光合成における光エネルギー利用の調節機構 講義レポート

講義に寄せられたレポートのうち、英語で寄せられて個人が特定されてしまう1つを除く全てを以下に紹介します。

最初にレポートと共に送られた質問について。

レポートと共に送られた質問:

テーマ4「シロイヌナズナの蛍光変異株の解析」において、還元型FdやNADPHから電子を引き抜きプラストキノンに渡す酵素の変異株のクロロフィル蛍光の紹介がありました。これによると、循環的電子伝達に支障があると見られる株のクロロフィル蛍光は野生株よりも高かったのですが、これはなぜでしょうか。野生株においてプラストキノンへの電子の供給は、PSIIからの電子と循環的電子伝達からの電子の2つの経路があるので、還元レベルでいうと高くなるのではないかと思っていました。クロロフィル蛍光はPSIIが電子を受け渡すプラストキノンが十分に還元されているときに強く出るものだと思っていたのですが、そうすると、野生株のほうが高く出てもおかしくないのに、なぜ22-18-21変異体やpgr5変異体の方がクロロフィル蛍光が高く出ているのでしょうか。

回答:

循環的電子伝達が阻害された時のクロロフィル蛍光の挙動への影響については、完全に解明されたわけではありません。ただ、講義で紹介したクロロフィル蛍光は、光を照射してから12秒間の一過的な変化を見たものです(熱的消去の方は5分間観察していますが)。従って、定常状態での安定した時のクロロフィル蛍光を見ているのではなく、暗所から明所に移した時の一時的な現象だけが反映されます。循環的電子伝達によって、PSI の還元側からプラストキノンプールまで電子が帰って来るにはある程度の時間が必要ですから、短い時間だけに注目すると、循環的電子伝達の阻害は、PSI の還元側を酸化する経路がなくなる、つまり電子伝達をより還元的にする方向に働きます。これが、変異体で、クロロフィル蛍光が高く出ていた原因かも知れません。

イントロダクション

◎光合成研究の方向で私を含め、原子レベルでの解析はその方向性や方法などはわかるんですが、より大きい範囲により解析(生態学、地球規模での評価)という面では、どのように行なわれるのか、またどういう方向性で解析していくのかという点では、わからないこともたくさんあり興味もあります。地球規模でのクロロフィル濃度の評価、例えば、季節の変化によるクロロフィル濃度の変化や海でもその場所によってその濃度が異なる。こういった広い範囲での測定はどうやって測定されるのでしょうか。海水中の植物プランクトンの量の測定でも、表層域にいるもの、やや深い領域にいるものもいてその測定は難しいようにも感じます。

◎この話も大変興味深くきいていました。地球規模で鉄を大量にまくなど聞いたことがなく、大変面白いと思いました。最近、農業現場で鉄の重要性が語られだして、鉄を上手く取り入れた肥料が成功していることをよく耳にします。しかし、この方法が何より興味深い話でした。このような方法の確立、さらなる研究が進んでいけば、食糧問題も解決するのではないかと考えす。特に、今回の方法では、大きなバイオマスの単位での変化が観察できているため、マクロの視点に立った農業の展開が期待できると思いました。地球外からの地球の管理は大変重要だと感じました。

光化学系量比の調節機構

◎シアノバクテリアpmgA変異株について、最初は光合成能力の高いスーパー変異株かと思いました。しかし、強光にさらされ続けることによる弊害で、結局淘汰されてしまうことがわかりました。しかし、実際の自然環境下では昼と夜のサイクルがあるわけで、実は自然界では変異株のほうが生き残りやすいという可能性はあるのではないかと思います。そもそも、自然界で周囲が高グルコース条件になることはそうはないのですから、グルコースによる生育不良もあまり起こり得ないことのような気がします。とはいえ、ピュア・サイエンスの視点から見ればこれは非常に面白い変異株ですね。ところで、DCMUの添加によって電子伝達を阻害してしまうと、還元力がPSIIに蓄積して、活性酸素の発生を促してしまうことはないのでしょうか。ラン藻のことはよく知らないのですが、植物ではPSIIの過剰な還元力が一重項酸素の発生源となることが知られていますよね。あるいは、一重項酸素が発生してPSIIのコアタンパク質を破壊することによって光合成活性を抑える防御機構が働き、その結果野生株やDCMUを添加した変異体は継続的な強光に強くなったと解釈できるのでしょうか。もしそうだとすると、pmgA変異株を連続強光下に置いたあと、PSIIの吸光度を調べてみたり定量してみたりするのも面白いのではないかと思いました。最後にひとつ。グルコースがpmgA変異株の生育を抑制したメカニズムがよくわかりませんでした。ただ、グルコースそのものを検地するグルコース・シグナル系に異常があるという可能性も考えていいのではないか、と思いました。

A:実は、最近の解釈では、「PSIIのコアタンパク質を破壊」はもちろん阻害ではあるのですが、それによって電子伝達を抑制して、致死的な影響を避ける、いわば保護的な役割も持っているとの考え方が有力です。

◎シアノバクテリアのpmgA変異株は通常生育条件で野生株の自然突然変異により生じたが、このように短い期間に比較的簡単に遺伝子に変異が入ってしまう事にまず興味を持った。細胞が外界と直に接するために変異原が細胞に作用しやすい為なのだろうか?シロイヌナズナの培養細胞は液体培地で数ヶ月継代培養を続けると細胞同士がくっついて小さな塊を形成したり、細胞内部にデンプン様の構造物を蓄積したりすることがある。これらは顕微鏡下で目に見える表現型であるがpmgA変異株の様に自然突然変異が入って目に見えない細胞内の変化もおきているのかもしれないと考えた。またpmgA変異株やsll1961変異株は短期間の強光ストレスには強い、長期にしても光合成阻害剤のDCMU処理により耐性を維持できる、などといった利点もある。このことをすぐに植物の光合成能力の増加や生育促進に結びつけることはできないが、特定の環境を作ることで野生型の株よりも生育がよくなるような植物を作り出すことができれば、農業の現場での作物の収量増加に寄与することができるかもしれない。農地の環境はある程度コントロールができるからである。また、今回のpmgA、及びsll1961変異株はブレーキを失ったいわば働きすぎの変異株であるが、逆にアクセルにあたる遺伝子がわかり、その過剰発現株を作成したとしたら同じような表現型を示すのかということにも興味が持たれる。もちろんpmgAやsll1961遺伝子そのものの光合成反応における作用位置やタンパク質の立体構造の解明などもこれらの遺伝子の機能を推定する上で詳細に行われる必要があると考える。

◎正直に言って講義の内容は私には難しくてよくわかりませんでした。しかし、その中でもpmgA変異株のおもしろさはわかりました。私が特に興味をもったのは「pmgA変異株と似た表現型を示すsll1961の実験の窒素飢餓の条件で光化学系量比は変化しない。だからセンサーは酸化還元状態を探知しているのかもしれない」というものです。ここで疑問に思ったのは窒素は活性酸素種と特に過酸化水素とスーパーオキシドジスムターゼを介し相互に関連をしているから酸化還元状態に少しの寄与があるのではないかということです。

