植物生理学II 第14回講義

植物の光感知機構

第14回の講義では、植物が光を検知して周囲の環境に馴化するメカニズムについて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:光の強さによって葉緑体は移動する。オルガネラの移動は細胞骨格に沿って起こり、植物細胞において輸送に関与する細胞骨格はアクチンであり、モータータンパクはミオシンである。アクチンは極性があり、ミオシンはその極性にしたがって運動し、ほとんどがプラス方向に運動する。では、強い光にさらされたときに葉緑体はどのようにして移動するのだろうか。先ほど上げた条件から考えられるのは、強い光が当たることでアクチンが外向きに配向しそれによって葉緑体が外向きに移動するということである。強い光が当たったときに葉緑体がアクチンの重合を開始するようなシグナルを出し、中心から重合が始まることで外向きに配向されるということが考えられる。さらに、強い光を受けた直後に重合を阻害するような因子を放出すれば、細胞膜周辺から葉緑体は動かなくなり、光を避けるようにして膜付近に並ぶことが考えられる。しかし、この考えには問題がある。それは、光が強いときの動きを説明することができても光が弱い時の動きを説明することができないということだ。光の受容を葉緑体が行う以上葉緑体が何らかのシグナルをだしているのだろうが、それはアクチンとミオシンに作用するわけではないのかもしれない。

A:申しわけない。葉緑体移動については以前一度講義で話しているので、詳細をスキップしてしまいましたが、光の受容は葉緑体で行うわけではありません。フォトトロピンの局在は細胞膜であると考えられています。そうすると、だいぶ考え方が変わるでしょうか。


Q:今回の講義で青い光の波長は葉緑体の集合や、光屈性、気孔の開閉などに働くということを学んだ。ではなぜ青い光がこのような反応を引き起こすのか。青い波長は光合成に使われない分、この光の量で他の植物がどれほど周囲にあるのかということを感知し、それに応じて体の機能を変化させるので、青い光の波長が、葉緑体の集合や光屈性、気孔の開閉などの機能に働くと考えられる。

A:講義では、まさにクロロフィルが吸収を持つ赤と青の領域に対応して光受容体の吸収が見られるという話をしたはずです。「青い波長は光合成に使われない」というのは少し情けないですね。


Q:今回の講義で特に興味を持ったことはフィトクロムである。フィトクロムには不活性型であるPr型と活性型であるPfr型があり、Pfr型のときに様々な光応答がおこることと、赤色光を当てるとPfr型になり近赤外光を当てるとPr型になると学んだ。ここで私がPr型、Pfr型ときいて真っ先に思い浮かんだ光応答は花芽形成である。さらに言うと光中断実験である。赤色光を当てると光中断の効果が現われるが、すぐに近赤外光を当てるとその効果が打ち消され、連続照射のときは最後に当てた光によって花芽形成の有無が決定されることと、暗反転が起こることを高校のときに学んだ。ここでPr型とPfr型の吸光が同じようになる波長を照射したらどうなるのかと疑問に感じた。長日植物に短い明期を与えてから限界暗期より長い暗期を赤色光で光中断すると花芽は形成される。赤色光をあてPfr型になったフィトクロムが花芽形成を促進しているといえる。しかし、光中断があるが連続した暗期が限界暗期よりも長いと花芽は形成されない。この二つの違いは暗期の長さである。考えられる可能性は赤色光が当たりPfr型になるが暗期になると暗反転が起こり、徐々にPfr型が減少しPr型が増加し、Pfr型が一定割合以下になったときに花芽を形成しなくなるということである。このことをふまえると、ふたつの型の吸光が同じ波長を照射したときは花芽形成を促進するPfr型がおおよそ50%存在しているといえる。その後、暗期を与えるため赤色光を照射したときよりもPfr型の減少するスピードが速くなるため、花芽形成は起こりにくくなると考えられる。ただ、花芽形成に影響を与えるには赤色光のみとは限らないことや、フィトクロム以外の光受容体が花芽形成に関与していると考えるのが自然であるため変異体などを用いて他の実験も行うべきである。

A:よく考えていると思います。フィトクロムの場合は、実は、そのタンパク質の分解速度も効いているのかもしれません。タンパク質の安定性が、実はシグナル伝達の一環になっている例は他にもよく見られます。


