植物生理学II 第12回講義

炭素同化

第12回の講義では、ATPのエネルギーとNADPHの還元力を使って、二酸化炭素が有機物に固定される炭素同化の反応について解説しました。さらに光呼吸のしくみとCAM型の光合成、C4型の光合成についても解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:ルビスコと同様の役割を果たし、酸素を用いる反応を促さず、かつ活性が他の酵素と同等近い新規酵素を研究開発する意義・現実的な問題について考察する。研究者としての立場に立ったとき、研究費を捻出するための社会的意義や研究に取り組むにあたっての問題点の整理は非常に有意義である。考察にあたって、新規酵素がルビスコと置き換わったときに起こることを考えてみる。ルビスコが新規酵素に置き換わることで有害な活性酸素が生じなくなり、そして酸素が二酸化炭素の阻害をしなくなる。そうなると、(光呼吸が二酸化炭素を生じることで活性酸素の発生を阻害する役割のみを担っていると考えた場合には)ATPやNADPHを用いる光呼吸が不要になる。結果、ATPとNADPHが節約される。余剰のATP、NADPHは別の生合成に用いられることだろう。そして新規酵素の導入によって活性が従来の330倍近く高まったとする。そうすると、カルビンベンソン回路のデンプン生成速度が格段に早まるか、あるいは新規酵素量が従来の1/330倍になるか、いずれかのことが起こるだろう。もしデンプン生成速度が早まるとすると、従来よりもデンプンを多く含む植物が生まれる可能性がある(従来の330倍のデンプンを含むとは考え難いが)。自分なりに新規酵素を開発・導入したときの効果を考察してみたが、社会が得られるメリットとしては農業に役立つものくらいしか浮かばなかった。しかも必ず農業に役立つとは限らず、デンプンを多く生成せずに酵素量が大きく減る方向に新種が生まれてしまうかもしれない。酵素の開発にかかる費用、新規酵素をどのように植物に導入するのか、新規酵素が植物に与える副作用の確認などの様々な問題をクリアしてでもするべき研究なのか、甚だ疑問である。
参考)「光合成のCO2の固定」”http://cacao55.fc2web.com/sub79.html”

A:テーマも悪くありませんし、自分なりに考える努力も感じられてよいと思います。ただ、言葉遣いがちょっと。「二酸化炭素の阻害」は「二酸化炭素固定の阻害」でしょうし、「新規酵素の導入によって活性」の活性はおそらくは「光合成活性」でしょうか。また、デンプンの生成速度が速まる結果としては、デンプン含量の上昇よりも、生育速度が上がる可能性の方が高そうですよね。


Q:C4植物はC4回路によって二酸化炭素を濃縮することができ、それによって光合成速度を増加させることができる。しかし二酸化炭素を濃縮させるためにはATPが必要であり、二酸化炭素が十分にある環境下の植物がC4回路を取り入れてもATPが消費されてしまって決して効率的ではないということを授業で扱った。C3植物の光合成速度を増加させるためにはルビスコの効率を上げればいいのではないかと考えた。ルビスコの効率を増加させるためには植物にルビスコを添加して量を増やせば良いのではないかと考える。

A:講義では、ルビスコとの効率を上げる取り組みの結果や、そもそもルビスコが葉緑体にとてつもない量存在していることを取り上げたはずです。レポートはきちんと講義を聞いて書くようにしてください。


Q:私は今回の講義でイネのC4植物化について非常に興味を持った。水中ではC3植物であるのに空気中ではC4植物に変化する、その環境要因について考えていきたいと思う。まず水中と空気中についての違いは、①吸収する波長の違いや②CO2の取り込み方の違い③乾燥の有無④温度の変動の加減などが挙げられると考えた。①については光合成色素がそれぞれの吸収波長領域に応じて異なっており、イネにも複数の光合成色素が含まれるるので解決されるといえる。②については水に溶けているとCO2の形に変化させてから取り込む必要がある為に、水中でのC3植物の方がエネルギーが必要になると考えられる。③は空気中の方が乾燥しているがそのデメリットを維管束鞘細胞や葉肉細胞の構造で解決していると考えられる。④については水中では温度変化が緩やかであり植物にとっては生活しやすいと考えられるが、空気中で変動の大きいほうが四季を感じやすくなるといえる。このようにC4植物とC3植物ではそれぞれのメリットデメリットと解決策があるといえるが、実際にイネのC4化を進めていくためには、全てがC4植物に変わると完全に形が変わるのではなくC4とC3の中間形という都合のいい形が作れたら更なる生産向上につながるのではないかと思う。

