植物生理学 第12回講義

地球の歴史と生命の進化

今回は、最終回のまとめとして、地球環境の変遷とその中での生命の進化、そして、誕生した光合成が逆に地球環境に与えたインパクトについて解説しました。今回の講義に寄せられた意見の中からいくつかを選び、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。今回は、環境問題を取り上げたせいか、評論家風のレポートが目立ちました。そこで、コメントに対する僕の回答は今回は厳しめにしました。


Q:講義資料から、地球温暖化の進行と石油資源の利用量増加の関係は明らかなので、人類には自らの種を維持するためにも、地球温暖化の進行を食い止め、その影響を緩和する責任がある。では、地球温暖化対策としてどのような手段をとればよいのだろうか。講義資料には、砂漠の緑化に二酸化炭素削減効果があると書かれているが、砂漠の緑化は現在の技術ではすぐに取り掛かることのできる事業ではなく、実現するには、技術開発からはじめねばならない。ゆえに人類が最初に取り組むべき地球温暖化対策は、開発段階の技術を必要とする砂漠の緑化ではなく、徹底した世界的な二酸化炭素排出量の削減と、手入れをされずに荒れてしまっている里山や森林の整備といった地道な活動であると思う。荒れてしまっている森林では、植物がその光合成能力を十分に発揮できないと聞いたことがある。ならば、荒れてしまった森林を整備し、そこに生えている植物の能力を十分に引き出せば、森林あたりの二酸化炭素の吸収量が増加するはずである。また、整備の過程で植林をするときに、その森林に既存の植物よりも炭酸固定能力が高く、なおかつその環境に適応できる植物を植えるということも考えられる。二酸化炭素の排出量の削減と二酸化炭素の吸収量の増加を同時に行うことで、すぐにはその効果が出ないにしても、何十年単位の長期的な視点でみれば、明らかな効果が出るはずである。環境問題の解決には、長い時間がかかるので、すぐに結果を出すことを求めずに、地道に対策をとっていく必要がある。以上のことから、人類が自らの種の維持のためにすべきことは、環境問題にできるだけの対策を講じ、自分たちの力では無理なことは自然のもつ自己回復能力に任せて、気長に経過観察を続けることであると私は考える。

A:僕の講義を聴いてきたのでしたら、「荒れてしまっている森林では、植物がその光合成能力を十分に発揮できないと聞いたことがある。」という部分で、それを鵜呑みにせず、それは本当だろうか、本当だとしたらどのようなメカニズムで起こるのだろうか、と考えてほしいところです。おそらく、それによって、どのような対策が必要なのかも変わってくるでしょう。環境問題は、ややもすると、科学的な根拠を持たない漠然とした議論に流れがちです。今の状態が理想的である、と思っている人はあまりいないでしょうけれども、では、何が一番問題で、何をしたらよいのか、という点については、きちんとした議論が少ないように思います。


Q:今回の講義で一番興味を持ったのは、光の届かない深海で生物がどのように生育しているのかということです。講義ではクジラの背骨を栄養源としているという蟹や硫化水素ガスを栄養にすることのできるシロウリガイなどが紹介されました。また熱水噴出口というものが海底には存在しており、そこから有毒物質が出ることによって、動物プランクトンや植物プランクトンを殺しその死骸を栄養源している生物がいるということにはとても驚かされました。結局この熱水噴出口付近で生態系が作られており、深海の生物は熱水噴出口により様々な形で栄養を取ってきているのだとわかりました。熱水噴出口からは硫化水素、メタン、水素、二酸化炭素などのガス、鉄、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの鉱物質が出ており、これら無機物の周りに生命が存在しているということで、生命の起源に関係しているのではないかと思いました。この熱水噴出口から生命が誕生したとすると、深海の生物はわれわれの先祖であるかも知れないといことに気づきました。深海にはまだ発見されてない多くのことが存在しているので、生命の誕生も深海にヒントがあるのではないかと思います。

