植物生理学II 第9回講義

炭素同化の仕組み

第9回の講義では、最初に前回の続きとして酸素発生の四周期振動の話をしたのち、ルビスコを中心とする炭素同化について解説しました。。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:授業ではRuBisCOが元は硫黄同化活性をもっていたと考えられている、というお話がありました(文献1)。ここでは現存の陸上植物がなぜRuBisCOの硫黄同化を放棄したのか、ということについて葉とに分けて考察します。まず葉について、RuBisCOは硫黄同化をおこなわずとも、カルボキシラーゼ活性とオキシゲナーゼ活性が競合しています。そこに硫黄同化をおこなうRuBisCOも入っていると3つの反応が競合することになり、今以上に二酸化炭素の固定能力が低下します。光の当たる葉が光合成に特化し、硫黄の同化は各器官に任せた方が炭酸同化の邪魔にはなりませんから、葉のRuBisCOが硫黄同化活性をもたないのは不思議ではありません。次に根について、根のRuBisCOが硫黄同化をおこなった場合には、硫酸トランスポーターから体内に取り入れた無機硫酸イオンをシュートの器官に転流せずに直接システインに同化できるため一見すると効率が良いように思えます。しかし、考え方を変えると、根に硫黄のプールが集中することになりこれは植物体の寿命そのものを脅かしかねません。というのも陸上植物の寿命を考えるときの重要な1つの基準に、根からの細菌や菌類の進入に対してどの程度耐えうるか、というものがあります(文献2)。外敵の侵攻が根から起こった時、植物の生存に必須となる栄養素の1つである硫黄プールが侵入地点に近い根にあると、硫黄を失いやすくなった植物は確実に死期が近くなります。この場合も結局根のRuBisCOに硫黄同化を任せるよりも、植物体全体で分散させたほうが、一部の器官の機能が失われても、延命できる確率は上がるといえます。
参考文献:1. Hiroki Ashida et al. A Functional Link Between RuBisCO-like Protein of Bacillus and Photosynthetic RuBisCO. Science. 10 Oct 2003:Vol. 302, Issue 5643, pp. 286-290.、2. 舘野正樹「日本の樹木」, ちくま新書, pp.9.

A:発想は面白くてよいと思います。ただ、ロジックとしては、やや厳密性に欠けるように思いました。「RuBisCOが硫黄同化を放棄」というのが、「二酸化炭素固定活性と両立させようとすると活性を最適化できない」という意味だとすると、葉と根を分ける意味がありません。根で実際に二酸化炭素固定を行わない場合でも、タンパク質としては同一である必要があるならば、根でも同じ問題が生じます。一方で、根では二酸化炭素固定をしなくてもよいので、硫黄同化に特化したタンパク質に変えればよい、という意味だとすると、その変えたタンパク質を葉で使って悪い理由はないでしょう。。


Q:今回の授業でRubiscoのO2に対するCO2の反応性の比と最大活性の関係が水中の光合成生物と陸上の光合成生物では異なることを学習した。つまり水中では相対的にCO2が多くなるので選択性が低くてもよく、よりCO2を利用できるようにしたが、CO2が少ない地上では効率が低くなってでもCO2の選択性を高めたということである。この関係はCO2量が植物に影響を与えていることを示唆しており、同様に構造にも影響を与えていると考えられる。まず水中に生息する生物は基本的に構造が縦に細長いものが多く、地上では横に広がり、幅がある構造をした光合成生物を多く見かける。そのような理由としては主に水の抵抗を少なくするためや葉を広くすることで光を受けやすくするなどがある。現在の構造に至るまでの進化における選択圧の要因はいくつか存在するが、その中の主な要因としてCO2濃度が働いたと考える。すなわち水中の植物はCO2の多い環境で生活するためCO2量が選択圧となる可能性は低いが、地上ではCO2量が少なくなるので、選択圧によりCO2をより取り入れることができる表面積が広く、光合成と両立できる構造が優先された結果が現在の水中と陸上の構造の差異につながったと考えられる。またRubiscoの性質の変化は植物体の変化とともに、そのCO2量の環境下で最も有効であるものが選択されて進化してきたものであると考えられる、

A:考え方は悪くないと思いますが、ロジックが一本道になっていませんね。長い文章の際には、行きつ戻りつしながら少しずつ論理を進めることもありますが、このように短い文章の場合は、なるべく一つの方向に進めた方が要点のはっきりした文章になります。


