植物生理学I 第4回講義

光エネルギーの吸収、利用、消去

第4回の講義では、最初に前回の講義で触れることができなかったCAM植物における光合成について述べました。次に、色素による光エネルギーの吸収の意味、吸収スペクトルと蛍光スペクトルの関係、光合成系におけるアンテナ系の仕組み、過剰なエネルギーの消去系の仕組みなどについて解説しました。やや、物理的な説明がわかりにくかったのではないかと反省しています。


Q:CAM植物について
 CAM植物が、高熱で乾燥した地域に生息することから、脱水を避けるために昼は気孔を閉じ、夜には空けて呼吸をすることは高校の時に習ったので知っていた。当時も思ったことだが、なんとうまいメカニズムを持っていることか。まるで意思を持って行っているように思えてならない。
 気孔の開閉は、孔辺細胞の圧力による。孔辺細胞内の物質濃度が上昇すれば、浸透により細胞中に水が入り、結果圧力が増加して気孔が開く。逆に、細胞内の物質濃度が下降すれば、水は細胞から出て行き、圧力は減少し気孔は閉じる。このとき、問題となるのは細胞内のカリウムイオンの濃度であることが分かっている。
 様々な環境要因が、このカリウムイオンの孔辺細胞への出入りを制御している。水分の不足もそのひとつである。その際は植物ホルモンの働きにより細胞膜に命令が出され、カリウムイオンを細胞外へ出すようにする。つまり、細胞内の圧力を減少させて気孔を閉じるのである。他にも、細胞内の二酸化炭素濃度の上昇、温度の上昇などによっても気孔は閉じる。
 一般的な植物では、昼間には気孔を空け、夜間には気孔を閉じる。これは細胞内の二酸化炭素濃度が、昼間は光を利用して光合成を行うため減少し、夜間は呼吸により増加するためであると考えられる。これを踏まえて考えると、やはりCAM植物は非常に特異的、しかし環境に良く適応した性質を持っていると言えよう。

A:CAM植物は確かに特異的と言えるかも知れませんが、その基本的なメカニズムのC4植物との類似性にも注意する必要があると思います。


Q: あまり授業内容そのものには関係ないかもしれないのですが、図5(紅色細菌、光化学系の電子移動過程におけるエネルギーと反応時間の比較)のグラフ(!?)はどのような実験によって作られたのかという点に素朴な疑問を感じました。反応過程の中間体になるまでの時間の単位がnsやpsというとても速い反応の場合、そしてその中間体のようなものが何段階かある場合どのように反応過程を調べるのですか?そして例えばA0がA1に行くもの、P700*に戻るもの、P700に戻るもののように3方向ある場合とかはより複雑になると思うのですが…
 もう一つは、この図5は室温での反応時間であり、低温の場合はかっこ内の数字ということですが書いてあるのはどれもP700やP870に戻る反応の時間であって、P700からAoに行くような本来の反応に付いての時間が記載されていないのは、この早い反応については温度には影響しないということなのですか?紅色細菌のQAからP870に進む反応に関しては低温の方が反応時間が長いのですが、何か特別な物質なのですか?(コメントというより質問ばっかりになってしまいましたが…)

A:光合成の電子伝達を担う物質にはクロロフィルやキノン、鉄イオウセンターなどが使われていますが、これらは紫外から可視の領域にかけて吸収を持っており、酸化還元した場合にその吸光度が変化します。従って、暗所においた反応中心複合体の吸収をモニターしておいて、そこへ非常に短い光のパルス(フラッシュ)をあてると、光によって反応中心が励起され、その後、電子が伝達物質を移動するに従っていろいろな吸収変化を示すことになります。この変化を解析することによって反応速度を求めることができます。
 図5は伊藤繁さん(現名古屋大教授)が10年以上前に書いた日本語総説から取ったのですが、QAからP870への逆反応の速度は間違いかも知れませんね。低温にすると速くなることはないと思います。反応中心における初期電荷分離については、トンネル効果の影響で電子伝達速度の温度依存性がほとんどなくなるという話はあります。ただ、図に載っているかどうかはきちんとしたデータがあるかないかだけだと思いますが。


