植物生理学II 第12回講義

ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸

第12回の講義では、前回のオーキシンの補足をしたのち、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸について、その働きとシグナル伝達を取りあげて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:カビがジベレリンを持つ理由について考察する。考えられる理由としてはふたつある。ひとつはカビがジベレリンを自身で使うために産生するということだ。ジベレリンは植物においても多様な機能を持つので可能性はある。しかし、馬鹿苗病菌でしか見られないのだとしたら、カビにおいて必要というよりは馬鹿苗病菌の行動において必要であると考えたほうがいいのかもしれない。二つ目は植物に作用させるために産生するということだ。ジベレリンを過剰に作用させることで、植物の現存量が増え食料が増加する。また、植物が倒れることで湿度が高く生息しやすい環境を獲得しているのではないだろうか。さらに、植物が枯れることで侵入しやすいということもあるだろう。

A:悪くはありませんが、できたら可能性をリストアップするだけでなく、その中でどれが真実に近いかを、何らかの理屈をつけて結論できるとよいでしょう。


Q:今回の授業では、ジベレリンやサイトカイニンやアブシシン酸などの植物ホルモンについて詳しく学んだ。ここで、サイトカイニンの特性について考察したところ、側芽や側枝の成長、さらには実をつけることに関して促進作用を示すものの、反対に根の成長に関しては抑制に働くことから、サイトカイニンが多量に発生したからといって必ずしも植物が大きく成長するのに役立つわけではないことがわかった。では、サイトカイニンを植物中に多量に発生させても根の成長を妨げないようにできないだろうか。根の成長を妨げないために私が考えたことは、サイトカイニンの存在量を植物の上部、茎や実の部分でだけ増やし、根の部分ではほとんど存在しないようにするというものだった。つまり、サイトカイニンに関する根への輸送経路を断つことができれば、根の成長は妨げられない。だが、サイトカイニンのみを根へ輸送できないようにすることは困難である。ならば、サイトカイニンの生成を葉などの植物上部で行い、それを根まで輸送する前に茎や実で使い切るというのが最適な方法だと思われる。しかしこれでは、サイトカイニンを使い切れる少量ずつしか生成できない上に実まで輸送できるかどうかは定かではなくなる。これ以上何も方法が思いつかなかったので、実際にはどのようになっているのか調べてみた。サイトカイニンについて調べてみると、種類が2つあることがわかり、そのうち片方しか側芽や側枝の成長に関わらないことが判明した。これは理研のホームページに載っていたが、サイトカイニンは側鎖の違いにより側芽や側枝の成長を促すものと促さないものがあり、サイトカイニンの全体の存在量を変えずに側枝の成長を促すタイプのサイトカイニンだけを増やすことで根の成長を妨げすぎずに植物の上部の成長を促すことができる。よって、サイトカイニンの全体量を変えずに種類を工夫することでこの問題は解決することがわかった。
参考文献:理化学研究所、植物ホルモン「サイトカイニン」の「質」の重要性を解明−サイトカイニン分子のかたちが変わると作用が一変−、http://www.riken.jp/pr/press/2013/20131126_1/

A:考えてはいますが、何を根拠に「サイトカイニンのみを根へ輸送できないようにすることは困難である」と言っているのかがわかりませんでした。以前の講義で扱ったと思いますが、植物の導管や篩管は、動物の血管系とは違って、全身を循環しているわけではありません。例えば、導管だったら根から茎、そして葉へと一方向へ導管液が移動します。とすれば、例えば根と茎の間の部分でサイトカイニンを合成して、それを導管液にのせれば、地上部だけにサイトカイニンを供給することが可能になるのではないでしょうか。


Q:前回の授業でオーキシンとサイトカイニンが相互に作用しあって側芽の成長制御をすることがあることを学んだ。その側芽の成長制御を使えば例えばイネの成長を促進することがてきるのではないかと考える。他には芽キャベツの成長も促進することができると考える。

A:何度も注意をしていますが、この講義のページを見ずにレポートを書いているのかな?単に「考える」と書けば考察になるわけではありません。レポートにはロジックが必要です。


