植物生理学II 第5回講義

植物の茎

第5回の講義では、前回に引き続いて気孔の開閉のメカニズムを植物ホルモンであるアブシシン酸の働きとのかかわりを含めて解説し、残りの時間で植物の茎の機能と構造の関係について考えてみました。今回の講義に寄せられたレポートとそれに対するコメントを以下に示します。


Q:今日の講義では、アブシシン酸による気孔が閉じるメカニズムと、茎の役割について勉強しました。後者の話題の中で、「タンポポはなぜロゼッタ型の葉の状態になるのか」について考察します。授業では、タンポポがロゼッタ型である理由に「競争相手が少ない場所を選ぶ」「動物に食べられにくい」「風を避ける」などが挙げられました。しかし、「長い茎を持つ」他の植物体はこれらの有益な効果を得られないのに、ロゼッタ型よりも繁栄しています。このことから、タンポポも長い茎を持ったほうが有利であるような気がします。タンポポの強みは何か。それは地中深くまで張る根と地表の占有にあると考えられます。たとえある世代において競争に敗れたとしても、地中には根が残り、次の年にまた同じ場所に生えロゼッタ型の葉をつくります。生命力が強いタンポポであるので、世代を繰り返すうちにその辺り一帯がタンポポの群生地になれば、茎の長い植物体に光を奪われること無くロゼッタ型の葉を敷き詰めることが出来るようになります。よってタンポポのロゼッタ型の葉は、短期間における優勢ではなく長期間の優勢を見越した仕組みであるのかもしれません。

A:良く考えています。あとは、では茎をのばして、かつ、根も張るのは不可能なのだろうか、と考えてみる必要があるかもしれませんね。


Q:授業でタンポポが茎をもたない理由について、生存競争上そのほうが有利という解説だった。今回にレポートでは、タンポポの茎以外の形態について、生存競争という観点からそれぞれの形態に矛盾が生じていないかを考察する。
[前提:タンポポの生態について]
◎形態 (参考サイト Wikipedia [URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%83%9D] )
根:50cm以上の長い根を持ち、1m以上の根をもつ個体も多く存在する。
茎:非に短く、地面から数センチ出ているだけである。
葉:地表近くに放射状に広がるロゼット型。
花:舌状花と呼ばれる小さな花が円盤状に集まっている。
種子:非常に多くの種子をつける。種子ひとつひとつに冠毛がついており、遠くまで種子を飛散させることができる。
◎生育環境:生命力が非常に強く、日当たりのいい場所ならアスファルトの間でも生育できる。
◎繁殖期:種族によって異なる。春~夏にかけて開花するものもあれば、通年で開花するものもあり、繁殖期も開花期によってさまざまである。
[タンポポの生存競争戦略について]
タンポポはその形態がそれぞれ生存競争に役立つ形をとっているが、ここでは「他の植物が生育しないニッチを狙う」という項目が要になっていると仮定し、タンポポの競争戦略と形態について考察する。まず「他の植物が生育しないニッチを狙う」ことがタンポポの生存競争の要でる理由について述べる。タンポポの形態の中で最も生存に直結しているのは「根が長く、生命力が強い」という点であり、、生存競争においてもっとも有効な形態であるので、他の形態はこの強みを生かすために進化していったと思われる。次に各形態とそれによって生じる生態がどのように「他の植物が生育しないニッチを狙う」という戦略を補強しているかを考える。種子の付き方について:ニッチ開拓において、種子を大量に、広範囲に散布することは必要不可欠であるので、タンポポの種子はこのような形態をとっていると思われる。
茎と葉の付き方について:ニッチでは土壌環境などの他に、物理的な障害も大きい。茎を短くしていると、仮に花茎を損傷、または損失した場合でもすぐに新たなものを作ることができる。また、ロゼッタ型の葉も物理的な要因の軽減に役立っている。また、タンポポはニッチを狙うためにできるだけ多くの種子を飛ばす必要がある。このため一つ一つの個体が大きく成長する必要はなく、成長の早さが重視される。ロゼッタ型の葉と短い茎によって、タンポポは成長の早い段階で必要な量の葉を獲得し、その後無駄な葉を作ることがないので、葉を作るエネルギーや不必要な葉の呼吸によってエネルギーを消費することがない。
タンポポの生存競争戦略をまとめると、強い根によって得られる生命力を生かしてニッチを狙い、そのために大量の種子を広範囲に散布できる花をつけ、一個体あたりの種子の生産率を上げるためにロゼッタ型の葉と短い茎をもっている。以上の考察から、タンポポの形態には競争戦略上無駄のないことが分かった。

