植物生理学II 第11回講義

光合成によるATPの合成

第11回の講義では光合成の電子伝達によるATPの合成と還元力の形成過程を解説しました。また、酸素発生型の光合成にはなぜ2つの光化学系が必要なのかについても考えました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:私は今回の講義の中で「反応の概念」について、「なぜ化学的反応と物理的反応があるにもかかわらず、生物的反応が存在しないのか」という疑問を持った。生物の分野において多くの現象が化学的や物理的に説明できることはわかるが、例えば具体例を挙げるとすると「生命の誕生」はいずれの反応にも含まれないのではないかと考えた。単純に化学反応や、物理反応と言い切ることはできない。生物の反応(現象)は、化学や物理の反応が複雑に絡み合い、また新たな反応を生み出すことで起こっている。結論として、「生物における反応=化学的反応+物理的反応」といえるのだと私は考える。さらにこの話の流れとして講義の中で光合成と呼吸のどちらが古いかについて話があったが、このように生物には「進化」という、化学や物理にはない概念がある。これは反応の概念としては少々外れているかもしれないが、生物にはこのように理屈だけでは未だに証明できないことが多く存在し、興味深い分野であるといえる。

A:自分で考える姿勢が感じられてよいと思います。この講義のレポートとしてはこれでよいのですが、もう少し長いレポートだと、「反応」の定義に関する議論や、生物の反応の中で具体的に化学反応でも物理反応でもない部分はどこなのか、といった点が必要になってくるでしょう。


Q:今回の授業では、光合成と呼吸のメカニズムは似ていて、しかも起源的には呼吸のほうが先にできたとされている、ということを教わった。また、光合成は物理的反応と化学反応のmixでできていることも併せて教わった。呼吸や光合成のメカニズムが生まれたのは10億年以上前ということで、逆にそのくらい先になるとヒトが植物を滅亡させたりしてしまい、植物がほとんどなくなった状況でヒトが生きている可能性もないとはいえない。(ほぼないと思うが)そこで、植物がほとんどない状況で、植物以外にもヒトが自ら酸素を生成させられる装置を考えてみる。そこで参考にしたのが「光合成は物理的反応と化学反応のmix」ということである。まず太陽電池を大量に用意する。ここで使う太陽電池は、多接合型太陽電池を利用するといい。これはエネルギーバンドギャップの異なる太陽電池を重ねあわすことで紫外線から赤外線までの波長を無駄なく利用でき、変換効率も理論的には80パーセント後半の数値を将来出すことが可能である。これで得た電力を水の電気分解装置における電源として用いる。もしくは過酸化水素発生セルに接続し、その発生過酸化水素を二酸化マンガンと反応させ、酸素を発生させる。今のは簡略化した系だが、これらの原理を礎に酸素発生させることも可能ではと考える。

A:面白いと思います。ただ、この場合、ヒトが呼吸のために発生した酸素を使うことが想定されているのですよね。水素のほうはどうするのでしょうか。水素は燃料として使えますが、それはあくまで酸素と反応させる場合です。燃料として使えば酸素は消費されてしまってもとのもくあみ、という気がしますが。


Q:壁を越えるのではなくすり抜けるトンネル効果の話をきいたときに、脳内の量子のもつれの話を思い出した。遠くに離れた量子同士が相関をもてることと、トンネルのようにすり抜けることは、本来干渉できないように区切られている壁を超えて干渉できるという点で共通している。もしかしたら、トンネル効果もトンネルをすり抜けているのではなく量子のもつれの話のように、離れた量子が何らかの形によって情報を伝え、すり抜けているように動きを受け継ぐのかもしれない。

A:テーマとしては面白そうですが、思いつきに終わってしまっていますね。「もしかしたら」と考えるところまではよいのですが、そこから論理的に考えて何らかの結論まで持っていかないとサイエンスのレポートにはなりません。