Q: During the previous lecture, we mostly studied about light energy and the mechanisms related to the intake of this energy. I had difficulty understanding the figure on the first handout that we received regarding the energy level and excited and ground states, and how absorption waves had shorter wavelengths than fluorescence wavelengths. What makes the absorption and fluorescence not occur to the center of each parabola? And how does heat come into this scheme?
 The shallow and deep traps in which energy is funneled into the reaction center are a conservative and efficient way to collect energy. In this system there is no energy that is wasted, for it is all propelled in the same direction no matter where the energy had been absorbed initially. But how does the reaction center control the intake of the energy that has flowed into it? Is there a way that people could imitate this efficient way to use the sun's energy? As was mentioned in lecture, the sun emits an enormous amount of energy, yet it is so wide-spread that it is difficult to collect enough to be utilized effectively.
 I am confused about the parts that are related to quantum mechanics, but very impressed with plants in general for performing such complicated acts. It would be interesting to pursue the order in which evolution has taken place, for it is likely that there was some kind of selective pressure that required plants to evolve into the present form.

A:やはり、物理的側面、特に量子力学的な説明は若干難しかったかも知れませんね。吸収と蛍光を説明したエネルギー準位の図は、横軸が原子座標(つまり位置)になっています。光の吸収や発光のような反応では、位置はすぐには変われないので、垂直にしか状態は変わらず、パラボラの底から別のパラボラの底へは直接移動できないのです。熱については、パラボラの線に沿った移動によってエネルギー順位が下がった場合には、その分のエネルギーは熱になると考えることができます。図無しで説明するのはわかりづらいですね。
 植物が効率的なアンテナ系を持っているのは確かですが、太陽の光を集めるのに苦労しているのは植物でも同じです。葉の向き、形、枝の方向、木の高さ、などはすべて光をいかに集めるか、という点によって決まっていると言えます。しかし、効率的な光の集め方というのは1つではないので、様々な形の植物が地球上には存在することになります。


Q:第4回講義では、まず、“光合成色素の吸収と蛍光”について、①クロロフィル蛍光には温度依存性があり、温度が高いほど光の吸収は大きくなり蛍光するエネルギーは小さくなること、②クロロフィル蛍光は有機溶媒中では約30%だが葉においては1%以下であり、弱い光の下では量子収量が0.9以上であること、③電荷分離について電子移動過程におけるエネルギーと反応時間の比較から、電荷分離していく過程、またその再結合を防ぐ方法として電荷分離速度が再結合速度に比べ非常に大きいためであるということ、④吸収スペクトルの解析から、700nm付近と430nm付近で光の吸収が見られることより、クロロフィルには二つの要素(系I,II)があり相乗効果をなしていることを学習しました。次に、“光エネルギーの吸収と伝達”について、光はエネルギーとしては強力だが密度は薄いので、アンテナを張り広い面積で吸収してプロトンを反応中心に濃縮するために必要だということ、またアンテナには2通りあることを学び、最後に”光エネルギーの消去”について、過剰な光は有害なのでその消去システムとして、葉の向きを変化させたり、葉緑体を再配列させる物理的システムの他に、カロチノイド(480nm付近で光の吸収)は強い光エメルギーにより生じるChl→Chl*→ChlTを引き受けて熱として解消し活性酸素の生成を防ぐことや活性酸素消費系ではV*,A*,Z*を使い分け、弱光ではアンテナになり(V*)、強光ではエネルギーを熱に変え消費する(Z*)メカニズムを知りました。
 今回の講義における考察として、β-カロチンをはじめとするカロチノイドの働きから480nm付近に光の吸収が存在することについて、紅葉時に葉が赤色や黄色に変色するのは秋になって葉の寿命が訪れ、まず光合成の際色素を吸収するクロロフィルが破壊され緑色が消えていき、残ったカロチノイドの赤色や黄色の色素によって葉が色づいて見えるのではないかと考えました。しかしそう考えると、何故まずクロロフィルがなくなりカロチノイドが残るのだろうという疑問が出てきました。また、落葉樹林と針葉樹林の違いは何故起こるのだろうと疑問に思い調べたところ、葉の寿命は1年くらいであり針葉樹林にも落葉はあるものの、異なった時期に少しずつ落葉してるので目立たないということが解りました。しかし、やはり何故落葉する前に紅葉しないのかという疑問は残ります。またβ-カロチンがChlTを引き受け活性酸素の生成を防ぐことは、人体にとってβ-カロチンがガン予防に役立つことと関係があるのでしょうか。

