植物生理学 第7回講義

植物と水

第7回の講義では、植物と水の関わりを中心に、主に水分生理と呼ばれる分野の紹介をしました。気孔の開閉に関しては、 日本では九州大学の島崎先生の研究室が様々な成果を出されています。雨の話は、昔、同じ研究室の大学院生だった 石橋さんの仕事です。導管の話は東大の日光植物園の館野先生のグループのお仕事です。


Q:今回の授業で興味を持ったのは、導管の話でした。高い木が頂上まで水を引き上げることができるということに疑問を持ったことがなかった。大気圧が存在していることを考えると10M以上も引き上げられることは不思議なことなんだなぁ。暖温帯の種は、導管が太くなっており夏期の生産性を上げて、冬季にはエンボリズムにより水ストレスを受けるそうだ。授業では一旦水の表面ができてしまえば空気が入り、もはや10M以上の水の引き上げが不可能となってしまうのだとおっしゃっていました。ということは、冬季にエンボリズムが起きた暖温帯植物はそれ以降植物体の頂点まで水を引き上げることができなくなるということなのでしょうか?そして、必要な栄養分は行き届かなくなってしまい、頂点付近は枯れてしまうのでしょうか?
 常緑広葉樹は寒冷地方と温帯地方で導管の太さに差が見られる。針葉樹にも地方によってさらに寒い地方では、やはりより細い導管になっているのだろうか?そう考えると、寒い地方では背の高い木であるよりは背の低い木々が有利であると思う。背が低ければ、導管は細くなくて済み生産性も向上するのではないか。

A:エンボリズムがいったん起きた場合、常緑の広葉樹だときついでしょうね。僕自身は、そのような研究をしているわけではありませんので、確かなことは言えませんが、上部は枯死することになるのではないでしょうか。
 背が低ければ、確かに導管を細くする必要性は減るかも知れません。ただし、今度は光に対する競争では不利になるので、どちらが得になるかは一概には言えませんね。高山植物は一般に背が低いですが、この場合は、強風に対する適応などもあるでしょうから、水分生理だけで説明できるかどうかはわかりません。


Q:今回の講義でもっとも関心を持ったのは、冷温帯と暖温帯と植物の道管径の違いだった。講義前、私は植物中の水分が凍らないのは動物と同様に自家発熱をしているのだと思っていた。そのため外温が氷点下に達しても、植物体内の水分は凍らないのだろうと。しかし、光合成や呼吸による発熱量よりも、多くの熱が外気に奪われる場合その仕組みなら凍ってしまうことになる。もうひとつの考えは、常に動いているものは凍りづらいということだ。実際、水溜りの水よりも川の水は凍りにくい。そこで、道管径が細いと水分が凍りにくいというのは新鮮だった。しかし、新たな疑問として根から植物が水分をどうやって取り込むのか疑問に感じた。雪や氷に閉ざされたところでも植物体内に取り込むには、液体または気体にする必要があると思う。固体のままでは根毛からは取り込めないのではないか。冷温帯では植物は根を深くはっていると聞いたが、液体として水分が存在する地点まで根をはることが可能なのだろうか。疑問に感じた。

A:根に関する研究は、植物生理学の中では一番遅れているのではないでしょうか。しかも、僕自身、このあたりは専門ではないので、よくわかりません。凍っていたら、やっぱり水は取り込めないでしょうねえ。根から塩分などを分泌すれば、融点が下がって氷が一部溶けるかも知れませんが、それでは今度吸収するのが困難になるでしょうし。


Q:今まで、気孔の開閉は光、温度、湿度などの気象条件や二酸化炭素濃度によるものと思っていた。したがって、今回の講義では葉の濡れの状態によっても気孔は開閉することを新たに知った。では、葉のどの細胞で濡れを感知しているのであろうか。雨処理による水滴は葉の表側に付くので葉は表皮細胞で濡れを感知していると考えられる。すると、気孔の多くは葉の裏側にあるので、表皮細胞から孔辺細胞に何らかのシグナルが伝達される必要があると思う。また、孔辺細胞で直接葉の濡れを感知しているとすれば、気孔の多くが葉の裏側にあることは濡れの感知において不利になるのではないか。
 暗い条件下で雨処理をしても阻害が起こらないことは、植物が生育していく上で必要なことであると思う。日照強度によって雨処理による阻害が制御されていないとすれば、植物は雨が降るごとに阻害が起きてしまうことになると思う。
 冷温帯の植物は導管径を小さくすることでエンボリズムを回避していることも新たに得られた知識である。しかし、導管径が小さいと光合成速度は低くなってしまう。逆に、暖温帯の植物は導管径が大きいため通導性はよいが、冬季にエンボリズムが起きてしまう。では、実験的に冷温帯と暖温帯の植物の中間くらいの大きさの導管径をつくると、夏季には生産性が高く、冬季にはエンボリズムが起こらなくなる植物ができるのではないだろうか。このような植物をつくることは実験的に可能ですか。