Q:数週間の講義で光合成について扱われているが、今回、カルビンベンソン回路やルビスコについて扱った。ルビスコの炭素固定の能力は通常の酵素の0.3%であり、カルビンベンソン回路においても数多くの反応がおこることで1周するため、効率がいいとはいえない。あえて効率の悪い反応をしている理由として、反応の確実性をあげることが挙げられる。ルビスコは、通常の酵素が反応するミオグロビンなどよりも少し大きく、また酸素分子と似た二酸化炭素分子を相手にするため、間違いが生じやすいのではないかということと、効率の悪い反応は二酸化炭素を相手にできているかを確認できる反応なのではないかと考えた。検証するためには似たような反応を他の分子で行うことができるか実験する方法しかないと考えられる。

A:ルビスコが基質として二酸化炭素だけでなく酸素も使うことは話したと思いますから、この場合、検証してもまだ間違えるという話になってしまいます。そのあたりをもう少し説明する必要があるでしょう。


Q:今回の授業で、ルビスコは効率の悪い酵素であることを学んだ。効率が悪いのは、二酸化炭素と反応させたいにも関わらず酸素とも反応してしまうからだ。そこで私が疑問に思ったのは、ルビスコと酸素が反応することで植物はなにかメリットを受けることはできないかということだ。私が思いついたメリットは、強光下での酸素ラジカルの発生を抑えることができるのではないかということだ。光が十分にあると光合成速度が上がり、二酸化炭素の吸収速度も上がるので、周辺の大気中の二酸化炭素濃度が低下してしまう。また、乾燥を防ぐために気孔を閉じてしまう可能性がある。すると、ルビスコが二酸化炭素と結合しづらくなりカルビン・ベンソン回路が回らなくなってしまうことが考えられる。こうなってしまうと、クロロフィルが取り込んだ光エネルギーの行き場が無くなってしまい、酸素ラジカルの発生につながる。このとき、ルビスコが酸素と結合することによってラジカルの発生を抑えることができれば植物にとってメリットになる。ルビスコをこのように使うことができれば、効率の悪いルビスコを最大限効率よく使えることになると考えた。

A:光呼吸は、実際にそのような意味があると考えられるわけですが、逆にラジカルの発生を抑えるためなのであれば、ルビスコを酸素と反応させるよりももう少し直接的な方法があるように思います。なぜルビスコか、という点はもう少し考察の余地がありそうです。


Q:今回の授業で、閃光照射による酸素発生のグラフを見た。これはkokのOxgen Clockのように光によって光合成は1反応で、1電子を放出していふことを示していた。ここで、閃光照射のグラフを見ると、3回目に急激に上昇し、これが酸素発生の最大値となっていることがわかる。この後、光照射数を上げると発生酸素量は一定になる。このことから、3回目光照射し、その後暗くするという操作を繰り返した方が、常に光を照射し続けるよりも光合成効率が上がると考えた。しかし、暗くすればOxgen Clockがまた1番初めに戻るかどうかはわからない。もしかしたら、暗くした後、まえの光照射3回で進んだところから、Oxgen Clockが始まる可能性がある。従って、常に光照射し続けた場合と、3回目に閃光照射し、暗くするという操作を繰り返した場合とで植物の光合成効率をモニタリングする実験をしたいと思い考えた。

A:非常に面白い考え方だと思います。ただ、「3回目の光照射」を実現するためには、当然ながら1回目と2回目の光照射があるはずです。その2回ではほとんど酸素が出ませんから、3回を平均すると、結局連続して当てている時と変わらなくなりませんか?


Q:第9回の植物生理学IIでは、KokのOxygen Clockを習った。Oxygen Clockは光化学系II反応中心複合体の一部であるマンガンクラスターの酸化力の蓄積状態をS0からS4で仮定するものである。授業では、S2, S3状態を暗所に長く置くとS1状態に遷移するとのことだった。これはエネルギー状態が高いところから、エネルギーを放出しより安定な状態に遷移していると考えられる。しかし、それならばなぜS0状態まで戻らないのだろうか。私は化学的法則に従い、S1状態は長時間暗所におけばS0状態に戻ると考える。生物反応はすべて物理・化学的法則に従うためである。ただしS1状態からS0状態への遷移は、S2, S3状態がS1状態に遷移するのに比べ、極めて長い時間を要するものであると考えられる。そのため完全にS0状態に遷移するまで光を受けなければ植物自体が死んでしまう。よって、見かけ上はS1状態に終止しているように見えるが、実際にはわずかにS1→S0の反応も起きているだろう。

