植物生理学II 第3回講義

植物の葉

第3回の講義では前回に引き続き、葉の形と機能のかかわりについて、環境の重要性に焦点を置いて解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:二酸化炭素濃度を上げると気孔は閉じて葉温は上昇する、と講義であったが、二酸化炭素濃度上昇による地球温暖化により大気の温度も上昇するため、今後植物は常に気孔を閉じ、葉温は上昇し続ける状況に陥る可能性がある。もちろん植物にとって良い条件ではないので、環境に合わせてそれぞれの植物が進化すると考えられるが、上記の条件は現在のCAM植物でも対応できるのではないか。生物の進化は長い時間を要するため、すぐに進化した新たな植物が現れることは考えにくい。そのため、新たな植物が誕生するまではCAM植物が今よりも分布を広げるだろうと考えられる。しかし、過去にさらに二酸化炭素濃度が高い時代もあったのだから、進化だけでなく、先祖返りといったような現象も起こるのではないかと考える。化石でしか見つかったことのない植物や、化石にすら残っていないような古代の植物が再び現れる可能性があるかもしれないと考えると、少し楽しみである。

A:植物生理学Iで話したと思うのですが、CAM植物は、C3、C4植物に比べて光合成速度が非常に低くなります。そのような点の考察も欲しい所です。


Q:今回の講義で水中植物の葉は光が弱く、CO?の拡散速度が遅い水中の環境に適応するために陸上職物の葉と比べ葉の厚さが薄いということを聞いた。僕は熱帯魚を飼うことが好きでよく水草を入れることがあるのだが、アマゾンソードという水草が買ったときの葉の形と水槽の中に入れてから新しく生えてくる葉の形が違うことがあった。これについて調べてみると、この水草は水上で生育されると水上葉と呼ばれる水上環境に適応した葉を生やす。(観賞魚に入れるものは苔の対策などのために水上で生育したものを販売しているそう。) 逆に水中で飼育されると水中葉と呼ばれる水中環境での生育に適応した葉を生やす。このようにアマゾンソードは二種類の葉を環境に応じて自在に生やせることで、水中や水上のどちらにも適応できるような種類である。このような能力は水中環境にのみ特化した水草や陸上環境にのみ特化した草と比べ、乾季や雨季のある地域において水量の変化で水深の影響を大きく受ける場所での生育に適していると考えた。
・参考文献 水草 水槽.com アマゾンソードの育て方、http://mizukusasuisou.com/hinshu2.htm

A:水中葉と気中葉の光合成については、現在、卒研生が研究中です。


Q:蒸散をしているか確認するときに、サーモグラフィを用いる方法があることを学んだ。サーモグラフィ以外の測定方法はないのか考えたが、サーモグラフィが良いという結論になった。サーモグラフィを用いることで、非接触状態で温度を観察することができる。さらに、サーモグラフィ自体の精度については、そこまで気にすることではない。なぜなら、あくまで相対的な温度変化を見る必要があるだけだからだ。では、さらに踏み込んだ蒸散量について考えたい。湿度を一定にした閉空間において湿度変化を測定することで、算出できると思われる。見かけの変化ではなく、呼吸などの別の因子を考慮した実際の蒸散量を測定するためには、葉の表側と裏側を分けて測定し、表と裏の湿度変化の差を考える必要があるだろう。

A:蒸散量は、葉の周囲の湿度が高いと減り、低いと大きくなります。一方で、閉じた空間で葉が蒸散すれば、湿度が変化します。そのような条件で、どうしたら蒸散量が測定できるか、という点まで考えられるといいですね。


Q:オオカナダモの葉の形について、葉の先端が鋭利になっていて水が切れやすい形であることが示された。しかし水中植物であるにもかかわらず水が切れやすい形になっていることに疑問を感じた。水中で生息しているならば、水が切れる・切れないはさして葉に与える影響が変わらないのではないか。オオカナダモは沈水植物であるが、生息する水深は比較的浅いことで知られている。さらに、河川などの自然の水辺は降水量など様々な要因により水深が増減することが多々ある。この様々な要因により、オオカナダモの生息する水辺の水深が浅くなったとき、もともと浅い域に生息しているオオカナダモは、全体とまではいかなくとも部分的に葉が陸上に現れる可能性はとても高いと考えられる。陸上に現れたときの水滴が付いた状態と水滴がすべて流れ落ちている状態とを比較した際に、流れ落ちた状態の方がオオカナダモの生育に有利に働くため選択的に先が鋭利な葉が保存されていったのではないだろうか。もともと水中で生息するオオカナダモにとって水を介して光を吸収することはそこまで不利な条件ではないと思われるが、単純な話、地上に出たときには水という異物を介してから光を吸収するより葉に直接光がさした方が効率がいいためだと考えられる。

