植物生理学II 第9回講義

光呼吸とC4光合成

第9回の講義では、光呼吸によるエネルギーと還元力の損失と、それを回避するC4光合成の仕組みについて解説し、CAM型光合成についても触れました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の講義において、C4植物はその空間的な分化によってCO2の濃縮機構が成立し、高温・乾燥・強光条件下で有利である、ということを学習した。しかし、私たちの身の回りはC3植物ばかり見受けられる。以下はこの理由について考察する。ここで、生態学Ⅰで学習したグライムのCSR戦略の話を思い出した。CSR戦略については、植物が成功して生き抜く上で、C型、S型、R型という3つの生き方がある」としたもので、「C型は「コンペティティブ(競争型)」で、競争に強いタイプ、S型は「ストレストレラント(ストレス耐性型)」である。競争型の生えることのできないような過酷な環境に適応する、このどちらでもないのが、R型「ルデラル(攪乱耐性型)」とのことである(参考1)。つまり、C4植物はストレス耐性戦略を採用しているため、高温・乾燥という生育場所の厳しさによって光をめぐる激しい競争を回避している、といえるのではないだろうか。従って、私たちの身の回りの環境においては競争戦略をとるC3植物に対してC4植物は分が悪いことが原因の一つであると考えた。
参考文献1:雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方 小さく、速く、多様に. TOPPOINT. トップページ>TOPPOINTライブラリー>雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方 小さく、速く、多様に、しなやかに、https://www.toppoint.jp/library/20130308#:~:text=%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%85%8B%E5%AD

A:他の講義で得た知識を活用している点は評価できます。一般的にストレス耐性型は生育が遅いので、むしろ、今回紹介した話の中ではCAM植物が該当するように思います。C4植物は高温乾燥条件で非常に生育が速いので、むしろ特定の条件に特化した競争型と解釈すべきかもしれません。


Q:今回の授業ではC3植物とC4植物について学んだ。そこで一般にC4植物はC3植物の植物が進化した姿と言われているが、なぜ植物の長い歴史の中で、いまだにC3植物が世の中の植物の大部分を占めているのか疑問に思った。まず考えられるのはC3植物よりも、C4植物の方が構造系として複雑であるため、その複雑性から生じるC4植物への進化の難解性とエネルギーの消費量の増加の面で、C3植物からC4植物への進化は案外難しいことなのではないかと考えた。しかし現日本の多少地域によっての違いはあるものの、C3植物とC4植物が混在した現在の環境を考えると、C4植物でも十分に生きていくことのできるのだと考えられることから、C3植物が植物の大部分を占めているのは、進化の難解さの他にも理由があるのではと考えた。次に単純に現在の世界の環境においては、C3植物の方がメリットになる状況が多いため、C3植物が多くを占めているのではと考えた。しかしこのことからは、C4植物がなぜ存在しているのかという点において、少し疑問が残ると考えた。最後に以上の疑問を解消する理由として、C3植物とC4植物で生存に適した時期や季節の違いがあるために、C3植物とC4植物が混在した環境となっているのではと考えた。つまりC3植物とC4植物とでは成長に適した時期が異なり、C4植物はその中でも植物の大部分を占めるC3植物とで発育に適した環境をズラすことによって、C3植物との発育の競争において有利に立ち回れるなように進化したのではと考えたのである。ここまで考えた中で、この考えを裏付けるような実験としては、C3植物とC4植物で適した環境、時期が本当に違うのかや、その違いにC4植物への変化が関わっているのかを調べる必要があると考えた。

A:これは、一般的には、悪いレポートではないのですが、実際には、まさにここで論じられているポイントを講義の中で懇切丁寧に説明しました。講義を聞いてレポートを書くようにしてください。


