先端生命科学入門 第5回講義

サルとサカナの多様な視覚

Q:時間の都合上省略されてしまった部分が多々あり残念でしたが、ゼミの最後に紹介された新世界ザルの色覚変異の話が非常に興味深かったです。河村教官は「あるサルが見つけられない餌を他の色覚を持つサルが見つけられる」ことがメリットとして挙げられると仰っていましたが、それならば狭鼻猿類のようにX染色体上に多色のオプシンが乗っているほうが有利であるように思われました。やはり、2色型と3色型が混在している以上、2色型色覚のほうが3色型色覚よりも有利となる点が何かしら無ければ説明がつかない気がします。(もしかしたら2色型色覚の方が3色型色覚のサルに比べて桿体細胞が働きやすく暗闇での活動に適してる、とか?いや、まぁ完全に勘の域ですが。)
 あと、ゼブラフィッシュの「視野によって色覚が異なる」と言う話も非常に気になりました。やはり、これも視野の何処で物体を捕らえるかによって見え方が変わることに対する何かしらのメリットがあるのでしょうが、それが一体何であるのか不思議に思いました。


Q:視物質に種類があるとか、人間以上に波長を識別できる生物が特に珍しくもなく存在するということを知らなかったので、非常に驚いた。また、魚が自分達と違う世界を見ているなら毒々しいルアーをエサに間違えるのも、なるほどそういうこともあるか、とも思えた。
 新世界ザルの多様な視覚というのも不思議だった。強いセレクションがかかっているといってもそんなに多産でもそんなに多頭数でもない群のなかで、どうやって多様性を維持しているのか?群間の交流や視覚の種類で生殖成功率が変わったりするのだろうか?コミュニケーションがはかれるのか?いろいろと疑問はあるがそれでも、人は人であるものが同じにみえてもそれから受ける影響は千差万別なわけで、実際違う世界を見ているに等しい。それが個性であり、別に我々はそれを当然と思ってるわけで、そう考えればサルたちにとってみれば我々が考えるほど大きな違いではないのかもしれない。


Q:色彩と色覚が共進化を遂げてきたという話に、なるほどと思いました。交配相手を獲得するために華やかな外見を持つ生物は数多くあり、よく取り上げられますが、それを受容する色覚が発達していなければ無意味であることを見落としていました。
 交配は種内のみで関係する事柄ですが、天敵や餌を見つけるのは種間の要素であり、これらも考慮すると視覚は種を越えて相互的に進化(もしくは退化)してきたと言えます。このような視点は私にとっては新鮮であり、また他の感覚器(嗅覚や聴覚など)についても同様に考えれば非常に興味深い結果が期待できるのではと感じました。


Q:今回の「サルとサカナの多様な色覚」という講義で一番興味を抱いたのは、新世界ザルの色覚変異だった。新世界ザルでは一つの種の中に全部で六種類の色覚型があるということで、色覚型が異なる以上、見え方も異なるのだろうから、それぞれでどのように見え方が異なるのか気になった。この見え方の違いにより、各個体間でどのような生活の仕方の違いが生じるのかも気になる。メスにのみ三色型が見られるということは、三色型の色覚をもつメスのみに特別な働きがあるのだろうか。新世界ザルがどのような生活をするのかよくわからないので、なかなか想像しにくいが、このことは非常に大きな不思議だった。


Q:色覚とは違う波長の光を違うと感じる感覚のことだ。動植物の様々な色彩は色覚の、逆に色覚は色彩の進化の原動力となり共進化を遂た。網膜上の視細胞には桿体細胞と錐体細胞の2種があり、視物質を含む。視物質はオプシンとレチナールからなる分子で、レチナールの違うオプシンの元では違う光波長を吸収する。色覚は種類の異なる錐体細胞からの出力の違いを脳が計算し生じる。レチナールは2種、オプシンは5種類(桿体型+錐体型:赤.緑.青.紫型)ある。哺乳類の赤型タイプのオプシンは赤-緑オプシンと呼ばれX染色体上にある。人などは遺伝子重複で赤・緑オプシンに分化し常染色体の青オプシンと併せて3色型色覚である。雄は赤-緑オプシン遺伝子を1種もち2色型色覚だが、対立遺伝子が赤黄緑の3種なので3通りの2色型色覚がある。雌は2種の錐体細胞と3通りの視細胞の組み合わせで、種内で6種の異なる色覚が存在する。この他新世界猿には色覚変異も見られ、色覚と行動の関連の研究発展も期待される。