植物生理学II 第6回講義

導管の仕組み

第6回の講義では、導管の仕組みを中心に、植物の中を水が移動するメカニズムについて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:草本植物では木部は師部より内側にあり、中心に近いところに存在する。しかし、木本植物の通導部は外側に存在するらしい。ではなぜ木本では草本と違い維管束が外側にに存在するのだろうか。草本と木本の大きな違いとして成長過程で茎(幹)の肥大成長の度合いに大きな差があることがあげられる。草本は芽がでてから完全に成長するまでに茎の直径がそこまで大きく変わることはない。しかし、木本は生長期間が長いため、芽がでた当初よりも幹の直径は非常に大きくなる。これがどう関係しているかというと、草本では肥大成長はそこまで大きくない。つまり、初期段階である程度の大きさまでしか成長しないことが分かっている。しかし、木本では時間があればそれだけ大きく成長する。すると、維管束の量が足りなくなってしまうのではないだろうか。維管束を内側に作ることで内側は厚壁細胞となっているためそれ以上増やすことができず、成長の限界を決めてしまうことになる。しかし、外側に作ることにより、成長に応じて維管束の数を増やすことができる。このことが木本において維管束が外側に存在している理由であると考えた。

A:肥大の様式が構造に影響を与えているという視点はよいと思います。ただし、木部と師部の相互位置関係から、通導部分の位置関係を直接議論することはできません。これは、樹木の場合、木部=通導部分ではなく、木部のごく一部が水を通しているにすぎないからです。つまり、通導組織が外側にあるからと言って、木部より篩部が内側にあるという結論にはならないのです。


Q:今回の授業では、吸水に関連して、圧力ポテンシャルや茎の長短による光合成量の違い、道管の作りや細胞壁などについて学んだ。この中で、道管を含めた植物体の一部が既に死んだ細胞からできているという話が気になったので、考察したい。なぜ道管を含めた一部が死んだ細胞を利用しているのかというと、植物体の支持や毛細管現象による水分輸送をするのに、それ自身が無駄に養分を使う生きた細胞よりも、無駄な養分を使わずに植物体の支持や水分輸送という役割のみをこなせる死んだ細胞の方が適しているからだと授業では考えていた。だが、もしこの死んだ細胞たちが生きていたらどうなるのか考えてみたい。授業でも言われていた通り、死んだ細胞というのは植物体の支持や水分輸送には適しているが、一度病気などにかかってしまえば修復機能を持たないために植物体全体に悪影響を及ぼす。だが、もし植物体で死んだ細胞を使っている部分が生きた細胞でまかなわれていたら、この生きた細胞は修復機能を持ち、病気やケガなど不測の事態に現状よりも適応しやすいはずだ。これは生きた細胞を利用する最大の利点であると思う。そもそも死んだ細胞が植物体に有害を引き起こさないという保証はどこにもないし、生きた細胞の方が明らかに健康を損ねないと考えられる。その他にも、生きた細胞であればその細胞自身が成長することで、植物体全体はより大きく太く成長できるだろう。もし樹木を想定したならば、大きく成長することで光合成に必要な光を得やすい高さを確保でき、他の植物体より有利に生きられると考えられる。しかしながら、生きた細胞を使うことには落とし穴もある。生きた細胞は呼吸するため、現状よりはるかに多量の光合成産物である養分を使い、植物体の光合成が自身の呼吸に追いつかなくなる可能性がある。そうなれば植物は先ほどのような大きな樹木への成長どころか、枯れてしまうこともある。また、植物体の支持や水分輸送などはエネルギーを使わずにできる役割なので、生きた細胞だろうが死んだ細胞だろうが果たす役割の効果は変わらない。以上のことを踏まえると、病気やケガなどのかなり稀に起こる不測の事態のために植物体全体が枯れてしまうような危険を犯さずとも、現状のように死んだ細胞で充分に対応できる部分は死んだ細胞で行うということは納得できた。また、生きた細胞で植物体の支持や水分輸送を担うことは不可能ではなさそうだが、枯れずに生命維持をする点でかなりの工夫、たとえば樹木の幹や草木の茎を短くすることなどを凝らす必要があるということも考察できた。