A:窒素が酸化還元状態に影響するかも知れない、というのは本当です。ただ、活性酸素を通してではないと思いますが・・・

◎私が糖応答性の転写因子を扱っていることもあって、Glucoseの出てきた強光のセンスの話に注目した。高等生物には代謝系にペントースリン酸経路が存在し、Glucoseを加えることによってNADPH+が生じる。これが細胞内酸化還元状態を変化させる一因となっている。シアノバクテリアでもGlucoseによるレドックス制御が働いているのはあたりまえだが、高等植物と違って光化学系が同じ細胞内に存在するため、光化学系のレドックス制御の可能性を検証するためにGlucoseを用いたというのはおもしろい実験だと感じた。

◎自分自身の研究テーマが環境ストレスと作物生産に関することなのでシアノバクテリアの研究でも、どうしても植物に結び付けてしまいます。そのため、pmgA変異株の解析からわかったこととして、光合成活性を強光下で抑えることが重要、という結論となっていましたが、強光下で電子伝達を抑える以外にも方法があると考えました。植物では強光ストレス条件下でも生育できるよう、過剰光により発生した活性酸素を消去するための消去系などの機構が認められます。シアノバクテリアは自然界では水中に生育しているため、植物よりも強光にさらされる可能性は極めて低いと考えられます。そのような条件では活性酸素消去系などが発達しにくいことが考えられます。光合成の活性を抑えなくても、活性阻害因子を排除したり、強光下でも出来るだけ活性酸素を生成しないような機構を付与出来ればよいと思います。シアノバクテリアに活性酸素消去系が発達する変異株があれば、強光ストレスに対する耐性が強いものが得られると考えました。

◎このセクションで説明していただいたミュータントにおける光合成能の変化に対する考察ではないのですが、研究室という特殊な環境下で進化が起きてしまったということがとても興味深かったです。野生株として使用していたものが変異をおこし、より環境に適応したものが残ってしまったというのはまさしく「進化と適応」そのものですが、この話を聞いたときに、「真の野生型とはなんだろう」という疑問が浮かびました。例えば、ヒトのゲノム解析がなされ全塩基配列が明らかになりましたが、その解析に用いたサンプルは当然一人ではなく何人分もあり、これによってヒト全体に共通する配列や一塩基多型の起こる部位を解明できました。共通する配列、すなわち現在生きているヒトが野生型として持っていると断言できる遺伝子については特に疑問はないのですが、一塩基多型とされる部位、すなわちヒトの個性に繋がる部分は、元々はどのようなものだったのだろうと考えると、野生型の解釈が自分の中で曖昧になってしまいました。そもそも「現在のヒト」と同一とされる塩基配列を持ったヒトが、厳密にいつごろ誕生したのかを特定することはできないと思うので、ゲノム解析で明らかにされた塩基配列は「ヒト」という生物そのものではなく、「ヒト」を表す指標の一つであるということを覚えておかなければならないと思いました。そうなると、研究室で用いているラン藻やシロイヌナズナなどの野生型も「現在解析している生物の野生型」であり、もしこのまま人類が研究を進めていけば、数百年後には自然界では進化により違った性質をもつものが「野生型」となっている可能性もあるのではないでしょうか。極端なことを言うと、使用している「野生型」が通用するのは研究室内のみで、自然界では進化により異なる生物となってしまっている、ということが起きないとは言えないと思います。しかし、研究が追いつけないほど早く進化してしまうということはないでしょうから、上で述べたことが現実となる心配はほとんどないと思いますが、現在地球上に生息する生物がこれ以上進化することはないという保証はないので、生物を実験の対象としている場合は、自然界で生息している個体および研究室で使用している野生株の性質を定期的に見つめ直す必要があるのではないかと思います。

◎今まで私は生物の進化、適応というのは大きなスパンで起こっていると思っていたので身近に意識したことがありませんでした。シアノバクテリアが研究室内で進化し、強いものが適応して生存していく様子が実験を行っている、そのときに見られるのはすごいと思いました。おそらく、私が始めから進化が身近に起こっていると意識していないのでその様に感じたのだと思います。また、進化の様子が観察できた要因の一つにシアノバクテリアが単細胞の原核生物で、多細胞の真核生物のものより環境に左右されやすいためだと思いました。このトピックスで疑問に思ったことは、自然突然変異による大きなコロニーと小さなコロニーの発見で、その2つに区別できない中間の大きさのコロニーも存在するのではないかということです。また、バクテリアのことはよく知らないのですが、培養日数が長ければコロニーも大きくなって、より区別しにくくなるような気がしました。大きなコロニーと小さなコロニーはどのくらいの大きさで区別していたのでしょうか。(例えば、大きいコロニーは小さいコロニーの2倍とか・・・・)

A:実際には、コロニーの大きさは、二極分化していたので、目で見ても大きさが数倍違って、区別には困りませんでした。もちろん、区別しやすい条件での話ですが。

◎pmgA変異株およびsll1961変異株は、長期間の強光にさらされると顕著な生育阻害を受けるが、短期間の強光では逆に光合成速度も速く、生育も早い。野生株は強光に伴って起こる何らかの障害を回避するために光化学系Iを減らすという対応を取ると考えられますが、今回「働き過ぎは体に悪い」ということでまとめていたところの「体に悪い」とは、具体的にはどこでどのようなメカニズムで障害が起こるのか多少なりともわかっているのでしょうか?光合成能力というと、今までは草型の改良などによって作物全体の光合成効率を上げるという考え方でしたが、今回のpmgA変異株やsll1961変異株は、短期的な視点からだけ見れば個々の葉緑体の光合成能力が上昇していることになり、強光による障害を別の方法、経路で抑えることができたら今まではできなかった葉緑体自身の光合成効率の向上につながるのではないか、と思いました(複雑な光合成系の中でそれらを行うことは非常に楽観的だとは思いますが・・)。

A:pmgA変異株を連続強光にさらすと、酸化ストレスによって細胞膜の脂質が過酸化脂質になり、結果として膜の透過性などが変わって生きていけなくなるのではないかと考えています。ただし、その部分は実験的に証明するに至りませんでした。

◎pmgAという光化学系量比を調節する遺伝子が破壊されたシアノバクテリアの変異株で、野生株よりもかえって短期的には光に対して強くなっていること、さらに、pmgAの変異株を実験室内で強光で培養しているうちに、野生株に対して優先し、最後には全てが変異株に置き換わってしまったこと、などから光が強いという環境により適応した変異株が出現し野生株に対して、変異株が置き換わり、光に対応した進化を再現できた、という話が最も興味深かったです。進化の過程には、淘汰がふくまれると思いますが、今回はしっかりと淘汰が起こっていて、それが進化として表現された例だと思います。しかし、ここで一つ疑問がわきます。光化学系を調節しているpmgA遺伝子が破壊され、さらに普段はその遺伝子によって調節されていて初めて、強光に対するストレス応答ができていたと考えます。それを破壊した、変異株が逆に強光に対して適応するように働き、最終的にはそれを進化と考えられるようになったというなら、pmgA遺伝子のコントロールの下流にあるものがコントロールを受けなくなるように変化した結果、進化にいたったのだと思います。そのため、pmgA遺伝子が直接関与するのではなく、進化は直接的にはその下流に存在するものによると思いました。pmgA遺伝子によるコントロールがどのように調節に対して影響していたのかが難しかったです。

