植物生理学I 第12回講義

種子の散布、果実と種子の光合成

第12回の講義では、種子散布を中心とした植物の繁殖戦略と、果実や種子がどの程度う光合成を行なうのかについて解説しました。以下に寄せられたレポートのいくつかにコメントをつけて掲載しておきます。


Q:ソラマメの種皮の光合成に興味を持った.ソラマメの種皮は超弱光に適応しているとあるが,そもそも光合成をしている意味を考える必要があり,3つの可能性が挙げられていた.そこで,少し悲観的だが,別の説を考えた.それは,実はあまり意味がないのではないかということである.進化的な側面から考えると,花や実なども葉から生殖器官として分化して発生した器官と考えることができ,葉からより特殊化した構造を持つと考えられる.つまり,葉と同じ構造をもともと持っていて進化の過程で一部を退化させたり新たな器官を分化させたりしたのだと考える.また,胎子の成長のように,進化の過程を繰り返すような成長を示すことが知られているので,植物に同様なことが起きる可能性がある.このことから,花や果実が成長すると時には葉からの分化の進化過程を繰り返すよな成長が観察されると考えると,種皮などは実際はあまり光合成する必要がないが,葉の名残りとして葉緑体が存在し,完全な種子となることには葉緑体は消えるのではないだろうか.

A:一般に、受け取った情報をどうしてもそのまま信じてしまう人が多いので、このように、批判的に考察できる能力は非常に貴重です。ただ、ソラマメの種皮を観察すると、若い莢では中の豆の緑色が薄く、成熟して少し色が褪せてきた莢では中の豆の色がむしろ濃くなっています。最終的に莢がからからになるころにはさすがに中の豆の緑もうせてきますが、この色の変化を見る限り、葉緑体の量は、一度増大してから最後に減少しているように見えます。そうすると、最初にあった葉緑体が減るというだけでは説明できないように思います。


Q:今回の授業の中で、葉だけではない、果実や種子での光合成について学んだ。スイカもアボカドもソラマメ(少し違うが)も、光合成を行っていると思っていなかったので、驚いた。まさかアボカドなど、種子内でも光合成が行われているとは……。ここで、スイカの形態に注目した。葉緑体とは、ツバキの若葉でコストに対して食べられる可能性があるということで、作られずに節約されている。それほど、コストがかかるものである。これほどの葉緑体を果皮でも生産しているのは、やはり種子散布のための形態であると考えられる。もともとスイカの原産地がアフリカの砂漠地帯であることから、縞模様により果実を目立たせて、鳥に発見してもらいやすいようにしており、砂漠地帯であるため、鳥や動物は水分を得るということで利害が一致する。これと別に、縞と種子に関係性があり、縞がある部分(黒い部分)で切ると種子があり、縞がない部分で切ると種子がないという意見を見て、さらに調べてみると、さすがにそれは無さそうに思う。植物形態学実験でも学習したが、雌蕊に心皮というものがあり、この心皮の構造と種子に密接な関係がある。スイカは3心皮でありその付近に種子が並ぶようになっている。3心皮であり、種子の位置が3か所あるならば、縞の数も3の倍数になるが、個体によって一定ではないし、やはり違うのではないか。しかしここで、縞模様がなく、どちらかというと普通のスイカでいう黒い部分が全面になっているような種なしのブラックジャックという品種がある。コルヒチンが用いられた栽培方法である。(コルヒチンによる種なしスイカの栽培は、高校の時に学習しました。)この種なしスイカを作る過程で意図的に縞もないものにしたのなら話は別だが、もし縞が偶然無いものができたのであれば、関連が少しあるのではとも思った。ブラックジャック以外の種なしスイカには縞がある。ということは、この栽培方法に何か特別な処理がさらに含まれていると考えられる。このブラックジャックは、先ほど言ったように通常より果皮色が濃い。そのために表面温度が高くなりやすく、よく果皮に色あせやただれが起きる。ただ、高温や強日射の影響のみではなく、天候や栽培方法などの影響から草勢の弱まりによる根からの吸水不足も関係してくる。ここから、縞模様の理由というか、野生のスイカが全面を葉緑体を多く持った果皮にしないのは、特に砂漠地帯などでは、強光によりやられてしまうということが考えられる。散布のために、鳥などに見つかりやすく、自身も強光にやられて吸水不足にならないようにというバランスがあの模様にあらわれてくるのと思った。ブラックジャックなどは、栽培品種であることから、これらのデメリットを人工的に補っていける。 あまり考えられていないので完全に余談だが、このような縞模様は、意外と世の中で見かけるような模様なのではと思った。というのも、スイカの縞はきれいなストライプというわけではない。曲がったり、途中で切れたりしている。子供のころはスイカの絵を描くと、この模様をギザギザに書いたものだ。ここで、シマウマやなどの縞模様も同じようではないかと思った。植物的な光合成という話とは、全く別物になると思うが、このような模様は、「反応拡散」といわれるらしい。これは縞模様が今までのように何のためにではなく、どのようにしてできているのかという方向の考え方である。この考え方からも、どのような物質同士が、時間により拡散、反応し、縞模様を形成していくのか、この研究からも、縞模様の理由がよりわかってくると思う。

