植物生理学 第6回講義

植物の低温感受性

第6回の講義では、最初に先週の積み残しの植物の呼吸と発熱に関して触れた後、植物生理学的な研究の進め方の例として、植物の低温感受性の仕組みを探った研究例を紹介しました。最初に積み残しを処理するために、少し急いだせいもあって、おおかたの人にとっては難しすぎたようですね。反省しています。植物の呼吸は東京大学の野口さんが研究されています。植物の発熱に関しては、岩手大の寒冷バイオシステム研究センターの生体機能開発研究分野などで研究が行われています。


Q:今回の講義では、実験結果から論文につなげたり、その論文の確実性を立証するためにも様々な準備が要ることを、植物の知識と共に具体的に理解できて、とても面白かったです。
 たとえば、低音ストレスによる阻害を論文にするにあたっても、過去のデータから閾温度を比較することからはじまり、低下の原因には系Iが壊れてしまうこと、光の強さは直射日光の20分の1、すなわち冷え込む明け方の日光で大丈夫であること、電子伝達反応を律速しているのが系Iであることの証明など、さまざまな要素が必要であることを知りました。また、先生がおっしゃっていた系Iが壊れにくいという当時の常識を覆すような事に関しては、指摘をあらかじめ予想して、必ず伏線をはっておかないとならないことなど、一つの論文にかんして実にたくさんの要素を盛り込まなければならないのだと痛感しました。特に系Iの低温感受性の阻害に関しては、クロロフィルやチラコイド、活性酸素など多方面の切り口で研究がなされていて、一番初めに証明を行おうとしたテーマまで行き着くのにはなかなか遠い道のりが必要なんだということがわかりました。
 ただ、自分も植物を育てているので今回のことは経験があるのですが、可視障害の遅れが何故おきるのかが今ひとつわかりませんでした。メカニズムが知りたいです。

A:随分きちんと理解していますね。驚きました。可視障害というのは、どうも、障害と言うよりは、復旧工事で障害部分を取り除いている、というイメージなのではないでしょうか。低温傷害の場合、ダメになった部分を取り除く反応は低温では進みにくい為、常温に戻してから始めて復旧作業が始まるので、見た目の変化に遅れが出る、というのが今のところの仮説です。


Q:本日の講義で、植物は低温障害によって光化学系Iによって電子伝達反応が律速されているということが理解できた。12枚目のスライドのグラフで、PSIは低温で障害を受けてから急激に活性が落ちているのに、PSIIは5時間まではほとんど活性が落ちていないことと、PSIIが5時間以降から著しく活性が落ちているところに疑問を持った。そこで自分なりにその理由を考えてみた。まず、低温によってPSIは障害をうけ、時間が経過するにつれて活性を落としていき、そしてそれに応じて光からのエネルギーの吸収を抑えるためにクロロフィルを分解していく。しかし、この間にもPSIIによってエネルギーは合成され続けているので、PSIはそれらを引き継いでエネルギーの合成を行わなければならない。しかし、PSIが正常に働かないために、電子が飽和状態になることによって、PSIIの系も阻害を受けるようになる。このためにPSIIが遅れて反応の活性が落ちるのではないかと考えた。
 しかし、電子伝達反応を律速するならばPSIで行うよりもPSIIで行ったほうが効率がいいのではないかと思う。

A:面白いところに目をつけましたね。確かにPS II の場合、活性の低下が遅れているように見えます。そして、その原因は、「電子が飽和状態になって」というまさにそのメカニズムにあるのではないかと、僕も思っています。電子伝達を律速するならば PSII で行なった方が、という意見にも賛成です。おそらく、低温傷害で活性が低下するのは、「制御」ではなく、まったくの「阻害」で、あってはならないことなのではないかと思っています。


