植物生理学 第1回講義

植物生理学の内容と光合成の意義

初回は講義の全体像をつかむため、光合成が地球環境、生態系、あるいは人間の文明にどのようなインパクトを持つのか、また過去の光合成研究の歴史と、今後の光合成研究の方向性について概説しました。今回の講義に寄せられた意見の中からいくつかを選び、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。


Q:講義内で、硝酸濃度の高い水温の低い海に硫酸鉄を投入して、大気中の二酸化炭素濃度を減少させるするという実験が紹介されていたが、固形の鉄を海中に投入したらどうなるだろうか。講義内での話によると、粉末の硫酸鉄では、12日間で効果がなくなるらしいので、効果をより長く継続させるためには長持ちするブロック状の鉄を用いればよいのではないかと考えた。しかし、普通の鉄の塊を海中においても、粉末の鉄を入れたときのように拡散せず、海中での濃度に偏りが生じることが予想される。そこでブロックの組成を工夫する。製薬系の開発技術者は錠剤を開発するときに、どのように溶けるのかを考えて薬を設計するという。すなわち、薬学系には物質の溶け方をコントロールする技術がある。その技術を使い、鉄に適当な混ぜ物をし、形状を工夫することで、鉄の拡散の仕方をコントロールし、粉末の鉄を入れたときと近い拡散が起こるようにする。現在の技術でこの実験が可能であるかは判らないが、粉末の鉄を用いた実験成果から考えて、実験条件が整えば、二酸化炭素濃度の減少効果が得られることが予想される。

A:確かに、溶ける速度をコントロールできれば、少しは効果を持続させることができるかも知れませんね。ただ、ブロックにした場合、そのまま深海に沈んでしまったら意味がありませんから、そこを工夫する必要があるかも知れません。


Q:授業の中で基本的に動物は光合成をしないが、ミドリムシなどの一部の動物は光合成を行っているということをおっしゃっていたのでなぜミドリムシなどの一部の動物は光合成を行うのかについて考えてみたいと思う。ミドリムシは浅いたまり水、水田に多く生息している(Wikipedia 参照)ため、ミドリムシが誕生した初期の頃は一般的な水草と同じように動かずにその場で光合成を行っていたが、水中にいることから周りに丈の長い植物が立ってしまうと十分な太陽光を得ることができなくなってしまう。それゆえに、自分から光を求めて動き出すようになったのではないかと考えられる。

A:動かない植物だったものが、光を求めて動き出すという考え方は面白いですね。ある種の植物が光を求めて背を高くするのであれば、別の種が横に動くというのがあり得ない発想ではないでしょう。ただ、鞭毛の起源自体は極めて古いようなので、新しく鞭毛を獲得した、という部分については説明がつかないかも知れません。


Q:今回の講義では、初めの講義ということで、光合成について細かいことは特に説明はありませんでした。なので、今後変わっていくかもしれませんが、光合成をする生物は、本当に独立栄養生物と呼べるのかということに興味を持ちました。講義内で、植物プランクトンは硝酸濃度の高いところで多くなり、鉄も必要だといっていました。つまり、完全に独立栄養生物とは呼べないと言えます。これは、収穫するだけの略奪式農業が、だんだんと収量を減らしていくことや、濡らした脱脂綿の上に種を置いただけでは、きちんと育たないことからもわかります。 唯一、独立であるといえる可能性のある植物は、根粒菌と共生しているマメ科の植物です。なので、それを証明するために、根粒菌を共生させた大豆などを、脱脂綿の上に移し、水のみを与えてきちんと生育するかどうかを観察してみることで、本当の意味での独立栄養生物は存在するのかが証明できると思います。

A:根粒菌と共生していても、その窒素は空気中の窒素から来るわけです。もし、硝酸を使うから独立栄養ではない、ということでしたら、窒素ガスを使うのもダメということになりませんかねえ。講義の中でいいましたが、生物をめぐる物質は、循環しています。つまり、使った物質でも再利用可能なわけです。人間が収穫して物質を別の場所に持って行ってしまうから、収量が減るだけで、収穫さえしなければ、植物はその場所で、ずーっと生きていくことができるでしょう。問題は、講義でも言いましたように、循環せずに一方向に流れるエネルギーです。こればっかりは、外から取り入れるしかありません。このエネルギーの取り入れを、他の生物に依存せずにできる生物を独立栄養性物というのです。ですから、本当は、独立エネルギー生物というのがわかりやすいかも知れませんね。


