植物生理学II 第8回講義

水と栄養塩の吸収

第8回の講義では、水と栄養塩の吸収について、アクアポリンの働きと窒素固定反応を中心に解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今回の授業では、主に窒素固定、窒素同化に関連することについて学んだ。その中で、最も興味を引いたのがシアノバクテリアのヘテロシストへの分化による窒素固定の分業である。ある種のシアノバクテリアでは10個に約1個の細胞が窒素固定を行うのに特化し、光合成を行うことのできない細胞に分化するということである。これは、同じゲノム情報を持つ細胞が異なる働きを持つ細胞に分化し、同じ環境下で群を形成して生存するという興味深い現象で、多細胞の生物が分業のために組織、器官を持ち一つの固体を成しているという一般的な現象を極めて原始的で小さい単位で行っているようにもとれる。一方でシアノバクテリアとは異なり、それが進化を重ねて誕生した種である陸上植物は、主に窒素固定を窒素固定細菌などの別の生物に任せて窒素化合物を体内に取り込む。ここで、シアノバクテリアより進化した植物がなぜ一つの生物固体内で窒素固定を行う細胞と光合成を行う一般的な細胞とを分化させていないのかを考える。これは、陸上の多細胞の植物は水中で生息するシアノバクテリアと異なり、植物体として機能するために形を持つ必要があるためシアノバクテリアのように10対1の割合でヘテロシストを作るためのシグナル伝達が、細胞等が障壁となることで溶媒を介して傍分泌的に上手く行えず、同じ個体内で窒素固定用の細胞を用意するシステムが進化的に保存されなかったのだと考えられる。

A:面白い点に着目していますし、レポートとしてもまとまっていると思いますが、論理に関してはいま一つ説得力に欠けるような。陸上植物でも根粒を作っているのですから、そこに細菌を共生させる代わりに自前でニトロゲナーゼを作っても問題はないのでは?根粒の数であっても、ヘテロシストと同様に一定の数に保つための制御系は必要です。


Q:根粒菌はマメ科の植物に光合成産物を分けてもらい、マメ科の植物は根粒菌に窒素を分けてもらうといった共生関係を築いている。このおかげでマメ科の植物は荒れた土地でも生育が可能で、生存競争に有利となっている。この関係は他の植物には見られず、マメ科の植物やクローバーなど一部の植物に特有のものである。こういったことを講義で聞いたとき、いっそのこと根粒菌を細胞内に取り込んで葉緑体のように1つの小器官としてしまっても良いのではないかと思った。しかしそういった意味での共生を行わないのには意味があるはずなので、今回はその点について考えていきたいと思う。理由としては2点考えられる。まず1つ目は、窒素固定に使われるニトロゲナーゼが酸素によって破壊されてしまうため、全細胞にあることが意味をなさないことがあげられる。地下部以外では光合成によって発生した酸素によって根粒菌が窒素固定をできなくなってしまうと考えられるからである。このことから植物体全体に共生することは意味をもたず、現在のかたちで根に共生する方が良いと考えられる。次に2つ目は、根粒菌が多くありすぎても意味がない可能性があげられる。根粒菌に感染した根の写真を見てみると、どの写真もある程度の数までしか根粒がついていなかったように感じた。このことから根粒菌が多くつきすぎると窒素が多く固定されすぎたり、他の化学物質が出すぎてしまったりしてフィードバックのような現象が起きてしまう可能性が考えられる。細胞内に共生することで生じる欠点としては以上のようなことが考えられる。植物体全体に共生することが意味をなさないのであれば、小器官として共生するために多くの障壁を乗り越えるよりも、根に感染するという現在の形態をとっている方が効率的であると考えられる。
参考文献:http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/044/research_21.html

A:これも、レポートとしてよくかけていると思いますが、上のものと同じような論理展開で、同じような問題点があります。例えば、葉緑体は光合成のために細胞内共生したと考えられますが、根では光合成ができませんよね。それでも植物体全体が葉緑体(もしくは色素体)を持ちますから、それだけでは根粒菌が共生しない理由にはならないと思います。


