植物生理学 第10回講義

地球の歴史と生命の進化

第10回は、地球の変化が生命を生み出し、生命が光合成を通して地球環境を変化させ、結果として地球と生命が共進化していく歴史について解説しました。今回の講義に寄せられた意見の中からいくつかを選び、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の授業で、熱水噴出口での生態系に関する話があった。映像で紹介されたカニは、噴出した硫化水素ガスによって死んだプランクトンを餌にして栄養を得るというものであった。ここで思ったのは、プランクトンが死んでしまい、最近では自殺にも利用されるような毒性の強い硫化水素の元で、なぜこのカニは生きていられるのだろうか、ということである。硫化水素ガスの近くにいるのは危険なのではないだろうか。 ここで考えられることとしては、上に向かって硫化水素ガスは噴出するため、噴出口の下にいるカニたちにはあまり硫化水素ガスの影響がこないということである。また、潮だるみの時の一日に二回だけプランクトンが降ってくるという話から、潮の流れからいる場所を変えて、いつでも風上のほうにいれば硫化水素ガスの影響は少なくてすんでいるのではないだろうか。

A:そのような物理的な避け方も当然あるかも知れませんね。実際には、さらに特別なヘモグロビンを持つことによって硫化水素の毒性を避けることが行なわれています。そのような点については、熱水生物群集の成り立ちにより詳しい解説があります。


Q:今回の講義で、シロウリガイについて興味を惹かれた。シロウリガイは酸素の乏しい環境で生息しているにもかかわらずヘモグロビンを豊富に持っているということだが、これはなぜだ?と思った。シロウリガイの写真を見る限り、ヒトの血液の赤色の濃さと大差がないように思えた。これはつまりシロウリガイの小さな体を養うには十分すぎる濃度のヘモグロビンを持っているということではないだろうか。しかし、シロウリガイの場合は周りに酸素が無いのだから、自らのヘモグロビンを利用することができない。つまりこれは、化学合成細菌との共生に必要であるといえる。ヘモグロビンは、硫化水素とも反応性を持つらしく、身の回りの熱水噴出口から出る硫化水素ガスを体中のヘモグロビンで硫化水素を集めて化学合成細菌に渡しているのであろう。

A:誤解を招いたかも知れませんが、深海では酸素がないわけではありません。そもそも、化学合成細菌の電子伝達は呼吸と同じように酸素が最終的な電子受容体となっている場合があります。ただ、濃度は少ないので、逆に、うすい酸素を集めるためにヘモグロビンをたくさん持っている、という解釈も成り立ちます。ヘモグロビンと硫化水素の関係については、上記のページをご覧下さい。


Q:今日の講義で興味を持ったのは,「ストロマトライト」についてだ。「現世のストロマトライト」のスライドはとてもおもしろいなと思った。ストロマトライトが現存しているのは知っていたが,こんな岩のような形で存在しているとは知らなかった。また,ストロマトライトはシャーク湾でしかもう生息していないのかと思ったが,調べてみると,西オーストラリアのインド洋沿岸の汽水湖や淡水湖にまで生息していることが分かった。そして,シャーク湾のものよりも汽水湖のストロマトライトの方が、先カンブリア時代の化石ストロマトライトに近いらしい。しかし,近年、成長が著しく阻害されているらしい。原因は生活排水などが、地下水脈を通じて大量のリン酸塩が湖にもたらされ、その結果ストロマトライトを作るバクテリアが生育できない水質へと変化したためらしい。35億年以上も生き長らえ,地球に酸素を供給し、高度に発達した生物を進化させる環境を整えたこの生命を地球上から消し去るのは、私たち人類なのかと思うと悲しく思う。「「地球に優しい」?」のスライドにもあったが,結局困るのは私たちなのだから,もっと色々なことを考えて行動するべきだと思った。
参考文献:http://www.um.u-tokyo.ac.jp/museum/ouroboros/01_02/ganseki.html

