植物生理学II 第11回講義

ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸

第11回の講義ではいくつかの植物ホルモンについて、その働きの多様性と、シグナル伝達メカニズムのパターンを解説しました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:講義でサイトカイニンCKとアブシジン酸ABAの話が出たので、これについて書きたいと思う。これまでABAの合成量やストレス応答する遺伝子の発現を高めることで、ストレス耐性植物を作る研究がなされてきたが、これは生育の悪化や収量の減少という副作用を引き起こしてしまった。このためCKの合成量はそのままで、CKとABA量のバランスを変化させることでストレス応答のある植物をつくることが出来るという。なぜCKの合成量を変化させると生育の悪化などの悪影響を生み出してしまうのか。植物ホルモンもタンパク質であるため、その合成には元素が必要となってくる。CKを増やすことは、その分だけ植物の成長に必要な元素が減るということである。一方でABAを減らしCKとのバランスを変化させることは、ABA合成に必要だった分の元素を植物の成長に回せるため、むしろ成長が促進されると考えられる。

A:まず「出来るという」と他の文献を参照して書く際には、きちんと出典を明記してください。元素の量に関しては、理論的にはその通りですが、現実には、量的な問題を考える必要があります。1−0.5=0.5は数学的にも現実にも成り立ちますが、1−0.000001は数学的には0.999999ですが、現実にはばらつきなどを考えると1と考えるべきでしょう。


Q:今回の講義ではジベレリン、サイトカイニン、アブシシン酸について学んだが、このうちアブシシン酸は細胞分裂の抑制をはじめとする、抑制的な生理作用を示すということが知られている。この作用はオーキシンなど、他の植物ホルモンとは正反対の作用を示すが、これらの作用は独立して働いているのだろうか。もし独立して作用するならば、オーキシンを合成するような環境とアブシシン酸を合成するような環境が共存した場合に、植物は適切な成長をすることができないと考えられる。したがって、アブシシン酸は他の植物ホルモンのシグナル伝達系を阻害する形で拮抗阻害を起こしていると考えられる。例えば、サイトカイニンならば、リン酸化リレーを途中で阻害することによってサイトカイニンの作用を抑制していると考えられる。

A:なるほど。この点はきちんと説明すべきだったかもしれませんね。ある植物ホルモンが別の植物ホルモンの量を調節している例は確かにあります。ただ、植物ホルモンの作用はきわめて多様なので、それらをすべて少数の機能に還元することはできないと考えられます。


Q:サイトカイニンはDNAやRNAなどの核酸から生合成されると学んだ。そこで前回オーキシンは生合成の過程で活性のない経路が見つかっていないと学んだことを思い出した。オーキシンはトリプトファンから生合成される。この2つの植物ホルモンに共通するのは、どの植物体にも大量に存在する物質から生合成されることである。また、それぞれ経路が多数あることから、植物にとって重要なホルモンほど、容易に、かつ確実に生合成されるようになっているのだと考えられる。

A:「重要なホルモンほど」と結論するためには、重要なホルモンとそれほど重要でないホルモンとの比較が必要なはずです。もう少し論理を考えてレポートを書いてください。


Q:今回の講義でジベレリンはブドウの花粉の機能を低下させ受粉させないことで種の成長を止め、更に子房を発達させることで種の無い果実ができるということであったが、なぜ植物ホルモンであるジベレリンは本来植物体内にあるはずであって、なぜ通常状態(ジベレリン処理しない場合)おいて種が出来るのか。おそらくこれは濃度の問題であると思うが、どの位の濃度であるかなど具体的に確かめる為には、実際にいくつかの濃度のジベレリンを用意しそれぞれ処理を行うことでブドウの種がなくなる濃度と本来のブドウに含まれているジベレリンの濃度がわかると考えられる。

A:ここでは濃度だけしか考えられていませんが、植物ホルモンに限らず、すべての生理活性物質に言えることですが、その物質の「濃度」「場所(組織における局在)」「時間(発現のタイミング)」の3つを考えることが重要です。あと、最後のところの「濃度がわかる」は「濃度を比較すればわかる」ですね。


