植物生理学 第4回講義

光の吸収と電子の伝達

第4回は、植物がアンテナとして働く色素を使って光エネルギーを捕集し、それを反応中心に集めて電子伝達反応に変えるメカニズムの概略についてお話ししました。今回の講義に寄せられた意見の中からいくつかを選び、必要に応じてそれに対するコメントを以下に示します。
 「レポートは金曜日の0時まででいいのですよね?」という質問がありましたが、それで結構です。あと、11月2日、9日は休講ですので、注意して下さい。


Q:今回の講義で最も印象深かった内容は、酸素発生の量子収率のところです。ここでは、光合成量は、光の持つ波長、つまり、エネルギーの大小ではなく、クロロフィルにあっ立った光子の数で決まることを学びましたが、では何故光合成の主役ともいえるクロロフィルaが緑色の光だけを反射するのでしょうか。これについて考察を行うと、それは原始地球の環境にあると考えます。今回の講義の水深と透過する光についての項で学びましたが、結局緑色の光というものは、プランクトンがいる環境でないと透過しにくく、生物の誕生したての原始の地球では最もよく透過してくる光は、赤と青だったのではないかと考えます。

A:つまり原始海洋を見ると紫色だったのではないか、ということですね。本当のところはどうかわかりませんが、光合成が出現する前の海洋には、金属イオンなども今と比べものにならないほどたくさんとけ込んでいたでしょうから、今とは違う色をしていた可能性はありますね。一方で、現在の光合成生物は、皆クロロフィルかそれて類似する分子を使っていますから、一番最初の光合成生物が「たまたま」クロロフィルタイプの色素を使って、その後の植物などは、祖先から受け継いだものを使っているだけなのかも知れません。


Q:今回の講義で一番印象に残ったことは、クロロフィルの構造についてです。4個のピロール環の斜め方向に電子が共鳴構造であることにより動き、その二方向で吸収する光の波長が異なることは初めて知りました。クロロフィルaとbで吸収する波長が違うのは1つのピロール環の側鎖の違いによることから考えれば、この側鎖に違う基をつけたら、また異なる波長を吸収できる事になります。水質汚染が進んだ湖や内海などで、たとえば絶滅の危機に瀕している種があるならば、クロロフィルのこの側鎖を変える事によってもしかすると、生き残ることができるのかもしれません。そう考えると、クロロフィルの進化は生きてきた環境の変化(透過してくる光の変化)に応じて側鎖を様々に変えて進んだのかもしれない、と思います。逆に考えたら、このまま水質汚染で以前より悪くなった環境で、クロロフィルの側鎖を変化させて生き残っていくクロロフィルも出てくるのではないか、と思いました。

A:その通りかも知れませんね。講義の中で説明したように、水中の光環境は極めて多様で、クロロフィルc、クロロフィルdなども、そのような環境に適応して進化してきた結果かも知れません。それに対して高等植物は、クロロフィルaとbだけですから、基本的には空気中の光環境は、かなり一様だと考えて良いのかも知れません。


Q:今回の講義を聞いて、光合成色素の種類について興味をもった。光合成色素にはカロテンα、βまた、クロロフィルa、bやフィコシアニンなどがあった。フィコシアニンやフィコエリスリンは紅藻類に特有の色素、また紅藻類の生息場所は海中であり、水を透過する光が場所によって異なるために、水中の植物が様々な光合成色素をもっているということを知った。 陸上の生物の光合成色素は主にクロロフィルで、フィコシアニンやフィコエリスリンはもっていない。しかし、もっていれば様々な光のエネルギーを吸収することができるので有利になるのではないだろうか。例えば、木で上の方についている葉の色素がクロロフィルならば、下のほうの葉の色素がフィコシアニンも持っていればエネルギーの吸収効率はアップするのではないだろうか。
 このことから、植物は最初からフィコシアニンを持っていたが、必要ないために形質を失ったのではなく、紅藻類が独自の変化を遂げた結果、獲得した光合成色素だと考えることはできないだろうか。

A:たしかに、いくら空気中の光環境が一様でも、ある葉っぱの下の光は緑色になっているはずですから、フィコビリンを持っていた方が得でしょう。しかし、一方で、葉の下では光の強さ自体がかなり弱くなるでしょうから、そこで工夫するよりは、もっと光の当たる上に葉を出す努力をした方が報われる、ということなのかも知れません。