A:上にも書きましたが、ネットなどの情報を批判的に判断する能力は非常に重要です。「縞がある部分(黒い部分)で切ると種子があり、縞がない部分で切ると種子がない」という情報について、このレポートではきちんと考えていますが、それを無批判に信じてレポートに書いている人が何人もいました。ちょっと調べれば、ここでも書かれている3心皮の話にたどり着くはずです。デマ情報に踊らされずに、このレポートのようにきちんと考えてレポートを書くようにしましょう。


Q:今回の講義でオニバスの種子が腐りやすく水に浮きやすい材質で種子を覆うことで、水と時間経過によって種子の周りを腐らせて種子が水に浮き続けることを防いでいることを学んだ。また、オオオナモミの果実は小学生の頃には引っ付き虫と呼んで投げて遊んでいたこともあり馴染み深いものであった。オオオナモミの果実の鉤爪のような構造は服の繊維によく絡み、強く引っ張らないと取れないものであった。この思い出とオニバスの話を受けて疑問に思ったことがある。オオオナモミがどのように動物の体から種子を離れさせているかである。人間に着く場合は服に付き、人の手によって直接取られて捨てられるためほぼ確実に地面に落ちることが出来る。しかし、動物では体に付着したオオオナモミを手で直接掴んで取るということが難しいため、木などに体を擦り付けて落とすと考えられる。この方法でも種子を落とすことは出来るが、種子が付いたことに動物が気付かない、または種子が擦り付けにくい体の部位に付く可能性が考えられるためオニバスのように時間経過によって確実に落とせる方法ではない。そのため、オオオナモミも物理的に動物の体から離れる方法以外にもオニバスが表皮を水で腐らせる方法のような化学的に離れる方法を有していると考えた。オニバスのように表皮を水で腐らせるには果実が長時間水に浸かる必要がある。動物にも水浴びをするものはいるが、腐るほどの長時間ではない。そこで動物の汗によって腐らせるのではないかと考えた。しかし、人間以外で多くの汗腺を有し、多量の汗をかく動物は少ないため汗によって腐らせることは難しいと考えた。中々、合理的な方法が思いつかなかったため、再度オオオナモミの果実の画像を見ることでヒントを得ようとした。すると最初見たときはオナモミの鉤爪は動物にくっつくだけの構造であるとしか考えなかったが、鉤爪がたくさん生えていて表面積の大きい構造はファンデルワールス力が大きく、鉤爪の間に水を吸着する能力が高いと考えた。この高い水の吸着力を用いることで雨が降って果実が濡れたときの水分を吸着・保持して果実の表面を水で長時間覆うことで表皮を腐らせて中の種子を落とすという化学的な方法を物理的に落とさせる方法以外にも持ち合わせているのではないかと考えた。

A:考え方は非常に面白くてよいと思います。もっとも、オオオナモミの果実の表面はかなり硬そうなので、濡れて腐るのにはかなり時間がかかりそうですね。むしろ、動物の毛の生え変わる速度の方が速いのでは?