Q:今回の授業では、光合成の仕組みとしてチラコイド膜に垂直におこる電子の移動を垂直方向のプロトンの流れに変換しているという話があった。この電子は光エネルギーから生じたものであるが、では葉に直接電流を流した場合、同じようにプロトンの移動が起こるのだろうか。また、光合成は正常に行われるのか考えてみる。光化学系Ⅱの中心体において水の分解で生じる電子は、回路を流れる電子と同じものである。そのため、外部から直接電流を流したとしても光化学系Ⅱからシトクロムb6/fを通り光化学系Ⅰへとつながる電子の流れは生じるはずである。しかし、ここで問題となるのがプロトンである。プロトンは水を分解したときに生じるものであるため、電子を外部から与えた場合プロトンは生じない。仮に初めは十分な量のプロトンがチラコイド膜の内外にあったとしても、プロトンはカルビン・ベンソン回路においてC3化合物の合成に使われるため、次第に減っていく。するとプロトンの移動により合成されていたATPが作られなくなる。また、カルビン・ベンソン回路も止まるためグルコースの合成もできなくなり、葉は枯死してしまう。結論として、外部から電子を流すことでは葉は光合成を行えない。しかし、プロトンが十分にある状態では外部から電流を流すことによりプロトンの移動が起こると考えられる。

A:問題設定はユニークでよいと思います。ただ、プロトンの数については、やや誤解があるかもしれません。水の分解でプロトンができるのは確かですが、NADP+の還元の際にプロトンは消費されますから、電子伝達でプロトンが増減するわけではありません。また、光合成の電子伝達によって作られるのはATPだけではなく、還元力としてのNADPHも重要です。カルビン・ベンソン回路の話が出てきますが、もし還元剤であるNADPHが作られないと、カルビン・ベンソン回路で二酸化炭素を還元することができません。そのあたり、きちんと考えようとすると、案外大変です。


Q:光合成の電子伝達系をあらためてみてみると、電子の流れの上流から酸化還元電位の高い順に並ぶ、ストロマ側でプラストキノンの還元・ルーメン側でプラストキノンの酸化が起きるというように多段階反応を効率的に進めるための工夫がみられる。ほかの反応について目を向けると、水分子を酸素分子とプロトンに分解して電子を取り出す反応はストロマ側でなくルーメン側でおきている。ルーメン側はチラコイド膜に包まれているので発生した酸素は能動的に膜外に排出する必要があるのではないのか。ルーメン側で水分子の分解反応が起こる利点について考えてみた。まず、水分子を分解して生じるプロトンを中心にみると、電子伝達系の反応系そのものがストロマ側からルーメン側にプロトンを輸送し、プロトンの濃度勾配を利用してATP合成酵素を回転させるための大掛かりな装置ともいえるので、ルーメン側でプロトンが生じることは都合がよい。また、電子の受け渡しを中心にみると、プラストキノンが還元される反応はストロマ側で進まなければならず、不都合な電子の受け渡しをなくすためには次の物質にピンポイントで電子を渡す仕組みが必要である。呼吸における解糖系にある酵素のように、鎖状の構造を振り子のように使うことで物質をやりとりしているとすれば、ある程度の距離が必要で、その距離を稼ぐためにルーメン側で水分子の分解が起きるのは理にかなっているような気がする。

A:よく考えていると思います。酸素分子は極性を持たないので、脂質二重層の透過性はそれほど悪くないはずです。


Q:F1-ATPaseはプロトンの受動輸送によって生じるエネルギーをα3β3リングの回転エネルギーに変換し、ATP合成の触媒となると同時にATPを加水分解することで能動的なプロトン輸送装置にもなるということを学んだ。このリングはαサブユニットとβサブユニットが交互に配置しており、回転軸に垂直な面からみると三放射の相称性がみてとれる。F1-ATPaseが1回転あたり3分子のATPを合成するというのもβサブユニットが3回まわってくると考えれば納得してしまいそうだが、実はATP合成はF1-ATPaseの回転に沿って段階的に起こるらしく、-40°で無機リン酸と結合、-120°でADPの結合、−160°でATPが合成されるらしい〔1〕。つまり観測事実からは120°回転するごとに1分子のATPが合成されるとはいえず、これはF1-ATPaseの対称的な構造と1回転あたり3分子のATPを合成という教科書的な記述とが矛盾するように感じられた。というのも、各角度で段階的に進む反応が正しく起こっているとすれば、最初の合成から反時計回りに40°→80°→260°→40°→…という繰り返しでATPが一分子ずつ合成されることになる。この計算だと1回転あたり3分子のATPを合成するという説明とはつじつまが合うが、260°もの空白の角度があると構造の対称性に反して3つのβサブユニットのうち1つまたは2つのサブユニットは機能的に残りのサブユニットとは違いがあると言わざるを得ない(ATPの一連の合成反応が120°の範囲で起こることになるため)。このことは構造的には同じに見える3つのサブユニットは機能的には異なっている可能性が高く、これは逆回転でATPの分解を触媒するということと関係があるのかもしれない。
参考文献〔1〕ライフサイエンス新着論文レビューDOI: 10.7875/first.author.2011.179

