植物生理学II 第8回講義

二つの光化学系

第8回の講義では2つの光化学系による電子移動とプロトン濃度勾配の形成について解説しました。また、最後には、マーカスの電子移動理論についても少し触れました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:紅色細菌の光化学系は系Ⅱのような複合体1つしかなく、電子が循環しているというお話がありました。ここで紅色細菌の光化学系について調べていたところ、高度好塩菌の光合成は紅色細菌や緑色硫黄細菌よりも原始的だという記述がありました。高度好塩菌にはバクテリオロドプシンが光化学系の代わりにあり、バクテリオロドプシンに結合するレチナールの露光時の構造変化を引き金として膜外に流出したプロトンをATPaseで膜内に引き戻してATPを合成している、ということでした。ここでバクテリオロドプシンは付属のレチナールが光捕集(LHCと同じ役割。)をおこない、バクテリオロドプシン自身はプロトンを通すチャネルのようなものだといえます。興味深いことに私の研究対象のボルボックスにもロドプシン様タンパク質、ボルボックスロドプシンが存在します。このたんぱく質の役割は正の光走性をもつボルボックスが、通常光に対して接近するためや、強光を忌避するためのセンサーとしての役割です。ここにヒトの網膜ロドプシンを足して、3つのロドプシンを考えると、各分子の最終的な目標は、バクテリオロドプシンがATP産生、ボルボックスロドプシンが光走性の維持、ロドプシンが光の知覚、と相同なタンパク質で同じレチナールを用いているにも関わらず、役割が異なることが分かります。オルソログのタンパク質が異なる役割を持つことについて、各生物にコードされるタンパク質の数からその理由を考察します。高度好塩菌のゲノムは250万bp程度でそこには2630のタンパク質がコードされています。またボルボックスのゲノムは1.38億bpで、そこには14500のタンパク質がコードされています。さらにヒトゲノムは29億bpで、そこには26500のタンパク質がコードされています。これらから、生物の高等化に伴って、ロドプシンが個体維持のために持つ役割が小さくなっているのが分かります。高等化に伴い、タンパク質の数も増加していることから、分子それぞれに生命維持の責任が課されているとすれば、ロドプシンの古細菌にみられるような本来もっていたクリティカルな役割は、タンパク質のプールが増えるにしたがって他のタンパク質に分散していったと考えることができます。
・参考文献:http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/photosyn.htm、Edeltraud Ebnet et al.Volvoxrhodopsin, a Light-Regulated Sensory Photoreceptor of the Spheroidal Green Alga Volvox carteri.The Plant Cell, August 1999, vol. 11, no. 8, 1473-1484.、Wailap Victor Ng et al.Genome sequence of Halobacterium species NRC-1. PNAS, October 2000 ,vol.97, no.22, 12176-12181.、Simon E. prochnik et al. Genomic Analysis of Organismal Complexity in the Multicellular Green Alga Volvox carteri. Science, Vol 329, Issue 5988, 09 July 2010.、J C.Venter et al. The sequence of the Human Genome. Science, 16 Feb 2001: Vol. 291, Issue 5507, pp. 1304-1351.

A:きちんと考えていてよいと思います。ただ、ボルボックスとヒトでは、ロドプシンがセンサーという同じ役割を果たしていると考えることができませんか?情報を受け取った後の解析と行動が違うだけのように思えますが。そうすると、後半の議論はだいぶ異なってくるように思いました。


