植物生理学 第1回講義

植物生理学の内容と光合成の意義

初回は講義の全体像をつかむため、光合成が地球環境、生態系、あるいは人間の文明にどのようなインパクトを持つのか、また過去の光合成研究の歴史と、今後の光合成研究の方向性について概説しました。今回の講義に寄せられた意見の中からいくつかを選び、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。


Q:私が興味を持った点は、植物が光合成によってエネルギーを得ているという点です。人類をはじめとした動物が植物の光合成によってエネルギーを摂取し、しかもそのエネルギー源が太陽からのものであるということなので、太陽がなければ地球はどこからエネルギー源を得るのかということが気になりました。もちろん太陽や地球がなくなるのは数億年後なので、そのときまで人類等が存続していればの話ですが、もしそうなら宇宙空間で人類その他が生きられる分のエネルギーを生産しなければなりません。しかし、人類が創った光で全人類を養えるだけのエネルギーを供給する植物を育てられるのかという問題が生まれるのではないかと、ふと考えました。また光合成により酸素供給も今は問題ないですが、例えば最近宇宙ステーション等人類の宇宙進出が進んでいますが、宇宙における酸素供給も大きな問題で、宇宙ステーション内で自分達で植物を育て酸素供給システムを作り上げるのは大変で、人類が地球環境の変化これによりこれ以上地球上に住めなくなった時重要な課題になると思います。

A:「エネルギーを生産しなければ」というのが気になりました。エネルギーはある形から別の形へと変換することはあっても、全部足し合わせると一定なのです。熱力学の第二法則について講義の中で触れましたが、熱力学の第一法則がエネルギー保存則です。従って、何らかのエネルギー源なしに、「エネルギーを生産する」ということはあり得ないのです。


Q:私は鉄鉱石が光合成によって作られたと知り、どういう過程によって鉄鉱石が作られるのかを調べました。地球が誕生した頃は大気中や、海中の酸素分子比率はきわめて低く、酸素原子のほとんどは水素や炭素と結びついていた。このため、酸素還元的な状態や酸性雨によって地表の鉄分は鉄イオンとして大量に海水に溶解していた。それにくわえて、鉄イオンは海底火山による地球内部の鉄が噴出して、鉄イオンが海に供給された。そして約25億年前にシアノバクテリアと言う最古の光合成物?と言われるものや、ストロマトライトと言う藍藻類の死骸と泥泥粒などによって作られる層状の構造をもつ岩石のような光合成生物が大量発生し、二酸化炭素などから酸素を分離し、吐き出したため、大気中や、海水中の酸素濃度が高まった。この酸素が海水中の鉄イオンと結びつき、それまで海水中に溶解していた鉄イオンを酸化鉄に変えた。酸化鉄は沈殿、堆積して、赤鉄鉱の鉄床を形成した。その後、造山運動によって海底にあった鉄床は隆起し地上に押し上げられた。こうして鉄鉱石鉱山は形成される。 初めてレポートを書いてみて、自分の興味の持ったことについてレポートを書くのは苦にはならないし、自分のためにも非常にいいことだと思いました。これからも毎週頑張りたいと思います。

A:これは、レポートとして合格点には達していますが、物足りない点もあります。それは、調べた事実が述べられているだけで、自分なりの考え方がレポートに反映されていない点です。あと、もう一歩進めて、調べたことについて自分なりの考察を加えてみるように頑張ってみてください。