Q:今回の講義で特に興味を惹かれたのは、タコクラゲのように光合成を行う藻類と共生している種の存在である。高等な動物は移動能力を持ち、太陽エネルギーの特徴は一定で密度が低いため、十分なエネルギーを得るためには広い面積が必要となる。が、広い面積を持って移動するのは非効率であり、高等動物は光合成をしない。という推論は納得できた。しかし、私の中ではそれだけだは不十分で、まだ、動物の食餌摂取によるエネルギーと光合成による太陽エネルギーの利用が両立できれば、より効率的なのではないか、とも考えた。ここで、現在、生物の最終進化形態が人間だとすると、このエネルギー利用の両立がなされていないことから考えて、他にも、光合成の機能が失われた原因が存在するのだろう。そこで注目したのは、共生の意味である。本来共生とは、両者がともに利益を得なければ成り立たないはずである。つまり、タコクラゲを例にとると、タコクラゲは藻類の光合成で得たエネルギーを利用し、藻類は、タコクラゲから何らかの見返りを得ていなければならない。それは、外敵から襲われにくい、また、タコクラゲから栄養を分けてもらうことなどが考えられる。植物の持つ葉緑体ももとは、光合成細菌が内部共生したものであるから、同様の理論が成り立つ。この理論を高等動物である人間にあてはめると、食餌でエネルギーを得ているときはいいが、光合成では、面積の非効率性と共に葉緑体への栄養供給という見返りが必要となる。これでは、動かずともエネルギーが得られる。という光合成の利点が弱まってしまう。よって、動くことのできる動物は進化の過程で、光合成の機能を捨ててきたのだと推論できる。

A:確かに共生である以上、受ける利益の見返りは必要ですが、利益と見返りを合計した時に利益の方が大きいから共生が成立するわけですよね。とすると、なぜ人間の時には共生ができないかの理由にはならないように思いますが・・・。


Q:今回の講義を聞いて、植物の進化には光合成が関係しているのではないかと思いました。そこで、よく区別される針葉樹と広葉樹の2種類の植物の葉について、光合成をふまえて考えてみました。まず、よく目にする恐竜の絵に一緒に描かれている植物は針葉樹である。また、高校などで習った生きた化石として知られているメタセコイアなどの植物は針葉樹である。よって、この事などから針葉樹が先に生息していたのではないかと考えられます。そして、針葉樹の葉は細長く効率よく光合成ができないことから、メタセコイアのように出来るだけ太陽に近づくために木が高く伸び、背が高くなったのではないかと考えました。そこで、もっと効率よく光合成を行うために広葉樹に進化したのではないかと思いました。つまり、葉を大きくする事によって太陽光を受ける面積を広げ、効率よく光合成が行えるようになったということである。また、針葉樹は葉が長細いため一年中、葉をつけている常緑樹が多いのではないかと思いました。

A:きちんと考えようという努力は感じられます。ただ、最後、葉が細いから常緑、という論理がわかりませんでした。もし、常緑の方が、有利だというなら、葉が広くても常緑になりませんか?


Q:私が本講義で一番興味を持ったことは、植物の光合成には必ず光が必要であるということです。なぜ水と二酸化炭素から糖を作り出すためのエネルギーとして光でなければならないのか?それは、おそらく植物が生まれた頃地球上には二酸化炭素と水がたくさん存在し光合成の反応を成立させるためのエネルギーとしては、太陽の光が最適であったからであると私は思います。植物誕生当時、光の他のエネルギーとして考えられるのは、火山から由来する熱、風力の二つです。わたしは、糖の生成のためのエネルギー源としてこの二つのエネルギーを利用した植物もかつては存在したと思います。しかし、どちらのエネルギー源も光のエネルギーに比べ不安定なので、長い年月が経つうちに滅んでいったとおもいます。食虫植物という植物がいるがこの植物は、光合成による糖の生成のほかに虫を分解して糖を得ている。おそらく光のエネルギーのみでは生きていけなかった植物が進化し生き残ったのだろうと思います。

A:面白いですね。風力をエネルギー源にするのには、どのようにしたらよいのか、そこまで考えることができたら完璧ですが。熱に関しては、温度が高いというだけではエネルギー源にはなりません。エネルギーを取り出すためには、温度の差が必要なのです。例えば、火力発電では、水を熱して蒸気を作り、それでタービンを回して電力を得ますが、もし、最初から温度が高くて水が蒸気の状態になっていたら、別にタービンはまわりませんよね。水から蒸気に変化して体積が増えるので、初めてエネルギー源になるのです。


