植物生理学II 第6回講義

植物の気孔・葉の紅葉

第6回の講義では主に植物の気孔の働きと、紅葉の話を取り上げました。。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:沈水植物は日光が届きにくいという大きな欠点を抱えながらも植物全体が水中に存在している。普段自宅で魚を買う時などに使われる水草が例に挙げられるので、多くの生物のすみかや産卵場所になり、水草を入れることで水の濁りを改善することもできる。そこで今回はこの沈水植物を用いた水質浄化の作用について考察したい。この沈水植物を用いることで、まずは太陽エネルギーを必要としないのでエネルギーを節約することができる。また、植物が存在することによって日光を遮ることとなり、プランクトンが呼吸しにくく生存しにくいことでその発生を比較的防ぐことができる。そしてそれに伴いアオコの発生も抑えることができる。一方で欠点について考えてみると、第一にはやはり自然の植物を対象とするので日照時間や気温などの環境要因により洗浄効果が影響を受けてしまう。また、一本の植物体では効果が少ないために多くの植物を必要とし、広大な場所も必要である。このように長所と短所があるが、私は経費や土地があるならば沈水植物を用いた浄化をすべきであると思う。

A:他の人が取り上げていない話題を議論の対象に選んでいる点は評価できます。ただ、論理的なつながりがやや弱いですね。まず、沈水植物とは言え、植物ですから「太陽エネルギーを必要としない」という表現は適切とはいえません。また、「プランクトンが呼吸しにくく」とありますが、動物プランクトンと植物プランクトンでは、受ける影響が全く異なるはずです。また、アオコの発生の部分も、アオコがプランクトンの一種だからという論理なのかどうかが文章からでは読み取れません。そして、最後に長所・短所を議論する方向性はよいのですが、それには比較対象を明示しないといけません。比較対象も広大な場所が必要であるのならば、それ自体は欠点とはいえないでしょう。


Q:サボテンは、砂漠の環境に適応して、表面積をできるだけ小さくしたまま体積を大きくするために球の形をとり水分を保持しているという話があったが、他にもサボテンが砂漠に適応するために形質を工夫している点があるのではないかと考えたので考察する。サボテンといえばすぐに思いつくのは、針のような形状をしている葉だ。今まで外敵から守るために針の様な形状をしていると考えていた。もちろん、砂漠の生物からすれば、サボテンに針がなければ格好の水分補給源となるので、針は外敵から身を守るという役割も果たしていると考えられる。しかしそれだけではなく、砂漠という光が律速要因ではない環境では葉で光を集める必要があまりないため、水分を失いにくいようにすることも針のような形状をもつ理由であると考えられる。

A:この場合、外敵から身を守るためには針である必要があるのに対して、水分を失いにくくするためであれば、何も針である必要はなく、存在自体をなくしてしまえばよいわけですから、「針のような形状をもつ理由」にはならないような気がしますが・・・。


Q:今回の講義で一番印象に残ったのは、緑色のキャベツは玉になっている部分でも光合成するのに対し、紫キャベツは玉の部分では光合成しないということである。紫キャベツは玉になっていない一番外側の土に近い葉で光合成をしている。玉の内部は光が当たらないので、玉になっていないところで光合成をするのはとても効率がよいのだと思うのだが、一番外側の葉が虫に食べられたり強風で飛ばされたりして無くなってしまったら玉になっている部分の葉でも光合成するようになるのだろうか。紫キャベツが光合成を効率よく行なうのであれば、一番太陽光があたる玉になっている部分で一番外側の葉が光合成するのではないかと考えた。これを確認する方法として、紫キャベツの栽培初期に本来光合成を行なう葉を切除し、そのまま育て、成長したところで授業で見た光合成しているかを可視化できる機械にかけて測定する方法を考えた。このとき、玉の一番外側の葉が光ればこの仮説が正しいと考えられる。