Q: ポルフィリン環の構造について、ポルフィリン環は多くの二重結合を持ち、環状の構造をとっている。これは、ベンゼン環と同様な構造をとっているので、多くのπ電子を持っているはずである。π電子が多いということは、電子に対して非常に寛容で、柔軟であると思われる。外部からきた電子に対して共鳴構造をとったりできるので、いろいろな物質と反応したり、電子の伝達ができると思う。これを利用してクロロフィルは電子を伝達している。
 生体内で同じポルフィリン環を持っているのが、ヘモグロビンである。ヘモグロビンは別に、電子を伝達したり光と反応したりするために存在していないが、ポルフィリン環を持っている。それはきっと、酸素をはこんだりするときに酸素の放出と吸着を、電子の受け渡し、つまりは酸化還元反応で行うためだと思われる。

A:ヘモグロビンは酸化還元反応は起こしませんが、同じようにポルフィリンと似た構造を持つヘムタンパク質としてチトクロームが存在します。チトクロームは、呼吸電子伝達鎖で酸化還元に働くほか、異物を酸化還元反応によって無害化するためのチトクロームの存在が知られています。


Q:今回の講義で最も興味を持ったのはクロロフィルを持つ魚?Malacosteus nigerオオクチホシエソである。なぜこの魚が赤外線照射装置と赤外線感知システムを持つのかは講義中で述べられた。しかし、イルカやマッコウクジラのように超音波を使って獲物を捕るものがいるのに対し、オオクチホシエソはどうして獲物を捕獲する手段として赤外線を用いているか疑問に思った。このことについて考察する。これには太陽の光が深く関係している。波長の長い光(赤~紫)は海水に吸収されやすく、深海には届かない。波長が680nmの赤い光は水深10mでもほとんど届かないほどである。このため深海魚の多くは届かない赤い光を認識する必要がないため赤い光が認識できない。したがって容易にオオクチホシエソは獲物を捕まえることができる。このことからオオクチホシエソは赤外線を用いてるのである。

A:これは、もし他の深海魚が赤外線を「見る」ことができたら、赤外線を照射されたことを知って大急ぎで逃げるはずだから、ということですね。面白い考え方です。


Q:今回の講義で一番興味をもったことは電子伝達の仕組みについてである。植物はP-700をA0にし、それ以降はA1、Fxの順に電子伝達をしている。本来なら一番エネルギーの低い状態であるP-700に戻すのが1番安定になるのでA0などはその状態に戻ろうとする。そこで植物はA0がP-700に戻るより速いスピードでA1にかえることでP-700に戻らないようにし電子伝達をしている。しかしすべてがA1にいくのではなく、P-700に戻るものもある。なぜ植物はこのように効率の悪い仕組みをもっているのだろうか?植物は人類が誕生するよりもはるか昔から存在し進化し続けているはずである。人類は誕生してから現在までに二足歩行をし始め、脳を発達させるなどかなりの進化をしている。人類はこんなに進化したのに植物はこのとても効率の悪い仕組みを持ち続けているのは何故なのだろうか?おそらく植物ははるか昔、このような仕組みを持っていなかったのだろう。しかしあるときこのような電子伝達の仕組みを得た。この仕組みは今までと比べものにならないくらい効率のよい仕組みであった。そして植物はこの仕組みを取り入れ落ち着き現在にいたったのだろうと考えられる。しかし、この仕組みの効率の悪さは明らかである。いつか植物はこの仕組みよりも効率の良い仕組みを得るだろうと私は考える。

A:効率が悪い、といっても、前に進む反応と元に戻る反応のスピードの差は数百倍から千倍ぐらいありましたよね。とすると、元に戻る電子の割合は1%以下ということになります。普通、99%以上の効率、といったら効率がよいと言いませんか?


Q:光合成細菌の光合成の反応中心とアンテナであるバクテリオクロロフィルにはいくつか種類があり、そのほとんどはマグネシウムを中心としているが、特殊な光合成細菌には亜鉛を使っているものがある。なぜマグネシウムと亜鉛という同じ典型元素でも、アルカリ土類金属と典型金属元素という種類の異なる元素が同じ働きをしているのだろうか。マグネシウムと亜鉛を比べると原子半径はほぼ同じで価数は2なため、同じところに入ることはできるからと考えた。さらにこの二つの電気陰性度を考えると、マグネシウムが1.3、亜鉛は1.7なのでマグネシウムの方がより電子を放出しやすいので、進化した細菌は亜鉛を使うのではないだろうか。
 色々な典型金属の中でなぜマグネシウムと亜鉛が選ばれたか考えた。まず、マグネシウムはおそらく細菌が発生した環境において、水中や土に溶け込んだ2価の典型元素内で電気陰性度が高く、最も多かったのではないだろうか。また亜鉛は同じ2価の典型元素で一番高いで電気陰性度を持ち、さらに電気陰性度はマグネシウムより大きいので、亜鉛が取り込める機能を進化させた細菌はこれを使えるようになったと考えた。
 細菌の進化を考えた時、バクテリオクロロフィルは中心に2価の典型元素という特徴に注目した。これから、先にバクテリオクロロフィルの骨格分子ができ、その後進化の中で中心の金属を条件や手に入れ易さに合わせて選択してきたのだと推測した。