Q:今回の授業よりPSIとPSIIがそれぞれ緑色硫黄細菌と紅色光合成細菌由来のものであると知った。また、水の利用と還元剤の作成のためにPSⅡが由来のものより変化していることも知った。これらのことから酸素不発生型光合成生物の出現から酸素大量発生の原因となった酸素発生型光合成生物の出現までの道筋がある程度具体的に推測できる。まず電子伝達系のもとになった緑色硫黄細菌と紅色光合成細菌がどちらもH2Sを使用していることが大きな理由となったと考えられる。生物出現時には地球の温度は減少しており、それに伴い火山活動によるH2Sの発生場所も減少し、緑色硫黄細菌と紅色光合成細菌が一か所に密集するようになったと考えられる。この状態になることで互いの遺伝子の混合が起こりやすくなり、酸素発生型の原型となる双方の菌の電子伝達回路を持った生物が誕生したと考えられる。しかしそのままの回路では互いに電子を伝達することは酸化還元電位差により難しい。よって遺伝子の変異により紅色光合成細菌の反応中心の構造が変化し、それに伴い酸化還元電位が増加することで回路全体の電位もプラスの方向に傾くことで緑色硫黄細菌の回路との電子伝達がスムーズにいくようになり、さらに電位の増加による副産物として水から電子をもらうことができるようになったことで酸素発生型光合成生物が誕生したと考えられる。

A:これは、独自の考え方をしていて面白いと思います。特に、水の分解が、むしろ副産物であるという考え方はユニークです。酸化還元電位の部分も論理的に考えていて素晴らしいと思います。


Q:私は量子収率のグラフで、500~600nm付近の波長で酸素発生が少し低下していることを疑問に思った。そこでこの原因について考えることにした。波長が500~600nmということから、緑から黄色の光を吸収して青色に見える色素ではないかと考えた。そのような色素について考えたところ、フィコビリンが浮かんだ。そこで私はこのグラフの減少がフィコビリンであると想定し、フィコビリンは光合成色素であるにも関わらず、なぜ酸素発生が減少してしまうのか考えた。原因の一つとして考えたのは、フィコビリンはクロロフィルに比べて光合成効率が悪いのではないかということである。フィコビリンで吸収された光はクロロフィルに送られて光合成に使われる。つまりフィコビリンではクロロフィルに比べて、光を伝えるという段階があるので効率が下がるのではないかと考えた。また、葉が緑色に見えることからフィコビリンの吸収効率がクロロフィルに比べて悪いことが言えると考えた。

A:考え方は非常に良いと思います。実際にフィコビリンは必ずしも光の利用効率が高くなく、100%の効率でエネルギーがクロロフィルに渡されるわけではないことがわかっています。ただ、講義の中で紹介したように、フィコビリンを持つのはシアノバクテリアと、紅藻などの一部の藻類です。なので、陸上植物の葉がフィコビリンを持つことはありません。


Q:今回の授業で疑問に思ったことは光化学系ⅠとⅡで吸収する光の波長の範囲に差があることである。光化学系Ⅰの方が広い範囲を吸収する。まず思ったことは、光化学系Ⅰの方がよりエネルギーを使うからだと考えた。しかし、調べてみるとむしろ光化学系Ⅱの方が消費エネルギーが高かった(参考文献)。ここで、各光化学系で吸収極大に差があることでこのような差が生まれているのではないかと考えた。あえて吸収極大に差をつけた理由は、同じ波長の光を取り合わないようにするためだと考えた。どちらか一方が動かなければ全体として機能を果たさない。したがって、お互いに同じ波長を取り合ってしまうと系として機能しなくなってしまったり、効率が低下するというデメリットがある。このため吸収範囲をずらし、お互いになるべく干渉しないようにしたと考えた。
参考文献:光合成の初期課程 http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/Labs/wata_lab/photosynthesis.html

A:これも自分なりの考え方をしていてよいと思います。「どちらか一方が動かなければ全体として機能を果たさない」から次のステップへ行く「したがって」の部分のロジックがよくわかりませんでした。「同じ波長を取り合わないようにする」というのは、感覚的にはわかりますが、よく考えると、別の波長にした場合には、一方だけが働いて無駄働きになる可能性が高くなるように思います。2つの光化学系で、同じ波長域を広く薄く使ったほうがよくありませんかね。


