事することにしました。(2008.3.14)


Q:54歳男性です。どうぞ宜しくお願いいたします。みなさん大変専門的な高度な質問で、お忙しい中レベル低い質問で申し訳御座いませんがたとえばカラ松1本植樹したとして25年でどの位のCO2を吸収しますか。又、人間1名、1年で、どの程度CO2出している物でしょうか、どうぞ宜しくお願いいたします。(2008.3.10)

A:カラマツ1本がどの程度CO2を吸収するか、というのは、ある時点でどの程度の光合成をしているのかが知りたいのではなくて、光合成や呼吸のバランスの上で最終的にどの程度のCO2が空気中から木材に固定されたのかを知りたいのでしょうね。その場合、光合成の速度を考えてもあまり意味がありません。むしろ、25年間で木がどれだけ太くなるのか、が重要です。となると、僕の専門外ですが、考えてみることは出来ます。例えば、25年で木が5 m3の体積を占める大木になったとします。木材の比重が0.5とすれば、重さは2.5トンになります。木材の主成分はセルロースですので、仮に木材の重さの1割が水、残りがセルロースとして考えた場合、含まれる炭素量は、1トンになります。これは二酸化炭素に換算すると3.7トンに相当します。1年あたり150 kg程度ですね。おおざっぱな計算ですが・・・。
 一方、人間は、1日におおざっぱに1 kgの二酸化炭素を吐きだしていると言われています。ですから1年では365 kgですね。樹木の方の計算の前提がおおざっぱなものであることを考えると、まあ、人間一人が出すCO2の方が木一本が吸収するCO2よりは多いぐらいかな、という程度の結論かと思います。(2008.3.11)


Q:日陰と日なたで葉の大きさがちがうのはなぜですか?またそれはどのように違うのでしょうか?これは光合成に関係あるでしょうか?質問ばかりですみません・・・。なるべく早く回答いただければ助かります。(2008.3.5)

A:よくある質問に「日向と日陰で葉の大きさはどう変わるか?」という項目を新たに足しましたので、そちらをご覧頂ければと思います。(2008.3.5)


Q:二酸化炭素が気孔から吸収され、C3植物でのカルビン・ベンソン回路またはC4植物でのジカルボン酸回路に固定されるまでの反応速度と二酸化炭素が気孔から吸収されてから糖が合成されるまでの反応速度の比を、植物のおかれた環境によって大きく変化し、一概には言えないと思うのですが、ある例がありましたら教えて下さい。また、二酸化炭素が吸収されてから各回路に固定されるまでの反応速度に最も影響を与える要因もありましたら教えて下さい。よろしくお願い致します。(2008.2.23)

A:代謝経路というのは、それぞれ固有の反応速度定数をもつ多くの反応から成り立っています。しかし、定常状態を考えた場合は、大きな反応速度定数を持つ反応の場合、その反応の基質は使われて量が少なくなりますから反応速度は相対的に下がり、産物は量が多くなりますから、そのあとの反応の速度は上がり、結果として代謝産物量は多かったり少なかったりするものの、反応速度はほぼ一定になります。ですから、定常状態での反応速度については、お尋ねの比は1になるというのが酵素化学反応論からの答えです。もしかすると、そのような普通の意味での反応速度ではなくて、カルビンがC3回路を明らかにする時にやったように、放射性ラベルがその物質に何秒後にはいるか、といったおおざっぱな話でしょうかね。カルビンの実験で二酸化炭素をC14でラベルしてクロレラに取り込ませた場合、トリオースリン酸にラベルが見られるのは2秒以内で、糖やアミノ酸にラベルが見られるのは数十秒以内になります。ただ、この場合、「ラベルが見られる」というのは検出系の感度にもよりますから、別に反応速度を示すわけではありません。反応速度に影響を与える要因としては、当然のことながら光(ATPとNADPHの供給)、二酸化炭素濃度、温度、そして植物体での有機物の蓄積状態などが考えられます。二酸化炭素濃度と最後の有機物の蓄積状態は、リン酸律速を通して炭酸固定に影響を与えます。(2008.2.23)


Q:光合成の実験にをオオカナダモをつかってやりたいのですが、中学理科では一般にBTB溶液に呼気をふきこみ青色にしてから、一方は日光を当て、もう一方は暗室において対照実験をするのですが、BTB溶液がないのでリトマス紙をつかってやろうと思いました。しかし、まず呼気をふきこんでも酸性にならないのです。光合成には二酸化炭素が必要だとゆうことを実証したいのにこれでは先に進めません。どうすればよいでしょうか。(2008.2.20)