A:別に悪いレポートとは言いませんが、タンポポぐらいウィキペディアに頼らず自分の観察から議論しても良いように思いますが・・・


Q:今回の講義で学んだことの一つに、原形質連絡という現象がありました。この原形質連絡は植物特有の現象ですが(ただし、孔辺細胞の気孔は除く)、ではなぜ動物細胞において、その現象が行われないのかについて以下に考察します。まず、原形質連絡の行われるメリットについては、たんぱく質などの物質の輸送が隣接する細胞間で行えることである。逆にデメリットは、原形質連絡で繋いだ細胞がウイルスに感染していた場合に、感染が広がることがあげられる。ここで、植物と動物の違いとして、細胞壁の有無・物質の輸送経路が論点になる。動物細胞の場合、輸送は主に血液を介したものとなる。たんぱく質などが直接輸送される場合よりも、ホルモンやサイトカインなどの伝達シグナル物質によって細胞膜表面上に発現している受容体を介して、標的細胞に目的物質を作らせることが多い。また、細胞間どうしのシグナルとして、細胞表面のリガンドともう一方の受容体が作用する場合や、傍分泌によるものがある。したがって、動物細胞では循環系などのシグナル伝達系が発達しているため、原形質連絡といった形でなく、上記のような形をとっているのだと考えられる。

A:だいぶみんなレポートの書き方が板についてきました。これもきちんと考えているレポートだと思います。


Q:ABA受容体について考察する。孔辺細胞は他の細胞と原形質連絡をしていない。従って、通常状態の解離しているABAは孔辺細胞に入ること、もしくは出ることができない。植物が水ストレスを受けると、ABAが解離型に変化し、膜透過性があがるために孔辺細胞に侵入する。そして陰イオンチャネルの活性化から始まる気孔閉鎖が行われる。ところで、ABA受容体は細胞膜内外にあり、内側のみにABAを投与しても気孔の開閉はない。細胞膜の外側での受容体とABAの結合も重要である。その理由は反応値を引き上げるためであると考えた。気孔を閉じることは、二酸化炭素を取り込めず酸素も排出できなくなるためリスクの高いことである。万一、葉肉細胞の一部が異常をきたし通常状態でABAを合成、それが孔辺細胞に取り込まれた場合、植物の生存にとって不利である。そのため、孔辺細胞内だけでなく外側からのABAの受容体結合を条件にすることで、十分な水ストレスであるか調節していると考えられる。なお、調べてみたところ、多くの資料にABA受容体は同定されていないと述べられていた。長期間ABAの受容体は同定されていなかったようだ。2011年の新しい資料では、PYR/PYL/RCARが可溶性ABAの受容体であると述べられていた。(植物が乾燥ストレスに応答する仕組み:アブシジン酸シグナル伝達の制御機構 宮川拓也、田之倉優 日本結晶学会誌 53(3), 178-185, 2011)今後もABA受容体についての詳細な研究が必要だろう。