A:これも、よく考えていますね。S1からS0への遷移の速度を測定した人がこれまでいたのかどうか把握していませんが、非常に面白い考え方だと思います。


Q:ルビスコの炭酸同化の効率が悪いのは、ルビスコが二酸化炭素だけでなく酸素とも結合しうるからではないだろうか。そこで、なぜルビスコが酸素とも結合できるのかということを考えた。ルビスコは二酸化炭素濃度が高いとき通常通り炭酸同化を行う。しかし、二酸化炭素濃度が低いときは酸素と結合して二酸化炭素を生成し、炭酸同化作用を阻害してしまう、光呼吸を行う。この光呼吸は、活性酸素の発生を抑えたり、カルビン・ベンソン回路で発生した過剰な還元力を消費したりするのに役立つ。さらに、乾燥して気孔が閉じている場合など、葉の周辺の二酸化炭素濃度が低いとき、光呼吸を行うことで二酸化炭素を発生させて、それをカルビン・ベンソン回路を回すのに使うことができる。
参考:尾張部克志・神谷律(2014)『ベーシックマスター細胞生物学』オーム社

A:考察として悪いわけではないのですが、この講義で重視する、「自分なりの独自の論理」という点では、やや弱いように思いました。サイエンスで重要なのは他の人が思いつかないようなアイデアです。


Q:今回の授業においてチオレドキシンによる酵素活性化制御について取り扱った。これは還元型フェレドキシンを介してチオレドキシンを還元し、この還元型の物質が不活性型(−S-S-)酵素を還元し、活性型(−SH HS-)酵素に変化させる。しかし、なぜ、チオレドキシンを介して酵素を活性化させなくてはいけないのだろうか、フェレドキシンから直接酵素を活性化できないのだろうかと感じた。フェレドキシンは光化学系Ⅰに存在し、シトクロムb6/f複合体から渡された電子により還元される。しかし、このフェレドキシンはチラコイド膜内に存在し、直接酵素を活性化させることが難しい。そのためストロマ中に存在するチオレドキシンを還元させることで、還元力を酵素まで輸送することができると考えられる。

A:面白いところに目をつけました。ただ、フェレドキシンはチラコイド膜内ではなくストロマ中に存在します。実際に重要なのは酸化還元反応の際に授受される電子の数です。フェレドキシンは1電子還元ですが、チオレドキシンは2電子還元です。図に小さく書いてあったと思うのですが、チオレドキシンを還元するにはフェレドキシンが2分子必要です。そして、1つのS-S結合を還元するには2電子が必要なので、フェレドキシンではなく、チオレドキシンの方が使いやすいのでしょう。


Q:今回の講義ではRubisco並びに枯草菌RLPが印象に残った。二酸化炭素固定に特化したルビスコはかなり効率が悪い酵素であり、地球上では一番多い蛋白質である(ものすごく稼働が遅いため、多く持つ必要がある)。だが光合成をしない枯草菌にもRubiscoと似たRubisco-like proteinを持つらしく、硫黄代謝に働く。RLPを破壊した枯草菌は生育が難しいがRubisco遺伝子を導入すると生育能を取り戻したため、RLPはRubiscoの先祖と考えられるようだ。枯草菌とは自然界に普遍的に存在し、土壌、空気中に飛散している常在細菌であり枯れた葉の表面などからも分離されることが多い。電子供与体として硫化水素などの緑色硫黄細菌には硫黄代謝に働く枯草菌RLPとの構成するアミノ酸などの関係性がないのか疑問に思った。

A:前半は講義の繰り返しですし、後半はオープンクエスチョンになっていて、この講義のレポートの採点基準によれば評価されないレポートです。


Q:今回の授業ではカルビン・ベンソン回路について学んだ。二酸化炭素を固定して回路内に引き入れる際にルビスコという酵素が作用するが、この反応速度がとにかく遅いことで知られている。通常の酵素だと、1000~10000回/秒の回転率だそうだが、このルビスコでは3回/秒の回転率であるという。何故に植物はこれほど作用効率の悪い酵素を使い続けているのか、疑問に思った。地上で最も多く存在する酵素であり、植物はこのルビスコを大量に合成することで回転率の悪さを補っている。また、ルビスコには「特異性がない」(1)ために、「酸素分子が本来二酸化炭素の結合する部位へ結合」(2)してしまい、「ルビスコは酸素を糖鎖に付加し、欠陥のある酸化産物を作ってしまう」(3)。このように明らかに非効率で、利点の少なそうな酵素を植物は維持し続けている。むしろ新しい酵素に切り替えたり、ルビスコをもとにして、より効率的な酵素を合成したりするような戦略に切り替える方が、植物としても生存面で有利に働くはずである。それでもこの非効率な酵素を利用し続けている理由は、特異性の欠如にあるのではないかと考えられる。特異性が無い故に糖鎖に酸素を付加するという誤作動が頻繁に生じてしまい、その誤りを着実に修正するべく敢えて回転率の悪いルビスコを利用し続けているのではないかと考えられる。しかし、この場合は特異性を持った酵素の利用に切り替える方が、二酸化炭素固定の面で効率よいはずである。もしかすると、植物としては今まで利用してきた酵素を突然新しいものに切り替える方が負荷がかかる、或いは酵素の切り替えによって回路の速度が上がりすぎても対応しきれないという可能性が考えられる。植物にとっては現状のままで良く、ゆっくりとした回転率で十分な量の二酸化炭素が固定されているという可能性も考えられる。
[参考URL] (1)~(3)https://pdbj.org/mom/11、PDBj「011:ルビスコ(Rubisco)」