A:生細胞と死細胞のメリットデメリットを考えるのであれば、メリットになる場合とデメリットになる場合の両方の実例を考えたほうがよいと思います。つまり、動物の場合、それほど死細胞の割合は多くありませんし、光合成生物であっても草の場合は、木に比べて死細胞の割合は少なくなります。そのような違いから死細胞と生細胞のメリットを議論すると説得力のある論理を構築することができるでしょう。


Q:ポプラの材では呼吸をしている組織の割合は8%しかないということを学んだ。ということは92%は死んでいる組織ということである。なぜ92%は死んだ細胞なのか。導管は死んだ細胞から構成されている。それに加え導管になった周りの細胞は導管になりやすい。このことから徐々に成長していくにつれ導管が増え呼吸をしている細胞が減っていくと考える。なぜ導管を増やさねばならないかと考えると木を成長させるために導管を増やしていると考える。また導管を増やす程早く成長すると考えられる。また死んだ組織が多いためポプラの材は柔らかいことが考えられる。

A:論理的に考えて「導管は死んだ細胞から構成されている」ことは、「死んだ細胞の部分は導管である」ことを意味しませんよね。逆は真ではなく、対偶が真です。通導部を示した写真を見せたはずですが、それを見れば幹の大部分は通導部ではないことが分かったと思います。講義の中の1枚のスライドから議論を始めることは構いませんが、他のスライドも考慮したうえで議論を進めるようにしてください。


Q:今回の授業では水ポテンシャルなどの物理的な視点から植物を考えたり、陸上植物の導管は細胞死によって作られることや樹木において幹の約92%は死んだ細胞からなっいて物理的強度を得るのに役立っていることなどを学んだ。このように植物には死んでから役割を発揮するようなものがあるが、これらは陸上植物に対して言えることであるように思える。元は水生であった植物が進化して陸上植物ができ、その際に、水を吸い上げる構造や、重力に対向するための物理的強度を得るために細胞死をするための遺伝子を獲得したと考えられる。この様に考えると、陸上植物には全体的にあって、水生の植物にはない遺伝子が発見でき、それは植物の分子的な系統分類に役立つかもしれない。

A:最後の部分がやや疑問です。環境によって変化する部分は、別の言い方をすれば系統を反映しづらい部分でしょう。そうだとしたら、系統分類に役立ちづらいところなのではないでしょうか。


Q:今回の授業を通じて、道管の形成について考えてみようと思う。授業の中で遺伝子NVD7(ペプチド)が道管形成に関与しているということを習ったが、このように道管形成もペプチドなど誘導物質が連鎖して関与し道管を形づくって言っているのだと思う。最初は普通の細胞だったものが最終的には液胞を破壊し死細胞となっていく。この過程では、遺伝子の中に道管になるプロセスが刻み込まれており、NVD7遺伝子が引き金になることによってオンになり、他の物質も転写が促進され細胞壁を厚くする誘導物質、液胞を壊す働きを誘導する物質などができ、誘導の連鎖によって一連のプロセスが行われているのではないか。また、最初は生きていた細胞が道管になって死細胞になるということは、道管は単なる構造物ではあるがその構造物自体が植物体にとって重要な働きがあるということを意味している。道管は動物の小腸や大腸のように能動的に養分を吸収する働きはないが、吸い上げた水の通り道となり道管上にあいている壁孔から水が各部位へ運ばれる。道管は生物の腸に比べると同じように水分を運搬する器官・組織ではあるが、構造を工夫することで無理にエネルギーを使わなくてもよくなったため死細胞となって植物体の一部として重要な役割を担っているのだと思う。

A:これは、一つ一つの文は悪くないのですが、全体として何を主張したいのかわかりません。この講義のレポートでは、論理が評価されますので、できる限り、まず問題設定を明確にして、それに対する根拠を示してそこから結論を引き出すようにレポートを書いてください。


Q:今回の授業で、ひげ根は表面積を大きくするという働きがあるということを学習した。講義中に、根には主根と側根、ひげ根を持つ植物がいるということを思い出しました。主根と側根の植物よりもひげ根の植物のほうが表面積を多くとれるので、根から水分。養分を効率よく吸収できるのでこの面から考えれば生存に有利に思える。しかし、系統学の授業で、ひげ根を持つ単子葉類から主根と側根を持つ双子葉類植物が進化したと学習した。これはさっき述べた生存の有利関係と矛盾しているように思える。単子葉類、双子葉類の違いとして先ほど述べた根の違いのほかに、葉脈が平行脈、網状脈であるか、維管束が分散しているのか規則的に配置しているかなどの違いがあげられる。この二つの違いに、生存に有利不利の違いがあるのではないかと考えました。しかし、少し調べてみると、単子葉類で網状脈であったり、双子葉類で平行脈の植物が存在することがわかり、維管束についても双子葉類、単子葉類で一概に分類できないということがわかり、この二つの違いによって考察することは断念しました。なので単純に根だけの違いで考察すると、ひげ根のほうが吸収の効率は高いが、植物を支持する役割は主根と側根のほうが安定するために、背を伸ばしやすいことと、環境が良くない乾燥帯などでも地下深くに根を伸ばせる主根を持つほうが、その面では水分の確保が容易であるという理由が考えられた。