Q: 「植物が光合成という作業を行うことにより、動物が呼吸しても地球上から酸素はなくならない。」ということは、私たちが中学生の理科の授業で学び、当然のことのように知っている。しかし、今地球の二酸化炭素濃度が増え、地球温暖化やオゾン層破壊などさまざまな問題が発生している。これらの問題も、植物の光合成や呼吸と関連して考えることができ、光合成とは、さまざまな現象と結びついている。それに加え、地球上で最も重要な元素である「炭素」の循環には、植物の光合成が大きく影響している。また、植物がどれだけの二酸化炭素を吸収できるのかや、将来、二酸化炭素濃度や気温が上昇したときに、植物がその環境にどう対応するかによって、動物である私たちの生存に大きく関わるからである。よって、光合成とは、とても大切な作業といえるだろう。だが、光合成速度は、光合成を行う植物の生育環境によって変化するのである。つまり、植物は、自分の意思で移動することができないため、場所における光の時間的・空間的影響をかなり強く受けてしまい、自分が光合成をしやすい環境を自分で作ることは、そんなに簡単なことではないのである。 たとえば、林や背丈が長い草木が多い中で生きている植物は、光不足に悩まされるし、過剰な光量は、植物の葉を傷つけたり、葉の温度の上昇を抑えるための蒸散による植物内の水分不足を引き起こし、光合成活性の低下を引き起こす原因になる。このように、植物は、水と光という「資源の獲得」と、植物同士が密集することによる「ストレスの回避」を迅速に行わなければならない。こう考えると、人間という動物は森林伐採や化学燃料の使いすぎという自分勝手な行動しかとっていないことに、改めて気づかされる。私たち人間にできることはないのだろうか?と考えてみたときに、すぐに実行出来ることは、少しでも多くの植物を、身の回りで育てることぐらいである。ただ、これは人間である私の意見であって、当事者である植物は、こんな自分勝手な意見に賛成してくれるとは思えない。植物は、「すぐにでも人間が地球上からいなくなってくれればいいのに」と思っているかもしれないという現実を、私たちは、しっかり受け止めていかなければならない。

A:地球環境における人間の位置については、最終回の講義あたりで問題提起するつもりですので。


Q:地球上に生きる植物は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する光合成と,酸素を吸収して二酸化炭素を放出する呼吸を行っている。これは生物学において当たり前の知識である。しかし、山でキャンプをしている人達が「山の朝の空気はうまいな~。」という言葉を聞きはしないだろうか?自分自身、子供のころからボーイスカウトに所属していたため、週末はよく山でキャンプを行っていた。そのとき、大人の先輩方に山の朝の空気はうまいと教えられていたため、早朝に呼吸することがとても新鮮に感じていた。確かに朝の日の出は植物に対して光合成を行わせるが、日の光が最大に放射されるのは正午過ぎである。そう考えると植物も呼吸を行うのであるから、朝の空気は二酸化炭素濃度の方が高いはずである。今思えば、山の空気がおいしいとは酸素濃度の多さではなく、森に囲まれた場所で吸うからこそおいしいのであると、大人たちは無垢な子供たちに伝えたかったのであろう。すべて生物学的に物事を見るものではないということだ。

A:「朝の空気は本当にうまいか?」というのは、レポートの題材として非常に面白いと思います。朝と昼・夜では、酸素と二酸化炭素濃度だけでなく、いろいろ違う要因があるはずですから、そのあたりまで含めて考察できると面白いレポートになりますよ。


Q:「植物にとっての光合成」というテーマで「暗室で種から植物を育てると、その植物は光を感知できないため自らが未だ土の中にいると判断し、種子に蓄えた養分を利用して伸び続ける」という話を聞き、自然界において地中に埋もれた種子は伸びるべき方向、即ち地表の方向をどのような情報から感知するのかという点に疑問を覚えた。地中の種子に与えられる情報の中で特に有力な情報は重力の方向であり、これは植物中の特定の物質が偏る方向として感知されると推測する。つまり、植物はこの特定の物質の濃度によって細胞分裂を活性化・不活性化するシステムを保有していると考える。しかし、重力と反対方向に手頃な地表がない場合、例えば崖に咲く花などは重力という情報を利用できない。この条件下で植物が利用する情報は、些か曖昧で心許無いが、日光が地表を温めることによって生じる地中の温度の分布、雨として染み込んでくる水分の分布であると推測する。

A:このように、自分でメカニズムを推測してみることは非常に重要です。ただ、確かにちょっと曖昧ですね。「これこれの温度分布を感知すれば、うまく根や葉を伸ばせるはずである」というメカニズムを、もう少し具体的に考察できるとよいですね。


