植物生理学II 第10回講義

様々な植物ホルモンの働き

第10回の講義では、植物ホルモンの作用について、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレンを取り上げて解説しました。


Q:エチレンはガス状態の植物ホルモンであるということに驚いた。今まで植物ホルモンは液状のものだと思い込んでいた。エチレンは果実の成熟や葉の老化、落葉の促進などの生理作用を促す。しかし、ジャガイモとリンゴを一緒に貯蔵するとリンゴの出すエチレンでジャガイモの芽の出が押さえられ、無駄な栄養分の損失が少なくなり、貯蔵性が高まると聞いたことがある。エチレンには萌芽抑制効果もあるのでしょうか?

A:ジャガイモの芽を出すのを直接阻害しているのはアブシジン酸のようですが、エチレンとアブシジン酸は、様々な植物の生理作用をネガティブに制御する役割を果たしていて、相互に影響を与えているようです。


Q:先週、今週と植物ホルモンについて講義をしていただいていますが、いずれの植物ホルモンにも共通して疑問に思っていることがあります。植物ホルモンは1つの物質で実に多くの生理作用を有しています。確かにそれらの生理作用にはある“傾向”が存在し、ホルモンを特徴付けることができます。たとえばサイトカイニンならば「葉の成長に対しポジティブに働く」アブシジン酸ならば「葉の成長に対し抑制的に働く」エチレンならば「植物の成熟に携わる」因子というように。しかし、ある大まかな特徴を要しているとはいえ、それらの作用は全く同じというわけではありません。たとえばエチレンであるならば、果実の成熟と落葉の促進が全く同じシステムで動いているということはないと思われます。この場合、一つの物質(=植物ホルモン)が作用する部位によって異なる分子的システムを以て結果をもたらすものと考えてよろしいのでしょうか。または、作用機構は同じで、発現する遺伝子のみが異なるのでしょうか。私の考えでは、効率を考えると発現遺伝子のみが異なるのではないかと思っています。(もし作用機構自体が異なる場合、よろしければ来年の授業後にでも、具体的な例を一つ挙げて説明していただけるとありがたいです。)

A:例えば、講義の中で触れたと思うのですが、オーキシンの場合、茎の伸長は促進しますが、根の伸長は抑制します。したがって、オーキシンの濃度勾配ができるメカニズム自体は茎でも根でも同じであっても、茎では濃度が低い方に屈曲し、根では濃度が高い方に屈曲するわけです。これなどは、作用メカニズムは同じでありながら、器官特異的な応答を示す例として典型的なものです。


Q:今回は植物のホルモンんについての授業だった。他の授業で動物の性分化に関して勉強しているので、植物の性ホルモンについて疑問を持った。今回の授業では扱われなかったが、雌雄異株の植物や雄花雌花を持つ植物は存在する。それらの植物では、動物のような性ホルモンは機能しているのだろうか。機能しているとしたら、その機能は動物とどう違うのだろうか。

A:雌雄異株植物などでは、性染色体があって、雌雄決定にかかわっていますが、植物の性ホルモンというのは聞いたことがないですね。植物では菌類に感染すると一種の性転換をする例が知られていて、これは特定の物質に対する応答だと思われますが、性ホルモンとは言えないでしょうね。