A:確かに、濡れた時に水が切れやすい葉の形の話をしましたが、水の中では抵抗が大きいという話もしたと思います。沈水植物の場合は、抵抗を小さくする必要がありますから、そのような観点からの考察の方が、もっともらしい論理になるように思います。


Q:水の中で生活している植物はなぜ葉が薄いのかについての話が印象的でした。授業の中でも少し触れたと思いますが、沈水植物と浮遊植物について特に関心を持ちました。それぞれの生活の利点欠点を考えてみたいと思います。まず沈水植物についてです。沈水植物は根は海底など底にはっています。陸上の植物は根から栄養分を取り入れるので、根を底にはっていることは栄養分の取り入れに有利であると考えられます。また水中ということで、気候のや気温変化の影響を受けにくいという利点もあると考えられます。欠点としては葉が水の中にあるため受け取る光の量が少なくなります。。また、気孔が機能しないので気体の取り込み効率が悪いということです。逆に浮遊植物は葉は水上にあるので、ほかの植物との競争も少ない中でたっぷり光を受けて光合成できます。気孔で気体の取り込みもできます。しかし根は水中にあるため、水分の吸収には困らないが、栄養分の吸収の効率は悪いのでないかと考えられます。また気候や気温の変化を受けやすいということです。以上から私は浮遊植物は光合成や気体の取り込みには有利であるが、変化に対応する力がないと考えられたので、沈水植物の方が生存競争には強いのではないかと考えました。

A:生存競争ということを考える時には、必ず環境とのかかわりを考える必要があります。全ての環境で生存競争に勝つ生物がいたら、世界中はその生物で覆われることになるでしょうから。ある水生植物がどのような環境ならば別の水生植物より有利なのかという視点が大切だと思います。


Q:私は、今回の授業で初めて異形葉性植物の存在を知った。その時々の環境に適応するために水中葉と気中葉の両方を形成することができる異形葉性植物は、どのような仕組みで葉の形や構造を変えるのか調べたところ、『陸生体ではABA(アブシジン酸)濃度が、水没体ではエチレン濃度が高(文献)』く、これらの植物ホルモンの濃度調節により、気中・水中に関係なく、気中葉・水中葉を形成することもわかった。また、『陸生から水没、水没から陸生、という環境シフト実験を行うと、展開が終了してしまっている古い葉は葉形変化しないが、新しい環境下で新たに形成された葉は移行後の環境に応じた形態を示す(文献)』ということも明らかにされている。しかし、水位の昇降が起こるため池で生育している異形葉植物に必要なのは、すでに展開が終了した古い葉においても形質転換できる能力であって、古い葉が形質転換できなかったら意味がないのではないかと思った。だが、ため池はもともと貯水するために私たち人間が作り上げた池であるから、異形葉性植物が地球上に誕生してからため池ができ、たまたま生育地として利用することができたのではないかと考えた。従って、異形葉性植物は水位の昇降が起こりにくい自然に発生した池や湖に適している植物であるのだろう。
参考文献:“異型葉植物から探る環境応答と葉の形態形成の可塑性”, ‘植物生理学研究室’, 桑原明日香, http://www.biol.s.u-tokyo.ac.jp/users/seiripl/oldver/kuwabara_Lab_of_Plant_Physiology.html

A:最後の所の論理をはっきりさせるためには、水位の昇降が起こりにくい環境で、異形葉がどのようなメリットを持つのかを述べた方がよいでしょう。一方、前半の植物ホルモンの話は結局自分の論理には全く反映されていません。自分の論理に反映させるように考える方がよいでしょうし、論理とは無関係なのであれば削除した方がよいでしょう。