Q:今回の講義では,たこくらげという面白い動物に興味を持ちました。共生藻類を体内で飼っているたこくらげは,くらげの進化した形ということで,人間のミトコンドリアと近いものを感じました。ミトコンドリアは光合成のためではありませんが,本来毒となる酸素から運動エネルギーを獲得するために共生したと考えられています。たこくらげも同じく,光合成をするために共生しているということは,エネルギーを獲得するためだと思います。しかし,夜に栄養素の多い海の下のほうに潜るのならば,共生しなくともずっと海の下で生きていて平気なのでは,と思いました。また,高等な動物は光合成をしないという点から考えると,やはり共生する必要はないと思いました。移動することができるのが動物の特徴なのであるから,光合成をするために太陽を追いかけて移動するより,栄養を求めて海の中を移動する方が効率的であるかと思います。また,暗いところで育つ植物と明るいところで育つ植物はかなり形状が異なっています。しかしこのたこくらげは,一見してくらげ,ということがわかります。 共生していて機構は別,といってもミクロな視点からみるとかなり影響があると思うので,もっと不思議な形状でもおかしくない,と思いました。

A:「栄養素」というのが誤解を招いたようですが、深いところに多いと言っていた栄養分は、有機物ではなく、あくまで無機的な栄養素です。ですから、光合成生物には直接利用することができますが、従属栄養生物である動物は、直接には利用することができないのです。 あと、単に「思いました」でおしまいになるのではなく、もし、自分の考えと実際の自然の有様に食い違いがあるのならば、その原因は何だろうか、と論理的に突き詰めていく姿勢があると、もっとすばらしいレポートになります。


Q:今回の講義を聴いて、光合成が行われ酸素が放出されるようになり、地球環境が変化していき現在の環境に近づいていったことがわかりました。しかし、このことを聞いて疑問に思ったことがあります。それは、酸素の増加による環境の変化に伴って、植物の光合成の仕組みは変化したかどうかです。 講義の中では、光合成による酸素の増加やそれに伴うオゾン層の形成、海中の鉄分の酸化・沈殿によって鉄鉱石ができたという話がありました。これらの変化は、植物だけでなくすべての生物の生存に必要な条件を変えたはずです。それは、植物にとっては光合成の仕組みも変化させなければならいほどの変化だったのでしょうか。それとも、光合成以外の仕組みの変化で対応できたのでしょうか。 また今回の講義の中で、もうひとつ興味を持ったものは光合成細菌と共生したクラゲです。このクラゲは共生によって栄養を得られるが、それだけのエネルギーで生存できるのでしょうか。講義においても光合成のために必要な面積を持って移動することは非効率であると説明を受けました。それでも、共生するメリットはあるのでしょうか。今回の講義を受けて、以上のようなことを考えました。

A:疑問というのは科学的な思考の出発点であり、非常に重要なのですが、単に疑問を発するだけでは科学の発展にはつながりませんし、レポートとしても物足りなく感じてしまいます。せっかく見つけて疑問ですから、それに対して自分はどのように回答するのか、また、実際にどのようななっているかを調べるためには、どのような実験をしたらよいのか、といった点まで考えられれば一級のレポートになります。 あと、クラゲに共生しているのは、渦鞭毛藻(褐虫藻)なので、真核生物です。光合成細菌ではありません。講義で話しましたように、このクラゲは刺胞を持った触手を持っていないので、共生藻の光合成に完全に依存していると思われます。