A:講義の中で言い忘れましたが、実験では霧状の雨を使っているので、葉の裏も濡れます。実際には、気孔に水が届くことが、気孔閉鎖を引き起こしているようです。とすれば、少しでも濡れにくいであろう葉の裏に気孔を持つことには意味がありますね。
 樹木の改変はなかなか大変です。残念ながら今の技術では、導管径を変えた植物を実験的に作成することは不可能です。


Q:孔辺細胞の開閉運動に青色光受容体が働いていることに興味を持った。青色光受容体は葉緑体運動に関わっていると第4回講義で習った。その時はそのメカニズムについて詳しく話されてはいなかったと思うが、同じ青色光受容体を使っているので、両者のメカニズムは似ているのかもしれないと思った。しかし、なぜ葉の裏側に多い孔辺細胞に青色光受容体が存在しているのだろうか。葉の裏側には日光はほとんど当たらないのではないか。そう考えると、青色光受容体だけではなく、孔辺細胞の葉緑体の存在も不思議に思えてくる。これは中学のときにも疑問に思ったような気がするのだが、特に深く考えもせずにここまできてしまった。なので、ここできちんと考えておこうと思ったが、葉の裏側に日光が当たるときの状況がよくわからなかった。水面に生える植物では反射光によって葉の裏側にも光が当たるので、気孔の開閉に日光の制御があるかもしれない。しかし、土に生えている植物の葉の裏に光が当たるときの状況は植物の大きさや環境によって大きく変わってきて、条件は一定しない気がする。タンポポやクローバーなど、葉が土にべったりはりついている植物の場合も気になる。葉の表にある孔辺細胞でのみ開閉運動に青色光受容体が働いている、ということはないとは思うが。

A:もし直射日光が当たらないと反応しないような受容体だと、確かに葉の裏にあってもしょうがないかも知れませんが、シグナルとして光を必要とするのであれば、もっと弱い光にも反応すると考えられます。葉を通り抜けることによって光の強さが1/100になるのだとすれば、日光の1/100の光強度に反応するような受容体を持つようにすればよいのではないでしょうか。


Q:今回の講義で一番興味を持ったところは、雨によって葉がぬれるとRubiscoはただ活性が落ちるだけではなく、Rubiscoの量自体まで減ってしまうというところである。Rubiscoの量が減少する理由について考えてみた。まず雨が降り葉が濡れると気孔が閉じてしまう。そのため二酸化炭素の取り込みが、気孔の開いている晴れのときに比べて減少する。Rubiscoはカルビンーベンソン回路でのRuBPと二酸化炭素/酸素の反応を触媒する役割をするため、雨によって二酸化炭素の取り込みが減ったために、Rubiscoを合成する遺伝子に抑制がかかり、Rubiscoの合成が抑えられたのだと思う。これは、必要以上に酵素を合成しないようにする植物の一つのレギュレーションだと思う。
 あともうひとつに、針葉樹と広葉樹の分布について、針葉樹はエンボリズムを避けるために、導管径を小さくして、広葉樹は夏季の生産性を上げるために導管径を大きくしているということは理解できたが、これは針葉樹と広葉樹の葉の形も違いにも何か影響しているのかというところに疑問がわいた。実際のところどうなのでしょうか?

A:雨の時のルビスコについては、合成の停止によるものか、分解の促進によるものか、完全にはわかっていません。ただ、合成の停止だけだと、24時間で半分になるという、減少速度を説明しきれないように思います。
 葉の形という点では、針葉樹と広葉樹では、蒸散速度が一番違うでしょう。冬季のエンボリズムがあると、常緑広葉樹にとっては致命的ですが、針葉樹では蒸散が少ないので、何とかなる場合もあります。もう1つの手段は、落葉してしまうことです。落葉樹なら、冬季の蒸散速度を極めて低くすることができます。


