植物生理学概論 第4回講義

植物における炭素の固定

第4回は二酸化炭素が固定される仕組みと、光合成産物の転流などについて解説しました。寄せられたレポートと、それに対するコメントを以下に紹介します。


Q:As discussed in class, there are 3 types of photosynthesis. C3, which accounts for 95% of all plants, incorporates CO2 into a 3-carbon compound, and uses enzyme rubisco to take in CO2. C4, incorporates CO2 into a 4-carbon compound, and uses PEP carboxylase to take in CO2. While photosynthesis takes place throughout the leaves in C3 plants, the process takes place in inner cells in C4 plants. CAM plants’ stomatas open at night and its CO2 stored as malic acid to use in photosynthesis in the day. It is interesting how a single process of photosynthesis have evolved and varied into 3 similar yet different processes; yet, how was this made possible? In order for a plant to effectively fixate carbon during photosynthesis, the CO2 and O2 levels need to be kept relatively high. Areas of the world that lacked CO2 and water may have driven the originally C3 respiratory plants to change aspects of the photosynthesis process to reduce the amount of photorespiration, giving rise to CAM and C4 plants. C4 and CAM plants are very similar in their processes of concentrating CO2 in the leaves. However, C3 and CAM occur only in the mesophyll cells, while C4 occurs in the mesophyll and bundle-sheath cells. The differences in the evolution of the mechanisms seem to show that CAM may have evolved earlier than C4 plants.

A:これは、全体として何を主張したいのかがわかりづらいレポートですね。進化の道筋に興味を持っているのはわかりますが、少しずつ話がずれていくので、どのような論理で何を根拠に何を主張しているのかが読み取れません。例えば、一番最後のCAMがC4よりも先に進化した、という結論に絞って、それを導くように論拠と論理を配置し直すと読みやすいレポートになると思います。


Q:CAM型植物は砂漠などの昼と夜との温度差の激しい場所での生息に適した植物である。通常、植物は二酸化炭素を吸収する際に気孔を開くが、砂漠などの高温な場所で気孔を開くと蒸発によって水分が失われてしまう。これを防ぐために気温の低い夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、リンゴ酸に形を変えて液胞に貯蓄し、昼間に気孔を閉じた状態でリンゴ酸を二酸化炭素に戻して光合成を行う。このように時間帯によって光合成の仕組みを切り替えているということは、昼と夜もしくは光を受容する長さの割合が変化した場合、エネルギーの生産量およびリンゴ酸の貯蓄量とのバランスに影響が出ると考えられる。例えば昼の時間が劇的に短くなれば、その分長い夜の間に充分貯めておいたリンゴ酸を炭水化物に十分に変換することは出来ないと考えられ、炭水化物の生産量より貯蓄されたリンゴ酸の方が多くなる。通常の植物のように二酸化炭素を吸収するその場でエネルギー変換をしないCAM植物は、吸収した分だけエネルギーが得られるという保証がないので、無駄のないように二酸化炭素の吸収とリンゴ酸の貯蓄量をモニターする器官が存在するのではないかと考えられる。

A:一見するとよさそうですが、よく考えるとリンゴ酸の貯蔵量をモニターして何をしたらよいのでしょう?夜にどれだけリンゴ酸を貯めるかは、次の日の昼間にどれだけ光合成をできるかで決まるわけですよね。とすると、未来を予知できない限りモニターしたところで打つ手はない、ということはありませんかね?そのあたりをもう少し考察すると面白いかも知れません。


Q:There are many theories about the environment and the effects of global warming. The FACE experiment is an experiment that tests what happens to an area of land that is enriched with carbon dioxide. This introduces the Source-sink dynamics. This is a theory that describes how the quality of the environment can affect the population. The ‘source’ environment is a place where a population can grow, and the ‘sink’ environment is where the population cannot be sustained on its own. In my opinion, I feel that there are many flaws to this theory. One reason is that the source and sink can be interchanged. If the resources of the source environment are used up, this area becomes the sink and vice versa. Also, there is no clear definition of what a source or sink environment can be. An environment that cannot sustain one species of population could still support a different species. For example, deciduous trees cannot survive in the desert, but this is a perfect environment for plants like cactuses and weeds. So as this shows, the desert is the sink for deciduous tress, but is the source for cactuses. With such controversies, I feel that there can be better ways to explain the causes and effects that the environment has on a population.