A:ここで参考URLをもとに展開されている議論は、講義の中で説明したことばかりですし、後半の考察も、講義の中で紹介した考え方とあまり違いません。この講義のレポートでは自分なりの考え方が評価されることを認識してください。


Q:今回、ルビスコの酸素二酸化炭素選択性を上げると、活性が落ちてしまうこと、そしてバクテリアなどのルビスコは活性が高いが選択性が低く、陸上植物のものは活性が低いが選択性が高いことを学んだ。C3植物のほうがC4植物よりも選択性が高いのは、C3植物はルビスコが直接空気からCO2を固定するため酸素に触れやすいからである。C4植物は、CO2を固定・濃縮してからルビスコにわたるため、選択性が低くても問題が少なく、活性を上げることができる。では、C4植物同様に、人工的に高CO2濃度の環境を作りだすことができれば、高い活性をもつバクテリアなどのルビスコが活躍するのではないか。たとえば、高CO2濃度の空気が排出される火力発電所などの排気を、光合成をするバクテリアが生息している水槽に通すといった温暖化対策が有用だと考えられる。

A:アイデアはよいと思うのですが、バクテリアはもともと相対的に二酸化炭素が十分だからルビスコの選択性が必要なくて最大活性を上げることができるのですよね。そうだとすると、バクテリアの生育の律速段階が二酸化炭素濃度でない場合も考える必要があるでしょう。


Q:今回の授業ではルビスコについて学んだ。ルビスコについて調べてみると、2種類のタイプがあることが分かった。全ての酸素発生型の光合成物の植物とラン藻類、多くのプロテオバクテリアはForm Iと呼ばれるタイプのルビスコを持つ。一方で嫌気性プロテオバクテリアはForm IIタイプのルビスコを持つ。しかし真核の光合成生物である過鞭毛藻がForm IIのタイプのルビスコを持つことに疑問を抱いた。Form IIはForm Iに比べてオキシゲナーゼ活性が高いが、それはつまり二酸化炭素の固定の効率を悪くすることにつながる。なぜ過鞭毛藻がForm IIのルビスコを持つのだろうか。理由は2つ考えられる。一つは過鞭毛藻の中に二酸化炭素濃度を濃縮する機能があること。二つ目は過鞭毛藻のルビスコだけオキシゲナーゼ活性が低くなっていることである。

A:考え方は面白いと思います。ただ、理由の2つ目はどうでしょうか。オキシゲナーゼ活性が低くなるように進化なったのがForm Iなのだとしたら、オキシゲナーゼ活性の低いForm IIというのは語義矛盾に近いものがあるような気がします。