Q:今回の講義でまだ明らかになっていないものをどうやって考えて研究していけばいいのか少し分かったような気がした。いまだに分かっていない低温ストレスの原因、私は最も考えられる理由は生体膜の構造変化ではないかと思っている。低温感受性植物は低温にさらされると膜を通してカリウムイオンや糖などが異常に漏出してしまうと思う。生体膜の脂質の流動性は温度に大きく依存しているので、低温になると膜が変化してしまうのではないかと考えた。しかし、講義での系Iへの光阻害の考え方も、今だに系Iの阻害と低温感受性の関係は説明されてはいないらしいが、納得できる話であり非常に興味を持った。チラコイド膜のアンテナ色素複合体で吸収されたエネルギーが、その目的としたエネルギー保存能力を超えると光化学反応を引き起こし、その光化学反応により毒性の光産物が作られてしまう。これらの光ストレスにより系Iが阻害されてしまうことは理解したが、どうも低温感受性とはつながらない。私は光によるストレスよりも水によるストレスとの方が結びつくのではないかと思った。低温になると(ここでは冬とするが)根からの水の輸送が不十分になったり、乾燥したりして低温条件が水ストレスを増加させているからである。

A:生体膜の脂質の流動性は確かに温度に依存しており、流動性を変化させる膜脂質の不飽和度を変化させると、阻害の程度も変化するという実験結果も得られています。ただ、不飽和度の変化によっては、講義で紹介した、温度依存性の閾値は出現しません。ですから、低温感受性の仕組みを膜脂質だけで説明することはまだできていません。このあたりは、これからの研究課題です。


Q:今日の講義を聴いて、「低温ストレスの光合成阻害」というテーマから、ある研究を行いそして考察し、その結果次に新たな研究内容を見い出す、というように研究活動は考察して予測した結果となったり、新しい発見に出会えたりすれば楽しいものかもしれないが、そこに行き着くまで何度も失敗したりと大変なものなんだと感じた。実際の畑における低温阻害の条件下では、光化学系IIではなく光化学系Iの活性が阻害されることが、低温ストレスの光合成阻害の原因であると判明したが、過去の論文で提案されている阻害部位をみると、光化学系IIの阻害によるものもある。このことから、低温ストレスの光合成阻害といっても、その条件は様々であり、目的にあわせた設定というものが非常に大切なことなんだと分かりました。
 興味深かった結果は、PSIの光の強さによる影響でした。低温感受性植物は低温下ではPSIを保護する機構が失活するのに対し、低温耐性植物は低温下でも正常であり続ける。その違いは、少なくとも酵素反応によるものではないと思う。酵素活性が関与しているのであれば、低温条件下では、低温耐性植物でも酵素活性は衰退してしまうものだろうと考えたからである。そうすると、低温感受性と低温耐性の違いは構造的なものなのではないだろうか?

A:最後の「構造的」というのはタンパク質の構造ではなく組織の構造のことでしょうね。確かに、酵素活性などは、どんな酵素であっても温度と共に活性が低下します。ただし、上記の膜脂質の影響などを受けたときは、ある温度を境に、応答が変化することがあります。今のところいろいろな可能性があって、まだよくわかりません。


Q:植物の環境適応において外部の変化に伴う細胞内の変化があることは予想していたが、極域の樹木では冬季の細胞温度がマイナス数十度まで下がるということに驚いた。細胞内の水は氷の結晶となるはずであるためその樹木が破壊されずに生育するということは、水分をあまり必要としない植物であって細胞内に水分が少なく、結晶化しても細胞を破壊するほどの大きさにならないということであるか、もしくは急激に冷やされることで最小限のサイズの結晶として存在するということなのだろうか?と思った。
 植物に対する低温ストレスの影響では、光合成の阻害と花粉形成の阻害とあった。この阻害をさせないためにザゼンソウやセイダカダイオウは植物では珍しく、外部の温度に伴った変温をせずに哺乳類の体温調節のような反応をするのだろうなと思って面白いなあと思った。シアン耐性回路やアンカップリングプロテインのような特殊な経路や蛋白を持っていることに興味を持った。アンカップリングプロテインは動物にもあって、近頃騒がれていた褐色脂肪のミトコンドリア内にあるがこの蛋白にあたると知って驚いた。ザゼンソウは、気温が氷点下になっても花序の温度が20度前後の一定温度を保てるほど高い発熱能力を持っていて、早春には周囲の雪を溶かし開花することも可能するほどであるということであったため、北海道もような寒い地域でも春に咲くためにはこのような機構が必要であるのだろうなと思った。このようなタンパクの遺伝子とその調節遺伝子についていろいろとわかってくれば、寒冷地でも高い産生の農作物が増えるのではないか?と思った。