A:着目点も面白いですし、よく考えていると思います。ただ、1つのβサブユニットに注目してみると、1回転でATPを1分子合成するわけですから、ATPの合成ステップが120度単位でおこる必然性はありません。回転にしたがって構造が徐々に変われば、反応自体はある角度に集中していても構わないわけです。ただし、その反応が起こる角度、例えば-160度は、それぞれのβサブユニットに存在するわけですから、全体としてみると、120度回転するごとにATPが生じることになります。1個のβサブユニットの変化が起こる角度と、βサブユニットが3個あることによって結果的に生じる反応の角度を、区別して考えると、すっきりするのではないかと思います。


Q:チラコイド膜において、細胞膜に近い辺りには光化学系Ⅰが多く、内側には光化学系Ⅱが多いという話があった。この理由は未だ明らかになっていないということであったが、これまでの授業で構造の重要性を学んできて、この構造にも意味があるのではないかと考えた。光化学系Ⅱは反応中心がP680であり、光化学系Ⅰは反応中心がP700であり、それぞれ波長680 nmと700 nmで反応を行う。しかし、680 nmと700 nmは近いため、実際逆の波長で反応が起こる(P680が波長700 nmで、P700が波長680 nmで反応)可能性があるのではないかと考える。そこで、波長が短いほど透過性が高くなるという光の性質を考慮すると、前述の二つの波長では波長680 nmの光の方が透過できるということになる。このように透過性に合わせて配置を変えることで違う波長での反応を避け、反応効率を上げているのではないかと考えた。構造の意味を調べるためには、チラコイド膜は袋状であるので、それを広げた時と通常の層状の時とで光合成の効率を測定したら良いのではないかを考える。広げ方としてはチラコイド膜を取り除いて人為的に広げるか(この場合は対象もチラコイド膜のみにする必要がある)、層状を保つのに必要な遺伝子を同定し、その遺伝子をノックダウンして、層状をもたないチラコイド膜を作成すれば良いのではないかと考える。

A:着目点がユニークでよいと思います。ただ、「透過」というのが何を指すのかにもよりますが、もし散乱しにくいという意味でしたら、波長の長い光のほうが遠くまで届きます。


Q:今回は呼吸と光合成の成り立ちについて考えていきます。授業では呼吸と光合成の構造がすごく似ていることからどちらから派生して作られたと聞きました。呼吸が作られたあとに、光合成が派生してできたと習いました。そこで私はなぜ光合成を行う必要があったのかに疑問を抱きました。どの生物も呼吸を行えばいいものをわざわざ光合成を行うようにしたのは、地球の資源に限りがあるからである。このまま呼吸だけ行っていれば酸素はなくなり、動物も植物も生きていられなくなり、動物は植物を食い荒らし、最後には共食いをし、地球上から生物はいなくなっていたと考えます。よって植物は環境を作り、自分たちの繁栄のために光合成を行っていると考えられる。最近ではウミウシも光合成を行っているとの話もあるのでいろいろ調べたい。

A:動物だけでは生きていけない、という論理は、高校などで光合成生物が生産者となっているというところで習いますよね。大学のレポートとしてはやや物足りない気がします。


Q:本講義では、呼吸と光合成は似た点があるということであった。そこで、植物が呼吸も行わなければならない理由について考えた。光合成は光がなければ反応は進まないため、光量が十分でない環境下では生きていけない。呼吸がなければ、雨季に枯れてしまう可能性が高くなる。夜はもちろん、光合成をすることはできず、貯蔵されているデンプンからエネルギーを得る。ここで、デンプンからATPに変換するためには、ミトコンドリアにおける呼吸が必要になる。この理由から、植物は光合成だけではなく呼吸も行っていると考えた。