Q:根粒について興味を持ちました。実際には、豆科の植物がこの構造を持っているといことだが、これで窒素固定を行っている。不足しがちな窒素を土壌において根粒菌が空地中の窒素固定を行って植物へ供給しているのである。植物は光合成によって得た産物を根粒菌へ供給している。この共生の関係にはどのような遺伝子が関与しているのか疑問思い、調べてみました。”マメ科植物と根粒菌の関係は、一部を除いて厳密な宿主特異性に支配されている。宿主特異性は、植物根から分泌されるフラボノイド等の化学物質を認識して根粒菌nod遺伝子群が活性化しリポキチンリゴ糖を合成・分泌する段階と、そのリポキチンオリゴ糖を植物が認識・受容して根粒形成と感染のプロセスが開始する段階の、少なくとも2段階により決定されている。宿主に根粒形成反応を引き起こすリポキチンオリゴ糖をNod-factorと呼ぶ。”というようなことがわかった。これを踏まえて、マメ科の植物は菌を利用して窒素固定をしようとしたのかを考えてみました。共生のプロセスは成功すれば互いに大きく生存競争を勝ち抜くことができるように思えるが、共生にたどり着くまでがとても大変のように思える。それよりも、植物自身が進化して、単独で窒素をどうにか取り込む機能を身に着けたほうが確実であるようにも思えました。窒素を取り込むにはアンモニアを分解することができればいいわけで、それを植物が行えれば窒素固定もできたのではないかと思いました。
Nod-factorを介したマメ科植物・根粒菌の相互作用、http://www.glycoforum.gr.jp/science/word/saccharide/SA-A02J.html

A:これもきちんとしていますが、最後の部分、植物も窒素固定できたはずなのであれば、現実には窒素固定をする植物がいないのはなぜか、という疑問に対して何らかの仮説を提供できるとよいと思います。また、調べた分子メカニズムは、「大変のよう」という感覚的な結論につながるだけで、レポートの中でロジックの一部として生きていません。その辺りを工夫するともっとよいレポートになるでしょう。


Q:今回の講義では細胞壁間は水は通りやすいが、途中でカスパリー線によって水が通れなくなるように閉まっていて、生体膜は脂質二重層であるために水が通りづらい。そのため植物はアクアポリンという水を通す穴を膜に持つことで水を通しているという話が特に印象に残った。アクアポリンについて調べてみると植物以外にもヒトや魚、昆虫など様々な生物が所持していることがわかった。しかしながらシロイヌナズナは35個、イネは33個所持しているのに対し、ヒトは13個しかアクアポリンを所持していなく、植物は全体的にみても動物よりも多くのアクアポリンを所持していることがわかった。これは動物は動くことができるので水が必要なときは自らの意思で動いて取りに行くことができるが、動くことのできない植物はいつでも水を取り入れられる状況にいるとは限らないので、取り入れることができるときにできるだけより素早く取り入れられるように動物よりも多く所持しているのではないかと考えられる。
参考文献、http://www.agr.hokudai.ac.jp/botagr/sakumotsu/documents/3biol2plant.pdf、www.rib.okayama-u.ac.jp/MolecularPhysiology/katsuhara/cp2308.ppt

A:これも悪くはないのですが、物の量と種類を一緒に議論しているのが残念です。「アクアポリンを35個」とありますが、これは遺伝子の話なのであくまで種類数でう。アクアポリンの量自体は、遺伝子の転写・翻訳による発現調節によって決まりますから、「素早く取り入れられるように」という目的でしたら、遺伝子の数は少なくても、発現量を高めればすみます。種類を増やしているということは、機能的な分化があるか(一部のものは水ではなく二酸化炭素を通すなど機能が異なるなど)、空間的な分化があるか(根と葉では、それぞれに適した別のアクアポリンを発現させるなど)、時間的(環境応答的)な分化があるか(湿潤条件と乾燥条件で別のアクアポリンを発現させるなど)、いずれかを考える必要があるでしょう。


Q:マメ科の植物は主に根粒菌を根に共生させることによって窒素を入手している。このような窒素の入手方法は他の植物よりおそらく入手しやすいだろう。ではなぜ他の多くの植物は根粒菌を共生させないのだろうか。その理由は2通り考えられる。一つ目はマメ科の植物のように光合成により合成した有機物を根粒菌に渡す余裕のない植物の場合である。もう一つはマメ科の植物は地下部の根に多くの有機物を蓄えているため有機物を根粒菌が受け取りやすい。そのため根粒菌を共生させるのに適しているからと考えられる。