A:もしかしたら誤解を招いたのかも知れませんが、講義で紹介したソース・シンクというのは、環境の話ではなく、植物体の中で光合成産物を作る部分と使う部分の話です。そして、根は植物の中で重要なシンクであることが多いのですが、この根の成長が鉢などで律速されると、二酸化炭素濃度に対する生育の応答が通常の状態と変わってしまうので、わざわざFACEという大がかりな実験が進められた、というわけです。


Q:講義の中で炭素の同位体比から縄文人の食生活が分かるという話を聞いた。これを利用して現代人の食生活を分析し食生活の違いによる病気などとの相関関係を解明するための一つのデータとして使用することができないか、また動物がどのような物を食べているかを調べることでその地域における環境を調べることができるか考察してみた。後者の例として、放流時点におけるヒラメの人工種苗の食性と天然種の食性の指標値として窒素炭素安定同位体比と栄養状態の指標として核酸比を測定し、放流後の経時変化をしらべることにより、人工種苗の同位体比の変化から放流場所が生育するために適した環境か否かの評価を行うことが可能である。前者については実際に行われたデータは見つからなかったが、頭髪に含まれるコラーゲンから同位体比を容易に調べることが可能なことから、地域ごとのサンプルデータを採取、分析することでおおまかな相関関係の有無を調べることが可能であると考えられる。
参考文献:農林水産研究情報総合案内:窒素炭素安定同位体比を指標とした放流ヒラメ種苗の馴致過程の推定

A:面白い考え方なので、それを生かすためには、単に実際に行なわれたデータを探すだけではなく、むしろ実際には行なわれていない所について、より何をしたらどのような情報が得られ、どのように役立つのかという具体的な議論を展開できるとよいと思います。


Q:今回の講義でC3、C4、CAM植物のそれぞれ環境に適した特徴を理解することができた。CAM植物は荒れ地などの日当たりのよい場所に生息し、水分の消費が少ない夜に気孔をあけCO2を貯蓄しリンゴ酸に換えて昼間は気孔を開かずに光合成をすることができる。この構造を利用したアイスプラントのCAM化に興味を持ち調べてみた。アイスプラントは南アフリカ原産で、塩ストレスにより光合成型をC3からCAM型に変化させる。CAM型になると水が植物に供給されづらくなり、ブラッダー細胞内に塩をため込むようになる。このアイスプラントは土壌の塩濃度が高いために植物を育てることができない塩害で苦しむ地域で普及させる試みがあり、これからの発展に期待したい。

A:このレポートは、興味を持った点について調べてみる点まではよいのですがものたりません。レポートとしては、そこから考察したことを付け加えて欲しいと思います。自分の頭を使って考える、ということがサイエンスにとっては重要です。


Q:光合成はなぜ無駄な役割が多いのだろうか。たとえば、リブロース-2-リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(通称ルビスコ)は炭酸固定を阻害する2-ホスホグリコール酸を生成する。また、植物は常に光呼吸を光合成と同時に行っている。生理的意義は光阻害の回避とあるがやはり無駄な回路には違いない。今回は、なぜ光合成をある程度規制するような働きをするのかについて、授業で習ったこと中心に考えたい。まず、C3,C4植物についてだが、これらの植物は大気組成の変動に伴って増えてきた。つまりCO2をより反応できるようになったのだ。しかし、なぜ大気中にO2が増えてきたにもかかわらずCO2とより反応させることができるのであろうか。これはルビスコが最大活性を下げることでそれが可能になったといえる。C3、C4植物に戻って考えると、これらはCO2濃度が高いために光呼吸を抑えられるとあった。しかし基本に戻ってみると植物は一定の水分量を確保する必要がある。CO2濃度が高くなろうとそれは変わらない。光呼吸は光合成に必要な二酸化炭素の吸収するためだけでなく、気孔を開閉することで蒸散させて浸透圧を調整することにも役立つ。最終的に水は根から吸収されるのだが、C4植物であるイネのように灌水状態で育つ植物は少ない。したがって土壌中の水分を上手く利用できるように光呼吸が必要なのであろう。

A:「光呼吸は・・・気孔を開閉する」という所の意味がわかりませんでした。あとイネはC3植物です。なぜむだなことをするのか、という点に関しては、植物の環境応答の回で紹介することになります。