A:生物が環境に応じて自分を変える能力を「可塑性」という言葉で表現することがありますが、これは、まさに可塑性があるかないかに着目した面白いレポートだと思います。


Q:バナナの葉には構造的に弱い部分があり、強い風が吹くとその部分が裂けるという話があった。授業では必要のない機能であると結論が出されていたが、ではなぜバナナはこのような機能を持つに至ったのか予想してみる。バナナは熱帯の植物であり、非常に大きな葉を持っている。葉が大きいということは、一枚の葉に含まれるエネルギー量も一枚の葉が光合成によって生み出すエネルギー量も大きいということである。仮にバナナの葉が構造的に弱い部分を持っていなかったとする。その場合、非常に強い風が吹いたときや、上から大きなものが落ちてきたときに破けて風の影響や被害を最小限に抑えることができず、ちぎれてしまう可能性が高くなる。大きな葉をもつ植物では、一枚の葉を失うことによるエネルギーの損失は非常に大きい。もちろん、このような事態がそれほど頻繁に起こるものでないことは予想できる。しかし葉の構造を弱くすることにかかるコストは植物にとってほぼ0であり、全体的に見ればプラスの要因として働いているのではないだろうか。また、このような機能を備えたことにより葉がちぎれるリスクが減った。そのため葉をより巨大化できるようになり、エネルギー合成量が上昇し、植物体がより大きくなることができた。その結果構造的に弱い部分を持たないバナナにくらべより幹が高くなり、日光を独占するようになり、葉に構造的に弱い部分を持つバナナが今日まで生き残ってきたと考えられる。

A:千切れれることで、柳に風と受け流す、という戦略ですね。コストに関しても考えていて、よいレポートだと思います。


Q:紫キャベツのように植物体全体が紫色の植物はあまりないが、サツマイモのように茎の部分のみ紫色の植物は身近なところでよく見かける。これだけ多くの植物にみられるということは単なる偶然ではなく、何らかの原因や利点があるためと思われる。今回は、緑色ではなく紫色であることに着目して、利点をいくつか考えてみる。紫色光は白色光から緑色光を抜いたものなので、紫色の物体は緑色光を吸収し、光合成に必要な青色光と赤色光を反射する。そのため、うまくやれば光合成色素が存在しない部位にあたった太陽光から光合成に必要な波長のみを取り出して、光合成色素が存在する部位に反射できる。また、紫色の原因色素であるアントシアニンが抗酸化物質であることと併せて考えると、紫色は光合成に必要な波長の光を反射するので、内部での光合成の副産物として酸化剤が生成することの抑制にも効果があると思われる。

A:考え方がユニークでよいと思います。ただ、茎はあまりに細いので、そこで反射された光を使ったとしても、それほどお得感はないように思いますが・・・。でも、このように考えることが大切です。


Q:孔辺細胞には青色光受容体フォトトロピンが発現していると授業で知って、表皮系において孔辺細胞のみが葉緑体を持つのと何か関係があるのではないかと思った。葉緑体のチラコイド膜に発現しているクロロフィルも光受容体だからである。しかしフォトトロピンは孔辺細胞の細胞膜に発現している〔1〕らしいので光に応答した気孔開閉に葉緑体が直接関与するとは今のところ言えそうもない。葉緑体は1細胞内に無数にあり細胞質から受け継がれるため、細胞分裂時に娘細胞の一方に葉緑体が含まれないことは確率的に低いのではないか。そうなると葉緑体をもつ孔辺細胞は表皮細胞と分裂細胞を共有している〔2〕ことと併せて考えると、むしろ多くの表皮細胞に葉緑体が無いことの方が不自然に思われる。表皮細胞への分化を制御する遺伝子としてシロイヌナズナのATML1遺伝子が知られている。この遺伝子を葉肉細胞で強制発現させると葉肉細胞は色が抜けて形態的に表皮細胞化する〔3〕。このことから表皮細胞は陸上環境の乾燥や放射線などのストレスに恒常的にさらされ新たな細胞との入れ替わりが激しいため、植物体を守る物理的障壁として特化した結果、代謝機能が積極的に低く抑えられているのではないか。よって孔辺細胞に積極的に葉緑体が残されているのではなく、表皮細胞において積極的に葉緑体が排除されることで表皮系では孔辺細胞の葉緑体が目立ってしまっているのだろうと考えた。
参考文献〔1〕日本植物生理学会HP http://jspp.org/hiroba/essay/kinoshita.html、〔2〕鳥居啓子先生のHP http://faculty.washington.edu/ktorii/stomata.html、〔3〕S. Takada et al. ATML1 promotes epidermal cell differentiation in Arabidopsis shoots, Development 140, 1919-1923(2013).