Q:今回の授業でルビスコは酵素活性が低く、特異性も低いという効率の悪い酵素であると学んだ。植物がこのような効率の悪い酵素を使っている理由として、ルビスコのもとはRLPというイオウ固定用の酵素が変化したためであり、ルビスコを使い始めた当時は二酸化炭素量が多いためさほど影響がなく、その後二酸化炭素が減って酸素が増えてもより効率のよい新しい酵素を作る労力が植物になかったということであった。
 しかし植物のなかにはカルビンベンソン回路だけでなくもうひとつ回路を作って二酸化炭素を濃縮するC4植物がある。この回路のなかには炭素を3つ含むPEPに空気中の二酸化炭素から取ってきた炭素を結合させて炭素4つのオキザロ酢酸を作る際にPEPCという酵素をつかう。このPEPCはルビスコよりも活性の高く、同じ炭素を結合させるという働きがあるということである。基質が違うためPEPCをそのままカルビンベンソン回路に使うことはできないが、回路を増やして新しい酵素を作れたということはルビスコ以外の効率のよい酵素をつくることも可能であったのではないであろうか。それにも関わらずルビスコを使い続けているということには何か理由があるのであろうか。
 これにはカルビンベンソン回路は光合成器官の一部であり、光化学系など他の器官と連続的に反応をしているということが要因だと考えられる。他の器官と反応が連続しているということは各器官での反応速度の変化が他の器官での反応速度に影響を及ぼすということである。もしどこかで反応が遅くなるとその前までの器官で生成されるものが消費されずたまってしまい、逆に後の反応では反応に必要な材料が供給されないということになる。このように連続した反応系の一部を変えようとすると他も変える必要が出てきてしまう。植物が炭素固定を始めたころはルビスコを使っても二酸化炭素量が多かったため問題なく、そのような状態化で炭素固定の反応系が出来上がってしまった。その後二酸化炭素が減って酸素が増えたためにルビスコを使うことにデメリットが出てきたとしても、ルビスコを変えるには反応系の他の部分も変える必要が出てくる。新しい酵素を1つつくるということは難しくはないかもしれないが、反応系全体を形成しなおすには植物にとってかなり労力を使うことであった。
 このように現在も植物が炭素固定にルビスコを使っているのは新しい酵素をつくるのに労力がかかるというよりは、新しい酵素に入れ替えることによってその反応系全体を再構築するということに労力がかかりすぎてしまうためだと考えられる。

A:非常によく考えていると思います。PEPとの兼ね合いでは、C4植物と言えども二酸化炭素固定の結果作られたオキサロ酢酸などをそのまま有機物合成に使うのではなく、一度二酸化炭素に戻してカルビン・ベンソン回路に入れている点は十分に考察する余地があると思います。


Q:講義内においてルビスコという光合成において炭酸同化の中心となる酵素が二酸化炭素環境によってその種類を使い分けされているという話があった。私は現状の地球温暖化という問題と関連させてこの内容を考えた。すると地球温暖化の原因となる二酸化炭素は今後地球上で増加していくといわれている。さらに地上だけでなく海中にもその影響は広がっている。海水には空気中の二酸化炭素を吸収する働きがある。その効率は水温により異なるがそれでも今後地上水中共に二酸化炭素濃度が増加するということは容易に想像できる。その上で私が考えたのは今後生物の光合成におけるルビスコの種類が進化するのではないかということである。つまり外部の二酸化炭素量に伴い植物が進化し使用するルビスコに変化が表れるのではないかということである。それを実験によって明らかにすることで先に二酸化炭素過剰環境内で必要になるルビスコやそれらの物質を植物に導入し種の保存や環境適応をよりスムーズに行い二酸化炭素環境が変化したのちに食糧危機や植物の絶滅などといった問題を未然に防ぐことができるのではないかと考えた。

A:よく考えているとは思いますが、「進化」を「実験」によって明らかにするという場合、何を想定しているのかがつかめませんでした。進化の研究でいつも問題になるのは、条件を変えて1万年待ったらこうなりました、という実験ができない点なのです。


Q:今回はカルビンベンソン回路の酵素であるルビスコについて学んだ。ルビスコは他のタンパク質と比べても親和性が低く、また基質回転効率も低いことを知り、植物はこのルビスコを大量に保持することで効率の悪さを補っているということを知った。なので今回は(1)「なぜルビスコは効率が悪いのか」また、(2)「なぜ二酸化炭素固定酵素として効率の悪いルビスコのみを使い続けるのか」、(3)「では効率の良い酵素を生み出すためにはどうすればよいか」を自分なりに考察しようと思う
(1)ルビスコは本来別の酵素活性を持っており進化の過程で炭素固定をするようになったものである。そのためカルボキシラーゼ反応だけでなくオキシゲナーゼ反応も行うらしい。よってただ炭素固定のみをするのではなく酸素も取り込もうとするため炭素固定の効率が落ちると同時に酸素を取り込む余分な水とエネルギーを消耗してしまうためであると考えられる。
(2)ルビスコは、進化はしても別のものに変わることはなかったため、光合成の原点からルビスコが使われ続け、ルビスコでないと機能しない仕組みになっているのではないかと考えられる。
(3)ルビスコはもともと他の代謝系に使われていたことから、そもそもの土台がおかしいのだと考えられる。基質結合部位をうまく操作しオキシゲナーゼ反応をすることなく、カルボキシラーゼ反応のみをするように操作出来れば効率の良い酵素になると考えられる。

A:考察として悪いわけではありませんが、ほぼ講義の内容をなぞっただけですね。これでは、この講義が求める独自の論理とは言えないでしょう。