A:それほど悪くはありませんが、今回の講義の98%は茎と幹の話でしたよね。根の話はほとんどしなかったと思いますが・・・。それはともかく、「ひげ根を持つ単子葉類から主根と側根を持つ双子葉類植物が進化した」というのは誤解だと思います。そもそも双子葉類は単系統の分類群ではないことが明らかとなっています。


Q:今回の授業で、水の拡散は道管を通じて行われ、仕組みとしては蒸散や水の凝集力、重力などの圧力の差が関係していると学んだ。では、気孔などがほぼない沈水植物における道管はどのようになっているか疑問に思った。道管の働きは一般的に根から吸収した水や養分を全体に運ぶものである。しかし水中では、常に水があるため働きとしては根から吸収した養分を運ぶことが主であると考えられる。ではこの養分をどのように道管を用いて運んでいるのか考察する。沈水植物では、気孔がないため蒸散が行われない。また、空気中に出ていないため水ポテンシャルの差がない。しかし水中にあると水圧が発生し、水圧は深ければ深いほど高いため圧力の差が生じ、下から上へと流れができる。また、根から栄養が吸収されると道管の根に近い部分では濃度が高くなり、密度勾配ができるため上へと拡散していく。拡散が終わり濃度が均一になったとしても、外に対して濃度が高くなるため浸透圧の関係で水が外から入ってくるため同じように栄養を運ぶことができる。これらのことから、沈水植物における道管の役割は根からの栄養を運搬したりすることであること、浮力があるため支える力が小さく、水を大量に根から運搬する必要もないため、道管は陸上植物に比べて衰退していることが考えられる。

A:「水圧は深ければ深いほど高いため圧力の差が生じ、下から上へと流れができる」という部分は、理系の学生としてはやや恥ずかしいように思います。確かに、水の入っていない中空の管を水中におろせば、深いほど内外に圧力の差が発生しますが、水が入った管の場合は、その水が同じ圧力を生じますよね。結局はつり合ってしまいます。世の中には、永久機関も、ただで儲かるうまい話もない、と考える必要があると思います。


Q:今回の講義ではウニコナゾールによって伸長制限され、矮小化したヤマグワの話があった。矮小化することによって通常の状態よりも葉の数が少なくなり、葉が少ない分1枚の葉の葉緑体数が多くなっているということであった。どのようにこのようなことが起こるのかが今回の講義で一番気になった。調べてみると葉緑体は数が決まっていてもともとある葉緑体が分裂することによってのみ数を増やすことができるということがわかった。ではウニコナゾールによって矮小化した際に葉1枚当たりの葉緑体数が多くなったのはもともとの植物に葉緑体数が決まっていて、それが少ない葉に集中したために多くなったのか、それとも葉で葉緑体数が決まっていてそれらが何らかの要因で通常よりも多く細胞分裂したものによるのかということになるのではないかと私は考えた。これはそれぞれの葉で葉緑体の大きさを比べて葉緑体の分裂の活発度を比較すればどちらであるのかが判断できると考えられる。
参考文献:理化学研究所 植物の葉緑体の数と大きさを調節する仕組みを解明、http://www.riken.jp/pr/press/2009/20090701/

A:最後の「葉緑体の大きさを比べて葉緑体の分裂の活発度を比較」という部分がよくわかりませんでした。分裂が活発になれば、大きくなる前に分裂するから一つの葉緑体が小さくなるはずだということでしょうか。そうだとすると、葉緑体の総量はあまり変わらないのでは、と考えてしまいます。


