植物生理学I 第8回講義

実際の研究例−亜高山帯の樹木の枯死

第8回の講義では、亜高山帯の樹木の枯死の原因について、東邦大学の丸田さんのご研究を中心に紹介しました。乗鞍岳のオオシラビソの場合と、富士山のカラマツの場合に分けて、葉の下面の光阻害や、樹皮抵抗の低下による含水量の低下が、冬から春先にかけての樹木の枯死の原因になっているらしい、というお話でした。


Q: 最初の話の落葉樹か常緑樹かという話が面白かったです。こういう事実があれば、化石から当時の気候状態を推測することも可能なんだと思いました。葉の構成コストと維持コストを支出、光合成を収入と見て、葉を維持してまで光合成する方が得か、または葉を落としてしまって省エネにしてまた新たに葉を構成する方が得かという経済系のたとえ方がわかりやすかったです。でも、(うまく表現できませんが)擬人化している感じもしました。(落葉を選ぶかどうかは植物が判断しているというような、、、)確かに支出を少なくしようとするという考え方はよく分かるのですが、もちろん植物自身に意志があるわけでもない、本当はもっともっと省エネにする方法があるのかもしれない(物理的には可能でも実際は出来ないとか…)、または常緑樹も葉を試しに落としたら実はもっと効率がいいことが起こったかもしれないとかいうことを考えると、本当にこんな経済的に出来ているものなのか?とも思いました。現在ある状態(進化の結果)がもっとも経済的であるかのように思えましたが、この先進化するようなことは考えられないのでしょうか。今回は気候帯と光合成の関係でしたが、気候帯以外に光合成を左右するような条件がでてきてしまった場合とか…。(漠然と考えた事を並べただけになってしまった気もしますが…今回はこの辺で)

A:擬人化というのは、生物学をやっていると陥りがちな罠なのですが、もちろん植物に意志があるわけではありません。基本的には、長い時間のうちには、いろいろなことをやってみる植物が出てきて、それが環境に適合していれば生き残るというのが進化論のおおざっぱな概念ですよね。あとは、現実の時間が、充分「長い時間」であるかどうかです。


Q:
◎常緑樹と落葉樹
機構として常緑樹の落葉と落葉樹のそれは異なるのでしょうか、それとも単に葉の寿命の違いなのでしょうか。 常緑樹のそれぞれの葉は人の皮膚のような代謝を行っているのでしょうか。またそのような代謝が存在するとしたら、落葉樹にも同様ことが見られるのでしょうか。
◎葉の生存率と葉齢(年枝)を横軸にとって示したグラフについて
より若い葉の生存率が低くなっているところ(森林限界下部6-7年)の解釈として、低くなっている年に気象条件などにより大きな阻害が起こり、その影響がその年に出たばかりの新葉に最もダメージを与えた、というのは妥当でしょうか。
◎樹皮抵抗と軽傷、重傷 授業の中で、やすりをよりかけることで重傷のほうが軽傷よりも表面積が減る(樹皮抵抗が減る)のでは、と質問したのですが、樹皮抵抗と含水量の相関から樹皮への傷が深く抵抗が大きいときは表面積の増大から蒸散が増すと考えられ、かつ、傷の強度と含水量の関係を示したデータからここでの重傷とは樹皮抵抗が軽傷よりも大きいもの、と考えました。

A:基本的には常緑樹と落葉樹の落葉の違いは、葉の寿命の違いによって説明できるでしょうね。種にもよりますが、常緑樹でも、ある季節に一斉に葉を(全部ではないが)落とすものもあります。代謝に関しては、常緑樹、落葉樹共に、葉が完全に展開した後は、一部の例外を除いてタンパク質などの代謝回転は非常に遅くなります。また、葉の表面のクチクラ層などは剥がれていく一方だそうです。
 葉の生存率のグラフの解釈は誤差が大きいので難しいですが、基本的にはそれでいいのではないでしょうか。
 授業の中では、質問の意味を誤解して答えていたような気がします。ここで考えている解釈でよいと思います。