Q:クロロフィル濃度の季節変化の図を見ると、季節を通して北半球の方が南半球よりクロロフィル濃度が高い。特に夏の季節には、北半球でクロロフィル濃度が高くなっている。これは水温の上昇が、植物プランクトンの発育を促したためと考えられる。このことから、水温の上昇と、植物プランクトンの成長には密接に関係がある。現在地球では、温室効果ガスが増加し、地球全体の気温が上昇しているが、このクロロフィル濃度の季節ごとの変遷をみると、気温が上昇すれば植物プランクトンが増えて、光合成を活発に行うようになる。光合成が活発に行われれば大気中の二酸化炭素は糖へと変えられ、温室効果ガスである二酸化炭素は減少する。よって、気温が上昇すれば、それだけ植物や光合成色素を持つプランクトンも地球規模で増えて、光合成も活発に行われると考えられる。光合成が行われれば、大気中の二酸化炭素も減少するので、地球温暖化は意外に早い時期に止まり、気温は一定状態になると予想できる。このことから考えると、地球温暖化は深刻な問題ではないのかもしれない。

A:よいところに目をつけましたね。確かに、植物プランクトンの量は季節変動を示しますが、実は、必ずしも温度だけで説明がつくとは限りません。水は、温度によって比重が変化しますから、温度が変化すると、水の鉛直方向(水深方向)の混合状態が変化するのです。そうして、下から栄養の豊富な水が上がってくるような状態になると、水温自体とは無関係に植物プランクトンが増殖を始める、というようなことがあるのです。地球環境の問題については、より詳しく最終回の講義で取り上げる予定です。


Q:今回の講義を聴き、自分なりにも「少なくとも”高等な”動物は光合成しないのはなぜか?」という問題について考えてみた。講義での説明では、光合成で用いる光エネルギーは、エネルギーとしては密度が薄く、それを利用するには広い面積が必要であり、移動能力を持つ高等動物にとっては効率的ではないということであった。ここからは私の考えであるが、高等な生物は下等な生物よりもより多くのエネルギーを消費するため、時間や環境などに制限される光合成よりも他の生物を栄養源として摂取した方がよりエネルギーを摂取する上で効率が良いので進化の上で光合成を選択しなかったのではないかと思う。そして、生物はより確実に食物を獲得するため、また、天敵から見つからないためなど、生存の確率をより増やすため、また、種を出来るだけ残すために進化してきた。光合成を選択した植物などもその生きている環境に合わせて、それぞれ独特の進化をしてきた。ここで講義のも登場したタコクラゲについてだが、タコクラゲの中には環境の変化によって、その進化の過程で光合成を獲得し、光合成だけで生存しているタコクラゲが存在することが分かった。このことで私は疑問に思うことがある。それは進化の確率である。このタコクラゲはwebで調べてみると、ある大規模な環境の変化によって海から陸上の塩水湖として隔離されてしまい、結果、天敵となる生物もいなくなるが、食物も失ってしまう。そこでタコクラゲは進化の過程で毒素と食物を摂取する口を失う代わりに光合成をする藻類を体内に取り込むことで種の存続の危機を乗り越えた。また、大昔生物にとって害であった酸素は、体内にミトコンドリアを取り込むことで酸素をエネルギーとして摂取することが可能になった。このように生物は種の存続の危機を乗り越えた例がいくつもあるが、それは必然的にそうなったのか、それとも、奇跡的な確率で危機を乗り越えたのか私は疑問に思う。タコクラゲも食物が無くなってしまった時点で、その環境にいるタコクラゲは絶滅してしまうと考えるのが普通ではないだろうか。この疑問を解くためには、ある生物の種の危機的状況を作りだし観察することだと思うが、正直成功するとは思えないし、出来たとしても長い時間がかかってしまうと思う。私の予想は、より下等な生物が種の存続の危機を乗り越える確率が高いのではないかと思う。それは、細菌やウイルスなどは変異しやすいからである。そして、この問いについては是非先生の考えも聞きたいと思う。

A:確かに、人間のように進化してしまった動物が、変異によって光合成を獲得するのは無理でしょう。ですから、下等な生物ほど、環境に適応しやすい、ということはあるかも知れません。しかし、下等動物の段階で光合成を獲得して、そこから光合成ができ、かつ”高等な”動物に進化するわけにはいかないのでしょうかね?