A:単に関連の情報を調べただけではなく、それをベースに自分なりの論理を構築している点が評価できます。ただ、最後のところ「新たな細胞との入れ替わりが激しい」は、動物のイメージに引っ張られた誤解ではないでしょうか。「入れ替わりが激し」くては、クチクラなどの硬い物理的な障壁を作るのは難しくなるでしょう。


Q:今回の講義も前回に続き葉の形についてであった。その中で、サボテンの話が出てきた。サボテンは葉が退化し、茎に水分を蓄える多肉植物である。サボテン以外にも例えばオボロヅキのような多肉植物も存在する。これらの多肉植物は茎ではなく、葉に多く水分を蓄える。サボテン以外の多肉植物は葉が器官として維持されていることから、光合成は十分に行える環境、つまり、水や光エネルギーが過不足なく、適当な量だけ得られる環境で生育しているのではないかと考える。そのため、サボテンとその他の多肉植物とを比較すると、サボテンの方がより厳しい乾燥地帯で生育するのに適しているといえそうだ。また、葉は棘のようであり、もはやサボテンは茎だけで十分なのではないかと一瞬考えたが、次の世代を残すのに花を咲かせなければならず、その点で葉はなくてはならない。葉が棘のような形になったのは、やはり光エネルギーを必要以上に受け取らないようにするためではないかと思う。

A:よく考えていると思います。ただ、せっかく多肉植物と比較したのですから、多肉植物の名前の由来である葉の厚みを議論に取り入れるとよかったですね。最後の花を咲かせるために葉が必要であるという話は、花は葉の変化したものなので、器官として維持しておく必要がある、という論理でしょうか。そうであれば、そのように丁寧に説明したほうがわかりやすいと思います。


Q:今回は光合成が葉の色や形などに関係してくるのかというところに疑問を持ちました。特にキャベツでは全体で光合成しているのに対して、紫キャベツの玉の部分はしていないことに不思議に思いました。その結果として紫キャベツは光合成を玉ではなく周りの大きな葉で行って成長していることがわかりました。なぜ玉では行わず、葉だけでしているのか。私は進化の原因であると推測します。効率良く光合成を行うためにはうまく吸収をする必要があります。紫キャベツはキャベツが全体で光合成しなくても成長できることから全体で光合成をするのを退化させたのではないかと思います。キャベツと紫キャベツを比べると畑に埋まっているときとでは葉の開き方が紫キャベツは大きく、外側に開き光を集めやすい状態にいると考えます。その点キャベツは丸い形を覆うような形状で、全体で光合成しなければ光があたる表面積も小さいのではないかと考えられます。よって紫キャベツはキャベツの無駄な光合成を退化させることで少ないエネルギーで成長するようにある意味で進化したのではないかと考えます。

A:論理的に考えようという姿勢は十分に感じられます。結論で、「キャベツの無駄な光合成を退化させる」とありますが、もし本当に無駄なら、キャベツも光合成を退化させるでしょうから、その差を説明する必要があるでしょう。そこが、「葉の開き方」の違いなのでしょうから、「葉の開き方の違うキャベツでは光合成が無駄になっていない」という結論にしたほうが、前半の部分と整合性が取れると思います。


