生命生存応答学 第6回講義

雨の話、植物と水の関係

第6回(最終回)の講義では植物の降雨による光合成阻害というちょっと変わった話や、低温による道管の凍結が植物の植生を規定しているという、東大植物園の舘野さんの研究グループの話など、生態的な話をしました。


Q:Sperryによれば、エンボリズムは導管液の凍結によって導管内に気泡が出現し、キャビテーションが生じることによって起きる。またこれは細い導管では起きにくく、太い導管では起きやすいことが知られている。一般に暖温帯の種は導管径が大きく、冬季にエンボリズムを起こしやすいが、光合成速度が高い。一方で冷温帯の種は導管径が小さく、エンボリズムを起こしにくいが、光合成速度が低い。 ある場所で暖温帯の種と冷温帯の種のどちらが優勢であるかは、その場所の気候に影響されることが予想される。また、近年気候が温暖化しているため、同じ場所では以前よりも暖温帯の種が優勢になることが考えられる。しかし、和歌山県農林水産総合技術センターの平岡は、暖温帯に生育する落葉広葉樹であるウメに温暖化が悪影響を及ぼすとしている。冬季の温暖化は樹体の活動を早期に活性化するが、樹体内が水で満たされ耐凍性が低下すると、寒波が再来したときに凍害を発生しやすくなる。また、夏季の気温が上昇すると、ウメは気孔を閉鎖するものの、完全に閉鎖することができないため、葉温が40℃に達するまで蒸散速度は上昇し、エンボリズムを起こしやすくなってしまう。このように気温の上下によって暖温帯と冷温帯の種のどちらが有利になるかは一概にはいえないようである。

A:調べたことの他に、そこから考えたことが書けるとよいのですがね。


Q:葉の濡れやすさの測定法について普段考えてみることもなかったが、水滴と葉の接触している部位の角度を測定していると知ったり、雨が降るという環境条件を科学実験に用いるために霧が降るような雨チャンバーを作ったり、様々な条件設定に関する話がとても興味深かった。スライドでは葉が濡れると1分という速さで大体の気孔が閉じていた。葉の裏に気孔が多いのは雨が降ったとき直接的に水が葉に打ち付けるストレスを軽減することにもなっているのかもしれないと思った。雨処理2時間では光合成活性に変化がないのに対し、雨処理を6時間続けると不可逆的な変化がみられた。そしてこのとき系I、IIが正常であるが電子伝達が低下することから阻害部位はb/f複合体ではないかと考えられるようだが、雨処理6時間の何の因子による影響で光合成活性が落ちるのだろうか。雨チャンバーの条件を考えると光が当たっていて、葉が濡れて気孔が閉じているという状態になるのだが、なぜ、その時、b/f複合体(少なくとも系I、IIではない部位)だけが阻害されるのだろう。グラフでいうと炭酸固定を律速しない範囲での変化ということはその部位は炭酸固定系ではなく、Rubisco活性などにもよらないと考えるとb/f複合体が光強度で何らかの構造変化などにより正常でなくなったりしているのだろうか。

A:最近になって、色素を結合していないと思われていたb/f複合体に、クロロフィルが1分子結合していることがわかりました。光が当たった時にのみ阻害がかかることを考えると、このクロロフィルが関係している可能性も考えなくてはいけないかも知れませんね。