◎必ずしもこのトピックに限ったことではないのですが、先生方のサイエンスを追究しようとする姿勢を感じ、改めて自らを省みました。強光下においてシアノバクテリアをスクリーニングする予定だったものがうまくいかず、そこで強光下でのコロニーの大きさが二種類あることに気づかれて研究を進めていかれた事に、研究者としての真髄を感じました。自分はシロイヌナズナのジャスモン酸生合成経路について研究しているM2ですが、どうしてもジャスモン酸生合成系の遺伝子を捕まえるという目標にこだわりすぎて、目先の現実から目をそらしてしまうことがあります。わずかな表現型の差(種子のでき具合、雄しべの異常)など、遺伝子の発現状況から考えて予想とは逆のような表現型がでることがありますが、理由がよくわからず、そのままになってしまっています。ですが先生のお話を聞いて、それではいけないと痛感しました。特に再現性のでる事象には何らかの意味があると考えられ、研究の当面の目標にとらわれず、追究していく姿勢を忘れないようにしようと思います(もちろん、時間との兼ね合いもあるので研究の優先順位には気をつけます)。この姿勢こそが、一歩ずつ着実に前進していくポイントなのではないかと考えています。

光エネルギー分配の調節機構

◎非光化学的消光には、高等植物ではチラコイド膜のプロトン濃度勾配ができたときのキサントフィルサイクルなどによる過剰エネルギー消光、アンテナ複合体の反応中心間移動(ステート変化)による蛍光収率の減少、光化学系IIの光阻害による蛍光収率の減少という3つの要素があるが、ラン藻では強光条件で、PsaK1,2が関わり、PBSが光化学系IIから光化学系Iへステート変化しそのメカニズムも少なくとも2つ存在する。これは高等植物のLHCタンパク質のステート変化と、何かしら因果関係はあるのでしょうか。また進化的な観点からみていった場合にも高等植物とラン藻ではこのステート変化から何かしら関係があるのではと興味があります。

A:高等植物とシアノバクテリアの調節は、アンテナ系が違うのに似ているところがあって、実際に関係があるのかないのか、まだよくわかりません。

シロイヌナズナの変異株解析

◎変異体の取得法として、T-DNA挿入変異体だけでなく、薬剤による変異誘導を行っている点が私の研究と異なっています。EMSなどの薬剤は当然人間にも有害であり取り扱うのが難しい一方で、SALK INSTITUTEなどのT-DNA挿入変異体ライブラリでカバーできていないオリジナルの変異体を作成できるということで非常に魅力的であります。私はシロイヌナズナにおける植物ホルモンサイトカイニン情報伝達について、逆笂`学的な解析を行っておりますので、変異体が取得できていない遺伝子の機能また、マイクロアレーによって絞り込まれてきた遺伝子群の解析に有用な手法であると考えられます。

植物の低温感受性

◎In vivoとin vitroで、また植物の種類によってPSIの阻害の有無があることには驚いた。特にIn vivoでは阻害を受けにくくなっている理由が、当たり前のようで、不思議であった。現在、ヒトの細胞からヒトの臓器を再構築するTissue Engineeringに関する研究をしているが、そこでは細胞のin vivoでの性質とin vitroでの性質の違いが課題となっている。植物もin vitroとin vivoでこのような違いがあるということで、細胞同士の位置関係、その状態が大きな問題になっているのではないかと感じた。例えば、カルスから植物体に分化していくどのタイミングでcucumberのin vivoでの温度による阻害の違いが現れるのかを調べると、低温感受性ではないsuper cucumberを作製したり出来るのではないだろうか。

◎低温状態においても、光が当たらなければ低温感受性植物でも害はないが、少しでも光が当たると阻害が現れ、それは不可逆性であるとのことでしたが、低温・暗所の状態から20ー25℃の室温・暗所の状態にしばらくしておいて、それから光を当てたとしてもやはり不可逆性の阻害は見られるのでしょうか。低温感受性植物にとって低温自体は一時的なストレスでしかなく、葉の組織が凍って回復不可能なまでに破壊されない限り、一種の休眠状態のようなもの(光合成系の活性低下)に陥っているだけで温度の上昇とともに通常の生命活動に戻ることができるのか疑問に思いました。授業で使用したスライドの「キュウリの低温傷害に対する光の影響」というグラフは、各温度と光条件で生育した個体の葉緑体を採取して光合成活性を測ったものでしょうか。それならば、低温自体は一時的なストレスであり致命的なダメージを与えないのだと思いますが、光を当てた個体の酸素発生量が時間とともに減少しているのが引っかかります。低温で光が当たった状態で生育したのなら、葉緑体を採取して活性を測り始めた時点でもう酸素はほとんど発生しないのではないでしょうか。しかし各条件で生育している個体自体の酸素発生量を測ったグラフだとしたら、0℃・暗所で酸素が発生する理由がわかりませんでした。また、低温で光による阻害が現れる理由として、系Iで酸素が還元され、それが最終的にハイドロキシラジカルとなり鉄イオウセンターを破壊するとのことでしたが、低温下でも上手に光を利用するメカニズムを植物は発達させられなかったのかと思いました。植物の低温耐性機構がわからないので、以下に自分の単純な考えを書きます。酸素の還元ののち発生した活性酸素を除去する系が整っている植物の場合、低温で活性が低下しているであろう活性酸素除去系酵素群に光を熱として与えられれば、酵素は活性を取り戻せる上、光の処理もできるのではないでしょうか。かなり突拍子がない考えで、そう簡単に光を熱として特定の部位に渡す機構を発達させられはしないでしょうが、環境に適応し、最大限に無駄をなくすことが生存の道である植物ならば、もっとユニークな代謝経路を獲得しても不思議ではないだろうと思います。

A:講義の中で紹介した多くの実験では、葉の状態で低温処理をして、光合成は、チラコイド膜を単離して測定する場合が主です。

◎私はあまり温度と植物の機能の関係について知識が無いので、勉強になった。低温ストレスによる影響は私が見る限りでは負担の大きいように見えるが、原因としては植物が水分を多く含むことで、温度を戻してから阻害がわかりやすくなるのは、植物は低温時では活動を行わずに耐えているが、温度が戻ると再度活動しようとするため損失を受けた器官があらわになるのだろうかと考えた。植物はいろんな気候に耐えるため、丈夫な印象も受けるが、やはり休眠状態であるがゆえに耐えられるのであり、活動したままで気候条件が変化するとかなりもろいものであるという印象を受けた。今回低温阻害は系Iと系IIでは与える影響の度合いが違っていたのは意外だった。機能が違うため当然といえばそうだが、一方の系では比較的低温耐性に強い機構を持っているため、他方の系でも比較的似た機能を持っているため似た様な耐性を持つのかと早合点してしまっていた。今回私が選んだものは気候条件の変化に対しての影響に関わっているものだが、どちらも実験条件では不可逆的な変化をもたらすほどに重大であるらしく、改めて環境の与えるストレスが植物にとって重要であることを確認した。特に今回のテーマは植物の生育にとっても重要な光合成に関しての講義だったため、ストレスと生育について関係に関して勉強になった。

◎低温感受性植物の低温ストレスでの阻害は不可逆で,10℃付近を閾値として現れた.この反応は光合成中の系Iの阻害を主因として起こっていた.しかしながら,系Iの阻害自体は温度に影響せず,光反応により生成される還元作用が引き金になって起こることが示された.低温ストレスによりこの系Iの阻害を保護する機構が失活することにより低温感受性植物の様々な低温障害が観察されることが示された.本研究の結果より低温感受性農作物の冷害対策,例えば低温時に光を遮って光合成を止めるなどの簡易的な方法から,品種改良の方向性まで示されると考えられた.また,低温感受性/耐性に関わらず,系Iは同様の阻害活性を持ち,その保護機構に差があると考えられることから,本研究を遺伝的に解明していくことによって,発生学的にも温暖な地域で発生した植物が,様々な環境適応力を獲得していく道筋を解明していく一つの指標にできるのではないかと考えられた.さらに,系Iを保護する機構がスーパーオキシドの除去などであった場合,その物質又は機構を解明していくことで,医薬品等への応用の可能性も考えられた.

