植物生理学II 第4回講義

植物の葉と環境

第4回の講義では葉の形と環境のかかわりについて主に解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:新たにできた湖などで生態系がどういった順序で形作られるのかを考えてみる。生き物が生きるためにはエネルギーが必要であり、植物や魚などは呼吸によってそのエネルギーを得ている。呼吸をするためには酸素が必要である。大気中の酸素濃度では水に溶け込みづらいと考えられるため、植物が光合成で出す高濃度の酸素が水中に溶け込むことで、水中の酸素濃度を生物が生きられるまでに高くしているのではないだろうか。しかし、光合成をするためには二酸化炭素が必要であり、二酸化炭素は生物の呼吸や大気中から溶け込むことにより供給される。すると、生物が水中で生きるためには植物のつくる酸素が必要になり、植物が生きるためには呼吸により供給される二酸化炭素が必要になる。この問題を解決するのが嫌気性生物である。嫌気性生物は酸素がなくとも二酸化炭素を放出し、水中に供給することができる。以上より、湖にはまず、嫌気性生物が、次に植物が、最後に好気性の呼吸をする生物が進出すると考えられる。

A:考えようという姿勢は感じられますが、「嫌気性生物」というあいまいな表現が気になりますね。生物学専修の学生であれば、エネルギーをどのように得て、炭素化合物をどこから得ている生物なのかをきちんと考えてから議論してほしいと思います。独立栄養か従属栄養か、光合成か、化学合成かは、代謝から見た生物の分類の基本です。


Q:今回の授業では、水辺に生息する植物について、表皮の薄さや気孔の位置が陸上植物と異なる理由などを学んだ。また、オオカナダモが広く実験で利用される理由なども学んだ。オオカナダモを思い浮かべたときにふと疑問に思ったことがあったので、それについて考察してみたい。以前から、オオカナダモを含めた水中植物は、陸上植物よりも葉や茎の緑色が濃いように感じていた。だが、色素が濃いと光を吸収しづらいなど、光合成を含めた植物の生活活動に支障が出ると考えていたので、疑問に思っていた。これは、水中では光が遠くまで通りやすいのは青系統の色で、赤系統の色は光が遠くまで通りにくいため、植物の葉が濃いことも光の通りやすさで説明がつくのではないかと考えた。透明度の高い水中と透明度の低い水中で生息する植物の色を比較した場合、透明度の高い水中のほうが葉や茎の緑色が薄いならば、この仮説は証明されると考えられる。
参考文献:植物の生理http://www.aquagarden.co.jp/SINZUI/SEIRI.htm

A:参考文献として挙げられているサイトは、全体としてはまあまあまともですが、ところどころ不適切な部分があります。水中を透過する光のスペクトルに関しては植物生理学Iで詳しく解説したはずです。このようなサイトに頼るのではなく、講義の内容を思い出して議論するか、あるいは、きちんと教科書などで調べて書くようにしてください。


Q:環境条件が熱帯、温帯、乾燥帯、冷帯、寒帯の時の葉の形を考えてみる。熱帯の場合、気温が高く降水量もあるため植物には適した条件下だと考える。そのため標準的な葉の形と気孔だと考える。温帯の場合、四季が見られる条件下なので日本のような葉の形と気孔をしていると考える。乾燥帯は砂漠のような条件下なのでサボテンのように表面積を増やし、水を貯められるような丸い形をしていると考える。冷帯は積雪時間が長いため葉が強く少しの光でも集めたいため細い葉の形になると考える。寒帯はマイナスの時期が長いためコケ類が生えると考える。

A:生物学以前に「日本のような葉」という言葉遣いが気になりますし、それが日本で見られる普通に見られる葉のことだとしても「標準的な葉」との違いが判りません。「サボテンのように表面積を増やし」とありますが、サボテンは表面積を減らしているという話を講義でしています。まずは、きちんとした日本語の文章を書くことから始めてください。