Q:今回の授業では光刺激の強さによって細胞内での葉緑体の位置が変わることを知った。具体的には、弱光下では光に対して垂直になるように、強光下では光に対して平行になるように葉緑体が配置されるということである。このような葉緑体の移動は、細胞内に敷かれたアクチンによるレール上をミオシンが葉緑体と結合して輸送することによって行われているのであろう。ただし、光の条件によって輸送方向を変えるというのは、植物細胞内に多く存在する光によるストレスを感知できるタンパク質の一種が関係していて、そのタンパク質から細胞内輸送関連タンパク質へとつながるシグナル伝達系が強光下と弱光下で異なることなどによって引き起こせる現象なのかもしれない。

A:「行われているのであろう」「現象なのかもしれない」などとなぜ思うのかの根拠をきちんと述べないと科学的なレポートになりません。根拠と言っても、別に実験データが必要なのではありません。自分の頭で考えた理屈をきちんと展開する必要があります。


Q:今回の講義では、クリプトクロムについて興味を持った。クリプトクロムは青色光を受容するタンパク質で、体内時計に関与し、植物のみならず動物でも似たようなものをもっていると習った。クリプトクロムによる体内時計システムは生物種を超えて共通しているという点が大変興味深い。このようなことからまずわかることは、おそらく体内時計はクリプトクロムによって受容する青色光によるものではないかということだ。クリプトクロムで受容する波長の光は他の色素であるフォトトロビンやクロロフィルでも同じような作用スペクトルで受容できるが、どのような植物でも持っているクロロフィルではなく他のタンパク質であるクリプトクロムが体内時計の役割を担っている。しかしながらクロロフィルではないタンパク質が体内時計をしているからこそ進化の過程で私たち動物も体内時計を持つことができたのであろう。

A:「植物でも持っているクロロフィルではなく他のタンパク質であるクリプトクロムが体内時計の役割を担っている。」という部分まではよいのですが、ここから本当は、それがなぜなのか、と展開してほしいところです。「動物植物を問わず持っているクリプトクロムが使われている」−>「だから動物も持っている」というだけだと、一種の循環論法で、ロジックになりません。


Q:今回の授業で単純に植物のすごさを感じたのは、光を求めるために茎をのばし、得られるようになると元の形態に戻っていったシクラメンである。スライドにあった写真ほど茎を伸ばすことは、植物にとってエネルギーを消費する行為であり、光が少なく栄養を得にくい状態にあるとき、悪影響を及ぼすのではないかと疑問に思った。植物にとって光が当たらないことは死活問題であることと、自然の中であの個体まで成長するためには光が十分に当たっているはずであることから、広範囲にわたって光が当たらない環境ではないと植物は認識しているはずである。よって多少無理をしてもエネルギーを消費して光を探し求めているのだと考えられる。また、光が全体的にあたるようになってから元の状態に戻ったことから、植物は縦に伸びている方が斜めに成長させるよりもエネルギーを消費しにくいのだと考えられる。

A:考えようという姿勢は感じられます。ただ、元レポートは変換ミスがたくさんあったので修正しました。


Q:今回の講義では植物の光合成調節について学んだ。光合成の短期的調節には葉の向きを変えて直接的に葉にあたる光の量を調節する方法と、葉緑体を移動させることによって葉緑体にあたる光を調節する方法との2種類の方法があった。植物は自ら動くことができないのでなるべくエネルギーを節約した方がいいと考えられる。よってできれば1つの方法にとどめた方がエネルギー消費は少なく植物にとっていいのではないか。ではなぜ2種類の方法があるのだろうか。葉よりも葉緑体の誕生の方が早いので葉の向きを変えることよりも葉緑体の移動の方が先に行われていた可能性が高いと考えられるため、葉の向きを変えることは後からできたものであると考えられる。よって葉の向きを変えることが行われ始めた理由が2つ方法がある理由であると考えられる。葉の向きを変えることは光が強いため行われている。つまり光が十分に当たっているためエネルギーが十分にあり、エネルギー節約のことを考えなくてもよい状況であると考えられる。そのためエネルギーの大きな消費という犠牲を払っても問題はないため、葉緑体の移動と共にこの葉の向きを変えることによって大きな効果を求めたのではないかと考えられる。

A:最初論旨を読み取りづらかったのですが、理解できました。もう少し日本語を整理できると思いますが、よく考えられてはいると思います。強光条件の回避にエネルギーの消費をいとわない、ということは当然と言えば当然かもしれませんが、案外気づきづらいものです。