A:これは、日本語の文章としては、よくまとまっていてよいのですが、レポートとして考えた場合は、やや、抽象論にとどまっているようです。「ヒントがある」だけではなく、とっぴな案でもよいので、自分の独自のアイデアを展開できるようになると一人前です。


Q:今回の講義で、地球と生命の歴史についての話を聞いて、地球の環境をよりよくしていかなければならないと改めて感じた。地球の二酸化炭素濃度は50年前と比べても著しく増加し、年平均気温も年々上昇している。先進国ではエコに関する活動が近年盛んに行われている。しかし、発展途上国の著しい成長とともに排出されるガスや汚染物質を考えると、これらの国が先進国レベルの豊かさになりエコについて考えるようになるまで、世界全体が協力して地球環境問題を解決することは難しいだろう。今苦しんで生活している人々に影響がない解決策が必要である。極相林では、呼吸と光合成がつり合っていて、二酸化炭素の吸収源にはならない。砂漠が森になれば、二酸化炭素の吸収源になる。1991年にUNEPが発表したレポートによると、世界には61億ha以上の乾燥地が存在し、地球の陸地の40%を占めている。これらの乾燥地に森を再び作ることができたら、二酸化炭素濃度を減少させることができると思う。そのために、少ない量の水でも育つ木や草を開発する必要がある。遺伝子組み換えなど分子生物学の分野を活用して、厳しい環境に強い植物を作れたらいいと思う。

A:これも、言っていることは至極もっともで、きちんと論旨がまとまっています。ただ、厳しい言い方をすれば、評論家風のコメント、ということになります。ひとつの講義のレポートにそこまで要求するのは酷かもしれませんが、科学的なレポートには、評論家のコメントではなく、研究者のアイデアが欲しいところですね。


Q:今回(最終回)の講義は、地球と言うマクロな視点から見た生命と切り口が違った講義で、それはそれで面白かったです。動物のバイオマスは植物のバイオマスの0.01%以下であるって言った後に先生が、『ヒトのバイオマスは動物のバイオマスの2割(確かこの中には家畜動物も含まれていましたっけ?)【も】占めるのです』と言う言葉は強烈にインパクトに残っています。生態系のピラミッドでは雑食の人間は様々な連鎖群に影響を与えています。僕ら人間は植物のバイオマスの僅か0.002%以下の存在ですが、地球環境を壊す小さな癌のような存在であることは否めないようです。しかし、だからといってさっさと人間なんて淘汰されてしまえばいいんだとは思いません。求められているのは地球主体の生活、現代のヒトが主体とする生活から脱却しないといけませんが、植物の研究はその脱却の力になるかもしれません。例えば砂漠の緑化も前回の講義で話された、広葉樹の話やC4食料植物の研究・ステート遷移の解明などさまざまな研究が点と点を結び解決の線になるように思えます。植物の生理学の講義で研究職と言うのは好きになれないと厳しい職業だ、と言うことをすごく痛感しました。その一方で、多くの研究は成果を出し、確実に多くの点を打ち出していること・そしてそれらの研究に興味を持つ自分がいることもまた知ることができました。今、私は研究と研究を繋げられるような仕事はないだろうかと考えています。この講義が自分の中で考える力を養えたことは一番の成長だと思ってます!ありがとうございました!!!

A:これも、特に「点と点を結び解決の線になる」などといった言い回しなど、僕の好みにぴったりで、文章としてはとてもよいのですが、やはり、多くの人の平均的な感想と、変わらないように思います。これに、さらに人にはない発想が加われば完璧です。


Q:今回は、硫化鉄の装甲を持つ深海の巻貝に興味を持ちました。この生物は和名がウロコフネマタガイというそうですが、なぜ深海にもかかわらず硬い装甲を持つ必要があったのでしょうか。考えられる可能性が、「食べられないため」ですが、ウロコフネマタガイは熱水噴出孔の近くで化学合成細菌を共生させて生きているそうなので、装甲を持つよりは、すばやく逃げられるような機構を持ったほうが、重いものを背負って動くより普段のエネルギー消費が抑えられるのではないかと思います。また、ウロコフネマタガイが持つ装甲がさびてしまうと、ストレスになり死んでしまうそうなので、酸素が少ない環境とは言っても、装甲も代謝する必要があります。なので、その面から見ても、装甲でなくてもよかったのでないかと思います。装甲を持つことのメリットとしては、熱水噴出孔から離れなくても身を守れることぐらいしか思いつきません。