Q:種無しブドウの説明で、種無しブドウの生成には2回の異なる期間にジベレリンに漬ける必要があるとされた。1回目は受精から種子生成を阻害するため、2回目は果実の成長を促進させるためである。なぜ1回目で2回分の効果が得られないのかを考えた。 1回目の段階ではジベレリンは種子生成の阻害のみに使用されており、果実の成長には使用されていないということである。ブドウの成長過程のどの段階にあるかによって植物ホルモンであるジベレリンの働く場所が決定しているのではないだろうか。その期間中で最も成長している、エネルギーを使用している器官にホルモンが集中しその機能を働かせると考えた。しかしその場合、種無しブドウでなくても通常種でもジベレリンが働くことになる。これはジベレリンの合成系路に起因していて、必要な時にだけ合成されるよう設定されていると説明されればそもそもジベレリンがその期間に存在しないことになり、矛盾が解消される。

A:これは、上のレポートに対するコメントで述べた「濃度」「場所(組織における局在)」「時間(発現のタイミング)」の3つをある程度考えていますね。ただ、それを最初に要因として規定して、もう少し意識的にレポートの中で展開すると論理展開がわかりやすくなると思います。


Q:今日の授業では矮性植物についての内容に興味を持った。矮性植物というのは、ジベレリンの低下によっておこるという話を聞いた。ジベレリンには成長促進のほかにも、発芽促進や、休眠打破、花芽形成などの生理作用がある。ジベレリンが低下したとき、これらはどうなるのか疑問に思った。矮性植物も育つので、植物の中で解決していると考えられる。解決策は二つ考えられる。一つは少ない量でも働くことができる。もう一つは、ほかのホルモンがその働きを助けていることである。よって矮性植物はジベレリンが低下すると成長促進だけが抑えられると考えられる。

A:これは、すごく面白い点に着目していますが、そのアイデアからの展開がややお粗末ですね。たとえば、「少ない量でも働くことができる」という点は、それでおしまいにしていますが、科学的なレポートとしては、もう少し意味を限定する必要があるでしょう。たとえば「伸長作用の濃度依存性と発芽促進などの作用の濃度依存性が大きく異なる」といえば、少しレポートらしくなります。


Q:これまでジベレリン、サイトカイニン、オーキシンなどの植物ホルモンを見てきたが、どれも共通してひとつのホルモンによる作用の種類が多いことが気になった。例えばジベレリンの場合、細胞分裂促進、休眠打破、茎または葉鞘の伸長生長促進、酸素合成の誘導、発芽促進、果実形成促進や、その他の作用もある。動物ホルモンではひとつのホルモンによる作用はある程度限定されており、複数作用があるとしても植物ホルモンよりは少ないように思える。単なる私の知識不足かもしれないが、植物ホルモンの作用が多い理由を考えてみた。まず、現在発見されている植物ホルモンはオーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノサイド、シャスモン酸の7種類であり、仮に植物ホルモンがこれ以外存在しなかったら(または発見されたとしても数種類しかなかったら)、動物ホルモンの種類の数に比べて圧倒的に少ない。つまり、植物は少ない種類でも多くの役割を担うホルモンを利用していることになる。植物には動物のようにホルモンを分泌する器官(腺)が存在せず、代わりに成長の盛んな組織で作られている。このことを考えると、植物は動物とは異なり、ホルモンに特化して分泌する器官がないため、様々な種類のホルモンを分泌する機能がないのだろう。それならば、1種類ででも多くの作用を得られるホルモンを数種類分泌する方が植物にとってもリスクは低くなると考えられる。

A:これは、着目点もよいと思いますし、考察もきちんとされています。ホルモンの種類数については、ホルモンをどのように定義するかによっても変わるでしょう。たとえば「特定の組織で作られる」という定義をした場合、植物ホルモンの多くはそもそもホルモンではなくなってしまいますし。単に「生理活性物質」という意味だったら、植物でもかなりの数になると思います。