A:論理的に考えようという姿勢は感じられます。ただ、「相関がある」ということと「因果関係がある」ということを分けて考える必要がありますね。「マメ科の植物は地下部の根に多くの有機物を蓄えている」というのが本当だとしても、これは原因ではなく、窒素固定をしているので有機物が必要だからそれを蓄えている、という結果としても解釈できます。


Q:マメ科の植物は根が根粒菌と共生しており、土壌中の窒素をアンモニアに固定する。その際にニトロゲナーゼという酵素が触媒するがこの酵素は酸素によって活性を失ってしまう。そのため、マメ科の植物は葉から大気中の窒素を取り入れて利用することができない。一方、マメ科の植物よりも原始的であるシアノバクテリアは一つの細胞で光合成と窒素固定の治両方を行うことができる。シアノバクテリアではなぜニトロゲナーゼを失活せずに窒素固定を行うことができるのだろうか。その答えの一つとして授業内では光合成が行われず、呼吸のみがおこなわれる夜に窒素固定が行われることが挙げられた。この条件下では細胞内の酸素は呼吸に使われ酸素濃度が低くなるため、ニトロゲナーゼが働くという考えである。しかし、ニトロゲナーゼは酸素と反応し、不可逆的に変性してしまうため日中に酸素濃度が高くなれば、その時点でニトロゲナーゼは変性してしまうのではないだろうか。実際にそうならない理由として細胞内でニトロゲナーゼが膜系で覆われて、酸素に触れないように隔離してあるのではないかと予測する。しかし、この機構が存在するなら高等植物の葉でも存在するはずである。もう一つ考えられることは必要なときだけ、ニトロゲナーゼを生成し利用することである。つまり夜に近づくにつれて濃度が高くなり、朝が近づくにつれて低くなるということである。

A:今回は話をしませんでしたが、ヘテロシストを作らずに窒素固定を行うシアノバクテリアでは、光合成や窒素固定の遺伝子の多くが概日時計によって厳密に制御されていることが知られています。ということは、昼と夜とで必要なタンパク質などをかなり作り変えているのでしょうね。


Q:今回の講義ではヘテロシストの分化について興味を持った。ヘテロシストはそれ自体が自らの抑制となって隣あった細胞に存在せず、その抑制が届かない大体10細胞先に再び形成されるという話であったが、それでは最初のヘテロシストはどのように形成されたのか疑問に思った。この説では全ての細胞にヘテロシストになる能があり、抑制がなければ分化するということになる。ではもし最初全ての細胞が栄養細胞で窒素を必要とする状況になったら、全ての細胞がヘテロシストに分化してしまうだろう。これから私はヘテロシストの形成位置はすでに決定しているのではないかと考えた。人でも脳や手足、心臓の位置は皆同じように窒素固定性シアノバクテリアでもヘテロシストの位置は決定されているのだろう。窒素源が少なくなると、ヘテロシストとなる予定の細胞内だけで形成サイクル(遺伝子発現など)が動き出し、ヘテロシストに分化するのではないだろうか。

A:着目した点はよいと思うのですが、「位置」とは何でしょうか?人間の場合、細胞が組織を作り、組織が器官を作り、器官が個体を作っていますから、個体の中で、特定の細胞は特定の位置を取ることになります。しかし、単細胞の生物では、細胞=個体ですから、多細胞生物のような関係は基本的には存在しません。糸状性のシアノバクテリアは細胞がつながっていますから、端と真ん中の差はありますが、鎖は永遠にそのまま伸びるわけではありませんから、真ん中で切れた途端に、真ん中が端に変わります。また、細胞はそれぞれ別個体ですから、線虫のように細胞の運命が決まっているわけではありません。その場合、自分の「位置」をどうやって検出するのか、という問題が生じます。その辺りまで考察することができると、よいレポートになるでしょう。