Q:植物がさまざまなストレスに対して調節を行ったり気候や環境に適応する機構を持っていることは私たちの日常の生活ではあまり実感しないが、植物について勉強するとそのようなメカニズムがたくさんあることがわかった。細い導管ではエンボリズムが起きやすいということ、導管径が大きいと面積当たりの通導性は上昇するということ、そして夏期における生産性と通導性が正の相関を持つということがわかった上で、植物の分布を見てみると、その植物が気候に適応していることがわかってとても興味深かった。導管径の大きい暖温帯の植物は夏期には光合成速度を上げることができるが冬期にはエンボリズムにより水ストレスを受け、逆に導管径の小さい冷温帯の植物は光合成速度は低下するが冬期でもエンボリズムが起こらないように、その気候にあった構造になっていてすごいと思った。では広葉樹は寒い地域には生きられないのかと思ったが、凍結が起こる前に低温感受性のある器官である葉を落とすことで冬を乗り越えることがわかり、今まで当たり前のように見すごしていたことが、植物が生きるための重要なメカニズムなんだと思った。

A:植物の気候帯別の分布といったマクロな現象を、導管の通導性といったミクロな現象で説明できるのは面白いですよね。僕はこのような仕事が割合と好きです。


Q:今回の講義で興味を持ったのは植物の細胞が分化したあとにでも違う細胞に再び分化できるという再分化のところでした。動物細胞では一度分化した細胞は、他の細胞にはもうなれないことを考えると、植物細胞が動物細胞よりも進化しているのか、それとも遅れているのかきちんと知りたくなってきます。同じ真核細胞だけれども、なにせ形態が全然違うし、我々ヒトは頭脳が発達して色々なことができるようになったが、それが果たして進化の証拠だといえるのだろうか、と思いました。生物の一番の目的は子孫を絶やさずに何世代も続くことだと思っているし、そう考えると生きていくために困難な極限状態での実験などをしてみると、融通が色々と効きそうな植物の方が意外な変化を現わすのではないかと思いました。あと講義で気になったのはエンボリズムのメカニズムのところでした。今までとは自分にとってちょっと違った感じがした機構だったし、なぜその機構が適用されたのがどうしても納得いかなかったからです。

A:分化の所に興味を持つ人もいましたか。やはり、最終回あたりに、植物ホルモンと細胞分化の話を入れましょうかねえ。エンボリズムは、どんな点が「ちょっと違って」感じられたのでしょうか。やや生態学よりの話だったのでそのあたりでしょうか。


Q:植物の分布に、導管径が影響していることを知った。成長速度と環境への適応のバランスが見事だと思う。その中で、植物の水移動を妨げる危険性のあるエンボリズムという現象だが、導管が長い植物ほどその危険性は大きいはずだ。ではなぜ植物はある程度まで成長を続けるのか。植物の背丈が日光を効率よく得るためだけのものなら、周りに他の大きな植物が無い限りたいして大きく成長する必要は無いのではないだろうか。けれど同一種では大抵のものが同じ位の大きさに成長する。何がそれを規定しているのか疑問に思った。繁殖の効率が良い規模というものがあるのだろうか。栽培する場合であれば、他の植物に邪魔されない環境を与えられるのだから、縦方向の成長は最小限で構わないはずだ。そしてその分のエネルギーを実りに回すことが出来れば、成熟までの期間を短縮できるようになるのではないかと思った。

A:すばらしい!「栽培する場合であれば、縦方向の成長は最小限で構わないはずだ」というのは、まさにその通りなのです。アジアで人口が急増したとき、ちょうど収量の多いイネの品種が開発されて飢餓が起こらずにすみました。この時の多収量品種というのが、短幹の(つまり背の低い)イネだったのです。また、「同一種では大抵のものが同じ位の大きさに成長する」というのも、栽培種についてはよいのですが、実は、野生の植物では二山分布を示す場合が研究されています。植物の振る舞いは、栽培条件と野生条件で、かなり異なる場合があることを頭に置いておく必要があります。


Q:私は植物にとって雨が降ることはとても重要なことであり、自然に水を吸収することのできる手段だと思っていた。しかし、今回の講義を聞いて雨の植物に対する影響が理解できた。植物にとって雨が降ることは、この講義を聞くまでプラスの作用しかないと思っていた。しかし、雨が降ることで光合成、電子伝達への影響、ルビスコの活性までも低下させていた。私は水を多量に吸収してしまう雨ストレスではなくて、逆に夏や冬の乾燥する季節にどうやって水を取り入れているのかを考えてみた。植物の葉は大気中に最も広く接しているし、葉の裏には気孔を持っているので一番影響されやすいと思った。大気が乾燥してしまうことによって、気孔の閉鎖が生じ葉の中への二酸化炭素の取り込みまでも阻害してしまうのではないかと思う。そして、光合成は低下しその植物自体は枯れてしまう可能性もあるのではないか。植物はどうやって水ストレスから守っているのだろうか。私がまず考えたことは、茎や根または植物中のどこかに水を蓄えておくことと、大気中に触れている葉の面積を小さくすることである。その水の蓄えもなくなってしまったら…。植物自身の細胞のイオンを調節したり、細胞の中にある細胞液の浸透調節をしているのではないかと思った。