Q:ジベレリンについての生理作用は葉や葉鞘の伸長成長促進や休眠打破などポジティブな作用が代表的なものだけでも10個近くあげられていた。また、ジベレリン欠損による矮性種による多収量品種への応用や、種無しブドウなど植物ホルモンたった1種類による植物の変化を利用した種もあることを知った。ジベレリンが何でも屋のように様々な植物体内の反応に関わることで決まることが多いのだ。同じようにオーキシンやサイトカイニンなども様々な反応に関わる。つまり、植物では少ない数種類のホルモンの相互作用で多くのことが決まっており、反応1つに1つのホルモンという1対1対応ではないのではないかと考えた。ホルモンの種類を減らし、その相互作用で植物体の全てを決める方がホルモン生成へのコストを抑えているのだと考えられる。

A:これも上のレポートと同じポイントですが、論理の展開に改善の余地があります。動物と植物の違いを記述しないで、コストを理由にして結論してしまうと「なぜ動物では多くの種類のホルモンを使うのか」という疑問が解決しなくなってしまいます。


Q:今回は前回がオーキシンについて細かくやったのに比べて、ジベレリン、アブシシン酸などのような植物ホルモン全般について行った。自分の中でのエチレンについての知識だが果実などを熟させる事ができる植物ホルモンとして働く事ができるもので熟したバナナと青リンゴを一つのビンに入れるとリンゴが赤くなるというのを知っている。このように植物ホルモンはその種以外と同じものを使うことができる。前回のオーキシンでもインドール酢酸などのように作り方は違うが同じように働くホルモンも存在する。これらの合成経路は環境によって異なって進化しているのだろうか。ある植物によっては効くホルモンだが他には効かないなんてものもあるのだろうか。これを利用して品種改良すれば肥料(成長促進ホルモン)とセットになった他の雑草を育てない成長しやすい作物ができるのではないだろうか。

A:繰り返しになりますが、この講義へのレポートでは、オープンクエスチョンで終わるレポートは評価されません。


Q:今回の講義の中でジベレリンがばか苗病というカビの感染により引き起こされる症状を持った苗から発見されたとあった。同じくカビなどの感染により引き起こされる症状に天狗巣病(講義中では"魔女の箒"という名でよばれていた)という症状が存在する。こちらも植物ホルモンであるサイトカイニンが関係している。これらのカビ感染が引き起こす植物ホルモンに関係する症状について考えたい。
 先に上げた2つの症状はどちらもカビが感染し、カビ体内で生産された植物ホルモンが植物体に影響を与えることで症状を引き起こしている。ではなぜカビ体内で植物ホルモンが生産されるのだろうか。考えられる理由として以下の二つがあげられる。一つ目はカビ自身が植物ホルモンあるいはそれと構造の似た物質を体内で必要とするために生産しているという仮説である。この仮説が正しいのならばカビ体内で利用されていた物質がたまたま植物体の持つホルモンと似た作りになっており、たまたまあのような症状を引き起こしていたことになる。また、この仮説からすると他のカビも同様の物質を持っている可能性が高い。しかしばか苗病や天狗巣病は原因となるカビが限定されており、他のカビに感染するとまた違う症状となること、天狗巣病ではカビだけでなく他の生物が原因になる例もあることからこの仮説が正しい可能性は低いと考えられる。
 二つ目は感染した植物体に影響を及ぼすために生産しているという仮説である。この仮説の場合、カビはわざわざ植物体に背丈の伸長あるいは過度な枝分かれといった症状を引き起こしているということになる。宿主である植物体のこのような症状はカビに利点があるのだろうか。ばか苗病はジベレリンを供給することで植物体の背丈を伸ばすという症状をしめす。ただ背丈が伸びるのであれば差ほど害はないように感じるかもしれないが、実際はこれに感染した植物は細長く成長してしまうため倒れやすくなるためばか苗病と呼ばれ"病気"の1種として扱われてきた。背丈を伸ばすということは単純に有機物量を増やすということであるため、カビにとってはそれだけ栄養素が増えるということになるだろう。また、いずれ倒れてしまうほど急激に成長させることに関しても、生きた状態よりも枯れた状態の方が分解、吸収が容易であることや、倒すことで周りの植物に接触させ感染を広げること等が理由としてあげられるだろう。一方天狗巣病では感染した付近において過度に枝分かれが進むという症状をしめす。このように過度に枝分かれが進むと枝が過剰に密集し、いずれ互いが互いを傷付け始めるという。この場合の利点としては枝が密集することにより感染できる有機物体が比較的近い場所に増えるということと、密集した枝が互いを傷付けることで傷口から容易に感染できることがあげられる。またこうして2種の症状に関してカビにとっての利点を並べてみると、ばか苗病の原因生物数に比べ天狗巣病に多くの原因生物が存在することに関しても考察できる。もちろんサイトカインが核酸に似ているため生産しやすいことも一因ではあるだろうが、それに加え天狗巣病では有機物量を増大させると同時に近くの枝に感染し範囲を拡大できるため増加速度が速くより種としての繁栄に適しているのではないだろうか。