A:20億年ぐらい前まではストロマトライトは地球のかなりの面積を覆っていたようです。とすれば、この場合に限っては人間だけの責任ではないかも知れませんね。


Q:今回の講義では、ハワイでの二酸化炭素濃度経年変化について興味を持った。この図は光合成の影響により夏では二酸化炭素濃度が下がり、冬では上がるものであり、今までにもこのような図は見たことはあるが、海洋では二酸化炭素が吸収されることから、ハワイのように周りが海洋で囲まれているようなところでは年々このように二酸化炭素濃度は上昇しないと思ったので考えてみる。この図を見ると約40年もの間に45ppmも増加している。やはり化石燃料の消費が激しくなったこと産業や工業の発達や森林の大量伐採が二酸化炭素の量の増加した原因である。しかし海は大量の二酸化炭素を溶かし、大気中の二酸化炭素濃度の変化を緩和する働きがあるので、海に囲まれているハワイでは二酸化炭素濃度の上昇はあまり影響にないと考えられる。図から短期間で二酸化炭素濃度が上昇しているので、考えられることは化石燃料などにより二酸化炭素が発生し、植物や海洋などにより取り込まれるのは排出量のわずか~半分程度であることであり、残りは長期間大気中に残るために、世界中多くの国で化石燃料で使われたら、いくら海洋の多いハワイ島でも二酸化炭素が上昇して(以下20文字ほど文字化け)

A:海水中の溶存二酸化炭素と空気中の二酸化炭素は平衡関係にあるでしょうから、排出された全ての二酸化炭素が海水に溶け込む、ということはそもそも原理的にあり得ないはずです。二酸化炭素は水に溶けると、今度は重炭酸イオンと平衡になり、この平衡はpHによって大きな影響を受けます。複数の相の間の循環で成り立つ地球環境は、きちんと考えようと思うと案外大変です。


Q:今回の授業でストロマトライトに興味を持った。化石として砂や泥と層を作るならほかにもよくあるがまだ生きている途中から、もしくは死んですぐに砂や泥と層になるのはどうしてなのか。これはシアノバクテリアが何か粘性の物質を分泌して、意図的に層を形成していると考えられる。そしたら、なぜ層を形成しているのか。これは、自らの生存領域の確保をしているのではないかと考えられる。もし浮遊していたら生育に不利な環境に流されてしまうかもしれないし、そのまま根付くことができないかもしれない。それより一定の場所で生育することができたら、その方が効率が良い。しかし、そのまま塔のように大きくなっていっていいのだろうか。オーストラリアのシャーク湾の写真を見る限り、浅瀬に広がるストロマトライトは、もう少しで海面から出てしまいそうである。水中生物が水から出てしまったら生きてはいけないはずだ。そこまでは考えられていないのだろうか。確かに、水中で程よい光が当たる浅瀬がシアノバクテリアにとって丁度よい生育環境だとしても、少し上に行けば水から出てしまうということはわからないだろう。しかし今、温暖化のせいか海面の上昇が起こっている。よってストロマトライトの進行が止まるのを少し先延ばしにすることができるかもしれない。

A:層を形成するのが意図的というのは、考え方としてはおもしろいですね。海水から出る点に関しては、日向と日陰でも同じことが起きるはずです。基本的には、生育できるところではぎりぎりまで生育する、というのが植物の戦略のように思います。