A:さびるといっても、元は鉄ではなく、硫化鉄ですから、単体の鉄に比べればすでに酸化されていることになります。それはさておき、装甲の必要性については確かに疑問の余地がありますね。普通の貝は炭酸カルシウムの殻を持っているわけですが、重金属の多い熱水噴出口では、カルシウムより鉄の方が手に入りやすい、といった想像もできるかと思います。


Q:今回の講義を聞いて現世のストロマトライトの話に興味が引かれた。ストロマトライトは非常に古い形の生物で現在ではほとんど残っておらず、残っているのは西オーストラリアのごく一部の地域ぐらいであり、ここにストロマトライトが残っているのはもろもろの要因により選択圧が低いことが原因である。これは選択圧の高い他の地域ではストロマトライトは生存できなかったということであるが、選択圧の低い地域ではストロマトライトにほとんど何の変化も起こっていないということでもあるのではないだろうか。とするならば、選択圧の低い地域ではストロマトライトにほとんど変化が無いように、生物は必要に迫られない限りあまり大きな変化をしないものなのかもしれない。生物がより高度に進化するには生物間の競争、気候の急激な変動などの切羽詰った事態が必要なのではないだろうか。だとするなら、幾度となく起こった大量絶滅も生物の進化には必要なものだったのかもしれない。

A:これはその通りでしょう。生物の進化の歴史において、大量絶滅のあとの適応放散というのは極めて重要な位置を占めます。たとえはよくないかも知れませんが、人間ものほほんとした環境に育つと努力しないものです・・・。


Q:第十二回目の講義では、今後の地球について考えさせられた。また、人間が地球のなかで暮らすということが、地球環境においてデメリットが多いであろうこともわかった。地質年代と生物の科の数をグラフ化したものを見れば、生命が大量絶滅を繰り返し、古生代型と現代型の科の数がちょうどよくバランスがとれていたことが見てとれた。現代型の生物は、古生代型の生物の科がいなくなった分だけのスペースに進出してふえてきていたが、現代では、古生代など昔の生物種が減らないのに現代型が増え続けており、いつ、生物種の大量絶滅が起こるかが大変心配である。また、スライドから人間の存在は決して地球にも他の命あるものや環境にも良い存在ではないように思える。生態系のピラミッドが人間を頂点とすることで歪み、バランスを失いつつあり、現在は、人工的に生態系のピラミッドをコントロールし、辛うじてバランスを保っていると思う。これから、人間のあるべき姿としては人工的に生態系に働きかけるのを極力控え、自然本来の働きが成せるような環境を整えていくことだと考える。

A:これも、「生態系に働きかけるのを極力控え」と言うのは簡単ですが、人類の農業、工業などほとんど全ての活動は「生態系に働きかける」ものです。それを控えることが実現できるでしょうか?実現するためには、どのような手だてがあるでしょうか?別に、生物学とは離れても良いので、独自の考え方を示してくれると、良いレポートになります。