A:これもきちんと考察しています。植物ホルモンとその受容体については、講義の後半で改めて解説する予定です。


Q:フォトトロピンの働きについて気になったため調べてみると,気孔開閉のみではなく光屈性や太陽追尾運動などの異なる反応を引き起こし「太陽光エネルギー利用を増加させる事に収束」(注1)することがわかった.しかしこの異なる反応をどのようなメカニズムで行われているのかがわかっていない.いまだ未知であるこの機序について考えてみたい.光屈性や太陽追尾運動は光の刺激を受け取って,植物体の特定の部分のみを伸長させるような働きを伴うと考えられ,そこにはオーキシンやサイトカイニンのような植物ホルモンの働きがあると思われる.ここでオーキシンの細胞伸長における役割を見てみると,「酸成長仮説というモデルによるとプロトンポンプがオーキシンの細胞成長反応に重要な役割を果たしている.(中略)細胞壁の酸性化はエクスパンシンという酵素を活性化する.エクスパンシンはセルロースの微繊維とその他の細胞壁構成物間の水素結合を切断し,細胞壁の構造を弱める.膜ポテンシャルの増大は,細胞内へのイオンの流入を拡大し,その結果,浸透圧による水の流入がおこり,膨圧が高まる.高まった某篤人細胞壁の可塑性の増加により,細胞は伸長する.」(注2)この引用を見ると,私が先に述べた植物ホルモンの働きは光屈性などに必ずしも必要でないと考えなおした.酸成長仮説によれば細胞壁の酸性化が,細胞の伸長に関与しているということになる.そしてフォトトロピンのシグナル伝達によって,孔辺細胞外に水素イオンが放出されることを学んだ.水素イオンが放出されるということはすなわち細胞壁の酸性化につながり,結果的にオーキシンの作用と同等の結果を招くのではないかと考えられる.
(注1) http://cellbio.biology.kyushu-u.ac.jp/shimazaki/second.html 九州大学 細胞機能学講座 島崎研究室 より引用 閲覧日 2011年10月30日
(注2) キャンベル生物学 Nell A. Campbell ら 丸善株式会社 2010年 p.886より引用

A:上でも述べましたが、植物ホルモンとその作用機作については、改めて講義の後半で解説します。


Q:今回の授業でアブシシン酸受容体は細胞の内側にも外側にもあるが、孔辺細胞の内側にアブシシン酸を注入しても気孔が閉じないことから、細胞の内側の受容体は気孔の開閉には関与しないということを学んだ。そこで細胞の内側にある受容体の存在意義について考える。まずアブシシン酸は気孔を閉じさせる働きだけでなく、生長の抑制や種子の休眠を維持したり落葉を促進したりする働きももつ。そのため孔辺細胞だけでなく他の細胞にも受容体が必要となる。また細胞が水欠乏ストレスを受けた時に細胞内を酸性化してアブシシン酸の細胞間の移動をスムーズにさせるということも教わった。しかし上記のアブシシン酸の役割から考えて必ずしもアブシシン酸が効果を出してほしい環境が水欠乏の状態、すなわち細胞内が酸性化されている状態であるとは限らない。このような状態では細胞内で作られたアブシシン酸が細胞外に出ることが難しくなってしまう。そのため細胞内にもアブシシン酸受容体が存在していると考えられる。

A:この最後の結論だと細胞内にアブシシン酸を注入した場合でも気孔は閉じることになりますね。そこの部分の説明が必要になると思います。


Q:今回の講義ではそれぞれの植物に対して葉つき方の違いと理由について学んだ。カタクリは落葉樹が葉を落とす時に光合成をして生きのびるため、茎を伸ばす必要がないという。下の古い葉を落として、上の若くて光合成能力の高い葉を残すという方法を取ることもある。そうすると、「1枚の葉の光合成速度×葉の寿命」という式の答えは常に同じ数字になるという。これはウサギやゾウ等を比較してわかった「動物は一生のうちで打つ心拍数は決まっている」という説と似ていると考える。命を削って生きるのは植物でも動物でも変わらないようである。