A:リトマス試験紙というのは、pH試験紙の中でも幅の広いpHの範囲をおおざっぱに見積もるためのものです。塩酸につけたり、水酸化ナトリウムにつけたりするのであれば、問題ないと思いますが、二酸化炭素がとけ込んだことによるpHの変化を調べるのに適しているとは思えません。同じpH試験紙でも、より狭い領域のpHを見積もるためのものもありますよね。そのようなものだと(調べたいpH領域にあってさえいれば)より敏感にpHの変化を見積もることが出来ます。試験紙をそのようなものに変えるのが一つの方法だと思います。ただ、それを言うならばBTBに変えるのが一番簡単な気がしますし。「どうすればよいでしょうか」というのが「リトマス試験紙を使ってどうすればよいでしょうか」という質問だとすると、パッと答えが思いつきません。実験というのは、適切でない方法を使ってしまうと、実験自体は何とか出来たとしても、結局あとで微妙なデータの解釈に困ることが多いので、最初から必要なものを用意してしまった方がたいていは楽です。(2008.2.21)


Q:はじめまして、「光合成の科学」を読ませていただきました。そのつながりで、このHPにいき着きました。バイオマス資源の増加のためにはシンク器官でのデンプン合成増加が望ましいと考えられますが、シンクリミットがおこるのであればショ糖合成系のSPSなどを強化=転流の増加によるデンプン増加が望めるんでしょうか?(2008.2.17)

A:まさにおっしゃるような発想で、遺伝子改変によりSPSの活性をあげた植物体を作成する研究が過去に行なわれています。僕が知っているのはもう十年以上前の研究なので、それ以降発展している可能性もありますが、当時の結果では、植物体全体のデンプン蓄積量ということでは少し変化が見られたという程度だったように思います。SPSの活性をあげると、葉緑体の中にデンプンを貯める代わりに転流に回しますが、結局、転流した先でどんどんデンプンに変える仕組みがないと植物体全体のデンプン量は変わりません。師管の中を糖が動いていく流れは道管のように方向が決まっておらず、基本的に糖を消費するなりデンプンに変えるなりして組織の中の糖の濃度が低下した場所に糖が移動します。ですから、お芋のようにたくさんデンプンを貯められるところがないとせっかくSPSの力で糖を転流に回しても行き場がなくなってしまいます。SPSの活性上昇と共に、イモをどんどん作るような形質を一緒に与えれば良いのだと思いますが、現在どの程度研究が進んでいるかはあまり知りません。それに、やりすぎて葉に投資するべき分までお芋にいってしまって、光合成が落ちてしまったら元も子もありませんしね。(2008.2.18)


Q:珪藻類などの植物プランクトンに興味を持っている者ですが、植物プランクトンの中では珪藻類が最も高い光合成効率を示すと聞きましたが、その効率はどのくらいなのでしょうか? また糖合成の効率はどのくらい持っているのでしょうか? 何れも汽水環境で太陽光という自然環境下での生育です。お忙しい中、素人で的を得ない質問かも知れませんが宜しくお願いいたします。(2008.2.12)

A:よくある質問のコーナーの「一番よく光合成をする植物は何ですか?」をご覧頂ければわかると思いますが、何の前提条件もなしに光合成効率が高いか低いかを議論することにはあまり意味がありません。光化学反応の最初の反応の量子収率を比べるのでしたら、植物であれ、植物プランクトンであれ、ほぼ100%になります。「糖合成の効率」というものの意味がよくわかりませんが、当てた光のエネルギーあたりの光合成によって作られた糖を燃焼させて発生するエネルギーということであれば、これはエネルギー効率になりますから、量子収率よりもだいぶ低くなります。不可逆反応である反応の各ステップでエネルギーの損失がありますから、きわめておおざっぱに言って10%以下になるかも知れませんが、いずれにせよ、環境条件によって大きく異なるので実際の現場での測定を伴わない議論にはあまり意味がありません。環境条件による差に比べれば、植物プランクトンの種類による差は小さいと思います。一方、飽和光の下での光合成速度を比べれば、種類によって様々な値が得られると思いますが、植物プランクトンの場合は何あたりで比べるか、という問題が生じます。同じ種類であれば、例えばクロロフィルaあたりの光合成活性を比べることができますが、違う種類では色素組成が全く異なりますから、そもそも比較になりません。
 珪藻類が最も高い光合成効率を示す、という話自体、僕は聞いたことがありません。もし、何か根拠のある話であれば、それを教えて頂ければ、そのような経緯でそのようなことが言われるようになったかを考えてみることができると思います。異なる種類の植物プランクトンの光合成を比べるとしたら、むしろ倍加時間がよいかも知れません。基本的に藻類の生育は光合成に依存しますから、倍加時間は光合成に依存するはずですし、生育速度なら「何あたりにすべきか」という問題を回避することができます。ただし、その場合にも、測定する環境の栄養塩の濃度によってまるで結果は異なるはずですし、必要な栄養塩の比率は植物プランクトンの種類によって異なりますから、やはり難しいでしょうね。何の前提条件もなしに、サッカー選手とバスケットボール選手はどちらが強いか、と聞かれても困るのと同じです。(2008.2.13)