Q:今回は深海の生物であるシロウリガイの生態について考察します。シロウリガイなどの酸素が乏しい環境で生きる生物はヘモグロビンを多くもっているのが特徴とあるが、何故だろうか。ヘモグロビンをいくら持ってようが、酸素がなければ使いようがない。調べてみたところ、ヘモグロビンは酸素よりも硫化水素と強く反応するらしく、化学合成を行うシロウリガイには有用な分子であることがわかった。ここで集めた硫化水素を化学合成菌に渡すようである。ところで、もしもシロウリガイを酸素の豊富な環境、例えば浅瀬につれてくるとどうなるだろうか。深海からつれてきたシロウリガイは通常、2・3日で死んでしまうらしい。しかし、シロウリガイはヘモグロビンを持っているのだから、浅瀬にする貝類と同じく呼吸をすることができるのではないだろうか。例えば浅瀬に住むアサリは呼吸をして酸素を取り込み、グリコーゲンを合成している。これと同じ経路をシロウリガイが持っている可能性は高い。しかも、化学合成を行っているのは共生している細菌である。細菌は死滅するかもしれないが、シロウリガイ自身は有毒である硫化水素がない環境はむしろ適している。しかし、シロウリガイはこの細菌自体を食べて栄養を得ているらしい。つまり、共生細菌が死滅することは食物がなくなることを意味する。しかも、シロウリガイ自身は硫化水素を取り込んでも、栄養となる物質を作ることはない。このことからシロウリガイには自ら栄養物質を合成する経路を持っている確証はない。退化している可能性もある。よってシロウリガイは酸素の豊富な浅瀬では生きられないと推察される。

A:きちんと考察されていて、好感が持てます。ただ、「酸素が豊富」というのと「硫化水素がない」というのは、別のことですよね。最後の結論ですが、「酸素の豊富な浅瀬では生きられない」ではなくて、「硫化水素のない浅瀬では生きられない」ではないでしょうか?


Q:12回の講義で植物の複雑さや精密さ、そして奥深さを感じ、私たち人間も地球上にいる生命の一部なのだと改めて感じさせられました。そして最後の講義で、いかに人間が愚かな行為をして自分たちの寿命を縮めているかを実感しました。私は常々あと数百年のうちに地球上にいる生命の三割近く、そして人間は五割強が死滅するのではないかと考え恐怖していますが、このままでは本当に現実のものとなってしまう気がします。地球温暖化やオゾン層の破壊、数々の自然破壊を我々は繰り返し、未だにそれらを止めることをしません。これほど顕著に地球がおかしくなっている兆候が現れているのに、人はとくに行動を起こそうとはしません。僕は自然破壊をする人間がおおかた好きにはなれないのですが、未だに自然破壊に対して特に何も行動を起こさない人間が不思議でしょうがないし、大嫌いです。二酸化炭素を排出しない電気自動車や、クリーンな次世代エネルギーの開発など、またヨーロッパでは環境に対しての意識が高まっているようですけど、こんなせこいことをしていても結局は地球の破壊は止められず、何もかも手遅れになってしまう気がします。僕は将来、地球の環境を改善するための研究をしたいですが、それと同時に世界規模で地球環境を守り、改善させるためのプロジェクトを立ち上げたいです。国境を越え、民族を超えて、人類全員で地球を守る意識を高めていけば、いつか本当の意味で、人は地球と、そして人間以外の地球上にすむ生命と共存していけるのではないでしょうか。科学は今まで人間の生活を向上することだけを考えてきましたが、これからは地球、人、そして人以外の生命体の三位を一体に考えていくべきだと思います。

A:これも、「国境を越え、民族を超えて、人類全員で地球を守る意識を高めて」と言うだけなら簡単ですが、具体的にはどうすればよいのでしょう?自然破壊といいますが、普通の農業も見方を変えれば自然破壊です。多様な植物が生えていたところに単一の作物を植えるわけですから、生態系の多様性は確実に失われます。かといって、多くの人が昔の採集生活に戻ることを期待することはできません。では、どうしたらよいでしょうか?もう一歩踏み込んで考えて欲しいところです。


Q:今の地球環境がどのように出来たのか,初期の生命がどのようなものだったのか,非常に興味深かったです。印象に残ったのは大気中に酸素が増えた理由のところでした。原始大気には酸素が無く二酸化炭素が今よりももっと多くあり,光合成が始まることで大気中の酸素の量が増えたと今まで思っていましたが,植物や微生物が光合成を盛んにしたところで大気の20%を酸素が占めるほどになるのか疑問でした。しかし今回の講義で,大陸の出現によって有機物の蓄積が起こったために酸素が増えたと考えられると聞いて少し納得しました。しかし,それだけでこんなに大規模な大気組成の変化がおきるのでしょうか。光合成によって多少酸素の量が増えたとしても,かなりの有機物が地下に堆積されないと酸素の量を増やせないと思うのです。それとも当時の大陸がかなり不安定で今よりも活発的な変動をしていたために,地球上の至るところで有機物が地下に飲み込まれ,大気を大きく変えていったのでしょうか。