Q:オオシラビソについて
 積雪面より上の部分の木のほうが、強い光による光阻害を受けやすく、さらに蒸散により水分を失いやすいために、積雪面より下の部分よりも強いストレスにさらされているとのことであった。もちろん、理屈的に納得はいくのだが、少々疑問も残る。まず、実験で同時に調べられるのは、積雪面より下、と言ってもそこまで下部のものは採取できないのではないだろうか。どの程度深く雪の中にあった葉を比較に使ったのかは気になるところである。また、雪の中にあると言うことは、確かに強光による光阻害は受けにくいだろうし、また湿度も100%であるのだから水分補給にも事欠かないであろう。しかし、光は届くのであろうか。光が届かなければ、光合成は不可能となり、結局「収入」が少なくなってしまうのではないだろうか。資料から出した結論は、オオシラビソが構成コストを抑えるために葉を落とさないが、その葉が年が経つに連れて枯れてしまい、収入がなくなるので立ち枯れになってしまうのではないか、とのことであった。積雪面より下の部分の光合成の減少は、直接的ではないかもしれないが、立ち枯れに関わっているのではないだろうか、と思った。もしも雪の代わりに、ある程度の光は通し、さらに湿度も保てるようなカバーなどをオオシラビソの木の下半分にかけたらどうなるのであろうか、と興味がある。もっとも、背の高い木では困難であろうが。
 また、研究室外の自然の中での実験は様々な問題があることを改めて知ったように思う。

A:たとえ光の存在があっても、温度が氷点下では、炭酸固定系が事実上動かないので、光合成の「収入」はないも同然だと思います。従って、そのような場合には、光のエネルギーを使えないので、光はない方がよくなるのですよ。


Q:講義では木はなぜ枯れるかの話で乗鞍岳のオオシラビソと富士山のカラマツの場合を見てみた。私はオオシラビソの方に重点をおいて伺いたいのだが、1600mでストレスがない所で傷がついていても大丈夫で生きていかれ、2500mのストレスのかかる所での傷は致命傷である。だが、結論としては水分供給はつねに必要ということだった。ここで、質問なのですが、植物のストレスって何ですか?低温とか、光が足りないとかそのような要因のことを示しているのか、それとも、植物の生長になんらかの形で障害があるってことなのか?よくわからないのですが、植物にストレスがあるっていうのがちょっと信じがたいです。ストレスが生じるってことはその環境にもとから不向きだったのではないのでしょうか?また、2500mでは傷で水分供給しないとだめなのにしない、または水分供給が遅れてしまうので枯れてしまうってありました。なぜ水分供給が遅れてしまうのですか?植物ってadhesionとcohesionで水を運ぶのではないのでしょうか?だから水のサイクルは自然環境では切れることはないと思っていました。そうしたら講義でエンボリズムの話と傷口から気泡が入ってしまうということを聞き、納得した。だが、疑問に思ったのが、気泡って軽いからすぐに導管の上のほうに流れていかないのですか?プールとかでプールの底から空気をだしたらその空気の気泡はすぐに上にいきますよね、そのように導管でも気泡は上にいかないのですか?あと、気泡は溜まっていってしまい、やがて植物は枯れてしまうのですか?それとも気泡の抜け道などあるのでしょうか?

A:授業の中で、使ったストレスという言葉は、まさに低温とか光が足りないとかそのような要因のことを言っています。「環境が元から不向き」などということは植物の場合ないのですよ。1つには、環境は常に変動していて、ある時に過ごしやすくても時間がたてば不向きになることはいくらでもあります。また、植物には足がありませんから、種が落ちてしまえば、その与えられた環境で生きていかなくてはなりません。
 導管の中の空気については、温度計を考えてみましょう。赤いアルコールの入った温度計を落としたことはありませんか?ショックで一回途中に空気が入ってしまうと、振ろうがどうしようが元には戻りません。細い管の中では泡はそうそう移動できないのです。(私は若いのでデジタル温度計しか知りません、と言われたら返す言葉がありませんが)


Q: 今回の講義は、樹木の「冬枯れ」の原因についてだった。今まで自分の家の観葉植物が冬に枯れていくのを何度か見ていたので、とても身近な話題だった。枯れる原因は、低温に植物が耐えられなくなったり、また、霜がなんらかの影響を及ぼしているのだろうと漠然と考えていたが、どのようなメカニズムで樹木が枯れる原因がつくられるのか紹介されて興味深かった。疑問に思ったのだが、樹木が上部に水を吸い上げる力は毛細管現象にのみ頼っているのだろうか?血管のように、導管が収縮・拡張して水を送ったりすることができれば、エンボリズムによって枯死する可能性を小さくすることができるのではと思った。そしてそのような仕組みを獲得した植物がいてもいいのではと想像してみたのだが・・・。