Q:授業中に紹介されたラクウショウはケヤキやヒノキ等の身の回りにある樹木とは違い,なぜ気根をこれほど大きく発達させるのかについて考えてみた。根に酸素を取り入れるはたらきをもつ(植物生理学第1回講義プリント,p4)気根を大きく発達させるという事は土中では酸欠状態だと予想できる。酸欠の原因に,1つ目は木が大きい,生育する地域の地盤がゆるく,根を大きく発達させる必要があったから,2つ目は水が浸っているなどで,酸素が根に供給されず土中は酸欠だから,3つ目は酸素を根に循環させる仕組みが無いか乏しいから,ということを予想した。
 文献よりラクウショウは高さ25~50mに生長し,原産地では湿地帯に生じ,周囲に気根を生じる(新村出編“広辞苑 第2版補訂版”,岩波書店,東京,1980,P2299)相当の年齢に達したものでないと,大きい気根は現はれない(上原敬二著“樹木大図説”、有明書房,東京,1985,P367)ということがわかった。つまり,ほぼ予想通り,ラクウショウは生長すると身の回りの樹木より遥かに大きくなる上に,地盤のしっかりしない湿地帯に生長するため根を大きく発達させ,多くの酸素を必要とした,さらに湿地帯で,土中に酸素があまり供給されない,という要因から,気根をよく発達させたようだ。ただ,根への酸素の供給についての記述はなく,これはラクウショウの維管束や気孔を他の樹木と比較しないとわからない。

A:湿地帯にはえるというのは大きな要因だと思っていたのですが、木が大きいという要素はあまり考えていませんでした。確かに、相当の年齢に達したものでないと大きな気根は現れないとすると、その通りかも知れませんね。よく考察されています。


Q:自分は熱力学の第二法則である、エントロピー増大の法則に興味を引かれました。まず、エントロピーとは、「無秩序の度合いを示す物理量」であり(もともとは熱力学の用語なので正確な表現ではないと思いますが)具体的には講義でも出た「部屋が片付いている状態」(秩序ある状態)はエントロピー小「部屋が汚い状態」(無秩序な状態)はエントロピー大でありました。そして、エントロピー増大の法則とは、自然は秩序から無秩序への方向に進むということ。ここで、自然とはどこまでをいってるのか、と自分は疑問に思いました。先ほどにも出た部屋の話で言えば、汚い部屋でも人間が片付ければ部屋は綺麗になるではないか、人間の活動も自然現象の一部であるのにと。大きく言えば、生命活動というのはエントロピー増大の法則に逆らう現象ではないかと。しかし、この場合、確かに部屋のエントロピーは減少するが、人間+部屋の全体のエントロピーと捕らえるとどうなるか人間が活動(部屋の掃除)するために必要なエネルギーは食物を摂って体内で燃焼させて得るので熱やら老廃物が出てくるつまり、エントロピーは増大しこの活動結果(部屋が綺麗になる)によるエントロピーの減少分は増大分より少ないとするならば人間+部屋全体のエントロピーは増大することになると。なんだか、考察すればするほど全ての物事はエントロピー増大の法則に従うということを支持する結果となりました。でも、確率的にはすごい低いかもしれないけど偶然が続けばエントロピーが減少することがあってもいいのではないかな、とも思います。

A:最後に確率のことが出てきますが、それこそが、ある意味でエントロピーの本質なのです。コインを投げて表ばかり10回続けて出る(秩序がある)確率はかなり低く、表と裏がバラバラに出る(無秩序な)確率は高いわけですが、この「バラバラに」というのがミソです。例えば、バラバラといってもある特定の「表・裏・裏・表・裏・表・表・表・裏・裏」という順番に出る確率は、表が10回連続して出る確率と変わりません。違いは、表が10回続くのは一通りしかないのに対して、「表と裏がバラバラに出る」のはたくさんのケースがある、という点にあるのです。ですから、確率は低くても、コインを投げ続ければ表が10回続けて出ることもあるでしょうし、秩序が増大することもあるはずですね。


Q:今回の講義では、地球から赤外光が出ていると言う事を初めて知り、その点に興味を引かれた。太陽から来る可視光と地球から出る赤外光の量が釣り合う事で、地球の温度が保たれている、と言う話があった。それに関する事であるが、地球温暖化は、温室効果ガスの増加により、地球から熱が放射されにくくなり起こるのだとよく聞く。地球から赤外光が出ている事は実験で確認されているようであるし、納得のいく考えである。しかし、地球は寒冷期と温暖期を繰り返しており、今は気温が上がる時期なのだ、とする説もある。そのような説があるのは何故か。恐らく、その説は確かめる事が難しいからであろう。何万年と掛けて新たな寒冷期が来れば、地球はそのようなリズムを持っているのだと言える。しかしそれだけの時間を待つのであれば、現在有力な考えである、温室効果ガス削減による温暖化防止を目指した方が確実と言う事なのだろう。

A:確かに、地球は温暖化と寒冷化を繰り返してきたわけですが、それはあくまで、おそらく千年といった単位での話ですよね。やはり、産業革命以降の100年間で、これだけの変化がある、というのは、今までの温暖化、寒冷化のサイクルでは説明がつかないように思います。僕が子供の頃は、「アフリカの砂漠などでは気温が体温を超すこともあるんだって」などと言っていたのですが、いまや、日本でも、毎年のように36度を超す気温が観測されているわけですからねえ。