Q:今回の講義でシアノバクテリアのヘテロシストという窒素固定に特化した異型細胞について興味をもった。なぜなら、ニトロゲナーゼという窒素固定を行う酵素があるのに、ヘテロシストは必要ないのではないかと思ったからである。調べてみると、大きく3つの点によってヘテロシストの存在理由があることがわかった。1つ目は、ニトロゲナーゼは酸素のによって不可逆的に失活してしまう点。2つ目はシアノバクテリアは光合成で酸素を合成する点。シアノバクテリアは海に大量に存在する点である(SCI,大森研究室取材,2014年11月30日閲覧http://sci.digitalmuseum.jp/project/research-basic/lab-ohmori/text_3.php)。つまり、光合成で酸素を合成するシアノバクテリアはニトロゲナーゼを失活させてしまうため、ヘテロシストによる窒素固定に頼るしかないということが考えられる。

A:「調べてみると」とありますが、講義で話したことですよね。レポートは講義を聴いたうえで提出してください。


Q:今回はヘテロシストについての話があった。その細胞数調整についての話もあったが、そもそも通常細胞はどのようにヘテロシストへ分化していくのか。ヘテロシストは窒素固定におけるアドバンテージを持つため窒素濃度の低い環境下で分化が促されると説明されたが、通常細胞に対して存在比率は1/10に保たれている。このことから窒素濃度だけに依存して分化していることは考えにくい。なぜなら窒素濃度が著しく低い場所が多く存在する場合、ヘテロシストへと分化する細胞が多数になる可能性があるからである。このことから隣接している細胞が相互的に分化を左右していると考える。ここで分化を促す物質が存在するのではないだろうか、と考えてみた。窒素濃度が低下している場所で通常細胞が窒素固定を促す物質Aを合成し、周囲の細胞も同様に物質Aを合成する。濃度勾配によって最も窒素濃度が低い空間に位置する通常細胞にむけて物質Aの伝達が生じ物質Aの蓄積が分化を促す。このシステムによって一定空間におけるヘテロシストへの多数分化が防がれる。またヘテロシストが窒素源を供給できる範囲内で物質Aが合成されることがないため、通常細胞に対するヘテロシストのおおよその存在比率も保たれるはずである。

A:僕の話し方が悪かったようです。ヘテロシストを分化するのは、あくまで窒素が欠乏した条件の話です。細胞数は10対1ぐらいという話は、窒素欠乏条件では、ということで、硝酸塩などがたっぷりある環境で培養すれば、ヘテロシストの数は大きく減少します。


Q:今回の講義にて「水銀イオンの光合成速度への影響」を学習した。従って、講義にて使用された図を参考にしながら考察していきたいと思う。まず細胞間隙においては水銀イオンの存在による影響は光合成速度は低下している。これに対し、葉緑体では水銀イオンの存在にかかわらず光合成速度に変化はなかった。従って、ここからわかることは細胞間隙では水銀イオンによって親和性が減少していることだ。また葉緑体においてはその存在有無によって光合成の反応を直接阻害しているわけではない。このことことより、水銀イオンの存在による細胞間隙の反応阻害にはどのような意味があるのだろうか。かつては環境汚染により環境中に水銀が現在よりも多く存在した。しかし、グラフのように光合成の阻害を行うことで、細胞中の水分を光合成によって過剰に使用されることを防いでいる、つまり光合成の調節を水銀によって行われていると言ってもよいだろう。さて、ここで一つ疑問が生じるのは、前述のとおり高度経済成長に伴い水銀の量は増加したが、ではこの環境汚染前の水銀が少ない状態ならば、どのような調節を行っていたのだろうか。残念ながらこれに関する資料を見つけることは出来なかったがこれはやはりアクアポリンによる活動が著しかったのではないかと考えた。このアクアポリンは水分子を選択的に透過させ、イオンや他の物質を透過させない水チャンネルと呼ばれている。原理は水銀による調節とは異なるものの、現在のような汚染前の水銀が少ない環境ならば、このアクアポリンによる選択的水の輸送が汚染前の調節では有力ではないかと考えた。