Q:植物の導管は死細胞でできている。この理由を考える。まず授業で説明されたように植物の大半の細胞は死細胞である。それは生きている、すなわち呼吸する細胞を減らし無駄なエネルギーを削減する目的がある。導管も呼吸しないことでエネルギーを削減しているのである。ではなぜ導管は死んでいる細胞でできているにもかかわらず水分を移動させることができるのだろうか。導管の水分の移動については授業で教わった通り、凝集力と蒸散によって行われる。この二つの力は導管には関係のない物理現象によるものなので導管はその二つの力を損なわない管の役割さえあればいいのである。そのため導管は死んでいる細胞でできているにもかかわらず水分を輸送できるのである。

A:悪いとは思いませんが、いまひとつ意外感がありませんね。それはそうでしょうね、という感じです。できたら、その人独自の考え方がほしいところです。


Q:今回の講義の中で、細胞伸長を阻害し植物の高さを人工的に低くすると葉の色が濃くなり、葉一枚当たりの光合成量が多くなるという事例が取り上げられた。この原因の一つとして茎の長さが短くなり、葉を付けられる部分が減ったため、葉一枚当たりに供給できる栄養分が多くなったことが挙げられた。ここではこれ以外の原因について考察してみる。先述した通り阻害剤を用いていない植物(Aとする)では阻害剤が用いられた植物(Bとする)に比べ葉一枚当たりの光合成量が少ないが、背丈が高い分葉の枚数は多い。このことから受光量や水分量などの生育環境が等しいとして両者の植物全体の光合成量を比較した場合、それほど差がないのではないかと予想される。一方で、BはAより背丈が低いので生命を維持するためのエネルギーは相対的に考えて低いはずである。よって全体の光合成量が同程度だと仮定すると、明らかにBの方が生存に有利となる。しかし、自然界に存在するのはAである。この考えでは同じ条件で育ったと仮定したが実際には周りの環境との相互関係も考慮に入れなければならない。つまり、この植物が自分より背の高い植物に囲まれて成長するような場合、BではAに比べ光を受ける量が少なる。この状況下では葉の色を濃くし、葉一枚当たりの光合成量が多くなったとしてもBの方が生存に有利であると言えなくなる。以上より背丈が低くなると葉の色が濃くなるのは、受光量が少なくなった分、それを補うように葉一枚当たりの光合成量を多くしようとした結果なのではないかと考えられる。

A:よく考えていると思います。実際には、葉の枚数の影響が大きいため、Bの方が全体の光合成量は少なくなります。


Q:今回の授業で導管が死細胞であることを知り、生体内に死細胞があるメリットは何だろうと考えた。このメリットと越冬を結びつけてみた。冬は土壌分の水分も少なく空気中は乾燥している。植物にとって過酷な冬を乗り越えるために、落ち葉だったり色々な形態があるが、導管を厚くする種もいると思う。まず土壌からの摂取水分が少ないのに空気中への水分放出が多いと導管が潰れてしまう。これは授業でやった。この現象が冬には起こりやすく導管を厚く丈夫にすることで防げるだろう。さらに導管形成では細胞内の液胞が最初に分解されていく。この方法の細胞死では窒素回収率が高い。導管を丈夫にする事に加え栄養分を回収できるメリットがあることから、冬には導管は厚くなるのではないだろうかと考えた。

A:どうも論理の展開がよくわかりませんでした。問題設定は、死細胞があるメリットと越冬の関係のようですが、最後は栄養回収と冬の導管の厚さが結論になっています。もう少しうまく表現しないといけませんね。


Q:今回の講義で興味をもったトピックは木部と師部についてである。植物の幹の部分では木部が内側であり、師部が外側に位置しているが双方細胞として根本的に異なる性質がある。それが死細胞か生細胞かの違いだが、何をメリット・デメリットとしてこれらは位置づけられたのであろうか。木部が外部に位置することによるデメリットとして水分輸送が挙げられる。植物のライフラインともなる水分を運ぶ管が外部にあり損傷しやすいとなると問題であり、また木部が死細胞によって構成されていることから一度損傷を受けると修復できない。木部が外部に位置することで師部を保護できると考えるのはどうだろうか。これはメリットに成り得ると考えたが、死細胞が様々な機能を失っていることからデメリットになってしまう可能性が高いと判断する。つまり幹が外部から腐食した際に外部が生細胞(師部)であった場合は修復に向けた周囲の細胞への伝達や対応が行えるが、死細胞(木部)の場合は腐食の侵食を妨げられず被害がより大きなものになってしまう。以上に見られるデメリットから、現行の位置であることがメリットとしてはたらいており、防御機能の維持が行われていると考えられる。