Q:今回の講義では植物ホルモン(ジベレリン、アブシジン酸、サイトカイニン)について学んだ。その中でも、各植物ホルモンの生合成経路の違いについて興味をもった。複数の生合成経路をもつ植物ホルモンが多いのに対して、ジベレリンは単線の線路になっていた。なぜ、ジベレリンは単線の生合成経路なのか。複数の生合成経路をもつメリットとしては、どこか一つが欠けてもそれを避けて別の合成経路を辿ることができ、完全に欠損してしまうということがなくなる。しかし、経路が複雑になるので、合成に手間がかかってしまう。これに対して、単線であるメリットは合成の経路が単純であり、素早く合成できることである。なので、ジベレリンの作用である休眠打破や各部位の成長促進など、植物体早く大きく変化させたい時に素早くかつ多量に合成するために単線型の経路になったのではないかと考えられる。

A:一つの考え方としてよいと思います。ただし、これだけだと、ジベレリンと同じように成長促進作用のあるオーキシンが複数の合成経路を持っている点が問題となりますね。


Q:今回の講義で私が特に興味を持ったのことはオーキシンの合成経路である。オーキシンは元となる物質は同じでありながら複数の合成経路を持っているのである。ジベレリンの合成経路ひとつであると学んだ。ではなぜ、オーキシンは経路を複数もっているのであるか。考えられることは2つある。ひとつめは合成する場所の違いではないだろうか。前回の講義中でオーキシンは芽や若い葉だけではなく充分に生長した葉でも合成されると学んだ。しかも、この場所の違いによりオーキシンの移動速度や極性の有無も異なっていた。合成される場所により経路が異なり、その性質も変わるという可能性がある考えられる。ふたつめは、オーキシンが植物にとって重要な植物ホルモンだということである。茎の伸長生長促進や花芽形成誘導作用などといった生育する上で大切な役割を担っている。ひとつの経路が働かなくなった場合でも経路を複数持っていればオーキシンは合成される。他の生物でも大切な遺伝子は発現系を複数もつことが多々あるのでこの考えては正しいのではないだろうか。

A:よいと思いますが、可能性を二つ挙げたら、何でもよいので理屈をつけて、自分はこう思うと結論をつけたほうが全体の論旨がはっきりします。後者の可能性を取る場合、ジベレリンは大切ではない、ということになるので、やや苦しいように思います。


Q:今回の授業で触れられたオーキシンやジベレリンのような比較的単純な化合物が植物ホルモンとして広く働いている理由を考える。まず、これらの低分子の化合物が細胞内で遺伝子の制御等に関わるには分子自体の特異性が低いと考えられる。実際、遺伝子発現の調節に関与する際、まず特定のタンパク質(TIR1やGID1など)と結合し、それを介して制御が起こっている。ここで、様々なタンパク質を遺伝子制御に関わる直前の過程でセンサーとして用いるのはそれらを作るためのコストが大きすぎると考える事もできる。しかし、これはオーキシンやジベレリンが低分子で特にオーキシンは生合成経路が複数あるほど簡単に作れるのでこれらの化合物の合成にコストが掛からない分だけ、これらの化合物を検知し、遺伝子調節を行う機構にコストを割けることができるのだと考得ることができる。このようにタンパク質などより比較的簡単に合成される分子を、より複雑な制御を介して遺伝子調節をする機構が植物にとって有利に働き、広く用いられているのだと考える。

A:これはタンパク質と分子量の小さなシグナル分子の役割分担についての考察ですね。植物ホルモンに限定される話ではありませんが、目の付けどころがよいと思います。きちんと考察されています。


Q:今回の授業で気になった点はオーキシンの生合成経路は複数あり合成能を欠く変異体が得られないが、ジベレリンでは合成経路が1つであり欠損変異株を作ることができるということである。その植物ホルモンがもし重要で不可欠なものであるなら合成経路が1つではなく複数あったほうが何か変異などが生じたときのことを考えると安心である。だから、オーキシンが複数合成経路を持つのは、オーキシンというホルモンの植物にとっての重要度を表していると言えるのではないか。オーキシンは植物の成長にかかわるホルモンであるので、やはり、植物にとってはなくてはならないものだ。オーキシンがないと植物が生存できないかどうかを調べてみていないのでわからないが、おそらく生存にとっても重要な役割をするホルモンなのだろう。合成経路をすべてストップさせるあるいはオーキシンが全く分泌されない個体を作り実験をしてみたい。またジベレリンでは合成経路が1つのみであるので欠損変異体があり、矮性種はそれにあたると授業でも言われていた。このことからもジベレリンが合成されるか、されないかは植物にとってあまり重要ではなく、ジベレリンの欠損が大きく植物の生存を決めることなどはないようである。