A:カロチノイドには赤いものや黄色いものがありますから、葉が落葉前に何色になるかは持っているカロチノイドの種類と量、それに残ったクロロフィルの量によって決まるのだと思います。赤いカロチノイドが少なければ黄色くなるでしょうから目立たないでしょうし、さらに、クロロフィルとカロチノイドの減少速度の差が小さければ、事実上紅葉はなくなると思います。β-カロチンの作用としては一般的な活性酸素消去機能もありますから、人体にとってもよいのでしょうね。


Q:家に帰って、ハンドアウトを見直したところ、エマーソンのグラフでいくつかわからないことが出てきました。まず、460nm辺りから、一度収率が落ちていて、ここでは、光は吸収されたけれど、それが光合成で使われていない、ということでしたが、光が吸収された、というのはどのようにしてわかるのですか?光があまり吸収されなかったから、酸素の発生量が少なくて、グラフがここで落ち込んでいるという可能性はないのですか?また、光合成の吸収スペクトル、作用スペクトルとこのグラフの関係が矛盾しているような気がしてしまいます。光合成の吸収スペクトルと作用スペクトルを見る時、青と赤の光に相当する波長が多く吸収され、かつ光合成速度もそれらの波長の時に高くなる、と私は解釈しているのですが、そう考えると、エマーソンのグラフで、青や赤に相当する波長のところでグラフは他の波長のところよりも跳ね上がっていなければならないと思うのですが。しかし、エマーソンのグラフを見ると、かえって560nmから630nmくらいのところ(黄色やオレンジの光だと思います)で高い値を示しているので、とても不思議です。吸収スペクトル、作用スペクトルとエマーソンのグラフは、どのような関係になっているのでしょうか。それとも、これらは全く関係がないのでしょうか。
 今回の講義で印象に残ったのは、励起エネルギーが強すぎる時はそれが植物自体にダメージを与えてしまうため、余分なエネルギーを消去するような機構を植物が持っているということでした。植物に関しては、小学生の頃から理科の授業などで学んできましたが、私が知っているのはごく一部なのだなあ、と思います。これからの授業でも、まだ私が知らない、おもしろいことが出てくるのだろうと思うと、とても楽しみです。

A:エマーソン効果を説明したグラフの縦軸は量子収率といって、それ自体が吸収された光あたりの光合成速度になっています。つまり、光合成の作用スペクトルを吸収スペクトルで割ったものが量子収率のスペクトルになります。赤や青の領域では吸収スペクトルも高ければ、作用スペクトルも高いので、割り算をするとあまり変わらないことになります。作用スペクトルという言葉を知っていてくれるのはうれしいですね。


Q: 今回の講義は光エネルギーについてでした。励起状態にいるelectronは物理的な話によるととても不安定でまたすぐにGround Stateに戻り、そのときにエネルギーを捨てないといけないのでFluorescent Lightを放出しますよね。植物の場合はこの励起状態のときにエネルギーを回路に使用するためにつかうが、もし回路に使用せずFlourescent Lightを放出できたら光る植物ってできるのでしょうか?また今回は RED DROPについて興味を抱きましたのでちょっと調べてみました。
 Emerson and coworkers were the first to provide evidence for the involvement of two different light reactions. In 1943 Emerson and Lewis observed that when the green algae (Chlorella) was illuminated with wavelengths in the far-red region(above 680nm) there was a significant decline in the quantum yield of plotosynthesis, although light in spectral range is absorbed by chlorophyll-a. This phenomenon is known as the Red Drop Effect. Then in 1957 Emerson and coworkers discovered that the quantum efficiency could be enhanced by simultaneous illumination with quanta in the orange/red region and the far-red region. Illumination with two wavelengths together give a higher rate of oxygen evolution than the sum of the two rates measured separately. This enhancement became known as the Emerson Enhancement Effect and arises when the single wavelength applied does not equally excite both photosystems. At 690nm and above the efficiency of the energy conversion decreases and light is only absorbed by the pigments of the first photoreaction center (PSI). This is enhanced by the addition of light absorbed by both photoreaction center pigments and by the light harvesting pigments(chlorophyll b). Wavelengths below 690nm can promote both photoreactions but they preferentially drive the second photochemical reaction (PSII).