A:日本語がよくわかりませんが、「水中では」で始まる2文目は、水草の場合の話でしょうか?また、「環境要因について考えていきたい」と書いてある一方で、「解決されるといえる」「解決しやすい」となっていて、何かの問題設定があるように見えます。サイエンス以前の問題として、読み手にわかる日本語を書くようにしてください。


Q:今回はルビスコのことを学び、スーパールビスコがなぜできないのか・どうしたら効率が良くなるのかに関して興味を持った。授業中では、酸素ができる前二酸化炭素が大気中を占めており、その時代からルビスコがあった。ルビスコ発生時代から、今までの進化の中でほぼ変わってこなかったことを考えると1からスーパールビスコを作るんは難しいということだった。自分の最初の考えだと、C3植物の場合、植物内の酸素濃度を低下させれば光合成を長時間増加させることができるのではないだろうかと思った。これはルビスコの性質からである。これについて考えてみると大気中の酸素をたとえば3%下げたとして、酸素による光合成阻害率は下がる。また、高温になれば酸素による光合成の阻害効果は大きくなるが,それは,高温下でCO2の溶解度がO2より大きく低下するからである。光合成の酸素阻害がみられるのはRubisco周辺のCO2濃度が低いときなので,このとき酸素阻害を取り除くためにO2濃度を下げると光傷害が進行する。結局自分の考えでは効率が良くならないことが分かった、

A:「自分の考えでは」となっている割には、事実の羅列だけで、論理性が感じられません。この講義のレポートは、調べものレポートではないので、調べた事実を自分なりにどのように考えたか、という点を明確に示すようにしてください。


Q:今回の講義を聴いて、一番興味をもったのはアイスプラントの光合成回路についてである。アイスプラントは自身の置かれている環境に応じてC3型光合成回路とCAM型光合成回路を使い分けている。乾燥ストレスもしくは塩ストレスのもとではCAM型光合成回路を使用するようになる。そこで、私が気になったのは塩ストレスと乾燥ストレスのうち、どちらの方がアイスプラントの光合成回路の変化に大きく影響を与えるのかということである。しかし、乾燥度合いと塩濃度はを直接比較できるものではないため、比較するのが難しい。そこで、どのようにして比較すればこの2つを比べられるのかについて考えた。私が考えた比較方法は以下のとおりである。まず、塩ストレス、乾燥ストレスのそれぞれについて、アイスプラントがCAM型光合成回路へ移行する最低ラインの塩濃度と湿度を調べる。なお、このときの気温はどちらの条件も同じにする。次に、このときの条件でアイスプラントを栽培する。CAM型回路の植物はC3型回路の植物に比べて成長が遅くなることから、この中で成長が遅かった方がよりCAM型経路を活発に行なっていると考えることができ、光合成回路の変化に大きな影響を与えているといえる。

A:着目点はよいと思います。ただ、問題設定に厳密性が欠けます。「光合成回路の変化に大きく影響を与える」の「影響を与える」というのはどのような意味でしょうか?3年生実習のレポートの書き方を説明する際にも言ったように、「影響」では、増えたか減ったかすらわかりません。後半では「活発に行なっている」となっているので、より具体的ですが、もし、条件設定として「最低ライン」にそろえるのであれば、CAMの程度も同じぐらいになることが期待されるのではないでしょうか。ロジックがよくわかりませんでした。


Q:授業内において、稲をC4植物化し、より強い品種を作ろうとする試みがあるという話があった。では、稲をCAM植物化した場合には、どのようなメリットが生じるだろうか。CAM植物とは、乾燥により日中は気孔を開くことが出来ないサボテンなどの植物が夜中に取り込んだ二酸化炭素を使用して日中に光合成を行う植物の総称である。つまり、CAM植物は乾燥に適した形態である。このことから、CAM植物化させた稲は、乾燥した、または水が少ない場所において生育可能になるはずである。仮に稲のCAM植物化が成功した場合、現在の陸稲は乾燥に弱いが乾燥に対する耐性が増すことになるため陸稲栽培がより効率よく行えるようになる。この技術をアフリカなどの乾燥した地域に輸出すれば技術料を得ることが出来、また食糧問題の改善につながる可能性もある。ここでデメリットについて考えてみる。日本においては水稲栽培が基本であり、水稲栽培の稲は湿潤な場所で生育するためCAM植物としての機能がまるで役に立たない。どちらかといえば、畑で栽培される麦やトウモロコシなどにCAM植物の仕組みを導入した方がメリットが大きいかもしれない。