A:着目点もよいですし、その後の論理展開も申し分ありません。論理展開に都合のよい事実だけを取り上げている感が多少なくはありませんが、レポートとしてはほぼ満点だと思います。


Q:アブシシン酸は気孔の閉鎖や植物の生長を休止させることで休眠するための植物ホルモンであることは講義の中で触れられた。アブシシン酸は乾燥や冷気などのストレスにより分泌されるが、湿潤など生育に適した条件では分泌はない。一方、樹木の年齢を表す年輪は生育と休眠のサイクルが1年周期であることから細胞壁の密と疎ができ、結果として色に現れることに由来する。もし樹木が生育に適した条件下に年中おかれたとしたらアブシシン酸は全く分泌されないのだろうか。仮にまったく分泌されずに生育を続けるとして、年輪は形成されないのだろうか。さらに年輪が形成されなかった場合、正常な年輪をもった樹木と対比することで年輪が樹木の物理的強度や物質経済など生存に関して役割を持つかの是非を研究することができるのではないか。年輪が樹木にとって重要な役割をもっていた場合、アブシシン酸の分泌は植物の休眠を介して年輪の形成に間接的にかかわることになるので、これまで以上の意義を持つことになる。

A:これは、全体としての論旨がはっきりしませんね。科学的なレポートはエッセーではないので、何らかの主張を論理によって展開するようにしてください。途中にいくつか疑問形が出てきますが、その疑問と最後の文は特に対応していないようですし、文章に構造が感じられません。


Q:今回の講義では、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジンサンなどの植物ホルモンについて学んだ。この講義の中でジベレリン処理により種無しブドウを形成させることが可能であるという内容について興味深いと感じた。調べたところ、ブドウの種類によってジベレリンを処理したことでブドウの実が美味しくなるものもあれば、美味しくなくなる場合もあるということがわかった。ジベレリン処理することで美味しくなるブドウに対して、さまざまな量のジベレリンを加えていき、どの程度加えた場合が一番美味しくなるか調べる実験を行いたいと感じた。この実験を行い、農園に情報を提供することで他の農園よりも美味しいブドウを作り出すことができると私は考えた。

A:あまりものを考えないで書いているように思えます。ジベレリン処理は、種を無くす方法として用いられているわけですよね。種なしにする効果とは全く無関係においしさだけを考えるという話でしょうか。そうであれば、そもそも実験対象物質をジベレリンに特定する必要はないように思います。一方、種なしにするついでに味も良くしようということであれば、おいしさについての濃度依存性と種なしにする効果の濃度依存性が異なる場合にどう対処するかの考察が必須でしょう。また、他の文献を参考にした場合は、必ず引用するようにしてください。