Q:今回の講義で、気孔を使えない水中植物は拡散によって植物体の表面から二酸化炭素を直接取り込むしかないということを学んだ。ここで気になったのが、陸上植物を水中で育てようとした場合には気孔が使えなくなるために水中植物と同様に拡散によって二酸化炭素を取り込むことが出来るのかということです。陸上植物は水中から陸上に上がる際に気孔に大きく依存する形になってしまったので今更水中で育ててみても拡散する能力があまりないためにすぐにダメになってしまうのではないかと思う。

A:「気孔に大きく依存する形になってしまったので」という部分をきちんと記述しないと生物学のレポートにはなりません。講義の中でクチクラの話を詳しくしたと思います。論理的な記述に欠けるレポートは採点の対象になりません。


Q:今回の講義では水生植物について学んだ。その中でも私が興味をもったものが異形葉である。異形葉とは、水中で開く沈水葉と陸上で開く気中葉の形態が異なる葉のことである。沈水葉は葉の表面積を大きくするために薄く広がっていたり、細く分かれていることが多く、気孔がない。それに比べて気中葉は葉が厚くなり、表面はクチクラ層で覆われ、気孔が発達する。ここで疑問点が2つある。1つ目が沈水葉から気中葉へのシフトはどのような仕組で起こるのかである。考えられることは、茎の先端または上層の葉が光の量あるいは色、酸素濃度などの変化を察知して植物ホルモンをだし葉の形状変化を引き起こすということである。この植物ホルモンを確かめすためには、植物ホルモンを一つずつ加え、水中でも気中葉を形成するもの、陸上でも沈水葉を形成するものを探せばよいのではないだろうか。2つ目は、どのタイミングで葉の形状が決定するのかということである。これを調べるためには水中から陸上、陸上から水中のような環境を変化させればよいのではないだろうか。おそらく新しく開く葉は移行後の環境に合わせた形状を示す。しかし、開く途中に環境が変化した葉はどうなるのか。考えられる結果は2通りある。1つ目は開き始めた環境に依存するということである。2つ目は環境の変化によりある程度形状を変化させ、中間的な葉になるということである。例えば先端は水中葉で基部は沈水葉の性質をもつ葉である。この実験結果が1つ目であったならば葉の形状はある特定の時期に葉全体の決定が行われることになり、2つ目であったならば徐々に時間をかけて決定をするということになる。

A:これはきちんと考えていてよいと思います。2つの観点から議論をしていますが、むしろ観点はどちらか一つに絞って、その代りに、可能な仕組みを挙げるだけでなく、植物の損得(と場合によっては環境との相互作用)を考えるとどの仕組みが一番ありそうか、といった考察を加えると、しっかりしたレポートになります。


Q:授業では主に植物の気孔のことについて学んだ。今回は中でも水生植物の例が挙げられた時に気になった異形葉について考察する。異形葉とは、一つの植物が異なる葉の形態をとることであり、今回はその例として、キクモ、ササバモが示された。これらは水中と気中で葉の形態を変えるということである。これとは別に異形葉の起こる仕組みを調べると、柊の葉に棘が発生する仕組みにエピジェネティックな制御が関わることがわかった(※)。このことから、キクモやササバモでは発生の段階で決まっている形態とは異なる形態をとるための遺伝子が抑制されていて、環境の変化によってその抑制が解除されるような仕組みを持っている可能性が考えられる。※…ナショナルジオグラフィック ニュース. “ヒイラギの葉、トゲ発生の仕組みが判明”. Christy Ullrich. http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20121221003. 2014/10/26

A:このレポートの中で、論理的なつながりを感じさせる部分は、途中の「このことから、キクモやササバモでは・・・」というところですが、なぜそのような論理展開になるのかが説明が少なくてわかりません。せっかくエピジェネティックな制御を持ち出すのであれば、それと発生や環境応答の間をきちんと論じたうえで結論に持っていくようにしてください。