Q:葉の形について、なぜ(why)その形になったのか考える楽しさを知った。葉の形が種によって様々であることは当然知っていたが、なぜその形になったのか考えたことはなく、すべて明確に理由がわかっているわけではないという点も含めて考えていて楽しかった。その種が育つ環境、葉を出す季節、太陽や地面からの距離、植物体の大きさなど、様々な要因によってその種にとって最適な葉となっていると思うと、葉を見る目も変わった。授業で扱わなかった葉の形で、アジサイのように葉の周囲がぎざぎざのものはなぜその形なのか考えてみた。淵をぎざぎざにすることで、葉を食べる虫が淵につかまりにくくなるため食べられないのではないか、また、淵のぎざぎざの先には太い葉脈の先端がくるようになっているため、葉脈と葉脈の間の面積を極力減らした結果ぎざぎざになったのではないかと思った。

A:葉の鋸歯について、2つの仮説が提出されていて面白いと思いますが、できたら、何か事実に基づいて、こちらの方の可能性が高い、という議論を展開できると筋の通ったレポートになります。


Q:今回の講義の中でで水中の二酸化炭素量について学んだ。水中では炭素は二酸化炭素として溶け込む他に炭酸イオン、炭酸水素イオンとしても存在している。つまり炭素の量はアルカリ性なほど多くなるということである。ならば水生植物にとってはやはりアルカリ性の水の方が生育しやすいのだろうか。これを確かめる実験系を作るのは比較的簡単である。弱酸性、中性、アルカリ性の3種の溶液を準備し、その他の条件を等しくしたうえで生育に変化が見られるかを確かめればよい。もし可能ならpHの変化に強い水生植物だけでなくそれぞれの条件下で生息している水生植物も用いるとなお良いだろう。もしこの実験で予想通りアルカリ性の方が生育が良かった場合、酸性条件下に生息する水生植物について更に2つの仮説を立てることができる。1つ目は酸性条件下に生育する水中植物はアルカリ性条件化よりも生育が悪いというものである。この仮説が成り立つ場合はその植物は他の植物よりも酸性条件下に強いために酸性条件下に生息しているということになる。2つ目の仮説は酸性条件下においてより多くの二酸化炭素を吸収出来るような機構があるというものである。こちらの場合はより細胞層を薄くすることや特別な炭素の運搬法を持っている等が考えられるこの機構を発見するには前の実験系で用いた生息域の違う水性植物において違いを見つけることが重要になるだろう。

A:pHが異なれば無機炭素量が変化する、というのは正しいのですが、pHの変化によって生育が異なれば無機炭素量の変化が原因である、とは言えないでしょう。pHが無機炭素以外の要因を通して生育に影響する可能性がありますから。そのあたりをきちんと見分ける実験系を考案するのは「比較的簡単」ではないように思います。


Q:サボテンについて考察する。サボテンはCAM型の植物であるが、自生する地域では雨季と乾季があることが多い。では雨水を得ることができるのになぜCAM型を採用しているのか。進化を辿ると陸上植物が登場したあとでCAM型植物が現れている。適応度の点から考えるとサボテンはやはりCAM型に移行する必要があったのである。雨水を得られるといっても乾季に水を獲得することは難しい。雨季に多くの水を得たところで乾季まで貯蓄できるとは限らず、つまり乾季に水を失うことを避けたいがためにローリスクな手段をとったのだと考える。干ばつが続けばCAM型でない植物は淘汰されてしまうため、結果として現在のサボテンが生き残ったと考えても良いだろう。サボテンの針が葉であることも昼間に気孔を広げないことも進化に伴い遺伝的に抑制されてきたことであるから、一部の食虫植物のように塩基のメチル化などによって遺伝子の発現を抑制されてきたのかも知れないと考えた。

A:乾燥がある条件でCAM植物が有利なのは、ある意味で当然でしょうから、比較するならば、雨季と乾季がわかれている環境と、一年を通して同じ程度に乾燥している環境における生育を比べないと発展性のある議論にはならない気がします。