A:「かなりの有機物が地下に堆積されないと」というその有機物が、まさに今人類が消費している石油や石炭なわけです。そのような化石燃料を人間が少し燃やしただけで大気中の二酸化炭素濃度が上がるのでしたら、最初に有機物が堆積された時に二酸化炭素濃度が減って酸素濃度が上がるのも納得できませんか?


Q:講義で挙げられた世界最古の生命化石であるストロマトライトについて、この物体が年々拡大していくことに興味をもちました。まず、このストロマトライトはシアノバクテリアの光合成によって、マットを形成する。これが一層ずつ被さっていき、だんだん大きくなっていくということである。また、このストロマトライトは現在にも生育している。そこで、この原理を何かに利用できないかと考えました。まず現在、大問題となっている地球温暖化に観点をおいてみました。この地球温暖化により南極などの氷が溶け出し、それが原因となり海面上昇が引き起こされる。したがって、海抜の低い特にマーシャル諸島では国土の80%が沈没されると予測されるほどである。よって、このストロマトライトを海岸などで生育させることによって、残念ながら地球温暖化は防止出来ていないが、陸地の沈没を自然に防ぐことができるのではないかと思いました。また、日本は経済水域を確保するために、沖ノ島では侵食が進む岩礁をコンクリートやブロックで保護している。したがって、このような場所でもストロマトライトを活用できるのではないかと思いました。

A:問題は、ストロマトライトの「成長」速度です。極めて遅いので、まだしも、サンゴなどの方が期待が持てると思います。サンゴの保護などは、少しずつ進んでいますよね。


Q:私は今回の講義を通して、バイオマスについて興味を持ちました。砂漠が森になればバイオマスは増加するが、極相林ではバイオマスの変化はない、という事実は、よく考えてみると多少おかしいことがあるように思えます。例えば、もし、地球上のすべての森が極相林になってしまったとしたら、地球の二酸化炭素濃度は上昇し続けるのではないでしょうか。森以外の場所にも動物は存在し、また、人間はかなりの二酸化炭素を排出しています。ですから、現在の温暖化の原因とされている二酸化炭素濃度の上昇は極相林も関係しているのではないかと思われます。ここでこの状況を改善するためには逆に極相林を減らせばよいのではないでしょうか。木を人為的に切り、それが再生するために活発に光合成するのを利用して二酸化炭素を吸収させるという方法が考えられます。しかし、これには動物の生態系の崩壊が伴います。ですから、おそらくバイオマスの増加には何もない土地が必要でしょう。そう考えると、砂漠のような土地の緑化が最も有効ではないでしょうか。私達がこれから先、この地球上であらゆる生物と共存していくためには、やはりその方法がどうしても必要となってくると思います。

A:誤解を招いたかも知れませんが、林に住む動物、菌類、細菌など全ての生態系を考えに入れた時に全体としてどれだけ極相林が二酸化炭素を吸収するかを考えると、育っている林よりも非常に小さくなる、ということです。極相林では樹木が生長する分だけ分解していくわけですが、この分解過程には、動物、菌類、細菌などが大きな意味を持っています。もし、純粋に樹木だけしかない林があったら、木の分解も進みませんから、そもそも極相林にはなりませんよね。


Q:今回の講義では深海にすむ生物に関する内容のものがありましたが、今まで光合成に関して主に考えて光のエネルギーを利用しない生物については考えたことがなかったのでとても新鮮でした。講義の内容によると光エネルギーを利用しない生物は、主に流化水素と水を利用する化学合成細菌を底辺とする生態系を形成しているということだが、光を全く必要としないで生きることが出来る生物はどうして存在するのか?ある時期から地球では光を利用するエネルギー生産の方が優勢であるはずなのに、光を利用しないということに疑問を持ちました。私は、深海の生物の祖先はかつては光に依存して生きていたのだと考えます。しかし他の種との光が得られる領域での生存競争に負け、深海に追いやられ、そして世代を重ねて光に依存しないで生きる術をえたのだと考えます。彼らは、長い年月をかけて光が存在しない環境に適応したのだと考えます。それに比べ人類は、今まで周りの環境を科学の力で人類に都合のよく変えてきました。このレポートを通して私は、人類は自然の摂理に逆らって生きているのではないか?と思いました。

