植物生理学I 第13回講義

葉以外の光合成

第13回の講義では、植物の果実の表面や、果実の内部の種子、そして未分化な細胞のカルスなどでは、光合成をしているのか、しているとしたらそれは葉の光合成と同じなのか違うのか、といった点に関する研究の紹介をしました。


Q:今回の授業では、葉以外の器官での光合成について学んだ。授業ではソラマメや果実などを扱っていたが、個人的に気になるものとしてダイコンの根がある。ダイコンの根は、地上に近い部分が緑色をしていることがある。このような部位は日に当たったところにできることから、ダイコンの根は日に当たれば光合成能力を持つようになるのではないか、と考えた。しかし、調べてみると、ダイコンの根は上部(側根が生えていない部分)は胚軸と呼ばれる茎の一種なので、光が当たると葉緑体へ変化できる得チオプラストが存在するだけで、下部は白色体の色素があるだけなので、根が光合成能を得ることはないのだという。それでは、光を当てないで育てた組織中に存在するエチオプラストに、再度光を当てると光合成能が復活するのであれば、光強度や、照射頻度によってその組織の光合成能は、葉緑体再出現率に伴い変化するのではないかと考えられる。ダイコンの胚軸部分を、様々な光環境下で育て、光合成能を調べれば、これらの真偽が明らかになるであろう。

A:うーむ。「調べてみると」とありますが、この点は、まさにこの講義で話した部分ですし、調べてみると、根の話をした回は出席になっていましたよ。レポートを書くには、まずは講義をきちんと聞くことが重要です。


Q:今回の講義では果実の光合成に関する知識を得た。緑色の果実の表面に存在するクロロフィルは光合成しているという。植物体内にて貴重なクロロフィルを果実にも配置し、光合成させるのか。これには疑問が生じる。果実は、そのなり方にもよるが一般的には葉に比べて日光があまり当たらないと考えられる。光合成を行うのに適した葉という組織が存在するなら、葉にクロロフィルを集中して配置する方が合理的なのではないかと考えられる。しかし緑色の果実にはクロロフィルが存在することから、その理由を探ってみる。果実形成にはかなりの栄養分が必要であると予想される。このことから、葉で合成された養分だけではまかないきれないのではないかと推定される。しかし、これだと果実にクロロフィルを配置する理由にならない。果実に配置するより葉に配置した方が合理的だからだ。このことから、葉で合成された養分は植物体全体に用いられるが、果実で合成された養分は果実の成長のみに使われるのではないかと考えられる。葉に比べて日の当たり方が良くないかもしれないが、生産したエネルギーを全て果実のみで使えるのであれば、そちらの方が効率的かもしれない。

A:後半の論理が今一つわかりませんでした。果実で得たエネルギーを果実だけで使えるとしても、葉で得たエネルギーを果実に回すのに比べて、なぜ効率的か、そこの説明が必要でしょう。


Q:授業で、果実表面の気孔は少ないが、果実から放出される二酸化炭素を使って光合成するので問題ないということであった。果実には成熟するにつれて呼吸量が増すものがある(クライマクテリック型果実)。気孔が少なくては酸素の吸収速度も小さいということであるから、果実の呼吸もまた光合成によってできた酸素を材料に用いているという発想に至った。ということは、果実の成熟につれて光合成量も増えるのではと思ったが、果実が成熟するにつれてクロロフィルは分解されるということに気づいた。果実の成熟過程には生理的に多くの変化がありエネルギーを必要とするように思えるが、実際にはそのときには光合成能は衰えていく段階にはいる。つまり植物にとって、果実の光合成は、ないよりはあった方がいいのかもしれないが、さして大きな意味は持たない。
〈参考〉立木美保 エチレンによる果実の成熟・老化制御機構、https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/naro-se/fruit6_02.pdf

A:よく考えていてよいと思います。しいて言うと、「成熟過程」というのがどこを指しているのか、ややあいまいですね。例えばバナナで言えば、緑色のままで大きくなって、その後で大きさは変わらずに色が黄色になりますが、どちらを成熟過程とするかによって、だいぶ意味合いが違うように思います。後者では、それほどエネルギーは要らないのかもしれません。


Q:今回の講義では種子や果実での光合成についての解説がなされた。ここで、光合成をしない植物というのも存在してもよいのではないかと思い検索してみた。検索したところ、ギンリョウソウという植物がヒットした[植物科学最先端「光合成をやめた植物ー菌従属栄養植物のたどった進化の道のり」,http://bsj.or.jp/jpn/general/bsj-review/BSJ-Review5C.pdf,2018/07/19参照]。文献によると、地中の菌類を分解することによって栄養を得る植物、すなわち腐生植物であることがわかった。胚乳も持たず、光合成もせず、葉も展開しない不必要なものを削ぎ落とした一見理想的な構造とも思えるが、菌類に依存して生育する以上安定した生命の維持は厳しいのではないかと考えられる。まず、種子が菌の上に播種されない限りそもそも生長することもないのが安定性に欠けるだろう。