◎光合成系の安定性に重要な機構の一つとして光阻害がある。一般的には、過剰な光が照射されたときにPSIIが過剰に光励起され、PSIIの反応中心の中核部であるD1タンパク質が損傷を受けて活性を失うために生ずる現象と考えられている。しかし、低温という特殊な条件では傾向が異なり、光によって特にPSIの電子受容体であるFe-Sセンターが機能を失い、とりわけPSIの活性が失われるようである。このことは、PSIがPSIIに比べて低温に弱いことを示唆している。PSIおよびPSIIは共にチラコイド膜上に存在するが、両者は空間的に分離されている。PSIIは主にチラコイド膜の層積した部分(グラナラメラ)に存在し、PSIは層積のない部分に多く存在し、ストロマ側に突き出した構造をしている。つまり、PSIIが何重もの膜に保護されているのに対し、PSIはむき出しになっていると言える。このことが低温の影響の受けやすさに関係している可能性がある。PSIのFe-Sセンターは、直接的には光の存在下で生ずるハイドロキシラジカルによって破壊されるが、低温下ではFe-Sセンターの安定性が失われ、ハイドロキシラジカルに対する感受性が高まるのかもしれない。光阻害はPSIIの機能低下であるという多くの知見がある中で、低温においては全く逆の現象が起こるというのは、葉緑体内における両者の局在部位の違いにある可能性も考えられる。ところで、低温耐性に関して、植物は低温感受性植物(ex. キュウリ)と低温耐性植物 (ex. ホウレンソウ)に分類される。両者の大きな違いのひとつは、脂質二重層の構成成分である。つまり、前者のそれが飽和脂肪酸を多く含むのに対し、後者のそれは不飽和脂肪酸を多く含む。さらに、低温耐性植物は不飽和化酵素を持っている。このため、低温耐性植物は低温でも膜の流動性が失われにくく、膜に介在する酵素が失活しにくい。明反応関連酵素の多くは膜タンパク質であるため、低温耐性植物のそれら(ここでは特にFe-Sセンター)は低温でも機能が失われにくく、光合成能力が維持されると考えられる。不飽和化酵素遺伝子のsuppressionなどにより、低温耐性植物の不飽和脂肪酸含量を減少させたときに、低温によるPSIの活性阻害が起こりやすくなればおもしろい。

◎低温下においた低温感受性植物に光を当てると顕著な低温ストレスを呈する、ということですが、講義の最後ではPSIを保護するメカニズムが違っているのでは?というところで終了したと思います。In vitroでハイドロキシルラジカル消去剤によりPSI活性が保護されたという実験から活性酸素消去系、それもストロマに存在しているものが関わっていることはまず間違いないと思います。ストロマ画分(もしくはチラコイド膜についた複合体?後述)を単離した後、低温条件下でその活性が植物の低温・光耐性の有無により差が出るかという実験をすれば直接的な証明になると思うのですが・・・。また、アラビにEMS処理などでランダムに変異をいれ、低温・光処理後にクロロフィル蛍光でスクリーニングを行えば原因遺伝子の単離は可能なのでは? 低温処理後のPSIの分解が積極的であるという見解を述べられていましたが、低温耐性システムを持たずにそんな被害軽減?システムを保持しているという点に興味を覚えました。冷えることのない地方の植物では低温下光耐性システムが存在していなくてもまず問題が起きないという点は容易に想像できますが、それらの植物にもPSI分解系が保存されているとすればそれはおそらく別の経路でも使われている可能性が高いといえるのではないでしょうか。ラジカルによるストレス応答の一環であって、低温応答に限ったものではないように思えます。低温下の光傷害がPSI保護機構の活性低下に由来しているというのは間違いないようですが、保護機構の低温に対する活性の保持は、単なるタンパクの構造上の違いなのか、それともいろいろな要素が関わった複雑なメカニズムなのかという疑問があります。活性酸素消去系に関して知識がまったくないので想像でしかものをいえないのですが、鉄硫黄センターがハイドロキシルラジカルを産生して、それが鉄硫黄センターを破壊するとなると、単純に可溶性タンパクがストロマを漂っているだけでは効率的な捕捉が不可能なように思えます。ホウレンソウからチラコイド膜を単離すると、温度条件無視でPSIを破壊するという観察から一見ストロマ画分に活性がありそうに思えますが、チラコイド膜単離の条件でその装置が(またはその一部が)膜表面から解離することも考えられますので、膜上に存在しているモデルも除外できないと思います。もしそうであるとすると、低温による膜の相転位と関連するでしょう。ストロマに存在するものでも、膜の傷害によるpHやイオンの変化によって活性が低下する可能性が考えられます。しかしこれでは低温・暗黒処理後に影響が出ないことと矛盾します。なんであれ、葉緑体に存在するハイドロキシルラジカル分解酵素が関わっているのは確からしいので、アラビで葉緑体トランジットペプチドとハイドロキシルラジカル分解酵素のモチーフを持つものをデータベースから拾うなりホモロジー検索して釣るなりしたのち、低温感受性植物にそれを導入して低温・光耐性が得られるかを試験したり、免疫沈降などで複合体を釣ることが出来ると思います(もしあればの話ですが)。

A:実際にアラビのスクリーニングなどもやってみたのですが、はかばかしい結果が出ませんでした。その他の実験も、やりかけてはいるのですけど・・・

◎私は、植物の糖応答についての研究を行っているので低温度条件などの環境応答にはとても興味があります。講義では、細かな実験データなどを見せていただきとても勉強になりました。光化学系Iがこれまで低温度による阻害を受けないと考えられてきたのに対し、実際には、阻害を受けるということを明らかにされたということにとても驚きました。一般的に知られていたことでも、このように覆されることがあるのだからすべてを鵜呑みにしてはいけないと思いました。また、講義では活性がなくなった系Iが分解されるということでしたが、その後の系Iのゆるやかな回復はどのような機構で行われているのかとても興味がもたれました。