Q:最後のレポートなので、レポートというよりも、感想文に近いものになりうる事をご理解くださいと弁明しておきます。 高校時代に、植物の面白さを教えてくれた先生がいました。動物に比べて、脚光を浴びる機会が少ないと思われる植物たち。しかし、彼らの凄さ(単純に「凄い」としか言えない凄さ)を思い知り、興味が沸きました。 そして、この講義を受けて、さらに、光合成や植物そのものに興味が沸きました。まずは光合成の仕組み。物理化学的で複雑なもので、物理化学の酸化還元電位の話や、エネルギーと光の関係、電子伝達の話を知っていた僕には大変面白いものでした。そもそも、生物系に進もうと思ったのは電子伝達のところから。また、植物の色々な応答について、本当にうまくできていると思いました。ストレスに対抗する術も持っているし、植物は動けない分、独自の応答反応を作り上げ、上手に周りの環境と生きていると思いました。 そして、一番思ったのは、今の私達の生活は光合成の上に成り立っているのだということ。昔の生物が光合成によって残してくれたものがあるから、今いろんな生き物が生きていられる。でも、ヒトは、今、それをどんどん掘り起こしてエネルギーとして使っていっているし、今光合成してくれている植物もどんどん切り払ってしまっています。 物が溢れている裕福な環境に育った私達に何ができるのか、何をしたらいいのか、それを、どんなに小さな研究であっても、地球規模で物事を考えること忘れずに行う事が大切だと感じました。

A:物理、生物、化学という理科の分類は一般的ですが、本来はバラバラに考えるべきものではありません。光合成という分野は、おそらく、複数の分野にまたがる性質を持つ、分野融合的な研究分野だと思います。そして、光合成ことが地球上の生物の存続の基盤になっているわけですからね。その光合成の面白さの一端をわかってもらえたのであればうれしい限りです。


Q:今回の講義で、深海という過酷な環境での生態系に興味を持った。光の届かない深海にはクジラの背骨や、硫化水素がスを栄養にする生物がいる。このような生物は他の生物との生存競争の果てに過酷な深海へとたどり着いてしまったと考えられる。私は、深海に住む生物が光の届く浅海へと復活するにはどうしらよいのかを考えた。まず、浅海には酸素が充分にあるので、わざわざ有毒物質である硫化水素を栄養源にする必要はなくなる。酸素を取り込むためのヘモグロビンは、深海生物にも備わっているので、そのままの状態でも平気であると考えられる。では、浅海に復活するには他に何が必要なのであろうか。深海と浅海での酸素濃度以外の大きな違いは、水圧と温度である。深海では水圧が高いため、いきなり浅海に出てきてしまっては、中の細胞が破裂すると考えられる。この水圧の変化に対処するには、長い期間をかけて徐々に水圧の低い環境へと慣らしていくしか方法はないと思った。また熱水噴出口のような高温の深海 と、日光による照射熱しかない低温の浅海では、全く環境が違う。深海では高温下での条件に適したタンパク質を利用しているので、低温下になったときにタンパク質の構造が崩れてしまうと考えられる。よって、深海生物が浅海に復活するには、低温下で利用可能なタンパク質のアミノ酸配列と構造をとることが必要になると考えた。

A:おもしろい着眼点です。ただ、実際には「復活」ではなく、地球生命の起源自体が、深海の熱水噴出口である、という説も有力です。その場合には、どうやって浅い海に進出するか、という点はもっと重要性を帯びますね。


Q:極相の森林では二酸化炭素の吸収を担う事が出来ないということについて考えた。二酸化炭素を吸収し、植物の体を生産するのであるから、それ以上に肥大化することのない極相の森林では森林全体としてのが純生産量がゼロになっているのはいわれてみれば当たり前の話だった。しかし、この話は、世の中に存在する殆どの森林は極相林であると考えていた自分にとって、落ち着いて考えてみると不思議な話であった。この時当然誰にでも思いつくのが、大きな幹をもち、呼吸効率の悪いであろう大木を切り落とすことかもしれないが、この作業は大変能率が悪く、大木にしか住む事の出来ないかもしれない虫や小動物達にとって都合が悪い。遷移の進行と二酸化炭素の吸収は並行するということは、やはり砂漠の緑化などを行えば良いいうことだろう。人間が仮にこの瞬間に絶滅したとしたら、瞬く間に二酸化炭素濃度は低下するということになるのだろう。

A:大木を切り倒しても、それが腐ってしまったら、固定された二酸化炭素は空気中に戻ってしまいます。一方で、大木を建築材料として使い、古くなったら燃料として使えば、それは最終的には二酸化炭素に戻るにせよ、人はそれに依存して生きることができます。要は、自然が供給してくれるものの範囲内で人が生きていくことが重要なのではないかと思います。