A:せっかくここまで考察したら、そのような植物は実際にあるだろうか、という点も考えてください。「茎や根または植物中のどこかに水を蓄えておくことと、大気中に触れている葉の面積を小さくすること」というのは、まさに、茎が太くなって葉がトゲになっているサボテンそのものですよね。植物の形も、論理的な帰結で説明できることがわかります。


Q:前回のレポートで冬になるとなぜ、葉を落とす気が多いのかという問いに対し、気温が下がることでクロロフィルの光合成活性が失われ、吸収した光エネルギーの処理ができず、それでは危険ということで植物が葉を落とすと考えた。これも理由のひとつであるかはわからないが、この問いに対する答えとして導管径とエンボリズムについて学ぶことができた。
 熱帯、亜熱帯には常緑広葉樹のみが成育し、暖温帯になってやっと常緑針葉樹が少し現れ、これを見ると、樹木の世界ではその環境で生育するのに最も適したもののみが生き残ることができるという厳しい世界であるように思える。暖かい場所では常緑針葉樹は、生存できないわけではないが、常緑広葉樹に生育を阻まれ、結局は姿を消してしまう。これは樹木が移動できないため、その環境の影響を大きく受けてしまうことが原因であるのではないかと思う。このことから、植物生育状況はその土地の環境を良く表しているということもうなずける。

A:「暖かい場所では常緑針葉樹は、生存できないわけではないが、常緑広葉樹に生育を阻まれ」という、ここは非常に重要なポイントです。ある植物がある環境内で、単独でどの程度生育できるかということと、他の植物の中でどの程度生育できるかということは、全く意味合いが違います。ある植物にとって、ある環境自体は致命的でなくとも、その環境で他の植物の方がよく育てば、生きていくことができません。ある意味で、「他の生物」というのは最大の環境要因なのかも知れません。


Q:今回の講義で私が興味をもったのは、自然の状態では、雨のときには光はあたらず、そして、暗いときは雨のストレスを受けにくいということでした。暗い・明るいということが植物には大きな影響があるということを再認識しました。そして、様々なストレスを回避するために植物も様々に防御機構を発達させているのだということに感心しました。
 そこで、私が思い浮かべたのは極地近くの地域のことです。北欧などでは、数ヶ月間ほとんど日が当たりません。日が長期間当たらないということのストレスもあるのではないかと気になりました。また、白夜のように長期間日が当たり続けることのストレスも同時に気になりました。もし日が長時間当たらないことや当たりつづけることによるストレスがあるのだとすれば、北欧などに生育する植物は、いったいどうやってそれを回避しているのかということにも興味がわきました。

A:実は、多くの研究室では、連続光で実験用植物を育てています。ですから、連続光のストレス、というのはあまり一般的ではないのかも知れません。一方で、連続暗所という条件は、老化を誘導する環境条件であることが知られています。つまり、数日以上の連続あんじょう件に葉をさらすと、葉は老化して最後には枯死してしまいます。極域の冬には、葉をつけた植物はあまりないのではないでしょうか。


Q:今回は植物と水の関係について勉強しました。蒸散流についてはじめのほうに説明がありましたがこの蒸散流が体細胞に含有されている水の量よりはるかに多い量を使っていると聞いて驚きました。蒸散流の働きは植物における血流のようなもので体内のデンプンやら植物ホルモンを体中にめぐらせることと言っておられましたが、水が大変少ない砂漠やサバンナの植物では水が無い時期にはどうやってもこの蒸散に必要な水の量を確保することができないようにおもいます。しかし実際は砂漠にもサバンナにも植物はあるわけです。水が乏しい場所の植物の水の利用の仕方、確保の仕方が知りたいと思いました。
 サボテンについて少し考えてみます。サボテンには広葉樹林のような葉は確認できません。気孔の場所も定かではありません。しかし気孔で蒸散が起こることにより蒸散流が生じことと蒸散流が血管のような重要な役目を果たしていることを考えればサボテンも気孔を持っているのだろうと予想されます。ただほかの植物と同じくらい活発に蒸散が行われてはいないだろうと思います。もし同じように蒸散が活発に行われているならサボテンは水の供給がない分かれてしまうと考えられるからです。ですから、サボテンは蒸散を控えているのでしょう。そしてもしかしたらなにか特別な機構が発達していてそれが水の少ない状況を補っているようにおもいます。特別な気孔を持っていてもおかしくない気がします。機会があれば詳しく調べてみたいと思いました。