◎私は光阻害については全くの無知なのですが、先日の園池先生の集中講義を受講して興味を持ち、光化学系Iの光阻害に関する論文を読ませて頂きました。これまで光阻害については光化学系IIの不活性化が多く報告されていたようで、光化学系Iでの光阻害が1990年代半ばくらいまで報告されていないことは知りませんでした。今回の集中講義や論文から、低温4℃で弱い光を当てると、光化学系IIではほとんど阻害を受けていないのにも関わらず光化学系Iが特異的に阻害を受けることを学びました。私は植物の耐塩性に関する勉強をしています。沙漠や塩類集積土壌では土壌の水ポテンシャルが非常に低くその結果通常とは逆のエネルギー勾配が形成されてしまい、植物体内に水が流入しません。それに対抗(その環境に適応)するため、いつくかの植物では適合溶質と呼ばれる浸透圧調節物質を細胞質内に蓄積し、浸透圧をコントロールすることで劣悪環境でも生育します。この環境適応能力の研究は社会的にかなり大きな意味を持つのではないかと思い、日々勉強しています。それで私が考えた(ふと思った)ことは今回の低温感受性に関する研究が植物の環境適応に関してどのように利用できるのだろうか、この知見が実際の農業で考えた場合、どのように使えるのだろうかということです。(先生はすでに考えておられると思いますが、あまりにも的はずれな意見であったり、あまりにも事実と異なるような愚かな考えでしたら申し訳ありません。)まず光化学系Iが特異的に阻害を受ける「低温で弱光」というのが当てはまる自然界の条件を考えると、気候的に寒冷地帯の夜明け(朝日が昇り始める頃)だと低温かつ弱光という2つの現象が同時に起こっていると考えます。この条件で生育している植物(作物を含む)は集中講義や様々な文献でもあるように光合成系Iの構成タンパクが分解され、活性が低下する。光化学系I反応中心のリカバリーは光化学系IIより遅いため結果として、可視障害が進行する。例えば、寒冷地において低温耐性のない作物を栽培するとする。そこで通常通りに収量を獲得するためには、低温ストレスを避ける必要があり、その回避手段として(発想が貧困で申し訳ないんですが・・・)①低温という状況そのものを回避する。②光化学系Iの反応中心の回復速度を上げる。③光化学系Iの低温に対する保護能力を上げる。この3つが挙げられると考えます。
 ① 低温状況を回避するためには、ビニルハウスやマルチ様のビニルシートで各個体を覆うことで、植物付近の気温を少しでもあげる。また収量がそこまで損なわれず、栽培期間が比較的短日な品種を使用する。
 ② 光化学系IIの反応中心の回復速度を上げるために、間接的な手段とではなるが、循環型電子伝達系の回転速度を上げる。そうすることで、P700の酸化型を少しでも減らすことができ、結果として、通常の回復速度で傷害速度をカバーできることが出来る。循環型電子伝達の律速段階(どこかはわからないのですが・・・)またはATP合成反応の速度を挙げる。直接そのスピードを上げることができなくてもそれに付随する反応の速度を上げることで目的とする反応の速度を上げることは可能ではないかと思う。実際、H+−ATPaseを過剰反応させることで、それによって引き起こされる対向輸送の活性が向上する例もあることから、不可能とはいえないと思う。
 ③ 光化学系Iの保護システムはまだ未知であり、これを向上させることは現段階では難しいが、その防御システムが働かなくなることで酸素の1電子還元が起こり、O2−が発生し、フェントン反応を経て、FX、FA、FBを攻撃することで光化学系Iの光阻害が起こる。このことを考えると、光化学系Iを正常に機能させるための活性酸素消去系(APX、SOD等)が低温により活性が低下したのではないかと推測した。もしそうであるならば、低温による機能停止を阻害する必要がある。もしSODやAPXに温度センサー部位があるのであればそこのアミノ酸配列に変異を加えるとよい。(・・・ですが、酵素には温度センサー様のものが存在することがあるのでしょうか?あるトランスポーターではC末端のアミノ酸が浸透圧センサーという例はあるのですが・・・)また活性酸素そのものを発生させないために過剰な電子を奪う取り出してくれる物質が存在するのであれば(リンゴ酸バルブのような葉緑体外に還元剤を排出してくれる機構があれば)、その機能を向上させる。これらのことが出来るのであれば低温による光化学系Iの活性低下を防げるのではないかと推測します。

A:実際に農業的に問題になりそうなケースは、まさにその通りだと思います。回避手段としては、個人的には、冷え込む朝には、温度が10度くらいまで上がるまで黒いシートか何かで暗くしておくのが、一番かなあと。

◎このトピックでは、まず系Iの阻害に必要な条件として
・ 低温感受性植物
・ 低温
・ 光
・ 酸素
が提示されていて、さらなる詳細な実験で活性酸素種による阻害について説明されていた。今回私は、その活性酸素種による光阻害について考察してみることにした。このトピックの説明によると、系Iの働きの副産物としてスーパーオキサイドができ、いくつかの反応を経て、ハイドロキシラジカルが生成、鉄イオンセンターを破壊することによって阻害が起きるとあった。たしかに、その後のクロロフィルの減少や、過酸化水素による阻害のデータを見ても非常に話がつながっていて、説得力があった。しかし、もしも、活性酸素消去系の失活が原因で光阻害を引き起こしているのなら、他の器官でもなんらかの深刻な阻害が起きてもよいのではと思った。低温感受性についてはもともと興味を持っていて、このトピックは非常におもしろいと感じたので、いろいろ疑問点を持って少し調べてみることにする。

気孔の閉鎖による光阻害

◎雨によってRubiscoが減少する、なんてかなり驚きでした。それが気孔の閉鎖と関連しているのではないか、というお話でしたが、迅速な気孔の閉鎖はなぜ起こるのでしょうか。オジギソウは葉に物理的刺激を受けると、葉柄(?)の膨圧が急激に変化し、葉が閉じることが知られています。気孔の開閉は孔辺細胞の膨圧の変化に伴うものですよね。雨に濡れた直後に気孔が閉じてしまったことは、孔辺細胞の膨圧が減少したためだと思われますが、そのメカニズムはなんだろうと考えてみました。一つ目として考えられるのは物理的刺激です。霧吹きで水を与える実験条件でも多少の物理的刺激はあるでしょう。ただ、問題点としては、自然条件では風が吹いているわけで、これが物理的刺激になりうるわけですが、この程度の刺激でいちいち気孔が閉じてしまっては植物は生きていくのは難しいと思います。二つ目として考えられるのは、葉に付着した水がレンズの役割をして、クロロフィルに届く光の強度を変えているのではないかということです。ちょうど虫眼鏡が光を一点に集めるのと同じですね。仮にこの仮説が正しいとすると、光合成速度を決めるのは葉の濡れやすさの違いにより、レンズの焦点距離が変わってくることによるのかもしれません。ほとんど空想の世界ですが、ふとこんなことを考えてみたりしました。

◎雨ストレスと低二酸化炭素ストレスが光合成活性において同様の影響を与えることは推察が可能であり、実際の実験結果についても同様の影響を与えることが示唆されたわけであるが、異なる点もある、というところに興味を持った。雨処理ではルビスコの量自体が低下したのに対し、低二酸化炭素処理ではルビスコの活性化率が低下したという違いが生じたわけであるが、この違いはどこから生じたのか。講義で話があったようにリーチングによるイオン流出も原因のひとつとして考えられる。また低二酸化炭素処理は気孔が閉じた後の現象を再現していることを考えると、雨処理を開始してから気孔が閉じるまでの間の現象にその原因を探るヒントがあるかもしれないと考える。そもそも雨が降り始めると気孔が閉じるという現象が観察されていることを考えると雨が葉の表面を濡らし、水分が表面を伝って気孔から入るということが植物にとっては避けたい事態であるということが予想され、そのことが今回の雨処理と低酸化炭素処理との違いにつながっているのではないのだろうか。そうすると気孔から水が葉の中に入ってくることが植物にとってどのようなよくない影響を与えるのかという疑問が生じる。これについては推測の域を出ないが、気孔から流入した水が体内でルビスコの合成を阻害するような物質に変換されるとか、水自体は変化をしないがシグナルとなってルビスコの阻害物質を作り出すというようなことも考えられる。そしてこのストレス応答には光の存在が必要であることをあわせると、光はこの阻害物質の合成を促進したり活性を高めるように働いているのかもしれない。