Q:今回の講義では、C3植物とC4植物で住み分けが存在する理由について、光強度や温度、土壌の水分といったようの条件が関与していることを学んだ。その中でも温度による条件に関しては他の2つの因子とは異なりいくつかの説があるらしいので温度との関係性について考えてみた。温度と光合成量の関係は一般的に温度が上昇すると光合成の量もそれに伴って増える。C4植物はC4回路を回すためにはC3植物のそれよりも多くのATPを使用する。そのため光合成量の多い方がC4回路を回すのには有利であるはずであり、即ちC4植物が有利になる条件である高温条件と強光条件は密接に関わっていると考えられる。また、C4植物は低温下だと光合成の量が減りそれに伴ってATP消費量が減少するため、不利になると考えられる。しかし温度が上がれば光合成量も上がることにも限度があり、温度が上がりすぎると逆に光合成量が減ってしまう。この温度が高すぎると光合成の量が減少してしまう理由がATPの消費量が原因であるのか光呼吸によるものかあるいはその他の原因があるのか、で「高温下でC4植物が有利になる」という条件が説明できるかできないかが変わってくるはずである。それらを調べるには例えばC3からC4へシフトする温度と光合成の量が最も多くなる環境温度との関係を調べたらいいのではないかと考えた。

A:考察の流れはよいと思います。最後の部分がロジックとしては一番面白そうなところですが、やや説明不足ですね。行間を読ませずに、論理展開を一つ一つ追って説明した方がよいでしょう。


Q:アイスプラントの話に興味を持ち調べていたところ、真水より食塩水を与えた方が生育が促進されるという内容の記事を複数見つけた。もともと植物は塩類を含む水をやると枯れてしまうので、積極的に食塩水をあげたほうがよいというところに疑問を持った。食塩水を与えた方が良い理由を考察した。1つ目は水溶液の方が植物が取り込みやすいことである。植物は根から水だけではなく肥料に含まれるようなリン、カリウム、窒素などのイオンも溶けている。よってその分濃度が高めの水溶液が吸収しやすくなっていることが考えられる。2つ目は塩嚢細胞内を高塩濃度に保つメリットがあることである。塩嚢細胞はもともとトライコームであるため、そこに養分を蓄えており、それが高塩濃度状態でより良い活性を示す、もしくは機能を維持しやすくなることが考えられる。
参考文献;http://www.sodatekata-box.jp/content/9268、https://www.ikeda-green.com/iceplant.html

A:やや、雰囲気でレポートを書いている気がします。もう少し論理性が欲しいですね。まず、NaClが生育によいと考えているのか、悪いと考えているのかが判然としません。また、ナトリウムとカリウムと窒素の取込みは、同じメカニズムで起こると考えているのであれば、きちんとそのように書いた方がよいでしょう。「吸収しやすくなっていることが考えられる」という部分なども、なぜそのように考えたのかのロジックをきちんと書くようにしましょう。