Q:CAM植物とは、夜に気孔を開いて光合成に必要となる二酸化炭素を取り入れリンゴ酸を合成し、それを液胞中に貯めておく。夜間に合成されたリンゴ酸は、液胞から細胞質に移動してここで次の反応でリンゴ酸からCO2を発生し、このCO2が葉緑体でC3植物と同じカルビン・ベンソン回路で固定される。CAM植物は日中気孔を閉じているが、この時に発生する酸素はどうしているのだろうか。酸素を処理できないと活性酸素による障害がでてきたり、CO2固定に影響が出るのだはないだろうか。考えられるものの1つは呼吸によって使われるということだ。または酸素を発生しない光合成をしているかもしれない。紅色光合成細菌や緑色光合成細菌などの光合成細菌は、酸素非発生型の光合成ができる。または、酸素無しで反応が進む光化学系Iの循環的電子伝達反応で生産できるATPによって光合成CO2固定を行っているのかもしれない。どの説が正しいかは、CAM植物に高濃度の酸素を与えて植物がどう反応するか調べる。もしも酸素が発生しない機構であれば、何だかの反応を示すはずだ。もしも何の反応も見られないのであれば酸素を何らかの形で処理しているということが伺えるだろう。
<参考資料>日本植物生理学会ホームページ
http://www.jspp.org/cgi-bin/17hiroba/question_index.cgi?show_page=66

A:参考資料として植物生理学会のページが上げられていますが、このページの中での議論と、このレポートの議論のつながりがわかりませんでした。植物生理学会の浅田先生の回答は難しくてわからなかったかな?


Q:講義の中でC4植物とC3植物の分布について、土壌水分係数によって測定すると、土壌水分係数が高いときにはC4植物の構成比が低く、逆に土壌水分係数が低いときにはC4植物の構成比が高いとの内容を扱った。CO2補償点・光呼吸・光合成阻害の面から見た限り有利に見えるC4植物がなぜC3植物に土壌水分係数が高い場合には負けるのだろうか。要因として、炭酸固定回路の効率性、最適環境の違いを考えた。前者については、C4植物ではC3回路に加えC4回路で2ATP多く消費する。しかし一方C3植物ではRubiscoによる1分子のO2の固定に計8ATP相当消費(C2回路、カルビン回路(3−PGAからのRuBPの再生)、C2回路で放出された1/2分子CO2の再固定)しており、それがC3植物の全光合成的炭酸固定の18~27%を占める。ここでC4,C3植物の100分子CO2を炭素固定するためのATP消費量を計算してみると(Rubiscoによる1分子のCO2の固定を計8ATP相当、O2固定によるCO2放出を全体の20%、O2固定によっての1/2分子CO2の再固定を4ATP、一分子のHCO3-のC4酸への固定(C4回路、カルビン回路)を計10ATPとする)、C3植物では1020ATP相当、C4植物で1000ATP相当となった。C3植物の方に負担がよりかかっていることから回路自体ではなんとC4植物の方が効率的に炭酸固定を行っていると言える結果になった。しかし、C4植物では実際に炭酸固定が行われるのは維管束鞘細胞のみであり、葉肉細胞全体で炭酸固定を行うC3植物に比べて炭酸固定の生産性は少ないようにも推測できる。ここでは実際のC4植物内での葉肉細胞維管束鞘細胞の割合と全体としての炭酸固定の効率性が不明確なためこの考察に関して結論をだすことはできなかった。後者についてはC3植物とC4植物では最適環境が大きくことなることに注目した。たとえばC4植物は適温温度が高くC3は低い、要水量ではC4は小さくC3大きい。C4植物はC3植物がストレスを受ける環境に合わせるために自らの炭素固定回路をも進化させ、それと同時に最適環境も変化させた。しかしそれが他方ではもともといた環境では最大のパフォーマンスをできなくなってしまったことを意味する。植物の生育には最適環境の要因が大きく、よってC4植物は普通の環境、つまり土壌水分係数が高い環境では成長が不効率になり、C4植物がC3植物に構成比が劣ることとなったと考えることができる。
参考文献:宮地重遠 現代植物生理学1 光合成 朝倉書店 1992年2月20日
Bob B. Buchanan, Wilhelm Gruissen, Russell L. Jones 杉山達夫訳 植物の生化学・分子生物学 学会出版センター 2005年5月20日