A:そのような仕組みを獲得したら動物になるのでは?その意味では人間が光合成をして悪い理由もないかも知れませんが。根から水を吸い上げるシステムといしては、あと根圧がありますね。


Q: 今回の授業で気になったのは、木の中は冬の間、どうなっているのだろう、ということです。授業の最後のほうで、3月から4月にかけて水分供給が落ちるのは、導管が凍ったり解けたりを繰り返すために気泡が入ってエンボリズムが起こる、というお話でしたが、では、それよりもっと寒い時期には導管は完全に凍ってしまうのでしょうか?師管は糖などを輸送する器官なので、不凍液があるのと同じような状態になり、凍らずにいることができるのかもしれませんが、そう考えると、冬の間、導管は機能せず、師管だけが働いている、というアンバランスな状況になっているのでしょうか?なんとなく、植物が生きていくためには、導管、師管の両方がきちんと機能していることが必要なように思えるのですが。植物は導管の機能が失われた状態で生きているのでしょうか?
 また、乗鞍岳でオオシラビソの光化学系IIの量子収率のグラフのところで、オオシラビソは冬の間エネルギーを熱として放散している可能性がある、という解説をされていましたが、このグラフからなぜそれが言えるのかがよくわからなくなってしまいました。そして、エネルギーを熱として放散しているのは雪の上に顔を出しているものだけなのでしょうか?それとも、このグラフで示されているすべてのものが熱を放散しているのでしょうか?また、植物はどのくらいの熱を発生することができるのですか?熱を発生しているとは言っても、周りの雪を溶かすほどのものではないようなので、熱は植物の内部だけで発生していて、外側にはもれていないような気もするのですが。

A:亜高山帯、冷温帯では、導管が冬季に完全に凍結することがあります。そして樹木の中には、導管が凍っても平気なものもあります(全ての樹木がそうだというわけではありませんが)。
 熱の放散の話は、少し誤解を招く表現でした。言いたかったのは、光合成の収率が低下している(これは事実)ので、光合成が阻害されている(これはマイナスのイメージですね)か、もしくは、低温下で光が当たったときに阻害が起こらないように、あらかじめ熱になる収率を上げている(これはプラスのイメージ)のどちらかであろうと言うことです。基本的に雪の下でも光合成の収率は低下します。熱を発生、といっても別に無から生じるわけではなく、太陽の光のエネルギーが熱になるだけです。その意味では、太陽のエネルギーは吸収された部分は、どのみち最終的には熱になります。


Q:落葉樹と常緑樹とを分ける式を自分なりに作ってみました。
1、冬に 光合成>維持コスト ならば常緑樹。
2、冬に 光合成<維持コスト であり、
  さらに 維持コスト−光合成>構成コスト ならば落葉樹、
  あるいは 維持コスト−光合成<構成コスト ならば常緑樹。
こんな感じでどうですか? ということは冬が長い地域では維持コストが多くかかるので落葉樹が多いってことですか?まあこんなに単純ではないと思いますけど。

A:単純かも知れませんが、モデルとしてはよいのではないでしょうか。このように、整理して考えておくのは有用ですね。


Q:今回の講義では、枯損要因についてデータを用いて検証して推測した。落葉樹と常緑樹とも、環境によってどうなるかが大きく影響されるということがわかりました。積雪面下では、葉がストレスから保護されていて、抵抗力が表と違ってついていないために、春に陽射しが反射して葉の裏にあたると光阻害を受けて大きく影響を受けたり、ストレスが多くかかっている条件では、枝の傷は幹についていても致命的になったり、特に凍結に関しては、積雪のときと違って凍結と融解を繰り返すと気泡ができてしまって、導管の通導性をなくしてしまうというところで、普段は気づかない環境の変化によって、生存率や生長は変わっていくということがわかった。しかし、生理学における要因の推測というのは、厳密な実験によるものばかりではないという事を感じた。樹皮抵抗のデータにおいて、強風による影響であるという証拠がないがそれが原因とされていたり、摩耗処理のところでの含水量のところで、枝を切断したストレスによる影響を本当は無視できないが、この場合考えていなかったりするからである。