Q:オオオナモミやチヂミザサ等の植物は、果実の棘や粘液を用いて動物に付着して種子を散布しているようであった。しかし、これらの果実は、動物に付着した後にどのようにして地面に落下しているのか疑問に思ったため、これらの植物が地面に落下する方法について考察する。オオオナモミの果実は、棘の先端に返しのような構造があり、この構造によって動物に付着している。そのため、動物に付着してしばらく時間が経つと、この返しの構造が失われることによって、果実が地面に落下すると考えた。返しの構造が失われる仕組みについては、湿度や温度の変化によるものであると考えたが、もし仮に湿度や温度の変化によって返しの構造を失うのであれば、動物に付着する前に多くの果実が返しの構造を失ってしまい、動物に付着できなくなる可能性が考えられる。動物に付着するための構造をできるだけ長い期間保持しておく方が、動物に付着する機会が増え、遠くまで運ばれる可能性も高まるため、湿度や温度等の環境の変化によって返し構造が失われるのではなく、時間の経過によって果実が腐ることで返し構造が失われると考えた。チヂミザサは、ベタベタした粘液によって動物に付着している。そのため、この粘液がベタベタではなくなるか、粘液自体がなくなることで果実が地面に落下すると考えた。粘液がベタベタではなくなる仕組みについては、オオオナモミと同様に湿度や温度等の環境の変化に応じて粘液の性質が変化する可能性が考えられるが、やはり動物に付着する前に粘液がベタベタでなくなってしまう事を考慮すると、この可能性は低いと考えられる。そこで、時間の経過によって、蒸発等で粘液がなくなることで地面に落下しているのだと考えた。
 オオオナモミやチヂミザサの果実は、果実が腐ることで、あるいは粘液がなくなることで地面に落下すると考察したが、これらはいずれも、果実が機能を失う直前まで動物に付着する能力を持っていると言える。これは、前述したように、動物に付着する機会をより多く確保し、より遠くまで運んでもらうためだと考えたが、このような種子散布の形式は、果実が機能を失うまで地面に落下しないため、種子が形成されてから地面に落下するまでの時間が長くなってしまう。種子においては、動物に依存した種子散布等、様々な種子散布が見られるが、胞子においては散布形式に多様性が見られないのは、養分を蓄えない胞子では、長期間動物に付着する散布法が適していないからであると考えられる。

A:これもすぐ上のレポートと着眼点は同じですが、粘液系の問題を考察しています。ここで考慮されていないことで僕がぱっと思いつくのは、水分が植物から供給されているのではないか、という点です。そうであれば、植物から離れた時点で乾燥が始まりますから、ちょうどよさそうに思いますが。


Q:植物の種子の多くは、発芽し光合成を始めるまでの間の栄養分を子葉や胚乳に蓄えている。しかし、ブナ科植物の果実であるドングリは、子葉の部分をシギゾウムシやハイイロチョッキリに食べられてしまうこともある。種子に栄養分を蓄えておくと、その分種子が成熟する前に食べられてしまう可能性が高まるのではないだろうか。種子に栄養分を持たせなければ、シランの種子のように風に乗せて散布することもでき、種子一つを作るコストが抑えられるため、一度に作れる種子も多くなる。栄養分を多く含む大きい種子を重力散布するより、栄養がなく軽い種子を飛ばした方が合理的なのではないかと感じた。それにもかかわらずブナ科の植物が栄養の多い種子をつけて重力散布している理由は、種子が長期間休眠することを前提にしているからだと考える。ブナ科の木は大きく成長し光を多く吸収するため、その下で種子が発芽してもあまり多くの光資源を利用できない。また、多くの種子が発芽してしまうと親個体の利用できる水や無機塩類などの資源も減少してしまうため、親個体にとっても好ましくない。ブナのような大木の種子は、元々生えている親個体の大木が攪乱などによって無くなった後に発芽した方が格段に成長しやすくなると考えられる。攪乱が起きた後に多くの種子が発芽すれば、新たに成長した種子の間で資源をめぐる競争が起き、より強い子孫が生残することになる。つまり多くの種子が休眠状態で残っていればいるほど、発芽条件がそろって発芽した後に多くの種子との競争が起こり、より優れた種子だけが成長するようになると考えられる。そのため、より多くの種子を休眠状態で地中に残しておけるように、ブナ科の植物は種子に多くの栄養を蓄えていると考えられる。

A:ドングリの性質に関して、実は僕も、昔はまさにこのように考えていました。しかし、現実には、ドングリの発芽率は時間とともにかなり急激に低下し、とても親個体が倒れるまで発芽率を保てないようです。そうだとすると、どのような戦略が考えられるでしょうか。