Q:今回の講義では、植物の意味の重さを感じ、人間も大自然の一部にすぎないことをまざまざと思いしらされました。世界中で騒がれている、地球温暖化などの環境問題に人間は本当に向き合えているのだろうか?二酸化炭素などの温室効果ガスが増加し、地球の気温が上昇することで様々な異常気象が起こっています。その対策として、京都議定書で、1990年に比べ6%の温室効果ガス排出量を削減することが定められました。しかし、今現在の二酸化炭素排出量は1990年より30%以上も上回っているのです。今や『地球温暖化』という言葉を聞いたことのない人はいないだろうし、ほとんどの人がある程度の意味も理解しているだろう。そのために、私たち一人一人が出来ること、しなければならないことも知っている。それなのに、人は動かないのです。めんどくさい、自分一人がやっても何も変わらない、みんなもやっていないじゃないか…そんな気持ちがよぎると、人はその瞬間に動けなくなってしまうのです。結果として、二酸化炭素は減りません。ではどうすればいいのか?人は迫られないと動きません。つまり、私達がテスト前に焦って勉強したりするように、環境対策をしなければならない状態を作れば良いと思います。一番早い方法は、罰金制度を設けることです。袋を有料化するスーパーが増えてきていますが、それと同じように、電気料などの光熱費がある一定以上超えると高額になるだとか、都心のガソリン代を高くする替わりに電車賃を安くするだとかすれば、人は動くと思います。大人が当たり前のようにするようになれば、子供達もきっとそれにならって環境問題に取り組む姿勢が自然とできてくるのではないでしょうか?私はそう思いました。

A:人は迫られないと動かない、というのはまさにその通りでしょうね。人に迫るためには、罰金などによる動機づけが必要だ、というのもそうかも知れません。ただ、この問題は、日本だけでは解決しない問題なのが困るところですね。一方に、浪費大国のアメリカがあり、もう一方にこれからエネルギー消費を増やそうという発展途上国がある中で、どのような枠組みが可能なのか、難しいところです。


Q:今回の講義で硫化水素を栄養とできるシロウリガイという生物に興味を持った。シロウリガイは酸素の乏しい海底ですむためにヘモグロビンを大量に持っていて、化学合成細菌と共生することによって太陽の届かない深海でも硫化水素を使って生きているとういことだった。ここで自分疑問に思ったのは、どのようにシロウリガイと化学合成細菌が共生をはかったのかということだ。この貝は共生をする前は、食料の少ない深海でくらすには不利である。そのため、はじめから深海で生活していたとは考えずらい。また、化学合成細菌は硫化水素を使って生きているため、硫化水素の発生しているところでしか生きられない。これらのことから、比較的浅めの海の火山付近で共生し、自分たちの長所を生かしより天敵の少ない深海へと移動していったのではないだろうかいう仮定がたつ。しかしこの仮説によれば、火山付近ならばどこでもシロウリガイが生息していてもおかしくはない。ほかの仮説としては、貝のような生物になる前のより原始的な生物のときに共生し、エネルギーが効率よく得られるために、海底で貝のようなものへ進化できたというのも考えられる。また、浅い海?にいた貝が、地殻変動などによって深海に移動してしまい、化学合成菌と共生できたものだけが現在も生き残っているという考えもできる。これらの考えはすべて推測でしかないのでどれが正解とはいえないだろう。まずは、シロウリガイのゲノムを調べ、ほかの貝類と比較することによって進化の過程でどのように分かれて来たのか調べる必要があるだろう。

A:いろいろ考えましたね。このような進化の過程に関する考察は、実験的に証明するのはほぼ不可能でしょう。でも、だからこそ想像の羽を広げるべきなのではないかと思っています。