Q:今週の授業では、孔辺細胞には葉緑体がありクロロフィルでエネルギーをつくりそれを利用してプロトンポンプを動かし気孔の開閉をしていると習った。このような孔辺細胞の葉緑体の役割と先週の授業で触れた紅葉について関連させて考えてみようと思う。クロロフィルを分解し紅葉をする植物の生活形にとって孔辺細胞に葉緑体をもつということは重要な意味があるのではないか。孔辺細胞ではクロロフィルをもつが紅葉するとクロロフィルが分解される。つまり、紅葉が起こるとクロロフィルでエネルギーをつくることができないのでプロトンポンプを動かせず気孔の開閉ができなくなる。紅葉した植物では光合成をしないのでわざわざ気孔を開き二酸化炭素を取り込む必要がない。むしろ気孔を開かなければ水が奪われることを防げるので植物体の生存には好都合だ。このように考えていくと、クロロフィル分解による紅葉と気孔の開閉は密接に結びついていて、気孔をつくる孔辺細胞に葉緑体があるということは植物体自体の1年の生活サイクルを順調に進めていくためにも重要な役割を担っているように思える。

A:紅葉と機構の開閉を大胆に結び付けていて面白いと思います。一つだけ気になったのは、気孔の開閉ができない、という場合、気孔が閉じたままになる可能性と、開いたままになる可能性の両方があることです。このレポートの論旨からすると、「開閉ができない」と言わずに「開口ができない」といった方が、ピシッと論理が通るでしょうね。


Q:水中植物は気中植物と比較して、葉が薄いということを学習した。薄くなる理由は光が弱く、二酸化炭素の拡散速度が遅いためということであった。そこで、実際に気中植物と水中植物とでは、どちらのほうが光合成の効率がよいのかということを疑問に思いました。進化の過程を考えれば、水中植物のほうが祖先にあたると思うので、陸上植物のほうが生存には有利なのかと考えられるが、それは繁殖などの様々な要因が関係していると考えられるので、単純に光合成の効率だけを考えているとは言えない。授業では、空気と水中の二酸化炭素濃度は大きな違いがあるが、分圧等の関係を考慮すると、光合成に利用できる二酸化炭素量にほとんど違いがないということであった。すなわち、葉の体積当たりの葉緑体の数で光合成の効率は決定するのではないかと考えた。実際に体積当たりの葉緑体数を調べたがズバリ記載されているようなものはなかった。そもそもどの水中植物とどの陸上植物を比較するかによっても結果は変わってくるので一概にはどちらが効率が良いとは言えないのではないのか…一応、水中・陸上の細胞内の顕微鏡画像を参考してみると、葉緑体の密度に大きな違いはないように感じた。実際に水中。陸上植物のどちらが光合成の効率が良いのだろうか…

A:レポートのテーマはよいと思いますが、それに対する答えを出さずに迷って終わってしまうとやはり尻切れトンボの感じがしますね。なんでもよいので、自分なりの理屈をつけて、こちらの方が光合成効率が高いはずだ、と論理的に結論付けた方がよいでしょう。


Q:今回の授業で植物には浮葉植物、沈水植物、浮漂植物、抽水植物のような水生植物が存在することを学んだ。水中植物のなかで、多くが地上に花を出すことに疑問を持った。水中植物は水のあるところで生息するのだから、水中に花をつけ水を媒介させれば必ず水中にある花へ花粉が運ばれるはずである。地上に花をつけた場合、他家受粉の場合媒介する風が水のない方向へ吹いたり、虫が水のない方向へ飛んでいく可能性がある。まず受粉の点から考える。植物の花粉が雌蕊につくことができるのは柱頭に粘着性があるからである。もし水中にあった場合粘着性は水流などの力によって流されてしまったり、ついてもすぐに取れてしまう可能性がある。次に、花粉の拡散性について考える。水中に花をつけると決まった池や湖にだけしか花粉を届けることができない。少しでも水が仕切られてしまえば交わることはできない。また、水の量が多い場合広く拡散されすぎてしまうため、目的の雌蕊に花粉が届きにくいだろう。これらのことから、水生植物でも地上に花をつけるものが多いと考えられる。

A:レポートのテーマ設定はよいと思います。また、論理的に考える姿勢も感じられます。内容としては、水面を花粉の散布経路として考えていない部分が少しもったいないかな、と思いました。