A:話題としては悪くないと思うのですが、自分の主張として言っているのは、「菌類に依存して生育する以上安定した生命の維持は厳しい」という最後から二番目の文の主張ですよね。最後の文もほぼ同義ですから、論理の展開という面からすると、この講義のレポートとしては物足りません。


Q:今回は、葉以外の光合成についての話であった。スイカの皮の黒い部分においても、緑の部分と変わらない光合成を行っていることは、驚きであった。また、アボカドやソラマメの表面及び種皮でも光合成が行われているとのことであった。考えてみると、多くの果実は熟す前は緑色であるものが多い。クロロフィルを持っている部分で光合成を行っていると考えると、多くの植物は、熟す前の果実においても光合成を行い、そのエネルギーを活用しているのだろう。これは、果実をつけることによるエネルギーの損失を少しでも補おうとする植物の戦略であると言える。また、調べてみると、果実が十分な肥大生長を行うためには多量に糖を液胞内に蓄積する必要があり、葉の光合成により合成された糖も葉から果実組織へ転流しているということも分かった(参考文献)。このことから果実は、果実自身も光合成活性を持ち、少なからず光合成を行うことで、自身の肥大生長を早めていると考えられる。また、果実組織の転流には濃度勾配に逆らった能動的な輸送が必要であるため、果実が光合成することは、その輸送エネルギーを節約することにつながるのではないだろうか(参考文献)。
参考文献:金山喜則、山木昭平「果実が甘くなるしくみ」化学と生物 Vol.31 No.9 p.578-586 1993年

A:きちんと論理が展開されていてよいと思うのですが、内容自体は誰もが考えそうな感じですよね。サイエンスで重要なのは、他の人には見つけられないものを見つけることです。もう少し、独自の視点が欲しいですね。


Q:今回の授業では果実など葉以外における光合成について学んだ。そのなかでソラマメのさやと種子の光合成について扱っていた。ソラマメはさやが厚く、種子へと届く光は数パーセント程度に限られるという。そんななかでもソラマメの種子に光合成能が見られる理由について考えたい。光合成を行うことによる利点を考えると、考えられることは呼吸を行うための燃料としての有機物の作成、または呼吸により発生した二酸化炭素の再固定があげられる。ここでは呼吸によるエネルギー産生を促す有機物生成が主な目的であると考える。種子が成長する上で親個体からではなく種子自体が最低限種子のなかで作らなければならないエネルギーが存在するのではないだろうか。例えば親個体からの糖などの供給を受ける際に能動輸送を行う必要があり、その為のエネルギーを作成する必要があるだといったものだ。種子自体は親個体ではない。エネルギーを輸送するためにエネルギーが必要だと言うことは考えられると思う。

A:親からの「仕送り」の振込手数料ぐらい、子どもが自分で払えよ、といった感じですね。ユニークな考え方でよいと思います。


Q:今回果実の内部も光合成をしているものが多いというがこれが内部の糖分にどのような影響を与えるかという点で不思議に思ったことがある。それはメロンの甘さである。私たちが普段目にするメロンは内部が緑色をしているが、夕張メロンのようにメロンの中には内部が黄色のものもある。内部が緑のメロンはクロロフィルが存在し光合成をしていると考えられるが黄色のメロンは光合成をしてないと考えられる。では黄色のメロンは甘くないのかと問われた場合、それはノーであり、むしろ甘い場合があるのはなぜか。まずは各種類の光合成量を測定し、比較する。緑のメロンの光合成量が高かった場合、ほかの機能は大きく変わらないはずなので、光合成が私たちの甘さには直接かかわっていないことがわかる。一方、光合成量が変わらない場合、緑のメロンのクロロフィル濃度が薄く、あまり効率が良くないことが言える。その場合はカボチャなどの内部が緑ではないウリ科の野菜や果物のシステムと比較する必要がある。

A:この提案では、緑と黄色のメロンの間で光合成を比較していますが、おそらく、一番重要なのは、内部に貯められた糖に対して、どの程度の光合成産物合成が行われているかではないでしょうか。例えば、光合成の活性があったとしても、その結果つくられる糖の量が、内部の糖の量の1%だったとしたら、それはほとんど甘みに影響を与えるレベルではないことを意味します。もう少し定量的な視点が必要でしょう。