A:「食糧問題」のところまでは、当たり前のことしか書かれていないレポートだと思って読み進めましたが、最後にデメリットについて触れていたので、まあ良いのではないかと思います。ただ、トウモロコシはC4植物なので、もともとある程度耐乾燥性があります。


Q:カルビン・ベンソン回路において二酸化炭素の固定に関わる酵素であるルビスコは二酸化炭素を消費する反応だけでなく酸素を消費する反応も触媒し、その生成物はカルビン・ベンソン回路の阻害剤として作用する。ルビスコが酸素を消費する反応と二酸化炭素を消費する反応のどちらを触媒するかは、ストロマ中の酸素と二酸化炭素の割合によって決まる。仮にストロマ中の酸素濃度が0であれば、酸素を消費する反応が起こるはずがなく、阻害剤も生成しない。ストロマのさらに内部にあるチラコイド膜の内腔で、水分子が分解されて酸素が発生する反応が起きている以上、酸素濃度を0にすることは至難の業であると考えられる。しかし、葉緑体にある膜上にある酸素や二酸化炭素の輸送にかかわる膜タンパク質の発現を調節したり、炭素同化の反応に影響を与えない還元剤を導入して酸素を消去したりすることで、人為的に酸素濃度を減らし二酸化炭素濃度を増やすことはできるのではないかと思う。

A:全体として悪くないとは思います。ただ、問題点に対して2つの提案をしただけで終わっているので、あまり論理が展開されているという印象を受けません。「膜タンパク質の発現を調節」すると提案するだけでなく、その結果具体的にどのようなことが起こるのかを(場合によってはそのでめりっともふくめて)想像してみると、論理性の感じられるレポートになると思います。


Q:ケニアでは標高の上昇に伴い、気温が低下することでC4植物からC3植物への遷移がみられることについて、C3植物が乾燥環境に適応的だという側面だけでは高所でのC3植物の減少は説明され尽くされない、多様な生物を理解するのに単一の尺度では正しい評価はできないという話があった。つづけて教育現場での生徒という存在も本質は多様性であるとして試験の得点など単一の尺度では生徒を正しく評価し切れてるとはいえないという話。これについて、早稲田の教育学部は理学部的な教育がなされるという意識はほかの先生方からも感じることはあっても、教育者を輩出するという意味での教育に対する考え方をお聞きする機会は初めてであったので、これからもこのような話もなされてよいと思った。教育学部生物学専修は教員の育成というよりも、基礎的な生物学の鍛錬を積むことができる。これは私自身、大学に求めていたことなので大変うれしいことではあったが、最近は教育学部に設置されている教室であるということの意味も、生徒自身意識することがあってもよいのにと思うことが多くなった。学生の教育だけではない、よい環境においては次の世代に広い意味での教育が行われ、科学の現場においても多くの研究成果や優秀で独創的な人材を輩出してきた。このような例はボーアを中心に広まった量子力学のコペンハーゲン学派の発信の中心となったボーア研究所、分子生物学の黎明期におおくのアイディアが生み出されたコールド・スプリング・ハーバー、朝永振一郎をして「科学者の自由の楽園」と言わしめた理化学研究所など枚挙にいとまがない。つまり我々は教育学部にあるからには科学者を志すにせよ、次代の発展につながる環境や指導方法を積極的に考え、将来的には様々な現場で実践するつもりで学生生活を送れたら「理系の成り損ない」ではなく、理学部でも理工学部でもない、教育学部として科学を学び、研究を行う「教育学部理系」として胸を張れるのではないだろうか。

A:講義の内容に関してのものであれば、このようなテーマについてのレポートでも一向に構いません。日本語もこなれていますし、エッセイとしては良いと思うのですが、この講義のレポートに対して求めている自分なりのロジックという点で不満が残ります。より明確に問題設定をして、それに答える形で論理を展開すると科学的なレポートらしくなります。