Q:『少なくとも“高等な”動物は光合成をしない』理由について、自分なりの仮説を挙げてみようと思う。
仮説1:“高等な”動物は自分の意思で移動することが出来るので、自ら食物(つまりエネルギー源)を確保する方が都合が良いから。
光合成は太陽の光をエネルギー源とする。多くの光合成を行う生物は移動することが出来ないので、日の光が与えられるのを待つしかない。言ってみれば受身である。確かに植物のなかでもより多くの光を得るため、周囲の固体より背を高くしたり、葉を大きくしたり、また向日葵のように日に向かって向きを変えるものもあるが、それでもやはり動物が“狩り”をするのとは違うだろう。
仮説2:CO2を供給する為。
光合成にはCO2が必要であるが、地球上に植物ばかりだったら、いずれ『CO2は枯渇してしまう』なんていう問題が挙がるかも知れない。(植物ももちろん呼吸はするがその分を差し引いても、である。)光合成によって供給されるO! 2、消費されるCO2、その帳尻合わせの為にO2を消費しCO2を供給する動物が必要だったのではないか。
正しい答えはわからないが、一高等動物のヒトとして確かに言えることは、自分が光合成生物でなくて本当に良かったということである。—“食”の楽しみを知ってしまったから。

A:このような質問には「正しい答え」というのはないでしょうね。答えではなく、考えるという過程が重要なのです。最後のコメントに関しては・・・。 植物が葉に太陽の光を受ける時、もしかしたら、葉を(?)貫く喜びに満たされるのかも知れませんよ。


Q:人間はなぜ光合成をしないのか。植物はその場から動くことなく地中から水分と一緒に栄養を吸収し,加えて光合成によって生育に必要なエネルギーを産生している。この生命維持の方法は非常に無駄がないように思える。 植物にない動物の特徴として移動能力が挙げられていた。たしかに動物は自分の意思で成育に適した環境に移動することができるが,当然その移動にはエネルギーの消費がともなう。これはこれで足し引きゼロのようで納得がいくが,移動能力を獲得するために光合成の能力まで失う必要はあったのだろうか。 光は面積あたりのエネルギー密度が薄く,動物のような形態では光のエネルギーを主たる原動力にするのは難しいわけだが,無いよりましではないか。人間だって疲弊しきったときや歳をとってくると食べ物を食む力さえ湧かないこともある。そんな時に光合成を補助エネルギー源として使えないものだろうか。タコクラゲは捕食能力と光合成,そして移動能力の三者をうまいこと協同させているではないか。 ところで,上では人間は元々光合成の能力を持っていて,進化の過程でその能力を捨てたような解釈をしているが,よくよく考えてみたら光合成する真核生物としない真核生物が分かれたのは,人間が出現するはるかはるか昔の話なのはずだ。ミトコンドリアの共生起源説が本当であるならば,光合成をしない,むしろできない真核生物というのは葉緑体の祖先であった原核生物を共生させなかった,させられなかったわけで,基本的には光合成できない生物は生来的にその能力を持っていなかったと考えるべきなのだろう。 では人間はどのようにしたら光合成の能力を獲得しうるのか。タコクラゲの場合,藻類を自分の身体に付着(体内に飼育しているのか?)させることで事実上光合成の恩恵にあずかっているわけで,自分自身は直接光合成を行えるわけではないのだ。我人間もこの方法をまねて体内に光合成真核生物を飼うとか,皮膚上に住まわすとかするというのはいささか実現しがたいように思える。となるとやはり,共生起源説のように光合成原核生物を細胞内に取り込むのがもっともわかりやすい方法に思える。webで調べた結果,ウミウシの仲間には食した藻類の細胞の中から葉緑体を自分の細胞の中に取り込むものがいるということだ。(タコクラゲも同じなのかもしれない) 我々人間では食べ物のもつ葉緑体が細胞内に取り込まれるのを待ってはいられないので,そこは細胞工学的に手で導入すべきだろう。たとえば単離した葉緑体を真皮の幹細胞に注射するなどして導入できれば,そこから分化増殖した表皮細胞は光合成を行ってエネルギーを産生できる細胞になりはしないか。それに加えて葉緑体が,紫外線に対するメラニンの生成に代わる紫外線防御機構になりはしないものだろうか。ほんの数個の葉緑体が細胞内にあるだけでは降り注ぐ紫外線から核を守りきることはさすがにできないか。でももしそうなら植物はどのようにしてDNAを紫外線から守っているのか。緑色は紫外線の吸収率が最も高いと聞く気がするが,核をすっぽり覆うほどの葉緑体が植物の細胞の中にはあるのだろうか。(そもそも葉緑体の利用する光エネルギーとは紫外線も含むのか?) それかもしくは,受精卵の時期の胚性幹細胞の段階で葉緑体を組み込めば,自然と葉緑体を細胞内にもつ個体を発生させられるだろうか。この場合,血液胎盤関門は葉緑体を持つ胎児を母体の免疫機構から守りきれるのだろうか。そもそも人間の細胞に葉緑体を組み込んだ時点で異物として排除されてしまいはしないだろうか。おそらくこの点はドンピシャでアウトだろう。この問題をクリアするにはミトコンドリアが取り込まれたときのような奇跡を起こすしかないのだろう。 まあ,元も子もない話をすれば我々にはそこまでして光合成の能力が必要なのかということになるか。あったら面白いかなという程度の感覚か。いや,自然科学というのは日々革新的な進歩を望んで良いもののはずだ!w