A:スイレンやザゼンソウは発熱するのですが、セイタカダイオウは温室効果だけで、発熱はしないようです。発熱の調節の仕組みなどは面白い研究になりそうですね。岩手大の先生が研究なさっています。


Q:動物と植物の温度変化に対する適応について、動物(恒温動物)は外界の温度にかかわらず体内の温度を一定に保とうとする。これは、動物の代謝の大半が酵素反応であり、最適温度外ではタンパク質の変性が起こったりして様々な傷害が起こるからであるが、では、植物はなぜ温度を保つのではなく細胞反応を変化させるのか。
 シアン耐性回路を使って余ったエネルギーを熱として放出する植物の話があったが、この熱を細胞温度維持のために使う植物はないのだろうか。ザゼンソウは外気温が下がると種子を作るために発熱しているのかもしれないということだったが、一時的なものではなくて、体内で酵素反応を伴うような代謝を持続させるために温度を保つような植物があってもいいのではないかと思った。陰性植物のようなエネルギー需要の少ない植物ならば余ったエネルギーを温度を保つのに使えそうである。問題は効率である。植物が温度変化に合わせて細胞反応を変化させているのは、結局は動物のように体温を保つよりもエネルギーを使わなくてすむからであろう。動物は移動できるので、寒かったら運動して体を暖めたり、暖かい場所へ移動したりできるが、植物は移動能力がないために温度変化を感知できても防ぐことは難しい。極度に寒い場所に生息する植物の温度を維持しようとすると莫大なエネルギーが必要となる。自分では移動できない植物は、それに見合った(一番効率のよい)対応をとるのであろう。

A:植物の場合、エネルギー源は光合成で、低温を経験する時期は光も弱く、光合成速度を上げることは困難です。つまり、一番エネルギーのいるときに、一番エネルギーを作りにくい、ということがあるのかも知れませんね。


Q:今回の講義は普段聞かない専門用語、多数のグラフがでてきたために内容が理解できないところがありました。低温ストレスの場合は不可逆的なものであり、一定温度を下回ると阻害が現れると学んだ。そこで低温ストレスを防ぐ機構はないのだろうかという疑問点を抱いた。植物の機構ではないのだが、ある会社が作った水溶性ポリマーを発見した。これは暑さ寒さや乾燥から植物を守り水分量を一定に保つようだ。半透水性の皮膜を形成し主に気孔の開閉をコントロールして通常の35−40%水分の低下を防ぐことができ、水不足、急激な温度変化、霜・凍結、強風によるストレスから植物を守る。ということはこのような皮膜があれば低温ストレスの一部は解消されるといえるだろう。特別な皮膜を持った植物はないだろうか。

A:研究を長年続けていると、何が専門用語で、何が一般用語かがわからなくなるんですよね。申し訳ありません。本当は、研究の内容よりも、植物生理学における問題設定の仕方、研究の進め方などを感じ取ってくれるのが今回の講義の目的でした。水を通さずに二酸化炭素を通す膜ならば、植物にとって非常に有益ですね。特に、乾燥ストレス下の植物にとっては大きいインパクトがあるでしょう。そのような膜を自然に持った植物は聞いたことがありませんね。


Q:今回の講義では植物研究の一部をのぞけて良かった。この先の講義でも実際の研究を取り上げるようなので手法や考え方を吸収していきたい。今回特に考えさせられたのは in vivo での実験と in vitro での実験の関連付けと結果について考えることである。実験テーマについて in vivo での実験の条件で in vitro でも同じことを再現できるかの確認は重要だと思う。講義の実験では再現できないことがわかったが、そこから別の事実を導く考察の重要性も知った。 in vitro の実験ではいろいろな試薬を加えることができるから in vivo ではわからないより細かい機構について調べることができる。さまざまな実験を行ってその結果を組み合わせて in vivo の実験結果と矛盾がなければ誰もを納得させられる研究発表をできる。最近の研究には「何が起こっているか」に加えて、「どういう仕組みで起こっているか」、さらには「それがなぜ起こっているか」までを解明することを求められているように思える。そのためには in vitro の実験が必要であり、また、それを in vivo に戻って見直すことも必要だと思う。

A:その通りだと思います。例えば、植物に今まで知られていない新しい細胞反応を見つけても、それが、実際の植物に役立っていないと、あまり重要性が感じられません。植物にとってどのような意味を持つのか、という問いかけは常に必要でしょうね。