A:確かに、極限環境の生物の進化を考えた場合、いわば「昔の生物」の生き残りが、厳しい環境に追いやられて生きている、という側面があることは確かです。ただ、昔は光に依存して生きていたかどうかは疑問のような気がします。光合成能力を失った光合成生物はたくさんありますが、その多くは寄生生物であったり、他の生物に依存する生物です。たとえは悪いかも知れませんが、三日やったら乞食はやめられない、というところでしょう。しかし、化学合成細菌は、かりにも独立栄養性物ですから、あまり気楽な商売替えではないように思います。


Q:今回の講義で特に興味を引かれたのが、地球温暖化についてでした。今までは地球温暖化には二酸化炭素が影響していると考えていました。確かに二酸化炭素濃度と地球の気温の経年変化は共に上昇していますが、二酸化炭素濃度が地球温暖化の直接の原因なのかと疑問に思いました。調べてみると、地球温暖化への寄与度が最も多いのは水蒸気であり、二酸化炭素はそれほど大きなものではないということでした。また、国連のIPCCは人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は90%であるという報告をしていますが、それに批判的なデータや意見も数多くあるようで、実際には地球温暖化はあまり解明されて無いように見えました。世界は二酸化炭素濃度を下げる方向で動いていますが、私には少しおかしなように見え、政治的な問題もあるような気がします。地球温暖化は非常に複雑な問題であります。国が政治的に有利になるように改変されることなく、正しいデータで科学的に地球温暖化が解明されなければ、人類は絶滅の道へ向かうのではないでしょうか。

A:二酸化炭素が地球温暖化の原因であるかどうかについては、批判的な意見も数多くあるのは確かです。ただ、おそらく、現在の温暖化の原因が、自然の原因であると考えている人は極めて少ないように思います。地球温暖化の原因が人間の活動由来であるのであれば、たとえ直接的な原因が二酸化炭素であろうがなかろうが、二酸化炭素排出量を人間活動の大きさの指標として使い、対策の助けにすることは有効かも知れません。


Q:最後の授業は今までの代謝などの細かい反応などではなく、深海にすむ生物など生物を大きく見ての講義だったので面白かった。特に深海にすむ生物は進化の上では酸素を作る生物のほうが先に誕生するにもかかわらずあえ厳しい環境に身をおき生存競争を勝ち抜いたというところが面白かったのでそれについてまとめたいと思います。彼らはあえて厳しい環境に身をおいたのは他の生物に対して自分たちはとても劣ることがある(足が遅い、体が柔らかいなど)、それにより捕食される恐れのない厳しい環境に適応すれば他の生物から逃れ絶滅の危機を乗り越えることができると考えたのである。しかし私はいままで生物は進化するのはある事柄についてポジティブに進化する(くちばしを尖らせて木の実が割れるようにするなど)ものかと思っていたがネガティブな進化(上のようにある生物から逃げるなど)というものもあるのだと進化の奥深さを知りました。人間も体毛をなくし尻尾がなくなるという退化(?)を経て進化を遂げてきたということから生物それぞれの進化を行い、いまの世界が成り立っているのだと実感した。

A:最後の授業が面白かった、ということは、これまでの授業はつまらなかった、ということかな?まあ、それはさておき、極限環境の生物を見ていると、やはり進化についてさまざまな考え方がわき起こってきます。100℃より高い温度で生育する生物や、pH 3で生きている生物などは、いわば環境自体を防御手段として使っている、という見方もできるでしょう。そのあたりをもう少し具体的に考察できると良いですね。