A:少し誤解があるかもしれませんね。講義で紹介したグラフの横軸は、細胞間隙におけるCO2濃度と、葉緑体内におけるCO2濃度です。縦軸は光合成の速度で、当然ながら光合成は葉緑体で行われますから、「細胞間隙において・・・光合成速度が低下する」わけではありません。2つのグラフの比較からわかるのは、細胞間隙から葉緑体にCO2が運ばれる過程に水銀が効いている、ということです。後半の議論については、もう少し定量的な議論が必要でしょう。アクアポリンの阻害に必要な水銀濃度と、汚染が最もひどかった時代の環境中の水銀濃度に大きな開きがあれば、議論自体が成り立ちませんから。


Q:今回の講義では、植物の窒素固定について、その中でも根粒についてとりわけ詳しく学んだ。根粒はマメ科植物に特有な構造であり、この器官は根粒菌との共生によってその機能を果たしている。根粒菌は地中の窒素を固定し、植物体は成長のためにその窒素を利用する。逆に、根粒菌は植物体から有機物を得ることで共生関係を築いている。ここで一つの疑問が生じた。根粒菌にとって必要なのは有機物である。ではなぜ、有機物をふんだんに含み生産している光合成器官に拠点を置かなかったのだろうか。例えば、光合成器官である葉に拠点を置いたとしたら、有機物の取得が容易になると同時に大気中の窒素を固定することが可能となるので、根粒菌にとっては一石二鳥のように思われる。しかし、事実としてそのような選択をしていない。そのもっとも大きな理由は、窒素固定をする際に用いる酵素のニトロキナーゼが、酸素存在下では失活するということである。もし、この最大の欠点を根粒菌が克服したら、根粒菌は生態系全体を揺るがしかねない驚異的存在にもなりうるだろう。

A:形としてはよいと思いますが、論理の内容は少し単純ですね。講義の内容をなぞるのではなく、何か独自の発想を入れてほしいと思います。


Q:根粒菌が窒素固定に用いるニトロゲナーゼはは酸素に弱いためマメ科の植物根の根粒部分は厚い殻をもち、酸素を通さないような構造になっていると授業にあった。しかし窒素固定では空気中の窒素を使用するため、空気が遮断されていたのでは窒素固定を行うことができない。空気は遮断されず根粒中に取入れられ、そこでレグヘモグロビンによって酸素量が調節されると考えられる。もしくは根粒中に空気中の窒素のみを選択的に取り入れることができる機構が存在すると考えることができる。

A:これも、レポートの入り口でおしまいになった感じですね。酸素と窒素の関係を論じるのだったら、空気中の濃度比とか、酸素呼吸速度と窒素固定速度の比較とか、いろいろ定量的に議論できる部分は多いと思います。注目した点について、もう少ししっかりと論理を展開できるといいですね。


Q:植物体内でのイオンの所作について理解を得た。カナダモのスライドで「植物体内の物質運搬には指向性、極性がある」ということを学んだ。根から茎を通って、リン酸が葉へ送られることはあるが、葉から得たリン酸が茎や根へ渡されることは無いらしい。これはつまり、カナダモが「茎や根にはリン酸はあまり必要でない」と判断しているのではないか。これについて考察する。リン酸は植物の生長を促進する。植物の生長は2種類に分類でき、茎頂と根端の細胞分裂で縦方向に生長する「頂端分裂」と、茎が太く生長する「後生分裂」がある。生長の当事者は葉ではなく根やだ。植物の生長、という点だけ捉えると、何故、葉にリン酸が集まるのかが理解できなかった。しかし、よく考えると、リン酸はまた別の役割を担っていた。リン酸は植物の呼吸(ATP)に大きく関わっていた。植物の呼吸の舞台は、葉に分布するチラコイド膜である。どうやら、植物にとって呼吸は生長より優先される、ということがスライドの結果から読み取ることが出来そうだ。よく考えれば当たり前だろうか?

