植物生理学II 第3回講義

藻類の進化

第3回の講義では、光合成細菌からシアノバクテリアを経て藻類や陸上植物の葉緑体へと、光合成が進化するようすについて解説しました。講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:なぜ一次共生が1度きりしか起こらなかったのかについて考察する。一次共生とは、原核生物と真核生物の共生によるオルガネラ化のことであるが、シアノバクテリアとの間にしか起こっていないことが分かっている。シアノバクテリアは原核生物の中で唯一酸素発生型光合成を行うことから一次共生には酸素が関係しているのではないかと考えた。真核生物は元々酸素を使うことはできなかったが、好気性細菌をとりこみそれがミトコンドリアになったとされている。好気性の真核生物にとってシアノバクテリアは、エネルギー源である酸素を体内で得られるようになる点から、利用価値の高い生物であると考えられる。一方で、酸素発生型光合成をおこなわない原核生物は、好気性の真核生物にとっては利用価値がない。共生するということは宿主が共生者の分まで代謝などの制御を行い、細胞内輸送などのプロセスが増えることであるので、基本的に宿主にとっては負担である。過去にシアノバクテリア以外の原核生物が真核生物内に取り込まれたことはあったかもしれないが、すぐに分解されてしまい、共生にいたらなかったのではないだろうか。

A:これは独創的な考え方で考え方で非常によいと思います。原核生物の中で、光合成細菌ではなく、なぜシアノバクテリアが共生したのかについて、面白い仮説を提出しています。ただ、これだけだと、シアノバクテリアの共生は何度も起こってもよいと思いますので、一度きりしか起こらない理由にはなっていないような気がしました。


Q:今回の講義では、光合成の起源について学んだ。その中で、プロクロロンと陸上植物が原核生物と真核生物という違いがあるにもかかわらず、同じ葉緑体色素を持つように収斂していったことに興味を持ったので、この収斂の意義について考察する。他の原核光合成生物がクロロフィルaとフィコビリンを持つのに対し、プロクロロンはクロロフィルaとクロロフィルbを持ち、これは陸上植物の基本的な光合成色素と同種類である。まず、クロロフィルbとフィコビリンの違いから考える。クロロフィルbの主な吸収波長は約460nm、フィコビリンは550nm~700nmである(2,3,4)。また、タンパク質に対してクロロフィルbは配位結合、フィコビリンは共有結合で結合しており、フィコビリンは結合がより強力である為、結合タンパク質の変性で共に壊れてしまう(1)。これらの事から、プロクロロンは比較的浅瀬または、結合タンパク質に危機が及びやすい環境での生育を選択したと思われる。しかし、浅瀬部分は光がよく届く為に他の光合成生物との競争率が激しく、細胞内のタンパク質に影響が出るような環境では生存は難しいと考えられる。この時、プロクロロンはホヤと細胞外共生かつ体内共生している事(5)、フィコビリンがクロロフィルが捉えられず、かつより水深の深い場所まで届く光を吸収できることから、プロクロロンはホヤとの共生によって安定して光を確保できるようになり、深度が深くなった際の備えよりもより効率の良い光合成を行うことが重要となり、フィコビリンではなくクロロフィルbを選択したと考えられる。
参考文献
(1)園池公毅 「光合成の森-光合成の教室-光合成色素」、(2)日本光合成学会 「光合成辞典-フィコビリン」、(3)日本光合成学会 「光合成辞典-クロロフィル類の吸収スペクトル」、(4)日本光合成学会 「光合成辞典-フィコビリタンパク質類の吸収スペクトル」、(5)広瀬裕一「群体性ホヤと藻類の共生とその進化」

A:全体としての考え方や論理の道筋はよいと思います。しいて言うと、論理展開はもう少し整理できるかな、と思います。例えば、最後の一文などは、短い文の中に因果関係がいくつも押し込まれています。よく理解した人にはこれでもわかりますが、あまり予備知識がない人には、この部分の論理は読み取れないでしょう。もう少し、個別の論理に分解して一つずつ説明するようにしたほうがよいでしょうね。


Q:植物はこの世に膨大な種類が存在している。一般的に生物は目、科、属と言った分類を行う。このように階層的に整理したものを分類系、または分類システムという。この分類には2つの役割がある。1つ目は生物の多様性が含んでいる膨大な情報を一冊の本にたとえると、分類系はその目次や索引のような役割をする。2つ目はさまざまなデータから推定された生物の系統関係を要約して言葉にしたものであり、多様性を研究するにあたっての枠組みを与えるという役割である。分類学という学問では新しい分類の方法が研究されているが、図鑑や教科書ではまだ古い分類の方法が使われている。そのメリットはなんなのか。古い分類基準の方が、少数の容易に判断できる特徴に基づいているため、実際に種類を調べるときに便利で教えるのが簡単である。また、新しい分類は研究の進歩とともに変わって行くためその度に改訂版が必要となってしまう。以上の点より今の図鑑は最新ではなく古い分類基準で書かれている。
参考文献:https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/9-1.html

A:視点が面白いですね。よいと思います。あと、生物の分類は、生物の進化の道筋の理解の助けになるという面があります。単にばらばらなものを分類するのではなく、その背後には系統関係があるはずであるという考え方が、生物の分類の大きな特徴だと思います。