A:講義の中でちょっとふれましたが、蛍光の寿命は非常に短くて、励起する光を消すとすぐに消えてしまいます。つまり、蛍光を使って暗闇の中で光る植物を作ることはできないことになります。


Q:今回の講義では、あまり実感がわかない理論や原理の説明が多かったので少し理解するのがむずかしかった。原子座標とエネルギーレベルを用いた図により、熱運動によって幅をもっているabsorptionとfluorescenceの仕組みを説明があったが、吸収と発光によるground stateとexcited stateの変位、photonから渡ってきた電子の反応中心における電荷分離の説明は理解することができたが、光化学系I反応中心での電子移動過程におけるエネルギーと反応時間の図の説明が完全に理解できなかった。逆反応は縦の経路として考えていいということは理解できたが、なぜ電子を短い間隔で渡していくことで全体としての効率をあげることができるのかということが理解できなかった。今回の講義は図が多く、具体的にどういう現象がおきているという部分ではない上に、説明も口頭が多く少し進度が早かったので理解しきれない部分があった。僕は生物の知識があまりないため、図の説明で複雑な部分はできれば少しでも説明を文で説明してほしいと思いました。

A:今回は、ちょっとわかりにくかったかなと反省しています。生物の知識というより物理の知識が必要だったように思います。電子移動の速さと移動する距離は深い関係があり、基本的には距離が長いほど速さは遅くなります。つまり、前に進む反応と逆反応は競争関係にありますから、逆反応にうち勝つだけの速さで前に進もうとすれば、1回の移動距離は短くする必要があり、そうすると多数の段階から成る反応にしなくては成らないことになります。


Q:CAM植物−乾燥地に生育
 夜 CO2をリンゴ酸にしてプールする。
 昼 リンゴ酸を分解してC3回路を回す。
 C4植物では空間的に分離して行っていたものを、CAM植物では時間的に分離して行っている。  乾燥耐性が得られる。

光合成色素の吸収と蛍光。
 光が当たると励起状態になる。そのエネルギーはどのように消費されるか。
 1、蛍光として放出。
 2、熱として放出。
 3、光合成に使われる。
 光のエネルギーはアンテナが受け取り、反応中心まで受け渡される。
 たとえばP700がエネルギーを受け取り励起状態になる。電化分離が起こる。
 正反応の速度のほうが速いので、逆反応は起こりにくい。
 アンテナは2種類。shallow trap,deep trap。

光エネルギーの消去。
 薄暗いところで生育している植物に、強い光が当たると逆にダメージを受けてしまう。活性酸素が出来てダメージを受ける。
 葉を立てて、光の入射を抑える。葉緑体は再配列する。
 光が当たりすぎるとβ−Carがはたらき、エネルギーを熱として放出する。
 ビオラキサンチンは光が弱いときはアンテナとして働き、Chlにエネルギーを渡す。光が強いときビオラキサンチンはゼアキサンチンになり、
 Chlからエネルギーを奪い、熱エネルギーとして放出する。