Q:今回の講義では、葉以外での光合成について学習したがスイカの果実の表皮には緑色の部分にも黒い部分にも葉緑体が存在し、光合成を行っていることを知った。黒く見えている部分は葉緑体が大量に存在していることが分かった。では、なぜ果皮がすべて真っ黒になるくらいに葉緑体を作らなかったのであろうか。前の講義で、葉緑体を作るには大変な労力が必要であることを学んだ。そのため、果皮すべてを真っ黒に見えるほど葉緑体で埋め尽くすようにするには果実自体のサイズを小さくするか果実の数を減らすかしなければならないと考えられる。ただし、これを実行すると子孫となる種子の数が減ってしまう。果たしてそこまでの光合成能を果実が持つ必要があるのか裁量した結果、葉緑体の数量差となったのではないかと考えられる。スイカは葉もしっかり付いているのでそこまでの光合成能がなくてもよいと判断した結果ではないかと考えた。

A:これだけだと、縞にする必要性はわかりませんね。単に葉緑体を少なくする必要があれば、全体の色を薄くしたほうが効率的だと思います。


Q:今回の授業では、スイカの果実の縞模様の黒い部分ではクロロフィルの密度が濃いことによるものだと習った。それでは、スイカの果実がなぜこのようなクロロフィルの濃い部分を持つようになったのだろうか。クロロフィルというのは非常にコストの高いものであり、以前授業でもふれたように柔らかい若葉ではクロロフィルを節約しているほどである。授業で、黒い部分も緑の部分も光合成の量が変わらなかったという結果から、スイカの果実で黒色に見えるほど葉緑体を敷き詰めるのは、光合成効率が悪いと考えることができる。また、自然界においてスイカの果実のように葉緑体密度の高い葉がほとんどないことからも、光合成に関して黒く見えるまで葉緑体密度を高めるのは損であると考えられる。それでは、なぜスイカの果実はこのような縞模様を作るのであろうか。考えられるのは、動物からの保護である。縦縞模様は動物から見ると草に紛れて見えづらくなると言われている。スイカはアフリカ南部のカラハリ砂漠のカラハリスイカが原産だと言われている。カラハリスイカにも現代のスイカほどではないにしろはっきりと縞模様が存在し、カラハリ砂漠は下草やブッシュが散在するような環境であることからも、この理由が考えられた。

A:これは、よく考えてはいると思うのですが、種子散布の方法を考えるとよくわからなくなります。一般的に、おいしい果肉に硬くて小さい種子の組み合わせは、動物に果肉を種子ごと食べてもらって、別の場所で糞と一緒に排泄されることによって種子が広がるケースであると考えられます。とすると、草に紛れると、かえって困ることになりませんかね。


Q:ミドリムシは光合成を行う。鞭毛を使った運動能力を持つ動物的性質を持ちながら光合成を行うという植物的性質も持つ。生命力がとても強く、日照条件や栄養分の環境が整えば大量に増殖するとても効率の良い生物である。ミドリムシの構造を利用し、光合成ができる動物を作り出すことはできるのか。実際に光合成ができる動物は存在する。ウミウシである。このウミウシは特定の藻を食べて暮らしていてこの藻類の遺伝子を利用して光合成している。しかし実際に太陽光を科学エネルギーに変えるためには葉緑体を助ける特別なプロテインが必要となる。このウミウシはプロテインを自分で作り出す遺伝子を藻類から作り出している。この原理は詳しくは分かっていないが、これを利用すれば他の動物、もしくは人間にも応用できる可能性がある。光合成ができるようになると栄養分をわざわざ他の生物から取る必要がなくなり、食料問題が完全に解決される。現実的ではないがそのような研究が進めば将来的には意図的に光合成ができる動物が生まれるかもしれない。

A:まず、もう少し日本語がきちんと書けるようになる必要がありますね。「このウミウシはプロテインを自分で作り出す遺伝子を藻類から作り出している。」という文など意味不明です。「科学エネルギー」は「化学エネルギー」ですね。あと、何度も繰り返しになりますが、何かを参考にしてレポートを書く場合は、出典を必ずつけるようにしてください。