Q:今回の講義の中で、ルビスコに興味をもった。二酸化炭素とだけ反応できる方が効率が良いはずなのに、二酸化炭素との結合確率が高いと最大活性が下がるというのが矛盾に思えた。この理由について考察しようと思う。結合率を最大活性とでバランスをとっているようにとらえられ、あまり反応が起きすぎないようにしていると見える。このことから、考えられることの一つとして、カルビンベンソン回路を回すのに、ATPやNADPHという電子伝達における産物が必要であるため、この反応とのバランスをとっているのではないかと思う。また、二酸化炭素との反応が起きすぎるとこれ以外に何か問題が起きる可能性もあるので、これを確かめるには、植物を二酸化炭素中で生育させて(光や水は十分に与える)、その時に植物に異常が生じないかを見たら良いのではないかと思う。

A:自分なりに考えていてよいと思います。「結合率」というのは基質親和性のことですね。バランスが取れない場合に、どのような不都合が生じるかを想像してそれを示すことができると、より具体性が増し、説得力のあるレポートになるでしょう。


Q:講義の最後のほうに、生物には多様性があり、どちらの方が良い、悪いというわけではなく、それぞれに得意、不得意があり環境に応じて生きている、という話があった。そこで、少し話題はズレるが、人間にとっては害である生物の存在意義について考えてみることにした。まずは、好きな人はおそらく1%もいないであろう、ゴキブリである。ゴキブリは、全世界で11.5兆匹いると推定されており、動物の遺骸や糞など、様々なものを食べる。そのため、生態系の中での役割は大きいと考えられる。このように、分解者的役割を担っているゴキブリがいなくなると、動物の遺骸や糞を分解する速度が減り、有機物がどんどん蓄積されてしまうのではないかと考えた。しかし、この地球上には何種類もの分解者を担う生物が数えることもできないほど生息しているため、それらの生物によって生態系のバランスは維持されるのではないかと考えた。また、土壌有機物量がわずかに増えるとすれば、個体数が増える植物が出てくるのではないかと考えた。

A:これも、自分なりに考えていてよいと思います。ただ、起こると想定される事態を3つ挙げているだけ、と見えるので、できたら、むしろ1つに絞って、代わりにもう少し論理的な展開、例えば分解者としての役割についてだったら、ゴキブリの占める割合が低いからバランスが維持されるのか、それともゴキブリが減った分、他の分解者が増えるのでバランスが維持されるのか、などを議論するなどすると、筋道のあるレポートになります。


Q:Rubiscoは酸素と反応すると、わざわざATPや還元力を使って有機物を二酸化炭素に分解してしまう光呼吸というとんでもなく無駄に思える反応を起こす。しかしそんな光呼吸も、植物の進化の過程を経てもなお残っている反応だと考えると、何かプラスに働いていることがあるのではないか。光呼吸ではRubiscoは酸素と反応するということで、酸素が何か植物にとって不利な影響をもたらすがためにそれを減らす役目を担っているというところから考えることにした。酸素にあまり悪いイメージはないが、1つ思い浮かぶことといえば活性酸素である。活性酸素は特に熱、光、放射線などのエネルギーによって生成されるので、光エネルギーを扱う光合成の場では起こりうる話である。現にクロロフィルがエネルギーを吸収した三重項クロロフィルという状態は、酸素と反応すると一重項酸素を生じるようである。[1] 特にC4植物の多くは光エネルギーが過剰な地域に生息するのでこの問題と隣り合わせであるはずだ。C4植物でもわずかに光呼吸は起きている[2]ようなので、C4回路によって二酸化炭素濃度を調節しつつ意図的に光呼吸を起こすことで活性酸素の発生を抑えているとしたら、とても賢くうまくできた仕組みだと思う。
[1]園池公毅http://www.photosynthesis.jp/shikiso.html、[2]吉村泰幸http://cse.niaes.affrc.go.jp/yyoshi/c4photores.html

A:これも自分なりの考えが反映されていてよいと思います。ただ、ロジックとして不思議なのは、光呼吸が主に見られるのはC3植物でありながら、レポートではC4植物について議論していることです。C4植物でわずかに光呼吸をしているにしても、その意義を論じるのであれば、C3植物について考える方が自然な気がしました。


Q:ルビスコは二酸化炭素だけでなく酸素とRuBPの反応も触媒する。この反応では、反応阻害剤が産物として生成され、光呼吸によってPGAに戻す機能がある。だが、なぜ植物は酸素と反応して自分にとって害になるものを生成するのだろうか。大気中には二酸化炭素よりも酸素の方が多く含まれている。そのため、反応効率の悪いルビスコは二酸化炭素だけでなく酸素とも反応しPGAを生成するメカニズムを持ち、ルビスコの働きを活性させているのではないかと考える。