A:その通りです。これだけだと、やや平凡な感じが否めませんね。もう少し自分なりの考えが欲しいところです。


Q:光合成は光吸収の物理反応と酸化還元反応の化学反応の二つによって起こっている。呼吸の方が、光合成よりも起源が古いことから、化学反応の後に物理反応が組み合わさったことが分かる。植物は自発的に進まない電子伝達反応を光によって促進させている。このような物理的反応を植物はどのように獲得し、光エネルギーを体内で利用可能なエネルギーに変換できるようになったのだろうか。光合成における物理的反応を獲得した背景について考察した。植物は動けないため、消費するエネルギーは少ないが得られるエネルギーも限られている。また、植物体が移動できないことによって動物に比べて環境変化にも敏感になったのではないかと考える。そのため、植物は生きるために如何に安定したエネルギーを吸収できるかが求められたと考える。そこで、太陽が出ていれば常に得られる光エネルギーを有効活用するために進化と共に植物体の構造が複雑化したのではないかと考える。植物は光エネルギーという枯渇しないエネルギーを体内で利用可能なエネルギーに変換することができ、人類よりも最先端の技術を保持していたのだとと改めて感じた。

A:悪くはないと思いますが、考察に比較対象がないために論理が深まっていないように思います。「安定したエネルギー」といっても、夜になると使えないエネルギーが安定といえるかどうか、問題である気がします。このような議論は、他のエネルギーと比較しての特徴を議論するようにすると論理構成がしっかりします。


Q:今回の授業では光合成の酸化還元電位について学んだ。酸化還元電位の異なる生体分子を電子が移動していくというものである。光合成は光エネルギーにより水から電子を引き抜き、その電子によってプラストキノンの還元によりプラストキノンラジカルを経て、プラストキノールを生成する過程で行われる。光合成では光が強すぎると光阻害という現象が起こる。これは、プラストキノンの還元がうまくいかなくなるからではないかと考えた。呼吸はプラストセミキノンラジカルを経ずにプラストキノールから直接プラストキノンになるため安定した反応と考えられるが、光合成反応は光による刺激を与えて二段階反応を起こさなければならないため不安定である。強光下では光による電子の濃度勾配がおかしくなり、プラストセミキノンの状態を維持できずプラストキノンに戻る方にはたらいてしまうため、光阻害が起こるのではないか。

A:考えようという努力は感じられます。ただ、プラストキノンの部分は、ちょっと妙な感じで、僕が話したこととあまり整合性が取れていませんね。何かで調べたのでしょうか。その場合は、なるべく出店を明記するようにしてください。


Q:本講義ではシトクロムb6/f複合体は光化学系Ⅱと光化学系Ⅰの間に存在し、系Ⅱが光を受けて放出したプロトンを系Ⅰへと輸送する機構の仲介役となることを学んだ。シトクロムb6/f複合体の構造を調べてみると、8種のタンパク質から成り立っており巨大な複合体であることがわかった。それではなぜわざわざこの巨大な複合体を必要とするのか。まず系ⅡだけでNADPHを作り出せばいいのではないかと考えた。しかしこれは本講義で聴いたことだが、硫化水素を用いればNADPHを作れるほどの還元力は足りるが、どこにでも存在する水を分解すると放出されるプロトンの還元力が足りない。そのため2段階の反応が必要となった。次にシトクロムb6/f複合体を仲介せず、系Ⅱから系Ⅰに直接プロトンを輸送すれば良いのではないのかと疑問に思った。もし二つの距離が近すぎるとクロロフィル濃度が高くなってしまい、系Ⅱの蛍光を吸収してしまう自己吸収が起きる。これによって吸収した光の強度が強くなり、逆に光合成を阻害してしまう可能性があると考えられる。またそのまえの段階で一部の光を吸収するのは限界があって、クロロフィル濃度が高いと一つ一つが持つ吸収能力を最大限に生かすことができないとも思われる。これらのことからクロロフィル濃度を均一に保つために系Ⅱと系Ⅰは一定距離離れる必要がある。その間のプロトンを輸送するためにシトクロムb6/f複合体は存在すると考えられる。

A:面白い考え方だと思います。ただ、系1と系2の間の距離をとるためだけだったら、そのような巨大な複合体を作る必要はないのでは?また、講義の中で、電子がプラストキノンを2度通ることによってプロトンを運ぶ効率を上げている話をしたと思いますが、それはまさにシトクロムb6/f複合体の部分で起こっていることですから、この複合体の存在意義の一つはそこにもあるでしょう。