A:いろいろ考えていますが、もう一息論理の流れが感じられません。また、呼吸の舞台がチラコイド膜、というのは何かの誤解でしょう。ミニレポートとは言えレポートですから、できたら一度書いた文章を読みなおして、筋の通った文章に仕上げるという努力が必要でしょう。


Q:前回の授業では窒素固定に必要なニトロゲナーゼが酸素に弱いため、酸素と接する機会の少ない地中で根粒が発達すると考えられることを学んだ。しかし酸素に接する機会が少ない代わりに窒素も取り入れにくくなることが考えられるためこのほかにも地中で根粒をつくる利点があると考えられる。さらに根粒の外殻やレグヘモグロビンにより酸素の侵入にも耐えられるため地上部にあってもおかしくないと考えられる。今回はこれ以外の地下部の利点について考察する。まず考えられるのは地下部は環境が変化しにくいことだ。地上部では風や雨の影響で根粒菌は植物体に感染することが難しくなるうえ、根粒ができたとしてもその構造が風や動物などに破壊されてしまいやすいと考えられる。対して地下部では環境の変化といっても地震や洪水など日常的に起こりうるようなものはないと考えられる。他に考えられるのはそもそも根粒菌が地上部で生息数があまり多くないことだ。根粒菌は土壌微生物に数えられ空中に浮遊しているものではない。よって地上部に感染するより根に感染する方が比較的容易であると考えられる。以上より様々な点から地下部で根粒を形成した方が有利であると考えられる。

A:これは、一つの問題点を設定して、それにたいする答えをいろいろ考えているという点でよいともいます。一つの答えで満足せず、いろいろ考えている点も評価できますが、できたら考えた点について相互比較があるともっとよいでしょう。複数の可能性があっても、実際には一つの点によって99%決まってしまう、ということもよくありますから。


Q:今週は豆の根粒での窒素固定についての話を聞いた。根粒菌とマメ科植物の共存によるものであるという内容であった。しかし、生物は長い歴史の中で細菌を自分の中に最初から共存させて、いわば一部として生きている生物(共生説的な考え方)がいるはずである。したがって、豆の根に根粒菌が感染して根粒を形成することに意味があると考えた。窒素固定に必要なニトロゲナーゼは低酸素条件でないと活動できないが、発芽時には光合成をしないので、この時にはあって良いはずである。根粒菌を長い歴史の中で自分の一部として取り込まないできたのは、発芽など初期の生育には根粒菌が逆に不必要であり、むしろマイナスの影響を与える可能性があると考えられた。実際に、根に分化する細胞に根粒菌を感染させた状態で発芽から成長を観察し、その結果から議論することができそうである。予想では、根に完全に分化してからでないと根粒菌が感染できないという結果が考えられる。もしうまくいった場合、いつの日か共生説のような状態になる日が来るかもしれないが、マメ科植物の歴史の長さを考えると、その進化の可能性は極めて低いように思われる。

A:「共生説」「進化」といった言葉が出てくる部分は、どうも科学的に正確ではないようですが、窒素固定がオルガネラではなく感染という形態を取っている理由を、ライフサイクルから考えている点は、非常によいと思います。考える能力は高いけど、あまり勉強はしていない、という感じですね。よくいえば伸び代が大きいということでしょうか。


Q:アクアポリンについて調べたところ、水を通さないアクアポリンもあり、水を通す以外の役割を担っているアクアポリンも存在することがわかった。アクアポリン以外の器官でも水は通すことはできるのでそれ以外の用途があってもいいはずである。たくさんの物質の伝達も行ったりしているのではないかと考える。

A:レポートの体をなしていませんね。また、CO2を通すアクアポリンの話を、かなり時間をかけてしたと思います。レポートは講義を聴いて書いてください。


Q:今回の授業では、アクアポリンや根粒、窒素固定と窒素同化などについて詳しく学んだ。この中で窒素固定と光合成を共に行うシアノバクテリアについて、窒素固定で必要なニトロゲナーゼという酵素が光合成産物の酸素に壊されるという件で、授業で学んだ、時間帯をずらす、もしくは各細胞に別々の役割を与えるといった工夫以外に何か工夫して共に行うことができるか考察する。はじめは、シアノバクテリアの中に膜構造を作り、その中にニトロゲナーゼを収納して必要なときに一部のみ取り出すという形を考えついたが、シアノバクテリアのような小さな細胞にとってこのような形式は現実的には難しいだろう。次に、ニトロゲナーゼをある程度分解してシアノバクテリア内に安定な物質の状態で保管しておくことが思い浮かんだ。これは、ニトロゲナーゼを安定な物質にするのが難しい上に、ニトロゲナーゼを分解するための酵素など必要なものが多いが、システムが確立されれば光合成と窒素固定を同時に行うこともできると考えられる。どのような方法を扱うにしても、酸素を産生する光合成とニトロゲナーゼを使用する窒素固定が共存するのは非常に難しい。