Q:今回の植物生理学では、量子吸収スペクトルの結果などから光合成量は光のエネルギーではなく、光子数により決定されることを学んだ。しかし、それ故に森林などの緑色植物が多数生息する環境では吸収波長が被ってしまうため、特に下層に生育する植物は不利である。ではどのようにその環境に対応しているのだろうか。
 文献1によると4種の下層多年生草本における森林の下層での光合成の特徴を示している。ニチリンソウなどのように上層の植物が成長する前に短期間のうちに成長する植物や、弱光を効率的に光合成に利用するなどして、それぞれ異なった方法で森林の下層環境に対応していると述べている。ここで「弱光を効率的に光合成に利用」とは植物生理学的な観点からどのように考えるのか。前述したように光合成の最大吸収波長は決まっている。これは葉緑体が植物に共生した器官であり植物細胞内という環境が変わらないために進化が起こりにくかった、あるいは決まった波長以外は科学的・物理的に効率的に吸収できないなどの理由が考えられる。すべての植物が同じ葉緑体を持っているならば、弱光を効率的に利用するには植物体自身の形態を変化させて対応する他ない。ではどのような形態が弱光下では有利だろうか。葉緑体は最大吸収波長が決まっているといっても、それ以外の波長の光を吸収できないわけではない。そのため、下層環境などではいかに最大吸収波長以外の光を吸収できるかが重要である。前々回あたりの授業で海綿状組織と柵状組織の働きによって葉が効率的に光合成を行っているということを扱ったが、弱光下の植物ではこの構造が非常に発達しているのではないか。また、葉に厚みを持たせることで単純に光の光路長を延長させている可能性もある。下層植物で厚い葉のイメージは少ないかもしれないが、そもそも上層植物との光子量の差が非常に大きい。光子量と葉の厚さの関係を調べれば、下層植物のほうが相対的に葉が厚い可能性が十分考えられる。
 以上のように葉の組織や形態を変化させるによって、同じ葉緑体であっても弱光に適応することができるといえる。植物は種類によって特徴的な光合成を持つものが多数あり、特に特殊環境下の植物ではどのような原理で環境に対応しているのかを解明したものは少ないと思われる。今後、このような事象を解明していくことで、農業や工業分野での更なる発展に貢献できるのではないか。
文献1:3年生物学演習/小泉/art%253A10.1007%252FBF02488902.pdf

A:これもよく考えていると思います。ただ、光を有効利用するために葉を厚くするという部分については、よく考える必要があると思います。確かに葉を厚くすれば光の吸収効率は上がると思いますが、それはあくまで葉っぱ1枚当たりの話です。実際には葉を厚くすれば、投入する資源は多くなります。光が弱い時にはそもそも葉の裏までくる光の量は限られますから、いくら葉を厚くしても、それによる光合成の上昇は限られていて、資源あたりで比べれば、むしろ効率が悪くなる可能性があります。その場合は、むしろ暗いところでは葉を薄くする方が適応的な戦略になるでしょう。


Q:アオサでは、吸収スペクトルと作用スペクトルは一致する。これは、クロロフィルが光を吸収して光合成を行うからだ。一方、アサクサノリは紅藻であるため、緑藻であるアオサよりも水深が深く、青色や緑色などの弱光だけが届く環境に適応できる。しかし、このそのためアサクサノリでは、吸収スペクトルと作用スペクトルは一致しない。つまり、光化学系Ⅰに対するアンテナとして働く色素の数が少ないことがわかる。
 紅藻が持つ光合成色素であるクロロフィル、フィコビリン、β—カロテン、フィコシアニンの働きについて考えた。緑色の光を吸収できる光合成色素であるフィコビリンはほとんどが光化学系Ⅱのアンテナとして働き、クロロフィルにエネルギーを伝達する。このとき、光化学系Ⅰに分配されるエネルギーは少ない。β—カロテンは青色光を吸収するアンテナの働きよりも活性酸素が生成しないようにする安全装置としての働きのほうが大きい。しかし、前述のように光化学系Ⅰに対するアンテナがほとんどなく、カロテノイドは光化学系Ⅰに対するアンテナとして働くことから、紅藻に含まれる一部のβーカロテンは光合成色素本来のアンテナとしての働きをも担っていると考えられる。フィコシアニンは黄色~オレンジ色の光を吸収する。紅藻はフィコビリンを持つため、青色光や緑色光しか届かない水深の深い環境に適応しているが、このように黄色やオレンジ色の光を吸収できる光合成色素を持っているということは、その波長の光が届く場所にも生育できるということである。事実、アサクサノリは河口干潟という潮の満ち引きによって水深が変化しやすい場所に生育することから、紅藻は水深が浅いところから深いところまで全般的に適応できることがわかる。また、潮が引いて水深が浅くなると光強度が増加するため、光合成に利用しきれないエネルギーが生じる。このとき、β—カロテンがその余ったエネルギーを熱エネルギーに変換し、活性酸素が生成しないようにしている。
参考:「光合成の森 光合成色素」 http://www.photosynthesis.jp/shikiso.html、「市場魚貝類図鑑 アサクサノリ」 http://www.zukan-bouz.com/kaisou/kousou/usikenori/asakusanori.html、「日本植物学会 海の中の赤い植物"紅藻"の謎」 http://bsj.or.jp/jpn/general/research/02.php