A:このような実験の場合は、生理学と言うより生態学か、生理生態学でしょうね。いわゆるフィールド実験の場合は生理学の実験のように、実験条件を厳密にコントロールすることはほとんど不可能です。


Q:今回の授業では、木についての生理的考察を行っていた。より具体的にいうと木の水に対するストレスについての考察である。今回のレポートでは、干ばつに対する植物(木)の適応性について調べてみた。
 まず、大まかに分けて2種類の機構がある。
Drought AvoidanceとDrought Toleranceである。Drought Avoidanceは、年間を通して、水分が十分にある時期のみに活動し、水分が少なくなる時期になれば活動を停止したりすることである。カゲロウのように雨季が終わるとそのlife cycleを終えてしまうものなどに見られる。Drought Toleranceは、さらに2つの機構がある。それらはDesiccation AvoidanceとDesiccation Toleranceである。

Desiccation Avoidance
根の長さ・伸長方向の調整→干からびやすい植物では、根は浅い。干からびにくい植物では、根は深い。
Resistance to liquid water flowの調整(根と葉の間のwater flow resistanceを下げることにより根と葉の間のwater potentialの勾配をなくす)
蒸発量の調整
1、 成長限度を低くする
2、 葉の大きさを小さくする
3、 アブシジン酸の分泌
4、 表皮の状態の変化(epicuticular waxの増加)
5、 気孔の開閉

Desiccation Toleranceにも同じように、Dehydration AvoidanceとDehydration Toleranceという2つの機構がある。前者については、high RWC maintained at low Ψ、後者については、low RWC and low Ψenduredと書いてあった。これらについては、いろいろと本を調べてみたが、よくわからなかった。

A:最後の部分は僕の専門外ですが、器官に対する水の供給が少なくなっても細胞の水を保つ機構と、細胞の水が少なくなっても何とか堪え忍ぶ機構、ということだと思いますよ。


Q: The previous lecture was again different in that we learned about experiments that were more ecological than biochemical. The differences in the experiments performed in each of these areas were evident; this time they were based on a much larger scale, with not much as much emphasis on the variables of the environment. This was slightly disturbing at the beginning, since rigid control was executed in previous experiments. This fact gave an impression that the data in the ecological experiments this time was not totally reliable. But as this is true in one sense, for example, where the trees were cut in different degrees, there was no indication of the extent of each degree. There could be several effects on the trees aside from the fact that they lost their water more easily when it had an outlet for evaporation. But on the other hand, these kind of experiments will be less likely to contradict or be unrelated to phenomenon that actually occur in nature. This is important considering the content of lecture on Feb. 9th, when the lab conditions were so controlled that the results were totally unrelated to what happens in nature. In other words, a laboratory is an unnatural environment, so the results can not always explain what occurs in the true environment. It is likely that when possible, a combination of both types of experiments can yield the most reliable results.
 There is some basic information that is necessary to understand the concept of embolism. I am still unclear to me as how the capillary affect works. Was it mentioned that this effect works when the pressure of water on the water surface is higher on the outside? And I am unsure as to whether the capillary is not just a cylinder, but one that it closed at the top. It was interesting that the most damage done by embolism was at times when the temperature changed relatively drastically throughout the day, instead on the most extremely cold days. This was explained that the change between ice and water starts embolism, which in turn restricts water from being provided to the rest of the plant. It is not a simple matter like: the warmer the better. This was very surprising and interesting.

A:生態学と生理学の違いはまさにおっしゃるとおりです。自然には起こり得ないことを一生懸命調べてもしょうがないですけれども、自然をただ見ているだけではその裏に隠れたメカニズムはわかりません。2つの学問分野は協調していく必要があるでしょうね。
 毛細管現象についてですが、毛細管現象は水の表面の圧力とは無関係です。また、管は閉じたものである必要もありません。