Q:はじめまして。Pnmaxは葉の窒素濃度が高いほど高くなるという文献を目にしましたが、窒素濃度が高すぎて(実験的に高くした場合)光合成へ悪影響が生じることはないのでしょうか。また、一般にいわれる窒素過多は、徒長して軟弱になり、それによって病害虫にあいやすくなるとありました。その原因(もしくは結果?)に光合成能力の低下は考えられますか。特に木本について伺いたいです。よろしくお願い致します。(2008.2.8)

A:光合成と窒素の濃度の関係についてはいろいろと調べられていますが、基本的に実験のしやすい草本のデータが主だと思います。悪影響が出るとすれば、弱光条件で高窒素にした場合だと思いますが、光合成自体に明確な悪影響が出たデータというのは見たことがありません。ただ、栄養はあまり専門ではないので・・・。木本の場合、草本に比べてそもそも最大光合成速度が低いので、窒素に対しても早く飽和すると思いますから、悪影響が出るとしたら、草本よりも出やすいのでは、とは思いますが、これも僕自身に明確な知識があるわけではありません。予想としては、間接的な影響はありそうですが、窒素過多の直接的な光合成への悪影響というのはさほどないような気がします。(2008.2.10)


Q:学校で光合成色素の分離実験をしました。各色素のRf値の差は何によって生じるのか詳しく教えてください。(2008.2.6)

A:薄層クロマトグラフィー(TLC)の原理光合成色素の溶出の順番については「よくある質問」でかなり詳しく説明してありますよね。もし、それで足りなければ、どのような点をさらに知りたいのかを再度質問して頂けると答えることができると思います。(2008.2.7)


Q:光合成商(酸素発生速度/炭素固定速度)は,通常,0.8〜1.8の範囲にあるようですが,この値は,光強度によっても変動するものなのでしょうか(利用する窒素源(アンモニア,硝酸)や生成産物(炭水化物,脂質,タンパク)によって変動することはよく聞きますが)?(2008.2.4)

A:光合成商は、いわば呼吸商の植物版です。呼吸の場合、その基質は糖であることが多いのですが、糖が不足して脂質を分解する場合もよくあります。ですから、呼吸基質の種類によって呼吸商は変化し、逆に呼吸商の測定によって、呼吸基質を推定することが出来ます。しかし、光合成の場合は、その直接の産物は糖であり、少なくとも短い時間スケールでは光合成の産物として脂質が出来ることはありません。ですから、本来の意味での光合成における酸素発生速度と炭素固定速度の比は1であると考えることが出来ます。ただし、光合成によって作られた糖が他の組織で脂質などに変化すれば、その際に還元力が利用されますから、植物体全体としての比は変化します。その意味で、光合成とは直接関係しない部分によって決まる比を「光合成」商と呼ぶのは、個人的には誤解を招くのではないかと考えています。いずれにせよ、光合成商を決めるのは、光合成以外の部分になります。例えば、種子などに大量に脂質をため込む場合などには光合成商が変化します。光強度に関して言えば、光強度によって光合成の状態が変化したとしても、それは光合成商の変化には直接はつながりません。しかし、植物の生育の仕方などは光環境によって変化する場合もありますから(例えば、種子の例で言えば、光が弱いために種子の生産が落ちれば光合成商は変化する)、そのような間接的な影響を受けることはあります。(2008.2.5)