Q:今回の講義では気孔の作用とそれを取り巻く環境との関係性について学んだ。感想としては水中動物の葉は気中植物の葉に比べて薄い理由として、私は前回のレポートで述べたように取り巻く環境の乾燥状態と葉の厚さが関係しているためだと思っていたが、光の要因、二酸化炭素濃度による要因などの様々な考えを聞けてとても有意義であった。今回のレポートでは「植物は温度が上がっても水を失わないほうを選ぶ」という内容について言及する。気孔を閉じることによって、二酸化炭素を多く取り込まないで済むという点や水分を失わないという点があることを踏まえると、ここ10年間で20ppmの二酸化炭素濃度が増加している中、気孔は不必要になっていくのではないかと考えた。植物を会社、気孔を社員、水を資産と例えると、人員削減(気孔を減少)させることによって、会社(植物)の資産(水)を減らさずに済み、将来の環境に適していくのではないかと考えた。つまり、植物あたりの気孔数は徐々に年月を経て減少していくのではないかと私は思う。

A:高二酸化炭素濃度環境で気孔がどうなるか、という研究は、東北大学の彦坂さんがやっています。一口に気孔といっても気孔の大きさ、気孔の開度、気孔の密度(葉の面積当たりの気孔の数)といろいろな要素がありますから、案外簡単ではありません。


Q:水中植物の葉は気中植物の葉に比べてさらに薄い。理由は、気孔とクチクラが必要ないため存在せず、水中では光が水によって弱められるため細胞の層があまり必要ないからである。気孔とクチクラが存在しないということは、つまり、細胞は直接、水、ガス交換を行っていると考えられる。しかし、水中のガスの量は気中に比べて少ないと考えられる。そこで、水中の植物はどこかしらにガスをためておくことができる器官を持っているのではないかと考えた。気中の植物と水中の植物の大きな違いは、周りの環境が空気か水か、である。つまり、気中の植物では必要だが水中の植物では必要ではない器官を探せば、その器官がガスをためておく器官になっているかもしれない。考えられるのは最初に述べた気孔と動管である。水中植物は気中植物と違い、気孔による温度調整や水分調整を行う必要がない。道管に関しては、水中植物は水中で生活しているため水分に困ることはありえない。よって、水中植物は気孔または道管にガスをためているのではないかと考えられる。

A:上の方のレポートにもありますが、水中のガスの量が気中に比べて少ない、というのは二酸化炭素の場合、必ずしも正しくないという話を講義でしたと思います。「ガス」といっても、酸素と二酸化炭素ではその振る舞いは全く異なるのです。


Q:気孔を使えない水中植物は、どのように二酸化炭素を取り込むのかというところで、「液体中での二酸化炭素の拡散濃度は気体中の1000倍遅く、植物体(細胞)の表面から拡散によって直接取り込むしかない。そして細胞層を多くすると結果として二酸化炭素を内部に取り込めなくなってしまう」、そこで表皮系を発達させなくてもいいので、水中植物は葉の厚みが薄いのだという説明を受けた。クチクラ層などの表皮系があまり発達していないのなら、植物細胞は浸透圧の影響を受けないのだろうか?と疑問に思った。クチクラ層は、乾燥から植物を守る役割を担っている。もし浸透圧の影響を受けるのなら、淡水に生育している植物は、水分が細胞内に流入し、細胞が肥大化する。海水に生えている植物は、細胞内の水分が流出し、細胞が小さくなってしまうのではないか。それでは、いくら細胞壁があっても安定的な細胞環境にならないと考えられ、生育するのが難しいのではないかと感じた。しかし、現実では植物は生息しているので、その問題点は既に適応しているのだろう。クチクラ層などの表皮系が薄くても、淡水・海水中で生育している植物(水草や海草など)は水中で生育している。表皮系が薄いのに浸透圧の影響をうけないなら細胞壁や細胞膜が関係しているのではないかと思った。細胞壁によって守られ、陸上植物よりも活発に細胞膜上のチャネルなどで能動的に浸透圧の調節をしているのではないかと考えた。実験するなら、中学高校の浸透圧の実験出よく行われている、細胞を濃度の違う溶液につけて観察する方法が一番簡単だろうと思った。

A:実は、細胞壁というのは物質の透過性は非常に大きいのです。細胞壁は物理的な強度を保つのが大きな目的で、ものを透過させないのはむしろ細胞膜の役割です。もちろん、細胞壁には浸透圧で破裂しないようにする、という作用はありますが。