A:僕が話した項目がよくわかりますね。


Q: 今回の内容は物理的要素が多く含まれているように感じ、いつも以上に理解しにくかったです。
まず、吸収スペクトルの意味は連続した波長の光が物質層を通過するときに吸収される光のスペクトルであり、分光器がその吸収率を量る器具であることは理解できたのですが、これによって何が調べられる/結論付けられるのかが、いまいちピンときませんでした。生物学的に、分光器にどのような試料を用い、そして、どのような結果を求めているのかわかりません。これは植物の色素を試料として用い、その色素がどれくらいの波長を吸収していることを調べるものですか?それとも、ただ、波長を調べるだけでなく、その結果、その試料に含まれる物質を特定したりすることができるのですか?授業中に、「物質の種類と量がわかれば___を特定できる。」とおっしゃっていましたが、何を特定できるのか聞き取れませんでした。
また、一番初に説明した放物線が書かれてありエネルギーレベルを説明する図について、二つの放物線ずれて書かれてある意味がわかりません。あのグラフの横軸は何を表しているのですか?放物線で書かれてあること自体は、分子の運動力によってエネルギーレベルが常に振動し、スペクトルに幅があるからだという風に理解したのですが、二つの放物線がGround StateとExcited Stateをあらわしているとして、なぜ、Excited Stateの一番低いエネルギーレベルがGround Stateの一番低いエネルギーレベルの位置にこないのかがわかりません。また、AbsorptionとFluorescenceの大きさが違うのは100%蛍光として出てくることができず、熱エネルギーとして逃げるからと理解するので正しいですか?グラフにおけるAbsorption, Fluorescence、Heatの関係がいまいち理解できません。Absorptionのエネルギーを1と考えるとき、FluorescenceとHeatの関係はどのような場合にどのように変化するのですか?植物種によって変わるのか、何らかの条件で変わるのか・・・どうなのですか? 
緑色光合成細菌のバクテリオクロロフィルがたんぱく質なしで束になってクロロソームに入っていると説明されていましたが、たんぱく質と一緒に存在するのとしないのとで何か違いはあるのでしょうか。
アンテナの説明をしている際話してくださった、屋根の上などのSolar Panel(?)はアンテナ構造を考えるうえでとてもわかりやすいたとえでした。太陽のエネルギーを獲得する方法がまったくおなじなのは、もしかして、植物のアンテナシステムからアイデアを得たのでしょうか?この植物生理学の授業を通して、植物が生きるためにいかにより効率的なシステムを使っているかを感じ、今後の技術開発に植物の生理システムを参考にできるのではないかと真剣に考えてしまいます。実際にそういった例はないのでしょうか?

A:吸収スペクトルの形は物質によって特有な場合が多いので、スペクトルを測定すればその物質の種類を特定できる可能性があります(必ずできるというわけではありませんが)。例えばクロロフィルやカロチノイドなどは純粋な形で単離すれば、そのスペクトルを測定することによってどの種類であるかがほぼわかります。また、逆に、純粋な物質でのスペクトル(とその大きさ)がわかっていれば、未知の試料に入っているその物質の定量に使うこともできます。
 励起状態の最低エネルギーの位置と基底状態の最低エネルギーの位置の関係は物質によっていろいろです。それによって、蛍光の収率や波長も変わってきます。一般的な色素では
吸収されるエネルギー=蛍光のエネルギー+熱
となります。光合成系では、これにさらに光合成に使われるエネルギーが加わりますので、
吸収されるエネルギー=蛍光のエネルギー+熱+光合成に使われるエネルギー
となります。
 光のエネルギーは薄く広く降り注ぐので、それを獲得しようとすると、必然的に平らな形になるという意味では、特にSolar Panelが植物をまねしたということでもないでしょう。ただ、植物の光合成の電荷分離を人工的な物質で再現しようという試みはなされています。


Q:今回の授業の内容については、大体理解できたと思います。なので、今回の授業の内容についての質問は特にありません。ただ、ひとつ気になったことがあります。それは、蛍光に関係するところです。授業中に、蛍光灯とは紫外線を発する真空管の内側に、蛍光塗料が塗られているだけのものである、ということでありましたが、そうであったら非常に危険ではないのでしょうか?生産過程において、蛍光塗料が十分に塗られておらず、その部分から紫外線がもれ人体に悪影響をおよぼしてしまうようなことはないのでしょうか?また、蛍光灯と白熱灯との構造上のちがいはどういう点なのでしょうか?なぜ、白熱灯では強い熱を発し、蛍光灯ではそれほどでもないのでしょうか?