Q:落葉樹と常緑樹の違いは以前から興味があり、不思議に思っていたことなのですが、落葉樹か常緑樹かが夏と冬の光合成効率に依存していて、落葉樹は、夏は効率よく光合成できるが冬は光合成効率が非常に落ち葉を維持させるコストさえなくなってしまい落葉すること、反対に常緑樹は夏と冬の光合成効率に大きな差がなく、夏に沢山の葉を生産することができないので葉の寿命を長続きさせようとし、冬でも葉を維持するコストを保つくらいの光合成はできるので落葉しないという大きなメカニズムの流れは子どもにも説明できるほど簡単で、このような身近な科学が小学校等で扱われるようになったらいいのでないかと思いました。またオオシラビソの葉が、下面のみ光阻害を受けることに関して、裏側は光になれていないから弱いということでしたが、環境の変化とその適応が葉の裏表という身近なところでも見られ実感できるのですね。
 今回の講義で見せていただいた実験は、実験条件が完全に限られてていなかったり、詳細がわからなかったりして今まで授業で扱った実験よりも曖昧な感じを受けました。しかし自然の大きさを感じることのできる講義でした。

A:上でも書きましたが、野外の測定で、厳密な実験条件の設定をすることはほとんどの場合不可能です。ただ、きちんとした結果が得られた場合は、まさに自然を記述したことになるでしょう。


Q:今回は落葉樹と常緑樹についてなぜそのような現象の違いが起こるか、そして、なぜ木は枯れるのかという普段当たり前で疑問もあまり持たない内容についての研究ということで、とても興味深かった。また、今まではもっと小さいところの話をしていたのに対し、今回は、もっと生態学と絡んだ大きなものについての研究だったので新鮮だった。ただ、一つ思ったのは生態学的研究と生理学的研究における実験の条件設定に対する細かさ、もしくは厳しさが同じ生物学であってももう少し細かく分けた分野で違ってくることが不思議だった。最も研究の対象自体がコントロール条件下に持っていけるかどうかで仕方が無いとも思うが。
 植物が常緑樹か落葉樹のどちらをとるかという問題で経済学的な「収入」「維持コスト」「構成コスト」という考え方を適用して考えるところにとても興味がわいた。植物はもとからいかに「効率よく」エネルギーを使うかなど、「効率」、「コスト」といった経済学的な考え方が適応できると持っていたが実際にこのように経済学的考え方を用いて生物学的現象を説明できることができることが興味深かった。前に経済学の「ゲーム理論」が生物の進化などについての説明に使われることがあると聞いたことがあります。この理論は植物生理学にも使われているのでしょうか?
 今回の研究は乗鞍岳のオオシラビソという常緑樹と富士山のカラマツという落葉樹における「枯れる」という現象についてしらべており、共にどのような環境ストレスが「枯れる」原因となるのかということでしたが、ここで少し思ったのが、確かにストレスの大きな環境では「枯れる」という現象が光阻害や水分供給によるものだと理解できますが、では環境ストレスがそんなにかからない温暖地域などでは何が原因となるのでしょうか?

A:植物生理学でゲームの理論が使われた例と言われても、ぱっと思いつきませんが、生態学の分野では数理生態学というれっきとした分野があります。生理学的現象にも数学を使うことは可能でしょうけれども、それほど一般的ではありませんね。これとは別に、最近は、ゲノム情報の解析を中心にして、バイオインフォーマティクスという学問分野がクローズアップされています。
 ある意味で、動物植物を問わず、1年草などは別として、野生生物が天寿を全うする例は少ないでしょう。その意味で、病気も含めて何らかのストレスが、命取りになる例が多いと思います。温暖な地方の木が枯れる例としては、松枯れが有名ですが、これは、虫に媒介される病気の一種です。


Q:常緑樹、落葉樹とそれに関連する諸テーマという、馴染みがありそうでほとんどない分野だけに大変興味深いものがありました。前半の維持コスト、構成コストという生態学的な部分は習う方にとって良いテーマではないでしょうか。概念的に掴みやすい反面、厳密さと再現性に欠ける、という生態学の特徴を実感することが出来ますから。このやり方で他の隣接分野を紹介していくのも興味深いと思います。量子収率、樹皮抵抗などの後半のテーマも、厳密さゆえの解りやすさが際立ちました。対照的な分野を並べておくのは記憶に残す上でも良いのではないでしょうか。

A:確かに分野の特徴を捉える上では、隣接分野との比較は重要かも知れませんね。