Q:はじめまして。パルス光での植物の成長促進について興味をもちました。考え方については、本サイトを参考にさせていただきました。そこで、的外れかもしてませんがいくつか質問させてください。2006.3.15の質問の答えで、例として「A’とBの反応が1msで起こるとする」と説明されています。この時間は、正確に求められているのでしょうか?また、ここでのAはP680であり、P680が励起され受容体Bに電子を渡すまでの時間と考えていいのでしょうか?それとも、生産物CはNADPHであり、それが生産されるまでの過程の合計時間でしょうか?最後に、このサイト(アドレス省略)にP680の還元時間が載っているのですが、私が「光合成の科学」やインターネットを使って調べた上では、このような値を他で見つけることができませんでした。以上です。もし私の勉強不足であれば申し訳ないのですが、簡潔にお答えいたたければ嬉しいいです。(2008.2.3)

A:ご覧になったサイトは、2006.3.15の質問者が見たサイトと同じものだと思います。その時にも回答しましたが、光合成の知識をあまり持たない方が執筆しているようです。2006.3.15の回答にも書いてありますように、1 msというのはあくまで仮定です。実際には、光合成には光反応の部位が2つ(光化学系Iと光化学系II)あり、単純化されたモデルをそのまま実際の出来事と信じてしまうのは適切ではありません。P680の還元時間は、P680への直接の電子供与体(チロシンZ)が還元されている時は、数十ナノ秒と極めて速いとされています。一方で、チロシンZが酸化されている時は、水分解系がチロシンZを還元する速度が律速になります。水分解系は1分子の水の分解過程で4電子が生成しますが、その各ステップで反応速度は異なります。速度としては数十マイクロ秒から数ミリ秒の間になります。電子伝達全体としては、この水の酸化のもっとも遅いステップと、シトクロムb6/f複合体でのプラストキノンの再酸化がやはり数ミリ秒とされていますので、これらが律速段階となります。
 ちなみに、ご覧になったサイトでは、光合成速度に対する照射光のパルス周期の影響を見た図を出していますが、周期が400マイクロ秒の時と500マイクロ秒の時で光合成速度が約2割異なっています。光合成がこの差の原因と考えた場合には、理論的にはこれは説明できませんから、得られた結果は単なる誤差であるか、さもなければ、光合成とは無関係な原因不明の理由によることになります。ただし、ここで紹介された実験結果自体は怪しい部分があると思いますが、パルス光を用いることにより、光量あたりの光合成が増大するというストーリー自体は、随分昔から報告がありますから正しいものと思われます。もっとも、飽和光のパルス光の場合は違いが出やすいと思いますが、弱光の場合は、なかなか検出可能な差を示すのはつらいかも知れません。(2008.2.3)


Q:スイカを栽培している者ですが、光合成の森というサイトを見たので一つ質問をさせて下さい。この冬の時期の玉伸びには苦労しています。スイカの光合成にはアミノ酸の一種のシトルリンも関係するようですが何か資料になるような物はありませんか?(2008.1.28)

A:野生のスイカでは、葉に含まれるシトルリンが高温乾燥ストレス条件下での光合成活性の維持に効いているのではないかという研究を奈良先端大学の横田先生のグループが発表されています。冬の玉伸びとは関係なさそうに思います。資料といっても、実際の論文しか知りませんが、奈良先端大学の横田研究室のホームページに簡単な研究紹介が載っていると思います。(2008.1.28)


Q:光合成を阻害する場合、暗所での培養とDCMUの添加を行いました。DCMUの添加は根・芽の形成など大きく阻害の影響が出たのですが、暗所での培養はあまり阻害が確認できませんでした。同じ光化学系の阻害のと考えられるのに、なぜこのような違いが出るのでしょう?(2008.1.26)

A:DCMUは光化学系IIの阻害剤ですので、確かに光合成を阻害します。しかし、暗所においた場合は、光合成速度が0になるだけですので、光合成が阻害される、という言い方はしません。それはさておき、光は通常、光合成の反応を進めるエネルギーとして使われますが、DCMUがある場合は光合成が阻害されていますから、同じ光を当てればエネルギーが過剰になり活性酸素などの発生につながる可能性があります。一方暗所では、そのような問題は生じない一方、光形態形成などは正常に進行しないでしょう。従って、光合成の速度が0になる、という点では同じですが、植物の生育には異なる影響を与えることが充分に考えられます。(2008.1.26)


Q:突然の質問すいません。植物にはクロロフィルのほかに構造のよく似たヘムを持つものがあるようですが、植物はなぜヘムを持っているのでしょうか?ヘムが植物の中でどのように働いているのでしょうか?またクロロフィルaの中心元素が、Feの場合とバクテリオクロロフィルの中心元素が、Feの場合働きに違いはありますか?(2008.1.23)