A:これは、ある意味潔く、オーキシンは重要だがジベレリンは(それほど)重要ではない、と言い切ることによって論理を構築しています。一般の知識と整合性があるかどうかは別として、この講義のレポートとしてはよいと思います。


Q:今回は植物ホルモンについて学習した。具体的に紹介されたのはサイトカイン等であったが、作用としては、改めて調べてみると、細胞分裂促進、シュートの形成、側芽の成長促成、老化防止、シンク化等があげられていた。ここで一つ感じたのが、動物ホルモンと比較して、多くの作用を持っているということです。動物ホルモンは一つのホルモンに一つの作用が基本的だと思うのですが、植物ホルモンはサイトカインのほかにも、ジベレリンは伸長成長の促進、休眠打破、発芽促進、アミラーゼの誘導、花芽形成。開花促進、単為結実促進など作用が多い。このことに何らかの理由があるのかを考えた。ホルモンというのは特定の細胞で合成されそれが標的器官へと運ばれて実際に作用するというメカニズムである。この合成するにあたり、動物は植物に比べ、複雑に分化した器官をもっているといえるので多くの種類のホルモン合成経路を獲得でき、一つのホルモンに少ない役割を当てはめるというシンプルな作用機構を用いることができたのではないかと考えた。また、このシンプルな作用機構のほうが、ホルモンの誤った作用が少ないのではないかと考えました。

A:よく考えていると思います。ただ、問題を合成経路に帰着させていますが、植物の二次代謝産物は実に多様です。ジベレリンにしても、実は総称であり、実態としては100種類以上の物質が報告されているという話を講義の中でしたと思います。とすると、植物が多くの種類の物質を合成できないわけではないことがわかります。


Q:今日の授業で、種なしブドウの作製にジベレリンを用いていることを学んだ。ジベレリンは10−6M~10−10Mとかなり低い量で作用するが、ジベレリン処理でこれよりも多い量に浸しているので悪影響はないのか疑問に思った。過剰に作用されると遺伝子に変異が起きやすくなったり、単為結実だけでなくジベレリンによる他の作用を引き起こす可能性があると考えた。しかし、ジベレリン処理する場所は花がついて房になるところだけなので、花芽はすでについた状態であり、発芽促進や伸長促進、花芽促進が起こりやすい場所ではない。また、ジベレリンは農薬ではあるが植物がもともと保持しているものなので、ジベレリンが過剰に作用した場合の排出機構なども備わっていると考えられる。よって、悪影響は小さいだろう。

A:何らかの人工的な処理の副作用の可能性は、多くの人に不安を感じさせるものであって、重要なテーマだと思います。そして、そのような点についてこそ、生物学教室で生物を専攻した人間が一般の人に科学的に説明すべきなのだと思いますが、ややこれだと心もとないですね。生物学教室を卒業したら、一般の人から見たら専門家ですから、頑張ってください。


Q:今回の講義ではオーキシンの生合成経路や、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸などの作用について学んだ。オーキシン以外の植物ホルモンも多くの役割を担っていることがわかった。前回の講義のレポートではオーキシンが複数の役割を持つ理由としてコストとの関係について考察したが、オーキシンは多くの生合成経路を持っているということであったのでコストについてはあまり関係ないと考えられる。ではなぜ植物は多くの役割を一つの植物ホルモンで補っているのかについてもう一度考察する。オーキシンは複数の生合成経路を持つことで何かが欠損してしまっても別の経路で合成することができるとのことであった。植物が生きていくために重要な成長の促進などの作用を一つの植物ホルモンにまとめ、それが絶対に作用するように複数の経路を作ることで生きのびる確実性が高まる。よって一つの植物ホルモンに多くの役割を持たせ、複数の生合成経路を持たせることによって植物はこの生き延びていく確実性を高めたのではないかと考えられる。