Q:紫キャベツの丸い部分の葉は、光合成をしない、という事実にとても驚愕した。紫キャベツはそしたら、生存競争に不利であるが、なくならないのは、ヒトの栽培によるものであろうと考えた。しかし、そうでないとしたら、紫キャベツは日差しがとても強い地域に生息していた際に、受光量を抑えるために丸い部分の葉のクロロフィルをもたないようにし、成長した葉にだけクロロフィルをもたせ光合成しているのではないか、と考えた。しかし、キャベツは暖かいと丸くならなく、受光量の多い地域は暖かいと一般的には考えられる。よって、丸い部分の葉における光合成効率がとても低いために光合成をしなくなったのか、あるいは、受光量を減らすために葉がクロロフィルをもつようになる時期を遅らし、葉が成長するとクロロフィルをもつようにした、というふうに考えた。よって、紫キャベツを日差しが強い地域の暖かい時期というキャベツの丸くならない条件下で栽培し、若い葉が光合成しなければ、前者の理由ではない、と確かめることができるだろう。後者を確かめる場合は、受光量の低い条件下で栽培してみればいいと思うが、日本で紫キャベツも普通のキャベツも栽培されており、普通のキャベツの丸い部分の葉は光合成をしていることから、後者の理由は考えにくいのかもしれない。もしかすると、何十年も両条件下で栽培すれば、何らかの変化があるのかもしれない、と思った。

A:これも、論理的に考えようという姿勢が十分に感じられます。


Q:今回授業で斑入りの植物が紹介されており、その主な原因としてウイルス感染が挙げられていた。植物細胞でももちろんウイルスは増殖できるのは言われてみれば当たり前だが、ウイルスというとつい動物などに感染するものを真っ先に思い浮かべてしまうので少し意外だった。ウイルス感染の点において植物と動物の違いを考えると、動物は免疫機構を持つが植物はそのような仕組みがない。するとわざわざ免疫機構を持つ動物に感染するよりも手薄な植物に感染した方がウイルスが増殖し繁栄するのに有利なような気がするが、実際には多くのウイルスが動物に感染することに疑問を抱いたのでこのことについて検討してみた。
1.植物にも動物相当、あるいはそれ以上の防御機構があるのではないか:植物はウイルスに対してRNAサイレンシングという方法で自身を守っているようだ[1]。植物はウイルスRNAを分解することで遺伝子の発現を防止しているが、一方動物の免疫機構において主戦力となるのは抗体である。抗体自身はウイルスを排除することができない上に、抗体が十分量産生されるのにある程度時間を要することを考えると、直接ウイルスゲノムに影響を与えることができるサイレンシングはウイルス排除にかなりの効力があるように思える。
2.行動範囲の違いについて:植物は自身で動き回ることができないことを考えるとその分布範囲に制限がある。一方動物は行動範囲が広い上にその中で出会う他の個体も多い。
3.人による影響:ウイルスが感染する植物はナスやピーマンなど人が食べる植物も多いが、これらの植物がウイルス感染による病徴を示した場合、それらの個体を廃棄することができる。一方ヒトにウイルスが感染したからといってその個人を排除することはできないし、家畜などに感染した場合でもその手間や労力を考えると植物に感染したものの方が容易に排除される。
 他にも様々な要因があるだろうが、今回は以上の3点から、ウイルスが植物だけでなく動物に感染することの有効性が見出せた。
[1] https://www.gene.affrc.go.jp/pdf/manual/micro-31.pdf