A:これは、考えてはいるのですが、それぞれの項目についての考えが単発で終わっているので、全体としての流れがやや不明確です。できたらば、例えば色素のそれぞれの考察を集めるのではなく、一つの問題を最初に設定して、それについていろいろな角度から論理的に考えて結論を導くようにすると良いと思います。ここの場合で言えば、紅藻の光に対する応答と生育環境の関係に絞って議論をすると、流れが良くなるように感じました。


Q:量子収率は吸収された光子数あたりの反応数を表し、非蛍光物質のような吸収されないと上がらない0の値から効率100%まで示される。授業で扱った量子収率のグラフから見てカロテノイドが吸収した色素はおそらくあまり光合成には使用されていないことがわかった。カロテノイドには安全装置の役割がありエネルギーの一部を熱エネルギーに変換してしまう機能がある。単純にカロテノイドを多く蓄積している根のニンジンはエネルギーを無駄にしてしまい非効率ではないだろうか。呼吸などにより生じた活性酸素の損害を受けにくくするための役割であるのに、なぜ非光合成器官のニンジンの根に蓄積されるようになったのか。これが熱エネルギーに変換されるしくみと関係しているのか疑問に思いました。

A:これは「疑問に思った」でおしまいになっているのが残念です。そこがいわば問題設定になっているわけですから、その問題について、どんなものでもよいので、自分なりの論理で答えを考えてみる、という姿勢がほしいところです。


Q:今回の授業では光化学系間における電子伝達について学んだ。プラストキノンと光化学系Ⅰとの間においては電子のサイクルが出来ているというが、光化学系Ⅱからの電子の供給があってこそ成立するものであると伺った。そこで疑問に感じたのだが、何らかの原因で光化学系Ⅱがダウンした時、人工的に電子とプロトンをプラストキノンに供給することで電子のサイクルをプラストキノンと光化学系Ⅰとの間に作り出すことは可能なのであろうか?
 「光化学系ⅡのQB部位にてストロマ側からプロトンを受け取る」ということから、ただ電子をプラストキノンに与えるだけではなく、ストロマのプロトン濃度を高めておいて、チラコイドとストロマにプロトンの濃度勾配を作れば、QB部位から電子と同時にプロトンも受け取るというリニアな電子の流れを人工的に作成出来て、プラストキノンと光化学系Ⅰとの間に電子のサイクルが形成されることに繋がるのではないかと推測した。
[参考文献]「光合成の科学」東京大学光合成教育研究会、財団法人 東京大学出版会 (2009) p.105

A:これは、論理展開がよくわかりませんでした。「QB部位から電子と同時にプロトンも受け取るというリニアな電子の流れを人工的に作成」とありますが、前提としては光化学系Ⅱがダウンしているのですよね。そうすると、QB部位から電子を受け取れないはずでは?系Ⅱが動かないときは、どこから電子をもってくるのかが一番大きな問題となります。