Q:植物は基本的には光が強いほど光合成速度が上がるが、一定の光強度を越えると光合成速度が止まるような仕組みになっている。なぜ光が強ければ強いほど光合成速度が上がるような仕組みではないのだろうか。光合成速度が止まる要因は光以外の条件がそろっていないということもある。しかしすべての環境的条件をそろえたとしても光合成速度は高くはならない。すべての環境的条件がそろった状態で光合成速度が止まる原因は二つ考えられる。一つは強すぎる光が植物体に悪影響を与えることがあるからです。もう一つは葉緑体数など光合成に必要な器官を多くしたとしてもそれほど強い光を受けることはほとんどないため、光合成器官をつくるエネルギーが無駄だからである。

A:これも、ある意味で当然のことではありますが、このように考えて、そのことをきちんと認識することは重要だと思います。


Q:今回は植物の光受容体について学んだ。光受容体の一種であるフィトクロムは主に赤色光と遠赤色光を吸収する。周囲を背の高い植物で囲まれている場合、下の方に生育している個体は光合成をするために必要な赤と青の光を十分に受け取れないため生存に不利になる。しかし、遠赤色光は他の葉に吸収されず透過するため、フィトクロムが受容することできる。フィトクロムは遠赤色光を感知すると不活性型になり茎を伸長させるように働くため、他の葉よりも優先的に光を受容し、生存競争に有利になる。ほとんどの植物はクロロフィルを用いて、赤と青の光を吸収し光合成をしているが、もし遠赤色光を光合成に利用できる光受容体を進化の過程で発達させることができていれば、下の方に生息する植物でも周りを囲む背の高い植物と光の奪い合いをする必要がなくなっていたのではないだろうか。しかし、実際にそのような受容体が発達しなかったのは、その土地の栄養塩などには限りがあるため結果的には背の高い方と低い方とで競争が起こるためであるのだろうか。

A:最後は、「あるのだろうか」とオープンクエスチョンにするのではなく、何らかの理屈をつけて結論付けたほうがよいでしょう。競争が起こった時に遠赤色光を使う植物の方が負ける理由を考える必要がありますね。


Q:光に対応よる植物の動きについて学習した。光強度によって植物細胞内では光強度に応じた位置に葉緑体が移動するとのことであった。細胞小器官の移動はモータータンパクに伴うものであり、細胞内のはたらきであるが細胞全体の動きとしてはどうだろうか。植物は光に対する屈性をも持つものが存在し、これは植物種によって屈性に関与する遺伝子がいくつも発見されている。屈性も先に記述した葉緑体のように光に対応しており、そのメカニズムには光受容体としての色素の存在が推測される。光屈性は光強度によって葉緑体移動のように反応が数パターンも示すことはない。つまり光受容体としての色素は葉緑体ではないと推測でき、植物が様々な色素を持つことへの理解につながると思う。

A:これだけ短い文章の中でこれだけ論点が次々変わってしまうと、論理的な文章にするのは無理だと思います。先ず書き始める前に頭を使って、何についてどのように書くかの輪郭を頭に置いてから書くようにした方がよいでしょう。


Q:今回の講義では、植物が光回復酵素を持つことを学んだ。動物にも日周リズムの形成などに働く光回復酵素に似た構造の酵素はあるが、光回復酵素は植物特有のものである。進化の方向はわからないが、動物にも似た構造のものがあるということは、これらの酵素の祖先は共通のものである可能性が考えられる。ではなぜ植物は光回復酵素を持ち、動物はこれを持たないという選択を行ったのか、今回はこのことについて考えていきたい。原因として考えられることは2つある。まず1つ目は、植物は常に光を浴びているということである。光回復酵素は、長波長紫外線のエネルギーを利用して修復を行うので常に光を浴びている植物にとっては、迅速な修復が可能であり、最適な機構であると考えられる。2つ目は、動物が光回復酵素よりも高度なDNA損傷を回復するような機構を獲得した可能性である。植物と違って常に光を浴びているわけではない動物にとって、長波長紫外線のエネルギーを利用する光回復酵素よりも、異なるエネルギーを用いる修復機構の方が適している。動物は様々なものからエネルギーを得られるため、このエネルギーを利用して光回復酵素よりも多くのエネルギーを利用するような高度な機構を発達させていったと考えられる。このように、植物と動物は生活を行う環境が異なるため、同じ現象に対してもそれぞれに適した異なる機構を発達させていったと考えられる。