Q:今回の講義では植物ホルモンについて扱い、二度ジベレリン処理することにより種無しぶどうができることを改めて確認した。そこで種がないその他の果物であるスイカについて調べた。種無しスイカはジベレリン処理ではなく、染色体数が3 倍体になることによって生じる。具体的には、まずコルヒチンという物質を作用させ、本来の2 倍体から4 倍体をつくる。このめしべ(4 倍体)に花粉(2 倍体)を受粉させることで3 倍体の種ができる。この種を育てると、正常に減数分裂ができないために種無しスイカとなる。なぜ種無しスイカを作る方法としてジベレリン処理ではなく染色体数による手法がとられているのかについて疑問を抱いた。ここで、ぶどうとスイカを比較することでジベレリン処理が不可である理由について考察する。まずスイカの構造とジベレリンの浸透性が要因として挙げられる。スイカは比較的厚く硬い果皮に覆われている。そのためジベレリン溶液に果実を浸したとしても、ジベレリンが果実内に浸透しにくく、作用が及ぼされにくい構造となっているのではないかと考えた。またぶどうは基本的に一つの実に対して一つの種ができるが、スイカは一つの果実あたりに多数の種ができる。果実あたりの種の個数が多いため、たとえ果実内に浸透出来た場合でも制御がしきれないのではないかと考えた。

A:問題点を定義して、それに対して考察を加えているという点で、きちんと書けていると思います。「ぶどうは基本的に一つの実に対して一つの種ができる」というのは一般的に当てはまらないのでは?


Q:今回の授業で、スーパーなどで売っているジャガイモは放射能処理が施されているため芽がでないと言っていた。そのとき、丁度今うちにはカレーを作った残りとして1ヶ月以上常温で放置されたジャガイモが存在していたことを思い出した。本当に芽がでていないのだろうかと思って見てみると、芽がでている場所とでていない場所が存在した。全体的に光が当たる部分は芽がでており、光が当たらない部分は芽がでていなかった。よって、ジャガイモは放射能処理されていても、光があたることによって発芽を促進させるサイトカイニンなどのホルモンが分泌され芽がでてきてしまうと考えられる。ジャガイモの芽には毒があると聞くので、次からジャガイモを長い間放置するときは、光の当たらない場所で放置しようと思った。

A:「放射能処理」ではなく「放射線処理」です。「放射能が漏れている」と「放射線が漏れている」というのが、全く異なる次元の事象であることは、福島の事故の際にも話題になったと思います。理系の学生なら、その辺りに敏感になってください。ただ、現物を見て考える姿勢は評価できます。あと、別に市販されているすべてのジャガイモについて放射線処理が行われているわけではありませんので。


Q:今回の講義では、前回の授業に引き続き、植物ホルモンの役割や合成について学んだ。印象に残っている植物ホルモンは、ジベレリンだ。ジベレリンを利用して、人口増加による饑餓を乗り越えたという話は聞いたことがあったが、その発見方法については知らなかった。ジベレリンの発見は、日本人がばか苗病を調べたことで発見されたということは知っていた。ばか苗病の苗床からカビを分離し、培養後に精製すると、ジベレリンが得られる。得られたジベレリンを別の苗にかけると苗が大きく成長した。講義の中ではこのように紹介された。なぜカビが植物の体を成長促進させるようなホルモンを作り、感染していたのかということが疑問に思った。カビが感染するときに植物を成長させたほうが感染するとき、または感染した後に何かメリットがあるのだろうか考えた。体が大きいほうが、その分栄養を貯蔵したり生産したりする量が増えるからではないかと考えた。もうひとつ可能性を考えた。感染した植物が大きくなってしまうのは、副作用だったということが考えられる。想像を膨らませてみたが、感染したときのジベレリンで生長が促進されることにより、ひょろ長く色も薄くなるので、植物が弱る。弱るということは、植物の生産物にはカビは(擬人化した言い方だが)興味が無く、植物を無理に生長させることで弱らせ、カビのテリトリーを広げようとしているのかもしれないと思った。
上の内容では薄いと感じたのでもうひとつ付け加えます。
 ジベレリンはどのように認識されるのか、分子機構について学んだ。ジベレリンの受容体はGID1で、この受容体とジベレリンが結合すると、基質認識タンパク質のDELLAタンパク質への結合が促進され、ユビキチン化されて分解されるとのことだった。カビのところで、ジベレリンを多くとると、カビの感染の影響かもしれないが植物は伸びるだけで、ひょろひょろになり、やがては枯れてしまうということが分かった。それでは、ジベレリンを利用して植物の生長をよくできないのだろうか。この受容体をよくすることで、よりDELLAタンパク質への結合が促進され、ユビキチン化されて分解されるようになるのではないかと思った。実際そのような研究がされているようで、第2の緑の革命の起爆剤になるのではないかと考えているようだ。植物に関してだけではないが、人間に利益をもたらすには、植物ホルモンを増やすだけでなく、その生理的な分子機構の方まで考え無ければならないと感じた。
参考文献:京都大学 「ジベレリン受容体の構造が明らかに?植物の自在な生長調節を可能にする『第2の緑の革命』の起爆剤?」http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/081127_1.htm  閲覧2013/12/15 21:51