Q:講義内で様々な種子散布の方法が触れられた。いずれの方法も広範囲に種子を移動させることを目的としていた。ここで疑問に感じたのが、落花生の種子散布である。落花生は受粉後、子房柄が下方へ伸長し地中で結実する。地中では風や水流は移動手段として使えず、落花生の果実は果肉がなく、硬い種皮に覆われていることから動物が掘り起こして果実を食べ、種子が移動することも考えにくい。このことから、落花生の種子はほとんど拡散しないと推察される。ほとんどの植物が講義内で紹介されたような方法で種子を拡散させるのに対し、なぜ落花生は地中で結実し種子を拡散させないのかについて落花生の生育環境に着目して考察する。落花生は世界中で栽培されているが原産地はアンデス山脈である。標高の高い山岳地帯においては、気温の低さや土壌中の水や養分の少なさといった要因から落花生が生育可能な場所は限られていることが推察される。この場合、種子を拡散させても種子が辿り着いた場所の環境は落花生の生育に適さない可能性が高くなる。一方で、植物自身の根元であれば種子は確実に落花生の生育に適した環境で生育することができる。落花生は一年草であることから親と日光や養分を取り合うこともない。そのため、原産地の環境においては種子を拡散することにコストを費やすことが有効な繁殖戦略にはならず、植物体自身の根元で種子形成する方が確実かつ有効な繁殖戦略であると考える。落花生が地中で結実し、広範囲の種子散布を行わないのは生育環境が限られた山岳地帯への適応であると考える。

A:なるほど。僕自身は落花生の繁殖戦略について考えたことがありませんでした。少しずつ株を大きくしていくタイプの植物と同じなのかもしれませんが、そうだとすると、環境変動には弱そうですね。


Q:今回の授業では、様々な植物の種子の散布方法について学習した。今回の授業を受けて疑問に思ったのは、スイカの種子散布についてである。現在我々が食しているスイカは、球形の大型の果実の中に多くの種子が詰まっており、その果皮は分厚く硬い。通常、植物の実は鳥類などがついばみやすいように、小型で果皮が柔らかい(例外としてココヤシの果実などは硬い果皮を持つが、あれは海流に乗せて種子を散布するという目的があるが、スイカは海沿いで生育する植物ではない。)。そのため、我々が食しているスイカがなぜ小型の柔らかい果実を多数つけるのではなく、大型の硬い果実を少数つけるのか疑問に思った。そもそも、現在我々が食しているスイカは、人間によって品種改良されたものであるため、元々のスイカの原種について考察する必要がある。スイカの原種は、原産地がアフリカ大陸のカラハリ砂漠と考えられており(原産地がアフリカであることははっきりしているが、具体的な場所は諸説あり)、現在我々が食しているスイカの同様に果実は大型で球形だが、その果皮は硬く、また果肉には甘みがない。そしてスイカの植物体は、強光や乾燥のストレスに耐性を持つといった特徴を持つ(1)(2)。このように原種のスイカの果実は生物にとって食べにくく、甘みがないことから栄養に乏しいと考えられるが、他の生物の食料に適さないということは、原種のスイカの果実は一般的な果実のように、他の生物に果肉と共に種子を食べられることで、種子を運搬してもらうという目的で形成されるものではないと考えられる。そのため、原種のスイカの果実は砂漠に生育しているという点も踏まえると、あくまで原種のスイカの果実は、砂漠において不足しがちな水分を貯蔵することを目的とした器官なのではないかと考えられる。そう考えると、原種のスイカの果実が球形を取っているのも、マメ科植物の根粒が酸素となるべく触れないように球形であるのと似た理由で、球が単位体積当たりの表面積が最も小さくなる空間図形であることから、常に乾燥している砂漠において果実中の水分をなるべく逃さないためであると解釈できる。そのことから、現在栽培されているスイカの果実が原種のスイカと同様に大型の果実をつけ、果皮が硬いのは、種子が果肉と共に他の生物に食べられることで、種子を運搬してもらうという目的があるわけではなく、人間が品種改良を行う過程で、果肉の柔らかさや色、甘さは人間の好みに合わせて改良されたが、果皮の硬さや果実の大きさは原種から特に変更する必要が無かったため、現在もスイカの果実は、果皮が硬く大型なのであると考えられる。
参考文献:(1)National Geographic, “スイカ、知られざる5000年の歴史”, 2015-08-27, https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/082500029/,(参照2020-07-28)、(2)シトルリン研究会, “シトルリンの発見 カラハリ砂漠のおはなし”, 2013, https://citrulline.jp/about/citrulline/karahari.html,(参照2020-07-28)

A:原種の果実は甘みがないので、栄養に乏しく食べられることが想定されていない、という解釈は面白いと思いました。一方で、生育場所が砂漠だとすると、そもそも栄養よりも水の方が貴重だという状況も考えられそうです。貴重な水を求める動物が、種子を運ぶ可能性はないでしょうか。


