生命応答戦略科学 第8回講義

最近の研究成果

第8回の講義では、最終回として、今までの教科書的な内容や、トピックス的な研究紹介から離れ、最近我々の研究室で行われている研究内容の紹介を致しました。内容としては、シアノバクテリアを用いたポストゲノム的な研究といったところです。


Q:Chlororhyll fluorescene を使った遺伝子のカテゴラズにおいて、光合成に関係のある機能についての変化の様子を見てるので、光合成に関連の強い遺伝子以外の物のカテゴライズにはあまり向いていないようなきがするのですが、どうでしょうか?しかし、いまのところ、1961につてうまくいっているようなので、これからが楽しみです。
 また、この方法において三つのパラメーターを用いているようなのですが、それ以外にピークとそのピークが落ちるまでの幅もパラメーターの用いれるのではないかと思いました。

A:もちろん光合成に関係ある機能による変化が強く現れてきますが、光合成に完全に依存して生きている単細胞性の原核生物の場合、光合成に全く影響を与えないような変化というのは案外少ないのではないかと考えています。ただ、どこまで微妙な変化を捉えられるかが問題で、講義の中で話しましたようにノイズの妨害を最小限にするように努力しています。
 パラメーターの取り方については確かに改良の余地があると思います。将来的には、バイオインフォーマティクスを用いてデータポイントを全て同時に比較するような手段がとれないか、と考えています。


Q: 光数年前までは遺伝子配列が主な話題でしたが、近年それをもとにした遺伝子の機能や発現についての解析が大分進んでいます。今回の講義は、変異体を用いたクロロフィル蛍光測定による解析でした。実のところ、原理はよく分かりませんでした。
 しかし、研究は一つブレイクスルーができると、加速度的に進んでいくものなのだと感じました。

A:すぐに、研究を始めるにあたっては、まず、実験材料のゲノムをぱぱっと決めて、という時代になるかも知れません。そうなると、別にモデル生物にこだわる必要すらなくなるでしょうね。


Q:授業の前半の講義は基礎的な植物(特に光合成)の内容で、専門外の者にも非常にわかり易く、後半、特に最終回などは生命研究への戦略を考える研究者側からの応答戦略科学として、ホットな話題もあり、大変参考になる内容でした。研究に取り入れる新手法等の情報は、どんなところから得られていらっしゃるのでしょうか。また、自分には、まだまだ不十分な研究戦略に対する新発想やその妥当性を推察するセンスを磨くためには、どんな態度が必要なのでしょうか。先生はどんな点に注意を払われていらっしゃいますか。
 最新知識だけでなく研究戦略やそれに基づく研究者側の対応を考えさせられる講義、どうもありがとうございました。

 A:研究の妥当性はともかく、発想というのは、どうしたらセンスを磨けるのか、よくわかりませんね。ただ、自分で論文を何本も書くようになると、実験のやり方によって、簡単に論文が書けるときと、言い訳が大変で論文にまとめるまでに大変な苦労をするときがあることがわかります。おそらくそのような経験の積み重ねが重要なのではないでしょうか。

Q:最近の研究室での研究の紹介について、全体像をとらえることができた。ふつうにストリークしただけでは一様にならなかったシアノバクテリアのクロロフィルの蛍光強度を、ドット状に塗ることによって解決したというエピソードが面白かった。また、これは紹介された全てのテーマにあてはまることだが、新しい事実を発見しようとするとき、それを検出できるような系を自分で工夫して作り出すことが重要なのだとふ再認識した。今まで光合成の指標となる数値は複雑で解釈が難しいと感じていたが、この授業を通して、たとえばcfa1 mutantでNPQが異常なのは、カロチノイドによって余剰エネルギーを熱に換えて放出する防御システムに異常があるからであると説明でき、スムーズに理解できるようになった。今回の授業は、これからの研究室のコロキウムの参考になると思う。

A:確かに「新しい事実を検出できるような系」というのは重要ですよね。しかもその系を他の人も使っている場合は、競争を覚悟しなくてはならないので、なるべくならば、独自の系であることが望ましいわけです。僕自身は、バックグラウンドが物理・化学なので、クロロフィル蛍光などの、なるべく他の人が余り使っていない系で勝負をしようと考えています。


Q:遺伝子破壊株の phenotype を分析し代謝における役割ごとにグループ分けをすることにより、機能未知な遺伝子の機能をある程度予測した上でその同定を試みるクラスター解析はポストゲノム研究において非常に有用だと思った。機能に予測が立てられればマイクロアレイを用いた transcriptome 研究や two-hybrid 法などを用いて他の遺伝子との関連を調べることができ、一つの現象を分子生物学的に説明することができるだろう。
(授業の本質とは離れるのですがコスミドベクターについて調べてみました)
 コスミドベクターは環状二本鎖でλファージの cohesive end、大腸菌の ori とマーカーを持ち、大腸菌内で plasmid として増殖することができる。40kb 前後の外来DNA を挿入できるのでゲノム DNA ライブラリーを作るのに適している。λファージベクターはλファージの頭部タンパク、尾部タンパク、溶原化(組換え)領域、溶菌化領域、(大腸菌内で複製されるための)λファージの ori などを持ち、大腸菌内でファージとして増殖することができる。種類によって 7 ~ 20kb 前後の外来 DNAを挿入でき、大腸菌に感染することにより効率良く外来 DNA を transformation できるのでゲノム DNA や cDNA のクローニングに適している。 コスミドベクターもプラスミドベクターより transformation の効率が 100~1000倍高いとされていますがそれはなぜですか?λファージ由来の DNA 領域は cohesiveend しかないのにλファージベクターのように感染することができるのでしょうか?

A:この辺は、僕の専門ではないので、うっかりしたことは答えられませんね。お正月休みにでも、誰かにきいてみます。