A:面白い点に着目したと思います。問題点の設定自体は単純ですが、きちんと調べて答えを考えていますので、よいと思います。


Q:本講義においてサボテンが茎で光合成を行っていることに興味を持った。これに関してなぜサボテンが葉ではなく茎で光合成を行うのか考察する。一般的に植物は葉で光合成を行うため、平たい形をしている。しかし、サボテンの場合はまずこのような形態の葉がなく、棘のような形をしている。この形態にはサボテンの生育する環境が大きく関わっていると考えられる。サボテンは乾燥した地域や熱帯に生育し、多肉植物と呼ばれる。サボテンのおかれる環境下では光合成で得る有機物よりも水分を確保することの方が重要であると考えられる。そのため、葉を広げず外気と触れる表面積を減らしつつも、植物は光合成をしなければ生きていけないため、茎でおこなっている。葉が棘のような形態になっているは、茎で光合成を行う際に光を遮らないようにするためと他の生物から身を守るためだと考える。サボテンの子孫繁栄は他の植物のように簡単なことではなく、少数の子孫で生き延びられるようにそれぞれが棘で天敵から身を守っているのだと考える。つまり、サボテンの葉は光合成ではなく、外敵から身を守る機能があるのだと考える。このように光合成は葉で行う植物が多いが、種によっては茎や根など他の場所でも行うことができる。

A:悪くはないのですが、前半は講義の中の説明のとおりですから、レポートとして評価されるのは後半部分です。その場合、刺は身を守るためにあるという結論は、やや独創性にかけますね。


Q:授業では青色光を感知したフォトトロピンが気孔を開くことの促進を行うと学習した。これについて詳しく調べてみると、青色光を受けたフォトトロピンは細胞膜上のHATPアーゼを活性化することで過分極を促しカリウムイオンの導入を促進して細胞内の浸透圧を上げていることがわかりました[1]。しかし、青色光のシグナルがどのように伝達されHATPアーゼを活性化しているか不明である。そこで今回はこれを明らかにするための実験系を考えてみたいと思う。この実験の仮定としてはHATPアーゼを活性化させる何かは物質であるとする。そこで行う実験では、孔辺細胞に多量のATP分解酵素を注入し細胞内のATPを極端に減らしたのちに青色光を当て、すぐさま細胞内の成分を調べます。そして、同様にATP分解酵素を多量に導入された孔辺細胞の細胞内と成分がどのように異なるのかということを比較することで青色光により増加した物質を同定するという実験です。この実験において重要なのは細胞内の成分調査である。手法によっては求めたい成分を分解または除去してしまう可能性があるため様々な手法をとることが求められる。またこれらの実験を通して確かな物質が見つからない場合、次は先の実験を再び行いそこで得られた細胞のフォトトロピン周辺での分極化などの変化を調査をする実験を考えたが勉強不足のため分極化の調査方法が思い浮かばなかった。
[1]日本植物生理学会、気孔の働きと開閉の仕組み、http://jspp.org/hiroba/essay/kinoshita.html

A:面白い考え方だと思います。シグナル伝達の方法にはいろいろなものがありますが、主には、タンパク質リン酸化のカスケードとプロテアソームによる転写制御関連因子の分解が挙げられます。分解される場合は、そのタンパク質の量を見ればよいのですが、リン酸化の場合は、タンパク質の質的な違いを見る必要がありますから、ちょっと難しいですね。


Q:今回の講義でサボテンを例に取り、光以外の環境要因が光合成速度を律速している場合があることを学んだ。サボテンの場合では、サボテンにとって水の確保が光よりも死活問題だった。では針葉樹の場合はどうだろうか。松などの針葉樹も葉が針状をしていて、光合成には不向きな形をしているように見える。針葉樹は他の広葉樹と同様の場所で生きる事も出来るが、どちらかというと山などの高所で生きていることが多い。高所では空気は薄く、気温も比較的低い。そのような場所では光に対して、酸素の確保が死活問題となってくる。針葉樹の場合は、水生植物と同様に葉を細かくすることで、空気の交換をしやすくしているのだと考えられる。