Q:今回の講義では光エネルギー以外が植物の光合成を律速していたら葉は平たくならない、よって葉の形が変化していたら光以外の環境的要因が重要な役割をはたしているということを学んだ。ではこれから先の環境では形状はどうなるのであろうか。今現在、二酸化酸素濃度は高くなってきているので、二酸化炭素が重要な環境的要因になるとは考えられない。よってこれから大きな環境要因になる可能性があるのは光と水ということになる。これを踏まえて考えるとまず、二酸化炭素の取り込みに重要な切れ込みはなくなると考えられる。また光の過多を解消するために葉の表面積を減らすまたはなくす、また光不足を解消するために葉の表面積を大きくするなどといったことと、水の不足を解消するために気孔をなくし、またあるていど保持できるような形状、例えば多肉化などといったことが組み合わさった形状の植物が現れるのではないかと考えられる。

A:問題点の設定はよいと思うのですが、可能性をたくさん挙げてしまってその間での評価をしないと、可能性で終わってしまって結論にたどり着きません。できたら、自分なりの理屈で、この要因が一番大きいはずだから、最終的にはこうなるはずだ、と言い切ってしまった方が、すっきりしたレポートになります。


Q:授業中、水の中と空気中の二酸化炭素濃度の違いについての話があった。水中の方がやはり二酸化炭素濃度が低い。ではなぜ水中には多くの植物が存在しているのだろうか。そのことについて今回は考えてみた。水は光をさえぎる障害となることは間違いない。水中は空気中と比べると同じ光の強さなら葉に届く光の強さは弱くなる。水中でも地上でも植物同士の光の争奪戦は激しい。そう考えるとより一層水中に生育する植物がなぜ水中に生育するのか分からない。結局の水中は地上植物との住み分けにより光の争奪戦を悪条件ながらも受け入れた植物が生育しているのではないかと考えられる。そのためもともと水中から地上に進化してきた植物でも、逆に水生植物へと進化を遂げた植物も少なくないのではないかと考えられる。

A:テーマ設定は悪くないと思うのですが、現実に水中にも地上にも植物は存在するわけですから、どちらかではだめ、ということはないはずです。その場合、それぞれの利点を欠点を評価する議論をしないといけませんね。また、「水中の方がやはり二酸化炭素濃度が低い」という点については、講義の中で、炭酸水素イオンなどの存在の話もして、利用可能な実質二酸化炭素濃度は水中の方が高い可能性があることを話しました。


Q:今回の講義では蒸散と気孔、葉の大きさ、風速の関係について学習した。風速が早く、葉幅が狭いほど、葉面積に対する気孔開口面積の割合が高くなると、蒸散速度が速くなる。このデータから切れ込みの深い葉は葉幅を狭くすることで風の弱い地域でもより蒸散を速めることができる。熱帯地域に生える植物が葉に切れ込みが入る理由は分かるがもみじなどの葉にも切れ込みが入るのはなぜだろうか。それほど高温にならないので、蒸散のメリット以外に光を下の葉に通すことや風に対する抵抗を増すためにあのような形状になったのではないだろうか。

A:葉の幅のデータは、確かに蒸散速度との関係で説明しましたが、蒸散の速度と光合成の速度に相関がある話は何度もしていると思います。光合成の観点から考えれば、ここでの疑問はすぐに解消すると思います。


Q:太古の時代シダ植物から針葉樹が進化した。シダ植物の祖先は茎に相当する器官しか持っておらず、テローム説によると茎が折りたたまれ、大葉が進化していった。大葉に至る途中経過の針葉樹では、葉は長い刺のような形をしている。これは地球環境が乾燥気候から温暖湿潤への順応であったと予想できる。なぜなら、光が十分環境下の植物の葉には切れ込みがあり、さらに乾燥していなければ植物にとって表面積が多いほど効率がいいからだ。また、サボテンは光がとても強く乾燥した地域に生息している。この環境に適応するため、サボテンは、歯肉を持ちできるだけ球体に近い形になって乾燥を防ぎ、とげを持つことで直射日光を和らげサボテン内温度を下げる、という形態をもっている。サボテンは厳しい環境下に適応するために茎と大葉を持った植物から進化したと考えられる。以前授業で代謝系の進化などを学び、それから進化の過程を推定できると考えた。しかし、針葉樹やサボテンの事から、地球の環境の変化からも植物の進化を伺えると思った。