A:最初の「植物特有」というのは間違いでしょう。バクテリアや菌類は持っていますし、ヒトは持っていないものの、持っている動物もいます。ただ、植物は持っているが、ヒトは持っていない、と言い換えれば正しくなりますし、その後の展開もそのまま使えます。論理展開自体はよいと思います。


Q:今回の講義では「植物の光環境応答」について学習した。中でも、植物の光の吸収について深く興味を持った。というのも、以前夏の野外実習にいった際に植物の現存量(バイオマス量)の非破壊的な測定を行った。その時には芝生をフィールドとして、3つの環境条件の下測定を行ったそこでは、地温などといった測定では上手くいったものの、光の透過量による測定では有意な結果が得られなかったのである。そこで、今回の講義を聴いて植物の光吸収に1つの原因はあるだろうと考えた。植物の葉は赤色の光を吸収しやすいという話しがあり、その実習で使用した光の色はまさしく赤色のレーザーポインターを使用して行った。そのために、バイオマス量の多いところではより一層光を吸収してしまい、光をあまり通さなかったのであろうと考えられる。また、芝生にはどれほど影響があるかわからないが葉の向きや光の強さも関係しているのではないかと思った。従って、その実験を成功させるにはまず光を別を色にする必要があり、また光の強さも変更しなければならないと考えた。また葉の向きに関しては、その測定位置や時間帯を配慮して行う必要があると思う。以上のようにこの実験を行う際には植物の性質をよく考えた上で行う必要があったと考えた。

A:面白そうなのですが、その実習の具体的なイメージがつかめませんでした。実習内容がわからないといまひとつ問題点がはっきりしないので、もう少し説明が必要かもしれません。


Q:今回の講義では、植物の光感知機構について学んだ。その中でも、葉緑体の移動に関して疑問がわいた。葉緑体は、暗所では細胞内全体に拡散しており、弱光下では細胞の上面と下面に集まっており、強光下では細胞の側面に集まっていた。まず一つ目の疑問は、なぜ弱光下において細胞の上面だけではなく、下面にも葉緑体が集まるのか。弱光下においてより効率よく光を吸収するために、細胞上面に葉緑体が集まるのは十分に理解ができるのだが、なぜ細胞下面にも集まるのだろうか。葉緑体全体が、可能な限り上面側に集まった方がよいのではないか。その理由の一つとして、効率よく光を吸収するために、「面」を作りたかったのではないかということが考えられる。三次元的にバラバラに存在するよりは、細胞の下面を利用して一面的にしっかりとした「面」を作り、二次元的に光を受けたほうが光の取りこぼしが少なくて済む。また、葉緑体同士の重なりも減らすことができる。二つ目の疑問は、なぜ強光下において葉緑体が側面に沿って並ぶのかということである。強光下ということは、光合成を行って有機物を生産するチャンスということである。それにもかかわらず、なぜ光を受けにくい形態に並んでしまうのだろうか。その理由として考えられるのは、一つの葉緑体にとっては十分すぎる光量であるので、吸収することよりも細胞内のより広範囲に光が届くことを優先させたから。また、一つの葉緑体にとっては過剰な光量であるのでわざと避けて受け流した、ということも考えられる。

A:考え方はよいと思います。ただ、論点は弱光か強光かのどちらかに絞ってもう少し深く考察できるともっとよいでしょう。


Q:今回は光応答について学んだ。中でも、植物は暗所では積極的に葉の展開を抑制して茎を伸長させることで明るい環境に到達しようとするためにもやしの様な姿になり、光に到達すると速やかに形態を変化させて葉緑体を発達させ光合成を始める。という応答について掘り下げて調べてみたい。前述の状態の事を「黄化芽生え」というそうだ。また、この黄化芽生えについて興味深い論文を見つけた。「EIN3/EIL1 cooperate with PIF1 to prevent photo-oxidation and to promote greening of Arabidopsis seedlings」(Zhong et al. PNAS (2009)106:21431-21436. doi:10.1073/pnas.0907670106)によると暗所で発芽させたシロイヌナズナ黄化芽生えの暗所で育成する期間が長くなると緑化しなくなるものが現れ、9日間暗所で育成した場合、80%以上の芽生えの子葉が緑化しなくなる。これは、暗所育成期間が長くなるとクロロフィル前駆体のプロトクロロフィリドの過剰蓄積やプロトクロロフィリドからクロロフィリドを合成するPORの活性が失われるために、光照射によって子葉にROSが蓄積して光酸化傷害を生じることによる。しかし、エチレンは黄化芽生えが緑化する際に光酸化傷害から保護し、芽生えの生存を高める作用があるという。一般的にスーパーで売られているマメ科のもやしは、比較的長さが同程度になっている。やはり、暗所条件期間には上限があって、それを超えると枯れてしまうと考えるのが妥当であるから、これ以上長くすると廃棄率が増えたりして生産効率がわるくなるのではないかと考えられる。あまり需要はないと思うが、エチレンを用いればこの問題を解決することができ、従来より長いもやしが期待できる。また同様にしてこれを他の植物にも応用することで何か需要のある野菜の変種ができるのではないかと思った。