A:「植物でも動物でも変わらないようである」が結論では単なるエッセーです。レポートとしては、きちんとその理由まで考察してください。なぜ動物と植物という全く異なる戦略をとる生物の間で共通の現象がみられるのか、という視点が必要でしょう。


Q:今回の授業では、以下の内容が扱われた。青色光を受容したフォトトロピンからのシグナルによってH+‐ATPaseが活性化され、ATP加水分解反応と共役して細胞膜内外の分極が起こる。その分極によって気孔が開く仕組みが作動する。そしてその必要なATPを孔辺細胞の葉緑体が作る糖が供給している。以上が扱われた内容である。本レポートの目的は、H+‐ATPaseの活性化に必要なATPが脂肪酸ではなく糖によって供給される理由を、「ATPの需要」と「輸送コスト」という観点から考察することである。脂肪酸は細胞内でβ酸化を繰り返すことにより何分子ものアセチル-CoA、FADH2、NADHを生成する。その結果、グルコースと脂肪酸(パルチミン酸など)1分子当たりでは、脂肪酸の方がはるかに多くのATPを合成することができる。H+‐ATPaseを活性化し、十分量のH+を細胞外にくみ出すのに必要なATPを賄うには、一度に大量のATPを合成できる脂肪酸を利用する方が、糖を利用するよりも効率が良くはないのだろうか。脂肪酸のβ酸化はミトコンドリアで行われる。よって、脂肪酸からATPを合成するならば、まず疎水性である脂肪酸を細胞質内を通ってミトコンドリアまで輸送しなければならない。細胞質内で疎水性分子を輸送するためには、一般に輸送タンパク質を結合させる必要がある。もしも気孔を開くためにまず輸送タンパク質の転写から始めるとすると、迅速に気孔を開く必要がある場合(高温ストレスにさらされるなど)に致命的であろう。また、細胞内にあらかじめ用意されていた輸送タンパク質を利用しているとすると、その輸送タンパク質は通常時に脂肪酸代謝のために利用されているものである。よって、気孔を開くという「余分な」ATPに対して利用される輸送タンパク質濃度は低くなると推測されるので、単位時間に輸送できる脂肪酸量はどうしても小さくなるであろう。ところで、糖は一般に親水性分子であり、細胞質内で解糖系によりピルビン酸にまで変換されながらミトコンドリアまで輸送される。親水性分子である糖を輸送するのに輸送タンパク質を用意する必要ない。解糖系の酵素も常に細胞質内で一定濃度存在するから、気孔を開くのに合わせて新たな合成する必要も全くない。したがって、糖は脂肪酸に比べて、細胞質内における輸送が容易である。つまり、「輸送コスト」が少なくて済むのである。孔辺細胞には原形質連絡が存在しないため、個々の気孔はそれぞれの孔辺細胞ないで合成したATPによってH+‐ATPaseを活性化していると推測される。少数の細胞で合成したATPが全ての気孔のH+‐ATPaseを活性化しているならばともかく、個々の気孔が自身で開閉を調節しているのであれば、それほど大量のATPを一度に合成する必要性はないであろう。言い換えると、「ATPの需要」はあまり大きくないのだから、わざわざ大きな輸送コストをかけてまで脂肪酸を利用する必要はないのである。ゆえに、単に「気孔を開く」という目的のためにATPを用意するのであれば、脂肪酸を利用するよりも糖を利用する方が、効率が良いと推測される。その効率の良さを植物は採用しているのではないだろうか。
参考文献:大山隆監修 ベーシックマスター生化学第1版 オーム社(2008)

A:エネルギー源として糖を使うか脂質を使うか、あるいはATP自体を貯めておくか、という選択肢の中でどれが一番よいかは、3つの形態の物質の貯蔵のしやすさと利用にしやすさに依存して決まります。気孔の場合に限って考える前に、まずは一般的な細胞での役割を考え、そのうえでその特殊な条件として気孔の場合を考慮する必要があるでしょう。