Q:植物は気孔を開閉することで二酸化炭素を吸収し、蒸散を行っている。なので、気孔の開きすぎも閉じすぎも良くない。が、極度に乾燥している地域や、水中の植物はどうしているのか? 案の定、水生植物には気孔がほぼ無い。蒸散による温度調節以外の機能としてガスの交換、養分の移動があるが、ガスの交換、養分の吸収も葉の細胞と水により吸収可能な器官があり、普通の植物より気孔(蒸散)がいらないと考えられる。これは、乾燥地帯に生えているCAM植物も同じであると考えられる。

A:最後の文の「これは」の「これ」は何を指しているのでしょうね。前の文全体を指していると解釈しても、気孔がいらない、という部分を指していると解釈しても、論理的につながらないように思います。科学的なレポートでは、複数の解釈の余地を生まないような表現をすることも重要です。


Q:今回の授業で、水中にとけているガスの拡散速度が遅く、その影響により、水生植物の形態は陸生植物とは異なり、例えば葉は陸生植物より薄いと習った。この分野に関して考察する。水生植物の光合成では、酸素を放出するが、その酸素は水に溶けにくいため、放出された酸素は水には溶けず、気泡として大気に放出される。呼吸では、二酸化炭素を放出するが、二酸化炭素は水に溶けやすいため、気泡とはならず、植物体の周囲に溶けた二酸化炭素として存在することになる。このことは拡散速度が遅いことからも確認できる。つまり、水生植物は、光合成では呼吸によって生じた二酸化炭素を効率よく使うことができるが、呼吸では光合成によって生じた酸素を効率よく使うことができない。このような不釣合いが、植物体の大きさに影響を与えていると考えられる。ATPを産生することが困難なため、植物はその大きさを光合成速度に相応しい大きさにすることができないと考えられる。これは、水生植物の葉が薄いということとも関係があると考えられる。

A:これは、僕もまったく思いつかなかったロジックで、非常に面白いと思います。ただし、もう一つ考えなくてはいけない要因のは、酵素の基質に対する親和性です。呼吸の末端酸化酵素の酸素との親和性は比較的高いのに対し、光合成のルビスコの二酸化炭素に対する親和性は低いことで悪名高いことは植物生理学Iで説明したと思います。その点を考えると、実はそれほど不釣り合いではない、ということもあるかもしれません。


Q:授業内にて,水上の葉と水中の葉で厚さや形態に違いがある水草が存在するということを学びました。水中は水上と比べて、乾燥しない反面、気孔が使えなくなること。そして浮力が働くため葉を支える構造がいらなくなったからであるなどの可能性が考えられました。そこでなぜこの様に水陸両方に対応したのか考えてみました。当初に考えたものには雨等による増水が関係しているように思いましたが、あまりに一時のものであるので、葉を変えるほどのエネルギー消費に対する利点を見出せませんでした。しかし一過性のものでなく、一定期間の長いリズムを持つ増水、減水であれば、例えば雪解け水による季節での一定の増水がある、熱帯気候の中でも特に雨季、乾季を持つといった場所であれば、反応もしやすくまた結果的にエネルギーを得る効率が良くなる可能性が考えられました。どのようにして、水中と水上を感知しているのだろうかというメカニズムも気になりました。こういった種は真空、または無重力下ではどちらの葉をつけるのか。そもそも、温度や日長条件が影響しているのか。そしてこういった種はかつて水中から陸上に進出した植物がもう一度水中に戻ったものなのか、それとも水中内で独自に進化を遂げたものなのかという点も気になりました。どちらかは判別しづらいですが、仮に後者であれば陸上型として特化している、似たような種が陸上にいれば証明できるのではないかと考えました。

A:前半の部分は、植物の生理を、おかれた環境を考慮して考察しているという点で高く評価できます。後半はややシャープさに欠けますね。きちんと論理が打ち出されていればよいので、この講義のレポートとしては前半だけでも十分です。