A:考えてはいると思うのですが、問題設定がきちんと明示されていないので、話がどこに行くのかわかりません。また針葉樹とシダとサボテンの関係もよくわかりません。なるべくレポートの最初で問題点を明示して、それに対して論理を展開して、最後に問題点に対する回答を与えるようにすると見通しの良いレポートになります。


Q:生物種も数あることながら、水中植物の光合成については水中の二酸化炭素を取り込んで光合成しているんだろうと簡単な考えしかなかった。しかし、今回の講義では、水中植物は気孔が使えず、拡散によって二酸化炭素を取り込む点、pHによって二酸化炭素濃度は異なる点、細胞層が厚いと二酸化炭素を取り込みにくくなるということから、水中植物は、水中のpHや二酸化炭素濃度によって葉の形状を変え、環境に適応することで生存しているということがわかった。たとえば、地球温暖化問題の一つの酸性雨によって水中のpHが変化する要因がある場合、水中植物ではない植物は生育する場所によって酸性雨による被害は様々だが、水中植物は水中周辺一帯が被害を被る。その点において、子孫を残すのには水中植物は絶滅する可能性が高いのではないだろうかと考えた。

A:「たとえば」の前までは、講義のまとめですから、「例えば」のあとがレポートの本番です。と考えた場合、論理を展開するにはさすがに短すぎますね。別に長々書く必要はありませんが、問題点から回答までを自分なりの論理でつなぐためにはもう少しスペースが必要であるように思います。


Q:陸上植物と水中植物で植物のもつ葉の形が異なることを講義で知った。カテゴリーとして陸上植物と水中植物に分けることはあるが、そのどちらにも属してしまっている植物もいるのではないかと考える。つまり水際に生えている陸上植物の一部が増水によって浸かっていたり、水中植物の一部が減水して空気にさらされていたりする場合である。これらの植物の一部の葉は環境に応じて葉の形態を変えるのだろうか。過去の植物生理学Ⅱの講義レポートを見てみるとアマゾンソードという水草が水中と気中で育てた時で異なる葉をつけることが書いてあった。これをヒントに考えると植物は環境に応じて自身のもつ葉を変化させる能力があることが推測される。しかし陸上植物が水中に浸る場合、光合成を行う際に気孔によるCO2の取り込みは出来ない上に細胞層によって拡散によって取り入れることも難しい。また水中植物が気中に露出する場合も気孔を持たないために光合成を行うことが難しいだろう。したがって形態変化による環境への適応は迅速に行われる必要があるが、遺伝子による変化では適応に追いつかない。植物の形態変化が何によって調節されているのか新しい疑問が生まれてしまったが、このような能力が環境変化の激しい地域や場所で生息する植物に最適なものであると考える。

A:これは、テーマ設定もよいですし、自分なりの論理を展開しています。ただ、最後にちょっと袋小路に入ってしまった感じですね。そこは、大胆な発想の展開で、袋小路から脱出して終わってくれると、素晴らしいレポートになります。