Q:シトクロムb6/f複合体は光化学系Ⅱと光化学系Ⅰ間の電子伝達を行うもので、その役割そのものは光エネルギーとは関係がないのにもかかわらず、光エネルギーを吸収するアンテナの役割をもつクロロフィルaや、βカロテンを持つ。今回はその理由について考えてみた。シトクロムb6/fによく似た構造をしている呼吸の電素伝達系で働くシトクロムb/c1複合体がある。その2つのシトクロム複合体に起源的な関わりがあるとすると、シトクロムb/c1複合体にはクロロフィルaや、βカロテンは含まれず、呼吸のほうが誕生が速かったと考えられるため、シトクロムb6/fやシトクロムb/c1の起源となったシトクロムにはクロロフィルaや、βカロテンは含まれなかったと考えた。それから、起源となったシトクロムが葉緑体に取り込まれた後に、その立体構造の安定化を向上させるなどの理由で葉緑体内にあるクロロフィルaや、βカロテンを構造内に取り込みシトクロムb6/fが誕生したのだと思う。

A:きちんと考えていてよいと思います。「立体構造の安定化」が起こる考える理由がわからなかったので、そこが説明できるともっと説得力が増すでしょう。


Q:今回の講義の中で葉緑体内での光化学系の位置について興味を持った。光化学系Ⅰは外側、光化学系Ⅱは内側に存在しているという。光エネルギーは外側から来るので外側から反応が起こるのではないかと私は考えたが、電子伝達系で最初に反応が起こるのは内側に位置する光化学系Ⅱである。私はその理由について、波長の違い、耐久性の違い、光合成における役割、の3点から考えてみた。まず波長の違いについて、光化学系ⅠとⅡでは反応中心の色素の吸収極大がそれぞれ700nm,680nmと異なる。したがってチラコイド内で住み分けを行っているのではないかと考えられる。また、どちらかの波長の方が内部まで届きやすい、という性質がある可能性もある。そのように仮定すると、今回の場合680nmの方がより内側に届きやすい、集まりやすいと考えられる。次に耐久性の違いについて、外側の方が内側よりもダメージを受ける可能性が高くなる。電子伝達系の反応を考えると、光化学系Ⅱ→光化学系Ⅰの順で反応が進む。光化学系Ⅱの反応が起きなければ電子伝達系が止まってしまうので、最初に反応が起こる光化学系Ⅱが内側にあるのではないかと私は考えた。最後に光合成における役割について、電子伝達系は光化学系Ⅱから始まり光化学系Ⅰの反応を経てATPとNADPHがつくられる。これらはストロマでの次の反応に使用されるので、光化学系Ⅰが外側にあった方が効率よく物質の運搬ができるのではないかと考えられる。葉緑体内に光が届けば、どの構造がどこにあったとしても光合成を行うことはできる。しかし現在のような配置になっているということはより効率の良い光合成を行うための植物の進化だと考えることができる。

A:これも、論理が整理されていてよいと思います。このように、複数の可能性についてしっかり考えることは重要です。


Q:今回の講義では光合成と呼吸は同じ起源であるが,呼吸が先に誕生したということだった.呼吸というのは嫌気呼吸のことであり,原始の地球では硫黄や窒素を利用した呼吸であると考えられる.僕は今回は嫌気呼吸と好気呼吸の分化について考えてみた.2つの呼吸の違いについて調べてみたところ嫌気呼吸にはプロトンポンプがないとのことで,嫌気呼吸ではその原型であると期待されるものも見つかっているとのことである.しかしその原型とされる酵素ではポンプとしては働いていないとのことであった.ポンプとして働くには,何が足りなか考えたところ,電子による構造変化を起こす酵素でないとポンプとしては働かないと考えた.