A:何であれ、生産過程で不都合が起きれば人体に悪影響が出るかも知れないことは明らかです。同じ論理を使えば、牛乳も「非常に危険」ということになります(雪印の事件や、昔の森永の事件を考えれば)。白熱灯は、高温の物体が光を発することを利用しています。従って、光を出すために必然的に発熱が伴います。蛍光灯では放電の際の光エネルギーを使いますから、比較的熱を出さずに光を得ることができます。


Q: 光合成生物が光を吸収し、そのエネルギーを伝達するシステムとして、2種類の「トラップ」があげられた。shallow trapでは同様に並んだ色素が光を吸収し、反応中心に送るようになっている。これに対し、deep trapでは吸収帯の異なる色素が並び、吸収した光エネルギーをリレー式に伝達して反応中心へ送る。このように異なる伝達システムがあるということは、それぞれにメリット(またデメリットも)があるということなのであろうが、それはその生物の形態や生育環境などに関係があるのだろうか。また、高等植物では両方のトラップが併存しているというが、その比率は1:1なのか、または種によって違いがあるのか興味をもった。

A:実際には2種類のトラップというのは概念的なもので、実際の植物のアンテナは、その両方の特徴を持っていると考えて構いません。2つを対立させて説明したのがよくなかったかも知れません。


Q:今回は範囲全体が結構入り組んでおり、理解するのが大変だっただけに、講義についていくのも楽ではありませんでした。そこかしこに量子力学レベルの話が入るのは大丈夫でしたが(量子力学的な部分の説明は非常に解りやすかったです。あのように説明していただけると助かります)、CAM、C3、C4、光化学系I、光化学系IIなど、単語でもややこしい部分を一遍に把握するのは正直困難です。特に光化学系に関わる所は、光化学系の概念を完全に把握してない限り、字面のややこしさに引きずられ、周辺の理解が疎かになりがちだと思います。理解への難易度が高そうな箇所は、軽く復習の意味もかねて解説してみてはいかがでしょうか。もちろん自宅で復習もしていますが、それでも解りづらいものはあります・・・(出来れば積極的に質問もしますが)。電荷分離のメカニズムや、シングレット、トリプレットの部分の解説はすっきりとしていて解り易かったです。

A:トリプレットの説明がわかってもらえたとは感激です。日頃大学院生以上としか話すチャンスがあまりないので、なかなか、学部学生のレベルが実感できません。授業の途中で、多くの人が分光器を使った経験がないと聞いて、驚きあわてました。なるべく、分かりづらい点は質問してもらうようにすると、こちらも、どこがわからないのかがわかって説明しやすくなります。


Q:光合成過程の時間的分化(CAM)の説明のところでCO2とH2Oの選択的透過が可能な膜が存在したら、という話が出たとき、正直ラップが頭に浮かびました。しかし、植物がたとえポリマー膜を合成することができたとしても、このような膜は気孔にくらべ出入りの効率が悪く、その分より大きな面積を必要とし、そのことが構造的にも機能的にも非効率的で不利なため、そのような進化が見られないのかな、と思いました。しかし、一方で、水中にてCO2の取り入れ、H2Oの出し入れを行っている植物は、もしかしたら上にあげた選択的透過膜を備えているのかな、とも思いました。この場合、CO2は気体ではなく、水に溶け込んだ状態で取り込まれ、H2Oは蒸散ではなく、浸透圧でコントロールされている?から水を循環させてこれらの吸収・代謝を行っているのでしょうか?
 とても素朴な疑問なのですが、βカロチンを多く含む植物(部分)が黄橙色なのは、エネルギーの小さい(波長の長い)光は吸収する必要がない、すなわち害が少ないからと考えていいのでしょうか?

A:水に対する二酸化炭素の溶解度は比較的高く、また炭酸イオンとしても存在できますので、藻類などの水中の光合成生物では二酸化炭素が生育の律速には成らない例が多いようです(水中では光も弱くなりますし)。授業では触れませんでしたが、植物の中には、水に浸っているときはC3型の光合成を行い、空気中ではC4型の光合成を行うという面白い種類もあります。
 カロチノイドは、それ自身黄橙色ですから、その影響がまず第一だと思いますが。