A:植物におけるヘムの典型的な例としてシトクロムというタンパク質に結合しているものがあります。シトクロムはヘムを持つことによって酸化還元を行なう(電子を授受する)ことができるようになり、光合成の電子伝達反応に使われます。後半の「働き」というのがよくわかりませんでした。クロロフィルの中心金属を人間が鉄や銅に置き換えることはできますが、そのようなクロロフィルが植物の中で働いているわけではありません。クロロフィルの中心金属はマグネシウムで、バクテリオクロロフィルの場合は、マグネシウムの代わりに亜鉛が入る例が知られているだけです。もし、人間が中心金属を鉄に置き換えた場合にどうなるか、という質問でしたら、吸収スペクトルなどは当然異なることが予想されますが、実際にどのようになるかについては知りません。(2008.1.23)


Q:始めまして、お願いします。 光の当る室内での植物は、光合成がおこなわれますか。また逆に室内の夜の植物は、どういう状態がおこなわれますか。たぶん、中学校で習った記憶がありますが、光合成とは逆に、酸素を吸って、二酸化炭素を出すので、夜の室内の植物は、あまりよくないと、記憶しております。正しいかどうか教えてください。(2008.1.21)

A:室内でも光があたれば光合成がおこります。また、おっしゃるとおり、夜間は、光合成は止まり、呼吸だけが行なわれるので、確かに酸素を吸って二酸化炭素が放出されます。ただし夜の植物が「あまりよくない」かどうかについては光合成FAQの「植物の呼吸の速度はどれぐらいか?」をご覧下さい。(2008.1.21)


Q:イロハモミジの紅葉にともなう色素変化について研究しています。 (1)組織を観察したところ、黄葉ではすっかり葉緑体がなくなって、細胞内には黄色の顆粒しかありませんでした。これは有色体と判断してよいのでしょうか?また、葉緑体が変化して有色体になったわけではないのですよね? (2)薄層クロマトで紅葉に関係するアントシアニジンの同定を試みたのですが、スポットの色とRf値がよくわかりません。何か参考となる資料をご紹介いただけないでしょうか?ちなみに、ナスに見られるデルフィニジンはイロハモミジの葉では見られないことがわかりました。 (3)赤みがかった葉(橙色)には、アントシアニンが液胞中に見られますが、このアントシアニンは緑葉または黄葉のどこからできたものでしょうか?それを確かめるにはどのような実験をすればいいのでしょうか? (4)イロハモミジなど落葉広葉樹の紅葉と離層形成にともなう糖類の蓄積と落葉との間にどのような関係があって、どのような意味があるのでしょうか? 光合成とは直接関係がないかも知れませんが、教えていただければ幸いです。(2008.1.20)

A:光合成色素ならまあわかるのですが、アントシアニンとなると専門外なので・・・。ごく一般的な知識で答えることになります。(1)組織観察で見られる顆粒が有色体かどうかは、やはり細かい構造を見てみないとわからないように思います。膜構造がどうなっているかなどが重要なポイントになると思います。(2)薄層クロマトも光合成色素ならわかりますが、それ以外はどうも。光合成色素だと有機溶媒で展開するのですが、アントシアニンだと親水性の高い展開溶媒を使うはずですよね?僕には残念ながら知識がありません。(3)アントシアニンは葉の中で合成されるはずです。葉の中の転流しきれなかった糖を原料として合成していると聞いていますが、これも僕自身は実験をしているわけではないのであくまで伝聞です。(4)「意味」というのが生態学的な「どのような得があって」ということだとすると、いまだにわかっていないと思います。ただし、離層の形成に伴って転流は阻害されますから、糖類は離層形成後には葉に蓄積しやすいのは確かでしょう。その場合、アントシアニンの原料が糖であることを考えると、転流の阻害が紅葉のきっかけになるというのはメカニズムとしては自然だと思います。あと、専門外なのでわかりませんが、おそらくこれらのことについては先行研究があるのではないかと思います。論文検索をすれば何か引っかかってきそうな気がしますが・・・。(2008.1.20)


Q:光合成を使って二酸化炭素を酸素に変える装置は作れますか?(2008.1.19)