A:論文内容の紹介で終わってしまうと論理になりませんが、このレポートでは、そこからさらに自分で論理を展開できているので評価できます。よいと思います。


Q:植物にはフィトクロムやフォトトロピンなどの色素タンパク質が存在し、これが光を感じ取る。フィトクロムは植物の太陽光が当たらない場所からの退陰反応や光発芽を引き起こす。光発芽種子は650nm~680nmの赤色光をあてると発芽が促され、710nm~740nmの赤外光が当たると発芽が抑制される。これは種子の頭上を他の植物が覆っている状況での発芽を避けるためのシステムだと容易に想像できる。光発芽だけでなく暗発芽種子も存在するが、光があたらない場所での発芽は植物にとってどんなメリットがあるのだろうか。光が当たらない環境として、他の植物が周りに多く生えている。もしくは地中に種子が埋もれている状況が考えられる。強い太陽光を好まない植物や、ある程度の湿度を好む植物であれば頭上を他の植物に覆われた環境が良い場合もあると考えられる。地中に種が埋もれている際の発芽ではしっかりと地に根を張れることがメリットとして考えられる。

A:これもきちんと考えられていてよいと思います。本当は光発芽種子、暗発芽種子の具体例をそれぞれいくつか知っていると、より具体的な議論が可能になりますが、そこまではしなくても論理は展開できるでしょう。


Q:植物の光を感知する光の感知機構について学んだ。気になったことは、葉緑体が暗所や弱光下、強光下で移動することである。葉緑体は、どのようにして移動しているのだろうか。弱光下では葉と平行になるように葉緑体が並び光の当たる面積を多くする、また強光下では葉と垂直に並び光の当たる面積を小さくしている。このような移動を考えると、細胞内交通という面から考えた場合に、方向性と選択性を持った輸送が重要になっていることが分かる。細胞骨格に沿って移動していると考えて、どうやってその方向を転換しているのだろうか?ここで光の強弱によって、その移動方法が異なっていると考えられる。例えば考えられることは、弱光下のときだけ光に向かう何らかの機能が働く、また、強光下においては光から逃れる何らかの機能が働くということである。ここで、暗所下においてはどちらかというと強光下の状態に近いことから、弱光下のときだけ光に向かう何らかの機能が働いていると考える方がうまく説明できるのではないのかと考えた。

A:これも考えようという努力は感じられます。ただ、光によって動くということだけを材料にして議論しているので、あまり論理が深まっていません。何か別の物の見方を取り入れると、もう少し理屈が感じられるレポートになると思います。


Q:今回の授業では光合成の光応答などについて学んだ。その中でも葉の表と裏で葉緑体のグラナスタックの構造が異なるということが興味深かった。なぜ葉の裏側の細胞内ではグラナスタックが多く積み重なった構造をとるのかについて気になった。はっきりとわかっていないということだが、集合体になることで反応の場を大きくしているように思われる。つまり、単体が集まっているのではなく、集まることで大きな単体を形成していると考えた。実際に葉の表と裏からまとまったグラナスタックを回収し、同量の光を当てたときに、裏のたくさん積み重なっているグラナスタックのほうが光合成効率が良ければ仮説はより有力になる。実際に光が当たらなくても、層になることで効率を上げることができるかもしれないし、その意味で植物がこのような構造を備えていると考えるのは自然である。

A:他の人が着目していない点に目をつけていてよいと思います。問題は、「層になることで効率を上げる」あるいは「集まることで大きな単体を形成している」ことが具体的にどのようなことなのかがわからない点でしょう。こんなことがあるのではないか、という予想が一つでも挙げられるとよいのですが。