A:きちんと考察していますね。定量的な解析ですが、この場合、光呼吸がどの程度働いていると仮定するかによって結果が大きく変わってしまうので難しいですね。また、効率的、という場合に、何から見て効率的か、という問題があります。二酸化炭素から見る時、つまり二酸化炭素が限られた時にはC4が効率的ですよね。でも、光が限られた時はどうでしょう。光の強さによって状況は大きく変わりますし、また、光阻害の寄与も変わります。このあたりが計算の難しいところです。あと、細かいことですが、ルビスコとCO2が反応する場合は有機物が蓄積するのでCO2固定といいますが、酸素と反応する場合はあまりO2固定とは言わないと思います。


Q:師管では、ソースとシンクが入れ替わりうるので、流れの方向は一定ではない。導管の流れは根から葉への一定方向である。導管では、浸透圧の違いや、水の凝集力、また葉の蒸散作用を使って水を吸い上げているが、重力に逆らわず、水を上から下に流したほうが余計な手間がいらないのではないか。葉が、例えばお椀のような形をしていて、貯水できるような形状を持ち、葉から直接水分が吸収できれば、光合成で水を使う際に輸送なしですぐその場で使えるだろう。また、吸収する光の周波数に若干影響はあるだろうが、水の膜を通して光エネルギーを得ることもでき、気体の交換は葉の裏の気孔で行える。そうすれば、高い樹木でも太い導管径を持つことができ、効率が良い。ただし、この場合、導管でもソースとシンクを入れ替える必要がある。まず、貯水できる形状の複雑な葉を作るまでは、根から水を吸い上げなくてはならない。また、水の流れを葉から根の一方方向にしてしまうと、土壌からの栄養を使うことは期待できない。しかし、砂漠など、保水力もなく栄養にも乏しい土壌環境で、高さを持つ樹木にこういった植物は育たなかったのだろうか。

A:ふーむ。論理のユニークさではこれは一等賞かも知れません。お椀植物の弱いところは、やはり保水性と安定性でしょうね。少しお天気が続くとすぐに水が無くなる気がしますし、高い位置に思い水を保つのは骨が折れそうです。保水力が問題になるとすると、砂漠でも有利にならないのではないでしょうか。ただ、サボテンなどは、植物体の内側に水を貯めているので、一種のお椀植物と言えなくはないかも知れません。


Q:地上の生物を分類する際に、何かと何かの狭間の性質をもつような生物は多く存在しているが、授業で扱ったC3植物とC4植物を行き来する植物(Eleocharis vivipara)について興味を持ったので調べてみた。こういった何かの分類の中間的性質をもつ生物は、分類上異なる両方のグループを理解する上で大切だと思った。水中では弱い光でも効率よく光合成を行うことができるC3植物として、また、陸上では高温・乾燥・強光などの苛酷な気候下でも光合成効率のよいC4植物として生息している。生物で、何かと何かを比べた時に、生息する上でどちらか一方が100%優れているということは言い難い。そんな中で、このEleocharis viviparaのように、異なる分類の植物の性質を「良いとこ取り」して環境に順応している生物は、進化という点でも興味深い生物だと思う。そして今後の地球の環境の変わり方によってはこのような中間的性質をもって、より苛酷な条件下でも生息が可能な生物がどんどん増えていくのではないかと思う。

A:もし、本当に「良いとこ取り」だとしたら、地球上の生物全てがC3/C4変換タイプになるはずですよね。ところが実際には、C3とC4の専業植物が圧倒的に多いわけです。それが何故か、という点まで考察できるとすばらしいレポートになったと思います。


Q:シンク・リミットの話に興味を持ったので、そのレポートを書く。気象庁によれば世界の二酸化炭素平均濃度は年々上昇しているという。このことよりシンク・リミットの存在は大いに理解できる。講義で習ったように、芋のようなシンクの大きい植物は、二酸化炭素濃度の上昇によって生産性があがるという。では、今経済成長期を迎えている中国のような二酸化炭素排出量の多い国の、二酸化炭素抑制政策としてこの性質を利用できないだろうか。考えられる政策の一つとして、芋の遺伝子を今ある他の植物に注入することである。そして芋の持つ性質を他の植物にも持たせ、二酸化炭素の吸収率を上げてやる。そうすれば濃度を下げることは可能であろう。しかしこの考えでは問題が多すぎる。遺伝子組み換え問題、注入にかかる時間などきりがない。しかし、環境問題において、この芋とシンクリミットの関係を利用した斬新的な発想が出てくることは十分に考えられる。