A:いわゆる人工光合成の研究というのは、いろいろなところで進められていますが、なかなか効率を上げることが出来ない状態です。光合成というのは、光のエネルギーを使って有機物を作る反応で、その際に二酸化炭素が吸収され、副産物として酸素が発生します。光のエネルギーを人間が使える形にすればよい、というのであれば、太陽電池がありますよね。太陽電池ですと、今では普通のものでも光の20%を電気に変えることができますから、充分実用化されています。その他、光触媒を使って光のエネルギーによって水を分解し、酸素を発生させることはできます。この際、水素も出ますから、将来的には人間のエネルギー源として使えるかも知れませんが、今のところまだ効率が低すぎて実用化はされていません。水を分解して酸素を発生するのは、光合成の反応のいわば半分だけで、光合成の場合は水の分解によって得られた還元力(光触媒の場合は水素になる)を使って二酸化炭素を還元して有機物を作ります。この二酸化炭素を還元して有機物を作る、いわば残りの半分のところまでできる装置は、現在の所「夢」の段階といってよいかと思います。でも、現在は夢であっても、基礎的な研究を続けて生きさえすればいつか現実にできるのではないかと希望しています。(2008.1.20)

Q:光合成を使って二酸化炭素を酸素に変える装置は作れますか?とゆう質問をしたものですが素人でもそのような装置はつくれますか?〔作ってみたいんです〕(2008.1.21)

A:うーむ。もし、「装置」というのが、生き物を全く使わない機械を考えているのでしたら、無理だと思います。ただ、容器の中の生き物に光合成をさせることはできます。よくやるのは、ペットボトルに水と水草を入れて、しばらく太陽の光を当てると、光合成によって水が分解されて酸素が泡となって出てきます。その程度なら何とかなると思いますが、それ以上のことをやろうとすると難しいと思います。(2008.1.21)

Q:しつこくてすいません。その、生き物を使った装置の作り方を詳しく教えてください。(2008.1.21)

A:作り方といっても、実際にはからのペットボトルに水と金魚屋さんか何かで買った水草(オオカナダモなど)を入れるだけです。最初にペットボトルの口のところぎりぎりまで水を入れてふたをすれば、空気が全く入らない状態にすることができます。そこに光を当てると、水草が光合成をして、それによって水が分解されて酸素が発生します。酸素は少ししか水に溶けないので、ちゃんと光合成をすれば泡になって出てきます。光は強い方がよいので、室内の蛍光灯などではなく、太陽光がよいのですが、太陽光だと夏場などは水が温まるので、温度が上がらないように注意する必要があります。ただの水だと、もともと空気が溶けていますので、きれいな酸素を集めるためには、ペットボトルに入れる水を最初に沸騰させておきます。そうして、さました水にはあまり空気が溶けていませんから、泡になるのは理想的には酸素だけになります。ただ、その場合、最初に出た酸素は水に溶け込みますから、泡が出るのは少し遅くなります。出てきた気泡が酸素であることは、(もしたくさんガスを集めることができたら)火のついたお線香を入れてみると燃え方が変わることなどで確かめることができます。(2008.1.21)

Q:光合成を使って 二酸化炭素を酸素に変えるペットボトルのやり方以外にないのですか?(2008.1.21)

A:もちろん、難しくなってもよいのでしたら色々あります。ただ、何らかの方法で光合成をさせたとしても、実際に光合成をしているかどうかがわからなくては意味がありませんよね。光合成を測る方法に関しては、「光合成の測定」にまとめてありますので、そちらをご覧頂ければと思います。(2008.1.21)


Q:こんにちは、私は大学一年生です。大学で新エネルギーの開発という内容の講義を受けてふと思ったのですが、植物から光合成の機能だけを抽出し、保存や培養することは可能なのでしょうか?私は機械工学科に所属していてこの分野の知識は全くないので、間抜けな質問でしたらごめんなさい。(2008.1.11)

A:光合成は、植物の細胞の中にある葉緑体という小さな器官の中で行なわれます。そして細胞を壊して葉緑体を取り出すことは可能です。ただ、生物の体というものは、見かけ上はほとんど変わらなくても、新陳代謝をして同じ状態を保っています。ですから、生物が死ねば、新陳代謝をするためのエネルギーが得られず、植物は枯れて腐っていきますし、葉緑体も取りだしたあとそのまま置いておけば分解してしまいます。葉緑体にしても、例えば、凍らせて保存すれば、しばらくの間は機能を保てますが、凍らせることによって機能の一部が失われますので、自由自在に、というわけにはいきません。
 一方、植物の葉緑体は、シアノバクテリアという単細胞の細菌の一種が大昔に別の生物の細胞の中に共生したのが元です。このシアノバクテリアは、いわばそれ自身生きている葉緑体ですから、光合成の機能を持っていますし、簡単に培養もできます。この場合、機能を「抽出」したわけではありませんが、光合成の機能を保存や培養したと言えなくはないかも知れません。(2008.1.11)