A:考え方としては悪くないと思いますが、メリット・デメリットを一つの条件・植物種で議論するのはどうしても一面的になります。デメリットがメリットになる、もしくは少なくともデメリットにならない条件・植物を対比させて考えるとよいでしょう。


Q:今回の講義では、実は樹木を支えているほとんどの細胞が死んでいて、たった1割の細胞しか生きていないということを学んだ。この生きている細胞というのは幹の外側の部分であり、幹が傷ついたり、菌に侵されたりした場合には外側のみが再生されていく。今回は生きた細胞が内側ではなく外側に配置されている利点について考えいく。まず、外側が傷ついたときなどに再生するよう生きていた方が植物体の支持が継続できるという利点が考えられる。外側が再生するようになっていれば、いくら内側が菌や傷などで削られていったとしても、幹の太さは保てる。一方で、内側に生きた細胞を持っていて再生するようになっている場合には、菌や傷に侵されたとき外側は失われていく一方で幹の太さは細くなってしまう。樹木は背が高いため、密度は高いが細い幹よりも、密度は低いが太い幹の方が自分自身の重みや風などで折れてしまう可能性が低いと考えられる。また、師管や道管が傷ついたときに再生ができるという利点も考えられる。師管や道管は植物体に水分や養分を供給する大切な構造であるため、これらが傷ついたときには再生される必要がある。この師管や道管は幹の外側にあるため、内側ではなく外側に生きた細胞を配置する必要があると考えられる。このように樹木では、エネルギーの収支がマイナスにならないように、死んでいても植物体の支持に影響しない細胞は死んでいて、影響のある部分は生きていて再生されるようになっているということが分かる。

A:最後の部分、一つでも実例を挙げることができたら、説得力が増しますね。


Q:今回は木のうろについて考えていきたい。うろというのは樹木に空洞が生じてしまうことである。しかし、この空洞があるからといって、木の成長が止まる訳ではない。木の成長には樹皮のすぐ内側に存在する形成層がかかわってるからだ。かといって、空洞ならば、その分だけ構造が不安定となり、倒木の危険性は高まる。この原因は腐敗であるが、その前提として不適切な剪定である。だが、このうろにも役割があり、鳥の巣などに活用されている。従って、このうろに意味がないということはないが、しかし、このうろが原因で倒木の危険性が高まるため、ある程度相関の取れた関係が重要である。

A:もう少し、きっちり考えるようにしましょう。巣に活用される役割は、鳥にとってのものですし、剪定は人間、倒れて困るのは木です。それらを全体としてぼんやり「相関のとれた関係」といっても、何を主張したいのかがよくわかりません。


Q:植物体内の水資源運搬方法、あるいは運搬路となる導管について理解を得た。導管は人間の血管と同じような役割を持っており、やはり血管と同様に、生命線とも言える器官だ。修復機序にも似通った部分がある気がする。水ポテンシャル勾配を用いて、植物は体内を循環させる。では何故植物は動物のように、心臓ポンプによって体液を循環させる方法をとらないのか。また、動物は水ポテンシャル勾配を用いないのか。些か簡単な問いではあるが、考えてみる。水ポテンシャルを利用した循環法は、主に大気圧を扱う。動物がこの方法を取れない理由は、植物と違い動作によって姿勢がコロコロ変わってしまい、身体にかかる負荷が植物と全く異なる為である。また、植物の循環法は一方向的であり、血液を循環させる動物には向かない。蒸散が出来ない上、血液はそうそう補給出来ないからだ。更に、動物が生活領域を広げようとする際、この方法では高所へ移動できない、という点が挙げられる。逆に植物だが、エネルギーを大量に用いるポンプなどという燃費の悪い機構より、物理法則に頼ってしまったほうがエネルギーの節約になるので、彼等は心臓を持たない。当然っちゃ当然である。非常にチープなクエスチョンしか浮かばなかったが、「何故このような方法を用いているのか」ということを常に考えることは非常に大切なことだと思う。