A:上にも似たレポートがありますが、これだけだと、合成経路が一本道の植物ホルモンは重要ではない、ということになります。その部分を説明する必要があるでしょうね。


Q:今回の授業ではオーキシン、ジベレリン、サイトカイニンなどのような植物ホルモンについて学んだ。これらの植物ホルモンはそれぞれ一つのホルモンで数多くの作用がある。なぜ一つのホルモンに一つの作用にならなかったのだろうか。一つのホルモンに多くの作用をもたせるメリットを考えてみた。メリットとは合成が楽であるということである。なぜなら合成経路が多くあるより一つにまとまっていた方が合成しやすいからである。また条件によって作用を変えることによって作用を間違えにくくなる。また必要な時に必要な作用が発揮できる。

A:思いつく点をリストアップしただけでは考察とは言えません。作用を多くした方が得なのであれば、動物ホルモンの場合、より機能が限定されていることが多いわけですから、損をしていることになります。損得が分かれていることは、生物のそれぞれの特徴を反映しているはずです。そこまで議論をすると、論理的なレポートになります。


Q:今回の講義で様々な植物ホルモンについて学んだ。植物ホルモンの一つとしてジベレリンがある。ジベレリンは単為結実に用いられる植物ホルモンで、種無しぶどうなどが開発された。ある論文でジベレリンを植物体内で代謝する遺伝子、種が無くても果実が肥大するために必要な細胞分裂関連遺伝子、果実に糖を蓄積するのに必要な遺伝子が同定された。これから私は次世代への栄養分となる部分(果実)の形成は、受精や種子形成に依らないのではないかと考えた。果実形成の目的は次世代の栄養だけでなく、他にあるのではないだろうか。一つの仮説として、果実が形成され茎とつながっている間は、栄養分は果実の方へ一方通行ではなく、茎の方(植物本体)へも流れているのではないだろうか。基本的には果実の方へ流れるが、植物本体自体が栄養不足になった場合、果実の方からも栄養を摂取するメカニズムがあるかもしれない。
参考文献:ジベレリン処理によるブドウの単為結果誘起の機構解明

A:ロジックはやや強引な気がしますが、物の見方は独自性があってよいと思います。一つだけ考えてほしいのは、本体と果実の優先順位です。一年草などでは、むしろ最後は本体を枯らして、その栄養を果実につぎ込むようにしています。


Q:今回の講義では、植物ホルモンの作用について学んだ。その中で天狗巣病(魔女のほうき)という鳥の巣のような植物病に興味を持った。植物の局部でホルモンの異常発生が明確な病である。この植物の芽が過多に発生する理由として考えられるのはサイトカイニンの過剰発現であり、オーキシンの発現が少なくなっていることである。または、その他の影響としてカビやウィルス様々な生物の影響、生育環境、遺伝子が天狗巣病に起因しているのではないだろうか。

A:これは全体として何を主張したいのかわからないレポートです。単に思いつくことを並べるだけではよいレポートにはなりません。


Q:植物ホルモン(今回はオーキシン)生合成の経路について。多数の経路を持つことから生合成の安定性を保っているが、経路とその効率性について疑問をもった。例えばA、 B、C、Dと異なる合成経路を仮定する。これらの内で、中間物質の消費量や合成できるオーキシン量に差が生じるだろう。つまり植物にとってどの経路が遮断されてしまうとオーキシンの作用によって生じる成長や機能に影響を与えるという不利な経路も存在するのではないかと考える。この問題については一つ一つの経路を遮断した際の植物体のオーキシン濃度を測定すること、また実際に植物体に与える表現的差異を観察することで明らかになるはずだ。その結果として致命的な影響を与える経路遮断はないことが推測できるが、植物ホルモン合成の変異体に関する個体差を調べることにつながるだろう。

A:考えていることはわかりますが、複数の流れがあるときに、それぞれの寄与を調べるには、それぞれを止めてみて影響を見ればよい、という結論なので、やや当たり前な気がします。しかも、実際は、そのようなケースでは、1つを止めると別の流れの活性が上昇するという補償効果が働く場合が多いので、その辺りについても本来は考えなくてはなりません。