A:なかなかしっかり考えていますね。植物の起源については第2回の講義で詳しく考える予定です。実は、ミトコンドリアの祖先の生物のさらに祖先は光合成をしていた、という話もあるのです。


Q:今回の講義で印象に残ったのは,現在の光合成研究の方向として,ミクロな視点だけでなく,マクロな視点からも捉えようとしていることであった。この学科にいるせいか,最近,少なくとも顕微鏡をのぞかなければわからないレベルのものを主に考えてしまう傾向にあった。そのため今回の講義の衛星写真は非常に興味深いものであった。クロロフィル濃度や硝酸塩濃度が可視化できる技術があることにも驚いたが,その分布は必ずしも海洋深層水が上昇するところと重なっていないことが意外だった。前期の授業で,深海の水はベルトコンベアのように動いていて,「地球のエアコン」の役割があることを学んだ。グリーンランド沖では水温が低いため,水が最も密度の高い3℃の状態を取りやすく,また,海の水は氷へと姿を変えるため,そのぶん塩分濃度が高くなる。そのため,表層の海水は深海へともぐっていき,海溝を通るなどして長い時間をかけて海底を進み,大陸から吹き降ろす風によって出来た対流などによってまた海の表面にあらわれるというのだ。海洋深層水は,プランクトンの死骸が分解され,長い年月で蓄積された無機塩類をはじめとする, 豊富な栄養を含んでいることから,深層水が表層に現れるベーリング海沖やインド洋沖での植物プランクトンの発生量,つまりクロロフィル量は多くなるはずである。しかし,衛星写真を見てみると,ベーリング海でのクロロフィル量の多さにはうなずけるが,インド洋でのクロロフィル量がほとんど他の海域と区別がつかないほどである。これには授業で学んだ実験結果から,植物プランクトンの生育に必要な無機塩類が不足していることが第一に考えられるが,なぜ,こうもベーリング海周辺の海域と差が出てしまうのだろうか。また日本海やハワイなどの島国の周りや,北極,南極にも大量のクロロフィルが見られるのはなぜだろうか。まず一つの理由として,先ほど説明した,深層海流の陸地への衝突や,風による対流による深層水の上昇があげられる。これにより,各大陸のところどころにある赤く塗られている海域は説明できる。しかし,太平洋の,それも北半球にばかりこうも赤い海域が存在するのを証明するには納得がいかない。そこで,推測として,私は環太平洋造山帯の存在に注目してみた。インド洋などにはない,海底火山の活動が大きな役割を持っているのではないだろうか。 マントルから吹き上げる溶岩は多くのエネルギーとともに無機塩類も運んでくる。たとえば,海底火山の噴出口にすむカニのような形をしたエビの仲間は,噴出される無機塩類を分解するエネルギーで生育するプランクトンを体内で育て,それをたべることで生きている。このように,火山近辺には多くのプランクトンが生育できるだけの環境がととのっているのである。このことから,火山の無機塩類や,火山の生み出したエネルギーそのものが植物プランクトンの繁殖に大きく寄与していると推測する。こうしたマクロな地球の活動がミクロのものに大きく影響を与えているとおもうと,細かく見ることだけでなく大きな視野を持って研究することが大切なのだと実感した。