A:1つ目の方は、メリット、デメリットの比較がやや感覚的なところがやや問題ですが、まあ良いのではないでしょうか。2つ目の方は、ストーリーが参考文献に依存しすぎていて、独自のアイデアという意味では弱いように思います。たとえば、もし、ジベレリンのシグナル伝達を変えて、生育や種子生産が上がるのだったら、長い進化の歴史で、植物はそのように進化してきたはずだとは思いませんか。そのような批判的な視点も必要でしょう。


Q:今回の授業で、種無しブドウがあった。これに関連して、種無しの果物の生成に関して考えた。植物は受精し、種子ができるという過程がないと、果実が実らないと習った。ここで、果物の中には種のある位置を中心にして種を囲むようにする組織や種を中心に特徴的な組織が存在している。この組織は種→果実という方向性を考えると、種の存在位置を感知して果実に組織ができると可能性も考えられる。種の物理的存在が果実の形成に影響を及ぼしているということだ。しかし外からのジベレリン添加により果実ができるという事実もある。そこで、ブドウのように比較的複雑でない果実に関しては種が必要がないが、複雑な果実の形態をとっている種に関しては果実の物理的存在が形成に必要という仮説を考えた。これを調べるためには、実際に種無しブドウのようにほかの果実に対してジベレリン処理をすることで確認できる。

A:仮説が最後に出てくるので、そこまで読まないとレポートの主張が何なのかがわかりません。文章の最初に問題点を明示すると、ずっと読みやすいレポートになります。論理については、1)種子が果実を作る、2)ジベレリンが果実を作る、という2つの事実があった場合に、最も素直な結論は「種子がジベレリンを作っている」ということではないかと思います。論理を組み立てるときには、論理はなるべく単純であるべきだという「オッカムの剃刀」を頭に置いておくとよいでしょう。


Q:今回の授業においてサイトカイニンの生合成経路の説明では、核酸からATPなどを用いて細胞内のシグナル伝達を利用し、このときリン酸化リレーをMAP(K~KKK)等によって構成されるキナーゼカスケードによって反応させることにより、反応がスイッチのON、OFFのような状態になるということであった。私はキナーゼカスケードの利点としてもうひとつ考えた。中間にはさまれる分子を酵素群とすると、最初のシグナルが酵素となり、最初の段階の基質と反応する。これにより次の反応の酵素が生成され、再び反応をする。これを繰り返すことで、最初のシグナルがわずかなものだとしても、最初の反応速度は確かに遅いが、徐々に後の合成では酵素が増えていくことになり、生理作用を生み出す物質の合成段階では短時間で多量に生産できるようになるのである。つまりキナーゼカスケードはスイッチというよりもアンプの機能を持っているのではないかということが考えられた。

A:なるほど。これは良い点に気付いたと思います。面白いアイデアです。最後のアンプの比喩があったのできちんと論理が把握できましたが、説明はちょっとわかりづらいかな、と。