Q:スイカ(Citrullus lanatus)の黒い縞模様について、わざわざ葉緑体の数を緑色の部分と異なるようにしているということは、照度などの変化に対応するためではないかと考えた。他の食べ物でいうとカボチャ(Cucurbita)などに縦方向の縞模様があることに対してメロン(Cucumis melo)のように網目状の模様を持つものもある。このうちメロンの模様は①果実の成長速度に表皮が追いつけなくなり縦に亀裂が入る、②亀裂を補おうと染み出した果汁が固まるという過程を経てできあがる。スイカにも黒い縞の周りに横方向に伸びる縞があることやカボチャの模様は実のくびれている部分にあることから、実の模様にはその成長速度も関係しているのではないかと考えた。この仮説をスイカで確かめるためには、栄養の高い土壌と低い土壌で成長させたスイカの模様に相関性があるかを調べればよい。ただしここで問題なのはどうやって模様を数値に表すかである。スイカの模様をどう評価するかについてはいいアイデアが浮かばなかったが、極端に栄養度の異なる土壌で育てたスイカには模様の差がより明らかに現れるのではないかと思う。
参考:メロンの網目はどうしてできる?、食育大辞典 食と健康の情報サイト、http://www.shokuiku-daijiten.com/mame/?p=1607, 参照2018/07/19

A:面白いと思います。ただ、このような考察に生物学的な意義があるかどうかについては、メロンやスイカの原種においても、同様の縞があるのかどうか、という視点が重要です。人間が品種改良した植物だけで議論すると、場合によっては変な結論が得られる場合もあります。


Q:今回は植物が葉以外でも光合成を行なっていることを学んだ。果実がなぜ光合成を行うのかについて二つの仮説を考えた。①果実の由来が光合成を行う器官であった場合に、その名残として光合成能が果実に残ったために果実がそのまま光合成を行なっている②平面的な葉と違って果実は3次元的な構造を持っており表面積も大きいので、光合成能がある程度低くとも光合成が行われる総量としては一枚の葉に劣らず、十分なエネルギー産生器官として機能している

A:仮説のところで終わってしまっているな、と思って提出時間を見たら、23時57分ですね。もう少し余裕をもってレポートを書くようにしましょう。


Q:果物や野菜を形良く育てる方法を提案してみる。水に「ありがとう」や「きれいだね」などの良い言葉をかけた場合と、「きらい」や「ばか」などの悪い言葉をかけた場合、それぞれの結晶を調べてみると、良い言葉をかけた方が悪い言葉をかけた方よりきれいな結晶となったという本を昔読んだことがある。果物や野菜は80~90%の割合を水が占めているので、果物や野菜にきれいな言葉をかけて育てるのが形良く(はりがよく)育つために効果がある方法なのではと考えた。しかし果物や野菜(水)が人の話す言葉を理解しているとは言い難いためそのことを考慮して検証するべきである。また文献を調べてみると果物や野菜の形が悪くなってしまうのは、日照不足、高温乾燥、着果過多、肥料不足、水やり不足(水分不足)、ホウ素が欠乏しているなどの要因があるのでその点に気をつけて育てることも重要だと思う。http://kateisaiennkotu.com

A:なんだか、結局結論がわかりませんが、「人の話す言葉を理解しているとは言い難いためそのことを考慮して検証するべき」というのは、結局、どのように考慮するのでしょうか。人間が野菜語を学ぶのも、野菜が人の言葉を学ぶのも、どちらも絶望的な気がしますが。


Q:今回の講義でスイカの皮の黒い縞の部分はクロロフィルムが密集しているため、黒く見えるということを学んだ。私はこのメカニズムを知ったうえで、そもそも何故スイカは縞を作るのか疑問に思った。そこで、調べてみると野生の動物に食べてもらって、それが別の場所で糞と一緒に排泄されることによって広がって欲しいため、わざと見つかりやすい縞模様にしている可能性があるという記述があった(文献1)。しかし、私はその逆ではないかと考えた。毒キノコのように毒性を持つもので、他に警告するために派手な模様を持つものがある。スイカの模様もそれと同様のものなのではないかと考えた。現にスイカと同じウリ科スイカ属であるコロシントウリは、見た目がスイカによく似ていて毒性を持つ(文献2)。コロシントウリが縞を持つことが毒性に要因するものであるならば、スイカとコロシントウリの関係性を調べることで、縞模様のメカニズムが明らかになるのではないかと考えた。
〈参考文献〉1.光合成の森 スイカの皮の光合成と縞模様の謎、http://www.photosynthesis.jp/photoex4.html、2.コロシントウリ コトバンク、https://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%A6%E3%83%AA-1321196

A:考え方は面白いのですが、その場合、スイカが甘い理由がなくなりませんか?スイカにとって、次世代に重要なのは種子であって、果肉ではありません。その、いわばいらない果肉に、大量の糖を蓄積するのは、もし、動物を引き寄せる必要がないのであれば、損でしかないように思います。