Q:本講義では、C4植物について採り上げられた。C4植物の分布を示した表によれば、C4植物の割合は、双子葉植物で21 %(86属・~1600種)、単子葉植物で79 %(401属・~6000種)と、単子葉類が圧倒的に高い割合を占めていることが分かった。さらに、単子葉植物の中でも、イネ科の植物が61 %と、その大部分を占めることも特徴的だった。しかし、同じイネ科の植物である「イネ(稲)」は、C3植物であるとのことだった。なぜ、イネはC4植物ではなく、C3植物であるのか、私は疑問を抱いた。
 一般に、イネ科の植物は、草本(まれに木本)であり、そのほとんどが陸上で生育する(参考1)。陸上においては、乾燥や強光の恐れがある。このことから、イネ科の植物の大部分が、乾燥や強光に耐性があるC4植物として、生きているのではないかと考えた。イネ(稲)は、水田で栽培される水稲と畑で栽培される陸稲に分類される(参考2)。今回は、私たちの生活上なじみ深い水稲を例にとって、議論を進めていくことにする。イネ(水稲)は湿生植物であり、水が豊富に存在する場所で生育する。水分が十分に存在するということは、環境が乾燥状態になりにくいと言い換えることができる。また、イネ(水稲)は寒さに弱い植物で、最低気温17℃以上の気候が適しているとされている(参考3)。このことから、イネ(水稲)が生育する環境は、高温状態ではないと推測することができる。従って、イネがC3植物であるのは、生育環境が乾燥・強光・高温という状態になりにくいことから、C4植物でなくても生育可能であることが原因であると考察した。
 以上のことを踏まえると、同じイネ科の植物でも、生育環境が異なれば、C4植物であるとは限らないと分かる。また、この事実から、植物の進化において、元はC3植物が主流であり、環境の変化による生育の困難化が生じると、C4植物に進化する種も生じるようになったのではないかと考察する。これは、授業で先生が仰っていたC4植物が進化の過程で何度も発現されたのかもしれない(つまり選択圧が強かったのではないか)という仮説に関係する。
参考文献:1) 北村 四郎・村田 源・小山 鐵夫 著, 原色日本植物図鑑・草本編 Ⅲ, 保育社, 平成10年8月1日 改訂53刷発行, ISBN:4-586-30017-5, pp.303.、2) おいしいお米.com, “水稲栽培と陸稲栽培の違い”, 更新日:不明, 参照日:2023/06/24, https://www.rice88.com/page/water-or-land .、3) 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構, “Q&A 「お米」について”, 更新日:不明, 参照日:2023/06/24, https://www.hro.or.jp/list/agricultural/research/dounan/qanda/kome.htm#303 .

A:よく考えられていると思います。一点だけ、「寒さに弱い」のであれば高温の方がよさそうに思えます。17℃という温度が高いと思えなかったから「高温条件になりにくい」としているのだと思いますが、これは最低気温ですから、最高気温はわかりませんよね。その点だけが少し引っ掛かりました。


Q:今回の講義ではC4植物とCAM植物についての話があった。C4植物について、単子葉類と双子葉類のどちらにもまたがって存在するが、イネ科やキク科など草本が多いという印象があった。実際に調べると、樹木にはC4植物が少なく、ステップやサバンナでの低木はC4回路を持つものがあるものの、林床での生育を避けては通れない湿潤な森林で、弱光に順応する樹木にとってC4回路を持つことは無駄なコストになるのだろうと考えた。しかし、C4植物のリストの中にも乾燥地帯ではない森林で生息する樹木として、ハワイにEuphorbiaという属に入るものがあり、中でもEuphorbia herbstiiなどは弱光の森林の下層で生育することができるという。この種はハワイのオアフ島の一部の森林にのみ生息するもので、砂漠起源のC4光合成植物が進化の結果湿潤な環境に根付いたといわれている。C4植物は強光・乾燥・高温に適応し代償として多くのエネルギーが要求されるが、この種の生息地域は強光・乾燥にさらされない環境にあり、さらにこの種は多くのコストを必要とする樹木になっている。元々のC4回路は砂漠に生息していた祖先が乾燥に適応することによって作られたと考えられるが、この生息地に唯一当てはまり、C4植物の利点が生かせる高温という条件は特に他の条件がなくなってもC4回路を持つことでかなり有利になる条件であると考えられる。樹木に進化した、ということは乾燥や強光に耐えるための仕組みを作る、という制約がなくなり、代わりに競争へと生存戦略を変えなければならないが、この生息地に関しては競争へと切り替えなければならず、かつC4回路と大木を同時に維持できるほどの栄養資源があるのではないか、と考えた.
参考文献:[1]C4 plants Party. "C4植物のきほん". 吉村泰幸. 2010-8-28. http://cse.naro.affrc.go.jp/yyoshi/basicinfo.html、[2]U.S. Fish & Wildlife Service. `Akoko (Euphorbia herbstii). ECOS Environmental Conservation Online System. https://ecos.fws.gov/ecp/species/Q3GN

A:これもよく考えられていると思います。ただ、最後の「栄養資源」というのが、何を指しているのかがよくわかりません。C4植物のコストがエネルギーであるとすれば、資源として必要なのは光になってしまいます。従属栄養生物になれば別ですが。