Q:今回の講義では、水生植物について学んだ。今回のレポートでは、水生植物の中でも特に沈水植物、浮標植物に注目していきたいと思う。沈水植物は、水の底に根を張っているためそこからの栄養分の取入れや、葉の表面からの二酸化炭素の取入れは陸上植物と同様に行える。しかし、植物体全体が水中に沈んでいるため、届く光が弱いという欠点がある。実際に植物プランクトンが繁殖してしまった場合には十分な光が届かず、沈水植物は枯れてしまうこともある。浮標植物は、葉が水面に浮いているため光を十分に吸収することができ、また、植物体表面からの二酸化炭素などの取入れが可能である。しかし、根が水の底に届いていないため十分な栄養分の取入れができない。これらの欠点は、陸上で生活することを選べば生じないものであり、なぜ水生植物は水中で生活することを選んだのか疑問に思った。考えられる理由としては3点ある。まず、水中で生活するということは植物体が水中を浮遊した状態になるということなので、陸生植物のように体を支える構造がいらないという点である。実際に水を根から吸収しないため、水生植物では道管の構造が衰退していて、これらを作ったり、維持したりするエネルギーが不要となると考えられる。次に、植物は何よりも水分を優先しているということである。その例として水分の蒸発を防ぎ、水分を保つために変形していったサボテンがあげられる。水中であれば水分が不足することもなく、申し分のない環境であると考えられる。最後に、植物の少ない水中での生活を選ぶことで生存競争に生き残れる可能性が高まるということである。実際にどういった理由で水生植物が水中での生活を選んだのかは分からないが、今回の水生植物の話を通して、植物は何かを犠牲にする代わりに(水生植物でいえば栄養分の取り込みや光)、何か利点を得て生きていっている(水生植物でいえば水分)ということが伺える。

A:きちんと考えていてよいと思います。3つの理由を考えていますが、できたらそのままにするのではなくて、その中で、どの理由が一番効いているのかについても考察できた方が良いかもしれません。


Q:今回は環境適応について考えていきたいと思う。その1つの事例としてサボテンが挙げられた。サボテンは砂漠のような乾燥地域でも光合成を行えるシステムを持っている。それはいわゆる、CAM型光合成のことである。また、もう1つの特徴として、葉が退化し針状になっていることも挙げられよう。さて、ここで環境適応の話しに戻す。上記のことからサボテンは砂漠でも生育出来る形態を有している。このサボテンに類似したトウダイグサ科が存在する。こちらは科が全く異なるのにも関わらず、サボテンと外見が似ているのだ。このことを収斂進化と呼ばれている。この収斂進化の一例としては哺乳動物の鯨が挙げられる。さて、ではわれわれ生物は常に変化のある環境に適応しなければならない。ここでは、砂漠という環境の中でどのような条件が揃えば、砂漠に適合出来るのだろうか。まずは水分である。砂漠のように十分に水分を得られない状況でいかに水分を失わないかが重要である。そこで、サボテンが最高の砂漠に生育する植物であると仮定するならば、まずはCAM 型光合成を有さなければならない。また、通常の植物のように葉が広がった状態では水分を多く損失するため、針状にしなければならない。つまり、仮に非乾燥地域に生育する植物をどちらか片方の性能も持ち合わせて、植物は死んでしまう。だが、例え形態的な特徴を得る(葉を退化させ、針状にする)ことは出来ても、根本的なシステム面(CAM型光合成を行うこと)を変化させることは自然には不可能なため、新たな砂漠に生育する植物を増やすことは不可能に等しいと考えた。

A:これは考えているのはわかるのですが、問題から解決へという流れがないので、あれこれ考えていることがそのまま表れてしまっているようです。一度考えたら、そこで自分なりの問題点を設定して、その問題に回答を与えるように全体を考え直すと、きちんと論理が通ったレポートになります。


Q:今回、葉になぜ切れ込みがあるのかについて扱ったが、葉が異形であるのにはきちんと理由があるのだと考えさせられた。そこでふと先日食べたアスパラガスを思い出すと、なんだか葉というものがどれにあたるのか想像できなかったので調べてみた。私たちが食べている大部分が茎であり、太い茎の上端に集まっているひらひらしたものが疑葉であると分かった。さらにおもしろいことに、アスパラガスは茎で光合成を行っているらしい。つまり光合成の機能を失ったため葉が退化し、現在のような形になったと考えられる。ではなぜ光合成の機能を茎に委ねたのであろう。もともとは葉に葉緑体が存在していて、葉で作られた養分を茎に蓄えて成長していたとし、どんな利点があってこの形になったのか考えてみる。どんどん上に伸びていく際に上端まで栄養分を送るのにさらにエネルギーを要し効率が悪かったため、葉を小さくし葉緑体を茎に移行させたのではないかということ、アスパラガスの中で一番大切なのは栄養分を蓄えている茎であるので、必然的に葉が犠牲になっているとすると上に伸びる際に生存競争していく中でほかの物理的衝撃から身を守るために葉を先端に固めるひつようがあった、その分光合成を茎で補うという進化過程があったのではないかと考えられる。
参考:JAグループ福岡http://www.ja-gp-fukuoka.jp/education/akiba-hakase/002/019.html