A:この講義のレポートでは、講義の内容を反復するだけのものは評価しません。


Q:本講義ではCAM植物について触れた。CAM植物は砂漠などの水分が不足、かつ昼夜の温度差が大きい環境に適応し進化した植物である。CO2の濃縮と還元を昼夜に分けて時間的分化している点が特徴である。昼は気孔を閉じ蒸散抑制し細胞内の二酸化炭素を使ってカルビン回路での光合成をし、夜気孔を開けて二酸化炭素の取り込みを行っている。C4植物は二酸化炭素濃度の低い環境下でも光合成を行えるよう、細胞内の場所を分けて炭素同化と糖産生を行い細胞内の二酸化炭素濃度を高くして光合成速度を早くし成長速度を上げているが、CAM植物は日中に二酸化炭素の取り込みを行わないことから一日当たりの光合成速度が制限され成長が遅くなる。ここで疑問なのは、昼に気孔を閉じながら光合成を行うことに対し発生した酸素はどこへ行くのかということである。カルビン・ベンソン回路に存在するrubiscoという酵素は酸素と反応すると毒を作るが、気孔を閉じているCAM植物は酸素を逃がす手段がC3植物やC4植物に比べ劣っている。他に酸素を逃す手段を持っているのではないだろうか。葉の細胞内の酸素濃度を上げずに発生した酸素を消化していくには大気中になるべく早く放出していくしかない。葉の細胞内に酸素と結合し別物質になるようなタンパク質、酵素などが存在すればそれが一番だと思われるが、そのようなものは今のところ発見されていない。光合成系Ⅰは4つの電子を使い4分子の酸素から2分子の酸素に変換することができる。ということは、この光合成系Ⅰを活発に動かすことにより、葉の細胞内の酸素濃度を下げているのではないかと考える。

A:非常に良く書けていると思います。実習の内容と結び付けて議論している点も評価できます。最初の三文は、講義の内容なので、もっと省略してもよいでしょう。


Q:今回の授業ではC3植物とC4植物に興味があったので調べてみるとエリオカリス・ヴィヴィパラという水中と空気中でC3、C4それぞれの機構を使い分けているという植物を見つけた。もしほかの植物もこの水草のように二つの機構を温度や日の当たる時間などの環境の変化に応じて使い分けることができるのならば、子孫を残し生き延びていくという点においてはより有利になるのではないかと考えた。しかし現実問題として二つの機構をもち使い分けている植物は少ない。これはあるかどうかもわからない環境の変化などに備えるためだけに実際に使うかわからない機能を持ち続けるコストが大きく効率的ではないことが理由だと考えられる。そのため植物は基本的にどちらかの機構しか持っていないと結論付けることができる。

A:悪くないと思います。最低限の論理展開がきちんとなされています。ただ、あともう少し論理に厚みが欲しいところですね。


Q:C4植物は単系統ではない.C4回路が何度も別々に開発されたシステムであるならば,仕組みが異なっている可能性が高い.実際,C4回路は酵素の違いによって3つのサブタイプに分けられる(文献より).しかし,葉肉細胞でC4回路が,維管束鞘細胞でC3回路が働いている点は一致している.C3回路が働くためには,空間的に分離していることが必須ではあるが,何故,バラバラに位置する種や,細胞内で分離している種が存在しないのか.細胞内で分かれる場合,まずC4回路に取りこみC3回路に渡すという流れからして,C3回路が行われる葉緑体ストロマより外側の区画(細胞質や葉緑体の2重膜間腔)でC4回路を行うべきであろう.細胞質では反応条件を特殊化しにくいため,膜間腔がより適している.さて,C4植物であってもC3回路ではrubiscoを用いる.よって,C3回路を行う区画では光呼吸を防ぐため酸素濃度が低い方が良い.つまり,光化学系Ⅱが働くチラコイド膜と接するストロマでC3回路が行われることは効率的ではない.これを防ぐには光化学系を行う葉緑体と炭素固定を行う葉緑体を別々にもつことが必要であるが,これは新たな細胞小器官を得るようなもので,進化のハードルが高いように思われる.それならば,細胞レベルで分離し,よく光のあたる柵状組織ではC3回路を行わない方が簡単だろう.一方,C4回路を持たない区画にCO2が直接取り込まれては無意味なので,気孔から近い海綿状組織がC4回路を持っている方が良い.さらに,合成有機物は転流される可能性があるため,師管の近くの細胞がC3回路をもっている方が良い.つまりC4植物は,単にC4回路をもつというだけでなく,分業によってさらに効率的に光合成を行っていると言えるだろう.
文献 http://cse.niaes.affrc.go.jp/yyoshi/c4cycle.html