A:着眼点はよいのですが、光合成に必要なのは酸素ではなくて二酸化炭素ですよ。針葉樹との比較はさまざまな点から考察できる面白いポイントだと思います。


Q:今回一番印象を受けたのはキャベツは光合成をするが紫キャベツ光合成をしないということでした。キャベツはもともと緑色だから葉緑体が存在していて光合成していることは明確である。では紫キャベツは光合成をしないのになぜ生育出来るのかを調べてみたところ、紫色の部分は一部で他の部分は緑色をしており普通に光合成をして生育していることがわかった。またアントシアニンという色素によって紫色になっていることがわかった。では光合成が出来なくなる代わりにアントシアニンを合成する利点を考えてまる。地域によって紫外線が強すぎるとDNAを破壊してしまう場合があり子孫の繁栄に支障をきたす可能性があるがそれを防ぐために紫外線を吸収するアントシアニンが合成される。つまりある程度成長したキャベツが光合成量を増やす必要がなくなったため、種の保存のためにアントシアニンを合成して紫色になる部分が生じると考えられる。

A:これも前半は講義の繰り返しなので、評価の対象となるのは後半です。ただ、その肝心な部分の論理がわかりません。「ある程度成長したキャベツが光合成量を増やす必要がなくなったため」とありますが、キャベツが育つと紫キャベツになると考えているのでしょうか。もう少し、論理立てて文章を書けるとよいですね。


Q:葉の形態は、植物の周囲を取り巻く環境や、その本質的な機能によって決定されている。たくさんの実例を講義で学び、自然と植物に目を留める機会が増えると、周りから浮いた葉形をしたある植物に目が止まった。マツである。今回は講義で学んだ知識を活かし、マツの葉形を切り口にその生態を考察する。マツの葉は一般的に「葉」と言われてイメージする扁平な広葉とは異なり、針のような細い葉形をしている。葉の表面積が広葉と比べて圧倒的に小さい。光合成という側面からすれば、非常に不利な葉の形態をしているのではある。これはマツの生存にとって、光以上に枯渇している「何か」が存在していることを示唆している。おそらくその枯渇している何かとは、葉の合成に必要不可欠な窒素やリンといった栄養素だろう。マツの生育する環境では、土壌から吸収されるこれらの栄養素が不足しているため、マツは葉そのものを小さくすることで、貴重な資源(=栄養素)の節約をしているのである。マツが冬になっても葉を落とさないのは、新しく合成する葉の量をできるだけ少なくしようとしているからなのであろう。つまりマツは“あえて”葉を小さくしているのではなく、“仕方なく”葉を小さくしているのである。一方で葉の表面積を小さくしたことによって、マツが獲得した性質が存在する。それは乾燥耐性である。葉の表面積が小さいということは必然的に気孔の数も少なくなる。気孔の数が減少すると、気孔を介して行われる蒸散量も減少するため、気孔から消費される水分量を減らすことができる。この性質は土壌が乾燥していたり、湿度の低いような環境において有利に働くと考えられる。つまりマツは栄養素の不足により切り詰めた節約生活の末に、他の植物では生育環境として適さない条件でも生育できる強みを得ていたわけである。

A:きちんと論理が展開されていてよいと思います。ただ、一箇所だけ、足りないものが窒素やリンであるという部分だけは理由が示されていません。ここにも、何らかの理由付けができると、全体を通して論理が通る印象を与えることができると思います。


Q:講義で紫キャベツの光合成の話が出た。その際に人が関与し改良した種については自然界の進化とは区別しなくてはならないと言っていたがそのことについて疑問を持ったので考察する。人為的に作られた種は進化の中で区別する必要があるのか?紫キャベツは球状の葉の部分では光合成を行っておらず,大きく横に開いた葉でのみ光合成をしているということであった。このキャベツは交雑種であり、球状の部分で光合成を行わないメリットは考えにくい。綺麗な紫色であることが人々に好まれ育成されることで紫キャベツは種を保っている。また、ヒトはこの紫キャベツを食べることで利益を得ている。これは相利共生と考えることができると思った。ヒトももとは自然の中で進化し現在に至る。その過程で紫キャベツから利益を得る代わりに紫キャベツを害虫などから種を守ることに貢献していると私は考えた。