A:チープっちゃチープかもしれませんが、まあいいでしょう。何かの役割を考える際に、対象の生物を取り上げて議論するのは有効な方法です。


Q:導管を水が昇るには水の凝縮力が関係していて、導管は掃除機のホースに似ているということが印象に残った。ここで掃除機のホースの特徴を考えてみると、柔軟性があることだと思った。しかしこの掃除機のホースも縮めてしまえば、柔軟性がなくなる。ここで思ったのは、導管における密度が茎の柔軟性に関係しているのではないかということだ。ここで、茎が固い植物と、柔らかい植物の導管における密度を測定すれば、ある程度の相関性が発見できるかもしれないと思った。そして密度が低いということは、それだけ成長も早そうである。よって、導管の密度と、茎の成長速度、柔軟性の関係をそれぞれの植物で調べれば関係性が発見できるかもしれないと感じた。また、柔軟性という曖昧な概念をどうやってデータで表していくかが課題だと思った。

A:短いですが、レポートに必要な要件は満たしていると思います。ここで導管の密度というのは茎の面積当たりの本数のことでしょうか。「ホースも縮めてしまえば」というところからは、導管の内側を走る環状のセルロース繊維の本数のことかと思いましたが。やや説明不足かもしれません。


Q:前回の授業では導管になった細胞の周りの細胞は導管になりやすいことから導管細胞が放出する物質的シグナルとして導管を作る遺伝子(VND7)を同定した研究の紹介があった。この話題について、導管細胞の近辺にある篩管細胞は導管が損傷しても生命活動の維持のために導管細胞に変異しないと仮定して、なぜ篩管は導管に近いにも関わらず導管化を引き起こさないのか考察する。まず考えられるのは篩管特異的に遺伝子VND7を抑制する因子を発現していることだ。3年の実験実習においてある種のセンモウゴケを材料として用いたが、その特徴として腺毛以外の遺伝子でメチル化というエピゲノム的抑制をかけることにより腺毛特異的な遺伝子発現を実現している。このことから同じように、篩管細胞以外でVND7因子の働きを抑制する何らかの因子の発現が抑えられることで、篩管特異的に導管化が起こらないと考えられる。ただし篩管そのものでは核という構造が消滅しているため、VND7因子抑制因子は篩管ではなくそのそばにある伴細胞で発現し、原形質連絡を通して篩管細胞で役割を果たしていると考えられる。次に考えられるのはVND7因子が対象の細胞の別の遺伝子発現を促進することで導管化を促進していたとすると、その遺伝子の発現自体を抑える化学的修飾が伴細胞特異的に起こっていることだ。篩管細胞の遺伝子発現は伴細胞が担っていると考えられるが、前述したこととの違いはVND7の働きをその抑制因子で妨げるのではなく働いた次の段階を化学修飾によって抑制することだ。以上2つの抑制メカニズムが両方とも働いていることも考えられるが、どちらかが適用されているとすれば導管の周りだけ導管になりやすいことからそこだけ限定的にVND7因子の抑制が抑えられていると考えるのが自然であるため前者がもっともらしいと考えられる。同時に前者の篩管細胞と同じようなVND7因子の抑制因子発現が導管の周り以外の細胞でも常時起こっていると考えられる。

A:非常によく考えられていると思います。あと、可能性としては、分化の進んだ細胞ほど、ほかの細胞に分化するのが困難になる、ということがあるように思います。篩管の場合は、ここでも書かれているように、核が消失するなど分化が進んでいますから、それだけで通常の葉肉細胞に比べて導管への分化は難しくなっているように思います。あまり面白くない考え方ではありますが。


Q:今週の授業で、導管の周囲をセルロースが密集して補強する構造について話を聞いた。確かに、螺旋構造や円形の構造は植物の吸い上げる圧力に対して、強度が増すが、それとともに、植物体そのものの強度を増すにはより効率の良い形があるのではないかと思った。そこで、導管に沿って直線状に補強した場合、あるいは耐震性に優れると言われる三角形に補強した場合など、模型などを作り吸引実験を行ない、その結果最も優れるセルソース補強構造をとるように遺伝子操作ができれば、農作物の強度と同時に成長効率を伸ばすこともでき、収穫などを伸ばすことを期待できそうである。螺旋構造は自然のなかで築き上げられた補強構造であるので、人工的なコントロールができればより植物体を強くする工夫もできるのではないかと考えた。

A:生物は、その40億年の歴史の中でそれぞれ環境に適応して進化してきたわけですから、その試行錯誤の回数は莫大なはずです。とすると、人間がちょっと模型を作って試したぐらいでは、植物を超える機能を持つものを作るのは難しいように思いますけど。