Q:成長促進作用を持つホルモンが複数あるのに対し, これと競合し成長抑制と休眠促進作用を持つホルモンはアブシシン酸のみである.複数の成長促進ホルモンにおいて類似の作用に関する下流のシグナル系がどこまで共有されているのかはわからないが, 複数の成長促進物質に対してアブシシン酸が単独で, 多くの生理作用の下流シグナル系で競合している事を意味している. 成長促進の機構のように多種の物質で細かい制御をもたない原因について, 発芽から開花結実までの茎や根などの成長は時期に応じて様相を変えつつ長期にわたって行われるのに対し,成長終了後の枯死や休眠は, 種子の成熟とともに比較的迅速に起こる他, 休眠や枯死が成長や植物体形成のような細かい調節を必要としていない(種や新芽が正常に作られて休眠できればよい)ためであると考えた. つまり, 育ち方の違いが生存を左右する事があっても枯れ方の違いが生存に関わる事はないために枯れ方を微調整する必要はないことが, 休眠や枯死のホルモンがアブシシンしかない理由になる((1)によればエチレンはアブシシン酸によって誘導される物質であるというから, アブシシン酸による制御系の下流で働く物質だと考えた).
(1)鈴木孝仁 フォトサイエンス生物図録 数研出版

A:今回、説明した物質群で植物ホルモンのすべてというわけではありませんから、今回の講義の内容だけから判断することは危険ですが、面白い考えだと思います。エチレンなどについては、次回の講義で取り上げます。


Q:今回の講義を受けて、茎の伸長、種子の発芽というような植物体の現象には複数のホルモンが関わっていることが分かった。では、なぜそれぞれの現象を1つのホルモンの有る無し、または濃度の高い低いで決定せず、複数のホルモンが関わっているのか、オーキシンの茎伸長促進作用とアブシジン酸の茎伸長抑制作用を例に仮説を考えてみた。どの例に当てはまるかは、それぞれの植物ホルモンによって異なっているかもしれない。1) 2つのホルモンの植物体における濃度勾配がそれぞれ異なった環境要因への応答を反映している。 2) 一方のホルモンが他方の機能を負のフィードバック制御的に調節している。 3) 2つのホルモンが存在して初めて機能する。

A:悪くはないのですが、出だしで終わってしまった感じです。ここから、何らかの根拠に基づいて3つの仮説のどれがもっともらしいかを論理的に展開してほしいところです。


Q:ジベレリンには100もの種類があり,その中でも活性型と非活性型があるという説明があった。活性型と非活性型が共存する理由としては,活性のあるジベレリン量を相互の変換によって調節するといったこと考えられるが,それだけでは100もの種類が存在する理由の説明にはならない。100もの種類が存在する理由としては,ジベレリンの濃度だけでなく,各ジベレリンの割合の違いによって,細胞ごとの分裂速度を調節し,結果的に,生長させる組織・器官を均整のとれた形にするためであると考えられる。以下では,各細胞のジベレリン濃度が同じであるとする。活性型については,その種類によって活性の強さが異なるはずである。細胞ごとに各活性型ジベレリンの割合を変えることで,分裂速度に差を与えることができる。非活性型については(活性型にもいえることではあるが)その種類によって活性型からの変換速度,活性型への変換速度が異なるはずである(活性型から別の活性型への変換も考えられる)。このような変換速度の差を使っても,分裂速度の差を生み出すことができるであろう。

A:面白い点に着目しています。上の方で、「濃度」「場所(組織における局在)」「時間(発現のタイミング)」の3つを生理活性物質の作用を左右する要因として挙げましたが、「種類」が4つ目の要因になるかもしれないということでしょう。ただ、ここではその「種類」の差が、結局「濃度(もしくは活性)」の差に帰着されているので、いまひとつ新鮮味がないように思います。「種類」を変えることによって初めて実現するような差を考えることができれば、さらに独創性が高まるでしょう。