A:非常に良いと思います。複数のポイントが盛り込まれていますが、字数も800字近いですし、一つの論点に絞った方が論理展開が明確になるでしょう。


Q:C3植物とC4植物は独立に進化したと授業で習った。また、C4の出現時期は、二酸化炭素濃度が低下し、酸素濃度が上昇している時期であると考えられている。このように、地球の変化に応じて、植物はその光合成の様式を変えていく必要がある。また現在は、C4やCAM植物ができた頃よりもさらに低い二酸化炭素および酸素濃度に対して、一層の適応を求められているのではないかと推測できる。私は、まずC4植物の光合成経路が、葉肉細胞と維管束鞘細胞の二つの場所を用いて、極めて複雑な経路をたどり1サイクルしているのに対して、CAM植物は、ストロマでのカルビン回路を用いた比較的シンプルな経路で1サイクルする、という違いに注目した。植物は、系を複雑にするのではなく、既存のシンプルな経路を使用しながら、時間帯を変えることで変化していくことができることが分かる。CAM植物への進化の流れをみていると今後の進化の過程は、系の複雑さのみならず、時間帯を変えるなどの進化を加えながら、さらなる気候の変化に適応していくものと考えられる。

A:「C3植物とC4植物は独立に進化した」は「C3植物からC4植物は(何度も)独立に進化した」ですね。まあよいと思います。「着目した」だけでなく、ここで問題設定をきちんと明示して、結論が擦れに対応するようにすると、問題点がわかりやすいレポートになります


Q:今回の授業ではC4植物の光合成が二つの種類の光合成細胞から成ったっていることを学びました。仕組みについては授業で行ったので、そこで思った疑問について考えていきます。このようなC4植物の光合成は組織分化と機能分化が絶対条件であると考えられます。もしPEPCとRubiscoが同一細胞内に存在した場合はどうなるのか。PEPCはRubiscoよりもCO2に対して親和性が高いためPEPCによってCO2固定が行われて、Rubiscoが働かなくなると考えらえる。ほかにはPEPCと脱炭酸酵素が同一に存在するときはATPのみが消費されると仕組みから考えられる。その結果CO2がずっと回り続けていると推測できる。よって効率よく働く場合には様々な条件が同時に成り立つことで力を発揮していると考えられる。そしてこれはC4植物だからこそなしえることで、C3植物には移植しても効果は見られないことも実験結果で出ています。

A:着目点はよいと思います。「そこで思った疑問について」のところでその疑問を明確に提示するようにするとよいでしょう。後半の部分では、考えが述べられていますが、どの部分が結論であるかが明示されていないこともあり、全体として論理の道筋が見えづらくなっています。


Q:今回の講義では、CAM植物が高温乾燥型の環境に適応して光合成反応を日中と夜に分けていることを学んだ。CAM植物は夜に気孔を開けて二酸化炭素を取り込み、昼には気孔を閉じて反応を行うことで水分の蒸散を防いでいる。ここで、CAM植物が生育する条件として、日中と夜の時間比率もあるのではないかと考えた。日照時間が長い場合、夜が短いので二酸化炭素を十分に取り入れることができない可能性が高いからである。 例えば、同じCAM植物を用いて日照時間の長い環境、短い環境、正常な環境でそれぞれ生育させる、という実験を行うとする。日照時間の長い環境では、正常な環境に比べて夜の二酸化炭素を取り込む速度が速くなるのではないかと考えられる。また、日照時間の短い環境では、日中の還元反応の速度が速くなる、またはまだ夜のうちから気孔を閉じて還元反応を行うのではないかと予想できる。後者の方は二酸化炭素が取り込めているので植物の生育にはあまり問題はないが、前者は二酸化炭素が取り込みにくくなっているので不利である。したがって、高温や乾燥などの条件の他に、日が沈んでいる時間が一定以上ある地域でないとCAM植物は生育しないのではないか、と考えられる。

A:よく考えていると思います。日照時間が長い条件で、「夜の二酸化炭素を取り込む速度が速くなる」というのは、「取り込む速度を速くしなくてはならない」ので、「そのような調節がみられるはずだ」ということですよね?条件によって単純に引き起こされる事実と、それに応じて植物がする調節は、きちんと分けて議論しないと、論旨がわかりづらくなります。