◎私が先生の講義の中で最も興味を持って聞けた話は植物における気孔の役割の中で話された雨によるストレスの話です。この実験では葉の濡れだけに違いを起こしその他の物理的刺激、根への水分補給、葉温の低下、湿度の上昇、日照りの低下を同一にしました。その結果、霧吹きによるストレスを12時間与えた植物体ではルビスコの量が半減しているということでした。私はこのような条件設定の他に自然条件下で考えられる風や土に住む微生物による影響もまたこの実験系に組み合わせたらおもしろいだろうなと思いました。先生は水を雨として用いたとおっしゃいましたが、実際の雨の成分を調べそれに近いものを霧吹きによって植物にかけたり、その強さを変えたらのならば、またおもしろい実験になるのではないかと思いました。また、先生の研究室では葉の濡れやすさと光合成の関連を調べておられましたが、サボテンのような植物ではどのようになるのかと疑問を持ちました。我々は植物に水をあげるのはたいてい天気の良い日であり、これが植物に対してはストレスを与えているのだとは考えもしませんでした。

◎本集中講義で最も面白いと感じたテーマは、気孔の閉鎖による光阻害、特に雨の植物に対する影響です。私の所属する研究室では、植物の環境ストレスを、特に形態的な視点から見る研究がさかんであり、雨を受けた時の、植物の葉の表と裏側を、形態学的に見てみたいと思いました。葉の濡れによる気孔の閉鎖は、そもそも何を感知して起こるのであろうか疑問に思いました。1日目の講義の最後の方にも出てきたように、滝の傍に生息している植物では雨処理によるルビスコ活性の低下は少ないだろうと示唆されていましたが、では、砂漠等雨がほとんど降らない地域に生息する植物だったら雨処理による影響はどのようになるか、など、今後もまだまだ研究を広げられるテーマであると感じました。また、雨処理を、葉の表面だけに処理した時と、葉の裏面にだけ処理した時では、また光合成活性が異なるのかと思いました。自然界では、通常、ごく弱い雨ならば葉の表面だけ濡れるということはありえても、葉の裏面だけ濡れて表は濡れないというのはあまり考えられないことです。そのような自然界にはなかなか起こりえない処理を与えると、思わぬ結果が得られるかも知れません。また、雨処理から少し外れた話になってしまいますが、実際に畑で作物を栽培している間に、例えば洪水が起こって、畑が水没してしまったときに、長時間水没してしまった葉は死んでしまいますが、短期的な水没であれば、水が引けば生き残る可能性は充分にあります。水没後何時間までなら、生き残れる程度の光合成活性があり、何時間以上経つと、光合成活性がなくなって死んでしまうのかを調べれば、冠水した時何時間までに排水すれば作物収量の低下を防げるか?ということにつながるのではないかと考えました。

◎今回の集中講義で特に興味を持ったのは、その6の内容のひとつである、雨が植物に対して与える影響についての話だった。気候の変化は外界に暮らす植物にとって重要な事は言うまでもないが、中でも水を活力源とする植物にとって最も注意すべき雨に対しての応答に関し実験をしたことが興味深い。気候条件を整えることが難しいという最もな理由のため、条件が濡れに限定されたのが残念だが、とても面白い話だった。今回、光条件を考慮せず実験したためにルビスコに異常が出る結果となったが、植物が経験したことの無い環境に置かれるとすぐさま異常を示したことについては関心が持てた。異常の内容が光合成活性の減少であることからも、かなりのストレスがかかっているように思える。やはり濡れに対して解析するとなると、葉の大きさや形状、表面に生える毛や、植物の分泌物質などが耐性に関係するのだろう。どういった特徴を持っていると濡れに対して抵抗性が高くなるかは興味深い。特に日本は四季の変化があり、梅雨という雨の多い季節もあるため、比較的環境の変化とそれに対する植物の反応を研究するには適しているだろう。できれば雨以外の気候の変化についての報告に関しても知りたいと思った。

◎雨の植物に対する影響を葉の濡れに注目して行っている実験において、雨によりRubisco活性が半減、さらにRubisco量自体が減っているという結果に対して、面白いと感じました。雨は身近な気象現象の一つなので、実験の趣旨はよくわかると思いますし、疑問に思うところだと思いました。しかし、実際には実験しにくいのではないかとも感じました。私はエンドウからプラスチドを得て、そこに局在しているタンパク質を解析しているのですが、通常の光条件下の時と暗所で育てた時とでは、そこに存在しているタンパク質の量も物もかなり違った様相を示しています。特に、講義の中でも出てきましたが、可溶性タンパク質の約50%を締めるRubiscoが、暗所下で育てたものでは目で完全にRubiscoだと同定できません。私の実験は始めから、光に焦点を当ててRubiscoの存在をなるべく少なくしたいため(目的がRubiscoではないため)、暗所下で育てたエンドウを利用しています。雨条件下における植物への影響も、最終的には光条件の違いで光合成が変化することから、光の要因も原因として考えられるという結果でした。どのような状況でもRubiscoが光の影響を受けていて、その影響力は大きいことが自分の実験を含めてよくわかりました。雨の強さを強くした時(雨の当たり具合の程度)、そして、実験を行う植物体を変えた時にRubiscoの活性と量は減少するのかどうかがまた面白いところだと思いました。もし、植物体でRubiscoの活性と量が変化するのなら、一概には断定できないとは思いますが、より光合成が活発な植物とそうではない植物が存在するような気がします。

◎気孔の開閉に青色光受容体が関与している。そして、結局のところ葉の濡れによるRubisco活性の著しい低下という光合成障害は一種の光阻害に過ぎないとするのならば、水分自体の影響は無いというような印象を受けました。しかしながら、もしかしたら私の記憶違いかもしれませんが、気孔は例えば人の指などが触れることによっても閉じてしまったはずです。そうであるとするならば、物理的な刺激を考慮しないわけにはいかないと思います。葉の濡れやすさというのも、物理的刺激の受けやすさと考えることができるのではないでしょうか?そう仮定するのならば、気孔は主に葉の裏側に配置されているので、植物体の中心(主茎)に対する葉の角度も影響してくると思います。それは例えばイネなどでは多くの葉が効率的に光を受けられるように茎に対して葉の角度が小さめ、すなわちなるべく上へ向かうようになるように改良されてきています。それとは逆にスイカやタンポポなどの葉は地面と平行に伸長していきます。空から雨が降ってきた場合、葉が横向きであるものの方が気孔は降雨による影響が少なくなるのではないでしょうか。