A:これも非常にしっかりと考察しています。植物プランクトンの分布火山原因説というのは面白いですね。火山はよく知りませんが、大きな川の河口の周辺はたとえ人間活動による栄養源がなくても植物プランクトンが増えやすい、ということはあるようです。これは、川の流れが地上の無機塩類(一説によると特に鉄)などを大量に海に運び込むことが原因になっているようです。


Q:今回の講義の中で、植物の形態が光によって制御されるとあったが、どのように形態を変えるのかを考察する。まず、植物は栄養の大本である二酸化炭素と水を取り込み、光のエネルギーを利用して酸素を作り出す光合成を行う。つまり、光合成をしなければ植物は生存することが出来ず、それは、光がなければ植物は生きていけないことを意味する。それ故に植物の形態は、基本はまずいかに光を効率よく吸収出来るかで構成されるはずである。ただ、ここで1つ考えられるのが、人間もそうだが決して栄養の過剰摂取は良くないということである。そう考えると、葉の形もただ単に大きければ良いというものでもなく、その環境、つまり日照条件や地域による光の強さなどにより左右されるものと思われる。また、それにより葉の数や重なり具合までも変化するはずである。他に考えられるものは、よく聞くヒマワリが太陽の方向を向くといったものである。これはおそらく茎の部分、特に太陽の方向と逆方向の部分の成長が関係していると思われる。こうすることで、最も効率よく太陽光を吸収出来るのではないか。他に考えられる形態と光の関係として、 芽を出すタイミングというものが考えられる。植物は芽を出すタイミングがあると聞いたことがあるが、これはおそらく地中でも光を吸収し、今芽を出しても成長の妨げにならない程度の日照条件があると判断した時のみ茎が成長し、地上に芽を出すものと考えられる。

A:強すぎる光がよくない、という話は、講義の中頃に出てくる予定です。


Q:ものを細かくしていくと素粒子にいたる。その素粒子の性質を調べると壮大な宇宙のことが理解できるようになる。科学におけるミクロとマクロは互いにつながるという考え方に通じるものを本講義で感じることができた。光合成はミクロ生物学(原子レベル)とマクロ生物学(生態系)の橋渡しをしている。そのギャップが興味深かったです。熱力学の第2法則から、植物が光合成によりエネルギーを獲得しているということが全生物において非常に重要な意味を持っている事に驚いた。もし、光エネルギーがなかったらどうなっていたのでしょうか。熱力学の第2法則から生物は存在できなかったでしょう。仮に生物が存在できたとしても熱エネルギーなど非常に能率の悪いエネルギーを利用することとなるので現在の生物の繁栄まではいたらなかったのではないかと考えます。光はエネルギー供与のほかに神経への作用(繁殖期や睡眠時期の決定)や紫外線は遺伝子への影響とさまざまな刺激的性質を持っている。刺激をいつも与えられている状態では刺激にはならない。しかし、地球が自転をしていて光エネルギーがあるときとないときの二つの局面を持っているということ、 そこに周期性が存在するということは生物の機能の活用と再生にメリハリをつけるという意味でも効率的であり利点が多かったのではないでしょうか。熱や風力ではエネルギー・刺激の変化の仕方や周期性にメリハリがないので繁殖期を一致させるため常に繁殖期でなければならないなどの非効率がうまれていたことでしょう。光エネルギー以外では生物は多様性に欠け現在の繁栄はなかったと考えます。

A:刺激に周期性があることが生物の多様性を生み出したという考え方は面白いですね。少なくとも、地球に対する月のように地球が常に同じ面を太陽に向けていたら、今のような温和な環境にならなかったことだけは確かでしょう。