A:考え方としてはよいと思います。進化では、自然選択という概念が重要ですが、人為的な選択を自然選択の一種として考える、ということは、人間が自然なのかどうか、という問題に帰着します。「ヒトももとは自然の中で進化し現在に至る」という部分がややそのあたりにかすっていますが、もう少しこの点について述べられてもよいように思いました。


Q:今回の授業では、水生植物について興味を持ち、考察してみようと思いました。水生植物、今回は特に沈水植物は、大くくりにして考えれば一度地上へと進化を進めながら、再び水中へ戻る進化をした植物であるので、以前に比べて水が取り入れやすくなった半面、光や二酸化炭素を逆に取り入れにくくなったと思います。道管が退化し、また浮力によって個体を支える茎を強くしなくてよくなり、光をより取り込みやすくするために葉の厚さを薄くしていることは授業で習いました。また、気孔が少なくなることについても習いましたが、沈水植物の根の方にはどうやって酸素、および光合成をするならばそれに必要な二酸化炭素を運んでいるのかが気になりました。空気は水より軽いので浮きやすく、おそらく水深が深くなる根の方まで運ぶには本来の陸上植物では必要としなかったエネルギーがかかりそうです。そこできになって調べてみると、水生植物では通気組織というものが発達しているのだとわかりました(http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/aquaplant/framepage1.htm)。このように茎に空気をためられると、流れが滞ってしまわないのか心配ですが、その一方でおそらく退化した道管の代わりのような役目を担って植物体を支えることもできそうだなと思いました。

A:疑問を持って、調べて、答えを考えるというプロセスは重要なのですが、この講義のレポートではそれだけではなく、ぜひ、自分なりの論理を盛り込むようにしてください。水生植物といっても、講義で紹介したようにいろいろなものがあり、葉が気中に出ているものと、植物体全体が水中になるものでは、条件が大きく異なります。当然ながら通気組織の位置づけも変わってくるでしょう。調べたことに満足せずに、そこから自分なりの論理を展開することが重要です。


Q:今回の講義で、水中植物と気中植物の違いについて触れられた。環境の違いによるものだとされ、酸素条件や光条件などが挙げられた。ここで、授業では深く触れられなかった二酸化炭素とpH条件について考えてみようと思う。二酸化炭素は炭酸となって水に溶解するため、他の物質に比べて溶解度がとても大きい。水中に二酸化炭素がたくさん供給される環境下では水質のpHも大きな影響を受けると考えられる。水中植物や植物プランクトンは、昼間は活発に光合成を行うため水中の二酸化炭素は減少し、pHはアルカリ性に変化していく。夜は水生動物や植物プランクトンの呼吸によって二酸化炭素が放出され、二酸化炭素は炭酸となって、pHは次第に酸性になる。陽イオンが蓄積し、硝酸イオンなどが生物に吸収されてしまう結果、陽イオンと炭酸イオンが水中のpHを決める大きな要因と考えられる。水中植物は二酸化炭素ガスは利用できるが、炭酸を利用できない種類もあるため、二酸化炭素ガスと炭酸の存在比を左右するpHは水中植物の光合成に大きな影響をもたらすと考えられる。

A:悪くはありませんが、二酸化炭素の利用とpHの関係については、講義の中で、光合成生物が利用できる炭素源が酸性環境では減るという話をしましたよね。できたら、もう少し独自の視点が欲しいところです。