A:後者の場合、結局、保管していたニトロゲナーゼは、いつどうやって使うのでしょうか。夜の間に使う、ということであれば、基本的には時間帯をずらす、という答えと同じになるように思いますが。


Q:根粒菌は植物の根と共生し窒素固定を行う生物である。窒素固定は窒素をアンモニアへと変換する過程のことである。そこで地上で植物と共生し窒素固定ができる生物はいないのかと考える。だが地上は光合成を行える場であるためわざわざ地上で窒素固定を行う必要はないと考える。なので光合成ができる時には光合成をし、夜光合成ができない時には地上で窒素固定を行えば良いと考える。

A:これも基本的には講義の中で紹介した内容ですよね。きちんと講義を聴いたうえで、自分の独自のアイデアでレポートを書くようにしてください。


Q:今回の講義でシアノバクテリアのヘテロシフトについて学んだ。このシアノバクテリアは光合成をおこなうものと窒素固定を行うものを5個のうち1個となっている。なぜこのように5個の内のひとつが変化して窒素固定と光合成を別々にしているのか?それはシアノバクテリアが成長の際にホルモンを出すことによって5個目はヘテロシフトを行いそれ以降は行わないということが可能である。なのでこのホルモンを調べるために4個のときと5個つながった時のホルモン量を調べることが重要であると考えられる。

A:あまり日本人が書いた日本語に見えませんね。内容以前の問題として、きちんとした日本語でレポートを書くようにまずは努力してください。


Q:今回の講義ではアクアポリンについて学んだ。これは生体膜に存在するタンパク質であり細胞内に水を通す役割がある。生体膜は脂質二重層からなっているため細胞壁よりも水が通りにくくなっているためこのような仕組みが必要なのである。もし仮に、細胞内に水を通す仕組みがアクアポリンではなくただの孔であったと考えてみる。水分子を通すことはできるが、他のイオンや分子、ウイルスなどの不要な物質も通る可能性がある。そうすれば細胞の死や遺伝子が損傷することにつながるだろう。このことから、アクアポリンはただ単に水分子を通すだけでなく、水に溶けた不要物質の侵入を妨げる働きもあると考えられる。

A:問題設定があって、それに対する答えを考えているので、最低限の形式は整っていますが、大学生のレポートとしてはやや物足りないと思います。もう少し自分なりの考えを論理だてて主張できるよう頑張ってください。


Q:シアノバクテリアは窒素固定を行うことができるが、シアノバクテリアが共生し進化したとされている葉緑体及び植物は窒素固定能を持たない。これには3つの理由が考えられる。一つは、進化の過程で窒素固定能が失われたという考えである。これは特に植物の陸上進出によって引き起こされたと考えられる。水中には酸素が溶けにくいこと、また、空気中では気体の拡散係数が高くなることから、陸上では酸素に触れる回数が増えてしまう。するとニトロゲナーゼは失活してしまい窒素固定ができなくなる。当然シアノバクテリアは酸素からニトロゲナーゼを守るすべを持っていたが、空気中でそれを維持するのは割に合わなかったのではないだろうか。陸上進出ではなく、共生した際の遺伝情報の移動が原因という事も考えられる。シアノバクテリアから植物へ遺伝情報が移ることにより、ニトロゲナーゼの発現がシアノバクテリア外で起き、酸素から守ることができなくなってしまった可能性がある。二つ目は、共生したのが窒素固定能をもつ種ではなかったことが考えられる。その場合植物や葉緑体は窒素固定を行うことができない。三つ目は、現生のシアノバクテリアが持つ窒素固定能は共生の後に獲得されたという考えである。以上の考えを検証するには、ニトロゲナーゼの遺伝子の配列による分子系統樹の作成が有効であると考えられる。

A:これは論理的によく考えられていると思います。問題点の設定、答えとなる候補の抽出、その中から答えを確定するための方法、が全てきちんと書かれていてよいと思います。