A:金属を考える場合、「手に入りやすさ」というのも重要かも知れません。講義の中で触れましたが、亜鉛バクテリオクロロフィルを含む生物は鉱山の中、重金属が豊富な環境で見つかりました。人間でも、亜鉛欠乏による味覚障害が知られていますが、もしかしたら、亜鉛は「手に入りにくい」金属だったので、クロロフィルの中心金属として普及しなかったのかも知れません。


Q:今回の講義で一番面白かったのは反応中心クロロフィルとアンテナについてでした。クロロフィル分子はある程度の数で単位となり電子伝達として作用するのは極一部の反応中心で、多くの色素分子がアンテナとして作用するということでした。アンテナからのエネルギー移動はランダムになっているということですが(deep trapの場合?)、僕はこれが非効率的に思えてしまいます。反応中心に偶然行き当たるまでエネルギーは電子伝達に使えないということになります。エネルギー伝達は早く、こうしたロスも関係ないと考えることもできますが、今までやってきたほかの器官と比べるととても非効率的に思えます。もしくは、やはりアンテナの色素分子は何か法則性をもって反応中心を取り巻いていて、それにしたがってエネルギーが進むことでほとんどロスがなく進めるなどの道ができているのでしょうか?

A:基本的には、色素から色素へのエネルギー移動の効率が非常に高ければ、エネルギー移動を繰り返してもあまりロスにならない、ということだと思います。結晶構造などから明らかになったアンテナの配置は、効率よく配置はされていますが、完全に規則的にならんでいるわけではありません。特に「法則性」というのはないように思います。


Q:吸収した光エネルギーのうち光合成に使われないエネルギーは蛍光、または熱として放出されることは分かりました。しかし、我々が葉から蛍光、熱が出ていることを認識できていないのはどうしてなのか、という疑問を持ったので考察してみました。まず蛍光について。吸収される光エネルギーは、励起エネルギーに等しい。蛍光は励起状態の中でも最もエネルギーの低い状態から電子が基底状態に戻るときに起こるものだから、そのエネルギーは多少なりとも低くなり、吸収した光より長波長の光になるはずである。だから、蛍光は赤外線の領域になってしまい目には見えないのではないだろうか。この考えは吸収する光の中でも長波長である赤の光を吸収した場合には有効であると思うが、短波長である青の光が赤外の蛍光になるとは考えにくい。となるとやはり、可視光の領域の蛍光がでているはずである。そこで蛍光について調べてみると、蛍光の寿命は~秒らしい。つまり、蛍光を発していてもその時間が短く、人間の目には捉えることができないのか?しかし、葉のいたるところで光の吸収は行われており、蛍光は持続的に起きているとも考えられる。もしかすると、ただ単に葉が反射している緑の光が蛍光よりもずっと強く、蛍光をかき消しているのかもしれない。
 次に熱について。熱は周りのものにエネルギーを渡していく光合成経路の中で徐々に放出されているのではないか、という考えしか浮かばなかった。それでは「吸収したエネルギーのうち光合成に使われないエネルギー」という前提に矛盾する。可視光のエネルギーは温度に換算すると~Kであることを他の講義でならったので、やはり光合成経路とは独立した、熱の放出を専門とする経路が必要であるように思う。実際に、植物には効率よく熱を放出するシステムが備わっているのでしょうか?

A:実は、クロロフィルの蛍光は赤いので、うまく工夫すると目で見ることができます。通常目につかないのは、クロロフィル自身の色に隠れてしまうことと、蛍光の収率(吸収した光のうちどれだけが蛍光になるか)が葉の中では非常に低くなっているからです。蛍光の収率がもし高ければ光合成に使えるエネルギーが減りますからそれは当然ですよね。
 熱放散については第5回の講義で説明する予定です。