Q:通常のキャベツは球体部が緑色であり、クロロフィルを持つため、光合成ができる。一方、紫キャベツにおいて、球体部の紫の葉はクロロフィルを持たないために、紫の部分では光合成をすることができず、球体の外側の大きな開いた葉で光合成を行うと授業で学んだ。ここで私は、そもそも紫キャベツのように、その球体外の大きい葉のみでキャベツ全体での光合成をまかなうことができるのであれば、現に同様の葉を持つ通常のキャベツも、全ての葉が緑である必要はないのではないかと考えた。たとえ、通常キャベツの球体の外側からの葉の数枚は光合成をしているとしても、球体の内部のほとんどの葉には光が届かないため、そこの葉ではクロロフィルを持つ必要性がない。つまり、外側にクロロフィルを持った大きな広がった葉(もしくは、加えて球体の外側の葉の何枚か)があれば、球体部分でのクロロフィルの有無はあまり関係がないのではないかと思われる。そう考えると、今後、テクノロジーを用いて、外側の葉のみクロロフィルを持ち、球体は全く別の色を持つ新種のキャベツを開発し、栽培することも不可能ではないように思う。最後に、なぜ通常のキャベツは球体でも緑の葉を持っているのかを考えた。それはおそらく、進化の問題であると思う。球体の内側にも、光合成のためのクロロフィルを持つ必要があったわけではなく、もともと、外側に緑の葉を重ねて持っていた植物が、徐々に球体へと進化していったために、現在でもクロロフィルを持ったままなのではないかと推測する。

A:全体の流れはよいと思います。ただ、最後の部分、徐々に球体へと進化したのであれば、同時に、徐々にクロロフィルを減らす余裕はあったでしょうから、あまり理由にならないように感じました。また、キャベツも中心部の葉はクロロフィルを持たない可能性もありますよね。


Q:今回の講義では、水生植物の葉について学んだ。水中の方が陸上よりも酸素濃度が少なく、二酸化炭素も取り込みにくく、太陽光も弱い。そしてpHも変化しやすい。このような環境で生育する水生植物には、陸上植物と比べて工夫があるのではないかと考えたので、考察する。講義の中で、二酸化炭素を取り込みやすくするために細胞層が少なくクチクラ層がないこと、が挙がっていたので、それ以外の点を考える。まず、太陽光が薄い水中で効率よく太陽光を集めるには、葉の大きさを大きくするのではないか、と考えた。しかし、川など水流を常に受ける地域に生育している水生植物は、葉が大きいと水流の勢いを受けやすくなってしまうので、大きい葉をつけるとは考えにくい。また、水生植物は浮力の影響もあって陸上植物よりしっかりとした構造ではないものが多いので、大きい葉はダメージを受けやすい。したがって葉の1枚1枚を大きくするのはリスクが大きいことがわかる。そこで次に、光合成をする葉の量(表面積)を多くする、ということが挙げられる。オオカナダモの葉を考えると、茎にびっしりと小さくて薄い葉がついている。これは、水中での弱い太陽光を効率よく吸収するためではないだろうか。したがって、水生植物の一部は光合成をする葉の表面積を大きくすることで弱い太陽光にうまく対応しているのではないかと考えられる。また、葉だけではなく茎など陸上植物では光合成をしない部分でも光合成をする個体も存在するのではないだろうか。これを確かめる方法は、光合成を可視化できる機械で水生植物を観察することである。最後に、水生植物の種類によって吸収する波長が違い、水中で住み分けがあるのではないかと考えた。水中では太陽光が弱いため、それぞれの植物が利用する波長を変えることで水中でも生き残っているのではないだろうか。これを確かめる方法は、植物体にそれぞれ別の波長の光を当て、生育状況を観察することである。おそらく、青色光、赤色光、緑色光それぞれを利用する植物体が存在しているのではないかと考えられる。私は、水生植物はこのような陸上植物にはない工夫をすることで水中で生育できているのではないかと考えている。

A:よく考えていると思います。最後の点は、藻類ではそのような現象が見られるとされています。あと「茎など陸上植物では光合成をしない部分でも」とありますが、講義の中でアカカタバミの茎が光合成をしている様子を見せましたよ。