理学クラスター講義

東京大学・理学部
平成21年7月27日(月)~29日(水)        場所:小柴ホール(理学部1号館中央棟2階)

平成21年度スケジュール

10:00-12:00 13:00-15:00 15:15-17:15
7月27日(月) 浜口教授 田中准教授 園池准教授
7月28日(火) 秋山准教授 樋口教授 畑中准教授
7月29日(水) 島野准教授 村尾准教授

(1) 浜口宏夫教授 「物質と生命をつなぐ分光学」
  東京大学大学院理学系研究科化学専攻構造化学研究室
(2) 田中培生准教授 「大質量星のスペクトル観測」
  東京大学大学院理学系研究科天文学教育センター赤外線天体物理学グループ
(3) 園池公毅准教授  「生命誕生から光合成など光と生命の関わり合いまで」
  東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻
(4) 秋山英文准教授 「半導体量子構造と光」
  東京大学物性研究所先端分光研究部門准教授
(5) 樋口秀男教授 「光技術を利用した、生体内単一分子のイメージング」
  東京大学大学院理学系研究科物理学専攻
(6) 畑中耕治准教授 「高強度レーザーパルスと液体との相互作用で見られる様々な現象」
  東京大学大学院理学系研究科附属超高速強光子場科学研究センター
(7) 島野亮准教授 「テラヘルツ波領域の物質科学と量子物性研究」
  東京大学大学院理学系研究科物理学専攻
(8) 村尾美緒准教授 「光と量子情報科学」
  東京大学大学院理学系研究科物理学専攻

自然界の共通対象への異なる見方やアプローチを紹介することで、既存の学問分野を超えた学際的フロンティア創造への入り口を提供する。本年度のキーワードは「光 物質」とする。

講義内容

光は宇宙創成の初めから自然界の基本構成要素として登場し、その物質との相互作用を観測することによって我々は自然の成り立ちを理解してきた。また、光は太陽エネルギーという形を通して生命を生み出しただけでなく、遺伝子変異を誘起して生物進化を促進し、光合成などによって生命活動を支えてきた。さらに、光は情報伝達手段の一つとして人間の文明社会の発展に大きく寄与してきた。

ところで、近年の科学や工学では、光を単に観測道具であるとは考えず、レーザーや放射光によって人工の高強度の光を積極的に作り出して、それを使って新規物質や現象、エネルギー変換を生み出そうという試み(光の機能性の追求)が盛んになってきた。そして、このレーザー技術は情報伝達手段としての光の役割(光の制御性)を革新し、新しい情報伝達スキームを作り出そうとしている。

このような最近の動向に鑑みて、このクラスター講義では、(1)素粒子物理学的および宇宙物理学的観点(光に対する基本認識の深化:マックスウェル方程式から光量子説、量子力学、場の量子論への発展など)、および、生命・生物科学的観点(生命誕生から光合成など光と生命の関わり合いまで)からの研究進展の歴史と現状、将来展望を述べる(たとえば、ビッグバンからダークマターまでの問題など、また、医療技術としての光など)、(2)物性物理学的および化学的観点から主として観測道具としての光を述べる(光と物質とのコヒーレントな相互作用,物質の線形・非線形な光応答,光励起エネルギー伝播,光化学、光触媒、光と生体物質との相互作用など)、(3)高強度超短パルス光による物質変換/材料加工や、パルスX線発生とその応用について述べる、(4)光の量子科学の基本問題(量子相関,2光子干渉,量子雑音などの量子化された輻射場の示す様々な振る舞い,光コヒーレンス,光による量子系の観測問題,コヒーレント光発生の機構など)を述べて、光科学の総合的な理解(光と物質の織り成すドラマ)を与えるとともに各専門分野での最先端の問題に触れることを目的としている。

成績評価

単位認定は各講義終了後30分間の小テストの評価による。