Q:今回の授業では、光の役割、アブシシン酸について、茎の役割などについて学習しました。光についての所で出てきた、青色光受容体のフォトトロピンについて、何故青色光を識別できるのか気になったのですが、いまいちはっきりしませんでした。光受容体には、フォトトロピン以外にもクリプトクロムやフィトクロムなど、様々な種類がありますが、それぞれの光の識別には屈折率などが関係しているのかと思います。自身に必要な光を選択して得られる植物のように、人も、紫外線などの不必要な光は除いて、必要なものだけを吸収できたら凄いのに、と思ってしまいました。

A:ある物質がどの色の光を吸収するかは、その物質の吸収スペクトルとして表現されます。そして、その吸収は物質の性質の一つであり、例えばDNAの吸収の大きさを利用してDNAの量を定量することができます。そのあたりを理解していないと実習などで苦労すると思いますが・・・。


Q:今回の授業では気孔の開閉のしくみについて学んだ。その中で、ABA受容体は細胞内外の両方にあるが、孔辺細胞内に直接ABAを与えても気孔は閉じないということに疑問を感じた。その理由について考えてみた。一般的な植物細胞は原形質連絡により連結している。これにより、化学的な環境が連結しているが、気孔の開閉はカリウム濃度による水の浸透ポテンシャルを利用しているため、他の細胞とは分離している必要がある。このことから、孔辺細胞には原形質連絡がないと考えられる。原形質連絡が利用できないため、ABAはアポプラストに放出されて、細胞壁などの細胞外空間を通って移動する。ABAがアポプラストを通って移動するということは、必ず膜内よりも先に膜外受容体に到達するはずである。また、細胞壁などの細胞外空間から、効率よくABAという乾燥情報を伝えるには、細胞膜内よりも細胞膜外に受容体があった方がすばやくABAに反応できると考えられる。よって、自然環境において膜内受容体にABAが直接作用することはないため、膜外受容体にABAが作用しない限り、直接細胞膜内受容体にABAを与えても作用しないと考えられる。

A:論理としては大体よいと思うのですが、そうすると細胞内に受容体があっても無駄だということになりそうですが。今度は、なぜそうなのかの説明が必要となってしまうでしょう。


Q:今回の授業では後半茎についてのお話がありました。そのときに、カタクリという植物が、葉が2枚だけで、しかも地面から葉がついているということでしたが、2枚の葉が地面付近についている植物でチューリップが思い浮かびました。チューリップの花は林床にあるというイメージはなく、常に日の当たるところに育つイメージがあります。このことについて考えてみました。チューリップの原産地であるトルコのアナトリア地方について調べてみると、標高が高く山が多くあり、夏は涼しく冬は-30度近くなるそうです。チューリップが山の中にあるとすれば、カタクリのように、林床で短い期間に種を作ることが考えられます。また、チューリップが寒いところに生息しているので、葉が丈夫に厚く硬くなり、上の方についていると垂れてしまって、光合成に不利になってしまうのではないかと考えました。また、気温が-30度ということは雪が降ると思われるので、雪が降ったときに、茎の上の方に葉がある場合雪が積もると重さで下がってしまうので、二枚だけで地面から伸びれば雪が積もったときに先のほうだけでも雪が積もらない部分ができて光合成が可能となるのではないかと考えました。または、野生種でない場合、品種改良によって、葉の形を人為的に変えることもできるのではないかと考えました。
参考:トルコマニアhttp://www.torukomania.com/

A:チューリップは常緑ではありませんよね。そうするとその生育の季節における環境が重要になります。おそらく-30℃になるときにはチューリップは球根で休眠しているでしょうから。そのあたりをもう少し考慮する必要性がありそうです。