Q:今回の授業では、種なしブドウが異なる時期に2回、ジベレリンにつけることで作られていることを学んだ。1回目では受粉をしなくても実を作る役割、2回目ではその実を大きく成長させる役割を担っている。なぜ1回ではなく、同じ植物ホルモンを2回作用させないと種なしブドウが形成されないのか疑問に思ったので、今回はこのことについて考えていきたいと思う。今までに学んできたように、植物ホルモンは一種類につき一つの役割ではなく、複数の時期を通して、複数の役割を持っている。このことから、ジベレリンも作用させる時期によって役割が異なり、植物が実をつける時期と、実を大きく成長させる時期の2回、作用させる必要があるのではないかと考えられる。また、濃度の問題も考えられる。1回目に作用させた時と比較して、2回目に作用させた時は植物内のジベレリンの濃度が高くなっていると考えられるので、濃度の高さによって働きが異なる可能性も考えられる。植物ホルモンは他のホルモンとの相互作用であったり、時期や濃度によってさまざまな働きを行う。種なしブドウの作出にはこういった植物ホルモンの特性がうまく利用されている。

A:これは、単に2回処理を行うことの理由を別の作用だから、というように片付けず、時期特異性まで考えていて、非常によいと思います。


Q:今回の講義においてジベレリンの作用による種無しブドウの生成についての話題があった。その話の中に種無しブドウを生成するには時期を分けて2回ジベレリンを浸けなければならない。しかし、これには非常に手間がかかってしまう。そこで、どうにか1度に出来ないかと考えた。一回目には種子の生成を阻害し、二回目に果実の成長を促進させる働きによってこの種無しブドウを生成している。今回の問題点は時期的なものであるため、それを解決することを目標とする。まず1つ目はホルモンの組み合わせである。多くの種類を持つジベレリンの組み合わせによって解消したり、ジベレリンと他のホルモンとの組み合わせによってその問題を解消する(種無しのイチゴにはオーキシンが作用していることから)。二つ目はジベレリンの濃度を変化させること。それをすることによって、ある濃度で1度投与だけ種無しブドウを生成するかもしれない。最後に3つ目場所の変化である。通常以外の環境条件によって種無しブドウが生成する可能性がある。以上三点を挙げたが、この三点による組み合わせによっても変化する可能性があるため、この問題を解消するためには多くの組み合わせを行い、導き出していく必要があると考えられる。

A:これもよく考えていると思います。ただ、ロジックは少し強引かもしれません。可能性としてはまあよいのですが、実際にやろうと思ったときに、具体的なやり方が思いつけない気がします。


Q:今回扱った植物ホルモンの中で、ジベレリンが種無しブドウに関与しているという話題に興味を持ちました。私を含め、ブドウの種をいちいち出すのが面倒な人にとって種無しブドウは有難い存在です。ブドウの開花前と実が成熟する前にジベレリンに浸すことで種無しブドウが実るとの事でしたが、ブドウ以外の果物にもこの技術は当てはまるのでしょうか?我々の身近に存在するブドウ以外の種無し果物といえばスイカですが、どうやらこれは前述のジベレリン技術ではなく、染色体が関与する様です。通常のスイカは二倍体ですが、芽が出た頃にコルヒチンという物質を使用するとコルヒチンがチューブリンにくっつき、微小管の形成を阻害します。するとDNA複製の際に染色体を引っ張る微小管が存在しないので、分裂が行われずに四倍体になるそうです。さらにこの四倍体と通常の二倍体を掛け合わせて三倍体となると正常に減数分裂が行われず子孫を残せないために種が出来ない、つまり種無しスイカとなる様です(参考 http://www.kudamononavi.com/columns/view/10)。
 さて、ここで気になるのは人体への影響です。種無しブドウで用いられたジベレリンは元々植物が持っている植物ホルモンですから、種無しであろうと種有りであろうと植物を摂取する際に必ず口にしている物質であり、我々動物に対してはホルモンのような働きはしないので、人体への影響はありません(参考 http://www.oct-net.ne.jp/~k-46/pdt/pdt1.html)。しかしスイカで用いられたコルヒチンは痛風の薬の成分として知られ、副作用もあります。ブドウの時と同じように動物に優しいとは思えませんが、その影響は特には伝えられていないそうです。その前に、種無しスイカは手間がかかる上にあまり美味しくないという事で市場から消え去った様です。今回講義で学ぶことが出来ましたが、直接口にする物で人の手が加わっているものであれば、食べる人自身がきちんとそのメカニズムを知って人体への影響を考える必要があるのではないかと思いました。

A:考え方はきちんとしていますね。でも、できたら、コルヒチン処理をしても「その影響は特には伝えられていない」理由まで考察できるとよいと思います。植物生理学ではなくなりますが、この講義のレポートではロジックがきちんとしていれば分野は問いません。