A:蒸散が完全にない場合は、物質の移動はかなり遅くなると思います。ただ、細胞膜を横切って物質を運ぶトランスポーターやチャンネルというタンパク質を持っていれば、おそいながらも、ものを運ぶことはできます。トランスポーターを使う場合は、その分エネルギーが必要になります。
 サボテンは、前の講義で解説したCAM植物の場合が多いようです。


Q:今回はたくさんの話題があっておもしろかった。植物体内の水より蒸散によって入れ替えている水のほうがはるかに多いことにはかなり驚いた。また、光合成の基質になる水はそれほど多くはないことも意外だった。当然のことだが植物は移動はしないけれどまったく動かない物体ではない。気孔の開閉が膨圧運動なのは、植物体の水分量を調節をするという意味で理解できた。水分が十分あれば孔辺細胞が膨張して開き、水が不足すればしぼんで閉じるということだろう。水の量と気孔の開閉が直接リンクしているので、何らかの伝達物質を介する必要がなくとても合理的に思える。だが、オジギソウの葉の運動も膨圧運動というのは理解しにくかった。触られるとなぜ閉じるのかそのメリットがわからない。表面積を減らして身を守るのかとういうぐらいの想像しか私にはできなかった。似たような動きを食虫植物もするがあれも膨圧運動なのだろうか。他に植物の動きで思いつくのは花が太陽の光の方向を向くことだ。これも膨圧運動ではないように思う。なぜなら光の反対側に成長因子がでてきて光の方向に茎が曲がる機構を高校で教わり、それに近い運動のような気がするからだ。

A:オジギソウの運動が膨圧運動だというのは確かですが、そのメリットは未だにわからないようです。光屈性は膨圧運動ではありませんね。


Q:今回の講義で疑問に思ったのは、冬季におこるエンボリズムについてです。寒い地域の植物はこれをふせぐため導管を細くすると講義では習いましたが、朝と夜で気温差が大きい地域の植物はどうなのでしょう。砂漠は朝と夜の気温差が大きいときいたことがあります。もちろん砂漠に生育する植物はサボテンなど乾燥につよい植物しかありません。しかし、この条件で実験的に植物を育てたらどんな導管をもった植物がうまれるでしょうか。この場合、植物は導管径を大きくして通導性をあげ夏期の生産性をあげるか、導管径を小さくしてエンボリズムをふせぐかの選択をすることになると思います。または、全く違う発想ですが、導管を気孔のようにまわりの細胞の浸透圧で大きくしたり小さくしたりできないでしょうか。そうしたら温暖地域でも寒冷地域でも大きく成長できる植物がうまれるでしょう。時間的にも設備的にもこのような実験をするのは難しいと思います。どんな導管をもつにせよにせよ気温差の適応性など環境に対して順応性が高い植物は人類がかかえる環境問題に大きく貢献すると思います。

A:確かに、導管径を変えられたら有利でしょうね。ただ、そのためにはかなりのエネルギーが必要な気がしますから、結局、そこでの利害損得を考えると、あまり得ではないかも知れません。


Q:今回の講義では、実験の目的を明確にすることの重要さがわかった。目的が曖昧なままだとはっきりとしたデータがとれないということがわかった。去年は、僕たちも実験をしたが、目的なんて全く気にしてなかった。ただ、本に書いてあるから、それをそのままやっているだけだった。それなら、本を読めばわかることなので、実験の意味がないなと思った。ところで、何の実験をするか決めてから、実際に実験をするまでに半年もかかるなんて、すごく驚いた。生物の実験なのに、物理的な要素の方が多いことに、さらに驚いた。実験装置はすべて自分で作ったのかどうか気になる。実験装置をすべて自分で作るときはもちろん、他の人に手伝ってもらうにしても、ある程度は自分でも理解してないといけない。生物工学科なのに物理や化学が多い理由の一つはこれだろう。これからは、もっと真剣に物理や化学も学んでいこうと思った。

A:雨の実験装置は、温度・湿度をコントロールするチャンバーは市販のものです。これを自分で改造して、雨が降るようにしています。分光器で何かの吸収を測るだけでも、分光器の原理を知らないで測定するのは本当は危険です。理解しないでとったデータは、あとで往々にして使えなかったりします。是非、(もし特に生物の専門の研究者になる可能性があるなら)、物理・化学をきちんと学んでください。ある意味で、生物学は年をとってから勉強しても直感的に把握できる部分が多いものです。それに対して、物理・化学は大学の学部ぐらいまでに勉強しておかないと、なかなか身に付きません。