Q:今回の講義では色素の吸収スペクトルと量子収率のプロットに興味を持ちました。単純ですが、これを逆手に取って光合成色素の吸収スペクトルと量子収率を考慮し光源の波長をうまく調節してやれば植物の生育をコントロールできることになります。既に開発された色の三原色である青、緑、赤の発行ダイオードを用いれば、波長を短波長から長波長まで調節できるのではないでしょうか。それと紫外線は核酸が吸収して変異を起こすので利用できないとしても、赤外線ならば人体用にも遠赤外線ヒーターが使われるくらいなので、赤外線など長波長を吸収するバクテリオクロロフィルのような光合成色素をもたない植物でも水などをうまく利用すれば、より多くの光エネルギーを利用できるのではないかと思いました。地球は可視光線を吸収して赤外線を放出し、これが大気に吸収されたり、地球外に出て行くとのことを既に学びました。植物に限らず他の生物でも放出する光をより長波長にすればエネルギーをより有効に利用できるのではないでしょうか?現状で十分有効活用しているかもしれませんし、又はそのための複雑なシステムを構築するのが困難なのかもしれません。気になったのがクロロフィルを持ち赤外線を利用する魚でした。水に吸収される赤外線を敢えて海で使う意図がさっぱり分かりません。

A:赤外線は水に吸収されるので、細胞の大部分を水が占めている生物が赤外線を浴びると暖かくなるわけです。しかし、波長が長いのでエネルギーとしては低くなります。その辺が赤外線を「使いづらい」理由かも知れません。水中で赤外線を使うのは矛盾しているようにも思いますが、水の赤外線の吸収率は(特に赤に近いところでは)100%ではありません。どの程度の距離届く必要があるかによるでしょう。また、講義の中で触れたように散乱は短波長ほど強くなるので、散乱物質がたくさん浮遊しているような条件では、赤外線がもっとも遠くまで届く、ということもあり得ます。


Q:今回の授業で私が最も面白いと思ったのは、Qサイクルのメカニズムでした。プラストキノンが上から下へ動くことによってプロトンの垂直輸送をすることや、プラストキノンがぐるぐる回ることによって少ない電子でより多くのプロトンを運ぶことができるところなどがとても面白いと思いました。
 また、授業を聞いて考えてみたことは、生物によって異なっているアンテナの形の、長所や短所についてです。授業ではshallow trap型の例として緑色硫黄細菌のアンテナが、deep trap型の例としてシアノバクテリアのアンテナが出てきました。まずぱっと思いつくのはshallow trap型の長所でした。このアンテナならば、吸収することができる光のエネルギーの種類が複数存在するので、ある波長の光が少なくても別の波長の光が吸収できれば問題がなくなります。この型の短所としては、異なる構造のアンテナ同士を繋がなくてははならないため、その分不安定性が増し、環境に対する抵抗力が落ちるのではないかということです。deep trap型の長所としては、同じ構造のアンテナで固めることにより安定性が高くなり、環境に対する抵抗力が高いのではないかと思いました。短所は、そのアンテナで吸収できる一種類の波長の光が無かったらもう光を吸収することができないということだと思います。

A:shallow trapとdeep trapの図を前者は平たく、後者は積み上がった形に書いておいたところ、それを物理的な構造と勘違いした人がかなりいました。あくまであの図はエネルギーの高低を説明した図ですので。実際の構造は、クロロソームやフィコビリゾームのモデル図のようになっています。


Q:今回の講義で特に印象に残ったのが、どの複合体も似たような構造を持っているということです。このことから、人工的に光合成色素を作れると思いました。また、クロロフィル、バクテリオクロロフィル、カロチノイド、フィコビリンなどを参考に複合体を作れば、大部分の波長の光を吸収できる光合成色素ができるのではないかと思いました。この光合成色素の色は黒になるのでしょうか。このような光合成色素が作れれば、どのような環境でも光があれば光合成ができると思いました。逆に考えると、光合成の能力を持つ生物が、このような光合成色素を持っていないのは、それぞれの生物が生育する環境で一番効率よく光合成ができる波長の光を吸収できるように進化したのだと考えられました。効率よく光合成ができないような波長の光を吸収する色素は、退化していったのだと考えられました。

A:全ての光を吸収できる色素を作れば黒になるでしょうけれども、構造が複雑になってかえって損かも知れませんね。


Q: b/f複合体のコンフォメーション変化によって酸化還元電位に逆らって電子が移るということが可能であるというのには少し納得がいきません。それが可能なのであれば他のどんな生体機構もそれを用いると思います。なぜなら光エネルギーを吸収して、それ以上のエネルギーのものをつくり、副生成物として何かができるのであれば、それを連鎖的にくり返して膨大なエネルギーを取り出すことができるようになると考えるからです。
 どんなクロロフィルや色素体も量子収率にそれほど差がなく、高等植物はどの波長でも利用できうることがわかりました。このことは可視光ならば電子を励起するだけのエネルギーを持つことからも理解できると思いました。高等植物がもし種によっていろいろな色素を持っていたとしたら、空間を争って枝を伸ばし葉を広げる必要はなくなるのではないでしょうか。大気中を通りぬけてきた光の異なる波長を、異なる種が吸収すれば一つの空間に降り注ぐ光をすべて効率よく吸収できるのではないでしょうか。そうなったら、七色に輝く森が存在できると思います。