Q:ジベレリンは100種類以上存在すると授業にあった。全体的な構造はそれぞれ似ており、部分的な構造が少しずつ違っている。これらのジベレリンは植物の種によって、もしくは細胞伸長や発芽の促進などの効果によって使い分けされているのであろうか。植物間のジベレリン構造の違いはジベレリンの単離精製によって調べられる。ジベレリンの構造と植物内での作用の関係はジベレリンの受容体の構造を知ることができればわかると考えた。

A:文と文の間は一応つながっていますが、全体としてきちんとしたロジックが感じられません。何度も書いていますが、この講義のレポートでは、論理展開をしっかりすることが重要です。


Q:脳科学で学んだ動物ホルモンに比べて、植物ホルモン(ジベレリンやサイトカイニン)においては、一つのホルモンあたりのその生理作用が多いことが気になった。動物ホルモンは、特定の器官で生産され、血液によって運ばれ微量で作用する特定の器官がある。ここで、植物には特定の器官で生産する訳ではなく、作用する器官が特定されていないという違いがある。植物においては、血液のように、体内を循環しているものはないので、ある特定の器官だけにホルモンを作用させることが難しいと考えられる。そのため、植物体の中で生産されるホルモンの数を増やしても、そのホルモンをある特定の器官に運搬することが難しいと考えられる。そのため、特定の器官にしか作用しない物質を生産することに必要性は少ないと考えられる。そこであらゆることに使える数少ない物質しか、ホルモンとして生産する必要性がないので、生理作用が多い物質のみを生産するようになったのではないか。

A:動物ホルモンの作用機序にやや誤解があるのではないでしょうか。「特定の機関で生産され」「微量で作用する特定の器官がある」というのはよいのですが、それは、ホルモンが特定の器官にだけ向けて流れていくからではありませんよ。


Q:前回の授業では、植物ホルモンの1種であるサイトカイニンがATPを原料にしていることを学んだ。ATPはその高エネルギーリン酸結合により生命共通のエネルギー通貨として知られている。さらにATPからリン酸が2つ解離したAMPもサイクリックAMPとしてシグナル伝達において重要な働きを持つ。このようにアデノシンにリン酸が結合した物質が多くの生物に共通な働きをなぜ持つことができたのか考察する。アデノシンはよく知られている通り、生物共通の遺伝情報の本体であるDNA、RNAの構成物質である。生物が分裂したりDNAを転写する際などに必要なため、すべての生物に必須な物質である。DNA、RNAの構成物質であるということが根本的なアデノシンの役割であると仮定すると、ほとんどの生物に普遍的に存在する物質であると考えられる。リン酸を結合させることでエネルギーの貯蔵先となれたり外界のシグナルの伝達に関わる物質になれたのはこのような普遍性が大きく寄与していると考えられる。サイトカイニンの原料となれたのもこの普遍性によるものだと考えると、サイトカイニンは酵素の発現がスイッチとなって即座に合成される必要があると考えられる。

A:考えている点は評価できます。ただ、タンパク質と脂質も生物に普遍的に存在しますから、その部分を説明する必要がありますね。「Aは条件を満たす」ということ「A以外は条件を満たさない」ということの間には、論理的に大きなギャップがあります。


Q:ジベレリンはカビから分泌されるという話があった。馬鹿苗病の原因菌となるカビによる分泌であった。しかし、カビが植物ホルモンを分泌するのはなぜであろうか。ネット上には植物ホルモンを分泌することでその植物の生長を自分にとって有利なものに変えてしまおうとして寄生性の菌などがこのような植物ホルモンを放出しているというものが見られたが、植物体そのものに寄生するのにその手間は不必要なように思われた。私なりには、このような植物ホルモンを放出しなければうまく寄生できないのではないかと考えた。植物に自然になじみ、寄生するために植物ホルモンの分泌が効果的であり、その結果植物に病をもたらすことになってしまっている可能性がありそうである。ジベレリン分泌能を欠損させた菌を用いて十分な数の植物に寄生させて、野生型との違いを見比べてみると差が出るのではないだろうか。

A:「雰囲気」で書かれたレポートの感じがします。「寄生するために植物ホルモンの分泌が効果的」という部分を論理的に説明しなければ、レポートになりません。また、「野生型との違いを見比べてみる」という部分も、何を比較するのかを明確にしなければ科学的な実験になりません。