Q:今回の授業で、光化学系Ⅱが他の反応系より低い状態から励起されるのを知った。このことは、光化学系Ⅱが酸素を発生させる機構であることが関係しているのではないか。植物は、あまり強すぎる光ではむしろ光合成速度が下がってしまう。これは葉緑体が壊れてしまうからで、これは活性酸素が発生することによる。活性酸素を発生させるのは、酸素を発生させる光化学系Ⅱであると考えられる。つまり、光化学系Ⅱが過剰にエネルギーを得て本来励起するべきところ以上にエネルギーを得てしまった場合、活性酸素がエネルギーの逃げ道として発生してしまうのではないか。そうすると、光化学系Ⅱの最初の電位が低いほうが、エネルギーの余剰の起きる可能性が他の光化学系より少なくなり、活性酸素の発生が起きにくくなるのではないか、と考えた。

A:事実関係についてはだいぶ誤解もありますが、この講義のレポートは、正しいかどうかではなく、自分なりの論理を展開できているかどうかで評価されますので、その点では合格です。縦軸が酸化還元電位のグラフについて、上がエネルギーが高いと考えがちですが、それは本来誤りです。実際には、反応する2つの物質の酸化還元電位の差が大きいほど大きなエネルギーが生み出されます。逆に言えば、酸化還元電位が真ん中あたりの物質との反応を考えた場合、酸化還元電位がマイナスに非常に大きい物質も、プラスに非常に大きい物質も、どちらもエネルギーを生み出しますから、そのエネルギーが悪さをする可能性も生じます。その意味で、光化学系Ⅱの酸化還元電位がプラスに大きくなっている(講義で示したグラフで下に移動している)ことは、危険を生み出しているともいえます。


Q:酸素発生の吸収スペクトルと作用スペクトルから、クロロフィルの色素が光吸収しているのか、またはしていないのは判断できるのが驚いた。ごめんなさい、レポートの議題が思いつかず、感想だけになってしまいました。

A:レポートを書く前提として、まず講義をきちんと聞くことが必須です。講義中に寝ていては、良いレポートは書けませんよ。


Q:今回の授業でアサクサノリにおいてフィコビリンは光化学系Ⅰ、Ⅱの両方に分配されているが、クロロフィルは光化学系Ⅰに偏っているということであった。そのため青色領域の光は吸収するものの、作用はしていない(光合成に使われていない)。これは光化学系Ⅰ、Ⅱ両方が働かないと光合成反応が起こらないからであり、青色領域の光はクロロフィルには吸収されるものの、フィコビリンは吸収しないからである。しかしなぜアサクサノリはクロロフィルを光化学系Ⅰ、Ⅱ両方に平等に分配してないのか。様々な色素を植物体全体に持っていれば照射した光すべての波長領域を効率よく使うことができるのではないであろうか。
 これは光エネルギーを多く吸収すればするほどよいというわけではないという光阻害と関係があるのではないかと考えられる。青い光は可視光の中では波長が短く、持っているエネルギーが大きい。しかし光合成では光子1個で反応1回というようになっているため、その光子がどの程度の大きさのエネルギーを持っているかどうかは関係ない。そのため青い光の持っている大きなエネルギーの一部は余剰エネルギーとなる。このような余分なエネルギーは活性酸素をつくりだしてしまい、光化学系Ⅱを傷つける原因となる。そこで光化学系Ⅱではあまり青色の光を多く吸収したくないのではないかと考えられる。しかしクロロフィルを持っている限り赤い長波長のエネルギーが小さい光も吸収できるものの、青い短波長のエネルギーが大きな光も吸収してしまう。一方フィコビリンならば黄色の光を吸収するため、余剰エネルギーは小さくて済む。そのため光化学系Ⅱに対する負担も少ないのではないであろうか。太陽光には基本的にすべての波長が含まれており、海中といってもアサクサノリは水深の浅いところに生息するため、光化学系Ⅱと光化学系Ⅰで使用する色素が違ってもどちらかで吸収する光が不足するということは考えにくく、片方の系しか機能しないとなる可能性は低いと考えられる。よって光化学系Ⅰには他の植物と同様にクロロフィルも存在するが、光化学系Ⅱには余剰エネルギーを出しやすいクロロフィルはあまりおかなかったのではないかと考えられる。