A:b/f複合体でコンフォメーション変化を起こすには、まず、電子が1つ流れることが必要なのです。そしてそのエネルギーを使ってもう1つの電子を少し勾配に逆らって運ぶことができるわけです。例えば、水の流れる勢いを使って、水の一部をくみ上げることはできますよね。もちろんその際に、あくまで、くみ上げることのできる高さは、最初の水が流れ落ちる高さよりも必ず低くなります。つまり、全体としてはエネルギーは増えるわけではなく、勾配に従って落ちていることになります。くみ上げているところだけを見るとエネルギーが増えているように見えますが、複合体のコンフォメーションを変えるためにもう一つの電子の流れ、という形でエネルギーを使っているのです。
 あと、降り注ぐ光を全て効率よく吸収すると、真っ黒になります。七色に輝くのは、光を吸収できないで反射した場合です。


Q:今回の授業で最も興味をそそられたのは空が青く見えるわけ、夕焼けが赤く見えるわけであった。講義内容をふまえて以前から疑問に思っていた海辺の空と山の空の青色について考察したいと思う。
 まず、空が青く見えるためには大気中の粒子によって太陽光が散乱されることが重要である。これによって地上から空一面が明るく輝いて見える。空が青く見えるのは太陽の短波長と同程度の大きさの分子の集団が光を散乱するとき青色の光を強めてだすからである。青色散乱光をだす粒子は波長より小さくなければならない。粒子としては空気中の分子すなわち酸素や窒素なのではないかと思われる。塵や埃、水滴の場合もあるが、これでは大きすぎる。大きい粒子は白っぽい散乱光をだすことが知られている。以上のことにより、空の青さの違いとして、海辺、すなわち低地の空は大気の層が厚く塵や埃のために白っぽく見える一方で、山など高地ほど青い空が見えるのはこのためではないかと思われる。

A:そういえば、空気のない月では、空が暗いので、昼間でも星が見えるのでは、という議論があったのを思い出しました。正解は、太陽が明るいので、たとえ空が暗くても星は見えないようですが。粒子として酸素や窒素を考えるのは無理ではないでしょうか。ちょっと小さすぎると思います。


Q:今回も電子の伝達を通じたエネルギーの話題であったが、構造や配置がとても大きな意味をもつことに興味を持った。エネルギーというものは抽象的で物がただ存在しているだけで潜在的に持つものだと思った。この構造というある意味でエネルギーとも言うべきものは、エントロピーのように1と1を足して2にならない、和の法則が成立しない次元だろう。タンパク質の立体構造も、近づくと相互作用などにより1つで存在していた時と全く違った機能を持つようになる。生物が1個体ではなく多数で生きていることも、構造、配置というエネルギーを生み出すという面から考えると、とてもおおきな意義をもつものに思える。数というのも乱雑さからエネルギーを作り出すと考えると、一種、エネルギーと呼べるのであろうか。

A:エネルギーと呼べるかどうかは疑問ですが、確かに、構造があると相互作用が生じ、その結果1つでは起こらなかった物事が起こります。生物の世界ではそのような点が重要になってきますね。


Q:今回の講義で特に興味深かったのは、光化学系Iのアンテナリングの話と、エマーソンによる酸素発生の量子収率の実験でした。光化学系Iのアンテナリングは、ベンゼン環が電子を共鳴させているように光のエネルギーをリング内で共鳴させることで吸収を良くしているのですか?またエマーソンの実験では、青色の波長でも赤色の波長でも光の吸収量あたりの光合成効率は変わらないことが分かりましたが、それならなぜ植物の多くは緑色なのでしょうか?青や赤色の葉を持つ植物がたくさん存在していてもいい気がするのですが、地球の一年平均での太陽光の波長を調べると緑色の波長が1番少ないのかもしれませんが、調べてみても分かりませんでした。

A:系Iのアンテナリングは、写真で見えていたリングの1つの構成成分が巨大な複合体なので、リングを作ることによって分子間の相互作用を作り出しているわけではありません。ただ、もう1つ写真で見せた光合成細菌のLH1,LH2というアンテナのリングは、色素自体が規則正しくならんでいるので、相互作用によって吸収に差が生じているかも知れません。葉の色については、最初の光合成生物がクロロフィルを使ったから、と言うのがもしかしたら正解かも知れませんが、本当のところはわからないでしょうね。