Q:異形葉が形成される機序とデメリットについて少し考えた。環境に適応した形で形態形成の制御がおこると仮定すると、まず水中と陸上の環境においてそれぞれ植物体の生存に致命的な影響を及ぼすような要因を考え、次にそのような外部環境の特徴をどこで受容し、これに対してどこがどう応答するのかを考える必要がある。先ず、水分の豊富な地点では浮力やCO2の流動速度が異なるためにCO2を受容する頻度は陸上よりも小さくなる。光も陸上と比べると水中では弱くなっている。水分がない地点では、水中で働くような浮力がないので重力的な負荷が大きい他、水分の供給を外部から直接行う事ができないため、乾燥する。光が極端に強い場合がある。従って、植物の形態形成の制御において、以下の情報が関与しうる。単位時間当たりに器官が受容するCO2の濃度(気孔)、水分の有無(乾燥状態)、及び水圧や重力、受容した光の波長や強度。これらを水面に達した葉が受容し、これに対し頂端分裂組織の未分化細胞が応答する。応答の結果として、葉における、気孔やクチクラの形成の制御(ストマジェンの合成などによる)、組織ごとの葉緑体量の変化や葉緑体の移動(光やCO2などに応答)、葉の幅や大きさの拡大(anやrot3による)などを想定した。これらの生理現象を制御するような物質の合成量が変化する事で応答が起こると考えた。水中葉と気中葉のどちらも形成でき、茎や維管束組織があることから、この植物は元々陸上に生息していたものが水中適応したと仮定できる。しかし植物体が主に水中に存在すると考えると、陸上生息に必要な強靭で重装備の葉を沢山つけ、これを支えるだけの強度が植物体の茎にはあまり見込めない。従って気中ではあまり丈が伸びない。すると、水中を早く抜け出して主に陸上環境から光を取り入れるような背の高い植物が近くに生えた時や(陰になる)、浮漂植物が漂着し、爆発的に増殖したとき(光が遮られるため水中葉の利点を生かしきれない)などに、競争に敗れる恐れがある。

A:面白いのですが、論理が少しずつ流れていくので、全体としての結論がわからなくなっています。考えながら書いていくとこのような文章になりやすいので、むしろ最初に論理を考えて結論を出して、その結論に向けて論理を展開するように書くと、わかりやすいレポートになると思います。


Q:水草は維管束植物に分類される。しかし、その内の沈水植物は水面より上に葉を持っていないため、蒸散を利用した体内物質の輸送ができない。このため、導管が発達していないと考えられる。また浮葉植物も一部の葉しか水面上にないため、同様なことが推測される。このような植物はどのように物質を体内で輸送しているのか考えた。まずは、ソースとシンクの間のスクロース濃度差を利用した方法。スクロースの輸送は植物に必須なので、葉から茎・根に、茎から根に送る必要のある物質を輸送する時には、これは効率的な輸送経路となるはずである。また下記の参考文献によれば一般的に植物では"隣同士の細胞間"の移動や"細胞壁内を通る"移動もある。師管と比べ狭く複雑な道を通るため、運搬の速度が遅くなることが考えられる。そのため上記の経路のほうがの輸送の効率は良いと推測するが、土壌から吸収した養分など、特に上記の経路とは逆方向に運ぶべき物質の輸送に利用されている可能性が考えられる。

A:この辺り、次回に少し話しますが、案外わかっていないことが多いようです。


Q:先週に引き続き,蓮の葉について考える。行田の古代蓮の里や,琵琶湖の蓮の群生地では,一面蓮だらけで,少なくとも水面より上に葉のある水生植物は見受けられない。また,空も開けていて,日光を遮るものはない。蓮は,気中葉はお椀型をしていて,また水面には水平に葉を浮かべる。これは気中葉で受けきれなかった光を,水面の葉で受け,光合成の効率を高める仕組みであると考えられる。日光を遮るようなものがない環境において,おそらく,気中葉はお椀型でも,水平でも,受容される光の強さは十分であり,光合成速度の差はほとんどないと考えられる。気中葉から漏れでた光はそれほど強くないので,葉を水平にし,より多くの光を得ようとするのだろう。もし,蓮への日光を遮るものがあった場合,気中葉は水平であったほうがより効率的に光合成を行うことができるだろう。しかし,水平な気中葉の蓮は見受けられない。このような蓮は見られないのは,蓮が特に十分な光環境を必要としていることを意味していると考えられる。群生することで他の水生植物の侵入,成長を妨げ,その十分な光環境を維持しているのだろう。

A:これも、良く考えていることはわかりますが、結論がしっかりしていないように思います。科学的なレポートは、最後に一つの結論に全体を終息させるようにするとわかりやすくなると思います。