A:自分なりの論理を展開していて評価できます。ただし、実際には、青い光を吸収して励起されたクロロフィルは、非常に短い時間に赤い光を吸収して励起されたクロロフィルと同じ励起状態に落ち着き、その差の分のエネルギーは熱となって放散されます。したがって、クロロフィルによる吸収だけを考える場合には、青い光のほうが光阻害が大きいということはないでしょう。


Q:光合成は簡易的に認識すると光エネルギーによって水と二酸化炭素から酸素とATPを合成するが、普通多く観測されるのが逆の反応であることも一般的ではないかと考えられる。つまり酸素やATPのような有機物を消費して水や二酸化炭素を合成する反応の方が世の中では多いということである。このことからも光合成には非常に強いパワーが必要なのではないかということは容易に想像できる。そして私が感じたのは光合成という反応において濃度やプロトンの勾配が大活躍であるということである。確かに酸素発生に着目しても光により酸素発生複合体が活性を持つことがきっかけとはなっているが結果反応回路を回すパワーになっているのは勾配によるところが大きく、光化学系Iにおいても還元剤によってNADP+をNADPHに変換することがきっかけとなる。そしてそれにより引き起こされるH+の濃度勾配こそが回路のパワーになっていると感じた。そこで私が考えたのはきっかけとなる物質がない状態でも勾配操作をしっかりと行えれば電子伝達は正常に行われるのではないかということである。またきっかけとなる物質がきっかけとなっている理由が勾配であるという考え方もできるがその場合にも人工的に勾配を操作することにより電子伝達が活性化されればより効率的で速い回路を作れるため酸素やATPの合成をより活性化することが出来ると考えられる。

A:これはどうも日本語の意味が不明です。「酸素やATPのような有機物を消費して水や二酸化炭素を合成する反応」というのは呼吸のことでしょうか。そうだとするとATPを消費というのが矛盾しますが、ほかに何を指すのかわかりません。「きっかけとなる」のが何のきっかけかもわからないですし、最後の文も、何を言っているのか理解ができませんでした。もう少し、レポートとしての良し悪し以前に、人にわかる日本語を書かないと、そもそも評価のしようがありません。


Q:今回の講義では電子の移動や酸素の発生について学んだ。その中でも、溶媒効果により分子はエネルギーの状態が変化し、分子間のエネルギー差が同じになったときに分子間を電子が移動する速度が速くなるというマーカス理論に興味を持った。このマーカス理論を詳しく調べると分子間の電位差が少ない時、エネルギー差が同じにならないため電子の移動速度が遅くなり、電位差が適度に大きい時エネルギー差が少なくなり電子の移動速度が速くなるというものであったが、そのシステムについてなぜ分子間のエネルギー準位が小さいと電子の移動速度が下がるのかが疑問に思った。エネルギー準位に差がないときは電子はお互い移動しやすくなり移動速度はあがるのではないかと思ったのでそこを考えてみたいと思う。調べてみると確かにエネルギー準位に差がないときは電子はお互いに移動するのだが、移動した数に着目するとお互いを移動し合うわけだから電子の変化数は結果的に小さくなりそれが移動速度を表しているのではないかと思った。そうなるとエネルギー準位の差が大きいと一方にしか電子が行かず電子の移動速度が結果として速くなることも理解できる。

A:そうですね。基本的にそのような理解でよいと思います。自分で考えて結論を出しているようなので、レポートとしては合格です。ただ、結論がある意味でマーカスの理論の理解にとどまっているので、できたら、自分なりの、マーカスにも思いつかないような考え方ができると(たとえそれが現実には間違いであっても)この講義のレポートとしては高く評価されます。