Q:まず、今回の講義はあまりわからなかったし、難しく感じた。最初に動物と植物では環境適応の仕方が異なっているが、植物の場合寒さに細胞の温度もマイナス数十度まで下がるとあるがそれで植物は死なないのか?私が知っていることでは、基本的に山の標高の高い寒いところなど寒いところにはあまり植物は生えていないように思った。これは植物が寒さを嫌うということではないのか?更に凍結ストレスでは細胞内の凍結による物理的破壊が起こるのだからマイナスでも凍らないということはなさそうなので疑問に感じた。次に低温ストレスで阻害された植物は温度を戻しても阻害は元に戻らないことから、細胞内の経路や、酵素が完璧に壊され、それを戻す仕組みも存在しないということだろう。この仕組みを回復させるものがあれば、植物はどんな環境でも生きられるし米などの寒さによる不作もなくなるのだろう。最後に、あまりわからなかったが系Iの阻害について。阻害され機能を失った系Iは光が入りすぎ処理されないから、自ら分解される。この仕組みがあるのになぜ修復の仕組みがないのかと思った。

A:申し訳ありません。研究の話だった上に、少し急いでしまいましたからねえ。これから気をつけます。分解はされるのに、修復はされないのは、おそらく、暖かいところの植物にとって、低温というのは、本来予定されていない事故のようなものだからではないでしょうか。それに、冬を迎えて段々寒くなっていくときは、ある1回の低温をしのげても、次の低温が来るのが時間の問題です。時間をかけて修復するよりは、その場をとりあえずしのいでおくことの方が、効率がよいのかも知れません。


Q:今回の講義は難易度が高いように思われます。系Iの阻害が生じているという内容でしたが、分子レベルの細かい内容について何をしているのか、光阻害は低温ストレスによって適応の観点からどのような意義があるのかなど理解が浅かったです。光阻害や低温ストレスによって、系Iの阻害が生じているという内容でしたが、適応の観点からどのようない意義があるのかイマイチつかめませんでした。
 今の時期明け方に植物に霜がついていることがありますが、日中になり、光量と気温が上昇するころには、植物はハリを取り戻しています。氷点下での低温耐性植物は、細胞内圧(膨圧、浸透圧の調節)を変化させているように思われます。また、液胞内の水含量も劇的に変わっていると思います。そういうことと分子レベルのつながりが分かると面白いと思うのですが。
 ところで今後の講義で、アサガオに見られるアポトーシスについて扱って欲しいと思います。アポトーシスの機序は基本的にすべての生物に共通なのでしょうか?

A:研究の話をするときは、もう少しゆっくり丁寧にすることにしましょう。膨圧の話は次回の講義でも触れます。ただ、アポトーシスは専門でないのでねえ。ちょっと僕には荷が重いので、別の先生にお願いしてもらえませんか?アポトーシス関連とされる遺伝子は、原核生物にもそのホモログが存在します。その意味では、全ての生物に共通化も知れませんが、単細胞生物がアポトーシスを起こしても意味がありますかねえ。定義の問題かも知れません。DNAの断片化といった、ある程度の定義はありますが、動物と植物ではやはり意味合いがかなり違う気もします。


Q:今回の講義は、実際の実験への取り組み方とその過程が主な内容であったが、そのせいもあって結構授業スピードが早くてなかなか理解するのに苦労しました。
 今回、特に気になったのは光化学系Iと2のことについてで、系IIの阻害は可逆的であるのに対して系Iの阻害は非可逆的であることと、それが起こるのは低温環境下であるということを講義でならったが、ここで自分が思ったことは、系Iが非可逆的であり、温度を戻しても阻害は元には戻らないということを考えると、環境適応の面で別の回路が存在している方がお得ではないのかと考えたからです。系Iが元に戻らなくてもそのまま系IIから系Iをなんらかの形で飛び越える、または別の経路が存在するのではないかと考えました。これは第5回のプリントにあったシアン耐性回路というものの存在を講義で聞いたからそのことが頭に思いつきました。植物はいろいろな回路があるのであっても不思議ではないかと考えました。