A:できれば、このレポート自体に斬新な発想を盛り込んで欲しかったところです。


Q:光呼吸とは、RubiscoをATPとredFdの還元力をわざわざ用い、PGAとCO2に変換する反応であるが、なぜせっかくできたエネルギーを消費して光合成をする前の物質に戻してしまうのだろうか。これに対する答えとしては、二通り考えられる。一つ目は、光阻害を回避するために、光のエネルギーを逃がしている、光呼吸は放エネルギー機構であるとする考え方である。もう一つは、光呼吸が行われている時に酸素が使われていることに注目し、酸素を消費している反応と見ることができる。酸素が細胞に過剰に供給されると植物に何らかの害をなすであろうと考えそれならば、酸素を消費してしまおうということである。ここで、C3植物とC4植物に考えてみると、C3植物での3つの細胞小器官にまたがる光呼吸の反応を、C4植物ではCO2を濃縮するというよりシンプルな方法に置き換えている。これは、進化の過程において、大気中の酸素濃度が増加してきたため、急ごしらえな方法ではなくより洗練された方法に植物が進化してきたと考えられる。一方、地球への光の照射は昔から変わらないと考えられるので、光呼吸は放エネルギー機構であるとする考え方ではC3植物とC4植物について上手く説明できない。よって、光呼吸は、過剰に存在すると植物に何らかの害を及ぼすであろう酸素を消費する反応だと考えられる。
参考 光合成の機作 光呼吸   http://hostgk3.biology.tohoku.ac.jp/Hikosaka/Mechanism.html
   光合成 光呼吸 (Photorespiration)   http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/photosyn.html

A:確かに一つの考え方として成り立ちますね。ただ、酸素の濃度は空気の21%を占めますから、その濃度をある代謝反応で充分に低下させるのは至難の業でしょうね。


Q:講義ではおもに光呼吸について学んだが、その中で光化学系Ⅱをもたない、グラナのない葉緑体の存在を初めて知った。それはC4の光合成をする植物、トウモロコシの葉などにみられるそうで、その構造をグランツ構造というそうだ。この構造をもつC4植物のしくみは大変興味深い。C4植物は維管束鞘細胞に二酸化炭素を溜めることで濃度をあげ、ルビスコのオキシゲナーゼ反応は抑えることができ、効率よく光合成をおこなえる。C4植物が明らかにC3植物より性能が良いにもかかわらず、なぜすべての植物がC4経路をとらないのだろうか。講義ではC4植物はC3植物から繰り返し進化が起こったと言っていたが、そこから考えると、C3経路では生き抜くのが厳しい環境においてC4植物への進化が起こり、その環境下でのみ存在し、他の所では必要ないからC3経路にとどまったままなのではないかと考える。しかし、当初の植物がC3経路をとっていたのは、地球上に二酸化炭素が大量に存在していたからであるとみられる。その時代に比べると現在の地球にはわずかな量しか存在しないにも関わらず、いまだにC3経路をとる植物がいるのが不思議である。そこから考えると、これから先C4植物などのより現在の環境に適した構成の植物がどんどん発見されていくのではないかと考える。

A:上の方のレポートとそれに対するコメントにもありますが、C3植物とC4植物では、二酸化炭素に対する応答が異なる一方で、光に対する応答も異なります。実際の環境には、極めて多くの要因が存在するので、本当は、それらの要因に対する応答をひとつひとつ考えないと進化まで論じることはできないことになります。


Q:植物は古来より光合成をおこない、生産した栄養をその身に蓄え、運用することで繁栄してきた。養分をソースで自己生産し、体内のシンクに貯蔵する。光を受け栄養を作っているのだから、人で言えばさしずめ光は食欲でシンクの貯蔵限界は満腹という状態だろう。講義では光呼吸は光の過剰照射による光阻害から植物を守る自衛機構の名残ではないかという説を紹介していたが私は逆に貯蔵限界を超えているにもかかわらず、二酸化炭素が十分ある状況で、光を受け続けて肥大し続け自壊を招くような事態に陥らないための調節機構の名残ではないかと考えている。

A:このレポートでは1つの仮説が提出されていますが、そこで終わっているのが残念です。ここに、何故そう思うのかの根拠と、できれば、その仮説を検証するための実験系が加わるとよいレポートになります。