Q:今回の講義ではソラマメの莢や種子、カルスのもつ光合成能について触れられた。それに関連して、ソラマメの種子が光合成能をもつ意味について考察する。ソラマメの種子は莢や莢内部の綿状組織に包まれほとんど光を得られず、光合成能を持っていてもあまり意味がないのではないかと思われる。そこで最初、ソラマメの種子表面が光合成能を持つのは、この環境下で光合成を行うためではなく、莢から放出された後から発芽時までに光合成を行うためであり、この時期から多少光合成能を持つのではないかと考えた。しかし、ソラマメの種子は莢の中にある時には緑色だが、莢から自然に外に出る時期には茶色くなって表面が乾燥してしまう。こうなってしまっても光合成能を持つのであろうか。これまでの講義で扱ったように、植物の緑色でない部分も葉緑体を持ち光合成を行なっている場合があるため、蛍光を観察して光合成能を調べる必要があるが、仮に見た目通り光合成能がないとした場合、上の仮説は成り立たないという事になる。そこで別の仮説を考える上で着目したのは、今回の講義でも扱ったようにカルスも光合成能を持つという事である。種子は莢から自然に出た時を発生の終わりとすると、莢の中の種子は発生途中の胚という事になる。これらのことから、莢の中にある種子の表面は発生途中であり種皮に完全に分化していないため、カルスのような光合成能をもつ未分化な細胞が残っており、光合成能を示すと考えられる。

A:これは面白いですね。前半の茶色くなっても光合成活性を持っているのではないか、という仮説は、種子の重要な存在意義が休眠にあることを考えると、あまり正しい可能性がないように思いますが、発想としてはユニークです。また、後半の、種子が光合成活性を持つのは、実は、積極的な意味があるわけではなく、未分化な細胞がカルスのように光合成能を示しているだけだ、という考え方も、非常に特色があってよいと思います。


Q:今回の講義では、ソラマメなどの葉以外の植物でも光合成を行なっているということを学んだ。私は特にソラマメに注目して考察したいと思う。ソラマメは葉だけではなく豆と鞘でも光合成を行っている。ただ、葉や鞘に比べて豆ではほとんど光合成が行われていない。そこで、なぜ豆でも光合成を行なっているのかについて自分なりに考えてみた。一番考えられる理由としては、万が一葉や鞘が傷付いて光合成を行うのに支障が出た時でも、豆で光合成が行えるということによって種の成長を止めないということであると考える。また幸いにも、鞘は豆を守るようにして作られているため、この構造は自分の考察を裏付ける要素になっていると考える。

A:どうも論理展開がわかりません。(1)莢は豆を守るように作られているため、(2)莢が傷ついても豆で光合成が行える、という2つのことの間にどのような関係があるのでしょうか。


Q:今回の講義では果皮にも少数ながら気孔があることが示され、葉と同程度の光合成能を持つにもかかわらず気孔の数が葉に比べて少ないのは、果実内部で放出されたCO2を利用できるためわざわざ作る必要がないとの説明だった。確かに気孔をつくるために無駄なコストを割く必要はないが、数を減らすことの意義について別の点から考察したい。1つ目に考えたのが中の果肉部分の水分保持である。果実の表面はつるつるとしていて光沢のあるものが比較的多く、これは外部からの水分や塵の付着、侵入を防ぐとともに外部への水分蒸発を防ぐ働きがあると考えられる。葉に比べて内部量が多くなる果実では気孔が多いと蒸散による水分損失が大きくなるため数を減らして蒸散量を調節していると考えられる。被食生の果実ばかりではないが、被食生の場合、果実のみずみずしさは美味しさにつながるため水分損失は大きな問題となる。2つ目に、害虫への対策が考えられる。気孔を通して果皮の内部と外部はつながっているが、果実の甘い香りにつられて本来は来て欲しくない虫や菌が気孔から進入する可能性もある。気孔の数を減らすことで外敵が入りにくくし、繁殖に重要な果実を保護していると考えられる。しかし、完全に気孔をなくしているわけではない。これは蒸散による水ポテンシャルを使って果実に水分を供給するため、夜間の呼吸時に内部が酸欠状態になるのを防ぎ、不要な二酸化炭素を放出するためといった内部環境の調節が目的であると考えられる。また、蒸散量は気孔の数だけでなく、二酸化炭素濃度などに依存した気孔の開閉なども関係するため、果皮と葉の表面の蒸散量を測定したときに、気孔の数と蒸散量は一致しないという結果が得られるかもしれない。水ポテンシャルの観点から果皮の気孔が少ないことについて考察することで理解が深まる可能性がある。

A:これは立派なレポートですね。きちんと考えていますし、複数の視点から考察をしていて非常によいと思います。