◎葉の濡れによる気孔の挙動と光合成に対する影響を検討された.研究当初の目的と異なった結果が得られていたが,実験方法の組み立て等,大変興味深かった.特に瞬間的な気孔の挙動を評価するための顕微鏡試料用のレプリカ作成法などは,他分野の研究においても応用が出来そうで覚えておきたい手法であった.葉の濡れによる気孔の瞬間的な閉鎖は観察されたものの,光合成阻害に対する影響は主に日照量に左右されるという結論であった.特にRubisco量は積算日照量が多い条件で長時間葉が濡れた状態が続くことによって減少することが説明された.本研究では,Rubisco量の減少は積算日照量との関係で説明されており,通常の自然環境では起こりにくい環境要因となっていることが示されたが,都会の植生等でマンションの玄関先など夜間に長時間ライトアップされているような環境では,雨チャンバ擬似の環境が起こりえるのではないかと考えられ,そういった環境での植物に対する影響について興味を持った.特に,人工光での影響が小さかった場合には太陽光との波長の違いによる影響が示唆され,特定波長の光の影響という点も検討できるのではないかと考えられた.逆に同様の影響が観察される場合には,文化施設等の夜間ライトアップが植生に与える影響等についての注意が必要になることが考えられた.また,初春の雪山など日照は多くても一日中濡れているという環境は起こりえると思われたが,このような環境中で生育する植物のRubisco量変化についても興味深いと思われた.特に常緑樹及び落葉樹の間で同様の現象が現れるのか又は完全に異なった減少を示すのかという点について葉の濡れ易さ以外の要因についても検討できるのではないかと考えられた.

◎葉を濡らしたり、低二酸化炭素ストレスを与えると、Rubisco活性の減少や電子伝達の阻害が見られる。前者の現象は、これらのストレスによって生じる光呼吸に起因すると考えられる。つまり、葉内の二酸化炭素濃度が低くなるために、Rubiscoがリブロース-1,5-二リン酸のオキシゲナーゼ反応を優先的に触媒するようになり、Rubiscoのカルボキシラーゼとしての活性(μmolCO2 mg-1 Chl h-1)が減少すると考えられる。一方、電子伝達阻害の直接的な原因は予想し難い。機能阻害の候補としてはハイドロキシラジカルなどが考えられるが、PSIが破壊されていないことから、それでは説明がつかない。ただ、暗反応が進行しない状態で明反応が進行すると過剰還元状態となるため、電子伝達の阻害は大きな意味を持つと思われる。低二酸化炭素状態において(例えば晴れた日の昼)、電子伝達阻害は明反応と暗反応のバランスを保つメカニズムの一つなのかもしれない。雨処理では、さらにRubiscoの量が減少している。低二酸化炭素ストレスと唯一異なるのは、気孔の開閉であると考えられる。しかし、このことは大きな意味を持つ。つまり、「外界との連絡口」が絶たれるために、二酸化炭素や酸素の出入りおよび蒸散が阻害されることになる。このことがRubiscoの分解という現象を導いているのかもしれない。植物体を低二酸化炭素処理し、さらにCCCPを処理して気孔を閉じさせたときに、雨処理と同じ現象が見られれば、気孔の閉塞とRubiscoの減少が関係していることが裏付けられる。

◎葉をぬらしっぱなしにした条件で、光によりRubisco量が半減するということは、植物にとってその条件がとんでもない悪環境であるということでしょうか。低二酸化炭素条件によりRubiscoの活性が減る、という現象は光呼吸を抑えるためかと想像できるのですが、あれだけ量の多いタンパクが半分になるとすると、二酸化炭素が少ないことのほかに水がどんな影響を与えているのか興味をそそられます。根の組織を多量に調製するためにアラビを液体培地中で攪拌しながら培養することがありますが、やはりまっとうな状態ではないのか、と、ふと頭に浮かびました。常に水に浸かっている水草などにはさすがにそのストレスはないと思われるので、それらとの比較が現象の解明に役に立つかと思われます。滝の周辺にのみ生えているシダの話から葉の層の構造に起因している、というようなことを聞きましたが、海中に生えている昆布などは食べた感じではかなり分厚いような気がしますので、かれらの場合どうなっているのかという点に疑問があります。もちろん分類学上陸上植物や水草とはかけ離れていますし、届く、またキャッチする光の強度・波長も異なるので単純な比較は出来ないと思いますが・・・。陸上植物はもともと水環境から進出してきた経緯をもち、乾燥した環境への適応の代償として水環境への不適応を起こしたと捉えることができそうですが、熱帯の植物では雨季に水没するものもいるはずです。実際にホームセンターの熱帯魚コーナーで観葉植物のドラセナの仲間が水槽の中にいれられて水草と一緒に売られていたのをみたことがあります(その状態で生長していくのかは知りませんけど)。それら水没状態の植物のRubisco、電子伝達のレベルが実際に下がっているか、それともなんらかのシステムで保護されているか調べてみるとよいと思います。といいますのもRubiscoの量がストレスによって阻害を受けたと捉えがちですが、常に水に浸っている植物群でもその程度のRubiscoの量および電子伝達系の割合が適当であるという可能性があるのではないでしょうか?水草や水没植物について陸上植物と比べてRubiscoの量や光合成系がどうなっているか、比較したデータが必要かと思われます。ついでですが、夏の昼間に水をやると、レンズ効果で葉焼けするので水遣りは朝と夕方にする、ということを何かの本でみたことがあり、ネットで検索をかけてもやはりヒットしました。特に実験系に影響を与えるようなことはありませんでしたか?水滴でなければ問題はないと思いますが・・・。

◎このお話は大変興味深いものでした。なにより驚いたのはこの研究を行われた先輩がこの実験用の人工気象気をご自分で作られたことです。本当に発想というのが大事なんだなと実感させられました。雨粒を保持しやすい葉っぱでは光阻害の影響が大きいというのはやはり雨粒はレンズのような役割をしてしまうからでしょうか?そうであるならば、雨の影響というものは、雹、あられ、通常の雨で葉構造破壊がない、もしくは同等の条件だとするとこれら3種の雨での光阻害の影響はかなり異なるのでないかと思いました。ふと思ったのですが、葉っぱに水がよく貯まるサトイモは葉が非常に分厚いですが、これは光阻害を受けやすいがためにあのような分厚い構造をとったというのは考えられるのでしょうか?そう考えると、「雨」という要因の研究というのは非常に面白い研究題目であると実感しました。

◎このトピックもユニークな内容だったので、注目してみた。講義で同じような内容の論文が既に出されていたことを聞いたときはやっぱり世の中は広いと一人で痛感してしまった。このトピックで気になったことは「雨処理=低二酸化炭素濃度処理+α」のαは何なのか?何故このαが生じるのかである。また、何故一見異なる2つの処理が似たような結果をもたらしているかである。まず、何故雨処理によって低二酸化炭素濃度処理時と似た結果になるのか。自分の考えでは①植物は濡れると自発的に気孔を閉じる。②水分が二酸化炭素吸収③水分が植物の持っている熱を奪い→低温障害の3点から考えた。似たような結果になるのは①+②でだいたい納得でき、ルビスコの活性が低下したのは光阻害の時同様に③のような作用によって起きてればおもしろいなということで考えてみた。