Q:私が今回の講義で一番興味を持ったのは大量絶滅です。大量絶滅は5回起こったそうです。最初の大量絶滅は今回のプリントの図でV/C境界に当たります。大量絶滅だからベコッとグラフがへこんでいるのかと思ったら、全然へこんでなくて、むしろほとんどの生物種が存在してなかったみたいですね。逆に言うとこのV/C境界を境に生物種の数が爆発的に増えています。この大量絶滅の原因の有力仮説は大陸の形成と分裂だそうです。つまりこの環境の変化により環境に適し、効率的に子孫を残すことのできる生物種だけが残り、進化していったのだと考えられます。逆に考えるとこの環境変化がなければ生物の淘汰が起こらず、われわれのような高等生物が誕生しなかったとも考えられます。他の大量絶滅の後も生物種が同等あるいはそれ以上に増えているので、多分そうなのでしょう。こう考えると、食物連鎖的な意味でもそうですが、多くの生物の生命を糧にして今の人類が成り立っているのだなと思います。今回の授業で人間が絶滅しても生命は残るだろうといっていましたが、きっと人間を糧にして新たな生物が上に立つのだろうなと思いました。

A:プリントに載せた図は、あくまで生物の「科」の数であって生物の「量」ではありませんので、それがイメージのギャップにつながっているのではないでしょうか。量が減った場合も、生態的な「隙間」ができますから、いわゆる適応放散は起きるはずですね。


Q:森が二酸化炭素を吸収するかという話題で、昔から森である極相林では呼吸と光合成は釣り合っていて新たな二酸化炭素の吸収源になり得ないということを学んだ。どうすれば森が二酸化炭素の吸収源となり得るかを考察する。呼吸と光合成が釣り合っているということは、つまり呼吸反応と光合成反応が平衡状態であるということを意味する。二酸化炭素を吸収させるということは平衡状態ではなく光合成の方に反応が片寄るようにすればよいことがわかる。森自体の二酸化炭素の吸収量は一定に保たれているので、外的要因を加えなければ平衡状態を崩せないと思われる。ここで森の近くに植林を行い森自体の面積を増やしたとする。森の面積が増えれば、おそらく最初は二酸化炭素を吸収する植物が増えることで、二酸化炭素の吸収量は増えると思われる。そして、ある程度すると、そこに生物が生息し、結局森にいる生物が増え、森にいるすべての生物の呼吸量と光合成は平衡状態に戻ってしまうと思われる。森の面積が急激に増えるのであれば、短期的だが二酸化炭素の吸収源になり得るが長期的に見れば結局は極相林となり吸収源にはならなくなると思われる。仮に砂漠を森に変えたとしてもやはり同じことが言えると思われる。森は二酸化炭素の吸収源には向いていないので、何か違うことで二酸化炭素の吸収をさせるべきだと思う。

A:少し誤解があるかも知れません。本質は、「短期的」「長期的」という期間の差ではなく、「一時的」と「永遠に」の差なのだと思います。「なにか違うこと」でとありますが、例えば、二酸化炭素を深海に貯留する、という構想があります。しかし、これとて短期的といえば短期的で、別に一度セットしたら二酸化炭素を自動的に吸収し続けてくれるわけではありません。ドラエモンのポケットのような無限のゴミ箱は存在しないのです。極相林では、光合成と呼吸がおおざっぱに釣り合っているということですが、逆に言えば、その釣り合いの中では、動物が二酸化炭素をはき出し続けても、二酸化炭素濃度の上昇にはつながりません。地球全体でもそのような釣り合いは成り立ち、その釣り合いが破れない範囲で活動すれば、(人間文明のスケールからすれば)永遠に二酸化炭素濃度は変化しないでしょうし、釣り合いを破るような活動を続ければ、一時的にはあまった二酸化炭素を何とかすることができても、いずれすぐに破綻が訪れるでしょう。