Q:前回の授業のなかで、葉の光合成速度と葉の寿命は反比例するという項目がありました。この項目に興味をもったので今回は葉の寿命と光合成速度との関係について調べてみました。まず葉の寿命に関してですが、サイクルの短いものは数日で落葉してしまうものもありますし、長いものでは砂漠地帯に生えているウエルビチアという植物は数百年も生きるといわれています。では何故葉の寿命と光合成速度との関係は反比例の関係をとるのかを人間に置き換えて考えてみました。葉の光合成速度は人間でいう新陳代謝速度であると仮定して、人間の新陳代謝能力と人間の寿命の関係について調べてみました。新陳代謝とは細胞分裂によって古くなった細胞を新たな細胞に作り替えることであるが、細胞というのは分裂できる回数が決まっています。染色体の末端部分のことをテロメアといいますが、このテロメアは分裂するたびにだんだんと短くなってしまいます。よって新陳代謝がよい、つまりよく体を動かす人間ほど寿命は短くなるという考えは100%正しいというわけではないですがかなりの説得力をもった説だと思います。これを植物に置き換えると、植物の光合成速度と寿命との関係も説明できます。つまり、光合成速度が速い、よく光合成をおこなう植物ほど細胞分裂の回数が多くなり、結果として寿命が短くなるのではないでしょうか。しかしこの説には疑問点も見られます。テロメアが短くなるのは、ヒトの体細胞のほとんどでテロメアの長さを維持するテロメラーゼが活性化されていないからですが、植物細胞でテロメラーゼの活性がどのようになっているのかは調べましたがよく分かりませんでした。もし植物でもテロメラーゼの活性が見られないのであればこの説はかなり信用性の高いものになるのではないでしょうか。
参考文献:ベーシックマスター分子生物学 著者:大山隆・東中川徹ら
原体験教育研究会(兵庫教育大学)http://www.proto-ex.com/gentaiken/gentaikenhome.htm

A:ウエルビチアというのはウェルウィッチア(キソウテンガイ)のことだと思いますが、これは特定の部分の葉が何百年も存続するわけではなく、1枚の葉が長い間端から伸びては枯れていくことが繰り返されるので、部分としての寿命はそれほど長いわけではありません。後半の仮説は面白いと思います。テロメアはさておいても、光合成速度と細胞分裂の速度が同調しなければならない理由があまり自明ではありませんね。


Q:今回の授業で、植物の茎の役割についてのお話があった。植物の茎は、植物体を支える役割、根で吸収された養分と水を光合成の行われる葉や、生殖器官の花や果実に通流するという他に、光合成を効率よく行うために葉を規則正しく配置するという役割があるとのことだった。授業では、茎が短く葉は地面に張り付いているロゼットという特徴をもつタンポポと、カタクリを例に挙げ、生育環境などを踏まえたそれぞれの形態の重要性が説明された。茎について面白い植物がないか考えた結果、蔓植物が思い浮かんだ。蔓植物は、細長い茎を持っており、それ自体では自分を支えられないため他物をよじ登って成長する。茎植物の他の植物に対する利点は丈夫な茎を作る代わりに、長い蔓を短期間に作ることによって、他の草や木の上に出て光を十分受けられるところにある。また、蔓植物は繊維組織はわずかで、しかも大きな道管や師管を少量しか造らない。そして、太い道管や師管は大量の水や養分を効率よく運ぶのに適しているといえる。このようなことを考えた結果、他の植物に比べ、光の獲得の面でも養分や、水の供給面でも最も恵まれた形態をとっていると考えられる。蔓植物のように他の木や植物の力をかりて成長する植物は、数多い植物の中でも最も効率的で画期的な生存戦略をとっているのではないかと思った。
参考文献 http://www2u.biglobe.ne.jp/%257egln/13/1322a.htm
http://www.toshiba.co.jp/elekitel/special/2006/10/sp_01_f.htm

A:良く考えられていると思います。つる植物については、今後の講義の中でもう少し触れる予定です。