A:問題設定も面白いし、考える努力も感じられます。ただ、このような問題は、アスパラガスだけを考えずに、普通の葉を持つ植物との対比をも頭に置く必要があります。普通の植物は葉を持つわけですから、アスパラガスには普通ではない特殊な事情があって、それが形態の変化を生み出しているはずです。その事情と形態変化を論理でストレートにつなぐようにするとわかりやすいレポートになります。


Q:球状のサボテンがその形状である理由は表面積を少なくすることで外へ逃げる水分を減らすためである。水分量が成長を律速するので光合成よりも水分保持を優先した形をしている。同じような球状をした植物として思い浮かぶマリモについて形状の考察をする。調べてみると球状のマリモはそれ自体が1つの個体なのではなく細い糸状の藻が絡まりあって集合体となったものであるらしい。マリモの1個体は細い藻であり通常は湖や池の中をバラバラに漂うかそこに沈んでいるが、阿寒湖など一部の湖では風や水流によって複雑に絡まりあってきれいな球状となる。球状になることはマリモ全体としての特質ではないようだが、阿寒湖のマリモにとって球状になってしまうことによるメリットはあるのだろうか。球状になることで日光が当たり光合成を行うことができる部分と、影になり光合成をおこなうことができない部分が出来てしまう。サボテンのように光合成以外の要素が律速条件になっていると考えることもできるが、大きくなったマリモでは光の当たらない中心部が枯れてしまうことがあるらしい。また、授業にあった説明のように水中では分子の拡散速度が遅いため、球場になり細胞層が多くなるとマリモの内部では二酸化炭素を効率よく取り込むことが難しくなるはずである。これらのことから阿寒湖のマリモにとって球状になる利点はあまりなく、水流などの外的要因でそのような形状になってしまっているだけだと考えられる。

A:これは問題設定も、そのあとの考え方も悪くないと思います。具体的な点としては、中心部が枯れているとすれば、球というよりは球面であると考えて、その場合の利点があるのかないのか、という議論になってもよいように思いました。


Q:第3回の授業では水生植物を扱った。水生植物は水中の葉が気中の葉より薄いという特徴を持つ。授業の中で液体中では酸素や二酸化炭素を拡散により細胞表面から直接取り込むため、水中の葉は細胞層を大きくすると内部まで二酸化炭素を取り込みにくくなるので薄くなると学んだ。自分の中では水中の葉が薄い理由を、厚くすることで重力に反して葉自身を支える必要がないからと考えていたため、ここでは水中の葉が薄くなる原因として授業で学んだこととどちらが当てはまるか決定する実験を考察する。まずこの実験は水中以外で重力の影響を受けない場所、すなわち宇宙空間で行う。宇宙空間で地上と同じように水生植物を生育させたとき気中の葉の厚みを地上のものと比べれば、水中の葉が薄い理由が前者なのか後者なのか或いは両方なのか判断できると考えられる。ただしこの実験はもし資金などの問題をクリアしたとしても実現が難しいと考えられる。水生植物は水の存在下でなくては生育できない場合、水は宇宙空間ではバラバラに散乱してしまうため水生植物の生育環境を整えることが難しいと考えられるからだ。この対策の一つとして水槽を回転させ遠心力を生み出すことにより、無重力ではないが地球と比べると非常に弱い微弱な重力下で生育させることが考えられる。

A:講義の中では、水中葉の葉が薄い理由を3つ挙げたつもりだったのですが。確かに、そのメカニズムを詳しく説明したのは二酸化炭素の取り込みについてですが。考察した実験は面白いと思います。回転させる話は、別に回転することによって重力がなくなるわけではなく、重力の方向性がなくなるだけですよね。そうだとすると、今回の目的には合わない気がします。