Q:今回の講義内容について考えたのは、シロウリガイなどのように光が届かない深海で硫化水素ガスを栄養にして生きている生物についてです。これらの生物を光が届く位置まで持っていくとどうなるのでしょうか。シロウリガイについて調べたところ、シロウリガイは表面に化学合成細菌が住んでいるエラをもち、この細菌が海水中の硫化水素を利用して作った有機物を食べて生きているそうです。このため消化管は退化してしまっています。故に、シロウリガイを深海から引き上げてしまうと栄養を取ることができなくなるため死んでしまうと思います。また、ヘモグロビンを持つため酸素濃度が高いところに連れてこられると、体中の酸素濃度が上がってしまうと思われます。酸素の過多は生物には害です。そのため、これもシロウリガイが生きられなくなる一因となると考えられます。しかし生物は進化します。シロウリガイをそのまま光が届く範囲に置いて育てると、その内退化していた消化管が再び動き出し、ヘモグロビンは減り、普通の貝と変わらなくなると考えられます。生物が新たな環境に対応していく過程を見てみたいと思いました。
参考:ハイパー海洋地球百科事典 http://www.jamstec.go.jp/opedia/Docs/desc.pl?doc=20

A:最後の所、個体は進化しませんからね・・・。ポケモンとは違います。


Q:今回は主に地球と生命との誕生からの相関関係などを考える講義内容でしたが,最も興味を持ったのは地磁気の形成による地球環境の変動についてです。地磁気は今からおよそ27億年前に形成されました。その原因としては、地球内部の鉄やニッケルを多く含んだ核(コア)の流動物質が自転と熱対流によって回転することで生じる電流に起因するとされています。また、この電流が電磁石あるいは発電機(ダイナモ)の働きを行い、磁場の生成や維持を行っていると考えられています。地磁気の形成は講義でもあったように放射線の排除やストロマトライトの形成、さらに縞状鉄鉱石の形成などをもたらしましたが、これを地球と生命の歴史と照らし合わせると、約20億年前に地磁場強度が著しく増加したのとほぼ同時期に酸素濃度が増加し、真核生物が出現しています。地磁気によって形成されたストロマトライトは地球に大量の酸素を供給したとされており、これは生命の維持に酸素を必要とする真核生物が誕生した原因の一つであると思います。では何故地磁気が形成されるとストロマトライトなどの酸素発生型光合成を行う物質が誕生したのでしょうか? 地球の磁場は、概ね磁気双極子で近似でき(つまり、地球の中心に仮想的に置かれた一つの小さな強い棒磁石だけによって作られていると見なせる)、現在は北極部にS極、南極部にN極に相当する磁極があります。基本的に磁力線は空間の各所で磁場の方向に平行であり、その向きは磁石のN極から発してS極に終わる向きです。地球の双極子磁場は自転軸に対して若干の傾きを持つため、地理上の極と磁極の位置はまったく同じではないですが、これはつまり南極側(南半球)から北極側(北半球)の方向に力が働いていると考えられます。すると、南半球に存在する藍藻類の死骸などが磁場による海流によって北半球に流されて泥粒とともに堆積し、層状のストロマトライトが形成されます。また、この時期には最初の大陸が形成されましたが、パンゲアとしての大陸が現在の様な6大陸に分かれ始めたきっかけも、地磁気による磁場によってもたらされたのではないでしょうか。現に、地球上の大陸分布は北半球の方が多く占めていますし、恐竜などの古代真核生物の化石も北半球で多く見つかっています。以上のように、地磁気の形成は地球の環境や生態系を劇的に変化させました。また、その力は現在も維持されており、磁気としての方位を知るための手段などとして利用されています。これらを考慮してみても、地磁気とは驚くべき地球の持つ力だと思います。

A:なかなかおもしろいストーリーですが、一番簡単な地磁気の影響は電荷を持つ宇宙線の排除でしょうね。地磁気によって、宇宙からくる有害な放射線は排除されます。光は電荷を持ちませんから、地磁気の影響を直接は受けません。とすると、それまで、光合成によって光を使いたかったけれども、放射線のために光が届く所へ進出できなかった生物が、地磁気の形成をきっかけに光合成を始めた、と考えると説明はつくように思います。