A:ここで、「嫌気呼吸」をどのように定義しているのかにもよりますが、硝酸などを電子受容体にする酸素を使わない電子伝達の場合は、プロトン濃度勾配によるATP合成をします。「調べてみた」場合には、出典を明示してください。


Q:高等植物,シアノバクテリアにおいて光合成の電子伝達を担う膜タンパク質,シトクロムb6/f複合体は補欠分子としてクロロフィルa,βカロテンをもつ.しかし,シトクロムb6/f複合体は酸化還元電位に従って電子伝達を行い,光エネルギーを使用しない.実際文献より,光合成細菌において同様の働きを担うシトクロムb/c1複合体は,これらの色素をもたない.さらに,光エネルギーを使用しなくともクロロフィルaは励起し活性酸素を生じる恐れがあるため,シトクロムb6/f複合体がクロロフィルaをもつことは不利な形質であるように思える.しかし逆に,光化学系IIへ吸収される光エネルギーを減らすことにより,光防御を担っていると考えることもできる.クロロフィルaだけでなく活性酸素消去機構に関わるβカロテンをもっていることがこれを支持する.一方,光合成細菌は嫌気条件で酸素非発生型光合成を行うため,活性酸素は発生せず,この機構は不要なのであろう.ただし文献より,βカロテンとクロロフィルaはシトクロムb6/f複合体上のかなり離れた場所に位置していることから,光防御としてあまり効率的とは言えないかもしれない.
https://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/048/research_11.html

A:複数の観点からシトクロム複合体の光合成色素の存在意義を議論していてよいと思います。ただ、参考にしたページにやや引っ張られた感じがするので、もう少し独自性を正面に出した議論を目指してください。


Q:今回の授業で、高等植物のチラコイド膜という図をみた。チラコイド膜の表面にATP合成酵素、チトクロムab複合体、光化学系Ⅰ、チラコイドの内側に光化学系ⅡやLHCⅡ複合体などが並んでいる。光化学系Ⅱで合成されたものがそのまま光化学系Ⅰに運ばれるのであれば、光化学系Ⅰ,Ⅱは隣に存在したほうが効率がいいが、光化学系Ⅰ,Ⅱは別れて存在している。この理由は今現在明確にわかっていないとのことだが、考察してみたいと思う。LHCⅡ複合体とは光を受容するアンテナとしての機能をもつ。層状に重なって存在することで、光を取りこぼさないようにしているのではないか。エネルギー移動でエネルギーの質は変わらないのであれば、少しでも多く光を受容しておいて進められるだけ反応を進めるために光化学系ⅡをLHCⅡ複合体の隣においているのだと考えられる。また、光化学系Ⅱの反応を通過すると電子は電子伝達系を通りATPを作りながら光化学系Ⅰに入る。光化学系ⅡとⅠの間にも反応系があるため、この2つの反応機構が別の場所にあると考えられる。

A:LHCIIが系2のそばにいるのはわかるのですが、系2と系1が別の場所にある理由は、最後の文からだけではよくわかりませんでした。


Q:授業で、光化学系ⅠやATP合成器官・b/f複合体などと、光化学系Ⅱがチラコイド膜上で、別々の場所に配置し、反応の際はプラストキノンやシトクロムが動くことで反応の流れが進むと習った。隣に並んでいれば良いものを、わざわざ距離をおいていることには、何かしらの意味があると思うので、それについて考察したい。まず、距離を置くことのメリットを考えてみる。一つ目は、光化学系ⅠやⅡを始めとする光合成の器官は、それぞれ複雑な構造を持つため、近い距離で密集しない方が良いこと。二つ目は、光化学系ⅠとⅡでは、距離を離すことで光の奪い合いや、二か所間の反応経路がショートカットしてしまうことを防ぐことができる。次に、デメリットを考える。一つ目は、光化学系間に距離があるために、反応のスピードが落ちてしまうことである。二つ目に、プラストキノン等による電子などの物質伝達中に、誤って他の反応にそれらを渡してしまうリスクも増えるであろう。そして三つ目に、長距離の伝達にはエネルギーを要する。これらのメリット、デメリットを比較して言えることは、いくら反応のスピードが落ちてしまったり、反応を進めるのにエネルギーが必要であったりしても、光化学系Ⅱ→光化学系Ⅰの経路で正しく反応が進めることの方が植物の生存において必要なのではないかと推測できる。また、同時にプラストキノン等による物質伝達のミスのリスクは、距離が近い場合での光化学系間の反応経路のショートカットのリスクよりも低いと推測できる。

A:論理的に考察を進めていてよいと思います。最後の「メリット、デメリットを比較して言えることは」の部分は、「もし、光合成系がメリットを最大にするように進化しているとすれば」という意味でしょうか?実際にはメリットがデメリットを上回っているはずだから、という前提があるのか、ないのかは、はっきりさせたほうがわかりやすいと思います。