◎この講義のトピックスの中で私が興味を持ったものは、6.気孔の閉鎖による光阻害の中の葉の濡れによる気孔と光合成の変化です。葉が数時間水に濡れると光合成活性が低下し、24時間濡れると再び乾燥しても不可逆的な光合成活性の低下が起こることについて考察します。2時間の濡れで光合成活性の低下が起こることに関しては、講義の中で登場したpmgA変異体を思い浮かべました。つまり、雨が2時間降り続けるというのは、1年の中で往々にしてあり得る事態であり、働きすぎることなく、適度な休息をもたらしているのではないかと考えました。長日植物であるシロイヌナズナが自然界で生育する環境は定期的に降水があり、葉の濡れによって光合成が抑制されても次にやってくる葉の濡れていないときまでは蓄えてある有機物によって十分生きていけるはずです。濡れ処理をする際の、天気がよいとき、つまり、光が適度に存在するときに、光合成活性が低下するというデータから、明反応と炭素同化反応の2段階にわけて考えると、明反応特異的に葉が濡れると光合成活性が低下すると考えることもできます。しかし、電子伝達が低下しているだけでなくルビスコの量も半減していることから、葉の濡れは明反応を特異的に阻害するわけではないといえます。もしくは、明反応である電子伝達が阻害されることによってNADPHなどの基質を介ウない影響が起こり、ルビスコが分解されるという結果になったのではないでしょうか。

ゲノムワイドな遺伝子機能解析

◎クロロフィルの蛍光挙動から遺伝子の機能を推定するという方法は、機能未知な遺伝子の機能を簡便に推測できるようになるかもしれない、かなりの可能性を秘めた方法であると感じた。講義では、この方法の問題点として、動物は光合成をしないこと、高等植物にも応用できないかもしれないことが挙げられたが、シアノバクテリアに特化した方法としても、おそらく他の方法よりも簡便に遺伝型と表現系を関連づけられることは、この方法の優れているところであると思った。蛍光挙動と機能を結び付けるには、やはりデータの充実が最初の課題であると思われる。網羅的な変異株を作製することができたら、そのデータ量は飛躍的に向上すると思うが、作製することができないとしたら、図1(ここでは省略)のように破壊遺伝子が決定されている変異株で、様々な条件下での蛍光挙動を観察し、それをデータベースにまとめるのもひとつの戦略ではないだろうか。

◎近年の急速な技術革新により様々な生物のゲノム配列が決定されてきた。私が扱っているモデル植物のシロイヌナズナでも2000年に全ゲノム解析が終了している。これによりT-DNAタグラインの整備やマイクロアレイ解析といったゲノム配列データをりようした種々の遺伝子機能解析ツールが整ってきた。ゲノム解析はこれまでの遺伝学的アプローチを補完するとともに、新たな機能解析ツールを利用した逆遺伝学というアプローチを生み出し、生命現象を分子レベルから明らかにする上で大きな役割を果たしたといえる。こうして遺伝子の機能解析の方法に「配列の類似性による解析」が加わった。ホモロジ−検索により既知の遺伝子との相同性を検証することで、表現型の解析や生理学的アプローチに重要なヒントが得られる場合もある。園池氏の研究でも、ランダムに破壊株を作製し、その蛍光挙動によって表現型を観察するという従来の遺伝学的手法に、ORFによるグループ分けをかぶせると、蛍光によるグループ分けが遺伝子の機能を反映しているというデータが出ていて興味深い。ゲノム解析が終了した生物を研究する上で、表現型と塩基配列の関連性、あるいは発現様式・挙動と塩基配列の関連性の重要性が今後ますます高まってくるであろう。園池氏の試みておられる蛍光挙動による破壊株の表現型のクラスタリングのような遺伝子変異株の表現型のゲノムワイドな解析システムの構築や、マイクロアレイを用いた遺伝子発現量の網羅的解析による発現様式の収集・整理が進むことがゲノムワイドに遺伝子機能解析を行う研究者にとって期待されている。

◎現段階での結論としては、高等植物ではほぼ適用するのは難しいということでしたが、シアノバクテリアにおいてはある程度の蛍光の違いを見出すことができるということにとても驚きました。高等植物においては核ゲノム上のいくつかの遺伝子が葉緑体の発達や機能に影響を与えるということは知っていましたが、今回の場合、光合成とは関係のない遺伝子を壊すことによっても蛍光に変化が見られました。これは葉緑体自身が独立して周りの環境、変化に応答しているということになるのでしょうか。このことも元を正せば葉緑体が全く別の生物だったことに由来しているのかと思います。高等植物はシアノバクテリアよりもさらに複雑に進化を重ねているため、この方法を用いて変異遺伝子の機能を特定するのは難しいのかもしれませんが、葉緑体が周りの変化を感知して、何らかの対応を取っているという点で、講義にあった光阻害による光化学系の量比調節機構やステート変化、低温感受性などの環境応答と何らかの関係があるような気がします。現在あまりわかっていない核と葉緑体、あるいはミトコンドリアと葉緑体などの相互作用を解明していく上で一つの鍵になるのではないかと思いました。

◎私は現在修士論文のテーマとして、イネ胚発生を制御する遺伝子の解析をしてします。そのためゲノムに関連したトピックが一番身近に感じられました。特に私はトランスポゾンを用いて作られた、ランダムな変異の中から目的部位で変異をもつものを探し、トランスポゾン近傍の遺伝子を決定するという手法を用いています。普段、自分の研究のことにしか感心がないのですが、同じ手法を用いて違う分野でも実験が行われていることが、なぜか意外に思えました。研究を行ってくうちに視野が狭くなっていってるのかもしれません。しかし、生物学の進展のために今後、こういったゲノムワイドな研究が進み、すべての生物の仕組みが明らかになっていくことに期待しています。

◎ゲノムワイドな、遺伝子の発現解析は既に行なわれていますが、そこからゲノムワイドな遺伝子機能解析に発想をシフトしたことが一番の驚きであり、印象に残っています。光合成遺伝子の解析に使われてきた蛍光CCDカメラを、非光合成遺伝子の解析にも応用するところが一番の課題であり、研究の重要な位置を占めていると思います。現在は細胞内小器官を持たないシアノバクテリアで解析されているとの事ですが、他の生物にもなんとか応用できないかなあと考えます。この鍵をにぎるポイントは遺伝子破壊によってなぜ蛍光挙動が変化するのかをつかむ所だと思います。僕自身の頭の中での空想(希望?)にすぎないかもしれませんが、葉緑体を持つ高等植物でもこのモデルが適用できるようになるといいなあと願っています。(遺伝子の機能を解析するにあたって、検討付けになるツール、解析を助けるツールは多い方がよいに決まっていると思っているので。)

◎いくつかの生物のゲノム解析が進み、マイクロアレイによってある程度の遺伝子発現解析がなされるようになってはいるけれども、それぞれの遺伝子の機能についてはまだまだ簡単には決定されないのだと感じました。講義で紹介されていたトランスポゾンを用いた解析は、シアノバクテリアの光合成系に関する遺伝子の選抜にはとても有用な実験だと感じました。また、シアノバクテリア中の半分以上の遺伝子が光合成系に影響しているということはとても驚きました。この機能欠損型のスクリーニング法について疑問に思ったことは、変異部位が決定されていない変異株が4割近くあるということでしたが、変異部位が決定されていないのは、どういった原因が考えられるのでしょうか?また、このクロロフィル蛍光を用いたスクリーニングを行う際に、機能獲得型でなく機能欠損型の方法を選んだのはなぜなのだろうと思いました。