A:急がないで、次の週に内容を一部先送りにすればよかったですね。
 確かに、何かスキップする経路があると便利かも知れませんね。炭酸固定系をスキップして、酸素に流してしまう経路の話はすでにしましたが、系Iをスキップするのは難しそうです。


Q:生物はさまざまな環境変化に対し体内の恒常性を維持するのが当然のことだと思っていたので、植物が自分の細胞反応を積極的に変化させて対応することは驚きであった。
 木々が冬になるといっせいに葉を落とし、草が枯れていくのも、気温が下がることでクロロフィルの光合成活性が失われ、それでは危険ということで植物がそのようにしているのだろうか。
 冬に葉を落とさない木々の葉は細いものが多く、これらは葉からの水分の蒸散を防ぐことでは有利だが、光合成には不利なようで、乾燥地帯以外では生育に不利であるように思える。なぜそのような形態をとっているのかと考えてみれば、これらは暖かい時期では多少生育に不利であっても、冬に葉を残しておくために、葉の表面積を小さくしておくことで、クロロフィルの活性が失われる冬に葉に受ける太陽の光の量を少なくし、エネルギーをためすぎないようにすることで、葉を落とさずに生育することができるのではないかと思う。

A:水分と植物の関係については、次回の講義で詳しく説明する予定です。


Q:今回の講義で、葉の中では壊れなかったPSIが、チラコイド膜だけになると低温耐性植物でさえも阻害されてしまうという所に興味を引かれました。そして、いくつか疑問・考えが生じました。植物の進化の上で真核細胞とラン藻の共生説を考えると、チラコイドは葉緑体の中に存在するのだからラン藻に、葉の構造は真核細胞に由来するはずであると思いました。ならば、チラコイド膜だけではPSIは阻害されてしまうという事は大昔のラン藻は光のよって阻害されやすかったのではないか?進化の過程で動物が陸に上がったとき、直射日光から体を防御する機構を獲得していったように植物も何らかの光に対する機構を得たのではないだろうか。それの1つがPSIを光阻害から守る葉の構造であり、これは共生後に行われた真核細胞とラン藻の調和現象の1つでもあったのではないかと思いました。
 それとも葉の構造の中ではなく葉緑体の中にもPSIを防御する機構があるのだろうか?生命は海から進化したと考えられている。ラン藻の元となった細胞も海から進化したはずである。この細胞がどのくらいの水深で誕生したかはわからないが、海面近くに細胞が存在するようになった時に細胞内にPSIを防御する機構の基礎が形成されたのではないだろうか。そして真核細胞との共生後にその機構が補強されていったのではないか。自分勝手な憶測であるが、講義を聞いていてこのように感じました。

A:このようなことを考えることこそが、研究のステップの1つなのです。いろいろと考えて、次に、それを証明するためには何をしたらよいのかを考えます。上の場合で言えば、包膜を保った葉緑体を単離して光を当ててみる、という実験を思いつきますよね。もし、葉緑体全体では阻害されないのであれば、保護機構は、葉緑体の中にあるはずですし、阻害されれば葉緑体の外、細胞質に、保護機構があることを示すことになります。この実験は、僕自身、やってみたいと思っている実験です。


Q:今回の授業から内容がグッと濃くなって面白くなってきました。あと今回のプリントから文章が入っているので、復習するときにとてもやりやすかったです。考察に入ると、うちの学科では植物の生理はまずやらないので、植物にも環境適応があるとは知らなかったのですが、なかなか興味が惹かれました。積極的な非可逆的細胞変化の誘導は、とても複雑な過程を通過してなおかつ安全に行われているのは理解できました。今回の調査の仕方をみていると、研究ということが、だんだんと複雑な過程へ徐々に入っていくのが、なんとなくわかりました。新しいことを発見するには気づくことがとても重要であると思わせるのは、系Iの光阻害のメカニズムで、メカニズム自体を破壊してしまうと、植物は自分の今の体を維持できなくなってしまうのでまず何らかの形で休止させると、普通は考えると思うのですが、それがタンパクの分解バンドによって推理しているのは、考える力の重要性を物語っていると思いました。これからどのような展開で、このことを展開していくのかが楽しみです。

A:あんまりプリントを充実させると講義に出なくてもよくなるとか...まあ、できるだけ努力はしますけれど。研究の中で、「考える」というステップの重要性を感じ取ってもらえたのなら成功です。