Q:今回の講義にて動物に付着して運搬される種子としてオオオナモミやチヂミザサ、ヒナタイノコズチ、オオバコが紹介されていており、主にオオオナモミのように芒が表面に引っかかることで運搬される様式とオオバコのように粘液で表面に付着する様式の2つを学んだ。そこで僕はなぜ2つの付着運搬様式が存在するのか気になったので、それぞれの様式のメリットについて考察したいと思う。まず芒のメリットとして、粘液での付着様式と比較して周囲の環境による影響を受けにくいことが考えられる。ここで粘液の分泌メカニズムについて調べると種子が水に濡れることで粘液が分泌される(1)ことが示されている。ここから粘液を分泌する植物は湿潤な環境下で生息することが条件となってしまうが、芒はそのような制約はない。よってオナモミのように草地や荒地などのほとんど雨が降らないような乾燥地帯でも動物に付着させて種子を運搬させることができると考えられる。次に粘液のメリットとしては物理的な力から種子を保護できることが考えられる。例えばオオバコでは種子は動物に踏まれることで運搬されるが、ここで僕は粘液が動物によって種子が踏まれたときに種子が保護するクッション材の役割を果たしていると考えられる。調べてみると粘液はセルロースの繊維の中にペクチンというゼリー状の物質が充填された構造をしていると示されているので、ここから強固な繊維であるセルロースと柔軟性のあるペクチンがクッション材の役割を果たしていると考えられる。さらなるメリットとしては種子を何かしら別の物質や乾燥から保護できることが挙げられる。付着物質から種子を守るという根拠となる論文は発見できなかったが、乾燥からの保護ということについて調べてみると、粘液は種子が水に濡れると保水し続ける性質を持ち(1)高い保水能力があることが示されていた。さらに調べると粘液は陸上植物に特有である(2)という記事を見つけた。これと上に述べた粘液の性質を照らし合わせると、植物は周囲を水に囲まれており種子の乾燥という問題は重要でなかった水中から陸上に進出した際その問題に対処するため粘液を獲得したのではないかということが考えられる。
参考文献:(1)オオバコの種子の粘液 | みんなのひろば | 日本植物生理学会. https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3649. 、(2)立命大など、ペクチンを合成する糖転移酵素に関する研究成果を発表 - 検索・ナビ|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア. https://tenbou.nies.go.jp/navi/metadata/100057

A:粘液の種子散布以外の役割を考察していて面白いと思いました。ただ、出だしの2つの付着運搬様式の存在という問題設定からは少し論旨がずれて行っている気がします。保護の役割を強調するのであれば、それに特化した問題設定にした方が趣旨一貫したレポートになるかもしれません。


Q:今回の講義では果実にも葉緑体が存在する例を学習した。ついている場所や球体に近い形状からして、果実は葉に比べて光合成に不向きな器官であると考えられる。例に挙がっていたスイカに至っては地面に近い側半分にはほとんど光があたらないだろう。それにもかかわらず、作るのにコストのかかる葉緑体が果実に配置されていることにはどのようなメリットがあるのか考察することにした。光合成効率の良い葉だけで光合成を行ってその産物を果実に届けるのではなく、光合成効率の低い果実でも光合成を行っていることから、葉から果実への輸送の段階で何か不利益が生じることが考えられる。例えば、葉だけで光合成を行っていた場合、茎が被食されると光合成産物が全く届かなくなってしまうことが考えられる。茎が被食されても、果実が自分の必要な分だけでも有機物を作り続けることができれば、子孫を残すことができるため、これは果実で光合成を行うメリットになるだろう。また、輸送そのものにコストがかかることも考えられる。蒸散を駆動力とする水分の移動とは異なり、養分は果実にため込まれ続けるため果実への光合成産物は能動輸送になると考えられる。輸送自体にエネルギーがかかってしまうのであれば、初めから果実で光合成をして「輸送しない」ことを選択したほうが、結果的に消費するエネルギーが小さくなることもあり得るのではないだろうか。

A:篩管で炭水化物を輸送するのに必要なエネルギーを、輸送される炭水化物のエネルギーあたりで計算するとどのぐらいになるのかは、僕も知りません。いくつか仮定を置けば、計算できなくはないと思いますので、やってみると面白いかもしれませんね。